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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057834
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240418BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G02B5/30
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164778
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 章典
【テーマコード(参考)】
2G051
2H149
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB01
2G051AB20
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB26
2H149DA04
2H149DA27
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA19
2H149FB01
2H149FB06
2H149FB08
2H149FD04
(57)【要約】
【課題】偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度を精密に制御した光学積層体を効率的に製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体の製造方法は、偏光板を含む第1積層フィルムと第1位相差層を含む第2積層フィルムとを準備する工程と、該第2積層フィルムの複数箇所において第1位相差層の理想状態の遅相軸と実際の遅相軸とのなす軸交差角度を検査して、第2積層フィルムを良品または不良品と判定する工程と、良品と判定された第2積層フィルムと第1積層フィルムとを貼り合わせて、積層フィルム中間体を得る工程と、積層フィルム中間体における異物の有無を検査し、積層フィルム中間体を良品または不良品と判定する工程と、良品と判定された積層フィルム中間体を所定サイズに打ち抜いて、複数の光学積層体片を得る工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板を含む第1積層フィルムと、λ/4板として機能する第1位相差層を含む第2積層フィルムとを準備する準備工程と、
前記第2積層フィルムの複数箇所において、前記第1位相差層の理想状態の遅相軸と前記第1位相差層の実際の遅相軸とがなす軸交差角度を検査して、複数の検査箇所のうち前記軸交差角度が所定範囲内である検査箇所の割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する軸アライメント検査工程と、
前記軸アライメント検査工程において良品と判定された第2積層フィルムと、前記第1積層フィルムとを貼り合わせて、積層フィルム中間体を得る貼合工程と、
前記積層フィルム中間体における異物の有無を検査し、前記積層フィルム中間体を良品または不良品と判定する異物検査工程と、
前記異物検査工程において良品と判定された積層フィルム中間体を所定サイズに打ち抜き、複数の光学積層体片を得る打抜工程と、
を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項2】
前記貼合工程において、前記偏光板の偏光子の吸収軸と前記第1位相差層の実際の遅相軸とのなす角度が所定範囲内となるように、前記第1積層フィルムと前記第2積層フィルムとを貼り合わせる、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記異物検査工程において、前記積層フィルム中間体を複数の仮想エリアに区画して、前記複数の仮想エリアにおける異物の有無を検査し、前記複数の仮想エリアのうち異物が含まれる仮想エリアの割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第2積層フィルムは、
前記第1位相差層に積層される第2位相差層であって、nz>nx=nyの屈折率特性を示す第2位相差層と、
前記第2位相差層に対して前記第1位相差層の反対側に位置する第1表面保護フィルムと、を備え、
前記第1表面保護フィルムは、前記積層フィルム中間体の最表面に位置する、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項5】
前記異物検査工程後かつ前記打抜工程前に、前記積層フィルム中間体の第1表面保護フィルムに、第2表面保護フィルムを貼り合わせる表面保護工程を含む、請求項4に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記軸アライメント検査工程、前記貼合工程、前記異物検査工程および前記表面保護工程は、クリーンブース内で実施される、請求項5に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記軸アライメント検査工程の前に、前記第1積層フィルムおよび前記第2積層フィルムのそれぞれを洗浄する洗浄工程を含む、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、および/または当該画像表示の性能を高めるために、偏光板と位相差フィルム(位相差層)とを含む光学積層体が広く使用されている。ところで、近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。そのような用途の一例としては、ヴァーチャルリアリティ(VR)ゴーグルが挙げられる。VRゴーグルに光学積層体を適用する場合、そのサイズが従来の用途に比べて顕著に小さくなる。その結果、従来の用途よりも、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度を精密に制御することが要求され得る。
