(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005784
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】回転子およびその回転子を備えたモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106153
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 活徳
(72)【発明者】
【氏名】松下 真琴
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄司
(72)【発明者】
【氏名】森林 諒伍
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA24
5H601GA25
(57)【要約】
【課題】リラクタンストルクを十分に活用することができ、これにより永久磁石の量を少なく抑えながらモータトルクの向上が図れる回転子およびその回転子を備えたモータを提供する。
【解決手段】回転子は、回転中心を有する回転子鉄心と、この回転子鉄心の外周面の内側にその外周面に沿って設けられた複数のスロットと、この各スロットに収容された複数の導電体と、前記回転子鉄心の前記回転中心の周りに設けられた複数の磁石収容領域と、この各磁石収容領域に収容され、前記回転子鉄心の円周方向に複数の磁極を形成する複数の永久磁石と、前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記各スロットのうち所定のスロットと前記各磁石収容領域との間に位置する複数の磁気空隙と、を備える。前記各磁極における前記磁石収容領域および前記磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロットおよび前記永久磁石と共に、隣接する磁極との境界に沿って磁路を規定するフラックスバリアバンドを形成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線を有する固定子の内側に回転自在に設けられる回転子であって、
回転中心を有する回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の外周面の内側にその外周面に沿って設けられた複数のスロットと、
前記各スロットに収容された複数の導電体と、
前記回転子鉄心の前記回転中心の周りに設けられた複数の磁石収容領域と、
前記各磁石収容領域に収容され、前記回転子鉄心の円周方向に複数の磁極を形成する複数の永久磁石と、
前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記各スロットのうち所定のスロットと前記各磁石収容領域との間に位置する複数の磁気空隙と、
を備え、
前記各磁極における前記磁石収容領域および前記磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロットおよび前記永久磁石と共に、隣接する磁極との境界に沿って磁路を規定するフラックスバリアバンドを形成している、
回転子。
【請求項2】
前記回転子鉄心の前記回転中心に設けられる回転軸が磁性体である、
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記回転子鉄心は、前記回転中心の部分に前記回転軸が通る内孔を有し、
前記各磁石収容領域は、前記内孔の内周面との間に所定の大きさの間隙を有する、
請求項2に記載の回転子。
【請求項4】
前記回転子鉄心は、前記外周面と前記各スロットとの間に位置するトップブリッジ部を備え、
前記各磁石収容領域は、前記各磁極において、前記回転中心からそれぞれの磁極の前記円周方向における中心を通って径方向に延びる磁極中心軸と直交する状態に設けられ、その磁極中心軸を境とする一方の側に位置する一端部および同磁極中心軸を境とする他方の側に位置する他端部を含み、
前記各磁気空隙は、前記各磁極において、前記一方の側に存する前記所定のスロットと前記磁石収容領域の前記一端部との間に位置する第1磁気空隙、前記他方の側に存する前記所定のスロットと前記磁石収容領域の前記他端部との間に位置する第2磁気空隙を含み、
前記各磁極における前記磁石収容領域,前記第1磁気空隙,前記第2磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロット,それぞれの磁極における前記所定のスロットと前記外周面との間に存する前記トップブリッジ部,それぞれの磁極における前記永久磁石と共に、前記フラックスバリアバンドを形成している、
請求項1に記載の回転子。
【請求項5】
前記回転子鉄心は、前記各磁極において、前記一方の側に存する前記所定のスロットと前記第1磁気空隙との間に位置する第1サイドブリッジ部、前記他方の側に存する前記所定のスロットと前記第2磁気空隙との間に位置する第2サイドブリッジ部を備え、
