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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057831
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電動ショベル及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240418BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240418BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240418BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20240418BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E05B49/00 J
E02F9/20 C
E02F9/16 F
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164770
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 薫
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
2E250
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003AB07
2D003BA01
2D003BB03
2D003BB04
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB08
2D003DC01
2D003FA02
2D015EA02
2D015EB01
2D015EC00
2E250AA21
2E250FF23
2E250FF36
2E250HH06
2E250JJ03
2E250JJ12
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】オペレータの操作をより簡素化することができる電動ショベルを提供する。
【解決手段】蓄電装置からの電力によって1つまたは複数の電気機器が動作する。コントローラが、携帯型電子キーの接近を検知すると、電気機器の少なくとも1つを動作させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置からの電力によって動作する1つまたは複数の電気機器と、
携帯型電子キーの接近を検知すると、前記電気機器の少なくとも1つを動作させるコントローラと
を備えた電動ショベル。
【請求項2】
前記コントローラは、複数の前記電気機器のうち、前記携帯型電子キーの接近を検知したときに動作させる前記電気機器の種別の一覧を記憶しており、前記一覧を外部からの指令により書き換える機能を有する請求項1に記載の電動ショベル。
【請求項3】
さらに、
オペレータが乗り込むキャビンと、
前記キャビンのドアと
を備え、
前記電気機器の1つは、前記ドアのロック機構である請求項1または2に記載の電動ショベル。
【請求項4】
前記コントローラは、前記携帯型電子キーの接近を検知すると、前記ロック機構を解錠状態にする請求項3に記載の電動ショベル。
【請求項5】
前記コントローラは、前記携帯型電子キーの接近が検知されなくなると、前記ロック機構を施錠状態にする請求項3に記載の電動ショベル。
【請求項6】
油圧駆動系をさらに備え、
前記電気機器の1つは、冷暖房を行う空調装置、稼働状態を表示する表示装置、前記蓄電装置を温めるバッテリ加温装置、前記油圧駆動系の作動油を温める作動油加温装置、または照明器具である請求項1または2に記載の電動ショベル。
【請求項7】
オペレータが乗り込むキャビンと、
オペレータが操作する操作装置と、
前記操作装置の操作対象であるアクチュエータと、
始動スイッチと
をさらに備え、
前記コントローラは、前記携帯型電子キーが前記キャビンの中にあることを検知し、かつ前記始動スイッチが操作されたことを検知すると、前記操作装置の操作によって前記アクチュエータを動作させることが可能な状態になる請求項1または2に記載の電動ショベル。
【請求項8】
無線データ通信を行う通信装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記携帯型電子キーの接近を検知すると、前記通信装置を介して外部機器に、前記携帯型電子キーの接近を検知したことを通知する請求項1または2に記載の電動ショベル。
【請求項9】
請求項2に記載の電動ショベルと通信する遠隔操作器の処理装置によって実行されるプログラムであって、
