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特開2024-57784通信装置、通信システム、通信方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057784
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/116 20130101AFI20240418BHJP
【FI】
H04B10/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164681
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】今井 浩
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA24
5K102AL23
5K102MA01
5K102MB04
5K102MC00
5K102MD01
5K102MD04
5K102PB18
5K102PC12
5K102PH01
5K102PH24
5K102PH25
5K102PH33
5K102PH34
5K102PH38
5K102RB02
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】自装置や通信対象が動揺する状況であっても、安定した通信を継続できる通信装置等を提供する。
【解決手段】空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信器と、自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、検出器によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを取得し、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析し、分析した通信対象の動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器に設定する通信制御部と、を備える通信装置とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、
通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信器と、
自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、
前記検出器によって検出された前記物理量と、前記第2空間光信号に含まれる前記通信対象の動揺に関する情報とを取得し、前記通信対象の動揺に関する情報と前記物理量とを用いて前記通信対象の動揺の状態を分析し、分析した前記通信対象の動揺の状態に応じて、前記第1空間光信号の送信条件を前記送信器に設定する通信制御手段と、を備える通信装置。
【請求項2】
前記通信制御手段は、
前記検出器によって検出された前記物理量と、前記物理量が検出された時刻とが対応付けられたデータを含む前記第1空間光信号を前記送信器に送信させる請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信制御手段は、
前記自装置に対する前記通信対象の相対的な動揺の状態に応じて、前記第1空間光信号の送信条件を前記送信器に設定する請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信器は、
照明光を出射する複数の出射器を含む光源を有し、
前記通信制御手段は、
前記光源に含まれる複数の前記出射器に対応付けて、前記送信器に含まれる前記空間光変調器の変調部に複数の変調領域を設定し、複数の前記変調領域の各々に位相画像を設定し、複数の前記変調領域の各々に対応付けられた前記出射器から前記照明光が出射されるタイミングを制御することによって、前記第1空間光信号の送信方向を制御する請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信制御手段は、
複数の前記出射器の各々から出射された前記照明光に由来する前記第1空間光信号によって表示されるドットのペアの表示状態が所定の条件に応じて協調的に変化するように前記送信器を制御し、
前記第1空間光信号の受信に応じて前記通信対象から送信された前記第2空間光信号に含まれる前記通信対象の動揺に関する情報を取得し、
前記通信対象の動揺に関する情報と前記物理量とを用いて前記通信対象の動揺の状態を分析する請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信制御手段は、
バーチャルレンズ画像を前記位相画像に合成した合成画像を前記変調領域に設定して、前記通信対象の動揺の状態に合わせて、前記第1空間光信号によって前記通信対象に照射されるドットを変形させる請求項4に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信制御手段は、
前記通信対象の動揺の状態を学習させた推定モデルを含み、
前記検出器によって検出された前記物理量と、前記第2空間光信号に含まれる前記通信対象の動揺に関する情報とを前記推定モデルに入力し、
前記推定モデルからの出力に応じて前記通信対象の動揺の状態を分析し、
分析した前記通信対象の動揺の状態に応じて前記推定モデルを更新する請求項3に記載の通信装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
空間光信号を互いに送受信し合うように配置された通信システム。
【請求項9】
空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信器と、自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、を備える通信装置の通信制御方法であって、
コンピュータが、
前記検出器によって検出された前記物理量と、前記第2空間光信号に含まれる前記通信対象の動揺に関する情報とを取得し、
前記通信対象の動揺に関する情報と前記物理量とを用いて前記通信対象の動揺の状態を分析し、
分析した前記通信対象の動揺の状態に応じて、前記第1空間光信号の送信条件を前記送信器に設定する通信制御方法。
【請求項10】
空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信器と、自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、を備える通信装置を制御するプログラムであって、
前記検出器によって検出された前記物理量と、前記第2空間光信号に含まれる前記通信対象の動揺に関する情報とを取得する処理と、
前記通信対象の動揺に関する情報と前記物理量とを用いて前記通信対象の動揺の状態を分析する処理と、
分析した前記通信対象の動揺の状態に応じて、前記第1空間光信号の送信条件を前記送信器に設定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光空間通信に用いられる通信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を介さずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号)を用いて通信が行われる。通信装置を中心として複数の方向に空間光信号を送信できれば、空間光信号を用いた通信ネットワークを構築できる。任意の方向の通信装置と光空間通信を行うためには、その通信対象との間で空間光信号の送受信方向を合わせる必要がある。
【0003】
特許文献1には、送信機から発せられた信号光を受信する受信装置について開示されている。特許文献1の受信装置は、制御部、位相変調型空間光変調素子、および検出器を備える。制御部は、送信機の位置を示す位置情報に基づいて生成された位相画像に、バーチャルレンズ画像を合成して、合成画像を生成する。位相変調型空間光変調素子は、合成画像の供給を受けて、信号光を回折して集光する。検出器は、回折して集光した信号光を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/026175号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の受信装置は、GPS(Global Positioning System)やナビゲーションシステムから取得される各送信機の位置情報に基づいて、各送信器の位置情報に基づいた位相画像を生成する。そのため、特許文献1の手法によれば、送信機と受信装置の相対位置や姿勢の変化に応じて、通信を継続できる。電柱や電灯の柱上の空間に配置された通信装置は、様々な要因で動揺する。複数の通信装置の位置関係は、それぞれの通信装置の動揺に応じて、複雑に変動する。これらの動揺は、通信装置の位置情報だけでは正確に把握できない。そのため、特許文献1の手法では、位置情報だけでは把握できない個々の通信装置の動揺による通信途絶を解消できなかった。
【0006】
本開示の目的は、自装置や通信対象が動揺する状況であっても、安定した通信を継続できる通信装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の通信装置は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信装置と、自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、検出器によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを取得し、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析し、分析した通信対象の動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器に設定する通信制御部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の通信制御方法は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信装置と、自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、を備える通信装置の通信制御方法であって、検出器によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを取得し、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析し、分析した通信対象。動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器に設定する。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する送信器と、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する受信器と、自装置の動揺に関する物理量を検出する検出器と、を備える通信装置を制御するプログラムであって、検出器によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを取得する処理と、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析する処理と、分析した通信対象の動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器に設定する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自装置や通信対象が動揺する状況であっても、安定した通信を継続できる通信装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る通信装置が備える送信器の構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る通信装置が備える送信器から送信される空間光信号によって表示されるドットの照射例について説明するための概念図である。
