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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057794
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】食品スライサにおける搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20240418BHJP
   A22C 25/20 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B26D3/28 610Q
A22C25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164696
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
(72)【発明者】
【氏名】小久保 拓実
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011KA01
4B011KC06
4B011KC12
4B011KD01
4B011KE15
(57)【要約】
【課題】鮮魚の柵のような食品用のスライス対象物をスライスする際の搬送工程と、スライスしたスライス片を整列させる際の搬送工程とを効率的に自動化する。
【解決手段】食品用のスライス対象物である柵Aを搬送しながらスライス部1でスライスに供するためのスライスレーン21と、スライス部1でスライスされた切身aを整列させる整列レーン23と、各レーン21、23の駆動を制御する制御手段24とを備えて、食品スライサにおける搬送装置2を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用のスライス対象物を搬送しながらスライス部でスライスに供するためのスライスレーンと、前記スライス部でスライスされたスライス片を整列させる整列レーンと、前記各レーンの駆動を制御する制御手段とを具備することを特徴とする、食品スライサにおける搬送装置。
【請求項2】
前記スライスレーンと前記整列レーンを直結している、請求項1に記載の食品スライサにおける搬送装置。
【請求項3】
前記スライスレーンと前記整列レーンを、略フラットに配置している、請求項1に記載の食品スライサにおける搬送装置。
【請求項4】
前記スライスレーンと前記整列レーンを、高さを異ならせて2段構造にしている、請求項1に記載の食品スライサにおける搬送装置。
【請求項5】
前記スライスレーンと前記整列レーンの間を中継する中継レーンを更に備え、前記制御手段が前記中継レーンの制御も行う、請求項4に記載の食品スライサにおける搬送装置。
【請求項6】
前記スライスレーンにスライス対象物を乗せる搬送口と、前記整列レーンから整列されたスライス片を取り出す搬出口とが、ほぼ同じ位置にある、請求項1に記載の食品スライサにおける搬送装置。
【請求項7】
前記スライス対象物が生鮮魚の柵であり、そのスライス片が切身である、請求項1~5の何れかに記載の食品スライサにおける搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用のスライス対象物からスライス片をスライスする際の搬送工程、および、スライスしたスライス片を整列させる際の搬送工程を自動化した、食品スライサにおける搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水産加工業界では、魚体の鱗取りや三枚おろし、魚肉を刺身にスライスする工程の機械化が進められている。
【0003】
このうち、例えば特許文献1には、柵から切身を切り出すにあたり、被切断物である魚体が不整一である場合に、切身として所望の重量の複数部位に分割切断することを可能にする装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-18539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年においては国内外を問わず、寿司の需要が高まりつつある。しかしながら、寿司ネタの加工は人の手で行われており、機械化が進んでいない。特に寿司業界では、労働人口の減少や職人の不足から人手不足に陥っており、繁忙期ならずとも所望の加工量を生産することに苦慮している実情がある。寿司チェーン店も同様の人材確保に課題を持っている。
【0006】