また、そのような光学積層体は、画像表示欠陥などを抑制するために当該光学積層体内部の異物を排除する必要があり、代表的には異物検査に供される。例えば、異物検査は、最終製品としての光学積層体に対して実施され、所定の基準に基づいて良品と不良品とに選別される。しかし、最終製品に対して異物検査を実施すると、光学積層体の製造効率の向上を図るには限度がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-182162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度を精密に制御した光学積層体を、効率的に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による光学積層体の製造方法は、偏光板を含む第1積層フィルムと、λ/4板として機能する第1位相差層を含む第2積層フィルムとを準備する準備工程と、前記第2積層フィルムの複数箇所において、前記第1位相差層の理想状態の遅相軸と前記第1位相差層の実際の遅相軸とがなす軸交差角度を検査して、複数の検査箇所のうち前記軸交差角度が所定範囲内である検査箇所の割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する軸アライメント検査工程と、前記軸アライメント検査工程において良品と判定された第2積層フィルムと、前記第1積層フィルムとを貼り合わせて、積層フィルム中間体を得る貼合工程と、前記積層フィルム中間体における異物の有無を検査し、前記積層フィルム中間体を良品または不良品と判定する異物検査工程と、前記異物検査工程において良品と判定された積層フィルム中間体を所定サイズに打ち抜き、複数の光学積層体片を得る打抜工程と、を含む。
[2]上記[1]に記載の光学積層体の製造方法における上記貼合工程において、上記偏光板の偏光子の吸収軸と上記第1位相差層の実際の遅相軸とのなす角度が所定範囲内となるように、上記第1積層フィルムと上記第2積層フィルムとを貼り合わせてもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の光学積層体の製造方法における上記異物検査工程において、上記積層フィルム中間体を複数の仮想エリアに区画して、上記複数の仮想エリアにおける異物の有無を検査し、上記複数の仮想エリアのうち異物が含まれる仮想エリアの割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定してもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の光学積層体の製造方法において、上記第2積層フィルムは、上記第1位相差層に積層される第2位相差層であって、nz>nx=nyの屈折率特性を示す第2位相差層と、該第2位相差層に対して上記第1位相差層の反対側に位置する第1表面保護フィルムと、を含んでいてもよい。上記第1表面保護フィルムは、上記積層フィルム中間体の最表面に位置してもよい。
[5]上記[4]に記載の光学積層体の製造方法は、上記異物検査工程後かつ上記打抜工程前に、上記積層フィルム中間体の第1表面保護フィルムに、第2表面保護フィルムを貼り合わせる表面保護工程を含んでいてもよい。
[6]上記[5]に記載の光学積層体の製造方法において、上記軸アライメント検査工程、上記貼合工程、上記異物検査工程および上記表面保護工程は、クリーンブース内で実施されてもよい。
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載の光学積層体の製造方法は、上記軸アライメント検査工程の前に、上記第1積層フィルムおよび上記第2積層フィルムのそれぞれを洗浄する洗浄工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度を精密に制御した光学積層体を、効率的に製造し得る方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態による光学積層体の製造方法を説明する工程フロー図である。
図2図2(a)は、図1に示す準備工程で準備される第2積層フィルムの概略断面図である。図2(b)は、図1に示す準備工程で準備される第1積層フィルムの概略断面図である。
図3図3(a)は、図1に示す貼合工程における第2積層フィルムの概略断面図である。図3(b)は、図1に示す貼合工程における第1積層フィルムの概略断面図である。
図4図4は、図1に示す貼合工程によって得られる積層フィルム中間体の概略断面図である。
図5図5(a)は、図1に示す貼合工程における第1積層フィルムおよび第2積層フィルムの概略平面図である。図5(b)は、図5(a)に示す第1積層フィルムおよび第2積層フィルムが貼り合わされた積層フィルム中間体の概略平面図である。