前記各磁極における前記第1磁石収容領域,前記第2磁石収容領域,前記第1磁気空隙,前記第2磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロット,それぞれの磁極における前記所定のスロットと前記外周面との間に存する前記トップブリッジ部、それぞれの磁極における前記第1サイドブリッジ部,それぞれの磁極における前記第2サイドブリッジ部,それぞれの磁極における前記永久磁石と共に、前記フラックスバリアバンドを形成している、
請求項4に記載の回転子。
【請求項6】
前記回転子鉄心は、前記外周面と前記各スロットとの間に位置するトップブリッジ部を備え、
前記各磁石収容領域は、前記各磁極において、前記回転中心からそれぞれの磁極の前記円周方向における中心を通って径方向に延びる磁極中心軸を境とする一方の側と他方の側に分かれて位置する第1磁石収容領域および第2磁石収容領域を含み、
前記各磁気空隙は、前記各磁極において、前記一方の側に存する前記所定のスロットと前記第1磁石収容領域との間に位置する第1磁気空隙、前記他方の側に存する前記所定のスロットと前記第2磁石収容領域との間に位置する第2磁気空隙、前記第1磁気収容領域と前記第2磁気収容領域との間に位置する第3磁気空隙を含み、
前記各磁極における前記磁石収容領域,前記第1磁気空隙,前記第2磁気空隙,前記第3磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロット,それぞれの磁極における前記所定のスロットと前記外周面との間に存する前記トップブリッジ部,それぞれの磁極における前記永久磁石と共に、前記フラックスバリアバンドを形成している、
請求項1に記載の回転子。
【請求項7】
前記各磁石収容領域は、前記各磁極において、前記回転中心からそれぞれの磁極の前記円周方向における中心を通って径方向に延びる磁極中心軸を境とする一方の側と他方の側に分かれて位置する第1磁石収容領域および第2磁石収容領域を含み、
前記各磁気空隙は、前記各磁極において、前記一方の側に存する前記所定のスロットと前記第1磁石収容領域との間に位置する第1磁気空隙、前記他方の側に存する前記所定のスロットと前記第2磁石収容領域との間に位置する第2磁気空隙、前記第1磁石収容領域と前記磁極中心軸との間に位置する第3磁気空隙、前記第2磁石収容領域と前記磁極中心軸との間に位置する第4磁気空隙を含み、
前記回転子鉄心は、前記各磁極において、前記外周面と前記各スロットとの間に位置するトップブリッジ部、前記一方の側に存する前記所定のスロットと前記第1磁気空隙との間に位置する第1サイドブリッジ部、前記他方の側に存する前記所定のスロットと前記第2磁気空隙との間に位置する第2サイドブリッジ部、前記第3磁気空隙と前記第4磁気空隙との間に位置するセンタブリッジ部を備え、
前記各磁極における前記第1磁石収容領域,前記第2磁石収容領域,前記第1磁気空隙,前記第2磁気空隙,前記第3磁気空隙,前記第4磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロット,それぞれの磁極における前記所定のスロットと前記外周面との間に存する前記トップブリッジ部,それぞれの磁極における前記第1サイドブリッジ部,それぞれの磁極における前記第2サイドブリッジ部,それぞれの磁極における前記センタブリッジ部,それぞれの磁極における前記永久磁石と共に、前記フラックスバリアバンドを形成している、
請求項1に記載の回転子。
【請求項8】
前記各磁極において、前記回転中心から前記一方の側に存する前記所定のスロットを通って前記回転子鉄心の径方向に延びる第1径方向線と、前記回転中心から前記他方の側に存する前記所定のスロットを通って前記回転子鉄心の径方向に延びる第2径方向線と、の間の電気的な角度が120°~146.5°である、
請求項4,6,7のいずれか一項に記載の回転子。
【請求項9】
前記所定のスロットは、前記外周面に対向する側の外周側端部が円弧形状または三角形状であり、
前記第1径方向線は、前記回転中心から、前記一方の側に存する前記所定のスロットの外周側端部のうち前記外周面に最も近い部位を通って前記回転子鉄心の径方向に延び、
前記第2径方向線は、前記回転中心から、前記他方の側に存する前記所定のスロットの外周側端部のうち前記外周面に最も近い部位を通って前記回転子鉄心の径方向に延びる、
請求項8に記載の回転子。
【請求項10】
前記所定のスロットは、前記外周面に対向する側の外周側端部が、前記外周面に対峙する直線状の端辺を含み、その端辺の両端が前記外周面に近接する矩形状であり、
前記第1径方向線は、前記回転中心Cから、前記一方の側に存する前記所定のスロットの外周側端部のうち前記端辺の中央位置を通って前記回転子鉄心の径方向に延び、
前記第2径方向線は、前記回転中心Cから、前記他方の側に存する前記所定のスロットの外周側端部のうち前記端辺の両端間の中央位置を通って前記回転子鉄心の径方向に延びる、
請求項8に記載の回転子。
【請求項11】
前記所定のスロットは、前記外周面に対向する側の外周側端部が、前記外周面と平行に対峙する円弧状の端辺を含み、その端辺の全領域が前記外周面に一定距離で近接する円弧形状であり、
前記第1径方向線は、前記回転中心Cから、前記一方の側に存する前記所定のスロットの外周側端部のうち前記端辺の中央位置を通って前記回転子鉄心の径方向に延び、
前記第2径方向線は、前記回転中心Cから、前記他方の側に存する前記所定のスロットの外周側端部のうち前記端辺の中央位置を通って前記回転子鉄心の径方向に延びる、
