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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057803
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】給油ユニット及び押出機
(51)【国際特許分類】
   F16N 7/38 20060101AFI20240418BHJP
   F16N 7/32 20060101ALI20240418BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20240418BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20240418BHJP
   B29C 48/37 20190101ALI20240418BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240418BHJP
   B29C 48/94 20190101ALI20240418BHJP
【FI】
F16N7/38 B
F16N7/38 E
F16N7/32 B
B29C48/395
B29C48/25
B29C48/37
B29C48/92
B29C48/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164709
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 祐
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AM19
4F207AP20
4F207AR14
4F207AR20
4F207KM04
4F207KM14
4F207KM22
(57)【要約】
【課題】潤滑対象の数に対する給油ユニットの数の削減や、給油ユニットの構成の簡素化が望まれる。
【解決手段】一実施形態の給油ユニット40は、潤滑油を貯留するタンク51と、第1潤滑対象からタンク51に潤滑油を回帰させる戻し油路58と、第2潤滑対象からタンク51に潤滑油を回帰させる戻し油路65と、戻し油路65に設けられたタンク63及びポンプ64aと、戻し油路65とタンク63とを接続する補充用油路70と、補充用油路70に設けられたバルブ71と、タンク63に貯留されている潤滑油の油面を監視する監視部73と、監視部73の監視結果に基づいてバルブ71を制御するバルブ制御部72と、を有する。そして、タンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内であるときにはバルブ71が閉じられ、タンク63内の潤滑油の油面の高さが前記規定範囲を下回るとバルブ71が開かれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の潤滑対象に潤滑油を同時供給する給油ユニットであって、
潤滑油を貯留する第1タンクと、
前記第1タンクに接続された共通油路と、
前記共通油路に設けられた第1ポンプ,オイルフィルタ及びオイルクーラと、
前記共通油路と第1潤滑対象とを接続する第1分岐油路と、
前記共通油路と第2潤滑対象とを接続する第2分岐油路と、
前記第1潤滑対象から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第1戻し油路と、
前記第2潤滑対象から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第2戻し油路と、
前記第2戻し油路に設けられた第2タンク及び第2ポンプと、
前記第2戻し油路と前記第2タンクとを接続する補充用油路と、
前記補充用油路に設けられた第2バルブと、
前記第2タンクに貯留されている潤滑油の油面を監視する監視部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記第2バルブを制御する制御部と、を有し、
前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内であるときには前記第2バルブが閉じられ、前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが前記規定範囲を下回ると前記第2バルブが開かれる、
給油ユニット。
【請求項2】
押出機本体,ギヤポンプ及び給油ユニットを備える押出機であって、
前記押出機本体は、
第1モータと、
前記第1モータから出力される回転駆動力が入力される第1減速機と、
