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特開2024-57818処理装置、処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057818
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20240418BHJP
   B61F 5/52 20060101ALI20240418BHJP
   G06F 30/15 20200101ALI20240418BHJP
【FI】
G06F30/23
B61F5/52
G06F30/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164741
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】下川 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】品川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 星太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】南 秀樹
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】
【課題】 変位を空間微分することにより算出される物理量を解析モデルに設定される計算位置とは異なる位置において算出する際に用いる当該計算位置の数を減らす。
【解決手段】 台車枠16の各位置での変位の計算式を、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和で表す。処理装置400は、台車枠16の解析モデルに設定される第1計算位置(メッシュの節点の位置)での変位を有限要素法により算出する。そして、処理装置400は、第1計算位置での変位を用いて、各動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた台車枠16の変位の計算式を用いて、第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での変位を算出する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の解析モデルに対して設定される複数の第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する第1変位算出手段と、
前記第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での前記物体の変位を算出する第2変位算出手段と、を有し、
前記第2変位算出手段は、前記第1計算位置での変位と、前記物体の変位の計算式と、に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出し、
前記計算式は、前記第1計算位置を中心点とし、前記第2計算位置を説明変数とし、前記物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数であり、
前記第2変位算出手段は、前記第1計算位置での変位に基づいて、前記動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた前記計算式に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出する、処理装置。
【請求項2】
前記変位は、三次元の変位であり、
前記動径基底関数の中心点の数は4以上である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記動径基底関数の中心点の数は4である、請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記動径基底関数は、ガウス関数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記数値解析の手法は、有限要素法であり、
前記第1計算位置は、前記複数の領域である要素の節点の位置である、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記動径基底関数を空間微分することを含む計算を行うことにより前記物体の所定の物理量を算出する物理量算出手段を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記所定の物理量は、歪み、応力、および表面力のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記物体は、鉄道車両の台車枠を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
物体の解析モデルに対して設定される複数の第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する第1変位算出工程と、
前記第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での前記物体の変位を算出する第2変位算出工程と、を有し、
前記第2変位算出工程は、前記第1計算位置での変位と、前記物体の変位の計算式と、に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出し、
前記計算式は、前記第1計算位置を中心点とし、前記第2計算位置を説明変数とし、前記物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数であり、
前記第2変位算出工程は、前記第1計算位置での変位に基づいて、前記動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた前記計算式に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出する、処理方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車枠等、各種の物体の変位を数値解析により算出することが行われる。特許文献1、2には、台車枠の解析モデルに対して設定したメッシュ(要素)の2つの節点の変位を有限要素法(FEM(Finite Element Method))により算出し、当該2つの節点を結ぶ直線上の位置の変位を、当該2つの節点の変位と、内分比(当該2つの節点と当該位置との距離の比)と、に基づいて算出(内挿)することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-190242号公報
【特許文献2】特開2021-67991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、変位を空間微分(偏微分)することにより算出される物理量を節点以外の位置において算出する際に、多くの節点の情報が必要になる。例えば、三次元応力テンソルを計算する場合、1階微分の空間勾配を表現するために四面体の4頂点と各辺の適当な内分点に6節点を最低限置く必要があり、10個以上の節点の情報が必要になる。また、表面力(物体の表面に垂直に作用する力)を計算する場合、2階微分の空間勾配を表現するため、四面体の4頂点と各辺の中心に6節点に加え、前記各辺の適当な内分点と頂点の中間に1辺あたり2節点を置く必要があり、22個以上の節点の情報が必要になる。このように特許文献1、2に記載の技術では、変位を空間微分(偏微分)することにより算出される物理量を算出する際に、多くの節点の情報が必要になるという問題点がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、変位を空間微分することにより算出される物理量を解析モデルに設定される計算位置とは異なる位置において算出する際に用いる当該計算位置の数を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理装置は、物体の解析モデルに対して設定される複数の第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する第1変位算出手段と、前記第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での前記物体の変位を算出する第2変位算出手段と、を有し、前記第2変位算出手段は、前記第1計算位置での変位と、前記物体の変位の計算式と、に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出し、前記計算式は、前記第1計算位置を中心点とし、前記第2計算位置を説明変数とし、前記物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数であり、前記第2変位算出手段は、前記第1計算位置での変位に基づいて、前記動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた前記計算式に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出する。