請求項8に記載の回転子。
【請求項12】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の回転子と、
前記固定子と、
を備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自己始動形永久磁石モータの回転子およびその回転子を備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
自己始動形永久磁石モータは、古くから検討されており、例えば特許第4090630号公報(特許文献1)および特開平11-210621号公報(特許文献2)などが関連技術として挙げられる。これらは、既存の誘導モータをベースとし、回転子の回転軸を囲むように複数の永久磁石を埋め込んだだけのもので、埋め込んだ複数の永久磁石とその周りの空孔が回転子の回転軸を横断しようとする磁束を妨げるフラックスバリアとして機能するため、リラクタンストルクに最も寄与するq軸磁束をそのフラックスバリアが妨げる構造となっている。複数の永久磁石のそれぞれに隣接する空孔およびその各空孔の相互間に位置するブリッジ部(鉄心部分)は回転子の強度を保つためのものでしかなく,十分な磁束を流すことができない。このため、リラクタンストルクを十分に活用できない。所望のモータトルクを得るためには永久磁石の量を増やさねばならず、その分、永久磁石の材料費が増加してしまうという問題があった。
【0003】
一方、例えば特開2005-6416号公報(特許文献3)に示されるように、同期リラクタンスモータのフラックスバリアを二次導体として用いることで、自己始動形同期リラクタンスモータを構成することもできる。これは、リラクタンストルクによって出力を得るので、永久磁石は不要である。しかしながら、単位体積当たりで得られるリラクタンストルクは磁石トルクより小さく、所望のモータトルクを得ようとすると、モータが大形化してしまうという問題があった。
【0004】
このような背景の中で、例えば特開2007-181305号公報(特許文献4)に示される自己始動形永久磁石同期モータが知られている。これは、回転子に埋設した永久磁石の周方向ピッチを磁極ピッチに対し所定の割り合いに設定することで、モータトルクを向上させてモータ電流を減少させ、これにより効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4090630号公報
【特許文献2】特開平11-210621号公報
【特許文献3】特開2005-6416号公報
【特許文献4】特開2007-181305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献4に記載のものには各永久磁石の相互間に磁石磁束の短絡を防ぐための空孔があり、その空孔は特許文献1,2に記載のものと同じくリラクタンストルクに寄与するq軸磁束を妨げる。このため、リラクタンストルクを十分に活用できず、抜本的なトルク向上を実現するためには永久磁石の量を増やさねばならない。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、リラクタンストルクを十分に活用することができ、これにより永久磁石の量を少なく抑えながらモータトルクの向上が図れる回転子およびその回転子を備えたモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の回転子は、電機子巻線を有する固定子の内側に回転自在に設けられるものであって、回転中心を有する回転子鉄心と、この回転子鉄心の外周面の内側にその外周面に沿って設けられた複数のスロットと、この各スロットに収容された複数の導電体と、前記回転子鉄心の前記回転中心の周りに設けられた複数の磁石収容領域と、この各磁石収容領域に収容され、前記回転子鉄心の円周方向に複数の磁極を形成する複数の永久磁石と、前記回転子鉄心の前記各磁極において、前記各スロットのうち所定のスロットと前記各磁石収容領域との間に位置する複数の磁気空隙と、を備える。前記各磁極における前記磁石収容領域および前記磁気空隙は、それぞれの磁極における前記所定のスロットおよび前記永久磁石と共に、隣接する磁極との境界に沿って磁路を規定するフラックスバリアバンドを形成している。
また、本発明の実施形態のモータは、前記回転子および前記固定子を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るモータの横断面を示す図。
【
図2】
図2は、各実施形態に係る一般的な自己始動形モータの回転子の構成を示す図。
【
図3】
図3は、各実施形態に係る一般的な自己始動形同期リラクタンスモータの回転子の構成を示す図。
【
図5】
図5は、
図1における磁石収容領域およびフラックスバリアバンドを示す図。
【
図11】
図11は、
図1においてフラックスバリアバンドがないと仮定した場合の磁石磁束の短絡を示す図。
【
図12】
図12は、
図1におけるフラックスバリアバンドの開き角とギャップ磁束密度分布との関係を示す図。
【
図13】
図13は、
図1におけるフラックスバリアバンドの開き角に対する永久磁石磁束の基本波成分・3次高調波成分・全高調波成分のそれぞれ振幅の変化を示す図。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図17】
