(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057802
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20240418BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240418BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20240418BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20240418BHJP
H03K 17/695 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M7/48 E
H03K17/082
H03K17/16 D
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164708
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】石原 義昭
(72)【発明者】
【氏名】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】モイセエフ セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】野下 裕市
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA05
5H740BA12
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H770BA01
5H770DA03
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5H770GA03
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5J055AX26
5J055AX32
5J055BX16
5J055CX13
5J055DX09
5J055DX13
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5J055DX61
5J055EY01
5J055EY07
5J055FX04
5J055FX10
5J055GX01
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】回路規模の増大を抑えつつ、高速スイッチングに対応可能な電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置は、ゲートにゲート電圧Vgが印加されることによって主電流Isが流れるスイッチング素子11ulと、インダクタンス成分Lsを有し、主電流Isが流れる配線12ulと、配線12ulと並列に接続されたインダクタ31と、スイッチング素子11ulを駆動するための外部指令電圧Vrefが印加される入力端子13aと、入力端子13aとゲートとの間に設けられ、インダクタ31と磁気結合されるインダクタ32と、を備え、インダクタ31のインピーダンスは、配線12ulのインピーダンスよりも大きく、インダクタ31及びインダクタ32は、主電流Isが増加した場合に外部指令電圧Vrefを減少させるように巻き回されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子と主電流が流れる第1電流端子及び第2電流端子とを有し、前記制御端子に電圧が印加されることによって前記主電流が流れるスイッチング素子と、
前記主電流が流れる配線であって、インダクタンス成分を有する配線と、
前記配線と並列に接続された第1インダクタと、
前記スイッチング素子を駆動するための指令電圧が印加される入力端子と、
前記入力端子と前記制御端子との間に設けられ、前記第1インダクタと磁気結合される第2インダクタと、
を備え、
前記第1インダクタのインピーダンスは、前記配線のインピーダンスよりも大きく、
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタは、前記主電流が増加した場合に前記指令電圧を減少させるように巻き回されている、電力変換装置。
【請求項2】
制御端子と、主電流が流れる第1電流端子と、制御基準電位に接続されるとともに前記主電流が流れる第2電流端子とを有し、前記制御端子に電圧が印加されることによって前記主電流が流れるスイッチング素子と、
前記第2電流端子に接続されることで前記主電流が流れる配線であって、インダクタンス成分を有する配線と、
前記配線と並列に接続された第1インダクタと、
前記スイッチング素子を駆動するための指令電圧が印加される入力端子と、