【0007】
本発明の処理方法は、物体の解析モデルに対して設定される複数の第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する第1変位算出工程と、前記第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での前記物体の変位を算出する第2変位算出工程と、を有し、前記第2変位算出工程は、前記第1計算位置での変位と、前記物体の変位の計算式と、に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出し、前記計算式は、前記第1計算位置を中心点とし、前記第2計算位置を説明変数とし、前記物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数であり、前記第2変位算出工程は、前記第1計算位置での変位に基づいて、前記動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた前記計算式に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出する。
【0008】
本発明のプログラムは、前記処理装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変位を空間微分することにより算出される物理量を解析モデルに設定される計算位置とは異なる位置において算出する際に用いる当該計算位置の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉄道車両の概略の一例を示す図である。
図2】台車枠およびその周辺の部品の構成の一例を示す図である。
図3】連結器の一例をモデル化して示す図である。
図4】処理装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図5】台車枠の解析モデルの一例を示す図である。
図6A】メッシュの節点の位置での変位のx軸方向成分の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図6B】メッシュの節点の位置での変位のy軸方向成分の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図6C】メッシュの節点の位置での変位のz軸方向成分の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図7】メッシュの節点の位置での最大主応の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図8A】メッシュの節点の位置での表面力のx軸方向成分の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図8B】メッシュの節点の位置での表面力のy軸方向成分の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図8C】メッシュの節点の位置での表面力のz軸方向成分の真値と推定値との関係の一例を示す図である。
図9】処理方法の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明において、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
【0012】
本実施形態の処理装置は、物体の変位を算出することを含む処理を行う。変位が生じる物体であれば処理装置における変位の算出対象の物体は限定されないが、本実施形態では、鉄道車両の台車枠に生じる変位を理装置が算出する場合を例示する。以下に、鉄道車両の構成の一例と、鉄道車両の台車枠に生じる変位の運動方程式の一例と、を概説する。
<鉄道車両の概略構成>
図1は、鉄道車両の概略の一例を示す図である。図2は、台車枠およびその周辺の部品の構成の一例を示す図である。なお、図1および図2において、鉄道車両は、x軸の正の方向に進むものとする(x軸は、鉄道車両の走行方向に沿う軸である)。また、z軸は、軌道20(地面)に対し垂直方向(鉄道車両の高さ方向)であるものとする。y軸は、鉄道車両の走行方向に対して垂直な水平方向(鉄道車両の走行方向と高さ方向との双方に垂直な方向)であるものとする。なお、鉄道車両は、営業車両であっても、試験用車両であっても、検査用車両であってもよい。また、各図において、○(白丸)の中に●(黒丸)が付されている記号は、紙面の奥側から手前側に向かう矢印線を示す。
【0013】
図1および図2に示すように本実施形態では、鉄道車両は、車体11と、台車12a、12bと、輪軸13a~13dと、を有する。このように本実施形態では、1つの車体11に、2つの台車12a、12bと、4組の輪軸13a~13dと、が備わる鉄道車両を例示する。輪軸13a~13dは、車軸15a~15dと、その両端に設けられた車輪14a~14dと、を有する。本実施形態では、台車12a、12bが、ボルスタレス台車である場合を例示する。
【0014】
図1では、表記の都合上、輪軸13a~13dの一方の車輪14a~14dのみを示すが、輪軸13a~13dの他方にも車輪が配置されている(図1に示す例では、車輪は合計8つある)。
図2において、輪軸13a、13bのy軸に沿う方向の両側には、軸箱17a、17bが配置される。軸箱17a、17bは、モノリンク18a、18bを介して台車枠16と接続される。また、軸箱17a、17bは、軸バネ19a、19bを介して台車枠16と接続される。なお、鉄道車両は、図1および図2に示す構成要素以外の構成要素を有する。表記および説明の都合上、図1および図2では、当該構成要素の図示を省略する。例えば、鉄道車両が軸ダンパを有する場合、軸箱17a、17bは、軸ダンパを介して台車枠16と接続されてもよい。
【0015】
図2では、1つの台車12aに1つの台車枠16が配置される場合を例示する。軸箱17a、17b、モノリンク18a、18b、および軸バネ19a、19bは、1つの車輪に対して1つずつ配置される。前述したように1つの台車12aには、4つの車輪が配置される。したがって、1つの台車12aには、軸箱、モノリンク、および軸バネが、それぞれ4つずつ配置される。
【0016】
図2では、台車12aの構成(台車枠16、軸箱17a、17b、モノリンク18a、18b、および軸バネ19a、19b)のみを示す。台車12bの構成(台車枠、軸箱、モノリンク、および軸バネ)も図2に示す構成と同じ構成で実現される。なお、鉄道車両自体は公知の技術で実現できる。したがって、ここでは、鉄道車両の概要のみを説明し、その詳細な説明を省略する。また、鉄道車両は、図1および図2に示すものに限定されない。
以下の説明では、台車枠16と、軸箱17a、17bと、を連結する部品を、必要に応じて連結器と総称する。
【0017】
本実施形態では、軸箱17a、17bのそれぞれに加速度センサ21a、21bが取り付けられる場合を例示する。また、本実施形態では、台車枠16にも加速度センサ22a、22bが取り付けられる場合を例示する。また、本実施形態では、加速度センサ21a、21b、22a、22bが、3次元加速度センサである場合を例示する。加速度センサ21a、21b、22a、22bで測定される加速度のデータから、加速度のx軸方向成分、y軸方向成分、z軸方向成分が得られる。また、加速度センサ21a、21b、22a、22bで測定された加速度のデータから、加速度のx軸方向成分、y軸方向成分、z軸方向成分について、時間に関する2階積分を行うことにより、加速度センサ21a、21b、22a、22bの取り付け位置での変位が算出される。加速度センサ21a、21bは、軸箱17a、17bの所定の位置に取り付けられ、加速度センサ22a、22bは、台車枠16の所定の位置に取り付けられる。図2では、軸箱17a、17bに取り付けられる加速度センサ21a、21bの数が1であり、台車枠16に取り付けられる加速度センサ22a、22bの数が2である場合を例示する。しかしながら、軸箱17a、17bに取り付けられる加速度センサ21a、21bの数、および、台車枠16に取り付けられる加速度センサの数は、1以上であれば、幾つであってもよい。