図17は、第5実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図18】
図18は、第6実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図19】
図19は、第7実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図20】
図20は、第8実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図21】
図21は、第9実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【
図22】
図22は、第10実施形態に係る回転子の横断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、種々の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0011】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る自己始動形永久磁石モータの横断面を
図1に示す。
自己始動形永久磁石モータ1は、図示しない固定枠に支持された環状または円筒状の固定子10、およびこの回転子10の内側に回転自在に設けられた回転子20を備える。以下、自己始動形永久磁石モータ1のことをモータ1と略称する。
【0012】
固定子10は、円筒状の固定子鉄心11、この固定子鉄心11の内周部に装着された複数の電機子巻線12を備える。固定子鉄心11は、磁性材たとえばケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を多数枚、同芯状に積層して構成されている。固定子鉄心11の内周部には、各電機子巻線12を装着するための複数(例えば48個)のスロット13が形成されている。各スロット13は、回転子鉄心11の円周方向に等間隔を置いて並んでいる。各スロット13は、固定子鉄心11の内周面に開口し、この内周面から放射方向に延出している。また、各スロット13は、固定子鉄心11の軸方向の全長に亘って延在している。各スロット13の形成に伴い、固定子鉄心11の内周部に、回転子20に面する複数(例えば48個)の固定子ティース14が形成されている。各電機子巻線12は、各スロット13に嵌め込まれ、かつ各固定子ティース14に巻き付けられている。各電機子巻線12に電流が流れることにより、固定子10から回転子20へ向け回転磁界が発生する。
【0013】
回転子20は、固定子鉄心21と同軸の回転中心Cを中心にして回転する円筒状の回転子鉄心21、この回転子鉄心21の外周面21aのすぐ内側領域にその外周面21aに沿って所定間隔(例えば一定間隔や不等間隔)で連続的に形成された複数のスロット22、これらスロット22に収容(嵌合)された複数の導電体23、回転子鉄心21の外周面21aと各スロット22との間の細い幅の鉄心部分である複数のトップブリッジ部D、回転子鉄心21の回転中心Cの周りに設けられた複数たとえば2つの磁石収容領域24、これら磁石収容領域24に収容(埋設)された複数たとえば2つの永久磁石25を含む。各トップブリッジ部Dは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されている。
【0014】
各スロット22の全てに導電体23を収容する必要はなく、いくつかのスロット22に導電体23を収容し、残りのスロット22には空気や樹脂などの非磁性体を含める構成としてもよい。要は、全てのスロット22が非磁性体を含む構成であればよい。
【0015】
回転子鉄心21は、磁性材たとえばケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を多数枚、同芯状に積層した積層体として構成されている。回転子鉄心21の外周面21aは、固定子鉄心11の内周面に僅かな隙間(エアギャップ)を空けて対向する。
【0016】
各スロット22は、外周面21aに対向する外周側端部22a、回転中心Cに対向する内周側端部22b、その外周側端部22aと内周側端部22bとの間に位置して互いに対向する側辺部22c,22dを含み、回転子鉄心21の軸方向と直交する方向の横断面が外周側端部22aから内周側端部22bにかけて徐々に細くなる形状を有し、この形状が回転子鉄心21の軸方向の全長に亘って延在している。回転中心Cから各スロット22の内周側端部22bを通って放射状に延びる径方向線が、各スロット22の外周側端部22aを通る。各スロット22の横断面の形状および大きさは、均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0017】
各スロット22の外周側端部22aの形状は、
図7に示すように外周面21a側に円弧状に膨らむ円弧形状でもよいし、
図8に示すように2直線により規定される三角形の頂点部分が外周面21a側に突出する三角形状でもよい。
【0018】
各スロット22の外周側端部22aは、