図4】第1の実施形態に係る通信装置が備える送信器から送信される空間光信号によって表示されるドットの表示例について説明するための概念図である。
図5】第1の実施形態に係る通信装置が備える受信器の構成の一例を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態に係る通信装置が備える検出器の構成の一例を示すブロック図である。
図7】第1の実施形態に係る通信装置が備える通信制御部の構成の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る通信装置が備える通信制御部に含まれる動揺分析部の構成の一例を示すブロック図である。
図9】第1の実施形態に係る通信装置の配置例について説明するための概念図である。
図10】第1の実施形態に係る通信装置の動揺の一例について説明するための概念図である。
図11】第1の実施形態に係る通信装置から見た通信対象の動揺パターンの一例について説明するための概念図である。
図12】第1の実施形態に係る通信装置と通信対象の動揺の一例について説明するための概念図である。
図13】第1の実施形態に係る通信装置から送信された空間光信号が、静止した通信対象に照射される一例を示す概念図である。
図14】第1の実施形態に係る通信装置から送信された空間光信号が、動揺する通信対象に照射される一例を示す概念図である。
図15】第1の実施形態に係る通信装置からスキャン用の空間光信号を送信する一例を示す概念図である。
図16】第1の実施形態に係る通信装置が通信対象の動揺の振動周波数を測定する一例を示す概念図である。
図17】第1の実施形態に係る通信装置が通信対象の動揺の振幅を測定する一例を示す概念図である。
図18】第1の実施形態に係る通信装置が、通信対象の動揺に合わせて、空間光信号を照射する一例を示す概念図である。
図19】第1の実施形態に係る通信装置が、通信対象の動揺に合わせて、空間光信号によって表示されるドットを変形させる一例を示す概念図である。
図20】第1の実施形態に係る通信装置が、通信対象の動揺に合わせて、空間光信号によって表示されるドットを拡大させる一例を示す概念図である。
図21】第1の実施形態に係る通信装置から見た通信対象の動揺パターンの一例について説明するための概念図である。
図22】第1の実施形態に係る通信装置による送信器の制御例1について説明するための表である。
図23】第1の実施形態に係る通信装置による送信器の制御例1について説明するための概念図である。
図24】第1の実施形態に係る通信装置による送信器の制御例2について説明するための表である。
図25】第1の実施形態に係る通信装置による送信器の制御例2について説明するための概念図である。
図26】第1の実施形態の適用例に係る通信ネットワークの一例について説明するための概念図である。
図27】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図28】各実施形態の制御や処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることがある。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の通信装置は、空間を伝搬する光を送受信する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。本実施形態において、空間光信号は、十分に離れた位置から到来するために、平行光とみなす。本実施形態の説明で用いられる図面は、概念的なものであり、実際の構造を正確に描写したものではない。
【0015】
(構成)
図1は、本実施形態に係る通信装置10の構成の一例を示す概念図である。通信装置10は、送信器11、受信器13、検出器15、および通信制御部17を備える。通信装置10は、他の通信装置10(通信対象)との間で、空間光信号を送受信し合う。以下においては、通信装置10は、送信器11、受信器13、検出器15、および通信制御部17の構成について個別に説明する。以下において、通信装置10が通信対象に向けて送信した空間光信号を、第1空間光信号と呼ぶ。また、通信対象が通信装置10に向けて送信した空間光信号を、第2空間光信号と呼ぶ。
【0016】
〔送信器〕
図2は、送信器11の構成の一例を示す概念図である。光源111、空間光変調器112、および曲面ミラー113を有する。光源111、空間光変調器112、曲面ミラー113は、送信器11の筐体の内部に配置される。光源111および空間光変調器112は、通信制御部17に接続される。
【0017】
光源111は、通信制御部17の制御に応じて、通信に用いられる光(照明光101)を出射する。光源111は、空間光変調器112に向けて、照明光101を出射する。照明光101は、通信内容に応じて変調される。例えば、照明光101は、通信対象ごとに異なる周波数で変調される。
【0018】
図3は、送信器11の内部構成における光路の一例を示す概念図である。図3においては、曲面ミラー113を省略する。図3の例において、光源111は、3つの出射器(LA、LB、LC)を含む。光源111に含まれる出射器の数は、3つに限定されない。光源111に含まれる出射器の数は、4つ以上であってもよいし、2つ以下であってもよい。出射器は、通信対象に送信する信号のパターンに応じて変調された光を出射する。例えば、出射器から出射された光は、光学系を介して照明光に変換される。光源111から出射された照明光は、空間光変調器112に向けて進行する。
【0019】
光源111に含まれる出射器は、通信制御部17の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。出射器から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、出射器は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスをあげられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯のレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0020】
空間光変調器112は、位相変調型の変調器である。空間光変調器112は、変調部1120を有する。変調部1120には、変調領域が設定される。変調部1120の変調領域には、通信制御部17の制御に応じて、投射光によって表示される画像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部1120には、光源111から出射された照明光101が照射される。照明光101は、変調部1120に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。変調部1120で変調された変調光102は、曲面ミラー113に向けて進行する。
【0021】
例えば、空間光変調器112は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器112は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器112は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器112では、投射光を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器112を用いる場合、光源111の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0022】
変調部1120の変調領域は、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調領域は、所望のアスペクト比を有する四角形の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。複数のタイルの各々には、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。複数のタイルの各々に設定される位相画像は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調部1120に照明光が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光102が出射される。変調部1120に設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができる。変調部1120に設定されるタイルが多すぎると、各タイルの画素数が少なくなり、解像度が低下する。そのため、変調部1120の変調領域に設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0023】
曲面ミラー113は、空間光変調器112の後段に配置される。曲面ミラー113は、曲面状の反射面1130を有する反射鏡である。曲面ミラー113の反射面1130は、投射光の投射角に応じた曲率を有する。例えば、曲面ミラー113の反射面1130は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー113の反射面1130は、自由曲面や球面でもよい。例えば、曲面ミラー113の反射面1130は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー113の反射面1130は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0024】