【0018】
連結器は、台車枠16および軸箱17a、17bに接続される。したがって、軸箱17a、17bの振動と連結器の振動とは連動する。これらの振動は台車枠16に伝搬する。台車枠16に作用する外力は、連結器の振動における粘性減衰力と剛性力との和で表される。粘性減衰力は、粘性減衰係数と速度との積で表される。剛性力は、剛性と変位との積で表される。
【0019】
台車枠16に作用する外力が得られれば、台車枠16の振動(運動)を表す運動方程式を用いて、台車枠16の変位(台車枠16の各部の位置の変化量)を算出することができる。また、台車枠16の変位を空間微分(偏微分)することにより、台車枠16の各種の物理量(例えば、歪み、応力、および表面力)を算出することができる。
【0020】
<台車枠16の運動方程式>
台車枠16の振動を表す運動方程式は、例えば以下の(1)式で表される。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、[M](∈R3l×3l)は、台車枠16の質量行列である。[C](∈R3l×3l)は、台車枠16の粘性行列(減衰行列ともいう)である。[K](∈R3l×3l)は、台車枠16の剛性行列である。
{d}(∈R3l)は、台車枠16の変位ベクトルである。{f}(∈R3l)は、台車枠16の外力ベクトルである。
【0023】
本実施形態では、台車枠16の振動には、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向の3つの成分がある場合を例示する。したがって、{d}を構成する各節点の変位および{f}を構成する各節点の外力は、3つの自由度を有する。なお、(1)式において、・は、d/dt(時間の1階微分)を表し、・・は、d2/dt2(時間の2階微分)を表す(このことは、以降の式でも同じである)。
【0024】
lは、数値解析における変位の近似解の自由度に対応する。本実施形態では、数値解析として、有限要素法(FEM;Finite Element Method)を用いる場合を例示する。したがって、lは、例えば、有限要素法において定められる要素の節点の数である(以下の説明では要素(小領域)をメッシュと称する)。この場合、台車枠16の質量行列[M]の成分、台車枠16の粘性行列[C]の成分、台車枠16の剛性行列[K]の成分には、それぞれ、各成分に対応する密度から算出される値、各成分に対応する粘性減衰係数から算出される値、各成分に対応する剛性から算出される値が与えられる。密度、粘性減衰係数、および剛性は、位置によらずに同じ値としてもよいし、異なる値としてもよい。台車枠16の質量行列[M]の成分、粘性行列[C]の成分、および剛性行列[K]の成分は、例えば、有限要素法による数値解析を行う公知のソルバーにおいて、有限要素法のメッシュと、台車枠16全体の密度、粘性減衰係数、および剛性と、を用いて算出される。本実施形態では、メッシュの節点の位置が、解析モデルに設定される第1計算位置である場合を例示する。なお、数値解析の手法は、有限要素法に限定されず、有限要素法以外のその他の手法(例えば、有限差分法(FDM;Finite Difference Method))であってもよい。
【0025】
(1)式の左辺第1項は、台車枠16に作用する重力を表す慣性項である。(1)式の左辺第2項は、台車枠16に作用する粘性力を表す減衰項である。(1)式の左辺第3項は、台車枠16に作用する剛性力を表す剛性項である。
【0026】
<台車枠16に作用する外力>
(1)式の右辺の外力ベクトル{f}は、連結器に作用する外力を算出することによって与えられる。
そこで、図3を参照しながら、連結器に作用する外力の算出方法の一例を説明する。図3は、連結器の一例をモデル化して示す図である。図3(a)は、台車枠16と軸箱17aとに接続される連結器をモデル化した図の一例を示す。図3(b)は、台車枠16と軸箱17bとに接続される連結器をモデル化した図の一例を示す。台車枠16とその他の軸箱とに接続される連結器をモデル化した図も、図3(a)および図3(b)と同じようにして表されるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。台車枠16と連結器との接続箇所は、台車枠16と連結器とが相互に接触する領域(の全体)としても、台車枠16と連結器とが接触する領域の代表点(例えば、重心の位置)としてもよい。図3に示す例では、説明を簡単にするため、台車枠16と連結器との接続箇所が点であるものとする。以下の説明では、台車枠16と連結器との接続箇所を、必要に応じて、着力点と称する。図3に示す例では、バネおよびダンパを並列に接続したモデルで、モノリンク18aおよび軸バネ19aを表す。モデル化したモノリンク18aと台車枠16とは着力点31aで接続される。また、モデル化した軸バネ19aと台車枠16とは着力点32aで接続される。また、軸箱17bについても同様に、モデル化したモノリンク18bと台車枠16とは着力点31bで接続され、モデル化した軸バネ19bと台車枠16とは着力点32bで接続される。
連結器の振動を表す運動方程式は、以下の(2)式で表される。
【0027】
【数2】
【0028】
ここで、[Cbc]は、連結器の粘性行列である。[Kbc]は、連結器の剛性行列である。{d0}は、連結器の軸箱17aとの接続箇所における変位と、連結器の着力点における変位と、で構成される連結器の変位ベクトルである。{f0}は、連結器の軸箱17aとの接続箇所における外力と、連結器の着力点における外力と、で構成される連結器の外力ベクトルである。連結器の粘性行列[Cbc]の成分、連結器の剛性行列[Kbc]の成分には、それぞれ、各成分に対応する粘性減衰係数から算出される値、各成分に対応する剛性から算出される値が与えられる。連結器の粘性行列[C]および剛性行列[K]の成分は、例えば、連結器の軸箱17aとの接続箇所の位置と、連結器の着力点の位置と、連結器の密度と、連結器の粘性減衰係数と、連結器の剛性と、を用いて算出される。
【0029】
(2)式において、着力点におけるx軸方向、y軸方向、およびz軸方向の変位を0(ゼロ)とする。また、連結器の軸箱17aとの接続箇所における変位を軸箱17aの変位とする。以上のようにすることによって、連結器の外力ベクトル{f0}を構成する外力として、連結器の着力点に作用する外力を算出することができる。つまり、モノリンク18aの着力点31aおよび軸バネ19aの着力点32aに作用する外力は、モノリンク18aおよび軸バネ19aのそれぞれについて構成した(2)式を用いて算出される。また、軸箱17bについても同様に、軸箱17bの変位から、モノリンク18bの着力点31bおよび軸バネ19bの着力点32bに作用する外力が算出される。そして、台車枠16の着力点31a、31bに作用する外力、着力点32a、32bに作用する外力は、それぞれ、モノリンク18a、18bの着力点31a、31bに作用する外力の反作用力、軸バネ19a、19aの着力点32a、32bに作用する外力の反作用力として算出される。
【0030】
<変位ベクトル{d}の算出>
(1)式の外力ベクトル{f}の成分のうち、(台車枠16の)着力点31a、31b、32a、32bに作用する外力の成分には、前述の方法で算出した値を与え、その他の成分には、0(ゼロ)を与えて、台車枠16の変位ベクトル{d}を算出することにより、台車枠16の変位を算出することができる。
なお、台車枠16の運動方程式自体は公知の方程式でよく、前述した運動方程式に限定されない。また、台車枠16の運動方程式から台車枠16の変位を算出する手法自体は、公知の技術で実現され、前述した手法に限定されない。
【0031】
<処理装置400>