寿司ネタの加工の自動化が進まない理由として、寿司ネタは単に冷凍魚のスライスや刺身のように切身の重量を揃えるだけでは足りず、シャリの上に載せた際にシャリを覆い隠すように撓ませる関係上、刺身とは違って切身の厚みに対して長手寸法や幅寸法が比較的大きい定貫サイズでスライスする必要がある点が挙げられる。
【0007】
このような事情から、スライスの機械化が望まれるが、仮にスライスの機械化ができたとしても、従来のこの種業界における加工機器は、例えば刺身用の切身の切り出しにおいても同様、加工できれば良いという考えで設定され、後工程が考慮されていない。このため、スライスした切身を整列させる工程等にも人手や人件費がかかっているという問題があった。
【0008】
このような事情は、水産加工工場等においても同様であり、人手不足を解消するためには、スライスだけの自動化では不十分である。
【0009】
本発明は、以上の課題に着目してなされたものであって、鮮魚の柵のような食品用のスライス対象物をスライスする際の搬送工程と、スライスしたスライス片を整列させる際の搬送工程とを効率的に自動化した、食品スライサにおけるスライス片の搬送装置を新たに実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明のスライス装置は、食品用のスライス対象物を搬送しながらスライス部でスライスに供するためのスライスレーンと、前記スライス部でスライスされたスライス片を整列させる整列レーンと、前記各レーンの駆動を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
このようにすると、スライス対象物をスライスする際の搬送工程とスライス後のスライス片を整列させる際の整列工程を自動化することができるので、各工程を人手に頼ることを不要にすることができる。
【0013】
スライスレーンと整列レーンを直結した場合には、レーン間に他のレーンを含まないため店舗等の限られたスペースに配置し易くなり、搬送効率を短縮することができる。
【0014】
スライスレーンと整列レーンを略フラットに配置した場合には、装置自体が搬送方向に長くなるので、スライス片の移送先が離れているような食品加工工場などに適用して有用となる。
【0015】
スライスレーンと整列レーンを高さを異ならせて2段構造にした場合には、装置自体が搬送方向に短くなるので、寿司店などの店舗に配置し易くなる。
【0016】
スライスレーンと整列レーンの間を中継する中継レーンを更に備え、制御手段が中継レーンの制御も行うようにした場合には、中継レーンがバッファーになるため、制御手段を通じたスライスレーン、中継レーン及び整列レーン間の速度調整やタイミング調整、位置調整がし易くなり、搬送装置の設計自由度が高くなる。さらに、中継レーンがあることで、規格外品・不良品処理にも対応し易いものになる。
【0017】
スライスレーンにスライス対象物を乗せる搬入口と、整列レーンから整列されたスライス片を取り出す搬出口とが、ほぼ同じ位置にあれば、作業者は移動せずに作業を行うことができる。
【0018】
そして、スライス対象物が生鮮魚の柵であり、そのスライス片が切身である場合には、生鮮魚を、柵の状態から切身の状態に整列させて寿司をにぎる場所や顧客の場所、加工工場における移送先等に有効に提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した本発明によれば、食品用のスライス対象物からスライス片をスライスする際の搬送工程と、スライスしたスライス片を整列させる際の搬送工程とを有効に自動化し、これに伴い人手や人件費の削減を可能にした、食品スライサにおける搬送装置を新たに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置を示す模式図。
図2】同搬送装置の制御手順を示すフローチャート図。
図3】同搬送装置の制御シーケンスを示すタイミングチャート図。
図4】本発明の変形例を示す図。
図5】本発明の他の変形例を示す図。
図6図5の判定部の判定手順を示すフローチャート図。
図7図5の判定結果に応じた制御シーケンスを示すタイミングチャート図。
図8】本発明の他の変形例を示す図。
図9】本発明の他の変形例を示す図。
図10】本発明の他の変形例を示す図。
図11】本発明の他の変形例を示す図。
図12】本発明の他の変形例を示す図。
図13】本発明の他の変形例を示す図。
図14】本発明の他の変形例を示す図。
図15】本発明の他の変形例を示す図。
図16】本発明の他の変形例を示す図。