一端が前記配線と前記第1インダクタとの接続点に接続され、他端が前記制御基準電位に接続される第2インダクタと、
を備え、
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、磁気結合され、
前記第1インダクタのインピーダンスは、前記配線のインピーダンスよりも大きく、
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタは、前記主電流が増加した場合に前記指令電圧を減少させるように巻き回されている、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング損失の低減とサージ電圧又はサージ電流の低減との両立を図るために、ゲート電圧を制御するアクティブゲート制御が知られている。例えば、特許文献1には、パワー半導体のメイン電流経路に誘導結合される誘導結合素子において生じたフィードバック電圧をゲートドライバに供給することによってゲート電圧を制御するゲート駆動回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3174205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のゲート駆動回路では、メイン電流経路の配線と誘導結合素子(コイル)とを磁気結合させているので、磁気結合が安定しないおそれがある。磁気結合を安定させるためにメイン電流経路にコイルを直列に挿入し、フィードバック用のコイルとの間でトランスを構成することが考えられる。しかしながら、メイン電流経路には大電流が流れるので、コイルが大型化するおそれがある。さらに、特許文献1に記載のゲート駆動回路では、フィードバック電圧がアンプを介してゲートに供給されるので、当該アンプにおいて遅延が生じ得る。したがって、高速スイッチングに対応することが困難となるおそれがある。
【0005】
本開示は、回路規模の増大を抑えつつ、高速スイッチングに対応可能な電力変換装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、制御端子と主電流が流れる第1電流端子及び第2電流端子とを有し、制御端子に電圧が印加されることによって主電流が流れるスイッチング素子と、主電流が流れる配線であって、インダクタンス成分を有する配線と、当該配線と並列に接続された第1インダクタと、スイッチング素子を駆動するための指令電圧が印加される入力端子と、入力端子と制御端子との間に設けられ、第1インダクタと磁気結合される第2インダクタと、を備える。第1インダクタのインピーダンスは、配線のインピーダンスよりも大きい。第1インダクタ及び第2インダクタは、主電流が増加した場合に指令電圧を減少させるように巻き回されている。
【0007】
この電力変換装置においては、主電流が流れる配線と並列に第1インダクタが接続されている。このため、主電流が流れることによって配線のインダクタンス成分に逆起電圧が生じると、第1インダクタにも同じ逆起電圧が生じる。第1インダクタと磁気結合されている第2インダクタには、巻線比に応じた電圧が生じ、当該電圧が指令電圧に加算されることによって、制御端子に印加される電圧が調整される。第1インダクタのインピーダンスは、配線のインピーダンスよりも大きいので、主電流は主に配線に流れ、第1インダクタには比較的小さい電流が流れる。したがって、第1インダクタを小型化することができる。さらに、アンプなどの回路要素を用いることなく、第2インダクタによって、スイッチング素子の制御端子に印加される電圧が調整される。このため、アンプなどの回路要素を含むドライバ回路と比較して、指令電圧と第2インダクタにおいて生じた電圧とが高速に加算され得る。以上のことから、回路規模の増大を抑えつつ、高速スイッチングに対応することが可能となる。
【0008】
本開示の別の側面に係る電力変換装置は、制御端子と、主電流が流れる第1電流端子と、制御基準電位に接続されるとともに主電流が流れる第2電流端子とを有し、制御端子に電圧が印加されることによって主電流が流れるスイッチング素子と、第2電流端子に接続されることで主電流が流れる配線であって、インダクタンス成分を有する配線と、配線と並列に接続された第1インダクタと、スイッチング素子を駆動するための指令電圧が印加される入力端子と、一端が配線と第1インダクタとの接続点に接続され、他端が制御基準電位に接続される第2インダクタと、を備える。第1インダクタと第2インダクタとは、磁気結合されている。第1インダクタのインピーダンスは、配線のインピーダンスよりも大きい。第1インダクタ及び第2インダクタは、主電流が増加した場合に指令電圧を減少させるように巻き回されている。
【0009】