図4は、処理装置400の機能的な構成の一例を示す図である。処理装置400のハードウェアは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等、一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサを有する。また、処理装置400のハードウェアは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一またはそれ以上の数のメモリを有する。処理装置400は、メモリに格納される一またはそれ以上の数のプログラムを一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサにより実行することで各種の演算を実行する。さらに、処理装置400のハードウェアは、入力装置、および出力装置を有する。また、処理装置400は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。また、図1に示すように本実施形態では、処理装置400が鉄道車両の車体11内に設置される場合を例示する。しかしながら、処理装置400は鉄道車両の外部に設置されてもよい。
【0032】
<<データ取得部410>>
データ取得部410は、処理装置400における計算のために予め処理装置400が取得しておく必要がある各種の情報を取得する。以下に本実施形態のデータ取得部410が取得する情報の一例を説明する。
【0033】
データ取得部410は、加速度センサ21a、21bで測定された軸箱17a、17bの加速度のデータを取得する。以下の説明では、加速度のデータを必要に応じて加速度データと称する。
【0034】
データ取得部410は、加速度センサ22a、22bで測定された台車枠16の加速度データを取得する。
【0035】
本実施形態では、処理装置400(データ取得部410)と、加速度センサ21a、21b、22a、22bと、が有線または無線により通信可能に接続される場合を例示する。また、本実施形態では、データ取得部410が、加速度センサ21a~21b、22a~22bから、軸箱17a、17bの加速度データ、台車枠16の加速度データをそれぞれ取得する場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、処理装置400(データ取得部410)は、台車枠16の加速度データおよび軸箱17a、17bの加速度データを、加速度センサ21a、21b、22a、22bとは異なる外部装置を経由して取得してもよい。
【0036】
データ取得部410は、解析モデルを取得する。前述したように本実施形態では、数値解析として、有限要素法を用いる場合を例示する。したがって本実施形態では、データ取得部410は、例えば、台車枠16および連結器を含む領域の形状を複数のメッシュで表した場合の各メッシュの情報を含む情報を、解析モデルの情報として取得する。解析モデルの作成自体は、公知の手法で実現されるので、ここでは解析モデルの詳細な説明を省略する。
【0037】
データ取得部410は、処理装置400における計算の際に定数として扱われる情報を取得する。データ取得部410は、例えば、台車枠16および連結器のそれぞれについて、密度、粘性減衰係数、および剛性を取得する。また、データ取得部410は、例えば、台車枠16のヤング率およびポアソン比を取得する。これらの情報は、例えば、解析モデル(各メッシュ)に与えられる。
【0038】
データ取得部410が、解析モデルの情報と、処理装置400における計算の際に定数として扱われる情報と、を取得する方法は限定されない。データ取得部410は、例えば、処理装置400の入力装置に対するオペレータの情報入力操作に基づいてこれらの情報を入力してもよいし、外部装置からこれらの情報を受信してもよいし、処理装置400に接続された記憶媒体からこれらの情報を読み出してもよい。
【0039】
<<第1変位算出部420>>
第1変位算出部420は、物体の解析モデルに設定される第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する。前述したように本実施形態では、物体が台車枠16であり、数値解析の手法が有限要素法であり、第1計算位置がメッシュの節点の位置である場合を例示する。
【0040】
本実施形態では、第1変位算出部420が、(2)式に基づいて算出される外力ベクトル{f}が与えられた場合の(1)式の運動方程式を、有限要素法により解くことで、台車枠16の解析モデルにおける各メッシュの節点の位置での変位ベクトル[d]を算出する場合を例示する。
【0041】
具体的に第1変位算出部420は、加速度センサ21a、21bで測定された軸箱17a、17bの加速度データを用いて、軸箱17a、17bの加速度の時間に関する1階積分、2階積分を行うことにより、(2)式の左辺の速度ベクトル{d0・}、変位ベクトル{d0}をそれぞれ算出する。第1変位算出部420は、モノリンク18a、18bの粘性減衰係数、軸バネ19a、19bの粘性減衰係数から、モノリンク18a、18bの粘性行列[Cbc]、軸バネ19a、19bの粘性行列[Cbc]をそれぞれ算出する。また、第1変位算出部420は、モノリンク18a、18bの剛性、軸バネ19a、19bの剛性から、モノリンク18a、18bの剛性行列[Kbc]、軸バネ19a、19bの剛性行列[Kbc]をそれぞれ算出する。
【0042】
第1変位算出部420は、このようにして得られた情報を(2)式に与えることにより、モノリンク18a、18bの着力点31a、31bに作用する外力と、軸バネ19a、19bの着力点32a、32bに作用する外力とを算出する。そして、第1変位算出部420は、台車枠16の着力点31a、31bに作用する外力、着力点32a、32bに作用する外力を、それぞれ、モノリンク18a、18bの着力点31a、31bに作用する外力の反作用力、軸バネ19a、19aの着力点32a、32bに作用する外力の反作用力として算出する。
【0043】
第1変位算出部420は、(1)式の外力ベクトル{f}の成分のうち、着力点31a、31b、32a、32bに作用する外力の成分には、このようにして算出した値を与え、その他の成分には、0(ゼロ)を与えることにより、(1)式の外力ベクトル{f}を算出する。そして、第1変位算出部420は、外力ベクトル{f}が与えられた(1)式の運動方程式を解くことにより、各第1計算位置(台車枠16の解析モデルにおける各メッシュの節点の位置)での変位ベクトル[d]を算出する。なお、台車枠16の質量行列[M]、粘性行列[C]、および剛性行列[K]は、有限要素法による運動方程式の定式化に従って算出される。また、台車枠16の解析モデルにおける各メッシュの節点の位置での変位ベクトル[d]を算出する手法自体は公知の技術で実現され、前述した手法に限定されない。
【0044】
また、本実施形態では、第1変位算出部420は、加速度センサ22a、22bで測定された台車枠16の加速度データを用いて、台車枠16の加速度の時間に関する2階積分を行うことにより、加速度センサ22a、22bの取り付け位置における変位ベクトル(x軸方向成分、y軸方向成分、z軸方向成分)を算出する。そして、第1変位算出部420は、台車枠16の加速度データを用いて算出された、加速度センサ22a、22bの取り付け位置での変位ベクトルと、(1)式の運動方程式を解くことにより算出された、当該取り付け位置(第1計算位置)での変位ベクトルと、の差に基づいて、(1)式の運動方程式を解くことにより算出された各第1計算位置における変位ベクトルを補正する。例えば、第1変位算出部420は、(1)式の運動方程式を解くことにより算出された変位ベクトルが、台車枠16の加速度データを用いて算出された変位ベクトルに一致するように、各第1計算位置での変位ベクトルに対する補正量を算出する。そして、第1変位算出部420は、(1)式の運動方程式を解くことにより算出された変位ベクトルを、当該補正量を用いて補正する。本実施形態では、補正後の変位ベクトルが第1計算位置での変位として次に説明する第2変位算出部420で用いられる場合を例示する。なお、変位ベクトルの補正は行われなくてもよい。また、以下の説明では、変位ベクトルを必要に応じて変位と称する。
【0045】
<<第2変位算出部420>>
第2変位算出部420は、第1計算位置での変位と、物体の変位の計算式と、に基づいて、第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での変位を算出する。ここで、物体の変位の計算式は、第1計算位置を中心点とし、第2計算位置を説明変数とし、物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数である。第2変位算出部420は、第1計算位置での変位に基づいて、動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数を物体の変位の計算式に与える。第2変位算出部420は、重み係数が与えられた物体の変位の計算式に基づいて、第2計算位置での変位を算出する。
