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特開2024-5780表面実装機の管理プログラム、管理装置、管理方法及び部品実装システム
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  • 特開-表面実装機の管理プログラム、管理装置、管理方法及び部品実装システム 図1
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  • 特開-表面実装機の管理プログラム、管理装置、管理方法及び部品実装システム 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005780
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表面実装機の管理プログラム、管理装置、管理方法及び部品実装システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240110BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106149
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴仁
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA25
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA63
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100EE07
5E353CC04
5E353CC13
5E353CC23
5E353EE54
5E353EE89
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353JJ60
5E353LL04
5E353LL07
5E353QQ05
5E353QQ08
5E353QQ11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、メンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる技術を提供する。
【解決手段】表面実装機の管理プログラムであって、当該管理プログラムは、各実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた復旧作業の合計時間を特定するための情報を表面実装機から取得する取得処理と、取得処理で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定処理と、第1の判定処理で第1の閾値より大きいと判定した場合に、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案処理と、を生産管理PCに実行させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理プログラムであって、
前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、
当該管理プログラムは、各前記実装ヘッドについて、
1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案処理と、
をコンピュータに実行させる、表面実装機の管理プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記合計時間が第2の閾値より大きいか否かを判定する第2の判定処理と、
前記第2の判定処理で前記第2の閾値より大きいと判定した場合に、前記実装ヘッドのメンテナンスを行うべきことをオペレータに通知する通知処理と、
を前記コンピュータに実行させる、表面実装機の管理プログラム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
基板毎且つ前記実装ヘッド毎に前記合計時間を記憶する記憶処理を前記コンピュータに実行させ、
前記第1の判定処理において、直近の所定枚数の基板の前記合計時間の平均値が前記第1の閾値より大きいか否かを判定する、表面実装機の管理プログラム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記表面実装機は、基板に実装する部品とその部品の実装に用いる前記実装ヘッドとを示す基板データに基づいて基板を生産するものであり、
当該管理プログラムは、前記基板データに前記暫定対策を施した暫定基板データに基づいて基板を生産した場合の基板1枚当たりの推定生産時間から、前記基板データに基づいて基板を生産した場合の基板1枚当たりの推定生産時間を減じた時間に基づいて前記第1の閾値を決定する決定処理を前記コンピュータに実行させる、表面実装機の管理プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
オペレータから前記第1の閾値を調整するための調整値の設定を受け付ける第1の受付処理を前記コンピュータに実行させ、
前記決定処理において、以下の式1によって前記第1の閾値を決定する、表面実装機の管理プログラム。
第1の閾値=暫定基板データの推定生産時間-基板データの推定生産時間+調整値 ・・・ 式1
【請求項6】
請求項4に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記実装ヘッドは着脱可能な吸着ノズルを用いて部品を吸着するものであり、
前記基板データは、部品毎にその部品の吸着に用いる前記吸着ノズルを示す情報を含み、
前記暫定対策は、前記吸着ノズルを変更することである、表面実装機の管理プログラム。
【請求項7】
請求項4に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記基板データは、部品毎にその部品を実装するときの前記実装ヘッドの動作に関するパラメータを含み、
前記暫定対策は、前記パラメータを変更することである、表面実装機の管理プログラム。
【請求項8】
請求項4に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記暫定対策は、前記実装ヘッドを別の前記実装ヘッドに変更することである、表面実装機の管理プログラム。
【請求項9】
請求項4に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記暫定基板データを作成する作成処理を前記コンピュータに実行させる、表面実装機の管理プログラム。
【請求項10】
請求項4に記載の表面実装機の管理プログラムであって、