この電力変換装置においては、主電流が流れる配線と並列に第1インダクタが接続されている。このため、主電流が流れることによって配線のインダクタンス成分に逆起電圧が生じると、第1インダクタにも同じ逆起電圧が生じる。第1インダクタと磁気結合されている第2インダクタには、巻線比に応じた電圧が生じ、当該電圧が制御基準電位に印加されることによって、制御端子に印加される電圧が調整される。第1インダクタのインピーダンスは、配線のインピーダンスよりも大きいので、主電流は主に配線に流れ、第1インダクタには比較的小さい電流が流れる。したがって、第1インダクタを小型化することができる。さらに、アンプなどの回路要素を用いることなく、第2インダクタによって、スイッチング素子の制御端子に印加される電圧が調整される。このため、アンプなどの回路要素を含むドライバ回路と比較して、指令電圧と第2インダクタにおいて生じた電圧とが高速に加算され得る。以上のことから、回路規模の増大を抑えつつ、高速スイッチングに対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、回路規模の増大を抑えつつ、高速スイッチングに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるスイッチング素子及びドライバ回路を模式的に示す回路図である。
【
図3】
図3は、ターンオフ時の動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、ターンオン時の動作を説明するための図である。
【
図5】
図5の(a)は、スイッチング素子及びインダクタの実装例を示す図である。
図5の(b)は、
図5の(a)に示されるスイッチング素子の回路図である。
【
図6】
図6は、
図1に示されるドライバ回路の別の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態に係る電力変換装置を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0013】
図1を参照しながら、一実施形態に係る電力変換装置の回路構成を説明する。
図1は、一実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図1に示される電力変換装置1は、外部電源2から供給された直流電力を、モータ3が駆動可能な交流電力に変換するインバータ装置である。電力変換装置1は、例えば、車両に搭載されている。
【0014】
外部電源2は、直流電源であって、例えば蓄電池(バッテリ)である。電力変換装置1は、入力端子1a及び入力端子1bを有している。入力端子1aは外部電源2の正極端子に接続されており、入力端子1bは外部電源2の負極端子及び基準電位V0に接続されている。
【0015】
モータ3は、3相のコイル3u、コイル3v及びコイル3wを有している。コイル3u,3v,3wは、例えば、Y結線で接続されている。コイル3u,3v,3wに所定のパターンで電流が流れることによって、モータ3が回転する。コイル3u,3v,3wの接続態様は、Y結線に限られず、デルタ結線でもよい。
【0016】
電力変換装置1は、スイッチング素子11uh,11ul,11vh,11vl,11wh,11wl(以下、「スイッチング素子11uh~11wl」という。)と、還流ダイオードDuh,Dul,Dvh,Dvl,Dwh,Dwl(以下、「還流ダイオードDuh~Dwl」という。)と、ドライバ回路13uh,13ul,13vh,13vl,13wh,13wl(以下、「ドライバ回路13uh~13wl」という。)と、コンデンサ14と、制御装置15と、を含む。
【0017】
スイッチング素子11uh~11wlのそれぞれは、制御端子、第1電流端子、及び第2電流端子を有する。本実施形態では、各スイッチング素子11uh~11wlとして、nチャネル型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が例示される。この場合、制御端子はゲートであり、第1電流端子はドレインであり、第2電流端子はソースである。スイッチング素子11uh~11wlのそれぞれは、pチャネル型のMOSFETであってもよい。スイッチング素子11uh~11wlのそれぞれは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。この場合、制御端子はゲートであり、第1電流端子はコレクタであり、第2電流端子はエミッタである。
【0018】
スイッチング素子11uhは、U相の上アームのスイッチング素子である。スイッチング素子11ulは、U相の下アームのスイッチング素子である。スイッチング素子11uhとスイッチング素子11ulとは、入力端子1aと入力端子1bとの間に直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子11uhのドレインは、入力端子1aに接続されている。スイッチング素子11uhのソースと、スイッチング素子11ulのドレインとは、互いに接続されており、コイル3uに接続されている。スイッチング素子11ulのソースは、入力端子1bに接続されている。