【0046】
本実施形態では、無限階の空間微分が可能な動径基底関数がガウス関数である場合を例示する。しかしながら、無限階の空間微分が可能な動径基底関数はガウス関数に限定されない。例えば、無限階の空間微分が可能な動径基底関数は逆二乗関数や逆多重二乗関数であってもよい。
【0047】
前述したように本実施形態では、第1計算位置がメッシュの節点の位置である場合を例示する。したがって本実施形態では、第2計算位置がメッシュの節点の位置以外の位置を含む場合を例示する。なお、第2計算位置に、メッシュの節点の位置が含まれていてもよい。
【0048】
以下に本実施形態における第2計算位置での変位の算出方法の一例を説明する。
まず、三次元直交座標(xi,yi、zi)∈R3の任意の第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)をガウス関数ψ:R→R(無限階の空間微分が可能な動径基底関数の一例)の重み付き線形和で近似する。ここで、変位のx軸方向成分を表す記号、変位のy軸方向成分を表す記号、変位dのz軸方向成分を表す記号をそれぞれ、u、v、wとする。また、動径基底関数の中心点の数(第2計算位置での変位の算出に使用する第1計算位置の数)をmとする。また、変位dのx軸方向成分uの重み係数、変位dのy軸方向成分vの重み係数、変位dのz軸方向成分wの重み係数を、それぞれ、λu∈R、λv∈R、λw∈Rとする。そうすると、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)のx軸方向成分ui(xi,yi、zi)、y軸方向成分vi(xi,yi、zi)、z軸方向成分wi(xi,yi、zi)は、それぞれ以下の(3)式、(4)式、(5)式で表される。本実施形態では以下の(3)式~(5)式が、物体の変位の計算式である場合を例示する。
【0049】
【数3】
【0050】
また、本実施形態では、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)が以下の(6)式で定義される場合を例示する。
【0051】
【数4】
【0052】
ここで、σ2は、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)の幅を調整するためのパラメータである分散であり、予め定められる。分散σ2は、例えば、軸方向成分ごとに定められても、第2計算位置iごとに定められても、軸方向成分ごとおよび第2計算位置iごとに定められても、各軸方向成分および第2計算位置iに関わらず一定の値であってもよい。
【0053】
本実施形態では、以下の(7)式のn個の行列方程式を用いて、重み係数λu jを算出する場合を例示する。ここで、nおよびmは、n≧mの関係が成り立つように予め定められる。
【0054】
【数5】
【0055】
(7)式を行列で表示すると以下の(8)式のようになる。
【0056】
【数6】
【0057】
以下の(9)式のように、(8)式の左辺の行列をUと表し、(8)式の右辺の左側の行列をΨと表し、(8)式の右辺の右側の行列をΛUと表すこととすると、(8)式は、以下の(9)式のように表される。
【0058】
【数7】
【0059】
ΛUに関する(9)式の最小二乗解を得るため、本実施形態では、以下の(10)式に示すコスト関数J:Rm→Rを用いる場合を例示する。
【0060】
【数8】
【0061】
ここで、α∈Rは、正則化係数であり、予め定められる。このように、本実施形態では、正則化最小二乗法により、ΛUに関する(9)式の最小二乗解を導出する場合を例示する。以下の(11)式に示すように、コスト関数JをΛUで偏微分した値が0(ゼロ)になるときに、コスト関数Jの値は最小化される。(11)式を式変形すると、以下の(12)式が得られる。なお、(11)式および(12)式のΨTのTは転置行列であることを表す。また、(12)式の(ΨTΨ+αΨ)-1の-1は逆行列であることを表す。なお、Iは、単位行列である。
【0062】
【数9】
【0063】
第2変位算出部430は、第1変位算出部420で算出された第1計算位置jでの変位dj(xj,yj,zj)のx軸方向成分uj(xj,yj,zj)と、当該第1計算位置jの座標(xj,yj,zj)とを(8)式に与えて(12)式を計算することにより、ΛU(すなわち、重み係数λu j(=λu 1,、λu 2、・・・、λu m)を算出する。なお、ここでは、n=mである場合を例示する。
【0064】
第2変位算出部430は、(4)式の重み係数λv j(=λv 1,、λv 2、・・・、λv m)および(5)式の重み係数λw j(=λw 1,、λw 2、・・・、λw m)についても(6)式~(12)式を参照したのと同様にして算出する。重み係数λv jを算出する手法の説明は、例えば、(6)式~(12)式において、u、Uをそれぞれv、Vに置き替えたものとなる。また、重み係数λw jを算出する手法の説明は、例えば、(6)式~(12)式において、u、Uをそれぞれw、Wに置き替えたものとなる。したがって、ここでは、重み係数λv j、λw jを算出する手法の詳細な説明を省略する。
【0065】
以上のようにして重み係数重み係数λu j、λv j、λw jを決定することにより、第2計算位置iでの変位di(xi,y9,zi)と第2計算位置iの座標(xi,y9,zi)との関係を示す近似関数(近似式)が定められる。
【0066】
動径基底関数の中心点の数m(第2計算位置での変位の算出に使用する第1計算位置の数)は予め定められる。動径基底関数の中心点の数mは2以上であればよい。第1計算位置は、第2計算位置の周囲の位置を含む位置であればよく、第2計算位置と同一の位置を含んでいてもよいし、また、第2計算位置に近い順に選択されても、第2計算位置に対して所定の範囲内にある位置の中から任意に選択されても、その他の方法で選択されてもよい。また、第2計算位置(座標)に応じて、動径基底関数の中心点の数m(当該第2計算位置での変位の算出に使用する第1計算位置の数)を異ならせてもよいし、第2計算位置(座標)に関わらず、動径基底関数の中心点の数mを同じ値にしてもよい。また、第2計算位置(座標)に応じて、当該第2計算位置での変位の算出に使用する第1計算位置(座標)を異ならせてもよいし、第2計算位置(座標)に関わらず、当該第2計算位置での変位の算出に使用する第1計算位置(座標)を同じにしてもよい。
【0067】
第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)として三次元の変位dを算出する場合、動径基底関数の中心点の数mは、4以上であるのが好ましい。第1計算位置を頂点とし、且つ、内部に第2計算位置iを含む立体が構成されるように、第1計算位置を定めることができるので、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の近似精度を高めることができるからである。したがって、このようにする場合、4個以上の第1計算位置の全てが同一平面上に位置しないのが好ましい。動径基底関数の中心点の数mが多いほど第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の近似精度は高まるが、計算負荷が高くなるとともに、動径基底関数の中心点の位置同士が近すぎるとオーバーフィングの問題が生じることを留意する必要がある。したがって、動径基底関数の中心点の数mは、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の近似精度として要求精度を満たす範囲で少ないのが好ましい。よって、本実施形態のように第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)として三次元の変位を算出する場合、動径基底関数の中心点の数mは、4であるのがより好ましい。なお、要求精度は、例えば、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の算出対象の物体や、算出した第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)dの利用形態等に応じて定められる。また、同様の観点(第1計算位置を頂点とし、且つ、内部に第2計算位置を含む平面が構成されるように第1計算位置を定めることができることと、計算負荷が高くなることを抑制すること)から、第2計算位置iでの変位diとして二次元の変位を算出する場合、動径基底関数の中心点の数mは、3以上であるのが好ましく、3であるのがより好ましい。
【0068】