前記第1減速機から出力される回転駆動力によって駆動されるスクリューと、を備え、
前記ギヤポンプは、
第2モータと、
前記第2モータから出力される回転駆動力が入力される第2減速機と、
前記第2減速機から出力される回転駆動力によって駆動されて溶融樹脂を押し出す歯車と、を備え、
前記給油ユニットは、
潤滑油を貯留する第1タンクと、
前記第1タンクに接続された共通油路と、
前記共通油路に設けられた第1ポンプ,オイルフィルタ及びオイルクーラと、
前記共通油路と前記第1減速機とを接続する第1分岐油路と、
前記共通油路と前記第2減速機とを接続する第2分岐油路と、
前記第1減速機から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第1戻し油路と、
前記第2減速機から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第2戻し油路と、
前記第2戻し油路に設けられた第2タンク及び第2ポンプと、
前記第2戻し油路と前記第2タンクとを接続する補充用油路と、
前記補充用油路に設けられた第2バルブと、
前記第2タンクに貯留されている潤滑油の油面を監視する監視部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記第2バルブを制御する制御部と、を有し、
前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内であるときには前記第2バルブが閉じられ、前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが前記規定範囲を下回ると前記第2バルブが開かれる、
押出機。
【請求項3】
2つ以上の押出機本体と、それら押出機本体に潤滑油を同時供給する給油ユニットと、を備える押出機であって、
前記給油ユニットは、
潤滑油を貯留する第1タンクと、
前記第1タンクに接続された共通油路と、
前記共通油路に設けられた第1ポンプ,オイルフィルタ及びオイルクーラと、
前記共通油路と第1押出機本体とを接続する第1分岐油路と、
前記共通油路と第2押出機本体とを接続する第2分岐油路と、
前記第1押出機本体から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第1戻し油路と、
前記第2押出機本体から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第2戻し油路と、
前記第2戻し油路に設けられた第2タンク及び第2ポンプと、
前記第2戻し油路と前記第2タンクとを接続する補充用油路と、
前記補充用油路に設けられた第2バルブと、
前記第2タンクに貯留されている潤滑油の油面を監視する監視部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記第2バルブを制御する制御部と、を有し、
前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内であるときには前記第2バルブが閉じられ、前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが前記規定範囲を下回ると前記第2バルブが開かれる、
押出機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の押出機において、
前記給油ユニットは、前記第2タンクと前記第2戻し油路とを接続する排出用油路と、前記排出用油路に設けられた第3ポンプと、を有し、
前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが前記規定範囲を上回ると、前記第2バルブが閉じられた状態で前記第3ポンプが稼働される、
押出機。
【請求項5】
請求項4に記載の押出機において、
前記給油ユニットは、前記第1タンクと前記共通油路とを接続する予備用油路と、前記予備用油路に設けられた第4ポンプと、を有する、
押出機。
【請求項6】
請求項5に記載の押出機において、
前記監視部は、前記第2タンクに貯留されている潤滑油に接触することなく油面の高さを測定するレベルトランスミッタである、
押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油ユニット及び押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達系を構成する要素や動力伝達系を介して動力が伝達される要素を円滑に稼働させるためには、それら要素に潤滑油を供給する必要がある。特許文献1には、モータから出力される回転駆動力をスクリューに伝達する減速機を備えた押出機が記載されている。特許文献1に記載されている押出機が備える減速機は、上記のような要素(潤滑対象)の一例である。
