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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057788
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B23B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164685
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】内山 拓治
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 克宏
(72)【発明者】
【氏名】五味 健一
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC14
(57)【要約】
【課題】パラメータ設定に関わる作業負担を軽減する工作機械システムを提供する
【解決手段】棒材を加工する加工機2と、前記棒材の加工に合わせて前記加工機に前記棒材を送出する給材機4と、を備えた工作機械システム1であって、前記給材機は、設定されたパラメータに基づいて前記棒材の送出を行うものであり、前記給材機は、前記加工機から送信された情報に基づいて前記パラメータを更新可能なものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材を加工する加工機と、
前記棒材の加工に合わせて前記加工機に前記棒材を送出する給材機と、
を備えた工作機械システムであって、
前記給材機は、設定されたパラメータに基づいて前記棒材の送出を行うものであり、
前記給材機は、前記加工機から送信された情報に基づいて前記パラメータを更新可能なものである、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械システムであって、
前記加工機は、該加工機を操作するための操作部を有するものであり、
前記操作部を操作して前記給材機における前記パラメータを設定することが可能なものである、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工作機械システムであって、
前記加工機は、前記棒材の加工を行うための加工プログラムを実行可能なものであり、
前記加工プログラムの実行によって前記給材機における前記パラメータを設定することが可能なものである、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項4】
請求項3に記載の工作機械システムであって、
前記加工プログラムは、前記給材機に対して前記パラメータを設定すること指示するパラメータ設定コマンドを含むものであり、
前記パラメータ設定コマンドは、設定されるパラメータに関する情報を引数で指定するコマンドである、
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の工作機械システムであって、
前記加工機は、前記給材機の仕様毎に前記パラメータの情報を対応付けたテーブルと、を有するものであり、
前記加工機は、前記テーブルの情報を参照して前記パラメータを扱うことで、前記給材機の仕様に関わらず共通のインタフェースを提供するものである、
ことを特徴とする工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材を把持して回転可能な主軸を備えた工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械システムには、加工工具や主軸が設けられた加工装置と、加工装置に長尺状の棒材を供給する給材機とを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。加工装置の主軸は、把持解除可能に棒材を把持して回転する。主軸は、棒材を把持した状態および把持解除した状態の何れの状態においても棒材の軸心方向に移動可能に構成されている。また、主軸が土台である脚に固定された主軸固定型の加工装置もある。加工装置にはNC装置が組み込まれている。NC装置は、加工装置のオペレータなどが作成した加工プログラム(NCプログラム)や加工装置に設けられた操作パネルを用いた入力操作に従って、加工工具が取り付けられた刃物台や主軸などの動作を制御する。NC装置が加工プログラムに従って刃物台や主軸の動作を制御することで、棒材の先端部分が所望の形状に加工され、加工された加工済み部分が切り離される。多くの場合、加工工具による加工が開始されてから加工済み部分が切り離されるまで棒材は主軸によって把持されている。加工装置は、加工済み部分が切り離されたら棒材の掴みかえを行う。掴みかえでは、主軸による把持を解除して主軸が棒材の後端側に移動した後、主軸が棒材を再度把持する。加工工具による加工と棒材の掴みかえを複数サイクル繰り返すことで、サイクル数に応じた複数の製品が1本の棒材から製造される。なお、主軸の移動可能距離を超えた長さの製品を製造する場合、1サイクルの中に掴みかえ動作が含まれていることがある。
【0003】
給材機は、加工装置と並んで加工装置よりも棒材の後端側に設置される。給材機は、送り矢と、送り矢を棒材の軸心方向に移動させる送り矢駆動機構とを備えている。送り矢は、先端にフィンガーチャックを備えている。そのフィンガーチャックが棒材の後端部分を掴むことで、送り矢は棒材と連結される。そして、送り矢駆動機構によって送り矢が棒材の先端側に向かって送り出されることで給材機に投入された棒材が加工装置に供給される。送り矢は、加工装置が加工を行っているときには所定の荷重で棒材の後端側から棒材の先端側に向かって棒材を付勢している。この荷重は、主軸が棒材を把持しているときに棒材と主軸の間に滑りが生じない比較的弱い荷重に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-313267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、加工機と給材機を備えた工作機械システムでは、それぞれの装置において加工時のパラメータを設定していたが、オペレータは複数の装置に対して別々に設定を行う必要があり、作業負担が大きかった。また、こうした作業設定作業を失念したり、適切でないパラメータが設定されることで、製品加工時に不具合が生じる問題があった。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、パラメータ設定に関わる作業負担を軽減する工作機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の工作機械システムは、