曲面ミラー113は、空間光変調器112の変調部1120に、反射面1130を向けて配置される。曲面ミラー113は、変調光102の光路に配置される。曲面ミラー113の反射面1130には、変調光102が照射される。反射面1130で反射された光(投射光103)は、空間光信号として投射される。投射光103は、曲面ミラー113の反射面1130における変調光102の照射範囲の曲率に応じて拡大される。なお、送信器11には、曲面ミラー113の替わりに、フーリエ変換レンズや投射レンズ等を含む投射光学系が配置されてもよい。
【0025】
例えば、空間光変調器112の後段に、遮蔽器(図示しない)が配置されてもよい。遮蔽器は、変調光102に含まれる不要な光成分を遮蔽し、投射光103の表示領域の外縁を規定する枠体である。例えば、遮蔽器は、アパーチャである。そのようなアパーチャには、所望の画像を形成する光(所望光)を通過させる部分に、スリット状の開口が形成される。所望光は、1次の回折光である。遮蔽器は、所望光を通過させ、不要な光成分を遮蔽する。例えば、遮蔽器は、変調光102に含まれる0次光や、0次光を中心として所望光に対して点対称の位置に表れる不要な1次光、2次以上の高次光を含むゴースト像を遮蔽する。遮蔽器の詳細については、説明を省略する。
【0026】
図3の例において、変調部1120には、3つの変調領域(RA、RB、RC)が設定される。図3には、変調部1120に照射された照明光の照射範囲を、破線の円で示す。変調領域RA、変調領域RB、および変調領域RCの各々には、出射器LA、出射器LB、および出射器LCの各々から出射された光に由来する照明光101が照射される。変調領域RA、変調領域RB、および変調領域RCの各々に照射された照明光101は、それらの領域に設定された位相画像に応じて、変調される。変調領域RA、変調領域RB、および変調領域RCの各々で変調された変調光102は、曲面ミラー113の反射面1130で反射されて、投射光103として投射される。変調領域RAで変調された変調光102に由来する投射光103は、通信対象の位置における投射面Spにおいて、ドットDAとして表示される。変調領域RBで変調された変調光102に由来する投射光103は、通信対象の位置における投射面Spにおいて、ドットDBとして表示される。変調領域RCで変調された変調光102に由来する投射光103は、通信対象の位置における投射面Spにおいて、ドットDCとして表示される。
【0027】
図4は、位相変調型の空間光変調器112を用いて投射された投射光103によって形成される画像の表示例を示す概念図である。図4は、通信対象の位置における画像の表示例である。他の変調方式と比べて、位相変調型の空間光変調器112は、高効率に光を投射するには有効であるが、解像度が低い。位相変調型の空間光変調器112を用いて投射された投射光103の画素は、ドット状に集中するため、ドットより大きな隙間がドット間に形成される。一般的な手法では、位相変調型の空間光変調器112を用いて、ドットがつながった画像を形成することが難しい。ドットの間に通信対象が位置する場合、その通信対象によって空間光信号が受信されない。本実施形態の送信器11は、3つの出射器を含む光源111を有する。空間光変調器112を位相制御することによって、投射光103のドットによって形成される画像を、図4に示すドットの間にシフトさせることができる。本実施形態の手法では、図3のように、投射面Spにおいて、ドット間の隙間を相互に埋めるように、ドットを表示させることができる。そのため、本実施形態の送信器11は、ドット間の隙間に通信対象が位置する場合であっても、その通信対象に対して空間光信号を照射できる。空間光変調器112の変調部1120に設定された位相画像の切り替えは、液晶の動作速度に依存する。空間光通信で用いられる1550nm(ナノメートル)の波長帯において、液晶の応答は150~200ミリ秒程度である。また、800-1000nmの波長帯であっても、液晶の応答は50ms~100ms程度である。すなわち、空間光通信で用いられる波長帯では、空間光変調器112の変調部1120に設定された位相画像の切り替えが液晶の応答に律速される。そのため、変調部1120に設定された位相画像を差し替えるだけでは、動揺に追従させてドットを移動させることは難しい。本実施形態では、変調部1120を複数の変調領域に分割する。後述する図22図25の例では、アクティブな変調領域を順次切り替えて、アクティブでない変調領域の位相画像を差し替える。このようにすれば、液晶の応答が完了するまでの間に、アクティブでない変調領域の位相画像を差し替えることができるので、動揺に追従させてドットを移動させることができる。
【0028】
〔受信器〕
図5は、受信器13の構成について図面を参照しながら説明する。図5は、受信器13の構成の一例について説明するための概念図である。受信器13は、ボールレンズ131、受光素子133、および受信回路135を備える。図5は、受信器13の内部構成を横方向から見た側面図である。受信回路135の位置については、特に限定を加えない。受信回路135は、受信器13の内部に配置されてもよいし、受信器13の外部に配置されてもよい。また、受信回路135の機能を通信制御部17に含めてもよい。
【0029】
ボールレンズ131は、球形のレンズである。ボールレンズ131は、通信対象から送信された空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ131は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ131の一部は、受信器13の筐体に開けられた開口から突出する。ボールレンズ131は、入射された空間光信号を集光する。開口から突出したボールレンズ131に入射した空間光信号が集光される。空間光信号を集光できさえすれば、ボールレンズ131の一部は、開口から突出していなくてもよい。
【0030】
ボールレンズ131によって集光された空間光信号に由来する光(光信号)は、そのボールレンズ131の集光領域に向けて集光される。ボールレンズ131は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ131は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。ボールレンズ131に入射した光は、ボールレンズ131の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ131の内部を進行する光は、ボールレンズ131の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ131から出射される光の大部分は、集光領域に集光される。
【0031】
例えば、ボールレンズ131は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ131は、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料によって実現できる。例えば、ボールレンズ131は、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ131は、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ131は、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ131には、石英ガラスが適用できる。例えば、ボールレンズ131には、サファイア等の結晶が適用できる。例えば、ボールレンズ131には、アクリル等の透明樹脂が適用できる。
【0032】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線)である場合、ボールレンズ131には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ131には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線)である場合、ボールレンズ131には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ131には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ131の材質には限定を加えない。ボールレンズ131の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0033】
ボールレンズ131は、受光素子133の配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その他の集光器によって代替されてもよい。例えば、ボールレンズ131の替わりに、入射した空間光信号を、受光素子133の受光部に向けて集光する凸レンズが配置されてもよい。例えば、ボールレンズ131の替わりに、入射した空間光信号を、受光素子133の受光部に向けて導光する光線制御素子が配置されてもよい。例えば、ボールレンズ131は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成で置換されてもよい。例えば、ボールレンズ131によって集光される光信号を、受光素子133の受光部に向けて導光する機構が、追加されてもよい。
【0034】
受光素子133は、ボールレンズ131の後段に配置される。受光素子133は、ボールレンズ131の集光領域に配置される。受光素子133は、ボールレンズ131によって集光された光信号を受光する受光部を有する。ボールレンズ131によって集光された光信号は、受光素子133の受光部で受光される。受光素子133は、受光された光信号を電気信号(以下、信号)に変換する。受光素子133は、変換後の信号を、受信回路135に出力する。図5には、受光素子133が単一の例を示す。例えば、ボールレンズ131の集光領域に、複数の受光素子133が配置されてもよい。例えば、ボールレンズ131の集光領域に、複数の受光素子133がアレイ化された受光素子アレイが配置されてもよい。
【0035】