【0003】
潤滑対象に継続的に潤滑油を供給するために、ポンプ,タンク,バルブ等が一体化された給油ユニットが構成される場合がある。そして、潤滑対象が複数存在する場合には、潤滑対象ごとに給油ユニットが用意される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-136959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
潤滑対象の数に対する給油ユニットの数の削減や、給油ユニットの構成の簡素化が望まれる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の給油ユニットは、潤滑油を貯留する第1タンクと、前記第1タンクに接続された共通油路と、前記共通油路に設けられた第1ポンプ,オイルフィルタ及びオイルクーラと、前記共通油路と第1潤滑対象とを接続する第1分岐油路と、前記共通油路と第2潤滑対象とを接続する第2分岐油路と、前記第1潤滑対象から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第1戻し油路と、前記第2潤滑対象から前記第1タンクに潤滑油を回帰させる第2戻し油路と、前記第2戻し油路に設けられた第2タンク及び第2ポンプと、前記第2戻し油路と前記第2タンクとを接続する補充用油路と、前記補充用油路に設けられた第2バルブと、前記第2タンクに貯留されている潤滑油の油面を監視する監視部と、前記監視部の監視結果に基づいて前記第2バルブを制御する制御部と、を有する。そして、前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内であるときには前記第2バルブが閉じられ、前記第2タンク内の潤滑油の油面の高さが前記規定範囲を下回ると前記第2バルブが開かれる。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、複数の潤滑対象に同時に潤滑油を供給可能な単一の給油ユニットが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】造粒装置を模式的に示す説明図である。
図2】押出機が備える給油ユニットを模式的に示す説明図である。
図3】バルブが閉じているときの潤滑油の流れを示す説明図である。
図4】バルブが開いているときの潤滑油の流れを示す説明図である。
図5】給油ユニットの制御プロセスの一例を示すフローチャート図である。
図6】他の押出機を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の機能を有する要素や構成には同一の符号を付す。また、一度説明した要素や構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0011】
<全体構成>
図1は、一実施形態に係る造粒装置1Aを模式的に示す説明図である。図1に示される造粒装置1Aは、押出機10及び造粒機30を有する。
【0012】
押出機10は、供給された樹脂原料を加熱しながら混練して溶融樹脂を作る押出機本体10aと、溶融樹脂を造粒機30に搬送するギヤポンプ20と、複数の潤滑対象に潤滑油を同時供給する給油ユニット40と、を備えている。
【0013】
造粒機30は、押出機10から押し出される溶融樹脂をストランド状(紐状、ロープ状)に成形するダイヘッド31と、ストランド状に成形された溶融樹脂を切断するカッタ32と、を備えている。
【0014】
本実施形態の給油ユニット40が潤滑油を供給する潤滑対象は、押出機10が備える2つの減速機である。より特定的には、潤滑対象の1つは、押出機本体10aが備える減速機であり、潤滑対象の他の1つは、ギヤポンプ20が備える減速機である。もっとも、給油ユニット40が潤滑油を同時供給する潤滑対象は、上記2つの減速機に限られない。
【0015】
<押出機本体>
押出機本体10aは、メインモータ11,減速機12及び混練処理部13を有する。メインモータ11は、混練処理部13の駆動源である。メインモータ11から出力される回転駆動力は、減速機12に入力される。減速機12は、入力された回転駆動力の回転速度を減じ、回転力を増大させて混練処理部13に出力する。混練処理部13は、入力された回転駆動力によって駆動される2本のスクリュー14a,14bを備えている。