図17】本発明の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
図1はこの実施形態に係る食品用スライサを示す模式図である。この食品用スライサは、寿司ネタ用の柵Aをスライス対象物とし、スライス部1の前後に搬送装置2を組み込んで構成されるもので、搬送装置2は柵Aをスライス部1に送り込んでスライスに供し、切り出されるスライス片である切身aをトレイT上に整列させて目的位置まで搬送するまでの搬送機能を備える。
【0023】
スライス対象物である柵Aには、生鮮魚の魚体より得られるものを用いる。この実施形態の柵Aは、例えば三枚おろしにしたサーモンをブロック状に加工したものである。勿論、スライス対象である柵Aとなる魚の種類は鮭に限定されず、柵を得る工程も三枚おろしに限定されない。
【0024】
搬送装置2は、柵Aを搬送面上に搬送させてスライス部1でスライスに供するためのスライスレーン21と、スライスしたスライス片である切身aを整列状態で収容するためにトレイTを載置して搬送する整列レーン23と、スライスレーン21におけるスライス部1の出口と整列レーン23上のトレイTとの間で切身aの搬送を中継する中継レーン22と、各レーン21~23の駆動を制御する制御手段24とを備える。
【0025】
スライスレーン21、中継レーン22、整列レーン23は、高さを異ならせて略平行に配置された3段構造をなすもので、水平方向の位置関係は高さ方向に略重合する位置とされ、順次高い方から低い方向に向かって切身aを搬送するように構成される。一部のレーン21、22間では搬送方向が折り返すように構成されている。
【0026】
スライス部1は、スライスレーン21の終端部に位置し、上下動作する刃物11を備える。このスライス部1も制御手段24によって制御される。制御手段24は、スライス部1を作動させる制御と、スライスレーン21を搬送する制御を行う。
【0027】
スライスレーン21は、無限軌道を構成するコンベア(ベルトコンベア)21aと、コンベア21aを駆動するモータ21bを備える。柵Aがスライス部1に供され、スライス部1が作動して切身aが切り出される毎に、コンベア21aは切身aの厚み相当分だけ間欠的に柵Aの送り動作を行い、次の切身aのスライスに備える。上述した制御手段24は、スライス部1の動作と関連づけて、スライスレーン21のコンベア21aによる搬送速度や搬送タイミングを制御する。スライスされた切身aは、スライスレーン21の終端部21a1から自由落下する。切身aが搬送面からリリースし易いように、搬送面は切身aが粘着し難い素材、表面状態とされている。
【0028】
中継レーン22は、スライスレーン21の高さ方向下段側に位置し、スライスレーン21で切り出されてレーン終端部21a1から落下する切身aを始端側で受ける。中継レーン22は、無限軌道を構成するコンベア(ベルトコンベア)22aと、コンベア22aを駆動するモータ22bを備える。上述した制御手段24は、コンベア22aによる搬送速度や搬送タイミングを制御する。中継レーン22の長さは、終端部22a1が高さ方向下段に位置する整列レーン23の適宜部位と重なる位置まで延在される。中継レーン22を搬送された切身aは、中継レーン2の終端部22a1から自由落下する。ここでも、切身aが搬送面からリリースし易いように、搬送面は切身aが粘着し難い素材、表面状態とされている。
【0029】
整列レーン23は、中継レーン22の高さ方向下段側に位置し、中継レーン22で中継されてレーン終端部22a1から落下する切身aを整列レーン23上のトレイTで受ける。整列レーン23は、無限軌道を構成するコンベア(ベルトコンベア)23aと、コンベア23aを駆動するモータ23bを備える。上述した制御手段24は、コンベア23aによる搬送速度や搬送タイミングを制御する。
【0030】
トレイTでは、次工程でシャリに切身aを載せてにぎるために、或いは刺身として顧客に提供するために、切身aを整列させる。目的・用途ごとに1トレイ内の収容数や切身aの間隔が異なる場合があり、その間隔に応じて所要ピッチでトレイTを少しずつずらすことで切身aの位置をずらし、寝かせた状態(切身a同士が接触せずにトレイT上に配置された状態)や重ねた状態(例えば、重ね盛りのような状態)で整列させる。
【0031】
制御手段24は、CPU、メモリ及びインターフェースからなるマイクロコンピュータユニットを含んで構成され、メモリには所要のプログラムや必要なデータが格納されている。CPUは逐次プログラムを読み込み、周辺ハードリソースと共働して、本実施形態における各種制御を実行する。