棒材を加工する加工機と、
前記棒材の加工に合わせて前記加工機に前記棒材を送出する給材機と、
を備えた工作機械システムであって、
前記給材機は、設定されたパラメータに基づいて前記棒材の送出を行うものであり、
前記給材機は、前記加工機から送信された情報に基づいて前記パラメータを更新可能なものである、
ことを特徴とする。
【0008】
この工作機械システムによれば、加工機側で給材機のパラメータが設定できるため、作業負担を軽減することができる。
【0009】
ここで、上記工作機械システムにおいて、
前記加工機は、該加工機を操作するための操作部を有するものであり、
前記操作部を操作して前記給材機における前記パラメータを設定することが可能なものであってもよい。
【0010】
この工作機械システムによれば、パラメータ設定の際の操作系統を一本化でき、作業負担を軽減することができる。
【0011】
また、上記工作機械システムにおいて、
前記加工機は、前記棒材の加工を行うための加工プログラムを実行可能なものであり、
前記加工プログラムの実行によって前記給材機における前記パラメータを設定することが可能なものであってもよい。
【0012】
この工作機械システムによれば、パラメータを設定する加工プログラムを実行することで、パラメータの設定し忘れや設定ミスを回避できるため、作業負担を軽減することができる。
【0013】
また、上記工作機械システムにおいて、
前記加工プログラムは、前記給材機に対して前記パラメータを設定すること指示するパラメータ設定コマンドを含むものであり、
前記パラメータ設定コマンドは、設定されるパラメータに関する情報を引数で指定するコマンドであってもよい。
【0014】
この工作機械システムによれば、パラメータを引数で指定できるため、作業負担を軽減することができる。
【0015】
また、上記工作機械システムにおいて、
前記加工機は、前記給材機の仕様毎に前記パラメータの情報を対応付けたテーブルと、を有するものであり、
前記加工機は、前記テーブルの情報を参照して前記パラメータを扱うことで、前記給材機の仕様に関わらず共通のインタフェースを提供するものであってもよい。
【0016】
この工作機械システムによれば、共通のインタフェースを用いることで作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パラメータ設定に関わる作業負担を軽減する工作機械システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態にかかる旋盤システムの正面図である。
図2図1に示した旋盤システムの内部構成を簡易的に示す平面図である。
図3図1に示した旋盤システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】パラメータ設定コマンドが挿入されている加工プログラムの一例を示す図である。
図5】加工プログラムを実行した場合における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】旋盤表示画面242の操作画面の一例を示す図である。
図7】ユーザインタフェース経由でパラメータ設定コマンドを実行した場合における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】旋盤表示画面242の操作画面の一例を示す図である。
図9】旋盤表示画面242の操作画面の一例を示す図である。
図10】旋盤表示画面242の操作画面の一例を示す図である。
図11】機種に対応したテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[工作機械システム概要]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、本発明をNC旋盤と給材機とを備えた旋盤システムに適用した例を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態にかかる旋盤システムの正面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の旋盤システム1は、加工装置であるNC旋盤2と、材料供給装置である給材機4とを備えている。この旋盤システム1が、工作機械システムの一例に相当する。本実施形態のNC旋盤2は、いわゆるスイス型旋盤であり、加工機の一例に相当する。NC旋盤2は、切削室22と、主軸室23と、旋盤操作パネル24とを備えている。切削室22は、棒材W(図2参照)の先端部分を加工する空間が形成された部屋であり、正面側から見てNC旋盤2の右側に配置されている。主軸室23は、主軸25(図2参照)が配置された部屋であり、正面側から見てNC旋盤2の左側に配置されている。
【0022】
旋盤操作パネル24は、旋盤操作部241と旋盤表示画面242とを有している。旋盤操作部241は、旋盤システム1のオペレータによる入力操作を受け付ける複数のボタンやキー等からなる。なお、旋盤操作部241は、旋盤表示画面242と一体化されたタッチパネルであってもよい。旋盤システム1のオペレータは、旋盤操作部241や外部コンピュータを用いて作成した加工プログラムを後述する記憶部203(図3参照)に記憶させることができる。また、旋盤システム1のオペレータは、旋盤操作部241を用いて加工プログラムの修正を行い、修正した加工プログラムを記憶部203に記憶させることもできる。さらに、旋盤システム1のオペレータは、旋盤操作部241を用いて旋盤システム1の各構成要素を個別または連携して動作させることもできる。旋盤表示画面242は、記憶部203に記憶された加工プログラム、旋盤システム1の各種パラメータおよびエラー内容などの旋盤システム1に関する各種情報を表示するディスプレイである。