前記提案処理で提案した前記暫定対策の実施の承諾をオペレータから受け付ける第2の受付処理と、
前記第2の受付処理で承諾を受け付けた場合に、前記暫定基板データを前記表面実装機に送信する送信処理と、
を前記コンピュータに実行させる、表面実装機の管理プログラム。
【請求項11】
部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理装置であって、
前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、
当該管理装置は、
前記表面実装機と通信する通信部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、各前記実装ヘッドについて、
1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案処理と、
を実行する、表面実装機の管理装置。
【請求項12】
部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理方法であって、
前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、
当該管理方法は、各前記実装ヘッドについて、
1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案工程と、
を含む、表面実装機の管理方法。
【請求項13】
基板に部品を実装する部品実装システムであって、
部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機と、
請求項11に記載の表面実装機の管理装置と、
を備え、
前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、各前記実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記管理装置に送信する、部品実装システム。
【請求項14】
請求項13に記載の部品実装システムであって、
前記表面実装機は、前記管理装置から暫定基板データを受信すると、現在生産中の基板の後、次に生産する基板の前に、前記表面実装機の動作を停止させずに前記暫定基板データに切り替える、部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理プログラム、管理装置、管理方法及び部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の電子部品実装装置(表面実装機に相当)は複数の実装ステージを備えており、ある実装ステージにおいて何らかの異常が発生した場合には、電子部品実装装置全体が停止する。装置オペレータは異常原因を取り除くための処理を行った後、装置を再起動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3758478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の電子部品実装装置では、基板の生産中に実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合については検討されていなかった。
本明細書では、実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理プログラムであって、前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、当該管理プログラムは、各前記実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得処理と、前記取得処理で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定処理と、前記第1の判定処理で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案処理と、をコンピュータに実行させる、表面実装機の管理プログラム。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によれば、実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る部品実装システムの模式図
図2】表面実装機の上面図
図3】ヘッドユニットの側面図
図4】生産管理PCの電気的構成を示すブロック図
図5】基板データの模式図
図6】暫定基板データの模式図
図7】基板の実生産時間を示すグラフ、及び、復旧作業の合計時間の平均値を示すグラフ
図8】復旧作業の合計時間の平均値、及び、第1の閾値を示すグラフ
図9】暫定対策の実施の提案処理のフローチャート
図10】実施形態2に係る暫定対策の実施の提案処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施形態の概要)
(1)実施形態に係る表面実装機の管理プログラムは、部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理プログラムであって、前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、当該管理プログラムは、各前記実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得処理と、前記取得処理で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定処理と、前記第1の判定処理で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案処理と、をコンピュータに実行させる。
【0009】
実装ヘッドは繰り返し使用されるとフィルタの詰まりや吸着ノズルの欠けが発生し、吸着エラーや装着エラーが多発することがある。吸着エラーとは部品の吸着に失敗するエラーのことをいう。装着エラーとは部品を吸着している実装ヘッドを移動させている途中で部品が落下するエラーのことをいう。以降の説明では吸着エラーと装着エラーとを総称して吸装着エラーという。
実装ヘッドのメンテナンスを行うと吸装着エラーの発生を抑制できる。メンテナンスは、具体的には実装ヘッドを洗浄して詰まりを解消する作業や、実装ヘッド内に配されているフィルタを交換する作業などである。メンテナンスはこれらに限られず、必要に応じて適宜の作業が行われる。メンテナンスにはオペレータが実装ヘッドに直接触れる作業もあるため、一般にメンテナンスは基板の生産が終了して表面実装機が停止しているときに行われる。
【0010】