【0032】
図2は、制御手段24による制御手順を示すフローチャートである。
【0033】
スライスレーン21では、柵Aをコンベア21aに置いたことが検知または入力されると(ステップS1)、柵Aをコンベア21aで搬送し(ステップS2)、スライス部1に入った柵Aをスライスする(ステップS3)。スライス後は、再びステップS2に戻って柵Aを搬送する。このとき、切り終わった切身aもスライス部1の下流側に搬送される。そして、再びスライス部1でステップS3のスライスを実行する。以降、ステップS2~ステップS3を繰り返し、1柵をスライスし終えたら(ステップS4)、ステップS1に戻って再び柵Aの供給を受けた後、ステップS2~ステップS3を繰り返す。スライス部1で切り終わった切身aは以後の搬送で終端部21a1から落下する。切身aがスライス部1でスライスした直後に落下するか、m回目の搬送動作でスライスレーン21から落下するかは、スライス部1の下流に切身aをどの程度滞留させる構成となっているかによる。
【0034】
中継レーン22では、落下した切身aを受け取り(ステップS11)、切身aをコンベア21aで搬送する(ステップS12)という手順を繰り返す。この実施形態では中継レーン22上に切身がn個(例えば5~6個)並んで終端に徐々に向かうように中継レーン22の長さが設定されており、n番目の切身が、最後の搬送によって中継レーン22の終端部22a1から落下する。
【0035】
整列レーン23では、予め所定位置に空のトレイTを配置する動作が行われる(ステップS21)。そして、落下した切身aをトレイTに受け取り(ステップS22)、トレイTをコンベア23aで搬送する(ステップS23)という手順を繰り返す。トレイTに所定数の切身が充填されたら(ステップS24)このトレイTを整列レーン上の所定位置に搬送し、再びステップS21に戻って空のトレイTの配置が行われた後、ステップS22~ステップS23を繰り返す。
【0036】
図3は、制御シーケンスを示すタイミングチャート図である。
【0037】
スライスレーン21は、スライス終了の度に、所定時間t1のあいだモータ21bをON動作してコンベア21aを駆動する(図2におけるステップS2に相当)。駆動をOFFにする手前で切身aの落下がスタートする。
【0038】
中継レーン22は、2つの駆動パターンを有する。パターン1では、スライスレーン21のモータ21bをOFFにする前の切身落下スタート地点から落下時間taを待って、所定時間t2のあいだモータ22bをON動作して一定速度でコンベア22aを駆動する(図2におけるステップS11、S12に相当)。駆動をOFFにする手前で切身aの落下がスタートする。勿論、これには限定されないし、両レーン21、22の駆動速度は異なっていても良い。
【0039】
切身aがスライス部1でスライスした直後に中継レーン22に落下する場合、柵Aの状態や切身aのサイズに応じて柵Aの搬送タイミングを把握し、これに連動させて中継レーンを駆動させてもよい。
【0040】
そのため、柵Aの3次元形状、方向などの状態データを測定する自動計測部5を設けるとともに、切身aの寸法(長手寸法や幅寸法)Zに関する設定を受け付けるための設定部30を設け、制御手段24がこれら自動計測部5の測定値や設定部30の設定値を通じて制御データDを生成し、この制御データDに基づいて、コンベア21aで柵Aの搬送をスタートするタイミングや、中継レーン22の駆動をスタートするタイミングを制御してもよい。
【0041】
この場合、制御手段24は自動計測部5を通じて例えば画像認識用のカメラやレーザ、赤外線などを用いて柵Aの計測を行い、メモリに記憶する。また、制御手段24は設定部30で受け付けた入力値をメモリに記憶する。制御手段24では、これらの値から、柵Aから切り出された切身aが何回目の搬送動作でスライスレーン21から落下するかがわかるため、中継レーン22は落下のタイミングに連動させて駆動を開始することができる。
【0042】
この場合、スライスレーン21の切身aのスライス後から落下までにある一定の距離がある場合には、その距離を考慮して中継レーン22を駆動することができる。
【0043】
スライスレーン21と中継レーン22の駆動速度は、中継レーン22の方がスライスレーン21よりも速い方が、切身を搬送する効率を向上する点ではより望ましい。スライスレーン21の搬送速度は柵Aの搬送量に依存するが、中継レーン22の搬送速度は柵Aの搬送量に依存しないため、中継レーン22の長さや中継レーン22で搬送する切身の数量などを考慮して、スライスレーンの速度よりも速くした方が効率がよいためである。