前記遠隔操作器の表示装置に、前記電動ショベルに搭載されている複数の電気機器の種別の一覧を表示する処理と、
前記表示装置に表示された一覧から少なくとも一部の電気機器の種別を選択させる処理と、
選択された電気機器の種別を前記電動ショベルに送信する処理と
を前記処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ショベル及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電子キーを利用した油圧ショベルが公知である(特許文献1)。特許文献1に記載された油圧ショベルは、ロックレバーがロック位置に切換えられ、かつ認証可能範囲内に携帯型電子キーが存在する場合に、パワースイッチによるエンジンの始動を許可する。これにより、エンジンの始動操作が簡素化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-113772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、オペレータの操作をより簡素化することができる電動ショベルを提供することである。本発明の他の目的は、この電動ショベルと通信する遠隔操作器のプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
蓄電装置と、
前記蓄電装置からの電力によって動作する1つまたは複数の電気機器と、
携帯型電子キーの接近を検知すると、前記電気機器の少なくとも1つを動作させるコントローラと
を備えた電動ショベルが提供される。
【0006】
本発明の他の観点によると、
蓄電装置と、
前記蓄電装置からの電力によって動作する1つまたは複数の電気機器と、
携帯型電子キーの接近を検知すると、前記電気機器の少なくとも1つを動作させるコントローラと
を備え、
前記コントローラは、複数の前記電気機器のうち、前記携帯型電子キーの接近を検知したときに動作させる前記電気機器の種別の一覧を記憶しており、前記一覧を外部からの指令により書き換える機能を有する電動ショベルと通信する遠隔操作器の処理装置によって実行されるプログラムであって、
前記遠隔操作器の表示装置に、前記電動ショベルに搭載されている複数の電気機器の種別の一覧を表示する処理と、
前記表示装置に表示された位置らから少なくとも一部の電気機器の種別を選択させる処理と、
選択された電気機器の種別を前記電動ショベルに送信する処理と
を前記処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
携帯型電子キーの接近が検知されると電気機器の少なくとも1つが動作するため、オペレータの操作を簡素化することができる。動作させる電気機器の種別を、遠隔から指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施例による電動ショベルの側面図である。
図2図2は、電動ショベルのブロック図である。
図3図3は、電動ショベルと携帯型電子キーとの位置関係を示す平面図である。
図4図4は、コントローラの処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、図1に示した実施例の変形例による電動ショベルの側面図及び、電動ショベル及び外部機器のブロック図である。
図6図6は、他の実施例による電動ショベルのコントローラの状態遷移図である。
図7図7は、さらに他の実施例による電動ショベルのコントローラが実行する処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、さらに他の実施例による電動ショベル及び遠隔操作器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図4を参照して一実施例による電動ショベルについて説明する。
図1は、本実施例による電動ショベル10の側面図である。本実施例による電動ショベル10は、下部走行体12、下部走行体12に対して旋回機構13を介して旋回可能に搭載された上部旋回体11、ブーム21、アーム22、及びバケット23を備えている。
【0010】
下部走行体12は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが、後述する油圧モータで油圧駆動されることにより自走する。
【0011】
上部旋回体11は、後述する旋回用油圧モータで駆動されることにより、下部走行体12に対して旋回する。上部旋回体11は、キャビン14を備えている。キャビン14には、オペレータが乗降するためのドア15が設けられている。オペレータは、ドア15のドアハンドル16を把持してドア15を開くことにより、キャビン14内に乗り込む。ドア15に電気的なロック機構17が設けられている。ロック機構17は、ドア15の開閉が可能な解錠状態と、ドア15の開閉ができない施錠状態とを取り得る。解錠状態と施錠状態との切り替えは、後述するコントローラ60からの指令によって行われる。