ここで、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の算出に使用する第1計算位置jの数が4である場合であっても、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の近似精度が高精度になることを示す。ここでは、第2計算位置iを第1計算位置jの中から選択し、第2変位算出部430で算出される第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)を、第1変位算出部420で算出される当該第2計算位置i(=第1計算位置j)での変位di(xi,yi、zi)(=dj(xj,yj、zj))と比較した。
【0069】
図5は、台車枠16の解析モデルの一例を示す図である。図5では、台車枠16の解析モデルの一部分を抜き出して示す。ここでは、第2計算位置iが番号2のメッシュの節点(i=2)である場合を例示する。また、ここでは、番号1、8、12、16の4つの節点での変位djのx軸方向成分uj、y軸方向成分vj、およびz軸方向成分wjを用いて、(3)式、(4)式、および(5)式により、番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)のx軸方向成分u2(x2,y2、z2)、y軸方向成分v2(x2,y2、z2)、およびz軸方向成分w2(x2,y2、z2)をそれぞれ算出する場合を例示する。
【0070】
図6Aは、番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)のx軸方向成分u2(x2,y2、z2)の真値と推定値との関係の一例を示す図である。図6Bは、番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)のy軸方向成分v2(x2,y2、z2)の真値と推定値との関係の一例を示す図である。図6Cは、番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)のz軸方向成分w2(x2,y2、z2)の真値と推定値との関係の一例を示す図である。真値は、第1変位算出部420で算出された番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)の各軸方向成分の値である。推定値は、第2変位算出部430で算出された番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)の各軸方向成分の値である。
【0071】
ここでは、加速度センサ21a、21bで測定された軸箱17a、17bの加速度データとして8001個の時刻の時系列データを用いて、8001個の時刻のそれぞれにおいて、真値と推定値とをそれぞれ算出した。同時刻における真値および推定値を1つの点としてプロットすることにより、図6A図6Cが得られる。
【0072】
図6A図6B図6Cにおいて、変位d2(x2,y2、z2)のx軸方向成分u2(x2,y2、z2)に対する決定係数R2、変位d2(x2,y2、z2)のy軸方向成分v2(x2,y2、z2)に対する決定係数R2、変位d2(x2,y2、z2)のz軸方向成分w2(x2,y2、z2)に対する決定係数R2はそれぞれ、0.99764、0.99588、0.99999になった。このように、第1計算位置の数が4である場合であっても、第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)の近似精度は高精度に算出されることが分かる。
【0073】
<<物理量算出部440>>
物理量算出部440は、無限階の空間微分が可能な動径基底関数を空間微分(偏微分)することを含む計算を行うことにより物体の所定の物理量を算出する。
(6)式より、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)のx軸方向、y軸方向、z軸方向における1階微分は、それぞれ、以下の(13)式、(14)式、(15)式のように表される。
【0074】
【数10】
【0075】
また、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)のx軸方向における2階微分は、以下の(16)式のように表される。なお、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)のy軸方向における2階微分、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)のz軸方向における2階微分は、以下の(16)式と同様に、それぞれ、(14)式、(15)式を、y軸方向、z軸方向において1回微分することにより得られる。したがって、ここでは、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)のy軸方向およびz軸方向における2階微分を表す数式の明示を省略する。
【0076】
【数11】
【0077】
また、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)をx軸方向およびy軸方向において1回ずつ微分すると、以下の(17)式が得られる。なお、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)を、その他の2つの異なる軸方向において1回ずつ微分することにより得られる数式は、以下の(17)式と同様に、(13)式、(14)式、または(15)式を各軸方向において1回ずつ微分することにより得られる。したがって、ここでは、これらの数式の明示を省略する。
【0078】
【数12】
【0079】
本実施形態では、第2計算位置iでの歪みテンソル[εi]が以下の(18)式のように定義され、第2計算位置iにおける歪みテンソルεiの各成分εi,xx、εi,yy、εi,zz、γi,xy、γi,yz、γi,zxが、以下の(19)式~(24)式で表される場合を例示する。
【0080】
【数13】
【0081】
本実施形態では、物理量算出部440は、第2変位算出部430により算出された第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)のx軸方向成分ui(xi,yi、zi)、y軸方向成分vi(xi,yi、zi)、およびz軸方向成分w(xi,yi、zi)を用いて(19)式~(24)式の計算を行うことにより、第2計算位置iでの歪みテンソル[εi]を算出する。なお、(19)式~(24)式の計算に際しては、(13)式~(17)式が利用される。本実施形態では、歪みが、無限階の空間微分が可能な動径基底関数を空間微分(偏微分)することを含む計算を行うことにより算出される物体の所定の物理量の一例である。
【0082】
第2計算位置iでの応力テンソル[σi]は、第2計算位置iでの歪みテンソル[εi]の成分を用いると、以下の(25)式で表される。
【0083】
【数14】
【0084】
ここで、σi,xx、σi,xy、σi,xzのxx、xy、xzの左から1つ目のxは、x軸に垂直な微小面に作用する応力であることを表し、σi,xx、σi,yx、σi,zxのxx、yx、zxの左から2つ目のxは、x軸方向成分の値であることを表す。σi,yx、σi,yy、σi,yzのyx、yy、yzの左から1つ目のyは、y軸に垂直な微小面に作用する応力であることを表し、σi,xy、σi,yy、σi,zyのxy、yy、zyの左から2つ目のyは、y軸方向成分の値であることを表す。σi,zx、σi,zy、σi,zzのzx、zy、zzの左から1つ目のzは、z軸に垂直な微小面に作用する応力であることを表し、σi,xz、σi,yz、σi,zzのxz、yz、zzの左から2つ目のzは、z軸方向成分の値であることを表す。
また、(25)式に示すλ、μは、それぞれ、ラメ定数、剛性率である。ラメ定数λ、剛性率μは、それぞれ、以下の(26)式、(27)式で表される。
【0085】
【数15】
【0086】
ここで、Eは、ヤング率である。νは、ポアソン比である。
本実施形態では、物理量算出部440は、第2計算位置iでの歪みテンソル[εi]を用いて(25)式の計算を行うことにより、第2計算位置iでの応力テンソル[σi]を算出する。
【0087】
また、本実施形態では、第2計算位置iでの応力テンソル[σi]の第1不変量Ji,1(静水圧)、第2不変量Ji,2(相当応力)、および第3不変量Ji,3(応力3軸度)がそれぞれ、以下の(28)式、(29)式、(30)式で定義される場合を例示する。