【0044】
パターン2では、スライスレーン21での切身の落下前からモータ22bをON動作して一定速度でコンベア22aを駆動する。駆動時間はt2よりも長い。この場合も、駆動をOFFにする手前で切身aの落下がスタートする。中継レーン22が長い場合等にはこのパターン2が採用される。
【0045】
整列レーン23は、中継レーン22のモータ22bをOFFにする前の切身落下スタート地点から落下時間tbを待って、所定時間t3のあいだモータ23bをON動作して一定速度でコンベア23aを駆動する(図2におけるステップS23に相当)。各レーン21、22、23の駆動速度は適宜設定することができる。
【0046】
図2におけるステップS23の搬送は、図3のタイミングチャートでは2段階に分かれており、本来の動作であるt3のON動作の手前で予備動作である所要時間t3´のON動作が行われる。このON動作は、前回のステップS23のON動作の終了位置で次の切身の落下を受けるのではなく、トレイTの収容数が所望の数になり、このトレイTを移動しつつ次のトレイ(空のトレイ)Tを所定位置に搬送するために実行される目的・用途ごとに1トレイ内の収容数が異なる場合、切身間の距離が変わってくることに対応したものである。このON動作は、中継レーン23から切身aが落下する前までに実行されればよい。
【0047】
図2のステップS1で柵Aがコンベア21aに置かれたとき、スライスレーン21はステップS2~S3の本来の搬送に先立って、図3のON動作とは異なるON動作によって柵Aをスライスレーン21上のスライス部1に近い所定位置に搬送するON動作が行われてもよい。この動作は高速で行われてもよい。
【0048】
また、図2のステップS24でトレイTの充填が終わったとき、整列レーン23は図3のON動作とは異なるON動作によって次のトレイTを整列レーン上の所定位置に搬送するON動作が行われてもよい。この動作は高速で行われてもよい。
【0049】
トレイTは、本発明の基本的な作用効果が得られる範囲において必須ではない。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る食品スライサにおける搬送装置2は、食品用のスライス対象物である柵Aを搬送しながらスライス部1でスライスに供するためのスライスレーン21と、スライス部1でスライスされたスライス片である切身aを整列させる整列レーン23と、各レーン21、23の駆動を制御する制御手段24とを備えて構成される。
【0051】
このようにすると、柵Aをスライスする際の搬送工程とスライス後の切身aを整列まさせる際の搬送工程を自動化することができるので、各工程を人手に頼ることを不要にすることができる。このため、柵のスライス工程および切身の整列にかかる人件費を削減し、加工現場の人手不足を解消することができる。
【0052】
また、スライスレーン21と整列レーン23を高さを異ならせて2段構造にしており、搬送装置自体が搬送方向に短くなるので、寿司店などの店舗に配置し易い構成とすることができる。
【0053】
しかも、中継レーン22がバッファーとしてあることで、制御手段24を通じたスライスレーン21、中継レーン22及び整列レーン23間の速度調整やタイミング調整、位置調整がし易くなり、搬送装置の設計自由度が高くなる。このため、例えば中継レーン22の距離をある程度長くして、スライス部1から離れた位置にある整列レーン23に切身aを搬送すること等が可能になる。さらに、中継レーン22があることで、規格外品・不良品がある場合にはダイレクトに整列レーン23に搬送するまえに中継レーン22で適切な対処をすることも可能になる。これについては後述する。
【0054】
特に本実施形態の各レーン21~23は、高さを異ならせて少なくとも3段構造をなし、制御手段24が、順次低い方向に向かって切身aを搬送する制御を行うので、スライス片である切身aの自重を利用してレーン21~23間で切身aの搬送を行うことができる。
【0055】
また、各レーン21~23の水平方向の位置関係は、少なくとも一部が高さ方向に重合して配置され、少なくとも一部のレーン間(本実施形態ではレーン21、22間)で搬送方向が折り返されるように構成されているため、各レーン21~23を平面的に展開する場合に比べて、フットプリントを小さくでき、装置の大型化及びコストの増大を抑えることができる。
【0056】