【0016】
混練処理部13が備えるスクリュー14a,14bは、溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリュー14a,14bは、樹脂原料が供給されるシリンダ(バレル)15の内部に設けられ、回転自在に支持されている。樹脂原料は、シリンダ15の長手方向一端側に設けられている原料ホッパ16を介してシリンダ15内に供給される。
【0017】
上記のとおり、2本のスクリュー14a,14bは、メインモータ11によって回転駆動される。スクリュー14a,14bは、互いに平行に並んでおり、かつ、同時に回転駆動される。つまり、押出機10は、同時駆動される互いに平行な2本のスクリュー14a,14bを備えており、一般的に“二軸押出機”と呼ばれる。もっとも、押出機10は二軸型に限られず、一軸型であってもよい。
【0018】
なお、以下の説明では、2本のスクリュー14a,14bを“スクリュー14”と総称する場合がある。
【0019】
<ギヤポンプ>
ギヤポンプ20は、押出機本体10a(混練処理部13のシリンダ15)から送り出される溶融樹脂を造粒機30に移送(圧送)する。ギヤポンプ20は、モータ21,減速機22及び一対の歯車23を有する。歯車23は、シリンダ15に対して直角に延びている搬送路上に配置されているハウジング24内に設けられ、回転自在に支持されている。
【0020】
なお、シリンダ15に対して平行な搬送路上にハウジング24が配置される実施形態もある。別の見方をすると、ハウジング24が配置されている搬送路がシリンダ15から直線状に延びる実施形態もある。
【0021】
モータ21から出力される回転駆動力は、減速機22に入力される。減速機22は、入力された回転駆動力の回転速度を減じ、回転力を増大させて歯車23に出力する。歯車23は、入力された回転駆動力によってハウジング24内で回転し、ハウジング24内に送り込まれた溶融樹脂を造粒機30に向けて押し出す。
【0022】
<造粒機>
造粒機30が備えるダイヘッド31は、ダイホルダ,ダイプレート,ダイプレートカバー等を含んでおり、溶融樹脂が押し出される複数のノズルを備えている。ギヤポンプ20によって造粒機30に送り込まれた溶融樹脂は、ダイヘッド31の各ノズルから押し出されることにより、ストランド状(紐状、ロープ状)に成形される。
【0023】
造粒機30が備えるカッタ32は、ダイヘッド31から押し出されるストランド状の溶融樹脂を連続的に切断する。カッタ32は、造粒装置1Aを含む製造システム内を循環するペレット輸送水の流路上に設けられており、カッタモータ33によって駆動されるカッタヘッドを備えている。溶融樹脂は、ダイヘッド31からペレット輸送水中に押し出され、カッタヘッドにより所定の長さに切断される。この結果、所定の大きさ(長さ及び太さ)の樹脂ペレットが製造される。
【0024】
ペレット輸送水中(水中)で溶融樹脂を切断する上記手法は、“アンダーウォータカット”と呼ばれることがある。なお、樹脂原料の特性(特に、融点)によっては、ペレット輸送水を循環させずに樹脂ペレットが製造されることもある。この場合、ダイヘッド31から押し出された溶融樹脂は、空中に押し出されて切断される。このように、空中で溶融樹脂を切断する手法は“ホットカット”と呼ばれることがある。
【0025】
<給油ユニットの構成>
図2は、本実施形態に係る押出機10が備える給油ユニット40を模式的に示す説明図である。給油ユニット40は、押出機本体10aが備える減速機12と、ギヤポンプ20が備える減速機22と、に潤滑油を同時供給する。
【0026】
給油ユニット40は、2つのタンク51,63と、これらタンク51,63と減速機12,22との間で潤滑油を循環させるための油路やポンプ等を有する。
【0027】
より特定的には、給油ユニット40は、タンク51に接続された共通油路52を有する。共通油路52上には、ポンプ53a,オイルクーラ54,オイルフィルタ56,オイルフィルタ62が設けられている。共通油路52は、オイルフィルタ56,62の先(下流側)で減速機12に繋がる分岐油路55と、減速機22に繋がる分岐油路61と、に分かれている。
【0028】
減速機12に繋がる分岐油路55にはバルブ57が設けられている。バルブ57は、手動バルブである。バルブ57の開度は、減速機12及び減速機22に所定量の潤滑油が供給されるように設定されており、また、必要に応じて調整される。
【0029】
給油ユニット40は、共通油路52及び分岐油路55を通じて減速機12に供給された潤滑油をタンク51に回帰させる戻し油路58と、共通油路52及び分岐油路61を通じて減速機22に供給された潤滑油をタンク51に回帰させる戻し油路65と、をさらに有する。