【0088】
【数16】
【0089】
そうすると、以下の(31)式に示すように、第2計算位置iでの主応力σiは、第2計算位置iでの応力テンソル[σi]の第1不変量Ji,1、第2不変量Ji,2、および第3不変量Ji,3を係数とする、第2計算位置iでの主応力σiの三次方程式の3つの根として算出される。
【0090】
【数17】
【0091】
本実施形態では、物理量算出部440は、第2計算位置iでの応力テンソル[σi]を用いて(28)式~(31)式の計算を行うことにより、第2計算位置iでの主応力σiを算出する。また、本実施形態では、第2計算位置iでの主応力σi((31)式の3つの根)のうち絶対値が最大の主応力σiが最大主応力として定義される場合を例示する。そこで、本実施形態では、物理量算出部440は、第2計算位置iでの3つの主応力σiのうち絶対値が最大の主応力σiを、第2計算位置iでの最大主応力σi,maxとして算出する。本実施形態では、応力(主応力、最大主応力)が、無限階の空間微分が可能な動径基底関数を空間微分(偏微分)することを含む計算を行うことにより算出される物体の所定の物理量の一例である。
【0092】
図7は、番号2のメッシュの節点の位置での最大主応力σ2,maxの真値と推定値との関係の一例を示す図である。真値は、第1変位算出部420で算出された番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)の各軸方向成分の値(図6A図6Cに示した真値)を用いて算出された値である。推定値は、第2変位算出部430で算出された番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)の各軸方向成分の値(図6A図6Cに示した推定値)を用いて算出された値である。図6A図6Cを参照しながら説明したように、8001個の時刻のそれぞれにおいて、真値と推定値をそれぞれ算出し、同時刻における真値および推定値を1つの点としてプロットすることにより、図7が得られる。図7に示す結果は、ヤング率Eを205.9×1000MPaとし、ポアソン比νを0.3とした場合の結果である。
【0093】
図7において、番号2のメッシュの節点の位置での最大主応力σ2,maxの決定変数R2は、0.991であった。このように、第1計算位置の数が4である場合であっても、番号2のメッシュの節点の位置での最大主応力σ2,maxは高精度に算出されることが分かる。
【0094】
また、本実施形態では、静弾性問題の基礎方程式より、第2計算位置iでの表面力fiのx軸方向成分fi,u、第2計算位置iでの表面力fiのy軸方向成分fi,v、第2計算位置iでの表面力fiのz軸方向成分fi,wがそれぞれ、以下の(32)式、(33)式、(34)式で定義される場合を例示する。(32)式~(34)式に示すλ、μは、それぞれ、(26)式で表されるラメ定数、(27)式で表される剛性率である。
【0095】
【数18】
【0096】
本実施形態では、物理量算出部440は、第2変位算出部430により算出された第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)のx軸方向成分ui(xi,yi、zi)、y軸方向成分vi(xi,yi、zi)、およびz軸方向成分w(xi,yi、zi)を用いて(32)式、(33)式、および(34)式の計算を行うことにより、第2計算位置iでの表面力fiのx軸方向成分fi,u、y軸方向成分fi,v、およびz軸方向成分fi,wを算出する。本実施形態では、表面力が、無限階の空間微分が可能な動径基底関数を空間微分(偏微分)することを含む計算を行うことにより算出される物体の所定の物理量の一例である。
【0097】
図8Aは、番号2のメッシュの節点の位置での表面力fiのx軸方向成分f2,uの真値と推定値との関係の一例を示す図である。図8Bは、番号2のメッシュの節点の位置での表面力fiのy軸方向成分f2,vの真値と推定値との関係の一例を示す図である。図8Cは、z軸方向成分f2,wの真値と推定値との関係の一例を示す図である。真値は、第1変位算出部420で算出された番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)の各軸方向成分の値(図6A図6Cに示した真値)を用いて算出された値である。推定値は、第2変位算出部430で算出された番号2のメッシュの節点の位置での変位d2(x2,y2、z2)の各軸方向成分の値(図6A図6Cに示した推定値)を用いて算出された値である。図8A図8Cに示す結果は、ヤング率Eを205.9×1000MPaとし、ポアソン比νを0.3とした場合の結果である。なお、図8A図8Cの縦軸は、番号2のメッシュの節点の位置での表面力fiのx軸方向成分f2,u、y軸方向成分f2,v、およびz軸方向成分f2,wの値を、ρg(=7850×9.81kg/m2・s2)で除した値である。ρは、台車枠16の密度であり、gは、重力加速度である。
【0098】
本実施形態では、物理量算出部440が、第2計算位置iにおける歪みテンソル、応力テンソル、主応力、最大主応力、および表面力に加え、第1計算位置jにおける歪みテンソル、応力テンソル、主応力、最大主応力、および表面力も算出する場合を例示する。なお、第1計算位置jにおける歪みテンソル、応力テンソル、主応力、最大主応力、および表面力の算出の際には、ガウス関数ψ(xi-xj,yi-yj,zi-zj)を空間微分する必要はなく、第1計算位置j(メッシュの各節点の位置)での変位dj(xj,yj,zj)のx軸方向成分uj(xj,yj,zj)、y軸方向成分vj(xj,yj,zj)、z軸方向成分wj(xj,yj,zj)を空間微分すればよい。第1計算位置jにおける歪みテンソル、応力テンソル、主応力、最大主応力、および表面力は、例えば、有限要素法による数値解析を行う公知のソルバーにより算出される。ただし、第1計算位置jにおける歪みテンソル、応力テンソル、主応力、最大主応力、および表面力も、第2計算位置iにおける歪みテンソル、応力テンソル、主応力、最大主応力、および表面力と同様にして算出してもよい。
【0099】
<<出力部450>>
出力部450は、第1変位算出部420により算出された各第1計算位置jでの変位dj(xj,yj,zj)と、第2変位算出部430により算出された各第2計算位置iでの変位di(xi,yi,zi)と、物理量算出部440により算出された各第1計算位置jおよび各第2計算位置iでの物理量(例えば、最大主応力および表面力)と、を示す情報を出力する。出力部450による情報の出力形態は限定されない。例えば、出力部450による情報の出力形態として、コンピュータディスプレイへの表示と、外部装置への送信と、処理装置400の内部または外部の記憶媒体への記憶と、のうちの少なくとも1つが採用される。
【0100】
<フローチャート>
次に、図9のフローチャートを参照しながら、本実施形態の処理装置400を用いた処理方法の一例を説明する。なお、ここでは説明を簡単にするために、データ取得部410が、処理装置400における計算のために予め処理装置400が取得しておく必要がある各種の情報を、図9のフローチャートが開始する前に取得している場合を例示する。
【0101】
ステップS901において、第1変位算出部420は、有限要素法により(1)式の運動方程式を解くことにより、各第1計算位置(各メッシュの節点の位置)jでの変位dj(xj,yj,zj)を算出する。
【0102】
次に、ステップS902において、第1変位算出部420は、台車枠16の加速度データを用いて、加速度センサ22a、22bの取り付け位置における変位を算出し、算出した変位を用いて、ステップS901で算出された各第1計算位置(各メッシュの節点の位置)jでの変位dj(xj,yj,zj)を補正する。ここでは、ステップS903以降の処理において、第1計算位置jでの変位dj(xj,yj,zj)が、ステップS902で得られたものである場合を例示する。
【0103】
次に、ステップS903において、第2変位算出部430は、ステップS902で得られた各第1計算位置jでの変位dj(xj,yj,zj)を用いて、(3)式、(4)式、(5)式の重み係数λu j、λv j、λw jを算出する。
次に、ステップS904において、第2変位算出部430は、ステップS903で算出された重み係数λu j、λv j、λw jが与えられた(3)式、(4)式、および(5)式を用いて、各第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)を算出する。
【0104】