【0019】
スイッチング素子11vhは、V相の上アームのスイッチング素子である。スイッチング素子11vlは、V相の下アームのスイッチング素子である。スイッチング素子11vhとスイッチング素子11vlとは、入力端子1aと入力端子1bとの間に直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子11vhのドレインは、入力端子1aに接続されている。スイッチング素子11vhのソースと、スイッチング素子11vlのドレインとは、互いに接続されており、コイル3vに接続されている。スイッチング素子11vlのソースは、入力端子1bに接続されている。
【0020】
スイッチング素子11whは、W相の上アームのスイッチング素子である。スイッチング素子11wlは、W相の下アームのスイッチング素子である。スイッチング素子11whとスイッチング素子11wlとは、入力端子1aと入力端子1bとの間に直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子11whのドレインは、入力端子1aに接続されている。スイッチング素子11whのソースと、スイッチング素子11wlのドレインとは、互いに接続されており、コイル3wに接続されている。スイッチング素子11wlのソースは、入力端子1bに接続されている。
【0021】
スイッチング素子11uh~11wlのゲートには、ドライバ回路13uh~13wlからそれぞれゲート電圧Vgが印加される。ゲートにゲート電圧Vgが印加されることにより、各スイッチング素子には、ドレインとソースとの間に主電流(ソース電流)Isが流れる。具体的には、ゲート・ソース間電圧がスイッチング素子の閾値電圧よりも大きくなった場合に、スイッチング素子がオンとなり、ゲート・ソース間電圧と閾値電圧との差分に応じた主電流Isがドレインとソースとの間に流れる。
【0022】
還流ダイオードDuh~Dwlは、スイッチング素子11uh~11wlにそれぞれ並列に接続された還流ダイオードである。各還流ダイオードのカソードは、対応するスイッチング駆動素子のドレインに接続されている。各還流ダイオードのアノードは、対応するスイッチング素子のソースに接続されている。
【0023】
ドライバ回路13uh~13wlのそれぞれは、アクティブゲートドライバ回路であって、制御装置15から入力される外部指令電圧Vrefと逆起電圧Vssとに基づいて、ゲート電圧Vgを変化させる。ドライバ回路の詳細は後述する。
【0024】
コンデンサ14は、外部電源2によって充電され、電力変換装置1が動作する際に発生する電圧変動を抑制するために用いられる。コンデンサ14は、外部電源2と並列に接続されている。具体的には、コンデンサ14の一端は入力端子1aに接続され、コンデンサ14の他端は入力端子1bに接続されている。コンデンサ14としては、例えば、複数の電解コンデンサを含むコンデンサバンクが用いられる。
【0025】
制御装置15は、スイッチング素子11uh~11wlを駆動するための外部指令電圧Vrefを生成する回路である。制御装置15は、外部からの指令(例えば、要求回転速度)に基づいて、モータ3に流れる目標電流を決定し、その目標電流が流れるための外部指令電圧Vrefを導出する。本実施形態では、制御装置15は、スイッチング素子ごとに外部指令電圧Vrefを導出し、ドライバ回路13uh~13wlのそれぞれに外部指令電圧Vrefを供給する。
【0026】
次に、
図2を参照しながら、ドライバ回路13uh~13wlを詳細に説明する。
図2は、
図1に示されるスイッチング素子及びドライバ回路を模式的に示す回路図である。ここで、ドライバ回路13uh~13wlのそれぞれは、基本的に同一の構成を有している。したがって、ドライバ回路13ulを詳細に説明する。
【0027】
図2に示されるように、電力変換装置1は、主電流Isが流れる配線12ulを更に含む。配線12ulは、スイッチング素子11ulのソースと基準電位V0(入力端子1b)とを接続する。配線12ulは、インダクタンス成分Ls(浮遊インダクタンス)を有している。スイッチング素子11ulのソースは、制御基準電位に接続されている。
【0028】
ドライバ回路13ulは、入力端子13aと、インダクタ31(第1インダクタ)と、インダクタ32(第2インダクタ)と、ゲート抵抗33と、を含む。入力端子13aには、スイッチング素子11ulを駆動するための外部指令電圧Vrefが印加される。
【0029】
インダクタ31は、配線12ulと並列に接続されている。具体的には、インダクタ31の一端は、スイッチング素子11ulのソースに接続され、インダクタ31の他端は、入力端子1bを介して基準電位V0に接続されている。インダクタ31のインピーダンスは、配線12ulのインピーダンスよりも大きい。インダクタ31のインピーダンスは、例えば、配線12ulのインピーダンスの100倍程度に設定されている。したがって、主電流Isの大部分は配線12ulに流れ、インダクタ31には電流はほとんど流れない。