通常、表面実装機は、基板の生産中に吸装着エラーが発生すると、吸装着エラーが発生した実装ヘッドの復旧作業を行っている。1枚の基板の生産中に吸装着エラーが多発すると、1枚の基板の生産中に何度も復旧作業が行われるため、1枚の基板の生産中に行われた復旧作業の作業時間を合計した時間(復旧作業の合計時間)が長くなる。このため基板1枚当たりの生産時間が長くなる。
これについて検討した本願発明者は、吸装着エラーが多発する場合は、メンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施することにより、暫定対策を実施しない場合に比べて基板1枚当たりの生産時間を短縮できることを見出した。
【0011】
しかしながら、本願発明者は、暫定対策を実施する場合は暫定対策を実施しない場合に比べて表面実装機の動作に何らかの制約が加わるため、暫定対策を実施しない場合に比べて部品の実装に時間を要し、却って基板1枚当たりの生産時間が長くなる場合があることも見出した。
このため、吸装着エラーが多発する場合、暫定対策を実施することによって基板1枚当たりの生産時間を短縮できる場合は暫定対策を実施し、暫定対策を実施すると却って基板1枚当たりの生産時間が長くなる場合は暫定対策を実施しないことが好ましい。しかしながら、スキルや経験が浅いオペレータにとっては暫定対策を実施すべきか否かを適切に判断することが難しい。
【0012】
これについて検討した本願発明者は、1枚の基板の生産中に行われた復旧作業の合計時間が、暫定対策の実施によって長くなる分の時間より大きい場合は、暫定対策を実施した方が基板1枚当たりの生産時間を短縮できることを見出した。
上記(1)に記載の管理プログラムによると、復旧作業の合計時間が第1の閾値より大きい場合にオペレータに暫定対策の実施を提案するので、暫定対策の実施によって長くなる分の時間に基づいて第1の閾値を決定することにより、オペレータに暫定対策の実施を提案するか否かを適切に判断できる。言い換えると、上記(1)に記載の管理プログラムによると、オペレータに暫定対策の実施を提案するか否かを定量的指標に基づいて判断するので、暫定対策の実施を提案するか否かを適切に判断できる。
【0013】
そして、オペレータは、暫定対策の実施が提案された場合は暫定対策を実施すると判断し、暫定対策の実施が提案されない場合は暫定対策を実施しないと判断することにより、暫定対策を実施すべきか否かを適切に判断できる。
よって上記(1)に記載の管理プログラムによると、実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる。
【0014】
(2)前記合計時間が第2の閾値より大きいか否かを判定する第2の判定処理と、前記第2の判定処理で前記第2の閾値より大きいと判定した場合に、前記実装ヘッドのメンテナンスを行うべきことをオペレータに通知する通知処理と、を前記コンピュータに実行させてもよい。
【0015】
上記(2)に記載の管理プログラムによると、復旧作業の合計時間が第2の閾値より大きい場合は実装ヘッドのメンテナンスを行うべきことをオペレータに通知するので、吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0016】
(3)基板毎且つ前記実装ヘッド毎に前記合計時間を記憶する記憶処理を前記コンピュータに実行させ、前記第1の判定処理において、直近の所定枚数の基板の前記合計時間の平均値が前記第1の閾値より大きいか否かを判定してもよい。
【0017】
復旧作業の合計時間にはばらつきがあり、何らかの偶発的な理由で合計時間が長くなることもある。このため、復旧作業の合計時間が第1の閾値より大きいか否か(言い換えると暫定対策の実施を提案するか否か)を1枚の基板の合計時間だけから判定すると誤判定する可能性がある。
上記(3)に記載の管理プログラムによると、直近の所定枚数の基板の復旧作業の合計時間の平均値を用いるので、ばらつきの影響が軽減される。これにより、暫定対策の実施を提案するか否かの判断の誤りを低減できる。
【0018】
(4)前記表面実装機は、基板に実装する部品とその部品の実装に用いる前記実装ヘッドとを示す基板データに基づいて基板を生産するものであり、当該管理プログラムは、前記基板データに前記暫定対策を施した暫定基板データに基づいて基板を生産した場合の基板1枚当たりの推定生産時間から、前記基板データに基づいて基板を生産した場合の基板1枚当たりの推定生産時間を減じた時間に基づいて前記第1の閾値を決定する決定処理を前記コンピュータに実行させてもよい。
【0019】
暫定対策を実施する方法の1つとして、基板の生産に用いる基板データを、暫定対策が施された基板データ(暫定基板データ)に切り替える方法がある。通常、基板データは基板1枚当たりの生産時間が極力短くなるように計算されて作成される。暫定基板データは基板データに何らかの制約を加えたデータになることから、通常、暫定基板データを用いると基板1枚当たりの生産時間が長くなる。
【0020】
復旧作業の合計時間が、暫定基板データの推定生産時間から基板データの推定生産時間を減じた時間(すなわち暫定対策の実施によって長くなる分の時間)より大きい場合は、暫定対策を実施した方が、生産時間が短くなる。
上記(4)に記載の管理プログラムによると、暫定基板データの推定生産時間から基板データの推定生産時間を減じた時間(言い換えると暫定対策の実施によって長くなる分の時間)に基づいて第1の閾値を決定するので、オペレータに暫定対策の実施を提案するか否かを適切に判断できる。
【0021】
(5)オペレータから前記第1の閾値を調整するための調整値の設定を受け付ける第1の受付処理を前記コンピュータに実行させ、前記決定処理において、以下の式1によって前記第1の閾値を決定してもよい。
第1の閾値=暫定基板データの推定生産時間-基板データの推定生産時間+調整値 ・・・ 式1
【0022】
オペレータによっては極力早いタイミングで暫定対策を実施したいと考える場合や、極力遅いタイミングで暫定対策を実施したいと考える場合がある。
上記(5)に記載の管理プログラムによると、オペレータは調整値を設定することにより、暫定対策の実施が提案されるタイミングを調整できる。
【0023】
(6)前記実装ヘッドは着脱可能な吸着ノズルを用いて部品を吸着するものであり、前記基板データは、部品毎にその部品の吸着に用いる前記吸着ノズルを示す情報を含み、前記暫定対策は、前記吸着ノズルを変更することであってもよい。
【0024】
吸装着エラーの原因は実装ヘッドに取り付けられている吸着ノズルの詰まりであることも考えられる。
上記(6)に記載の管理プログラムによると、実装ヘッドに装着される吸着ノズルを変更することにより、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0025】