図6図6は、図1に示す異物検査工程における積層フィルム中間体の概略平面図である。
図7図7は、図1に示す打抜工程によって得られる光学積層体片(最終製品としての光学積層体)の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面はすべて模式的に表されており、実際の状態を正確に描いたものではない。
【0009】
A.光学積層体の製造方法の概略
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の製造方法を説明する工程フロー図である。本発明の実施形態による光学積層体の製造方法は、偏光板を含む第1積層フィルムと、λ/4板として機能する第1位相差層を含む第2積層フィルムとを準備する準備工程と;第2積層フィルムの複数箇所において、第1位相差層の理想状態の遅相軸と第1位相差層の実際の遅相軸とがなす軸交差角度を検査して、複数の検査箇所のうち軸交差角度が所定範囲内である検査箇所の割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する軸アライメント検査工程と;軸アライメント検査工程において良品と判定された第2積層フィルムと第1積層フィルムとを貼り合わせて、積層フィルム中間体を得る貼合工程と;積層フィルム中間体における異物の有無を検査し、積層フィルム中間体を良品または不良品と判定する異物検査工程と;異物検査工程において良品とされた積層フィルム中間体を所定サイズに打ち抜き、複数の光学積層体片を得る打抜工程と;を含む。
【0010】
本発明者らは、非常に小型(例えば、VRゴーグル用:20mm×30mm程度のサイズ)の光学積層体を作製する場合、最終製品としての光学積層体ごとに偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とがなす角度がばらつき、それに起因して、光学積層体の特性のばらつきが許容不可能に大きくなることを新たに発見した。さらに、本発明者らは、当該課題を解決するために試行錯誤した結果、位相差フィルムにおける遅相軸の軸ずれが偏光子の吸収軸の軸ずれよりも当該課題に支配的であり、遅相軸の軸ずれが比較的小さい位相差フィルムを選択的に用いる製造プロセスを採用することにより当該課題が解決され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態は、今まで認識されていなかった新たな課題を解決するものであり、その効果は予期せぬ優れた効果である。
上記の方法によれば、第2積層フィルムの複数箇所において、第1位相差層の理想状態の遅相軸と実際の遅相軸とがなす軸交差角度を検査して、第2積層フィルムを良品または不良品と判定した後、良品と判定した第2積層フィルムを第1積層フィルムに貼り合わせて積層フィルム中間体を得る。そのため、第2積層フィルムを良品または不良品と判定せずに、すべての第2積層フィルムを第1積層フィルムに貼り合わせる場合と比較して、偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とがなす角度が積層フィルム中間体ごとにばらつくことを抑制できる。その結果、積層フィルム中間体から打ち抜かれる複数の光学積層体片(最終製品としての光学積層体)において、偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とがなす角度を精密に制御でき、光学積層体片が許容不可能な不良品となる割合を低減できる。これによって、光学積層体の材料(特に第1積層フィルム)が無駄になることを抑制できる。
また、上記の方法では、打抜工程の前に異物検査工程が実施され、積層フィルム中間体が良品または不良品と判定された後、良品と判定された積層フィルム中間体から、複数の光学積層体片が打ち抜かれる。そのため、異物が混入した光学積層体片が製造される割合を十分に低減できる。また、複数の光学積層体片のそれぞれに対して異物検査工程を実施する場合と比較して、異物検査工程の実施頻度を抑制でき、光学積層体片の製造効率の向上を図ることができる。
【0011】
図5(a)および図5(b)は、1つの実施形態による貼合工程を説明するための概略図である。1つの実施形態において、上記貼合工程では、偏光子の吸収軸Aと第1位相差層の実際の遅相軸Sとのなす角度が所定範囲内となるように、第1積層フィルム1と第2積層フィルム2とを貼り合わせる。そのため、貼合工程において、偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とのなす角度が所定範囲内となるように補正される。その結果、積層フィルム中間体において、吸収軸と遅相軸とがなす角度をきわめて精密に制御できる。
【0012】
図6は、1つの実施形態による異物検査工程を説明するための概略図である。1つの実施形態において、上記異物検査工程では、積層フィルム中間体3を複数の仮想エリアEに区画して、複数の仮想エリアEにおける異物の有無を検査し、複数の仮想エリアEのうち異物が含まれる仮想エリアの割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する。その後、異物検査工程で良品と判定された積層フィルム中間体から複数の光学積層体片(最終製品としての光学積層体)が打ち抜かれる。そのため、光学積層体片の製造効率の向上を図りつつ、異物が混入した光学積層体片が製造される割合をより低減できる。