受光素子133は、受信対象である空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子133は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子133は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子133は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子133が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子133が受光する光の波長帯は、受信対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子133が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子133が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子133は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子133よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0036】
例えば、受光素子133は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子133は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子133は、高速通信に対応できる。なお、受光素子133は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子133の受光部は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子133の受光部は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子133の受光部は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子133の受光部の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0037】
例えば、受光素子133の前段に、偏光フィルタ(図示しない)が配置されてもよい。偏光フィルタは、受光素子133の受光部に対応付けて配置される。例えば、偏光フィルタは、受光素子133の受光部に、重ねて配置される。例えば、偏光フィルタは、受信対象の空間光信号の偏光状態に応じて選択されてもよい。例えば、受信対象の空間光信号が直線偏光の場合、偏光フィルタは1/2波長板を含む。例えば、受信対象の空間光信号が円偏光の場合、偏光フィルタは1/4波長板を含む。偏光フィルタの偏光特性に応じて、その偏光フィルタを通過した光信号の偏光状態が変換される。
【0038】
受信回路135は、受光素子133から出力された信号を取得する。受信回路135は、受光素子133からの信号を増幅する。受信回路135は、増幅された信号をデコードする。受信回路135によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路135によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0039】
〔検出器〕
図6は、検出器15の構成の一例を示すブロック図である。検出器15は、加速度センサ151、角速度センサ153、および方位センサ155を有する。加速度センサ151、角速度センサ153、および方位センサ155の動揺に応じた物理量を計測する。加速度センサ151、角速度センサ153、および方位センサ155によって計測された物理量には、その物理量が計測された時刻が紐づけられる。加速度センサ151、角速度センサ153、および方位センサ155によって計測された物理量と、その物理量が計測された時刻とを含むデータが計測値である。
【0040】
加速度センサ151は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ151は、通信装置10の動揺に関する物理量として、加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測する。加速度センサ151は、計測した加速度を通信制御部17に出力する。加速度センサ151として用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。例えば、加速度センサ151には、周波数変化型や圧電型、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。
【0041】
角速度センサ153は、3軸周りに関する角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ153は、通信装置10の動揺に関する物理量として、角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。角速度センサ153は、計測した角速度を通信制御部17に出力する。角速度センサ153として用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。例えば、角速度センサ153には、振動型や静電容量型等の方式のジャイロセンサを用いることができる。
【0042】
方位センサ155は、3軸周りに関する角度(空間角度とも呼ぶ)を計測するセンサである。方位センサ155は、通信装置10の動揺に関する物理量として、角度(空間角度とも呼ぶ)を計測する。方位センサ155は、計測した角度を通信制御部17に出力する。方位センサ155として用いられるセンサは、角度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。例えば、方位センサ155には、ホールセンサやMR(Magneto Resistance)センサ、MI(Magneto Impedance)センサ等の地磁気センサを用いることができる。
【0043】
例えば、加速度センサ151によって計測された加速度や、角速度センサ153によって計測された角速度を用いて角度を計算できる場合、方位センサ155が省略されてもよい。その場合、検出器15は、加速度および角速度を計測する慣性計測装置によって実現されてもよい。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)があげられる。IMUは、3軸方向の加速度を計測する加速度センサ151と、3軸周りに関する角速度を計測する角速度センサ153とを含む。検出器15は、VG(Vertical Gyro)やAHRS(Attitude Heading)などの慣性計測装置によって実現されてもよい。また、検出器15は、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)によって実現されてもよい。
【0044】
例えば、検出器15は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を構成する複数の人工衛星から送信された衛星信号を用いて、通信装置10の位置を計測する機能を有してもよい。例えば、検出器15は、人工衛星から送信された衛星信号を用いて、通信装置10の位置を計測する。そのような衛星信号は、GPS(Global Positioning System)などの全地球衛星系のシステムを構成する人工衛星から送信される。例えば、全地球航法衛星システムには、Galileoや、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、北斗衛星導航系統などがある。例えば、検出器15は、地域衛星系のシステムを構成する人工衛星から送信された衛星信号を用いてもよい。例えば、地域衛星系のシステムには、準天頂衛星システムやインド地域航法衛星システムなどがある。衛星信号を用いて位置情報を測定する場合、検出器15は、計測された位置情報を、通信制御部17に出力する。
【0045】
〔通信制御部〕
図7は、通信制御部17(通信制御手段)の構成の一例について説明するためのブロック図である。通信制御部17は、動揺分析部171、条件記憶部172、送信条件生成部173、送信制御部174、信号取得部175、信号解析部176、および信号生成部177を有する。例えば、通信制御部17は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。例えば、通信制御部17は、送信器11または受信器13に実装されてもよい。例えば、通信制御部17は、送信器11または受信器13にネットワーク経由で接続されたサーバやクラウドに実装されてもよい。図7は、通信制御部17の構成の一例であって、通信制御部17の構成を限定するものではない。
【0046】
動揺分析部171は、自装置(通信装置10)の動揺に関する計測値を、検出器15から取得する。動揺分析部171は、取得した計測値を用いて、自装置の動揺の状況を分析する。動揺分析部171は、分析結果に応じて、追尾データを生成する。追尾データは、自装置の動揺に応じた、自装置に対する通信対象の相対的な位置に関するデータである。追尾データの詳細については、後述する。また、動揺分析部171は、自装置の動揺に関する計測値を、追尾データに追加する。計測値には、その計測値が計測された時刻が含まれる。動揺分析部171は、生成した追尾データを、送信条件生成部173に出力する。
【0047】
また、動揺分析部171は、通信対象の動揺に関する計測値を、信号取得部175から取得する。その場合、動揺分析部171は、自装置の動揺に関する計測値と、通信対象の動揺に関する計測値とを用いて、追尾データを生成する。このように生成された追尾データは、自装置および通信対象の動揺に応じた、自装置と通信対象の間の相対的な位置関係を示すデータに相当する。自装置のみの動揺に応じたデータよりも、自装置と通信対象との間の相対的な動揺に応じたデータを用いた方が、より的確に通信対象を追従できる。
【0048】
条件記憶部172は、送信器11に送光させる投射光(空間光信号)によって形成される画像に対応する位相画像を記憶する。例えば、位相画像の表示位置を変更させるシフト画像や、位相画像を拡大させる仮想レンズ画像などのパターンを記憶する。条件記憶部172に記憶されたパターンは、送信器11の空間光変調器112の変調部1120に設定される。また、条件記憶部172は、送信器11の光源111を制御するための光源制御条件や、送信器11の空間光変調器112を制御するための変調器制御条件を含む投射条件を記憶する。光源制御条件は、送信器11の光源111から照明光を出射させるタイミングを含む条件である。変調器制御条件は、空間光変調器112の変調部1120にパターンを設定するための条件である。光源制御条件と変調器制御条件を協調的に制御することによって、空間光変調器112の変調部1120に設定されたパターンに応じた投射光が投射される。
【0049】