【0030】
タンク63は、戻し油路65上に設けられており、タンク63よりも下流側の戻し油路65上にはポンプ64aが設けられている。もっとも、減速機22に供給された潤滑油は、重力(自重)によってタンク63に流入する。そこで、戻し油路65のタンク63よりも上流側の区間を“接続路65a”と呼んで他の区間と区別する場合がある。また、特に断らない限り、以下の説明中で“戻し油路65”と言う場合、タンク63よりも下流側の区間(接続路65a以外の区間)を意味するものとする。
【0031】
給油ユニット40は、戻し油路65とタンク63とを接続する補充用油路70をさらに有する。加えて、給油ユニット40は、補充用油路70に設けられたバルブ71と、バルブ71を制御する制御部72と、タンク63に貯留されている潤滑油の油面を監視する監視部73と、を有する。以下の説明では、制御部72を“バルブ制御部72”と呼ぶ場合がある。
【0032】
バルブ71は、電磁バルブである。制御部72は、監視部73の監視結果に基づいてバルブ71を制御する。監視部73は、タンク63内の潤滑油に接触することなく油面の高さを測定するレベルトランスミッタである。より特定的には、監視部73は、超音波や電磁波などを油面に向けて発射してから戻ってくるまでの時間に基づいて油面の高さを測定する。
【0033】
もっとも、監視部73は、レベルトランスミッタなどの非接触型に限られず、フロート式や圧力式などの接触型に置換することができる。
【0034】
給油ユニット40は、タンク51と共通油路52とを接続する予備用油路59と、タンク63と戻し油路65とを接続する排出用油路66と、をさらに有する。予備用油路59にはポンプ53bが設けられ、排出用油路66にはポンプ64bが設けられている。
【0035】
予備用油路59の一端側は、ポンプ53aとオイルクーラ54との間で共通油路52に合流している。よって、ポンプ53aとポンプ53bとのいずれを稼働させても、タンク51内の潤滑油は、共通油路52に送り出され、オイルクーラ54を通過して下流側に流れる。ポンプ53bは、何らかの原因でポンプ53aが稼働しなくなった際に、ポンプ53aに代わって稼働される。つまり、ポンプ53bは、バックアップ用のポンプである。
【0036】
給油ユニット40の構成要素のうち、少なくともタンク51,共通油路52,ポンプ53a,ポンプ53b,オイルクーラ54,オイルフィルタ56,バルブ57,予備用油路59,オイルフィルタ62,タンク63,ポンプ64a,ポンプ64b,排出用油路66,補充用油路70,バルブ71,バルブ制御部72及び監視部73は、共通のベース部材(例えば、スキッドプレート)の上に設けられている。また、給油ユニット40と減速機12,22とに跨る分岐油路55,戻し油路58,分岐油路61及び戻し油路65の一部も上記ベース部材の上に設けられている。
【0037】
つまり、給油ユニット40は、2つ以上の潤滑対象(減速機12,22)に潤滑油を同時供給可能な単一の給油ユニットである。別の見方をすると、給油ユニット40を備える押出機10では、減速機12のための給油ユニットと、減速機22のための給油ユニットとを別々に設けなくとも、これら減速機12,22に潤滑油が同時供給される。
【0038】
上記油路の全部または一部は、金属パイプ,樹脂パイプ,樹脂ホースなどの配管部材によって形成されている。もっとも、全ての油路を同一の配管部材によって形成する必要はない。言い換えれば、上記油路は、種類の異なる複数の配管部材によって形成することもできる。
【0039】
上記ポンプは電動ポンプであって、制御部80によって制御されている。以下の説明では、制御部80を“ポンプ制御部80”と呼ぶ場合がある。ポンプ制御部80は、監視部73の監視結果に基づいて少なくともポンプ64bの稼働を制御する。
【0040】
なお、バルブ制御部72及びポンプ制御部80を含む給油ユニット40の全体を統括的に制御する総合制御部や、給油ユニット40を含む押出機10の全体を統括的に制御する総合制御部が設けられる実施形態もある。このような実施形態では、バルブ制御部72は、総合制御部の制御下でバルブ71を制御し、ポンプ制御部80は、総合制御部の制御下でポンプ64bやその他のポンプを制御する。
【0041】
<潤滑油の流れ>
給油ユニット40では、補充用油路70上のバルブ71が閉じているときと、開いているときと、で潤滑油の流れが異なる。なお、分岐油路55上のバルブ57が予め設定された開度で常に開いていることは既述のとおりである。
【0042】
図3は、バルブ71が閉じているときの潤滑油の流れを示す説明図である。図4は、バルブ71が開いているときの潤滑油の流れを示す説明図である。