【0013】
1つの実施形態において、光学積層体の製造方法は、異物検査工程後かつ打抜工程前に、表面保護工程をさらに含む。詳しくは後述するが、図4に示すように、異物検査工程に供される積層フィルム中間体3の最表面には、第1表面保護フィルム23が位置しており、表面保護工程では、積層フィルム中間体3の第1表面保護フィルム23に、第2表面保護フィルム31を貼り合わせる。そのため、表面保護工程後に実施される打抜工程で得られる光学積層体片(最終製品としての光学積層体)は、第2表面保護フィルムを含む。その結果、光学積層体片(最終製品としての光学積層体)の流通時、搬送時などにおいて、第2表面保護フィルムが第1表面保護フィルムを保護でき、第1表面保護フィルムが傷つくことを抑制できる。
第1表面保護フィルムが傷つくと、光学積層体片に対して異物検査工程を実施したときに、第1表面保護フィルムの傷が異物として誤って検出されるおそれがある。一方、上記の構成では、第1表面保護フィルムが保護されているので、第2表面保護フィルムを剥離した後に光学積層体片を異物検査工程に供することで、異物の誤検出を抑制でき、光学積層体片の異物検査結果と積層フィルム中間体の異物検査結果とを整合させることができる。
【0014】
1つの実施形態において、軸アライメント検査工程、貼合工程、異物検査工程および表面保護工程は、クリーンブース内で実施される。準備工程および打抜工程は、クリーンブース内で実施されてもよく、クリーンブース外で実施されてもよい。このような方法によれば、積層フィルム中間体に異物が混入することを抑制できる。
クリーンブースでは、エアフィルターによって空気中の浮遊粒子を除去した空気が、ブース(ルーム)内に供給される。クリーンブースの室内圧力は、クリーンブースの外部の圧力よりも高い(正圧)。そのため、外部からのクリーンブース内への浮遊粒子の侵入を抑制できる。このようなクリーンブースとして、例えば、特開2015-047749号公報に記載のクリーンルームが挙げられる。
【0015】
1つの実施形態において、光学積層体の製造方法は、軸アライメント検査工程の前に、第1積層フィルムおよび第2積層フィルムのそれぞれを洗浄する洗浄工程を含む。そのため、第1積層フィルムおよび第2積層フィルムに付着する異物を除去でき、積層フィルム中間体に異物が混入することをより安定して抑制できる。特に、軸アライメント検査工程がクリーンブース内で実施される場合、洗浄工程をクリーンブース外で実施することにより、第1積層フィルムおよび/または第2積層フィルムに付着する異物がクリーンブース内に侵入することを抑制できる。
以下、各工程を具体的に説明する。
【0016】
B.準備工程
図2(a)および図2(b)は、準備工程で準備される第1積層フィルムおよび第2積層フィルムの概略断面図である。準備工程では、任意の適切な方法によって、第1積層フィルム1と、第2積層フィルム2とが準備される。
【0017】
B-1.第1積層フィルム
第1積層フィルム1は、偏光板11を含む。1つの実施形態において、第1積層フィルム1は、偏光板11に加えて、偏光板11の厚み方向の一方側に位置している粘着剤層14と;偏光板11に対して粘着剤層14と反対側に位置している粘着剤層15と;粘着剤層14における偏光板11と反対側の表面に貼り付けられている第1セパレータ12と;粘着剤層15における偏光板11と反対側の表面に貼り付けられている第2セパレータ13と;を備えている。
第1積層フィルム1は、例えば短辺75mm~310mm程度の矩形、また例えば長辺250mm~350mmおよび短辺150mm~250mm程度の矩形であり得る。
【0018】
偏光板11は、代表的には、偏光子と偏光子の少なくとも一方の側に設けられた保護フィルムとを有する。
偏光子は、第1積層フィルムの長辺方向に吸収軸を有してもよく、第1積層フィルムの長辺方向に対して斜め方向(代表的には45°方向)に吸収軸を有してもよい。図5(a)に示す第1積層フィルム1では、偏光子は、第1積層フィルムの長辺方向に吸収軸を有する。
【0019】
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体を用いて作製されてもよい。単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム、部分ホルマール化PVA系樹脂フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系樹脂フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系樹脂フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0020】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
偏光子の厚みは、例えば15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、とりわけ好ましくは8μm以下であり、例えば1μm以上である。
【0021】