送信条件生成部173は、信号生成部177から送信対象信号を取得する。また、送信条件生成部173は、通信装置10と通信対象との間の動揺に応じた追尾パターンを、動揺分析部171から取得する。送信条件生成部173は、条件記憶部172に記憶された条件に基づいて、追尾パターンに応じた通信対象の位置に向けて送信対象信号を送信するための送信条件を生成する。例えば、送信条件生成部173は、条件記憶部172に記憶された投射条件に基づいて、送信対象信号を送光するためのパターンを選択する。例えば、送信条件生成部173は、送信対象信号として投射される投射光によって表示される像に対応するパターンを、空間光変調器112の変調部1120に設定する送信条件を生成する。例えば、送信条件生成部173は、空間光変調器112の変調部1120に設定された変調領域のアスペクト比に合わせて、投射される像に対応する位相画像を、空間光変調器112の変調部1120に設定する送信条件を生成する。
【0050】
送信制御部174は、送信条件生成部173によって設定された送信条件に基づいて、送信器11の光源111および空間光変調器112を制御するための送信指示を、送信器11に出力する。送信器11は、送信指示に応じて、投射光(空間光信号)を送信する。
【0051】
信号取得部175は、受信器13によってデコードされた信号を、その受信器13から取得する。また、信号取得部175は、受信器13によって信号処理が加えられた信号を、その受信器13から取得する。例えば、信号取得部175が取得する信号には、通信装置10から送信された空間光信号に応じて、スキャンされた通信対象や、通信中の通信対象から送信された応答信号が含まれる。信号取得部175は、取得した信号を信号解析部176に出力する。受信器13によってデコードされた信号に通信対象の動揺に関する計測値が含まれる場合、信号取得部175は、通信対象の動揺に関する計測値を動揺分析部171に出力する。
【0052】
信号解析部176は、信号取得部175によって取得された信号を解析する。例えば、信号解析部176は、信号の種別に応じて、信号に含まれる情報を解析する。例えば、信号の種別には、スキャン信号や通信信号が含まれる。スキャン信号は、通信対象の探索に用いられる信号である。通信信号は、探索された通信対象との通信に用いられる信号である。信号解析部176が解析する信号の種別に関しては、特に限定を加えない。信号解析部176は、信号の解析結果を信号生成部177に出力する。
【0053】
信号生成部177は、信号解析部176による信号の解析結果を取得する。また、信号生成部177は、自装置の動揺に関する計測値を、動揺分析部171から取得する。信号生成部177は、信号の解析結果に応じた送信対象信号を生成する。送信対象信号は、通信対象との通信内容や、通信対象のスキャンに用いられる内容を含む。また、送信対象信号は、自装置の動揺に関する計測値を含む。通信対象が複数である場合、信号生成部177は、通信対象ごとに送信対象信号を生成する。信号生成部177は、生成した送信対象信号を、送信条件生成部173に出力する。
【0054】
<動揺分析部>
次に、通信制御部17に含まれる動揺分析部171の構成の一例について図面を参照しながら説明する。以下においては、自装置(通信装置10)および通信対象の動揺に基づいて、自装置と通信対象の相対的な位置関係に応じた追尾パターンを生成する例について説明する。
【0055】
図8は、動揺分析部171の構成の一例を示すブロック図である。動揺分析部171は、計測値取得部141、記憶部142、追尾部143、および出力部145を有する。
【0056】
計測値取得部141は、自装置の動揺に関する計測値を、検出器15から取得する。また、計測値取得部141は、通信対象の動揺に関する計測値を、信号取得部175から取得する。計測値取得部141は、取得した計測値を、追尾部143および出力部145に出力する。
【0057】
記憶部142は、自装置および通信対象の動揺に関する情報の入力に応じて、自装置と通信対象の相対的な位置関係を出力する推定モデルを格納する。通信対象が複数の場合、記憶部142は、通信対象ごとの推定モデルを格納する。記憶部142に格納された推定モデルは、自装置および通信対象の動揺に関する情報を適宜学習することよって、更新される。推定モデルの更新のタイミングには、特に限定を加えない。
【0058】
追尾部143は、自装置および通信対象の動揺に関する情報を取得する。追尾部143は、自装置および通信対象の動揺に関する情報を、記憶部142に記憶された推定モデルを入力する。追尾部143は、推定モデルから出力される自装置と通信対象の相対的な位置関係を用いて、通信対象の位置を推定する。追尾部143によって推定される通信対象の位置は、自装置から見た通信対象の相対的な位置に相当する。追尾部143は、次の送信タイミングで送信される空間光信号が通信対象に到達する時点における、その通信対象の位置を推定する。追尾部143は、追尾部143の推定結果に応じて、通信対象の位置に応じた追尾データを生成する。
【0059】
例えば、追尾部143は、通信対象の空間的な位置座標を推定する。通信対象の空間的な位置座標は、その通信対象の動揺に応じて変動する。追尾部143は、その位置座標を含む追尾データを生成する。この場合、次の送信タイミングにおいて、通信装置10は、その通信対象への空間光信号を、その位置座標に向けて送信する。
【0060】
例えば、追尾部143は、通信対象の空間的な位置の変動を示す軌跡を推定する。通信対象の空間的な位置の変動を示す軌跡は、その通信対象の動揺に応じて変動する位置をなぞったパターンに相当する。追尾部143によって推定される通信対象の位置のバリエーションは、ここであげた限りではない。追尾部143は、その軌跡に含まれる位置座標を含む追尾データを生成する。この場合、次の送信タイミングにおいて、通信装置10は、その通信対象への空間光信号を、その位置座標に向けて送信する。例えば、通信装置10は、複数の光束からなる空間光信号を、軌跡に向けて送信してもよい。そのようにすれば、通信対象を面でとらえることができるので、その通信対象によって空間光信号が受光される確度が向上する。
【0061】
出力部145は、追尾部143から追尾データを取得する。また、出力部145は、計測値取得部141から、自装置の計測値を取得する。出力部145は、自装置の計測値を追尾データに追加する。計測値には、その計測値が計測された時刻が含まれる。例えば、出力部145は、通信対象の計測値を追尾データに追加してもよい。出力部145は、送信条件生成部173に追尾データを出力する。出力された追尾データは、次回の空間光信号の送信タイミングにおける、空間光信号の送信方向の設定に用いられる。
【0062】
〔動揺〕
次に、通信装置10の動揺について、図面を参照しながら説明する。図9は、通信装置10Aと通信装置10Bの間における空間光信号の送受信の一例について説明するための概念図である。通信装置10Aおよび通信装置10Bは、電柱や電灯の上などの柱上空間に配置される。
【0063】
図9の例において、通信装置10Aは、鉛直面内における投射角が0.5度の空間光信号を、水平方向に向けて送信する。通信装置10Aと通信装置10Bの距離は、100m(メートル)である。通信装置10Aから送信された空間光信号の照射範囲は、通信装置10Bの位置において、鉛直面内で87cm(センチメートル)まで拡がる。すなわち、通信装置10Aから送信された空間光信号の照射範囲は、投射方向が0.5度変位しただけで、通信装置10Bの位置における鉛直面内で87cmもずれてしまう。
【0064】
図10は、通信装置10の動揺について説明するための概念図である。図10は、通信装置10が紙面内で動揺する例である。図10のように、空間光信号の送信方向は、通信装置10の動揺に応じて変動する。通信装置10から送信された空間光信号の照射範囲に通信対象が入っていない場合、その空間光信号は通信対象によって受信されない。このような場合、通信装置10と通信対象との間における通信が途絶えてしまう。本実施形態では、通信装置10の動揺に合わせて空間光信号の送信方向を変化させることによって、通信装置10と通信対象の間における通信を継続させる。
【0065】
図11は、動揺に応じた通信装置10の軌跡の一例を示す概念図である。図11は、通信装置10Aから見た通信対象(通信装置10B)の軌跡PSを示す。図11の例では、通信装置10Bの軌跡PSに合わせて、通信装置10Aから送信された空間光信号の照射範囲Riを示す。通信装置10Aから送信された空間光信号の照射範囲Riを、通信装置10Bの軌跡PSに合わせて追尾できれば、通信装置10Aと通信装置10Bとの間の通信は途絶えることがない。実際には、通信装置10Bの軌跡PSに合わせて、照射範囲Riを正確に追尾させ続けることは難しい。しかし、通信装置10Bの軌跡PSに含まれる位置に照射範囲Riを合わせておけば、一時的に通信が途絶えたとしても、通信が回復される見込みがある。また、通信装置10Bの軌跡PSに含まれる複数の位置に向けて、複数の光束からなる空間光信号を通信装置10Aから送信すれば、通信が途絶える期間が短くなる。本実施形態では、動揺に応じた通信対象の位置を追尾することによって、通信が途絶える期間を短縮できる。
【0066】
図12は、通信装置10がお互いの動揺に関する情報を、相互に交換する一例について説明するための概念図である。図12は、通信装置10Aおよび通信装置10Bが異なるパターンで動揺している例である。通信装置10Aは、紙面に垂直な面内において、振動周波数f2、振幅A2で周期的に振動している。通信装置10Bは、紙面に平行な面内において、振動周波数f1、振幅A1で周期的に振動している。通信装置10Aと通信装置10Bの間において、お互いの動揺に関する情報を相互に交換すれば、通信が継続されている限り、それらの情報に応じて通信対象の位置を計算できる。通信が途絶えたとしても、動揺に関する情報に基づいて、通信対象の方向を推定できる。そのため、通信が途絶えたとしても、通信対象との通信を復旧しやすくなる。
【0067】
図13は、動揺がない状態における空間光信号の照射例を示す概念図である。図13の例では、空間光信号の送信元の通信装置10Aから見て、通信対象(通信装置10B)が静止している。図13の例では、空間光信号の照射範囲Bの範囲内に通信装置10Bが含まれている。吹き出しの中には、通信装置10Bが受信する空間光信号の受信強度を示す。図13の例の場合、通信装置10Bは、一定の受信強度で空間光信号を受信する。
【0068】
図14は、動揺がある状態における、空間光信号の照射例を示す概念図である。図14の例では、空間光信号の送信元の通信装置10Aから見て、通信対象(通信装置10B)が一方向に沿って動揺している。図14の例では、空間光信号の照射範囲Bの範囲から、通信装置10Bがはみ出す期間がある。吹き出しの中には、通信装置10Bが受信する空間光信号の受信強度を示す。図14の例の場合、通信装置10Bによる空間光信号の受信強度は、動揺に応じて変動する。通信装置10Bの動揺に合わせて空間光信号を送信すれば、通信装置10Bによる空間光信号の受信強度の変動を抑制できる。例えば、送信元の通信装置10Aは、空間光信号の受信強度の変動に応じて、動揺を検知するように構成されてもよい。その場合、通信装置10Aは、検知された動揺に関する情報を通信装置10Bとの間で相互に交換し、動揺に応じて空間光信号の送信方向を制御することによって、通信を継続できる。