そして、スライス対象物が生鮮魚の柵Aであり、そのスライス片が切身aであるため、生鮮魚を、柵Aの状態からトレイTに切身の状態に整列させて寿司をにぎる場所や顧客の場所に自動搬送することが可能となり、寿司業界においてこの種の作業に係る作業効率やコストを改善することが可能になる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記実施形態では一部のレーン21、22間で搬送方向を折り返しているが、折り返さずに全て同一方向に搬送する場合においても3段構造は適用可能である。
【0059】
また、上記実施形態では搬送手段にコンベアを用いたが、搬送方法はコンベアによらず、例えばふるい、振動搬送等を用いて本発明を構成することもできる。
【0060】
また、上記実施形態では中継レーンをスライスレーン、整列レーンに対して略平行に配置したが、例えば、図4に示す中継レーン122のように、略水平に配置された上段側のスライスレーン21の終端部21a1に中継レーン122の始端部122xを近づけ、中継レーン122の終端部122yを整列レーン23上のトレイTに近づけるように、中継レーン122をスライスレーン21、整列レーン23に対して斜めに傾斜させて配置してもよい。
【0061】
このようにすれば、スライス片である切身aの落差距離を最小限にすることができるので、落下による衝撃を減少させ、特に解凍した柵Aからスライスした切身aからのドリップ液の滲出を防ぐことで、切身aの品質をより高く保つことができる。
【0062】
また、図4では中継レーンを傾斜させたが、傾斜させるのではなく、図1の実施形態における各レーン21-22間、レーン22-23間の距離を縮めるだけでも良い。この場合、装置高さを抑えることができ、省スペース化にもつながる。
【0063】
また、落下時のみ、各レーン21-22間、レーン22-23間の距離を変更し、落下高さを低減しても良い。
【0064】
また、前記実施形態ではレーン間でスライス片を落下させたが、落下させずにピッキングして搬送しても良い。この搬送方法は特に制限されず、例えば真空吸着や機械的なピッキング等であっても構わない。またヘラのような形状の機構で切身をすくい上げて搬送しても良い。
【0065】
また、図5に示すように、スライス片である切身aの品質の良否を判定する判定部3を、切身aを測定できる位置に配置しても良い。この場合は特に、切身aが中継レーン22に落下した状態を測定できるように配置するのがベストである。制御手段24は、判定部3で良判定された切身aを中継レーン22を通じて整列レーン23に搬送する一方、否判定された切身aを中継レーン22を通じて整列レーン23以外の場所(例えば回収部4)に搬送するように構成してもよい。
【0066】
この場合の判定部3は、例えば画像認識用のカメラやレーザ、赤外線などの計測部31を備え、計測結果を制御手段24の演算部32に入力して、良否判定を行う。
【0067】
図6は判定フローを示す。図2のステップS11とステップS12の間で、スライスした切身aの3次元のサイズ、比重に基づく重さ等を計測する(ステップSa)。比重や、切身aに要求されるサイズ、重さの基準値は予め図5の設定部5を通じて入力される。重さを計測する場合、中継レーン22や整列レーン23において切身aの落下する地点に、重量センサや圧力センサ等のセンサ23s(図5図8等を参照)を内蔵するほか、切身aの重量を直接的に計測してもよく、また、設定部30の入力値や制御データDに基づいて切身aの重量を推定してもよい。
【0068】
そして、切身aのサイズ、重さが基準値を満たすかどうかを判断する(ステップSb)。ステップSbでYES(良判定)の場合には図2に示すステップS12の通常搬送を行い、ステップSbでNO(否判定)の場合にはステップScで切身aをコンベアで逆搬送し、コンベアの逆方向の端部から回収部4に落下させる。
【0069】
良判定の場合には、図3のパターン1における所要時間t2の駆動ONがされる。一方で、否判定の場合は、図7に示すように切身aが中継レーン22から回収部4側に落下するために必要な所要時間t4の駆動ONを、モータの回転方向を変えて行う。このとき、他の切身aも一緒に逆戻りするため、上記駆動の後は、同じ所要時間t4の正方向の駆動ONによって他の切身aを、否判定がされる前の位置に戻す。この状態で、図2のステップS11に戻る。
【0070】
このようにすれば、否判定されたスライス片の除去を自動化することができるので、スライス片の除去にかかる人手を不要にすることができる。
【0071】
なお、モータの回転方向を変えて切身の除去を行う代わりに、エアーを用いて中継レーン上から除去してもよく、へらのような機械的なピッキングによって除去してもよい。或いは、トレイを一時的に隠し、整列レーンに落としてコンベアで廃棄位置まで搬送しても良い。