【0030】
インダクタ32及びゲート抵抗33は、入力端子13aとスイッチング素子11ulのゲートとの間に設けられ、直列に接続されている。具体的には、インダクタ32の一端は入力端子13aに接続され、インダクタ32の他端はゲート抵抗33を介してスイッチング素子11ulのゲートに接続されている。インダクタ32は、インダクタ31と磁気結合されている。具体的には、インダクタ31とインダクタ32とは磁性材料で形成されたコアに巻回され、トランスを構成している。インダクタ31はトランスの一次側であり、インダクタ32はトランスの二次側である。インダクタ31とインダクタ32との巻線比は、1:n(nは正の値)である。
【0031】
インダクタ31及びインダクタ32は、主電流Isが増加した場合に、インダクタ32において生じる電圧が外部指令電圧Vrefを減少させるように巻き回されている。言い換えると、インダクタ31及びインダクタ32は、主電流Isが減少した場合に、インダクタ32において生じる電圧が外部指令電圧Vrefを増加させるように巻き回されている。
【0032】
次に、
図3及び
図4を更に参照しながら、スイッチング素子のターンオン及びターンオフ時の動作を説明する。
図3は、ターンオフ時の動作を説明するための図である。
図4は、ターンオン時の動作を説明するための図である。スイッチング素子11uh~11wlのいずれの動作も基本的に同じであるので、ここでは、スイッチング素子11ulのターンオフ及びターンオンを説明する。
【0033】
図3に示されるように、外部指令電圧Vrefがゼロに変更されると、スイッチング素子11ulのゲート電圧Vgが下がり始め、スイッチング素子11ulのターンオフが開始される。そして、配線12ulに流れる主電流Isが減少すると、配線12ulのインダクタンス成分Lsによって正の逆起電圧Vss(=-Ls×dIs/dt)が発生する。インダクタ31は配線12ul(インダクタンス成分Ls)と並列に接続されているので、インダクタ31にも逆起電圧Vssが発生する。
【0034】
インダクタ31とインダクタ32とは磁気結合されており、その巻線比は1:nであるので、インダクタ32には、逆起電圧Vssのn倍の電圧(=n×Vss)が発生する。これにより、インダクタ32とゲート抵抗33との接続点における電圧Vaは、外部指令電圧Vrefに逆起電圧Vssのn倍の電圧を加算した電圧(=Vref+n×Vss)となる。したがって、主電流Isの減少が継続している間、電圧Vaは外部指令電圧Vrefよりも大きくなるので、ゲート電圧Vgの下降速度が緩和され、その分ターンオフ速度が遅くなる。その結果、スイッチング素子11ulのドレイン・ソース間電圧Vdsにおける電圧サージが抑えられる。
【0035】
図4に示されるように、外部指令電圧Vrefがゼロから所定の値に変更されると、スイッチング素子11ulのゲート電圧Vgが上昇し始め、スイッチング素子11ulのターンオンが開始される。そして、配線12ulに主電流Isが流れ始めると、配線12ulのインダクタンス成分Lsによって負の逆起電圧Vss(=-Ls×dIs/dt)が発生する。インダクタ31は配線12ul(インダクタンス成分Ls)と並列に接続されているので、インダクタ31にも逆起電圧Vssが発生する。
【0036】
インダクタ31とインダクタ32とは磁気結合されており、その巻線比は1:nであるので、インダクタ32には、逆起電圧Vssのn倍の電圧(=n×Vss)が発生する。これにより、インダクタ32とゲート抵抗33との接続点における電圧Vaは、外部指令電圧Vrefに逆起電圧Vssのn倍の電圧を加算した電圧となる。ここで、逆起電圧Vssは負の値であるので、電圧Vaは、外部指令電圧Vrefから逆起電圧Vssの絶対値のn倍を減算した電圧(=Vref-n×|Vss|)となる。したがって、主電流Isの増加が継続している間、電圧Vaは外部指令電圧Vrefよりも小さくなるので、ゲート電圧Vgの上昇速度が緩和され、その分ターンオン速度が遅くなる。その結果、主電流Isにおける電流サージが抑えられる。
【0037】
そして、主電流Isがピークを越えて減少に転じると、逆起電圧Vssの符号が逆転し、正の逆起電圧Vssが発生する。これにより、電圧Vaは外部指令電圧Vrefよりも大きくなるので、ゲート電圧Vgの上昇速度が高められ、その分ターンオン速度が速くなる。その結果、ターンオン時間が短縮される。
【0038】
次に、
図5の(a)及び
図5の(b)を参照しながら、スイッチング素子及びインダクタの実装例を説明する。
図5の(a)は、スイッチング素子及びインダクタの実装例を示す図である。
図5の(b)は、