【0043】
図3を参照する。バルブ57が開状態でバルブ71が閉状態のときにポンプ53a及びポンプ64aが稼働すると、共通油路52及び分岐油路55を通じてタンク51から減速機12に潤滑油が供給される。同時に、共通油路52及び分岐油路61を通じてタンク51から減速機22に潤滑油が供給される。
【0044】
減速機12に供給された潤滑油は、減速機12内のベアリングやギヤ等を潤滑した後、戻し油路58を通ってタンク51に回帰する。
【0045】
一方、減速機22に供給された潤滑油は、減速機22内のベアリングやギヤ等を潤滑した後、戻し油路65を通ってタンク51に回帰する。より特定的には、減速機22を通過した潤滑油は、戻し油路65(接続路65a)を通ってタンク63に流入し、一時的に貯留される。その後、潤滑油は、ポンプ64aによってタンク63から汲み出され、戻し油路65に送り出される。つまり、減速機22に供給された潤滑油は、タンク63及びポンプ64aを経由してタンク51に回帰する。
【0046】
図4を参照する。バルブ57及びバルブ71が開状態のときにポンプ53a及びポンプ64aが稼働すると、減速機12に供給された潤滑油は、上記と同様の経路でタンク51に回帰する。
【0047】
一方、減速機22に供給された潤滑油の少なくとも一部は、タンク51に回帰せず、タンク63に回帰する。より特定的には、戻し油路65とタンク63とを接続している補充用油路70上のバルブ71が開いていると、ポンプ64aによってタンク63から汲み出されて戻し油路65に送り出された潤滑油が、補充用油路70を通じてタンク63に戻る。
【0048】
<給油ユニットの動作>
図5は、給油ユニット40の制御プロセスの一例を示すフローチャート図である。制御プロセスが開始されると、ステップS1が実施される。ステップS1では、バルブ制御部72によってタンク63内の潤滑油の油面の高さが判定される。より特定的には、バルブ制御部72は、監視部73の監視結果に基づいて、タンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲の下限値と上限値との間であるか否かを判定する。
【0049】
ステップS1で潤滑油の油面の高さが規定範囲を下回っていると判定されると、ステップS2に移行する。より特定的には、バルブ制御部72は、潤滑油の油面の高さが規定範囲の下限値を下回っていると判定すると、ステップS2に移行する。ステップS2では、バルブ制御部72の制御によってバルブ71が開かれる。具体的には、バルブ71のソレノイドコイルに電力が供給され、バルブ71が開かれる。
【0050】
次いで、ステップS3に移行する。ステップS3では、バルブ制御部72によってタンク63内の潤滑油の油面の高さが再び判定される。より特定的には、バルブ制御部72は、監視部73の監視結果に基づいて、タンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内に復帰したか否かを判定する。言い換えれば、バルブ制御部72は、タンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲の下限値と上限値との間であるか否かを判定する。
【0051】
ステップS2でバルブ71が開かれると、図4に示される潤滑油の流れが発生するので、タンク63内の潤滑油の油面の高さが次第に高くなる。つまり、タンク63内の潤滑油の量が漸増する。
【0052】
ステップS3でタンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内に復帰したと判定されると、ステップS4に移行する。
【0053】
ステップS4では、バルブ制御部72の制御によってバルブ71が閉じられる。具体的には、バルブ71のソレノイドコイルへの電力供給が遮断され、バルブ71が閉じられる。
【0054】
一方、ステップS1で潤滑油の油面の高さが規定範囲の上限値を上回っていると判定されると、ステップS2ではなく、ステップS5に移行する。ステップS5では、ポンプ制御部80の制御によってポンプ64bが稼働される。また、ステップS2は実施されないので、バルブ71が開かれることはなく、閉状態が維持される。
【0055】
ステップS5でポンプ64bが稼働されると、図3に示される潤滑油の流れに加えて、タンク63から排出用油路66を通って戻し油路65に向かう潤滑油の流れが発生する。つまり、2つのポンプ64a,64bによってタンク63から潤滑油が汲み出される。また、バルブ71は閉じられた状態なので、潤滑油がタンク63に戻ることもない。この結果、タンク63内の潤滑油の油面の高さが次第に低くなる。つまり、タンク63内の潤滑油の量が漸減する。