(7)前記基板データは、部品毎にその部品を実装するときの前記実装ヘッドの動作に関するパラメータを含み、前記暫定対策は、前記パラメータを変更することであってもよい。
【0026】
上記(7)に記載の管理プログラムによると、実装ヘッドの動作に関するパラメータを部品が落下し難いパラメータに変更することにより、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0027】
(8)前記暫定対策は、前記実装ヘッドを別の前記実装ヘッドに変更することであってもよい。
【0028】
上記(8)に記載の管理プログラムによると、実装ヘッドを別の実装ヘッドに変更することにより、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0029】
(9)前記暫定基板データを作成する作成処理を前記コンピュータに実行させてもよい。
【0030】
上記(9)に記載の管理プログラムによると、オペレータが手作業で暫定基板データを作成する場合に比べてオペレータの負担を軽減できる。
【0031】
(10)前記提案処理で提案した前記暫定対策の実施の承諾をオペレータから受け付ける第2の受付処理と、前記第2の受付処理で承諾を受け付けた場合に、前記暫定基板データを前記表面実装機に送信する送信処理と、を前記コンピュータに実行させてもよい。
【0032】
暫定基板データに切り替える場合、暫定基板データに切り替えるための作業をオペレータが行うことも可能である。オペレータが作業を行う場合は、暫定基板データを表面実装機に送信するための操作をコンピュータ上で行ったり、あるいは、着脱可能な記憶媒体を介して表面実装機に暫定基板データを手作業で記憶させたりする。しかしながら、その場合はオペレータの負担が大きくなる。
上記(10)に記載の管理プログラムによると、オペレータが暫定対策の実施を承諾した場合は表面実装機に暫定基板データを送信するので、暫定基板データに切り替えるための作業をオペレータが行う場合に比べてオペレータの負担を軽減できる。
【0033】
(11)実施形態に係る表面実装機の管理装置は、部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理装置であって、前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、当該管理装置は、前記表面実装機と通信する通信部と、制御部と、を備え、前記制御部は、各前記実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得処理と、前記取得処理で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定処理と、前記第1の判定処理で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案処理と、を実行する。
【0034】
上記(11)に記載の管理装置によると、実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる。
【0035】
(12)実施形態に係る表面実装機の管理方法は、部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機の管理方法であって、前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、当該管理方法は、各前記実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記表面実装機から取得する取得工程と、前記取得工程で取得した情報によって特定される合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判定する第1の判定工程と、前記第1の判定工程で前記第1の閾値より大きいと判定した場合に、当該実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータに提案する提案工程と、を含む。
【0036】
上記(12)に記載の管理方法によると、実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる。
【0037】
(13)実施形態に係る部品実装システムは、基板に部品を実装する部品実装システムであって、部品を吸着して基板に装着する1以上の実装ヘッドを有する表面実装機と、上記(11)に記載の表面実装機の管理装置と、を備え、前記表面実装機は、基板の生産中に前記実装ヘッドの吸装着エラーが発生すると前記実装ヘッドの復旧作業を行って基板の生産を再開するものであり、各前記実装ヘッドについて、1枚の基板の生産中に当該実装ヘッドについて行われた前記復旧作業の合計時間を特定するための情報を前記管理装置に送信する。
【0038】
上記(13)に記載の部品実装システムによると、実装ヘッドの吸装着エラーが多発した場合に、実装ヘッドのメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータでも適切に判断できる。
【0039】
(14)前記表面実装機は、前記管理装置から暫定基板データを受信すると、現在生産中の基板の後、次に生産する基板の前に、前記表面実装機の動作を停止させずに前記暫定基板データに切り替えてもよい。
【0040】
上記(14)に記載の部品実装システムによると、表面実装機の動作を停止させずに暫定対策を実施できる。
【0041】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本開示の実施形態は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0042】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図9に基づいて説明する。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0043】
(1)部品実装システム
図1を参照して、実施形態1に係る部品実装システム1について説明する。部品実装システム1は回路パターンが印刷されたプリント基板(以下、単に基板という)に電子部品などの部品を実装するシステムである。
部品実装システム1は1以上の生産ラインL(L1,L2,L3)、生産管理PC(パーソナルコンピュータ)2、及び、オペレータ端末3を備えている。これらの機器は通信ネットワーク4を介して通信可能に接続されている。生産管理PC2は表面実装機の管理装置、及び、コンピュータの一例である。
複数のオペレータ5(5A,5B)は生産ラインLで発生する作業を行う作業者である。オペレータ5はオペレータ端末3を携帯している。
【0044】
(1-1)生産ライン