【0012】
キャビン14内に、オペレータが着座する運転席18が設けられている。運転席18に着座したオペレータの手の届く範囲に、始動スイッチ19及び操作レバー20が配置されている。運転席18に着座したオペレータによって視認可能な位置に表示装置34が配置されている。表示装置34に、電動ショベル10の稼働状態が表示される。
【0013】
ブーム21は、上部旋回体11の前部中央に上下方向に揺動可能に取り付けられている。ブーム21の先端に、アーム22が前後方向に揺動可能に取り付けられている。アーム22の先端に、バケット23が開閉動作可能に取り付けられている。ブーム21、アーム22、及びバケット23は、それぞれ、油圧シリンダであるブームシリンダ25、アームシリンダ26、及びバケットシリンダ27により油圧駆動される。バケット23はエンドアタッチメントの一例であり、アーム22の先端に、作業内容等に応じて、バケット23の代わりに、他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。
【0014】
次に、図2を参照して、電動ショベル10のより詳細な構成について説明する。図2は、電動ショベル10のブロック図である。図2において、機械的動力ラインを二重線で示し、高圧油圧ラインを太い実線で示し、パイロットラインを太い破線で示し、高圧電力ラインを2番目に太い実線で示し、低圧電力ラインを細い実線で示し、制御ラインを細い破線で示す。
【0015】
バッテリモジュール50Mが、高圧蓄電装置50H、バッテリコントローラ50C、及びバッテリ加温装置45を含む。電動ショベル10には、高圧蓄電装置50Hの他に、低圧蓄電装置50Lが搭載されている。本明細書において、高圧蓄電装置50H及び低圧蓄電装置50Lを、蓄電装置50という場合がある。
【0016】
高圧蓄電装置50Hは、普通充電用車両インレット90から充電用ACDCコンバータ91を介して普通充電される。また、充電ステーションの充電ガンを急速充電用車両インレット92に接続することにより、高圧蓄電装置50Hが急速充電される。普通充電及び急速充電は、バッテリコントローラ50Cによって制御される。高圧蓄電装置50Hとして、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等が用いられる。バッテリ加温装置45は、コントローラ60の制御下で高圧蓄電装置50Hを加温する。バッテリ加温装置45として、例えばPTCヒータ(正温度係数ヒータ)等を用いることができる。
【0017】
低圧蓄電装置50Lは、DCDCコンバータ55を介して高圧蓄電装置50Hに接続されている。コントローラ60がDCDCコンバータ55を制御することにより、高圧蓄電装置50Hからの電力によって、低圧蓄電装置50Lが充電される。低圧蓄電装置50Lとして、例えば、鉛蓄電池が用いられる。
【0018】
電力変換装置51は、高圧蓄電装置50Hから供給される電力を昇圧し、インバータ52、57に供給する。インバータ57は、コントローラ60の制御下でポンプ用電動機58を駆動する。インバータ52は空調コントローラ33の制御下で空調用電動機53を駆動する。これらの電動機には、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)モータが用いられる。
【0019】
次に、ポンプ用電動機58で駆動される油圧駆動系について説明する。
ポンプ用電動機58によって、メインポンプ70及びパイロットポンプ71が駆動される。メインポンプ70は、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ73に作動油を供給する。メインポンプ70として、例えば、可変容量式油圧ポンプが用いられる。メインポンプ70は、斜板の角度(傾転角)を変化させることにより、ピストンのストローク長を調整し、吐出流量(吐出圧)を変化させることができる。
【0020】
パイロットポンプ71は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットラインを介して操作装置31に供給される。パイロットポンプ71として、例えば、固定容量式油圧ポンプが用いられる。操作装置31は、複数の操作レバー20(図1)を含み、オペレータによって操作される。操作装置31は、パイロットラインから供給される1次側のパイロット圧を、オペレータの操作内容に応じて、2次側のパイロット圧に変換する。2次側のパイロット圧は、コントロールバルブ73に伝達される。
【0021】