【0023】
給材機4は、NC旋盤2に長尺な棒材W(図2参照)を供給する。給材機4は、NC旋盤2と並んで設置される。給材機4には、複数の棒材Wが格納されている。給材機4は、格納された棒材Wのうちの1本をNC旋盤2に向かって送り出す。また、給材機4は、加工によって短くなった棒材Wである残材をNC旋盤2から引き抜いて排出する。残材を排出した後、給材機4は、格納された棒材Wからあらたに1本をNC旋盤2に向かって送り出す。給材機4には、給材機4を操作するための入力装置である給材機操作パネル42が設けられている。
【0024】
図2は、図1に示した旋盤システムの内部構成を簡易的に示す平面図である。
【0025】
図2に示すように、NC旋盤2は、主軸25と、ガイドブッシュ26と、第1刃物台27と、背面主軸28と、第2刃物台29とを備えている。主軸25、ガイドブッシュ26、第1刃物台27、背面主軸28および第2刃物台29は、土台である脚の上に配置されている。主軸25、第1刃物台27、背面主軸28および第2刃物台29は、加工プログラムや旋盤操作パネル24(図1参照)からの入力に従って動作する。
【0026】
主軸25は、Z1軸方向に移動可能である。なお、主軸25は、主軸台によって主軸台とともにZ1軸方向に移動するが、主軸台は図示省略し説明も省略する。Z1軸方向は、水平方向であり、図2においては左右方向である。このZ1軸方向は、棒材Wの軸心方向に相当する。主軸25は、その内部を貫通している棒材Wを把持解除可能に把持するためのコレットチャック251を先端部分に有している。主軸25は、棒材Wを把持して主軸中心線CLを中心として回転可能である。主軸中心線CLの方向はZ1軸方向と一致している。以下、主軸25が棒材Wの後端側に移動することを後退と称することがある。
【0027】
ガイドブッシュ26は、土台である脚に固定されている。ガイドブッシュ26の、主軸25が配置された側とは反対側の端面は、切削室22(図1参照)内に露出している。ガイドブッシュ26は、主軸25の内部を貫通した棒材Wの先端側部分をZ1軸方向へ摺動自在に支持する。このガイドブッシュ26の、棒材Wを支持している部分は、主軸25と同期して主軸中心線CLを中心にして回転可能である。ガイドブッシュ26から切削室22内に突出した棒材Wの先端部分が第1刃物台27に取り付けられた第1工具T1によって加工される。ガイドブッシュ26により、加工時の棒材Wの撓みが抑制されるので、特に細長い棒材WをNC旋盤2によって高精度に加工できる。
【0028】
第1刃物台27は、Z1軸方向と直交しかつ水平方向を向いたX1軸方向と、垂直方向を向いたY1軸方向に移動可能である。図2では、上下方向がX1軸方向であり、紙面に直交する方向がY1軸方向である。第1刃物台27には、切削加工用工具、突切加工用工具などを含む複数種類の第1工具T1がY1軸方向に並んで櫛歯状に取り付けられている。また、第1工具T1として、エンドミルやドリルなどの回転工具を第1刃物台27に取り付けることもできる。第1刃物台27がY1軸方向に移動することで、これらの複数種類の第1工具T1から任意の第1工具T1が選択される。そして、第1刃物台27がX1軸方向に移動することで、選択されている第1工具T1が主軸25に把持されガイドブッシュ26に支持された棒材Wの先端部分に切り込んで加工したり、棒材Wの加工済み部分を切り離したりする。
【0029】
背面主軸28は、X2軸方向およびZ2軸方向に移動可能である。なお、背面主軸28は、背面主軸台によって背面主軸台とともにX2軸方向およびZ2軸方向に移動するが、背面主軸台は図示省略し説明も省略する。X2軸方向は上述したX1軸方向と同一の方向であり、Z2軸方向は上述したZ1軸方向と同一の方向である。また、Z2軸方向は、背面主軸28の軸線方向に相当する。図2には、背面主軸28が、ガイドブッシュ26を挟んで主軸25に対向した位置にある様子が示されている。この位置では背面主軸28の回転中心である背面主軸中心線は、主軸中心線CLと同一線上に配置されている。背面主軸中心線の方向はZ2軸方向と一致している。背面主軸28には、主軸25を用いた加工が完了した棒材Wの加工済み部分が、突切加工用の第1工具T1によって切り離されて受け渡される。以下、切り離された加工済み部分を切断済み部分と称する。背面主軸28は、主軸25から受け渡された切断済み部分を把持解除可能に把持する。また、背面主軸28は、X2軸方向およびZ2軸方向に移動することで把持した切断済み部分を移送する。
【0030】
第2刃物台29は、Y2軸方向へ移動可能である。Y2軸方向は上述したY1軸方向と同一の方向である。第2刃物台29には、切断済み部分を加工するドリルやエンドミル等の第2工具T2が取り付けられている。なお、第2工具T2は、Y2軸方向に並んで第2刃物台29に複数取り付けられている。第2刃物台29のY2軸方向の移動によって、これらの複数の第2工具T2から任意の第2工具T2が選択される。そして、背面主軸28がX2軸方向やZ2軸方向に移動することで、背面主軸28に把持された切断済み部分の切断端側が加工される。この切断端側の加工が完了した切断済み部分が旋盤システム1によって製造された製品になる。なお、背面主軸28を用いた加工を行わない場合もある。その場合、切断済み部分がそのまま製品になる。第2刃物台29には、製品を受け入れる製品受入口291と不図示のシューターとが設けられている。シューターは、第2刃物台29内に設けられている。背面主軸28は、製品を製品受入口291に挿入した後、把持を解除して背面主軸28に設けられたシリンダーによって押し出すことでシューターに製品を投下する。投下された製品は、不図示のコンベアによって所定位置まで移送されて旋盤システム1の外部に設けられた製品貯留部に排出される。