保護フィルムは、偏光子の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムで構成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、環状オレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。好ましくは、TAC、(メタ)アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂が用いられ得る。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0022】
粘着剤層14および粘着剤層15のそれぞれは、任意の適切な粘着剤(感圧接着剤)から形成される。粘着剤層を形成する粘着剤として、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0023】
第1セパレータ12は、光学積層体片(最終製品としての光学積層体)の表面を保護するための製品保護フィルムである。第1セパレータ12は、代表的には、光学積層体が使用されるまで粘着剤層14に仮着されており、光学積層体片の使用時に粘着剤層14から剥離される。第1セパレータ12は、例えば、シクロオレフィン系樹脂から形成される基材と、基材の粘着剤層側の表面に位置している剥離処理層(例えばシリコーン処理層)とを備えている。
第2セパレータ13は、光学積層体の製造工程において剥離される工程保護フィルムである。第2セパレータ13は、代表的には、軸アライメント検査工程の後、かつ、貼合工程の前に粘着剤層15から剥離される。第2セパレータ13の構成は、代表的には、第1セパレータ12の構成と同様に説明される。
【0024】
B-2.第2積層フィルム
第2積層フィルム2は、第1位相差層21を含む。1つの実施形態において、第2積層フィルム2は、第1位相差層21に加えて、第1位相差層21に積層される第2位相差層22と;第2位相差層22に対して第1位相差層21の反対側に位置する第1表面保護フィルム23と;を備えている。また、第2積層フィルム2は、第1表面保護フィルム23と第2位相差層22との間に位置する基材24と;基材24と第2位相差層22との間に位置する粘着剤層25と、第1位相差層21の外側に貼り付けられている第1仮保護フィルム26と;第1表面保護フィルム23の外側に貼り付けられている第2仮保護フィルム27と;を備えていてもよい。
第2積層フィルム2は、代表的には第1積層フィルム1と同じサイズを有する。第2積層フィルム2は、例えば短辺75mm~310mm程度の矩形、また例えば長辺250mm~350mmおよび短辺150mm~250mm程度の矩形であり得る。
【0025】
第1位相差層21は、nx>nyの関係を示す。第1位相差層21は、代表的にはnx>ny≧nzの屈折率特性を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。
第1位相差層21は、λ/4板として機能し得る。第1位相差層21の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~200nmであり、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは130nm~150nmである。ここで、「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。したがって、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
【0026】
第2積層フィルムにおける第1位相差層の遅相軸方向は、代表的には、第1積層フィルムにおける偏光子の吸収軸方向との関係から設定される。第1位相差層は、偏光子が第1積層フィルムの長辺方向に吸収軸を有する場合、第2積層フィルムの長辺方向に対して斜め方向(代表的には45°方向)に遅相軸を有し、偏光子が第1積層フィルムの長辺方向に対して斜め方向(代表的には45°方向)に吸収軸を有する場合、第2積層フィルムの長辺方向に遅相軸を有する。図5(a)に示す第2積層フィルム2では、第1位相差層は、第2積層フィルムの長辺方向に対して45°方向に遅相軸を有する。
【0027】
第1位相差層21は、目的に応じて任意の適切な光学的特性および/または機械的特性を有する位相差フィルムで構成され得る。位相差フィルムは、代表的には、樹脂フィルムの延伸フィルムである。位相差フィルムを構成する樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0028】
位相差フィルムは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0029】
位相差フィルム(第1位相差層)の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、上記所望の面内位相差が得られるように設定され得る。位相差フィルム(第1位相差層)の厚みは、例えば70μm以下、好ましくは60μm以下であり、例えば15μm以上である。
【0030】
第2位相差層22は、代表的には、任意の適切な接着層(接着剤層、粘着剤層:図示せず)を介して第1位相差層21に貼り合わされている。第2位相差層22は、代表的には、nz>nx=nyの屈折率特性を示す。なお、ここで「nx=ny」はnxとnyが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。第2位相差層22の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nm、より好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