図5の(a)に示されるスイッチング素子の回路図である。
【0039】
図5の(b)に示されるように、スイッチング素子として、部品C11が用いられる。部品C11は、ドレインT1、パワーソースT2、ドライバソースT3、及びゲートT4を有する4端子パッケージ品である。パワーソースT2は、大電流が流れる端子である。ドライバソースT3は、制御基準電位用の端子である。部品C11は、スイッチング素子11と、還流ダイオードDと、を含む。
【0040】
図5の(a)に示されるように、基板10に部品C11が実装される。基板10には、配線パターンP1~P4が形成されている。配線パターンP1は、ドレインT1に接続される。配線パターンP2は、パワーソースT2に接続される。配線パターンP3は、ドライバソースT3に接続される、配線パターンP4は、ゲートT4に接続される。配線パターンP2と配線パターンP3とにまたがって、インダクタ31が実装される。つまり、インダクタ31の一端が配線パターンP3に接続され、インダクタ31の他端が配線パターンP2に接続されるように、インダクタ31が実装される。
【0041】
この実装例では、部品C11の内部配線部分がインダクタンス成分Lsとして用いられるので、実装を簡易化することができる。
【0042】
以上説明した電力変換装置1においては、主電流Isが流れる配線12ulと並列にインダクタ31が接続されている。このため、主電流Isが流れることによって配線12ulのインダクタンス成分Lsに逆起電圧Vssが生じると、インダクタ31にも同じ逆起電圧Vssが生じる。インダクタ31と磁気結合されているインダクタ32には、巻線比に応じた電圧が生じ、当該電圧が外部指令電圧Vrefに加算されることによって、スイッチング素子11ulのゲートに印加されるゲート電圧Vgが調整される。
【0043】
インダクタ31のインピーダンスは、配線12ulのインピーダンスよりも大きいので、主電流Isは主に配線12ulに流れ、インダクタ31には比較的小さい電流が流れる。したがって、インダクタ31を小型化することができ、コストを削減することができる。さらに、アンプなどの回路要素を用いることなく、インダクタ32によって、ゲート電圧Vgが調整される。このため、アンプなどの回路要素を含むドライバ回路と比較して、ドライバ回路13ulでは、外部指令電圧Vrefとインダクタ32において生じた電圧とが高速に加算され得る。
【0044】
なお、ドライバ回路13ul以外のドライバ回路もドライバ回路13ulと同様の回路構成を有している。したがって、これらのドライバ回路においても、ドライバ回路13ulと同様の効果が得られる。以上のことから、電力変換装置1によれば、回路規模の増大を抑えつつ、高速スイッチングに対応することが可能となる。
【0045】
インダクタ31とインダクタ32との巻線比を変更することによって、インダクタ32において発生する電圧の大きさが調整され得る。したがって、外部指令電圧Vrefに対する増減量を変更することができるので、電圧サージ量及び電流サージ量を調整することが可能となる。
【0046】
以上、本開示の一実施形態について詳細に説明されたが、本開示に係る電力変換装置は上記実施形態に限定されない。
【0047】
例えば、ドライバ回路13uh~13wlのそれぞれは、ゲート抵抗33を含んでいなくてもよい。
【0048】
部品C11として、3端子のパッケージ品が用いられてもよく、モジュールが用いられてもよい。
【0049】
図6に示されるように、インダクタ32は、スイッチング素子11ulのソースと制御基準電位との間に設けられてもよい。具体的には、インダクタ32の一端は配線12ulとインダクタ31との接続点に接続され、インダクタ32の他端は制御基準電位に接続されている。上記接続点は、スイッチング素子11ulのソースと配線12ulとの接続点でもある。つまり、インダクタ32の一端は、上記接続点を介してスイッチング素子11ulのソースに接続されている。
【0050】
図2に示される例と同様に、インダクタ31及びインダクタ32は、主電流Isが増加した場合に、インダクタ32において生じる電圧が外部指令電圧Vrefを減少させるように巻き回されている。言い換えると、インダクタ31及びインダクタ32は、主電流Isが減少した場合に、インダクタ32において生じる電圧が外部指令電圧Vrefを増加させるように巻き回されている。なお、
図6には、ドライバ回路13ulが図示されているが、他のドライバ回路も同様に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電力変換装置、11uh,11ul,11vh,11vl,11wh,11wl…スイッチング素子、12ul…配線、13a…入力端子、31…インダクタ(第1インダクタ)、32…インダクタ(第2インダクタ)、Is…主電流、Ls…インダクタンス成分、Vg…ゲート電圧、Vref…外部指令電圧(指令電圧)。