各生産ラインLはそれぞれ1以上の表面実装機6を備えている。表面実装機6は基板に部品を実装する装置である。生産ラインLは表面実装機6以外にも基板に対する作業を行うその他の装置(ローダー、スクリーン印刷機、印刷検査機、ディスペンサ、実装後外観検査機、リフロー装置、硬化後外観検査機、アンローダーなど)を備えているが、図1ではその他の装置については省略している。
【0045】
図2を参照して、表面実装機6の構成について説明する。表面実装機6は架台10、搬送コンベア11、4つのテープ部品供給装置12、ヘッドユニット13、ヘッド移動部14、制御部及び操作パネルを備えている。
架台10は平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされている。図1において二点破線で示す領域は、基板Pに部品Eを実装するときに基板Pが固定される作業位置(以下、作業位置Aという)である。作業位置Aの下方には作業位置Aに搬送された基板Pを固定する図示しないバックアップ装置が配されている。
【0046】
搬送コンベア11は基板Pを搬送する装置である。搬送コンベア11はX方向に循環移動する一対の搬送ベルト15(前側搬送ベルト15A及び後側搬送ベルト15B)、搬送ベルト15が掛け回されている図示しない複数のローラ、搬送ベルト15を駆動するコンベア駆動モータなどを備えている。搬送コンベア11は上流側から搬入された基板Pを作業位置に搬送し、作業位置で部品Eが実装された基板Pを下流側に搬出する。
【0047】
テープ部品供給装置12は表面実装機6のY方向の両側においてX方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。テープ部品供給装置12には複数のテープフィーダ16がX方向に横並び状に整列して取り付けられている。各テープフィーダ16は複数の部品Eが収容された部品テープ(不図示)が巻回されたリール(不図示)、及び、リールから部品テープを引き出す電動式の送出装置(不図示)等を備えており、搬送コンベア11側の端部に設けられた部品供給位置から部品Eを1つずつ供給する。
【0048】
ヘッドユニット13は部品Eを吸着及び装着する複数の実装ヘッド18を備えている。ヘッドユニット13についての説明は後述する。
ヘッド移動部14はヘッドユニット13を所定の可動範囲内でX方向及びY方向に移動させる機構である。ヘッド移動部14はヘッドユニット13をX方向に往復移動可能に支持しているビーム19、ビーム19をY方向に往復移動可能に支持している一対のY軸ガイドレール20、ヘッドユニット13をX方向に往復移動させるX軸サーボモータ、ビーム19をY方向に往復移動させるY軸サーボモータなどを備えている。
【0049】
図3を参照して、ヘッドユニット13について説明する。ヘッドユニット13は所謂インライン型であり、複数の実装ヘッド18がX方向に並んで設けられている。ヘッドユニット13にはこれらの実装ヘッド18を個別に昇降させるZ軸サーボモータ、及び、これらの実装ヘッド18を一斉に軸周りに回転させるR軸サーボモータが設けられている。
【0050】
各実装ヘッド18はノズルシャフト18Aと、ノズルシャフト18Aの下端部に着脱可能に取り付けられている吸着ノズル18Bとを有している。ノズルシャフト18A内には図示しないフィルタが配されている。吸着ノズル18Bにはノズルシャフト18Aを介して図示しない空気供給装置から負圧及び正圧が供給される。吸着ノズル18Bは負圧が供給されることによって部品Eを吸着し、正圧が供給されることによってその部品Eを解放する。
ここではインライン型のヘッドユニット13を例に説明したが、ヘッドユニット13は例えば複数の実装ヘッド18が円周上に配列された所謂ロータリーヘッドであってもよい。
【0051】
図2では省略しているが、表面実装機6には実装ヘッド18に取り付けられている吸着ノズル18Bを自動で交換するオートノズルチェンジャも設けられている。オートノズルチェンジャには交換用の吸着ノズル18Bが格納されている。
【0052】
(1-2)生産管理PC
図4を参照して、生産管理PC2について説明する。生産管理PC2は基板Pの生産を統括して管理するコンピュータである。生産管理PC2は基板Pの生産計画の立案、監視、オペレータ5の作業計画の立案、監視、吸装着エラーが多発した場合の暫定対策の実施の提案などの各種の処理を実行する。
【0053】
生産管理PC2は制御部30、記憶部31、通信部32、表示部33及び操作部34を備えている。制御部30はCPU30A及びRAM30Bを備えている。制御部30は記憶部31に記憶されているプログラムを実行することによって生産管理PC2の各部を制御する。
【0054】
記憶部31はハードディスクなどの書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を有する記憶装置である。記憶部31には制御部30によって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。各種のプログラムには後述する管理プログラム(表面実装機の管理プログラムの一例)が含まれる。各種のデータには後述する基板データ、基板データを用いた場合の基板1枚当たりの推定生産時間(以下、基板データの推定生産時間という)、吸装着エラーが多発した場合の暫定対策が施された暫定基板データ、暫定基板データを用いた場合の基板1枚当たりの推定生産時間(以下、暫定基板データの推定生産時間という)、後述する調整値が含まれる。
【0055】
通信部32は生産管理PC2を通信ネットワーク4に接続するための通信回路である。表示部33は液晶ディスプレイなどの表示装置、表示装置を駆動する駆動回路などで構成されている。操作部34はキーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0056】
(1-3)オペレータ端末
図1を参照して、オペレータ端末3について説明する。オペレータ端末3は情報を表示する表示部を備えるコンピュータであり、具体的にはタブレットコンピュータやスマートフォンなどである。オペレータ端末3は携帯型のPCであってもよいし、専用に設計された端末であってもよい。オペレータ端末3は図示しないアクセスポイントを介して通信ネットワーク4に無線接続されている。
【0057】
(2)基板データ
図5を参照して、基板データについて説明する。基板データは基板Pに実装する部品Eとその部品Eの実装に用いる実装ヘッド18とを示すデータである。基板データは生産する基板Pの機種毎に作成される。表面実装機6は生産する機種に応じた基板データに基づいて基板Pを生産する。
【0058】
基板データには、基板Pに実装する部品Eの部品名、実装座標、部品Eの吸装着に用いる実装ヘッド18のヘッド番号、部品Eの吸装着に用いる吸着ノズル18Bのノズル番号、部品Eを実装するときの実装ヘッド18の動作に関するパラメータなどの情報が含まれる。