【0031】
第2位相差層22は、任意の適切な材料で形成され得る。第2位相差層22は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。第2位相差層の厚みは、例えば0.5μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~8μmであり、より好ましくは0.5μm~5μmである。
【0032】
第1表面保護フィルム23は、光学積層体片(最終製品としての光学積層体)の表面を保護するための製品保護フィルムである。第1表面保護フィルム23は、代表的には、光学積層体が使用されるまで仮着されており、光学積層体片の使用時に剥離される。図2(a)に示す第2積層フィルム2では、第1表面保護フィルム23は、基材24に仮着されている。第1表面保護フィルム23は、代表的には、シクロオレフィン系樹脂から形成される基材と、基材上に設けられる粘着剤層とを備えている。粘着剤層は、任意の適切な粘着剤(感圧接着剤)から形成され、代表的には(メタ)アクリル系粘着剤から形成されている。
【0033】
基材24は、粘着剤層25を介して第2位相差層22に貼り合わされている。基材24は、任意の適切なフィルムで形成される。基材24を構成する樹脂の代表例としては、例えば、上記B-1項で説明した保護層の主成分となる材料と同様のもの(上記した透明樹脂、上記した熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂、上記したガラス質系ポリマー、および、上記した樹脂組成物)が挙げられる。基材24を構成する樹脂として、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂が用いられ、より好ましくはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。基材24の表面には、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0034】
粘着剤層25は、任意の適切な粘着剤(感圧接着剤)から形成される。粘着剤層を形成する粘着剤として、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0035】
第1仮保護フィルム26および第2仮保護フィルム27は、光学積層体の製造工程において剥離される工程保護フィルムである。第1仮保護フィルム26は、代表的には洗浄工程の後、かつ、軸アライメント検査工程の前に第1位相差層21から剥離される。第2仮保護フィルム27は、代表的には軸アライメント検査工程の後、かつ、貼合工程の前に第1表面保護フィルム23から剥離される。第1仮保護フィルム26および第2仮保護フィルム27は、任意の適切な粘着剤(感圧接着剤)から形成されている。
【0036】
C.洗浄工程
上記Bに記載される第1積層フィルム1および第2積層フィルム2のそれぞれは、好ましくは洗浄工程において洗浄される。積層フィルムの洗浄方法は、特に制限されない。積層フィルムの洗浄方法は、ドライ方式であってもよく、ウェット方式であってもよい。ドライ方式として、例えば、粘着ロールをフィルムに接触させて洗浄する粘着ロール式;空気中で超音波をフィルムに当ててフィルムから脱離した異物を吸引するドライ超音波式が挙げられる。ウェット方式として、例えば、液体中で超音波をフィルムに当ててフィルムから異物を除去するウェット超音波式が挙げられる。これら洗浄方法のなかでは、好ましくはドライ方式が挙げられる。
【0037】
D.軸アライメント検査工程
軸アライメント検査工程では、第2積層フィルムの複数箇所において、第1位相差層の理想状態の遅相軸と実際の遅相軸とのなす軸交差角度を検査して、複数の検査箇所のうち軸交差角度が所定範囲内である検査箇所の割合が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する。
より詳細には、以下のとおりである。まず、図2(a)および図3(a)に示すように、第2積層フィルム2が第1仮保護フィルム26を備えている場合、第1仮保護フィルム26を第1位相差層21から剥離する。その後、第2積層フィルム2の長辺のエッジを検出し、検出したエッジを基準として、エッジと所定の角度(例えば、45°または0°)をなす理想状態の遅相軸(仮想の遅相軸)を設定する。
次いで、第2積層フィルムの複数箇所(代表的には理想状態の遅相軸と直交する方向における複数箇所)において、第1位相差層の実際の遅相軸を測定する。測定箇所の個数は、2以上、好ましくは3以上であり、例えば10以下である。測定箇所は、好ましくは第2積層フィルムの中心を含み、より好ましくは、第2積層フィルム2の中心と、当該中心に対して点対称となる複数箇所とを含む。図5(a)に示す第2積層フィルム2では、測定箇所は、第2積層フィルム2の中心と、当該中心に対して点対称となる第2積層フィルム2の対角の隅部である。遅相軸の測定方法としては、任意の適切な手段が採用され得る。例えば、Axometrics社製の「AxoScan」によって遅相軸を測定し得る。