次に、ステップS905において、物理量算出部440は、ステップS904で算出された各第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)を用いて(19)式~(24)式の計算を行うことにより、各第2計算位置iでの歪みテンソル[εi]を算出する。また、物理量算出部440は、ステップS903で得られた各第1計算位置jでの変位dj(xj,yj、zj)を用いて各第1計算位置jでの歪みテンソル[εj]を算出する。
【0105】
次に、ステップS906において、物理量算出部440は、ステップS905で算出された各第2計算位置iでの歪みテンソル[εi]を用いて(25)式の計算を行うことにより各第2計算位置iでの応力テンソル[σi]を算出する。また、物理量算出部440は、ステップS905で算出された各第1計算位置jでの歪みテンソル[εj]を用いて各第1計算位置jでの応力テンソル[σj]を算出する。
【0106】
次に、ステップS907において、物理量算出部440は、ステップS906で算出された各第2計算位置iでの応力テンソル[σi]を用いて(28)式~(31)式の計算を行うことにより、各第2計算位置iでの主応力σiを算出する。そして、物理量算出部440は、第2計算位置iでの3つの主応力σiのうち絶対値が最大の主応力σiを当該第2計算位置iでの最大主応力σi,maxとして算出することを、第2計算位置iのそれぞれについて行う。また、物理量算出部440は、ステップS906で算出された各第1計算位置jでの応力テンソル[σj]を用いて各第1計算位置jでの主応力σjを算出する。そして、物理量算出部440は、第1計算位置jでの3つの主応力σjのうち絶対値が最大の主応力σjを当該第1計算位置jでの最大主応力σj,maxとして算出することを、第1計算位置jのそれぞれについて行う。
【0107】
次に、ステップS908において、物理量算出部440は、ステップS904で算出された各第2計算位置iでの変位di(xi,yi、zi)を用いて(32)式~(34)式の計算を行うことにより、各第2計算位置iでの表面力fiを算出する。また、物理量算出部440は、ステップS903で得られた各第1計算位置jでの変位dj(xj,yj、zj)を用いて各第1計算位置jでの表面力fjを算出する。
【0108】
最後にステップS909において、出力部450は、ステップS903で得られた各第1計算位置jでの変位dj(xj,yj,zj)と、ステップS904で算出された各第2計算位置iでの変位di(xi,yi,zi)と、ステップS905~S908で算出された各第1計算位置jおよび各第2計算位置iでの物理量(例えば、最大主応力σi,max、σj,maxおよび表面力fi、fj)と、を示す情報を出力する。
【0109】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、台車枠16の各位置での変位の計算式を、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和で表す。処理装置400は、台車枠16の解析モデルに設定される第1計算位置(メッシュの節点の位置)での変位を有限要素法により算出する。そして、処理装置400は、第1計算位置での変位を用いて、各動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた台車枠16の変位の計算式を用いて、第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での変位を算出する。したがって、第1計算位置の変位を内挿して第2計算位置の変位を算出するための内挿関数を、無限階の空間微分が可能な関数とすることができる。よって、変位を空間微分することにより算出される物理量を第2計算位置において算出する際に用いる第1計算位置(メッシュの節点)の数を減らすことができる。
【0110】
また、本実施形態では、三次元の変位を算出する際の動径基底関数の数を4以上とする。したがって、三次元の変位を高精度に算出することができる。また、三次元の変位を算出する際の動径基底関数の数を4とすることにより、三次元の変位を算出する際の計算負荷の軽減と、計算精度の低下の抑制とを両立させることができる。
【0111】
(その他の実施形態)
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0112】
なお、以上の実施形態の開示は、例えば以下のようになる。
(開示1)
物体の解析モデルに対して設定される複数の第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する第1変位算出手段と、
前記第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での前記物体の変位を算出する第2変位算出手段と、を有し、
前記第2変位算出手段は、前記第1計算位置での変位と、前記物体の変位の計算式と、に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出し、
前記計算式は、前記第1計算位置を中心点とし、前記第2計算位置を説明変数とし、前記物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数であり、
前記第2変位算出手段は、前記第1計算位置での変位に基づいて、前記動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた前記計算式に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出する、処理装置。
(開示2)
前記変位は、三次元の変位であり、
前記動径基底関数の中心点の数は4以上である、開示1に記載の処理装置。
(開示3)
前記動径基底関数の中心点の数は4である、開示2に記載の処理装置。
(開示4)
前記動径基底関数は、ガウス関数である、開示1~3のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示5)
前記数値解析の手法は、有限要素法であり、
前記第1計算位置は、前記複数の領域である要素の節点の位置である、開示1~4のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示6)
前記動径基底関数を空間微分することを含む計算を行うことにより前記物体の所定の物理量を算出する物理量算出手段を有する開示1~5のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示7)
前記所定の物理量は、歪み、応力、および表面力のうちの少なくとも1つを含む、開示6に記載の処理装置。
(開示8)
前記物体は、鉄道車両の台車枠を含む、開示1~7のいずれか1つに記載の処理装置。
(開示9)
物体の解析モデルに対して設定される複数の第1計算位置での当該物体の変位を、数値解析を行うことにより算出する第1変位算出工程と、
前記第1計算位置とは異なる位置を含む第2計算位置での前記物体の変位を算出する第2変位算出工程と、を有し、
前記第2変位算出工程は、前記第1計算位置での変位と、前記物体の変位の計算式と、に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出し、
前記計算式は、前記第1計算位置を中心点とし、前記第2計算位置を説明変数とし、前記物体の変位を目的変数とする関数であって、無限階の空間微分が可能な動径基底関数の重み付き線形和に基づいて定められる関数であり、
前記第2変位算出工程は、前記第1計算位置での変位に基づいて、前記動径基底関数の重み係数を算出し、算出した重み係数が与えられた前記計算式に基づいて、前記第2計算位置での前記変位を算出する、処理方法。
(開示10)
開示1~8のいずれか1つに記載の処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0113】
11 車体
12a、12b 台車
13a~13d 輪軸
14a~14d 車輪
15a~15d 車軸
16 台車枠
17a、17b 軸箱
18a、18b モノリンク
19a、19b 軸バネ
21a、21b 加速度センサ
22a、22b 加速度センサ
31a、31b 着力点
32a、32b 着力点
400 処理装置
410 データ取得部
420 第1変位算出部
430 第2変位算出部
440 物理量算出部
450 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9