実装ヘッド18の動作に関するパラメータは、具体的には部品Eを吸着するときの負圧、部品Eを解放するときの正圧、部品Eを吸着している実装ヘッド18を基板P上の実装座標まで移動させるときの移動速度、実装ヘッド18を移動速度まで加速するときの加速度、実装ヘッド18を減速させて停止させるときの加速度などである。実装ヘッド18の動作に関するパラメータはこれらに限られず、適宜に決定できる。
【0059】
(3)吸装着エラーが発生した場合の復旧作業
表面実装機6は、実装ヘッド18の吸装着エラーが発生した場合は動作を停止し、吸装着エラーが発生したことをオペレータ5に報知する。この報知は、例えば吸装着エラーが発生したことを示すメッセージをオペレータ端末3に表示したり、表面実装機6が備える図示しない報知灯を点灯させたりすることによって行われる。
【0060】
吸装着エラーが発生したことを報知されたオペレータ5は吸装着エラーの復旧操作を行う。復旧操作は操作パネルで行う操作であり、例えば操作パネルに表示されるエラー解消ボタンをクリックする操作である。表面実装機6はエラー解消ボタンがクリックされると部品Eの実装をリトライする。リトライは復旧作業の一例である。復旧作業はリトライ以外の作業であってもよい。表面実装機6はオペレータ5の復旧操作を必要とせずに自動で復旧作業を行ってもよい。
【0061】
表面実装機6は復旧作業が完了すると基板Pの生産を再開する。そして、表面実装機6は、吸装着エラーが発生した時から基板Pの生産を再開した時までの時間を復旧作業の作業時間とし、吸装着エラーが発生した実装ヘッド18のヘッド番号と対応付けて記憶する。表面実装機6は、1枚の基板Pの生産が完了すると、その基板Pの生産中に記憶した復旧作業の作業時間と、その作業時間に対応付けられているヘッド番号とを生産管理PC2に送信する。作業時間及びヘッド番号は、復旧作業の合計時間を特定するための情報の一例である。
生産管理PC2の制御部30は、表面実装機6からこれらの情報を受信すると(取得処理の一例)、実装ヘッド18毎に復旧作業の作業時間を合計することによって復旧作業の合計時間を特定し、特定した合計時間をヘッド番号と対応付けて記憶部31に記憶する(記憶処理の一例)。
【0062】
(4)吸装着エラーが多発する場合の暫定対策の実施の提案
生産管理PC2は、実装ヘッド18の吸装着エラーが多発する場合は、実装ヘッド18のメンテナンス(以下、ヘッドメンテナンスという)を行うべきことをオペレータ5に通知するとともに(通知処理の一例)、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策の実施をオペレータ5に提案するか否かを判断する。そして、生産管理PC2は、提案すると判断した場合は、オペレータ5に暫定対策の実施を提案する。以下、具体的に説明する。
【0063】
(4-1)暫定対策及び暫定基板データ
実施形態1では暫定対策として以下の3つの暫定対策を例示する。
・暫定対策A:吸着ノズル18Bの変更
・暫定対策B:実装ヘッド18の動作に関するパラメータの変更
・暫定対策C:実装ヘッド18の変更
【0064】
暫定対策は、暫定対策用の基板データ(以下、暫定基板データという)に切り替えることによって実施される。暫定基板データは、実施する暫定対策に応じて元の基板データの一部を変更することによって作成されたものである。
暫定基板データは基板Pの生産を開始する前に生産管理PC2によって予め作成される。生産管理PC2は実装ヘッド18毎且つ暫定対策毎に暫定基板データを作成する(作成処理の一例)。例えば実装ヘッド18の数が5であり、暫定対策の数が3である場合、合計15(=5×3)の暫定基板データが作成される。
【0065】
図6に示す暫定基板データは、暫定対策Aを実施するための暫定基板データの一例である。暫定対策Aを実施するための暫定基板データは、対象となる実装ヘッド18に取り付けられる吸着ノズル18Bが変更された暫定基板データである。図6に示す例では、対象となる実装ヘッド18はヘッド番号2の実装ヘッド18であるとする。図6に示す例では、図5に示す元の基板データに対してヘッド番号2の実装ヘッド18に取り付けられる吸着ノズル18Bが変更されている。
【0066】
ただし、吸着ノズル18Bを変更すると、基板1枚当たりの生産時間が長くなることがある。例えば、ヘッド番号2の実装ヘッド18に取り付けられている吸着ノズル18Bと同じ種類の吸着ノズル18Bがオートノズルチェンジャに格納されている場合はその吸着ノズル18Bに交換すればよいので、基板データの変更は不要である。しかしながら、同じ種類の吸着ノズル18Bが格納されていない場合は、図6に示すように、他の実装ヘッド18に取り付けられているいずれかの吸着ノズル18B(ノズル番号1,3~5のいずれか)を代わりに使用することになる。図6に示す例ではノズル番号4の吸着ノズル18Bを代わりに使用する場合を示している。他の実装ヘッド18に取り付けられている吸着ノズル18Bを使用すると、使用できる実装ヘッド18の総数が減る。実装ヘッド18の総数が減ると同時吸着可能な部品数も減るので、吸着と装着の往復も増える。このため基板1枚当たりの生産時間が長くなる可能性がある。
【0067】
暫定対策Bを実施するための暫定基板データは、対象となる実装ヘッド18によって部品Eを吸着するときの負圧を大きくしたり、実装ヘッド18の移動速度を遅くしたりした暫定基板データである。負圧を大きくしたり実装ヘッド18の移動速度を遅くしたりすると部品Eが落下し難くなるので、吸装着エラーの発生を抑制できる。
ただし、通常、部品Eが落下し難いパラメータに変更すると基板1枚当たりの生産時間が長くなる。
【0068】
暫定対策Cを実施するための暫定基板データは、対象となる実装ヘッド18が別の実装ヘッド18に変更された暫定基板データである。例えばノズルシャフト18A内に配されているフィルタが詰まっている場合は、実装ヘッド18を変更することによって吸装着エラーの発生を抑制できる。
ただし、通常、別の実装ヘッド18を使用すると実装ヘッド18の移動距離に違いが生じるので、基板1枚当たりの生産時間が長くなる。
【0069】
これらの暫定基板データは元の基板データに何らかの制約を加えたデータであるので、通常、暫定基板データを用いると元の基板データを用いる場合に比べて基板1枚当たりの生産時間が長くなる。
【0070】
(4-2)暫定対策の実施の提案処理
生産管理PC2の制御部30は、1枚の基板Pの生産が完了すると、実装ヘッド18毎に、その実装ヘッド18についての暫定対策の実施をオペレータ5に提案するか否かを、その実装ヘッド18の復旧作業の合計時間に基づいて判断する。
【0071】
図7に示すグラフは、ある1つの実装ヘッド18についての基板Pの実生産時間を示すグラフである。基板Pの生産中には複数の実装ヘッド18で吸装着エラーが発生することがあるが、便宜上、図7では当該ある1つの実装ヘッド18だけで吸装着エラーが発生したものとする。