第1位相差層における遅相軸の軸ずれは、偏光子の吸収軸の軸ずれに対して大きい。そのため、第2積層フィルムでは、第1位相差層の部分ごとに実際の遅相軸が平行とならない場合がある。例えば、図5(a)に示す第2積層フィルム2では、第2積層フィルムの中心における遅相軸と長辺方向とがなす角度と、中心以外の部分における遅相軸と長辺方向とがなす角度が異なり得る。より詳しくは、第2積層フィルム2の第1の隅部における遅相軸S1と長辺方向とがなす角度は、第2積層フィルム2の中心の遅相軸S2と長辺方向とがなす角度よりも所定角度(例えば0.1°~3°)小さくなる場合があり、第2積層フィルム2の第2の隅部における遅相軸S3と長辺方向とがなす角度は、第2積層フィルム2の中央部の遅相軸S2と長辺方向とがなす角度よりも所定角度(例えば0.1°~3°)大きくなる場合がある。
【0038】
次いで、各測定箇所の実際の遅相軸と理想状態の遅相軸とがなす軸交差角度を算出して、複数の検査箇所(測定箇所)のうち軸交差角度が所定範囲(許容範囲)内である検査箇所の割合を算出する。
軸交差角度の許容範囲の上限は、例えば1.0°以下であり、好ましくは0.5°以下であり、より好ましくは0.2°以下である。軸交差角度の許容範囲の下限は、代表的には0°以上である。
次いで、複数の検査箇所のうち、軸交差角度が上記許容範囲内である検査箇所の割合(軸交差角度が上記許容範囲内である検査箇所の数/検査箇所の総数×100;以下、許容箇所割合とする。)が、所定範囲(許容範囲)内である場合に良品と判定し、所定範囲(許容範囲)外である場合に不良品と判定する。
許容箇所割合の許容範囲の下限は、良品と不良品との判定基準であり、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、とりわけ好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。許容箇所割合の許容範囲の上限は、代表的には100%以下である。軸アライメント検査工程における良品と不良品との判定基準が上記下限値であると、第1積層フィルムと第2積層フィルムとを貼り合わせて得られる積層フィルム中間体において、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度をきわめて精密に安定して制御できる。
なお、軸アライメント検査工程において不良品と判定された第2積層フィルムは、本実施形態の光学積層体片の製造方法から排除(代表的には廃棄)され、以降の工程に用いられない。
【0039】
E.貼合工程
次いで、軸アライメント検査工程において良品と判定された第2積層フィルムと、第1積層フィルムとを貼り合わせる。
より詳細には、以下のとおりである。まず、図2(b)および図3(b)に示すように、第1積層フィルム1が第2セパレータ13および粘着剤層15を備えている場合、第2セパレータ13を粘着剤層15から剥離する。次いで、上記した軸アライメントの各検査箇所(測定箇所)における第1位相差層の実際の遅相軸に基づいて、それら実際の遅相軸のそれぞれと偏光子の吸収軸とがなす角度が、代表的には45°±1°以内、好ましくは45°±0.5°以内、より好ましくは45°±0.2°以内となるように、第1積層フィルムと第2積層フィルムとを配置して、粘着剤層15と第1位相差層21とを接触させる。
1つの実施形態では、図5(a)および図5(b)に示すように、第2積層フィルム2の厚み方向から見て、第2積層フィルム2の中心を第1積層フィルム1の中心と一致させ、上記した実際の遅相軸のぞれぞれと吸収軸とのなす角度が上記範囲となるように、第2積層フィルム2を中心について回転させ、遅相軸と吸収軸との軸角度の関係を保持した状態で、第2積層フィルム2を第1積層フィルム1に貼り合わせる。
このように、貼合工程において、実際の遅相軸と吸収軸との軸角度を補正する「貼り合わせ補正」を実施することにより、積層フィルム中間体における遅相軸と吸収軸とがなす角度がより一層精密に制御できる。
【0040】
なお、偏光子における吸収軸の軸ずれは、実質的に存在しない、または、存在したとしても位相差フィルムの遅相軸の軸ずれに対して格段に小さい。そのため、第1積層フィルムでは、偏光子の部分ごとの吸収軸が実質的に平行である。例えば、図5(a)に示す第1積層フィルム1では、第1積層フィルム1の中心における偏光子の吸収軸A2と、中心以外の部分(図示例では第1積層フィルムの対角の隅部)における偏光子の吸収軸A1およびA3とは互いに実質的に平行である。より具体的には、吸収軸A2に対する吸収軸A1およびA3の軸ずれは、代表的には0°±1°未満、好ましくは0°±0.5°未満である。そのため、第1積層フィルムの各部分における実際の吸収軸を測定しなくても、上記した貼り合わせ補正が実施可能である。
【0041】
以上によって、第1積層フィルムと第2積層フィルムとが貼り合わされて、積層フィルム中間体が得られる。図4に示す積層フィルム中間体3では、第1表面保護フィルム23が最表面に位置している。
【0042】
また、貼合工程では、第1積層フィルムの外縁と第2積層フィルムの外縁とが一致するようにして貼り合わせることもできる。上記のとおり、軸アライメント検査工程において、遅相軸方向の精度が基準に満たない第2積層フィルムが排除されているので、それぞれの外縁が一致するようにして貼り合わせても、積層フィルム中間体における偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とがなす角度を制御することができる。一方、上記のように貼り合わせ補正を実施するほうが、偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とがなす角度を精密に制御できるので、より好ましい。