【0072】
なお、以上ではレーン21~23を3段構造としたが、レーンは1段又は2段構造としても構わない。
【0073】
図8は一段構造を例示している。この例は、スライスレーン21と整列レーン23を同じ高さで繋いで、スライスレーン21の搬入口で柵Aを乗せた後、そこから離れた位置にある整列レーン23の搬出口で作業者が一個ずつスライス片である切身aを受け取る形態である。制御手段の図示は省略してあり、詳細な説明も必要な部分にとどめている(図9以後についても同様)。
【0074】
スライスレーン21の駆動タイミングや搬送量は、柵Aをスライス部1でスライスする際の切身aのサイズに応じた制御データD(図1参照)による。制御データDは、上述したと同様に、柵Aに対して自動計測部5が計測した3次元形状、方向などの状態データ、及び、設定部30で設定された切身サイズaに紐付けされた設定データ等に基づいて生成される。
【0075】
整列レーン23の駆動タイミングは、基本的にはスライスレーン21の駆動タイミングに連動させるが、整列レーン23に設けたカメラや重量センサ等の自動計測部105で切身aを測定したタイミングに連動させてもよい。この自動計測部105は、図1の自動計測部5に準じて構成することができる。
【0076】
整列レーン23の搬送速度は、各切身aの間隔が一定になるように制御する。例えば、この装置を寿司店に設置する場合は、店員の寿司を握る作業ペースに合わせて整列レーン23の搬送速度を調整する。また、整列レーン23の搬送量は、店員の要求に応じて設定する。例えば各切身aを、毎回、整列レーン23の搬出口まで移動するような設定を行う。
【0077】
図8のように構成した場合は、中継レーンが不要になり、この搬送装置を店内に配置し易くなる利点が得られる。ただし、搬送装置自体が搬送方向に長くなるので、柵Aを投入する位置と切身aを受け取る位置が離れている適用対象、例えば寿司店よりもスーパーの食品(刺身)加工工場や、水産加工工場などに適用した場合に有用となる。こうすることで、整列した切身aを別途搬送する手間が省け、搬送効率を短縮することができる。
【0078】
図9は、図8と同様の構成において、整列レーン23の搬送速度を遅くすることで切身aをある程度グループ化し(切身グループGr)、その状態で切身グループGrを搬出口に移動してまとめて受け取りを行う態様である。グループ化の段階では搬送速度を遅く、グループ化が終われば搬送速度を速くすることで、このような形態を実現することができる。図8と特に相違しない部分についての説明は省略している。
【0079】
また、図10に示すように、スライスレーン21の上流に柵待機レーン20を設け、柵待機レーン20の搬入口から搬入した柵Aをスライスレーン21の手前で待機させ、順次スライスレーン21に送り込んでもよい。
【0080】
この場合の柵待機レーン20の駆動タイミングとしては、スライスレーン21の駆動タイミング(駆動OFFのタイミング)に連動させる態様や、整列レーン23の駆動タイミング(駆動OFFタイミング)に連動させる態様が挙げられる。
【0081】
この場合も、柵待機レーン20の搬送速度は、切身aの間隔が一定になるように制御する。例えば、この搬送装置を寿司店に設置する場合は、店員の寿司を握る作業ペースに合わせて調整する。また、整列レーン23の搬送量は、店員の要求に応じて設定する。例えば各切身aを、毎回、整列レーン23の搬出口まで移動するような設定を行う。
【0082】
図10の構成によると、スライス部1で1つの柵Aのスライスを完了した後、新しい柵Aをスライスレーン21を経てスライス部1に確実に供給することができ、スライス用の柵Aを事前にストックすることが可能になる。
【0083】
図11は、図8の構成に対して、スライスレーン21と整列レーン23の間に段差Δhを設けたものである。このような段差Δhを設けることで、切身aのスライス面(図中丸印sを付けた側の面)を、搬送方向に対して統一(図ではスライス面を下に統一)することができる利点が得られる。
【0084】
図12は、図11の変形例であり、スライスレーン21と整列レーン23の間に段差Δhを設けるにあたり、整列レーン23に設けた昇降機構6で段差Δhを調整するようにしたものである。昇降機構6はスライスレーン21側にあってもよい。このような昇降機構6を設けると、切身aのスライス面(図中丸印sを付けた側の面)を、搬送方向に対して統一(図ではスライス面を下に統一)することができるうえに、切身aをトレイ4上で整列させる場合等には、段差Δhをトレイ4の高さに応じて昇降機構6で調整することが可能になる。