グラフの横軸は基板Pの累計生産枚数であり、縦軸は基板1枚当たりの実生産時間である。実生産時間は、基板Pに部品Eを実装するのに要した時間90、当該ある1つの実装ヘッド18の復旧作業の合計時間92、及び、その他のエラー要因によるロス時間91を合計した時間である。
その他のエラー要因によるロス時間は、吸装着エラー以外のエラー要因によって発生したロス時間の合計時間である。その他のエラー要因としては部品切れエラーが例示される。
【0072】
通常、基板Pの累積生産枚数が少ない時点では実装ヘッド18の目詰まりや欠けがないので、1枚の基板Pの生産中に発生する吸装着エラーの回数は少ない。このため復旧作業の合計時間は短い。これに対し、基板Pの累積生産枚数が多くなってくると実装ヘッド18の目詰まりや欠けが発生し、1枚の基板Pの生産中に発生する吸装着エラーの回数が多くなる。このため、通常、累積生産枚数が多くなるほど1枚の基板Pの生産中に発生した復旧作業の合計時間が長くなる。
【0073】
制御部30は、基板Pが1枚生産される毎に、その基板Pを含む直近に生産された所定枚数(図7では3枚)の基板Pについて、当該ある1つの実装ヘッド18の復旧作業の合計時間の平均値を算出する。ここでは合計時間の算出対象となる所定枚数の基板Pのことをフレームという。
そして、図8に示すように、制御部30は、算出した平均値が第1の閾値より大きいか否かを判定する(第1の判定処理の一例)。制御部30は、平均値が第1の閾値より大きい場合は、当該ある1つの実装ヘッド18について、暫定対策の実施をオペレータ5に提案する(提案処理の一例)。
【0074】
上述した第1の閾値について説明する。制御部30は、暫定基板データの推定生産時間から基板データの推定生産時間を減じた時間(すなわち暫定対策の実施によって長くなる分の時間)に基づいて第1の閾値を決定する(決定処理の一例)。暫定基板データは実装ヘッド18毎且つ暫定対策毎に作成されるので、第1の閾値は実装ヘッド18毎且つ暫定対策毎に決定される。
【0075】
具体的には、第1の閾値は以下の式1によって決定される。
第1の閾値=ヘッド番号iの実装ヘッド18の暫定基板データの推定生産時間-元の基板データの推定生産時間+オペレータ5によって設定された調整値 ・・・ 式1
【0076】
元の基板データの推定生産時間については、実際に元の基板データを用いて基板Pを生産しているときの実生産時間(吸装着エラーが発生しなかったときの実生産時間)を用いてもよい。
オペレータ5によって設定された調整値は、基板Pの生産を開始する前に予めオペレータ5が設定した値である。生産管理PC2は、基板Pの生産を開始する前に、予め操作部34を介してオペレータ5から調整値の設定を受け付ける(第1の受付処理の一例)。調整値にはプラスの値もマイナスの値も設定できる。
【0077】
(4-3)暫定対策の実施の提案処理のフロー
図9を参照して、管理プログラムを実行する生産管理PC2によって実行される暫定対策の実施の提案処理のフローについて説明する。本処理は基板Pが1枚生産される毎に実行される。
【0078】
S101では、制御部30は実装ヘッド18を1つ選択する。
S102では、制御部30は、選択した実装ヘッド18について、直近に生産された3枚の基板Pにおける復旧作業の合計時間の平均値Tを算出する。
S103では、制御部30はS102で算出した平均値Tが第2の閾値より大きいか否かを判断する(第2の判定処理の一例)。第2の閾値は任意に設定できる。制御部30は、第2の閾値より大きい場合はS104に進み、第2の閾値未満である場合はS105に進む。
【0079】
S104では、制御部30は、S101で選択した実装ヘッド18のヘッドメンテナンスを行うべきことを、オペレータ端末3を介してオペレータ5に通知する(通知処理の一例)。
S105では、制御部30は前述した3つの暫定対策のうちいずれか1つを選択する。暫定対策を選択する順番は適宜に決定できるが、暫定基板データの推定生産時間が短い順であることが好ましい。
【0080】
S106では、制御部30は、S102で算出した平均値Tが第1の閾値(S101で選択した実装ヘッド18とS105で選択した暫定対策との組み合わせに対応する第1の閾値)より大きいか否かを判断し、第1の閾値より大きい場合はS107に進み、第1の閾値以下である場合はS109に進む。
S107では、制御部30はS105で選択した暫定対策の実施を、オペレータ端末3を介してオペレータ5に提案する。暫定対策の実施を提案されたオペレータ5は、その暫定対策の実施を承諾するか否かをオペレータ端末3で選択する。オペレータ端末3はその選択結果を生産管理PC2に送信する。
【0081】
S108では、制御部30はオペレータ端末3から受信した選択結果からオペレータ5が暫定対策の実施を承諾したか否かを判断し、承諾していない場合はS109に進み、承諾した場合は処理を終了する。
暫定対策の実施を承諾したことを示す選択結果を生産管理PC2がオペレータ端末3から受信することは、暫定対策の実施の承諾をオペレータ5から受け付ける第2の受付処理の一例である。
【0082】
S109では、制御部30は全ての暫定対策を選択したか否かを判断し、選択していない場合はS105に戻る。制御部30は、S105に戻った場合は未だ選択していない暫定対策を選択して処理を繰り返す。制御部30は、全ての暫定対策を選択した場合はS110に進む。
S110では、制御部30は全ての実装ヘッド18を選択したか否かを判断し、選択していない場合はS101に戻る。制御部30は、S101に戻った場合は未だ選択していない実装ヘッド18を選択して処理を繰り返す。制御部30は、全ての実装ヘッド18を選択した場合は処理を終了する。
【0083】
オペレータ5は、S108で暫定対策の実施を承諾した場合は、S101で選択された実装ヘッドS101とS105で選択された暫定対策との組み合わせに対応する暫定基板データを表面実装機6に送信する作業を行う。表面実装機6は、暫定基板データを受信すると、現在生産中の基板Pの後、次に生産する基板Pの前に、表面実装機6の動作を停止させずに暫定基板データに切り替える。
【0084】
(5)実施形態の効果
実施形態1に係る管理プログラムによると、復旧作業の合計時間が第1の閾値より大きい場合にオペレータ5に暫定対策の実施を提案するので、暫定対策の実施によって長くなる分の時間に基づいて第1の閾値を設定することにより、オペレータ5に暫定対策の実施を提案するか否かを適切に判断できる。言い換えると、管理プログラムによると、オペレータ5に暫定対策の実施を提案するか否かを定量的指標に基づいて判断するので、暫定対策の実施を提案するか否かを適切に判断できる。