【0043】
F.異物検査工程
次いで、積層フィルム中間体における異物の有無を検査し、積層フィルム中間体を良品と不良品とに判定する。異物検査工程は、任意の適切な異物検査装置によって実施される。異物検査装置として、公知の異物検査装置が挙げられ、異物検査装置が記載される文献として、例えば、国際公開第2011/148790号、特開2003-344302号公報、特開2011-226957号公報、特開2016-70856号公報が挙げられる。
【0044】
1つの実施形態では、図6に示すように、積層フィルム中間体3における異物検査有効範囲を、後述する光学積層体片(最終製品)のサイズに基づく複数の仮想エリアEに区画し、複数の仮想エリアEにおける異物の有無を検査する。検査される異物のサイズは、代表的には5μm以上300μm以下であり、または5μm以上200μm以下であり、または5μm以上100μm以下である。
次いで、複数の仮想エリアEのうち異物が含まれる仮想エリアの割合(異物が含まれる仮想エリアの数/複数の仮想エリアの総数×100;以下、異物占有率とする。)が、所定範囲内である場合に良品と判定し、所定範囲外である場合に不良品と判定する。
異物占有率の上限は、良品と不良品との判定基準であり、例えば10%以下、好ましくは5%以下である。また、異物占有率の下限は、例えば0%以上である。
異物検査工程における良品と不良品との判定基準が上記の上限値であると、異物が混入した光学積層体片が製造される割合をより一層低減できる。
なお、異物検査工程において不良品と判定された積層フィルム中間体は、本実施形態の光学積層体片の製造方法から排除(代表的には廃棄)され、以降の工程に用いられない。
【0045】
G.表面保護工程
1つの実施形態では、異物検査工程後かつ打抜工程前に、異物検査工程で良品と判定された積層フィルム中間体の第1表面保護フィルムに、第2表面保護フィルムを貼り合わせる。第2表面保護フィルムの構成は、代表的には第1表面保護フィルムの構成と同様に説明される。
【0046】
H.打抜工程
次いで、異物検査工程において良品と判定された積層フィルム中間体(好ましくは第2表面保護フィルムが貼り合わされた積層フィルム中間体)を所定サイズに打ち抜き、複数の光学積層体片(最終製品としての光学積層体)を得る。打ち抜きは、代表的には、異物検査工程における複数の仮想エリアの区画線に沿って行われる。その結果、偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とのなす角度が上記範囲内である光学積層体片(最終製品としての光学積層体)を得ることができる。上記のとおり、積層フィルム中間体において、偏光子の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とのなす角度は良好に制御されている。したがって、積層フィルム中間体から光学積層体片を作製する際に、軸ずれを補正しながら打ち抜く必要がない。その結果、本発明の実施形態においては、例えば格子状の打ち抜き刃を用いることにより、1つの積層フィルム中間体から複数の光学積層体片を一括して打ち抜くことができる。このように、複数の位相差層付偏光板片を一括して打ち抜くことにより、優れた製造効率を実現することができる。
さらに、上記のとおり、打抜工程前に複数の仮想エリアにおける異物占有率が基準値を超える積層フィルム中間体が排除されている。そのため、積層フィルム中間体を、複数の仮想エリアの区画線に沿って打ち抜くことで、異物が混入した光学積層体片が製造される割合を十分に低減できる。すなわち、吸収軸方向および遅相軸方向が精密に制御され、かつ、それぞれの製品ごとのそれらのばらつきが非常に小さく(実質的にばらつきがなく)、さらに異物の混入が抑制された光学積層体片を、効率的に製造することができる。
【0047】
以上のようにして、光学積層体片(最終製品としての光学積層体)が得られる。1つの実施形態おける光学積層体片5を図7に示す。光学積層体片は、例えば長辺10mm~70mmおよび短辺10mm~70mm程度、また例えば長辺20mm~40mmおよび短辺10mm~30mm程度、より詳細には長辺30mmおよび短辺20mm程度の矩形であり得る。さらに、光学積層体片は、矩形状に限定されず、異形状であってもよい。異形状の光学積層体片は、外周縁から内側に向かって凹む切欠部(凹部)を有していてもよい。このような光学積層体片は、例えばVRゴーグル用の円偏光板として用いられ得る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の実施形態による製造方法は、光学積層体の製造に好適に用いられ、特に、非常に小型(例えば、VRゴーグル用)の光学積層体の製造に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0049】
1 第1積層フィルム
2 第2積層フィルム
3 積層フィルム中間体
5 光学積層体片(最終製品としての光学積層体)
11 偏光板
21 第1位相差層
22 第2位相差層
23 第1表面保護フィルム
31 第2表面保護フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7