【0085】
図13は、図8の場合とは異なり、スライスレーン21と整列レーン23を二段構造にした例を示している。この例は、スライスレーン21と整列レーン23を異なる高さに配置し、スライスレーン21のスライス部1でスライスした切身aを整列レーン23に直接落として、整列レーン23の搬出口で作業者が一個ずつスライス片である切身aを受け取るようにした形態である。この場合、スライスレーン21に柵Aを乗せる搬入口と、整列レーン23から整列された切身aを取り出す搬出口とが、ほぼ同じ位置に設定されている。
【0086】
この場合も、スライスレーン21の駆動タイミングや搬送量は、柵Aをスライス部1でスライスする際の切身aのサイズに応じた制御データD(図1参照)による。制御データDは、上述したと同様に、柵Aに対して自動計測部5が計測した3次元形状、方向などの状態データ、及び、設定部30で設定された切身サイズaに紐付けされた設定データ等に基づいて生成される。
【0087】
整列レーン23の駆動タイミングは、基本的にはスライスレーン21の駆動タイミングに連動させるが、整列レーン23に設けたカメラや重量センサ等の自動計測部105で切身aを測定したタイミングに連動させてもよい。
【0088】
整列レーン23の搬送速度は、各切身aの間隔が一定になるように制御する。例えば、この装置を寿司店に設置する場合は、店員の寿司を握る作業ペースに合わせて調整する。また、整列レーン23の搬送量は、店員の要求に応じて設定する。例えば各切身aを、毎回、整列レーン23の搬出口まで移動するような設定を行う。
【0089】
このような構成でも、中継レーンが不要になる利点として装置サイズを小さくでき、店内に配置しやすくなる点、切身aの搬送効率を短縮できる点が挙げられる。また、中継レーンを含んで3段構造にする場合に比べて、例えば背が低い人でも、柵Aの挿入作業や切身aの取り出し作業がやり易くなる利点が得られる。
【0090】
加えて、搬入口と搬出口の位置が近くなるので、店員の作業性が向上する利点が得られる。
【0091】
図14は、図13の構成において、整列レーン23の搬送速度を遅くすることでスライスレーン21から落下した切身aをある程度グループ化し(切身グループGr)、その状態で切身グループGrを搬出口に移動してまとめて受け取りを行う態様である。グループ化の段階では搬送速度を遅く、グループ化が終われば搬送速度を速くすることで、このような形態を実現することができる。図では落下した切身を一旦搬出口と逆方向に搬送しながら切身aをグループ化し、グループ化が完了した時点で切身グループGrを搬出口に向けて搬送する態様を示している。グループ化するにあたり、トレイTを使用してもよい。図13と特に相違しない部分についての説明は省略している。
【0092】
図15は、基本的に図14と同様であるが、グループ化する際の搬送方向が最終的に切身グループGrを搬出口に移動する方向と同じ方向である点で相違する。これにより、切身aの搬送効率をより短縮化することができる。
【0093】
図16は、スライスレーン21と整列レーン23の搬送方向長さを変え、スライスレーン21の搬入口の位置と整列レーン23の搬出口の位置を、搬出入方向にずらした構成を示している。こうすることで、矢印M部分において店員の切身や切身グループの取り出し作業を行い易くすることができる。
【0094】
図17は、スライス部を含む搬送装置を例えばシンク301の横のテーブル302上に配置する場合を例示している。図の配置は、搬入口からスライスレーンに搬入した柵が奥行方向に搬送されてスライスされた後、下段の整列レーン23を手前に搬送されて搬出口から取り出せるようにしたもので、シンクやテーブルの手前で作業する作業者にとってこの搬送装置を使い易く、利便性の高い配置にすることができる。
【0095】
なお、制御手段が実行する制御は、上述した各手順以外に種々の手順が実行可能である。
【0096】
また、上記実施形態ではスライス対象物が柵であり、スライス片が切身であったが、食品用のものであればこれに限定されない。
【0097】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…スライス部
2…搬送装置
3…判定部
21…スライスレーン
22…中継レーン
23…整列レーン
24…駆動手段
A…スライス対象物(柵)
T…トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17