【0031】
切削室22(図1参照)の下端には、主軸25や背面主軸28を用いた加工によって生じた切り屑や不良品を受け入れる切り屑受入部221が設けられている。主軸25を用いた加工が完了した棒材Wの加工済み部分は、主軸25に対向した位置で主軸25と同期回転した背面主軸28と主軸25とがそれぞれ棒材Wを把持した状態で突切加工用の第1工具T1が加工済み部分を切り離すことで背面主軸28に受け渡される。一方、背面主軸28が加工済み部分を把持していない状態で加工済み部分を切り離した場合、その加工済み部分は、落下することで切り屑受入部221に排出される。
【0032】
給材機4は、上述した給材機操作パネル42(図1参照)の他に、送り矢44と、送り矢駆動機構45と、送り矢モータ46と、先端センサ47と、原点センサ48とを有している。送り矢44は、不図示のガイドによってZ1軸方向に移動自在に案内されている。送り矢44の先端には、棒材Wの後端を把持するフィンガーチャック441が設けられている。このフィンガーチャック441は、送り矢44の他の部分に対して回転自在に取り付けられることで、主軸中心線CLを回転中心軸として回転自在になっている。フィンガーチャック441が棒材Wの後端を把持することで、送り矢44は棒材Wに連結される。すなわち、フィンガーチャック441が棒材Wを把持している間、送り矢44は棒材ととともにZ1軸方向に移動する。
【0033】
送り矢駆動機構45は、給材機4の先端側と後端側それぞれに設けられた不図示のプーリと、そのプーリに掛け渡された駆動ベルトによって構成されている。駆動ベルトには、連結部451が固定されている。この連結部451によって駆動ベルトと送り矢44の後端部分とが連結されている。給材機4の後端側に設けられたプーリは、送り矢モータ46の出力軸に固定されている。
【0034】
送り矢モータ46の出力軸が一方向に回転すると、送り矢駆動機構45と連結部451によって送り矢44はZ1軸に沿ってNC旋盤2に向かって移動する。反対に、送り矢モータ46の出力軸が他方向に回転すると、送り矢駆動機構45と連結部451によって送り矢44はZ1軸に沿ってNC旋盤2から離間する方向に移動する。給材機4内に格納された複数の棒材Wのうち軸心が主軸中心線CLと一致した位置にある棒材Wがフィンガーチャック441によって把持される。そして、送り矢44が移動することで、フィンガーチャック441に把持された棒材Wは、棒材Wの軸心方向に移動する。すなわち、送り矢モータ46の出力軸が一方向に回転すると、棒材Wはその先端側に移動し、送り矢モータ46の出力軸が他方向に回転すると、棒材Wはその後端側に移動する。送り矢モータ46は、送り矢エンコーダ461を有している。送り矢エンコーダ461によって、送り矢モータ46の回転数や回転量が検出される。送り矢エンコーダ461の検出結果は、第2制御装置40(図3参照)に送信される。
【0035】
先端センサ47は、棒材Wの先端を検出する。また、原点センサ48は、送り矢44が原点に位置しているか否かを検出する。送り矢44の原点は、送り矢44の移動範囲のうち最も後端側に位置している。これらの先端センサ47と原点センサ48の検出結果は、それぞれ第2制御装置40(図3参照)に送信される。第2制御装置40は、先端センサ47の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果によって、加工前における棒材Wの先端位置がどの位置にあるかを把握する。また、第2制御装置40は、原点センサ48の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果によって、送り矢44の位置を把握する。
【0036】
図3は、図1に示した旋盤システムのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、この図3では、旋盤システム1のハードウェア構成のうち本発明との関連性の低いものは、これまで説明した構成要素を動作させるものであっても図示省略している。
【0037】
図3に示すように、NC旋盤2は、第1制御装置20と、上述した旋盤操作パネル24と、Z1軸モータ252と、主軸モータ253と、主軸アクチュエータ254と、X2軸モータ281と、Z2軸モータ282とを有している。第1制御装置20は、いわゆるNC(Numerical Control)装置であり、CPU201と、PLC(Programmable Logic Controller)202と記憶部203とを有している。この第1制御装置20が、制御装置の一例に相当する。第1制御装置20は、CPU201による演算機能を有するコンピュータである。第1制御装置20は、記憶部203に記憶されている加工プログラムや旋盤操作パネル24からの入力に従って図2に示した主軸25、第1刃物台27、背面主軸28および第2刃物台29等の各構成要素の動作を制御する。図3には、それらの構成要素を駆動するモータやアクチュエータのうちの一部が示されている。第1制御装置20は、主にNC旋盤2に設けられたサーボモータに対して数値制御を行う。また、第1制御装置20が有しているPLC202は、主にNC旋盤2に設けられたシリンダーやバルブ等のサーボモータ以外の機器の動作をシーケンス制御する。記憶部203は、ROM、HDDおよびSSD等の不揮発性メモリとRAM等の揮発性メモリとから構成されている。
【0038】
Z1軸モータ252は、第1制御装置20からの指令を受けて回転するサーボモータである。Z1軸モータ252が回転することで主軸25(図2参照)はZ1軸方向に移動する。なお、第1制御装置20とZ1軸モータ252の間には不図示のアンプが設けられており、第1制御装置20がアンプに指令を送信することでZ1軸モータ252が制御されている。以下、アンプについては説明を省略する。Z1軸モータ252は、Z1軸エンコーダ2521を有している。Z1軸エンコーダ2521の出力が第1制御装置20にフィードバックされることで、第1制御装置20は、主軸25(図2参照)のZ1軸における位置を常時把握している。