コントロールバルブ73は、2次側のパイロット圧に応じて、操作対象であるブームシリンダ25、アームシリンダ26、バケットシリンダ27、油圧モータ28、29、旋回用油圧モータ30等の油圧アクチュエータに供給する作動油の流量及び方向を制御する。これにより、各油圧アクチュエータが、操作レバー20(図1)の操作内容に応じて駆動される。
【0022】
2次側のパイロット圧は、圧力センサ74によって測定される。圧力センサ74で測定された圧力の測定結果が、コントローラ60に入力される。これにより、コントローラ60は、下部走行体12、上部旋回体11、ブーム21、アーム22、及びバケット23に対する操作の状況を検知することができる。
【0023】
なお、操作装置31の操作レバー20(図1)の操作量を電気信号に変換し、この電気信号をコントローラ60が読み取る構成としてもよい。この構成では、パイロットポンプ71とコントロールバルブ73との間に圧力制御弁が挿入され、圧力制御弁がコントローラ60によって制御される。
【0024】
コントロールバルブ73は、メインポンプ70から供給される作動油を、2次側のパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ25、アームシリンダ26、バケットシリンダ27、油圧モータ28、29、旋回用油圧モータ30)に選択的に供給する。例えば、コントロールバルブ73は、メインポンプ70から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向とを制御する複数の油圧制御弁(方向切換弁)を含む。油圧モータ28、29は、それぞれ下部走行体12の左右のクローラを駆動する。旋回用油圧モータ30は、上部旋回体11を旋回させる。
【0025】
始動スイッチ19の操作状態、例えばプッシュ操作の有無の情報が、コントローラ60に入力される。
【0026】
次に、空調系について説明する。
空調装置54が、キャビン14(図1)内の温度や湿度等を調整する。空調装置54は、例えば、冷暖房兼用のヒートポンプ式空調装置であり、コンプレッサを含む。空調装置54のコンプレッサは、空調用電動機53によって駆動される。なお、空調装置54は、暖房用のヒータを含んでもよい。
【0027】
次に、電動ショベル10に搭載された電気機器について説明する。電気機器には、ロック機構17、空調コントローラ33、表示装置34、シートヒータ38、照明器具39、ルームランプ40、無線認証装置35等が含まれる。これらの電気機器は、コントローラ60によって制御される。これらの電気機器に、低圧蓄電装置50Lから電源が供給される。
【0028】
ロック機構17は、ドア15の解錠及び施錠を行う。空調コントローラ33はインバータ52を制御することにより、空調装置54の動作を制御する。表示装置34は、電動ショベル10の稼働状態等を表示する。表示装置34として、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が用いられる。照明器具39は、電動ショベル10の周囲、特に前方の作業箇所を照らす。シートヒータ38は、運転席18(図1)を加温する。ルームランプ40は、キャビン14内を照らす。
【0029】
さらに、電気機器には、バッテリ加温装置45及び作動油加温装置46が含まれる。バッテリ加温装置45は、高圧蓄電装置50Hを温める。高圧蓄電装置50Hの温度が動作温度範囲の下限値未満である場合、バッテリ加温装置45で高圧蓄電装置50Hを温めることにより、高圧蓄電装置50Hの温度を動作温度範囲内まで高めることができる。作動油加温装置46は、作動油を温めて作動油の温度を適正温度まで高めることができる。バッテリ加温装置45及び作動油加温装置46として、例えばPTCヒータ(正温度係数ヒータ)等を用いることができる。
【0030】
無線認証装置35は、携帯型電子キーとともに、スマートキーシステムを構成する。次に、図3を参照してスマートキーシステムについて説明する。
【0031】
図3は、電動ショベル10と携帯型電子キー80との位置関係を示す平面図である。電動ショベル10に搭載された無線認証装置35が、周期的に周囲にリクエスト信号を送信する。携帯型電子キー80が、電動ショベル10を中心とするほぼ円形の認証エリア81内に存在するとき、携帯型電子キー80はリクエスト信号を受信すると、応答信号を返信する。認証エリア81は、例えば電動ショベル10を中心とした半径3m~5m程度の円形のエリアである。
【0032】
無線認証装置35は、携帯型電子キー80から応答信号を受信すると、コントローラ60(図2)に応答信号の受信を通知する。認証エリア81内に携帯型電子キー80が存在しない場合は、リクエスト信号に対する応答信号は受信されない。コントローラ60は、応答信号の受信により、携帯型電子キー80の接近を検知する。また、一定時間応答信号の受信がない場合、携帯型電子キー80が認証エリア81の外に出た(電動ショベル10から離脱した)と判定する。