【0069】
図15は、複数の光束からなる空間光信号を用いた通信対象の追従の一例について説明するための概念図である。図15は、2つの光束からなるスキャン用の空間光信号を用いて、通信装置10Aが通信対象(通信装置10B)を追従する例である。図15の例において、通信装置10Bは、紙面の右上から左下に向かう方向に沿って動揺している。図15には、吹き出しの中に、通信装置10Bによって受信される空間光信号の受信強度の時間変化を示す。
【0070】
送信元の通信装置10Aは、2つの照射範囲(照射範囲B、照射範囲B)に向けて、スキャン用の空間光信号を送信する。照射範囲Bおよび照射範囲Bの各々には、異なる出射器から出射された空間光信号が照射される。通信装置10Aは、識別子Fが付与された空間光信号を照射範囲Bに送信する。また、通信装置10Aは、識別子Sが付与された空間光信号を照射範囲Bに送信する。送信先の通信装置10Bは、2つの照射範囲に照射された空間光信号を、その空間光信号に付与された識別子に応じて区別する。図15には、照射範囲Bと照射範囲Bの中間位置を中心として、照射範囲Bおよび照射範囲Bのペアが照射される位置を回転させる様子を示す。
【0071】
照射期間T1において、送信元の通信装置10Aは、紙面の左上から右下に向かう方向に沿って照射範囲BF1と照射範囲BS1が並ぶように、空間光信号を送信する。この場合、照射範囲BF1と照射範囲BS1とを結ぶ直線と、通信装置10Bの動揺方向との成す角は約90度である。照射期間T1において、通信装置10Bは、ノイズNのレベルの空間光信号を受信する。
【0072】
照射期間T2において、送信元の通信装置10Aは、紙面の上から下に向かう方向に沿って照射範囲BF2と照射範囲BS2が並ぶように、空間光信号を送信する。この場合、照射範囲BF2と照射範囲BS2とを結ぶ直線と、通信装置10Bの動揺方向との成す角は約45度である。照射期間T2において、通信装置10Bは、照射範囲BF2に照射された空間光信号F2と、照射範囲BS2に照射された空間光信号S2とを受信する。通信装置10Bは、照射範囲BF2に照射された空間光信号F2と、照射範囲BS2に照射された空間光信号S2とを、識別子によって区別する。
【0073】
照射期間T3において、送信元の通信装置10Aは、紙面の右上から左下に向かう方向に沿って照射範囲BF3と照射範囲BS3が並ぶように、空間光信号を送信する。この場合、照射範囲BF3と照射範囲BS3とを結ぶ直線と、通信装置10Bの動揺方向とが一致する。照射期間T3において、通信装置10Bは、照射範囲BF3に照射された空間光信号F3と、照射範囲BS3に照射された空間光信号S3とを受信する。通信装置10Bは、照射範囲BF3に照射された空間光信号F3と、照射範囲BS3に照射された空間光信号S3とを、識別子によって区別する。
【0074】
照射期間T4において、送信元の通信装置10Aは、紙面の左から右に向かう方向に沿って照射範囲BF4と照射範囲BS4が並ぶように、空間光信号を送信する。この場合、照射範囲BF4と照射範囲BS4とを結ぶ直線と、通信装置10Bの動揺方向との成す角は約45度である。照射期間T4において、通信装置10Bは、照射範囲BF4に照射された空間光信号F4と、照射範囲BS4に照射された空間光信号S4とを受信する。通信装置10Bは、照射範囲BF4に照射された空間光信号F4と、照射範囲BS4に照射された空間光信号S4とを、識別子によって区別する。
【0075】
図15の例では、照射期間T3における空間光信号の受信強度が最も大きい。通信装置10Bは、受信強度が最も大きい空間光信号を受信したのが照射期間T3であったことを通知する空間光信号(応答信号)を、その空間光信号の送信元の通信装置10Aに向けて送信する。その応答信号を受信した通信装置10Aは、照射期間T3に送信した空間光信号によって照射された照射範囲BF3と照射範囲BS3とを結ぶ直線の方向が、自装置(通信装置10A)から見た通信対象(通信装置10B)の動揺方向であると判別できる。
【0076】
図16は、通信対象の動揺の振動周波数を計測する一例について説明するための概念図である。図16は、図15に示す手順によって、通信装置10Aから見た通信対象(通信装置10B)の動揺方向が判別された後に、動揺の振動周波数を計測する例である。通信装置10Aは、周波数の異なる空間光信号を送信する。図16には、吹き出しの中に、送信先の通信装置10Bによって受信される空間光信号の受信強度の時間変化を示す。
【0077】
送信元の通信装置10Aは、2つの照射範囲(照射範囲BF3、照射範囲BS3)に向けて、スキャン用の空間光信号を送信する。照射範囲BF3および照射範囲BS3の各々には、異なる出射器から出射された空間光信号が照射される。通信装置10Aは、識別子Fが付与された空間光信号を照射範囲BF3に送信する。また、通信装置10Aは、識別子Sが付与された空間光信号を照射範囲BS3に送信する。通信装置10Bは、2つの照射範囲に照射された空間光信号を、その空間光信号に付与された識別子に応じて区別する。
【0078】
図16には、周波数Fの空間光信号と周波数Fの空間光信号が送信される例を示す。周波数Fが低周波数であり、周波数Fが高周波数である。通信装置10Bは、空間光信号の周波数に応じた間隔で、識別子Fが付与された空間光信号と、識別子Sが付与された空間光信号とを受信する。通信装置10Bは、通信装置10Aに対する自装置(通信装置10B)の動揺の振動周波数に応じた間隔で空間光信号を受信する。それぞれの周波数における、空間光信号の受信間隔を計測すれば、通信装置10Aに対する自装置(通信装置10B)の動揺の振動周波数を計算できる。
【0079】
図17は、通信対象の動揺の振幅を計測する一例について説明するための概念図である。図17は、図15に示す手順によって、通信装置10Aから見た通信対象(通信装置10B)の動揺方向が判別された後に、動揺の振幅を計測する例である。図17には、吹き出しの中に、通信装置10Bによって受信される空間光信号の受信強度の時間変化を示す。
【0080】
送信元の通信装置10Aは、2つの照射範囲(照射範囲BF3、照射範囲BS3)に向けて、スキャン用の空間光信号を送信する。通信装置10Aは、照射範囲BF3および照射範囲BS3の間隔を変えながら、空間光信号を送信する。照射範囲BF3および照射範囲BS3の各々には、異なる出射器から出射された空間光信号が照射される。通信装置10Aは、識別子Fが付与された空間光信号を照射範囲BF3に送信する。また、通信装置10Aは、識別子Sが付与された空間光信号を照射範囲BS3に送信する。
【0081】
照射範囲BF3と照射範囲Bの間隔D1(左)は、通信装置10Bの動揺における振幅と比べて小さい。照射範囲BF3と照射範囲Bの間隔D2(中央)は、通信装置10Bの動揺における振幅と一致する。照射範囲BF3と照射範囲Bの間隔D3(右)は、通信装置10Bの動揺における振幅と比べて大きい。この場合、間隔D2(中央)において、空間光信号の受信強度が最大になる。すなわち、通信装置10Bの動揺における振幅は、間隔D2に相当する。
【0082】
図18は、図17で判別された動揺の振幅に合わせて、通信装置10が空間光信号を送信する一例を示す概念図である。図18の例では、通信装置10Aが、通信対象(通信装置10B)の動揺方向に合わせて、3つの照射範囲(照射範囲Ba、照射範囲Bb、照射範囲Bc)に向けた空間光信号を送信する。図18には、通信装置10Bの動揺方向を矢印で示す。通信装置10Aは、照射範囲Ba、照射範囲Bb、および照射範囲Bcの各々に向けて、異なる出射器を用いて空間光信号を送信する。照射範囲Baと照射範囲Bcの間隔は、通信装置10Bの動揺の振幅に一致する。そのため、動揺している通信装置10Bがいずれの位置にいても、照射範囲Ba、照射範囲Bb、および照射範囲Bcのいずれかに照射された空間光信号が、その通信装置10Bによって継続的に受信される。
【0083】
図19は、空間光信号の照射範囲を変形する一例を示す概念図である。図19には、通信対象(通信装置10B)の動揺方向を矢印で示す。図19の例の場合、通信装置10Bの動揺方向に沿って、空間光信号の照射範囲Bを引き伸ばす。例えば、空間光変調器112の変調部1120に設定される位相画像に、その位相画像の投射範囲を引き伸ばすように拡大するバーチャルレンズを合成すれば、図19のような照射範囲Bの空間光信号を送信できる。図19のように、通信装置10Bの動揺方向に沿って、空間光信号の照射範囲Bを引き伸ばせば、照射範囲Bに照射された空間光信号が、その通信装置10Bによって継続的に受信される。
【0084】
図20は、空間光信号の照射範囲を変形する別の一例を示す概念図である。図20には、通信対象(通信装置10B)の動揺方向を矢印で示す。図20の例の場合、動揺する通信装置10Bの範囲を含むように、空間光信号の照射範囲Bを拡大する。例えば、空間光変調器112の変調部1120に設定される位相画像に、その位相画像の投射範囲を拡大するバーチャルレンズを合成すれば、図20のような照射範囲Bの空間光信号を送信できる。図20のように、動揺する通信装置10Bの範囲を含むように空間光信号の照射範囲Bを拡大すれば、照射範囲Bに照射された空間光信号が、その通信装置10Bによって継続的に受信される。
【0085】
図21は、複雑に動揺する通信装置10の軌跡の一例を示す概念図である。図21は、通信装置10Aから見た通信対象(通信装置10B)の軌跡PSを示す。図21のように、通信装置10Bが複雑に動揺する場合、その通信装置10Bの位置を含む微小範囲Vにおいて、その通信装置10Bの動揺を推定すればよい。どのように複雑な動揺であっても、通信装置10Bは、最も安定した位置で静止し状態から動揺し始め、やがて最も安定した位置で静止する。そのため、微小範囲Vにおける通信装置10Bの変動する方向が判別できれば、その方向に追従していくことによって、全体的な軌跡PSを把握できる。例えば、通信装置10Aの光源111に含まれる出射器の数を増やし、通信装置10Bの軌跡PSに沿って、複数の照射範囲に向けて空間光信号を送信すれば、通信が途切れる期間を短縮できる。
【0086】
通信装置10が動揺する要因は、いくつかの類型に分類できる。例えば、通信装置10が設置された場所における風や気温、湿度、雨などの環境要因が、通信装置10の動揺を引き起こす。例えば、通信装置10が設置された場所の近辺で行われている道路や電線の工事などの人為的要因が、通信装置10の動揺を引き起こすこともある。例えば、通信装置10が設置された支柱の固有振動が、通信装置10の動揺を引き起こす要因になりうる。これらの要因に応じた動揺パターンを推定モデルに学習させておけば、通信対象の位置の微小変化に応じて、その通信対象の動揺を推定できる。さらに、動揺を引き起こす要因と、その要因に応じた動揺パターンとを用いて、推定モデルを逐次学習させれば、動揺パターンの推定精度が向上する。