【0039】
主軸25(図2参照)には、ビルトインモータ等の主軸モータ253が設けられている。主軸モータ253は、第1制御装置20から指令を受けて回転する。主軸モータ253が回転することで、主軸25および主軸25に把持された棒材W(図2参照)は、主軸中心線CL(図2参照)を中心にして回転する。なお、主軸25と同様に、背面主軸28にも背面主軸モータが設けられているが説明は省略する。主軸アクチュエータ254は、コレットチャック251(図2参照)を動作させるための油圧シリンダー等のアクチュエータである。主軸アクチュエータ254によって不図示のチャックスリーブが先端側に移動することで、コレットチャック251が閉じて棒材Wが主軸25によって把持される。また、チャックスリーブが後端方に移動することで、コレットチャック251が開いて主軸25による棒材Wの把持が解除される。
【0040】
X2軸モータ281は、第1制御装置20からの指令を受けて回転するサーボモータである。X2軸モータ281が回転することで背面主軸28(図2参照)はX2軸方向に移動する。同様に、Z2軸モータ282は、第1制御装置20からの指令を受けて回転するサーボモータである。Z2軸モータ282が回転することで背面主軸28はZ2軸方向に移動する。なお、X2軸モータ281およびZ2軸モータ282にも不図示のエンコーダが設けられている。
【0041】
給材機4は、上述した給材機操作パネル42、送り矢モータ46、先端センサ47および原点センサ48の他に第2制御装置40を有している。
【0042】
第2制御装置40は、給材機4の各構成要素についてシーケンス制御を行う制御装置である。第2制御装置40は、各センサや送り矢エンコーダ461等から受信した情報に基づいて送り矢モータ46や給材機4に設けられた不図示のアクチュエータの動作を制御する。また、第2制御装置40は、第1制御装置20からの動作要求に応じて給材機4の動作を制御する。第2制御装置40は、制御に必要な情報を保存しておくための記憶部203を有している。この記憶部203は、ROM、HDDおよびSSD等の不揮発性メモリとRAM等の揮発性メモリとから構成されている。
【0043】
送り矢モータ46は、第2制御装置40からの指令を受けて回転するサーボモータである。送り矢モータ46が回転することで送り矢44(図2参照)はZ1軸方向に移動する。上述したように、第2制御装置40は、送り矢44の原点からの移動距離を原点センサ48の検出結果と送り矢エンコーダ461の検出結果によって把握することで、送り矢44のZ1軸方向における位置を常時把握し、給材機4に関する情報として第1制御装置20に送信している。また、第2制御装置40は、新しく供給する棒材Wの先端や電源投入後最初にNC旋盤2に送り出した棒材Wの先端のZ1軸方向における位置を第1制御装置20に送信する。NC旋盤2が加工を開始した後、残材の引き抜き開始までは、第2制御装置40によって送り矢モータ46は基本的に一定のトルクで一方向に回転しようとするように制御される。これにより、棒材Wは、設定された荷重で棒材Wの先端側に向かって送り矢44によって付勢される。この荷重は、主軸25が棒材Wを把持しているときに棒材Wと主軸25との間に滑りが生じる虞が無い比較的弱い荷重に設定される。
【0044】
給材機操作パネル42は、操作部と表示画面とが一体になったタッチパネルである。なお、給材機4には、給材機操作パネル42の他に非常停止ボタンや送り矢モータ46のトルク設定スイッチ等が設けられている。旋盤システム1のオペレータは、給材機操作パネル42を用いて送り矢44(図2参照)をZ1軸方向に手動で移動させたり、給材機4の各種パラメータを入力することができる。また、給材機操作パネル42には、給材機4の各種パラメータおよびエラー内容などの給材機4に関する各種情報並びに給材機4の操作ボタンが表示される。
【0045】
第1制御装置20と第2制御装置40とは信号ケーブルで接続されている。第1制御装置20は、信号ケーブルを介して第2制御装置40に動作要求などを送信する。また、第2制御装置40は、信号ケーブルを介して第1制御装置20に送り矢44の位置情報を含む給材機4に関する各種情報を随時送信する。なお、第1制御装置20と第2制御装置40の間で情報を送受信する構成については、本実施形態のように有線で接続された構成であってもよいし、無線で接続された構成であってもよく、その構成が限定されるものではない。また、例えばインターネットを経由する構成であってもよく、その際にサーバ等の他の装置を経由する構成であってもよい。
【0046】
[NC旋盤側からの給材機の制御]
NC旋盤2で加工プログラムを実行して製品を加工する場合、製品や材料、加工時のトルク等についてのパラメータを事前に給材機4に設定する必要がある。給材機4では、操作パネル42を用いてこうした各種パラメータを設定することができる。
【0047】
給材機4にパラメータが設定されている場合に、加工にあたって最低限必要な情報の送受信によって製品の加工を行うことができる。このような情報の一例として、第1制御装置20から第2制御装置40に送信される情報としては、加工プログラムの終了、材料送りトルク停止命令、コレットチャック251の開閉、NC旋盤2の異常発生、といったものが挙げられる。また、第2制御装置40から第1制御装置20に送信される情報としては、材欠(使用中の材料を使い切った)、材料送出完了、全材料終了、準備完了、給材機4の異常発生、といったものが挙げられる。
【0048】
ここで例えば、製造対象の製品の変更や加工対象の棒材の種類の変更があった際に、給材機4に新たなパラメータを設定することを忘れてしまい、そのまま加工プログラムを実行してしまう、といった設定し忘れによる問題が生じる可能性がある。
【0049】