【0033】
次に、図4を参照して、コントローラ60が携帯型電子キー80の接近を検知したときの処理について説明する。図4は、コントローラ60の処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
コントローラ60が携帯型電子キー80の接近を検知すると(ステップSA1)、ロック機構17を解錠状態に設定する(ステップSA2)。これにより、オペレータは、ドアハンドル16(図1)を把持してドア15を開くことができる。コントローラ60が携帯型電子キー80の離脱を検知すると(ステップSA3)、ロック機構17を施錠状態に設定する。これにより、ドア15がロックされる。
【0035】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、オペレータが携帯型電子キー80を携帯して電動ショベル10に近づくと、ドア15が解錠される。キーを鍵穴に挿入する必要がないため、乗車時のオペレータの操作を簡素化することができる。
【0036】
なお、乗用車等に適用されるスマートキーシステムでは、携帯型電子キー80が接近し、かつ乗車する人がドアハンドルを把持したことを静電容量センサ等で検知することが、ドアが解錠される条件となっている。電動ショベル10のオペレータは、作業現場で手袋を装着している場合が多く、手が汚れている場合も多い。手袋を装着した状態または手が汚れている状態では、ドアハンドル16(図1)の把持を静電容量センサで検知することが困難である。本実施例では、ドアハンドル16の把持を条件とせず、携帯型電子キー80の接近によりドア15を解錠するため、手袋を装着したオペレータまたは手が汚れたオペレータでも、ドア15を開けてキャビン14に乗り込むことができる。
【0037】
また、オペレータが携帯型電子キー80を携帯して電動ショベル10から離れると、コントローラ60がドア15を施錠する。オペレータは施錠の操作を行う必要がないため、オペレータの下車時の操作を簡素化することができる。
【0038】
次に、図5を参照して本実施例の変形例について説明する。図5は、本変形例による電動ショベル10の側面図及び、電動ショベル10及び外部機器42のブロック図である。本変形例による電動ショベル10は、無線データ通信を行う通信装置41を備えている。本変形例による電動ショベル10のコントローラ60は、ステップSA2(図4)において、ロック機構17(図1)を解錠状態に設定するとともに、外部機器42、例えばオペレータが携帯する携帯端末、電動ショベル10を管理する作業現場の管理端末等に、携帯型電子キー80の接近を通知する。この通知は、例えば、電動ショベル10に搭載された通信装置41を介して行う。
【0039】
本変形例によると、電動ショベル10に対してリレーアタック等の不法な操作が行われつつあることを、リアルタイムでオペレータや管理者が知ることができる。これにより、電動ショベル10の盗難や車上荒らし等の被害を抑止することが可能になる。
【0040】
電動ショベル10に衛星測位システム(GNSS)の受信機を備え、コントローラ60が、電動ショベル10の現在位置情報のログデータを外部機器42に送信するようにしてもよい。これにより、電動ショベル10の盗難に対して、適切な対応をとることが可能になる。
【0041】
次に、図6を参照して他の実施例による電動ショベルについて説明する。以下、図1図4を参照して説明した電動ショベルと共通の構成については説明を省略する。
【0042】
図6は、本実施例による電動ショベル10のコントローラ60(図2)の状態遷移図である。コントローラ60は、携帯型電子キー80がキャビン14(図1)内にあるか否かを識別することができる。例えば、キャビン14内に配置したアンテナによる携帯型電子キー80からの信号の受信の可否により、携帯型電子キー80がキャビン14(図1)内にあるか否かを識別することができる。
【0043】
コントローラ60は、電動ショベル10が非始動状態で、かつ携帯型電子キー80がキャビン14内に検出された状態(キー検出非始動状態SB1)、電動ショベル10が始動状態で、かつ携帯型電子キー80がキャビン14内に検出された状態(キー検出始動状態SB2)、及び電動ショベル10が非始動状態で、かつ携帯型電子キー80がキャビン14内に検出されない状態(キー非検出非始動状態SB3)の3つの状態を取り得る。
【0044】