【0087】
〔制御例〕
次に、複数の照射範囲に向けて空間光信号を送信するための送信器11の制御例について図面を参照しながら説明する。以下においては、3つの出射器を含む光源111を用いて、空間光信号の照射範囲を変化させる例をあげる。
【0088】
<制御例1>
図22は、空間光変調器112の変調部1120に設定される複数の変調領域と、光源111に含まれる複数の出射器との制御例1について説明するための表である。図22には、空間光信号を送信するタイミングに合わせてアクティブにする変調領域と出射器の対応関係を示す。変調部1120には、変調領域RA、変調領域RB、および変調領域RCが設定される。光源111は、出射器LA、出射器LB、および出射器LCを含む。出射器LAから出射された照明光は、変調領域RAに照射される。出射器LBから出射された照明光は、変調領域RBに照射される。出射器LCから出射された照明光は、変調領域RCに照射される。
【0089】
照射期間T1においては、変調領域RAに位相画像IAが設定され、変調領域RBに位相画像IBが設定され、変調領域RCに位相画像ICが設定される。照射期間T1においては、出射器LAが駆動され(ON)、出射器LBおよび出射器LCは停止している(OFF)。照射期間T1においては、変調領域RAに設定された位相画像IAに応じた照射パターンの空間光信号が送信される。
【0090】
照射期間T1から照射期間T2に遷移するタイミングにおいて、出射器LAが停止され、出射器LBが駆動される。すなわち、照射期間T2においては、出射器LBが駆動され、出射器LAおよび出射器LCは停止している。また、出射器LAの停止に合わせて、変調領域RAに設定された位相画像IAが位相画像IDに切り替えられる。そのため、照射期間T2においては、変調領域RAに位相画像IDが設定され、変調領域RBに位相画像IBが設定され、変調領域RCに位相画像ICが設定される。照射期間T2においては、変調領域RBに設定された位相画像IBに応じた照射パターンの空間光信号が送信される。
【0091】
照射期間T2から照射期間T3に遷移するタイミングにおいて、出射器LBが停止され、出射器LCが駆動される。すなわち、照射期間T3においては、出射器LCが駆動され、出射器LAおよび出射器LBは停止している。また、出射器LBの停止に合わせて、変調領域RBに設定された位相画像IBが位相画像IEに切り替えられる。そのため、照射期間T3においては、変調領域RAに位相画像IDが設定され、変調領域RBに位相画像IEが設定され、変調領域RCに位相画像ICが設定される。照射期間T3においては、変調領域RCに設定された位相画像ICに応じた照射パターンの空間光信号が送信される。
【0092】
照射期間T3から照射期間T4に遷移するタイミングにおいて、出射器LCが停止され、出射器LAが駆動される。すなわち、照射期間T4においては、出射器LAが駆動され、出射器LBおよび出射器LCは停止している。そのため、照射期間T4においては、変調領域RAに位相画像IDが設定され、変調領域RBに位相画像IEが設定され、変調領域RCに位相画像ICが設定される。照射期間T4においては、変調領域RAに設定された位相画像IDに応じた照射パターンの空間光信号が送信される。
【0093】
照射期間T4から照射期間T5に遷移するタイミングにおいて、出射器LAが停止され、出射器LBが駆動される。すなわち、照射期間T5においては、出射器LBが駆動され、出射器LAおよび出射器LCは停止している。そのため、照射期間T5においては、変調領域RAに位相画像IDが設定され、変調領域RBに位相画像IEが設定され、変調領域RCに位相画像ICが設定される。照射期間T5においては、変調領域RBに設定された位相画像IEに応じた照射パターンの空間光信号が送信される。
【0094】
図23は、図22の表に従った制御に応じて送信された空間光信号によって表示されるドットについて説明するための概念図である。照射期間T1に送信された空間光信号は、ドットDAとして表示される。照射期間T2に送信された空間光信号は、ドットDBとして表示される。照射期間T3に送信された空間光信号は、ドットDCとして表示される。照射期間T4に送信された空間光信号は、ドットDDとして表示される。照射期間T5に送信された空間光信号は、ドットDEとして表示される。空間光信号によって表示されるドットDは、左側から右側に向けて、途切れることなく順番に照射される。
【0095】
空間光変調器112の変調部1120は液晶パネルである。そのため、変調領域に設定された位相画像は、液晶の応答時間を経て、切り替わる。図22の表に従って制御することによって、アクティブな変調領域を順次切り替えて、アクティブでない変調領域の位相画像を液晶の応答時間に合わせて差し替える。このようにすれば、液晶の応答が完了するまでの間に、アクティブでない変調領域の位相画像を差し替えることができる。そのため、図23のような照射パターンの空間光信号を、通信対象に向けて途切れることなく照射することによって、動揺に追従させてドットを移動させることができる。
【0096】
<制御例2>
図24は、空間光変調器112の変調部1120に設定される複数の変調領域と、光源111に含まれる複数の出射器との制御例2について説明するための表である。本制御例においては、通信対象の位置に応じて、表示されるドットの形状を変化させる。図24には、空間光信号を送信するタイミングに合わせてアクティブにする変調領域と出射器の対応関係を示す。変調部1120には、変調領域RAおよび変調領域RBが設定される。光源111は、出射器LAおよび出射器LBを含む。出射器LAから出射された照明光は、変調領域RAに照射される。出射器LBから出射された照明光は、変調領域RBに照射される。
【0097】
照射期間T1においては、変調領域RAに位相画像IBが設定され、変調領域RBに位相画像ICが設定される。照射期間T1においては、出射器LAが駆動され(ON)、出射器LBは停止している(OFF)。照射期間T1においては、変調領域RAに設定された位相画像IBに応じた照射パターン(表示FB)の空間光信号が送信される。
【0098】
照射期間T1から照射期間T2に遷移するタイミングにおいて、出射器LAが停止され、出射器LBが駆動される。すなわち、照射期間T2においては、出射器LBが駆動され、出射器LAは停止している。照射期間T2においては、変調領域RAに位相画像IBが設定され、変調領域RBに位相画像ICが設定される。照射期間T2においては、変調領域RBに設定された位相画像ICに応じた照射パターン(表示FC)の空間光信号が送信される。
【0099】
照射期間T2から照射期間T3に遷移するタイミングにおいて、出射器LBが停止され、出射器LAが駆動される。すなわち、照射期間T3においては、出射器LAが駆動され、出射器LBは停止している。また、出射器LBの停止に合わせて、変調領域RBに設定された位相画像ICが位相画像IAに切り替えられる。照射期間T3においては、変調領域RAに位相画像IBが設定され、変調領域RBに位相画像IAが設定される。照射期間T3においては、変調領域RAに設定された位相画像IBに応じた照射パターン(表示FB)の空間光信号が送信される。
【0100】
照射期間T3から照射期間T4に遷移するタイミングにおいて、出射器LAが停止され、出射器LBが駆動される。すなわち、照射期間T4においては、出射器LBが駆動され、出射器LAは停止している。照射期間T4においては、変調領域RAに位相画像IBが設定され、変調領域RBに位相画像IAが設定される。照射期間T4においては、変調領域RBに設定された位相画像IAに応じた照射パターン(表示FA)の空間光信号が送信される。
【0101】
照射期間T4から照射期間T5に遷移するタイミングにおいて、出射器LBが停止され、出射器LAが駆動される。すなわち、照射期間T5においては、出射器LAが駆動され、出射器LBは停止している。照射期間T5においては、変調領域RAに位相画像IBが設定され、変調領域RBに位相画像ICが設定される。照射期間T5においては、変調領域RAに設定された位相画像IBに応じた照射パターン(表示FB)の空間光信号が送信される。
【0102】
図25は、図24の表に従った制御に応じて送信された空間光信号によって表示されるドットについて説明するための概念図である。照射期間T1に送信された空間光信号は、表示FBとして表示される。照射期間T2に送信された空間光信号は、表示FCとして表示される。照射期間T3に送信された空間光信号は、表示FBとして表示される。照射期間T4に送信された空間光信号は、表示FAとして表示される。照射期間T5に送信された空間光信号は、表示FBとして表示される。照射期間T1、照射期間T3、および照射期間T3に送信された空間光信号は、通信対象(通信装置10B)の位置に合わせて同じ表示FBで表示される。空間光信号によって表示されるドットDは、図25に示す矢印の曲線に沿って、周期的に照射される。
【0103】
図25の例では、通信装置10Bの位置を中心として、空間光信号の照射位置を円弧状に振動させて、空間光信号を送信する。位相画像にバーチャルレンズを合成したパターンを空間光変調器112の変調部1120に設定すれば、図25のように表示の形状を変更できる。変調部1120の液晶の応答時間よりも表示FAと表示FCの切り替え時間が長ければ、照射位置を切り替えた段階において、変調部1120のパターンが切り替わる。すなわち、光源111に2つの出射器が含まれ、かつ空間光変調器112の変調部1120に2つの変調領域が設定できれば、空間光信号の照射位置を周期的に切り替えられる。
【0104】
〔適用例〕
次に、本実施形態の適用例について図面を参照しながら説明する。以下の適用例では、複数の通信装置10が、空間光信号を送受信する例をあげる。図26は、本適用について説明するための概念図である。本適用例では、街中に配置された電柱や街灯などの柱の上部(柱上空間)に、複数の通信装置10が配置された通信ネットワークの一例(通信システム)をあげる。
【0105】
柱上空間には障害物が少ない。そのため、柱上空間は、通信装置2の設置に適している。また、同程度の高さに通信装置10を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定される。そのため、受信器13の受信面積を小さくできるため、装置を小型化できる。空間光信号を送受信し合う通信装置10のペアは、少なくとも一方の通信装置10が、他方の通信装置10から送信された空間光信号を受光できる位置に配置される。通信装置10のペアは、空間光信号を互いに送受信するように配置されてもよい。複数の通信装置10で空間光信号の通信ネットワークが構成される場合、中間に位置する通信装置10は、他の通信装置10から送信された空間光信号を、別の通信装置10に中継するように構成されてもよい。