本実施形態では、外部から給材機4の操作や各種パラメータの設定を行うためのパラメータ設定コマンド(Gコード、Mコード)が用意されている。このパラメータ設定コマンドがNC旋盤2(第1制御装置20)において読み込まれると、このコマンドの引数として指定した値(設定するパラメータ値)およびパラメータを書き換える指示を出す信号が給材機4(第2制御装置40)に送信される。これにより、給材機操作パネル42を用いることなく、NC旋盤2側で給材機4のパラメータ設定や各種操作を行うことができる。
【0050】
このパラメータ設定コマンドを加工プログラム中に挿入しておくことで、加工プログラムの実行中に給材機4のパラメータを設定することができる。例えば、製品に対する適切なパラメータを先に設定する信号が送信されるようにした加工プログラムを提供することで、加工プログラムを実行する毎に給材機4のパラメータが設定されることになり、パラメータの設定し忘れが生じることがなく、またパラメータの再設定も不要になる。
【0051】
図4では、パラメータ設定コマンドが挿入されている加工プログラムの一例が示されている。このプログラム中の上から2行目にある「G***」で始まる行が、パラメータ設定コマンドである。この行における引数でパラメータの種類や値を指定することで、給材機4にパラメータを設定することができる。なお、この例ではパラメータ設定コマンドをGコードとして実装した例について説明したが、給材機4にパラメータを設定するためのコマンドの書式はこの内容に限定されるものではなく、例えばMコードで実装してもよい。
【0052】
図5は、給材機4にパラメータを設定するためのコマンドが挿入された加工プログラムを実行した場合における処理の流れの一例を示すフローチャートである。まずステップS11(NC旋盤2側の処理)では、加工プログラム内のパラメータ設定コマンドの引数に給材機4のパラメータを設定する。ここでの設定のタイミングや設定方法については特に限定されるものではない。例えば、加工プログラムのコーディング時に設定したものであってもよいし、加工プログラムの実行の前段階としてNC旋盤2のインタフェース経由で設定したものであってもよいし、予めNC旋盤2に入力されている各種の情報から最適なパラメータを導出して設定したものであってもよい。
【0053】
ステップS12(NC旋盤2側の処理)では、加工プログラムが実行されて給材機4側にパラメータ設定コマンドによるパラメータ情報が送信される。
【0054】
ステップS13(給材機4側の処理)では、NC旋盤2側から送信されたパラメータ情報を受信する。そして、ステップS14(給材機4側の処理)では、給材機4がパラメータを書き込み可能か否かが判定される。書き込み可能な場合はステップS15(給材機4側の処理)において受信したパラメータ情報に基づいてパラメータが書き込まれ、続くステップS16(NC旋盤2側の処理)で、加工プログラムに基づいて各機構に対する加工指令が開始される。一方、書き込みが不可能な場合はステップS17(給材機4側の処理)においてNC旋盤2側に異常が発生したことを示す情報が送信され、続くステップS18(NC旋盤2側の処理)で、受信した情報に基づいて異常を報知する処理(アラーム音の出力、異常内容の表示等)が実行される。
【0055】
上記説明した図4のプログラムや、図5のフローチャートに示すように、本実施形態ではNC旋盤2側で給材機4のパラメータを設定することができる。給材機4の操作パネル42を用いてパラメータを設定する場合、設定されるパラメータの値が適切でないと不具合の原因となる場合がある。また、経験があまりないオペレータの場合、パラメータが適切か否かを判断できず、安全を重視するあまり機能が十分に発揮できないようなパラメータを設定する可能性がある。上記のような加工プログラムを用いた場合、こうした問題の発生を防止することができる。
【0056】
なお、パラメータ設定コマンドを実行する際に、指定がないパラメータについては安全を考慮した初期値が送信されるようにしてもよい。また、加工プログラムによる作業内容(例えば、加工開始位置、材料径)を参照してパラメータの候補値を導出する処理を別途用意し、この処理によって得られた候補値をパラメータとして設定するようにしてもよい。
【0057】
また、ある共通の動作や機能を実行させるにあたり、給材機4の機種によって設定が必要なパラメータの種類、パラメータの形式、パラメータの数が異なる場合がある。このため、動作や機能に対応するパラメータの情報を定めたテーブルを作成してこれをNC旋盤2の記憶部203に保存しておき、加工プログラムの実行の際に指定されたテーブルを参照して、これに従ってパラメータ設定コマンドを実行するようにしてもよい。この場合、機種毎に加工プログラムを用意しなくとも、テーブルを変更することで機種の異なる給材機4に対応することができる。
【0058】
[NC旋盤側ユーザインタフェースを用いた給材機の制御例(1)]
上記[NC旋盤側からの給材機の制御]では、第1制御装置20においてパラメータ設定コマンドを実行することで、給材機操作パネル42を用いることなく、NC旋盤2側で給材機4のパラメータ設定や各種操作を行うことができることについて説明した。
【0059】
以下では、NC旋盤2側のユーザインタフェースを用いた動作例について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、ユーザインタフェースでの各操作に対応するパラメータ設定コマンドが適宜実行されるものとする。
【0060】
図6は、旋盤表示画面242の操作画面の一例を示す図である。旋盤表示画面242には、画面内下部に各種操作のためのメニューボタンMBが配置されている。このメニューボタンには、左側に設けられた左メニューボタンMBLと、右側に設けられた右メニューボタンMBRがある。これらのメニューボタンMBは、旋盤操作部241のうち、旋盤表示画面242の画面外下に並べられたボタンに対応しており、対応するボタンを操作することでメニューボタンMBに表示された各種操作を実行することができる。このメニューボタンMBは、状況に応じた各種操作が表示され、実行頻度の高い操作を容易に実行できるように構成されている。以降の例では、給材機画面において表示されたメニューボタンMBを用いた動作について説明する。