【0056】
ポンプ64bは、タンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内に復帰した後に、手動で停止される。もっとも、タンク63内の潤滑油の油面の高さが規定範囲内に復帰すると、ポンプ64bが自動停止される実施形態もある。なお、ポンプ64bを停止させた後、必要に応じてバルブ57の開度が調整される。
【0057】
ステップS1で潤滑油の油面の高さが規定範囲の下限値を下回っていると判定される原因の一つとして、オイルフィルタ62の目詰まりがある。オイルフィルタ62に目詰まりが発生すると、分岐油路61を通じて減速機22に供給される潤滑油の量が減少する。すると、減速機22を通過してタンク63に流入する潤滑油も量も減少する。この結果、タンク63内の潤滑油の量が次第に減少する。別の見方をすると、タンク51の貯油量とタンク63の貯油量とのバランスが崩れる。
【0058】
本実施形態では、上記原因を含む何らかの原因によってタンク63の貯油量が規定範囲を下回ると、タンク63に潤滑油が自動的に補充される。よって、タンク51の貯油量とタンク63の貯油量とのバランスが崩れることはない。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、給油ユニットが潤滑油を同時供給する複数の潤滑対象は、押出機本体が備える減速機とギヤポンプが備える減速機とに限られない。
【0060】
図6は、他の一実施形態に係る押出機10を模式的に示す説明図である。図6に示される押出機10は、2以上の押出機本体と、それら押出機本体に潤滑油を同時供給する給油ユニットと、を備えている。より特定的には、2つの押出機本体10A,10Bと、それら押出機本体10A,10Bに潤滑油を同時供給する給油ユニット40と、を備えている。
【0061】
押出機本体10A,10Bは、上記実施形態の押出機10aと同一または実質的に同一の構成を有する。もっとも、押出機本体10A,10Bは、並列的に設けられる場合もあれば、直列的に設けられる場合もある。例えば、押出機本体10Aが一段目の押出機構を構成し、押出機本体10Bが二段目の押出機構を構成する場合もある。
【0062】
給油ユニット40は、それぞれの押出機本体10A,10Bが備える潤滑対象に潤滑油を供給する。例えば、給油ユニット40は、それぞれの押出機本体10A,10Bが備えるメインモータ用減速機に潤滑油を同時供給する。または、給油ユニット40は、それぞれの押出機本体10A,10Bが備える他の減速機に潤滑油を同時供給する。
【0063】
上記実施形態の造粒機30は、フィルム成形機に置換可能である。この場合、押出機10とフィルム成形機とによってフィルム成形装置が構成される。
【0064】
上記実施形態のバルブ71は電磁バルブに限られない。また、バルブ57は手動バルブに限られない。オイルクーラ54の位置は適宜変更することができる。もっとも、共通油路52上にオイルクーラ54が配置されている上記実施形態では、ユニット内を循環する潤滑油が1つのオイルクーラ54によって冷却される。別の見方をすると、必要なオイルクーラの数が削減される。さらに別の見方をすると、メンテナンスを必要とする部品の数が削減される。
【0065】
潤滑対象のケーシングを給油ユニットのタンクとして利用してもよい。例えば、上記実施形態の減速機12のケーシングがタンク51を兼ね、減速機22のケーシングがタンク63を兼ねてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1A…造粒装置、10…押出機、10a,10A,10B…押出機本体、11…メインモータ、12…減速機、13…混練処理部、14,14a,14b…スクリュー、15…シリンダ(バレル)、16…原料ホッパ、20…ギヤポンプ、21…モータ、22…減速機、23…歯車、24…ハウジング、30…造粒機、31…ダイヘッド、32…カッタ、33…カッタモータ、40…給油ユニット、51…タンク、52…共通油路、53a,53b…ポンプ、54…オイルクーラ、55…分岐油路、56…オイルフィルタ、57…バルブ、58…戻し油路、59…予備用油路、61…分岐油路、62…オイルフィルタ、63…タンク、64a,64b…ポンプ、65…戻し油路、65a…接続路、66…排出用油路、70…補充用油路、71…バルブ、72…制御部(バルブ制御部)、73…監視部、80…制御部(ポンプ制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6