電動ショベル10が始動状態になると、コントローラ60はポンプ用電動機58を動作させる。これにより、操作装置31にパイロット圧が供給されるとともに、コントロールバルブ73に作動油が供給される。始動状態のときにオペレータが操作レバー20を操作すると、ブームシリンダ25等のアクチュエータが動作する。電動ショベル10が非始動状態のときには、コントローラ60はポンプ用電動機58を動作させない。このため、オペレータが操作レバー20を操作しても、ブームシリンダ25等のアクチュエータは動作しない。
【0045】
コントローラ60は、キー検出非始動状態SB1のときに始動スイッチ19(図1)の操作を検出すると、キー検出始動状態SB2に遷移する。キー検出始動状態SB2のときに始動スイッチ19の操作を検出すると、コントローラ60は、キー検出非始動状態SB1に遷移する。キー非検出非始動状態SB3のときに始動スイッチ19の操作を検出しても、状態は遷移しない。
【0046】
キー検出非始動状態SB1のときに携帯型電子キー80が検出されなくなると、コントローラ60は、キー非検出非始動状態SB3に遷移する。キー非検出非始動状態SB3のときに携帯型電子キー80が検出されると、コントローラ60は、キー検出非始動状態SB1に遷移する。キー検出始動状態SB2のときに携帯型電子キー80が検出されなくなると、コントローラ60は、キー非検出非始動状態SB3に遷移する。
【0047】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、オペレータが始動スイッチ19を操作するのみで、電動ショベル10が操作可能な状態になる。キーをキーシリンダに挿入して回すという手順を経ることなく、電動ショベル10の操作が可能になるため、操作までの手順を簡素化することができる。
【0048】
次に、図7を参照してさらに他の実施例による電動ショベルについて説明する。以下、図1図4を参照して説明した実施例による電動ショベルと共通の構成については説明を省略する。
【0049】
図7は、本実施例による電動ショベル10のコントローラ60(図2)が実行する処理手順を示すフローチャートである。本実施例では、図4に示した実施例のロック機構17を解錠状態にする処理(ステップSA2)及びロック機構17を施錠状態にする処理(ステップSA4)が、それぞれ電気機器の動作を開始させる処理(ステップSA21)及び電気機器の動作を停止させる処理(ステップSA41)に置き換わっている。ここで、電気機器には、空調コントローラ33、表示装置34、シートヒータ38、照明器具39、ルームランプ40、バッテリ加温装置45、及び作動油加温装置46が含まれる。
【0050】
空調コントローラ33(図2)が動作すると、空調コントローラ33がインバータ52を制御し、空調装置54が動作する。これにより、キャビン14内が適切な温度に調整される。表示装置34が動作すると、表示装置34に電動ショベル10の稼働状態が表示される。
【0051】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、オペレータが携帯型電子キー80を携帯して電動ショベル10に接近すると、所定の電動機器が動作を開始する。このため、以下に説明するような種々の優れた効果が得られる。
【0052】
空調装置54が動作することにより、オペレータがキャビン14に乗り込んでからより短時間で快適な温度にすることができる。また、シートヒータ38を動作させることにより、オペレータが運転席18に着座してから快適な温度になるまでの時間を短縮することができる。表示装置34を動作させることにより、オペレータがキャビン14に乗り込んだ時点から、直ちに電動ショベル10の稼働状態、例えば蓄電装置50の充電状態、満充電までの待ち時間等を確認することができる。なお、表示装置34がキャビン14の外から見える場所に取り付けられている場合は、オペレータがキャビン14に乗り込むことなく、電動ショベル10の稼働状態を確認することができる。
【0053】
照明器具39が点灯することにより、夜間の安全性を高めることができる。また、高圧蓄電装置50Hが充電中である場合、充電プラグの箇所が照らされることにより、充電ガンの取り扱いが容易になる。ルームランプ40が点灯することにより、オペレータは安全にキャビン14に乗り込むことができる。
【0054】
バッテリ加温装置45を動作させることにより、高圧蓄電装置50Hを迅速に適正な温度まで昇温させることができる。また、作動油加温装置46を動作させることにより、作動油を迅速に適正な温度まで昇温させることができる。これにより、暖機運転に必要な時間を短縮することができる。
【0055】
携帯型電子キー80の接近を検知したときに種々の電気機器を動作させる機能は、電動ショベル10のソフトウェアのアップデートによって追加することができる。
【0056】