【0061】
図6は、左メニューボタンMBLから「給材機設定」に対応するボタンが操作された場合が示されている。この画面では、左列に切削工具の番号「T0100」およびその座標等のパラメータが表示されており、右列には給材機4に関するパラメータの一部が表示されている。この給材機4に関するパラメータのうち一つを選択し、値を入力した後「設定」に対応するボタンを操作することで、該当するパラメータを更新することができる。
【0062】
図7は、ユーザインタフェース経由でパラメータを設定するためのコマンドを実行した場合における処理の流れの一例を示すフローチャートである。まずステップS21(NC旋盤2側の処理)では、インタフェース上で給材機4のパラメータを入力する。続いてステップS22(NC旋盤2側の処理)において、入力されたパラメータが一時記憶された後、給材機4側にパラメータ設定コマンドによるパラメータ情報が送信される。
【0063】
ステップS23(給材機4側の処理)では、NC旋盤2側から送信されたパラメータ情報を受信する。そして、ステップS24(給材機4側の処理)では、給材機4がパラメータを書き込み可能か否かが判定される。書き込み可能な場合はステップS25(給材機4側の処理)において受信したパラメータ情報に基づいてパラメータが書き込まれる。一方、書き込みが不可能な場合はステップS26(給材機4側の処理)においてNC旋盤2側に異常が発生したことを示す情報が送信される。上記説明した図7のフローチャートに示すように、本実施形態ではNC旋盤2側のユーザインタフェース経由で給材機4のパラメータを設定することができる。
【0064】
また、左メニューボタンMBLから「給材機設定」に対応するボタンを操作した後、さらに右メニューボタンMBRから「入出力」に対応するボタンを操作することで、記憶部203に現在のパラメータを出力したり、記憶部203に保存されているパラメータを入力して更新したりすることもできる。この構成により、給材機4の各種パラメータをデータベース化しておき、これを用いてパラメータを入力することで設定を容易かつ確実に行うことができる。
【0065】
[NC旋盤側ユーザインタフェースを用いた給材機の制御例(2)]
図8は、右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンが操作された場合が示されている。この画面では、図6と同様に左列に切削工具等のパラメータが表示されており、右列には給材機4の送り矢44に関するパラメータの一部が表示されている。この送り矢44に関するパラメータのうち一つを選択し、値を入力した後「設定」に対応するボタンを操作することで、該当するパラメータを更新することができる。
【0066】
また、右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンを操作した後のパラメータの値を入力可能な状態では、並行して給材機4の送り矢44の位置を変更する操作を行い、この位置情報から値を更新することもできる。例えば、パラメータを選択した状態で、右メニューボタンMBRから「給材機送り矢」に対応するボタンを操作することで、給材機4の送り矢44の位置を変更することができる。この状態で送り矢44を所望の位置に移動させた後、再び右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンを操作することで、該当するパラメータが現在の送り矢44の位置に更新される。
【0067】
また、右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンを操作した後、さらに「入出力」に対応するボタンを操作することで、記憶部203に現在のパラメータを出力したり、記憶部203に保存されているパラメータを入力して更新したりすることもできる。この構成により、給材機4の各部の寸法に応じて各種パラメータをデータベース化しておき、これを用いてパラメータを入力することで設定を容易かつ確実に行うことができる。
【0068】
[オフセット量を用いた給材機4のパラメータ設定]
ここで、複数の旋盤システム1を用いて同じ製品を加工する場合を考える。このような場合、一つの旋盤システム1において給材機4にパラメータを設定するプログラムを、他の旋盤システム1にも流用することが考えられる。しかしながら、NC旋盤2と給材機4の位置関係については、全ての旋盤システム1で完全に一致させることは困難である。このような状況では、一つの旋盤システム1におけるプログラムを他の旋盤システム1に流用しても、設定されたパラメータが不適切になる可能性がある。
【0069】
上記のような問題に対して、例えば一つの旋盤システム1におけるNC旋盤2に対する給材機4の位置を基準位置として定めるとともに、他の旋盤システム1では、NC旋盤2に対する給材機4の位置の情報を、この基準位置およびそこからの差(オフセット量)の情報として保持するようにしてもよい。そして、給材機4の位置関係のパラメータを設定する際には、これらの情報から導出された各旋盤システム1にとって適切な位置関係の値を設定する(例えば、パラメータ設定コマンドの引数を「基準位置」および「オフセット量」に基づいて決定する)ようにしてもよい。図8の例では、この「基準位置」および「オフセット量(基準位置との差に対応するパラメータ)」の項目が設けられていることが示されている。以下、「基準位置」と「オフセット量」の設定方法の一例について説明する。
【0070】
まず、「基準位置」の設定方法について説明する。最初に、左メニューボタンMBLから「給材機制御」に対応するボタンを操作し、さらに右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンが操作する。そして、給材機4に関するパラメータから「基準位置」を選択し、続いて右メニューボタンMBRから「給材機送り矢」に対応するボタンを操作する。この状態で送り矢44を所望の位置に移動させた後、再び右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンを操作することで、「基準位置」の値が現在の送り矢44の位置に応じた値に更新される。