よって管理プログラムによると、実装ヘッド18の吸装着エラーが多発した場合に、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータ5でも適切に判断できる。
【0085】
管理プログラムによると、復旧作業の合計時間が第2の閾値より大きい場合はヘッドメンテナンスを行うべきことをオペレータ5に通知するので、吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0086】
管理プログラムによると、直近の所定枚数の基板Pの復旧作業の合計時間の平均値Tを用いるので、ばらつきの影響が軽減される。これにより、暫定対策の実施を提案するか否かの判断の誤りを低減できる。
【0087】
管理プログラムによると、暫定対策の実施によって長くなる分の時間に基づいて第1の閾値を決定するので、オペレータ5に暫定対策の実施を提案するか否かを適切に判断できる。
【0088】
管理プログラムによると、オペレータ5は調整値を設定することにより、暫定対策の実施が提案されるタイミングを調整できる。
【0089】
管理プログラムによると、暫定対策の1つは、吸着ノズル18Bを変更することである。実装ヘッド18に装着される吸着ノズル18Bを変更することにより、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0090】
管理プログラムによると、暫定対策の1つは、部品Eを実装するときの実装ヘッド18の動作に関するパラメータを変更することである。実装ヘッド18の動作に関するパラメータを部品Eが落下し難いパラメータに変更することにより、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0091】
管理プログラムによると、暫定対策の1つは、実装ヘッド18を別の実装ヘッド18に変更することである。実装ヘッド18を別の実装ヘッド18に変更することにより、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制できる。
【0092】
管理プログラムによると、暫定基板データを作成する作成処理を生産管理PC2に実行させるので、オペレータ5が手作業で暫定基板データを作成する場合に比べてオペレータ5の負担を軽減できる。
【0093】
実施形態1に係る生産管理PC2によると、実装ヘッド18の吸装着エラーが多発した場合に、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータ5でも適切に判断できる。
【0094】
実施形態1に係る部品実装システム1によると、実装ヘッド18の吸装着エラーが多発した場合に、ヘッドメンテナンスが行われるまでの間の吸装着エラーの発生を抑制するための暫定対策を実施すべきか否かを、スキルや経験が浅いオペレータ5でも適切に判断できる。
【0095】
部品実装システム1によると、表面実装機6は、生産管理PC2から暫定基板データを受信すると、現在生産中の基板Pの後、次に生産する基板Pの前に、表面実装機6の動作を停止させずに暫定基板データに切り替えるので、表面実装機6の動作を停止させずに暫定対策を実施できる。
【0096】
<実施形態2>
実施形態2を図10によって説明する。
前述した実施形態1では、S108でオペレータ5が暫定対策の実施を承諾した場合は処理を終了する。これに対し、図10に示すように、実施形態2に係る制御部30は、S108でオペレータ5が暫定対策の実施を承諾した場合はS111に進み、S101で選択した実装ヘッド18とS105で選択した暫定対策との組み合わせに対応する暫定基板データを表面実装機6に送信する(送信処理の一例)。
【0097】
実施形態2に係る生産管理PC2によると、オペレータ5が暫定対策の実施を承諾した場合は表面実装機6に暫定基板データを送信するので、暫定基板データに切り替えるための作業をオペレータ5が行う場合に比べてオペレータ5の負担を軽減できる。
【0098】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0099】
(1)上記実施形態では暫定対策として暫定対策A,B,Cを例示したが、暫定対策はこれらに限定されず、他の暫定対策であってもよい。
【0100】
(2)上記実施形態ではオペレータ5が設定した調整値を用いて第1の閾値を決定しているが、調整値はなくてもよい。
【0101】
(3)上記実施形態では式1によって第1の閾値を決定する場合を例に説明したが、オペレータが第1の閾値を任意に設定してもよい。また、記憶部31には予め式1によって決定された第1の閾値が実装ヘッド18毎且つ暫定対策毎に記憶されていてもよい。
【0102】
(4)上記実施形態1では生産管理PC2が自動で暫定基板データを作成する場合を例示したが、オペレータ5が手作業で暫定基板データを作成してもよい。
【0103】
(5)上記実施形態では、表面実装機6は、1枚の基板Pの生産が完了すると、その基板Pの生産中に記憶した作業時間とヘッド番号とを対応付けて生産管理PC2に送信する。これに対し、表面実装機6は、復旧作業が完了する毎に、作業時間とヘッド番号とを対応付けて生産管理PC2に送信してもよい。
【0104】
(6)上記実施形態では生産管理PC2が実装ヘッド18毎に復旧作業の作業時間を合計する。これに対し、表面実装機6が実装ヘッド18毎に復旧作業の作業時間を合計し、復旧作業の合計時間をヘッド番号と対応付けて生産管理PC2に送信してもい。その場合は、合計時間そのものが、復旧作業の合計時間を特定するための情報の一例である。
【0105】
(7)上記実施形態では生産管理PC2が表面実装機6から直接的に情報を取得している。これに対し、生産管理PC2は表面実装機6から間接的に情報を取得してもよい。例えば、表面実装機6は情報を所定のコンピュータに送信し、生産管理PC2は当該所定のコンピュータから情報を取得してもよい。
【0106】
(8)上記実施形態では直近の所定枚数の基板Pの復旧作業の合計時間の平均値が第1の閾値より大きいか否かを判断している。これに対し、平均値を用いるのではなく、1枚の基板Pの復旧作業の合計時間が第1の閾値より大きいか否かを判断してもよい。
【0107】
(9)上記実施形態では直近の所定枚数の基板Pの合計時間の平均値が第1の閾値より大きいか否かを判断している。この平均値は単純平均値であるが、重み付け平均値であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1: 部品実装システム
2: 生産管理PC(コンピュータ、及び、表面実装機の管理装置の一例)
5: オペレータ
6: 表面実装機
18: 実装ヘッド
18B: 吸着ノズル
30: 制御部
32: 通信部
E: 部品
P: 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10