【0106】
本適用例によれば、柱上空間に配置された複数の通信装置10の間で、空間光信号を用いた光空間通信が可能になる。例えば、通信装置10の間における光空間通信とともに、自動車や家屋などに設置された無線装置や基地局と通信装置10との間で、電波を用いた無線通信による通信が行われてもよい。例えば、柱に設置された通信ケーブル等を介して、通信装置10がインターネットに接続されてもよい。
【0107】
以上のように、本実施形態の通信装置は、送信器、受信器、検出器、および通信制御部を備える。送信器は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する。受信器は、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する。検出器は、自装置の動揺に関する物理量を検出する。通信制御部は、検出器によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを取得する。通信制御部は、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析する。通信制御部は、分析した通信対象の動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器に設定する。
【0108】
本実施形態の通信装置は、通信対象の動揺の状態に応じて、空間光信号(第1空間光信号)の送信条件を設定する。本実施形態の通信装置によれば、通信対象の動揺に合わせて空間光信号の送信方向を変更することによって、自装置や通信対象が動揺する状況であっても、安定した通信を継続できる。
【0109】
本実施形態の一態様において、通信制御部は、検出器によって検出された物理量と、物理量が検出された時刻とが対応付けられたデータを含む第1空間光信号を、送信器に送信させる。本態様では、検出器によって検出された物理量と、物理量が検出された時刻とが対応付けられたデータを含む第1空間光信号を通信対象に向けて送信する。そのため、本態様によれば、第1空間光信号を受信した通信対象が、その第1空間光信号の送信元である通信対象の動揺の状態を、時間情報に基づいてより的確に分析できる。
【0110】
本実施形態の一態様において、通信制御部は、自装置に対する通信対象の相対的な動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器に設定する。そのため、本態様によれば、自装置に対する通信対象の相対的な動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信方向を通信対象の位置に合わせやすくなる。
【0111】
本実施形態の一態様において、送信器は、照明光を出射する複数の出射器を含む光源を有する。通信制御部は、光源に含まれる複数の出射器に対応付けて、送信器に含まれる空間光変調器の変調部に複数の変調領域を設定する。通信制御部は、複数の変調領域の各々に位相画像を設定する。通信制御部は、複数の変調領域の各々に対応付けられた出射器から照明光が出射されるタイミングを制御することによって、第1空間光信号の送信方向を制御する。本態様では、複数の光束からなる第1空間光信号を通信対象に向けて送信する。そのため、本態様によれば、単一の光束からなる第1空間光信号によって表示されるドットの間を補間できるため、通信対象の動揺の状態をより正確に分析できる。
【0112】
本実施形態の一態様において、通信制御部は、複数の出射器の各々から出射された照明光に由来する第1空間光信号によって表示されるドットのペアの表示状態が所定の条件に応じて協調的に変化するように送信器を制御する。通信制御部は、第1空間光信号の受信に応じて通信対象から送信された第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報を取得する。通信制御部は、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析する。本態様では、ドットのペアの表示状態が協調的に変化するように、複数の光束からなる第1空間光信号を通信対象に向けて送信する。そのため、本実施形態によれば、周期的な動揺パターンで動揺する通信対象の動きに追従させて、第1空間光信号をより的確に照射できる。
【0113】
本実施形態の一態様において、通信制御部は、バーチャルレンズ画像を位相画像に合成した合成画像を変調領域に設定して、通信対象の動揺の状態に合わせて、第1空間光信号によって通信対象に照射されるドットを変形させる。本態様では、第1空間光信号によって通信対象に照射されるドットを、通信対象の動揺の状態に合わせて変形させる。そのため、本態様によれば、動揺する通信対象の動きに追従させて、第1空間光信号をより的確に照射できる。
【0114】
本実施形態の一態様において、通信制御部は、通信対象の動揺の状態を学習させた推定モデルを含む。通信制御部は、検出器によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを推定モデルに入力する。通信制御部は、推定モデルからの出力に応じて通信対象の動揺の状態を分析する。通信制御部は、分析した通信対象の動揺の状態に応じて推定モデルを更新する。本態様によれば、通信対象の動揺の状態を学習させた推定モデルを用いることで、複雑なパターンで動揺する通信対象の動きに追従させて、第1空間光信号を的確に照射できる。また、本態様では、分析した通信対象の動揺の状態に応じて、推定モデルを更新する。そのため、本態様によれば、通信対象に適合化された推定モデルを用いることによって、動揺する通信対象の動きに追従させて、第1空間光信号をより的確に照射できる。
【0115】
本実施形態の一態様の通信システムは、上記の通信装置を複数備える。通信システムにおいて、複数の通信装置は、空間光信号を互いに送受信し合うように配置される。本態様によれば、空間光信号を送受信する通信ネットワークを実現できる。
【0116】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第1の実施形態の通信装置10を簡略化した構成である。図27は、本実施形態に係る通信装置20の構成の一例を示すブロック図である。通信装置20は、送信器21、受信器23、検出器25、および通信制御部27を備える。
【0117】
送信器21は、空間光変調器の変調部で変調された変調光を第1空間光信号として送信する。受信器23は、通信対象から送信された第2空間光信号を受信する。検出器25は、自装置の動揺に関する物理量を検出する。通信制御部27は、検出器25によって検出された物理量と、第2空間光信号に含まれる通信対象の動揺に関する情報とを取得する。通信制御部27は、通信対象の動揺に関する情報と物理量とを用いて通信対象の動揺の状態を分析する。通信制御部27は、分析した通信対象の動揺の状態に応じて、第1空間光信号の送信条件を送信器21に設定する。
【0118】
本実施形態の通信装置は、通信対象の動揺の状態に応じて、空間光信号(第1空間光信号)の送信条件を設定する。本実施形態の通信装置によれば、通信対象の動揺に合わせて空間光信号の送信方向を変更することによって、自装置や通信対象が動揺する状況であっても、安定した通信を継続できる。
【0119】
(ハードウェア)
次に、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、図面を参照しながら説明する。ここでは、そのようなハードウェア構成の一例として、図28の情報処理装置90(コンピュータ)をあげる。図28の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0120】
図28のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図28においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0121】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、各実施形態の制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0122】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0123】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0124】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0125】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0126】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0127】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0128】
以上が、本開示の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。図28のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本開示の範囲を限定するものではない。各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも、本開示の範囲に含まれる。
【0129】
各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本開示の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0130】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。各実施形態の構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0131】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0132】
10、20 通信装置
11、21 送信器
13、23 受信器
15、25 検出器
17、27 通信制御部
111 光源
112 空間光変調器
113 曲面ミラー
131 ボールレンズ
133 受光素子
135 受信回路
141 計測値取得部
142 記憶部
143 追尾部
145 出力部
151 加速度センサ
153 角速度センサ
155 方位センサ
171 動揺分析部
172 条件記憶部
173 送信条件生成部
174 送信制御部
175 信号取得部
176 信号解析部
177 信号生成部
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