【0071】
続いて、「オフセット量」の設定方法について説明する。この設定は、上記の流れで設定された「基準位置」のパラメータが既に入力済みの状態で行う。最初に、左メニューボタンMBLから「給材機制御」に対応するボタンを操作し、さらに右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンが操作する。そして、給材機4に関するパラメータから「オフセット量」を選択し、続いて右メニューボタンMBRから「給材機送り矢」に対応するボタンを操作する。この状態で送り矢44を所望の位置に移動させた後、再び右メニューボタンMBRから「P設定」に対応するボタンを操作することで、「オフセット量」の値が現在の送り矢44の位置に応じた値に更新される。
【0072】
[NC旋盤側ユーザインタフェースを用いた給材機の制御例(3)]
図9は、左メニューボタンMBLから「給材機制御」に対応するボタンが操作された場合が示されている。この画面では、図6と同様に左列に切削工具等のパラメータが表示されており、右列には給材機4の各機構の状態が表示されている。この状態では、右メニューボタンMBRから「Z1軸」に対応するボタンを操作することで、主軸25を操作対象に設定することができる。また、右メニューボタンMBRから「給材機送り矢」に対応するボタンを操作することで、送り矢44を操作対象に設定することができる。操作対象に設定された機構に対しては、旋盤操作部241(ハンドルやジョグキー等)を操作することで移動させることができる。さらに、表示されている各機構のうち一つを選択して状態を変更することで、該当する機構の状態を手動で操作することができる。以上の各項目を組み合わせることで、NC旋盤2側から給材機4を手動で操作することができる。
【0073】
[NC旋盤側ユーザインタフェースを用いた給材機の制御例(4)]
図10は、左メニューボタンMBLから「給材機ステータス」に対応するボタンが操作された場合が示されている。この画面では、左列に給材機4のパラメータと、このパラメータから導出される情報が表示されており、右列には給材機4に設けられた各種センサからの信号の状態が表示されている。また、メニューボタンMBのすぐ上には、各種アラームの状態を表示するアラーム表示領域が設けられている。このアラーム表示領域には、発生しているアラームの番号およびその内容が表示される。
【0074】
上記画面の左列に表示されている「送り矢トルク」「送り矢位置」の表示は、給材機4から送信された情報に基づくものである。また、「残材長」「材欠までの製品個数」「必要材料数」は、給材機4から送信された情報だけでなく、別途入力されている他の情報を踏まえて導出された値である。例えば、「残材長」は、送り矢の現在位置から材欠位置までの長さであり、これらの位置情報から導出される。また、「材欠までの製品個数」は、「残材長」を、製品一つ当たりの加工に必要な長さで除算することで導出可能である。また、「必要材料数」は、製造予定数から製造済みの製品数を引いた数(残り製造予定数)を、材料一本について製造可能な個数(送り矢の初期位置から材欠位置までの長さを、製品一つ当たりの加工に必要な長さで除算)で除算することで導出可能である。なお、これらの各値については、NC旋盤2側で導出する構成であってもよいし、給材機4側で導出する構成であてもよい。
【0075】
[給材機の機種の違いに対応した共通インタフェース]
給材機は、センサの数や位置など、その仕様は機種によって様々であり、機種の異なる給材機の間で扱われる情報は同一ではない。例えば図6図10で説明したようなインタフェースを給材機の仕様に合わせて個別に作成する場合、その機種の数に応じて作業負担が増大してしまう。
【0076】
しかしながら、給材機の基本的な機能は同じであり、ある程度の情報は概ね共通している。そこで、給材機の基本的な機能に関するパラメータのような概ね共通して用いられるであろう情報を表示、制御する共通インタフェースを用意しておき、この共通インタフェース上で表示あるいは制御される情報について、機種に対応したテーブルを参照して該当する情報を割り当てるようにしてもよい。
【0077】
図11は、機種に対応したテーブルの一例を示す図である。このテーブルでは、共通インタフェース上で扱う給材機4のパラメータが記憶されている記憶部403のアドレスと、そのパラメータを扱う上で参照される情報が対応付けられている。例えば、アドレスR2000のパラメータを扱う場合、給材機4がA社給材機であればそのデータサイズを2バイトで扱い、パラメータ設定コマンドの引数ではAを指定し、その表記は「材欠位置」が用いられる。一方給材機4がB社給材機であればそのデータサイズを4バイトで扱い、パラメータ設定コマンドの引数ではAを指定し、その表記は「材欠位置」が用いられる。また、アドレスR2010のパラメータを扱う場合、給材機4がA社給材機であればそのデータサイズを2バイトで扱い、その表記は「ワーク長」が用いられる。一方給材機4がB社給材機であればそのデータサイズを4バイトで扱い、その表記は「材料長」が用いられる。
【0078】
このようなテーブルを参照することで、給材機4の仕様に合わせてパラメータを適切に扱うことができ、給材機の機種が異なっても共通インタフェースを用いて作業を行うことができる。また、機種が追加された場合には対応するテーブルを作成すればよく、作業負担を軽減することができる。
【0079】
[その他]
以上説明した実施形態は本発明の一例であって、この実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では主軸移動型旋盤について記載したが、主軸固定型旋盤であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 旋盤システム
2 NC旋盤
4 給材機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11