次に、本実施例の変形例について説明する。本変形例による電動ショベル10のコントローラ60は、複数の電気機器のうち、携帯型電子キー80の接近を検知したときに動作させる電気機器の種別の一覧を記憶している。この一覧は、外部からの指令により書き換えられる。例えば、コントローラ60は、表示装置34(図1)または外部機器42(図5)に電気機器の一覧を表示させ、この一覧から、動作させる電気機器の種別を選択させる機能を有する。オペレータまたは現場の管理者は、当日の天候や気温、周囲の明るさに応じて、動作させる電気機器の種別を選択するとよい。
【0057】
次に、図8を参照して、さらに他の実施例による電動ショベル及び遠隔操作器について説明する。以下、図7を参照して説明した実施例による電動ショベルと共通の構成については説明を省略する。
【0058】
図8は、本実施例による電動ショベル10及び遠隔操作器85の概略図である。遠隔操作器85は、表示画面86、処理装置87、通信装置88、及び記憶装置89を含む。遠隔操作器85として、スマートフォン、パソコン、タブレット端末等を用いることができる。電動ショベル10は、通信装置36を備えている。電動ショベル10のコントローラ60と遠隔操作器85の処理装置87とが、通信装置36及び通信装置88を介してデータ通信を行う。
【0059】
処理装置87は、記憶装置89に格納されているプログラムを実行することにより、電動ショベル10に対して種々の指令を送信する。例えば、スマートフォン、パソコン、タブレット端末等にアプリケーションプログラムをインストールすることにより、電動ショベル10に対して種々の指令を送信する機能を追加することができる。遠隔操作器85は、1つの機能として、電動ショベル10に携帯型電子キー80が接近したときに動作させる電気機器の種別をオペレータに選択させる機能を有する。以下、この機能について説明する。
【0060】
処理装置87は、電動ショベル10に携帯型電子キー80が接近したときに動作させる電気機器の種別をオペレータに選択させるための図表を表示画面86に表示する。例えば、「搭乗前に自動的に動作させる装置を選択してください」というメッセージと共に、電気機器の一覧を表示する。さらに、電気機器のそれぞれに対応してラジオボタンを表示する。選択された電気機器に対応するラジオボタンは黒く塗りつぶされ、選択されていない電気機器に対応するラジオボタンは、中空の円形である。
【0061】
オペレータがラジオボタンをタップすると、電気機器の選択状態が、「選択」と「非選択」との間で切り替わる。オペレータが、動作させたい電気機器を選択して送信ボタンをタップすると、複数の電気機器の選択状態が、電動ショベル10に送信される。電動ショベル10のコントローラ60は、遠隔操作器85から電気機器の選択情報を受信すると、携帯型電子キー80の接近を検知したときに動作させる電気機器の種別の一覧を更新する。
【0062】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においては、携帯型電子キー80の接近を検知したときに動作させる電気機器の種別の一覧を遠隔から書き換えることができる。このため、電動ショベル10に接近する前に、動作させたい電気機器を指定することが可能になる。
【0063】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0064】
10 :電動ショベル
11 :上部旋回体
12 :下部走行体
13 :旋回機構
14 :キャビン
15 :ドア
16 :ドアハンドル
17 :ロック機構
18 :運転席
19 :始動スイッチ
20 :操作レバー
21 :ブーム
22 :アーム
23 :バケット
25 :ブームシリンダ
26 :アームシリンダ
27 :バケットシリンダ
28 :油圧モータ
29 :油圧モータ
30 :旋回用油圧モータ
31 :操作装置
33 :空調コントローラ
34 :表示装置
35 :無線認証装置
36 :通信装置
38 :シートヒータ
39 :照明器具
40 :ルームランプ
41 :通信装置
42 :外部機器
45 :バッテリ加温装置
46 :作動油加温装置
50 :蓄電装置
50C :バッテリコントローラ
50H :高圧蓄電装置
50L :低圧蓄電装置
50M :バッテリモジュール
51 :電力変換装置
52 :インバータ
53 :空調用電動機
54 :空調装置
55 :DCDCコンバータ
57 :インバータ
58 :ポンプ用電動機
60 :コントローラ
70 :メインポンプ
71 :パイロットポンプ
72 :圧力制御弁
73 :コントロールバルブ
74 :圧力センサ
80 :携帯型電子キー
81 :認証エリア
85 :遠隔操作器
86 :表示画面
87 :処理装置
88 :通信装置
89 :記憶装置
90 :普通充電用車両インレット
91 :充電用ACDCコンバータ
92 :急速充電用車両インレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8