図9に示すように外周面21aに対峙する直線状の端辺を含み、その直線状の端辺の両端(一端Aおよび他端B)がそれぞれ外周面21aに近接する矩形状でもよい。
【0019】
各スロット22の外周側端部22aは、
図10に示すように外周面21aと平行に対峙する円弧状の端辺を含み、その円弧状の端辺の一端Aから他端Bまでの全領域が外周面21aに一定距離で近接する円弧形状でもよい。
【0020】
各導電体23は、非磁性体である例えばアルミニウムまたは銅を回転子鉄心21の軸方向の長さとほぼ同じ長さの棒状に成形したもので、回転子鉄心21の軸方向と直交する方向の横断面が各スロット22と同じ細長い楕円形状を有する。固定子10の各電機子巻線12から発せられる回転磁界により、これら導電体23に誘導電流が流れる。誘導電流が流れると、回転磁界に付いていく方向(フレミングの左手の法則により定まる方向)に動く力が各導電体23に加わり、回転子鉄心21が回り始める(自己始動する)。回り始めた回転子鉄心21の回転が回転磁界に追いついたところで、誘導電流が零となり、各導電体23に加わる動く力がなくなる。各電機子巻線12を一次巻線、各導電体23を二次巻線ともいう。
【0021】
非磁性体である例えばアルミニウムまたは銅を円環状に成形した短絡リング(図示しない)を各導電体23の一端および他端にそれぞれ接続し、これら短絡リングによって各導電体23を電気的に導通させるいわゆる“かご形導体”の構成となっている。この“かご形導体”の採用により、各導電体23に誘導電流を流すことができる。なお,この“かご形導体”は,導電体23と短絡リングを個別の成型し,それらをはんだ付けやロウ付けなどによって電気的・機械的に接続することによって製作でも良いし、ダイキャストによって一体成型して製作しても良い。
【0022】
各磁石収容領域24は、回転中心Cを間に挟んで互いに平行に配置されている。これら磁石収容領域24は、横断面が細長い矩形形状を有し、この矩形形状が回転子鉄心21の軸方向の全長に亘って延在している。永久磁石25は,磁石収容領域24の長手方向と直交する方向に磁化されている。すなわち、磁化ベクトルの始点の方向にS極、終点の方向にN極が存在するように配置されている。永久磁石25により、磁石収容領域24の長手方向と直交する方向に磁化が生じる。この磁化の向きに平行でかつ回転中心Cを通って径方向に延びる磁極中心軸をd軸と称し、そのd軸から回転方向(本実施形態では反時計回り)に電気的な角度(電気角という)が90°離れた位置で回転中心Cを通って径方向に延びる軸をq軸と称する。電気角は、幾何学的な角度(機械角という)を、後述の磁極の数(磁極数)で除算しその除算結果に数値“2”を乗算した値である。後述の2つの磁極J1,J2を有するいわゆる2極モータ(例えば第1実施形態を示す
図1が該当する)の場合、電気角=機械角である。
【0023】
固定子10によって回転磁界が形成された場合、固定子10から回転子20に向かって流れかつ回転中心Cを挟んで反対側の固定子10に戻る磁束が発生する。回転磁界がd軸方向を向いている場合、磁束は、回転子20の内部で後述のフラックスバリアによって流れが妨げられるため、小さくなる。一方で、回転磁界がq軸方向を向いている場合、磁束は、鉄心部分が継ぎ目なく延伸しているため、大きくなる。このため,磁束はq軸に最も多く流れる。
【0024】
回転子鉄心21は、q軸より図示上方の領域(1/2周の周角度領域)の磁極(第1磁極)J1と、q軸より図示下方の領域(1/2周の周角度領域)の磁極(第2磁極)J2とに、区分される。q軸が磁極J1,J2の境界となる。磁極中心軸であるd軸は、回転中心Cからこれら磁極J1,J2の円周方向における中心を通って径方向に延びている。
【0025】
磁極J1に存する磁石収容領域24は、q軸から図示上方に距離L1離れた位置でq軸と平行かつd軸と直交する状態に設けられ、
図5に示すように、そのd軸を境とする一方の側(図示左方側)に位置する一端部24aおよび他方の側(図示右方側)に位置する他端部24b、その一端部24aおよび他端部24bの相互間に位置して相対向する外周側長辺部24cおよび内周側長辺部24dを含む。
【0026】
磁極J1において、磁石収容領域24の一端部24aは、q軸からの距離がほぼ同じところに存する所定の1つのスロット22(q軸より図示上方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向している。磁石収容領域24の他端部24bは、q軸からの距離がほぼ同じところに存する所定の1つのスロット22(q軸より図示上方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向している。
【0027】
磁極J1において、磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気的な空隙(磁気空隙という)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接し、その一端部24aと対応する位置からその一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bまで相対向しながら延びる外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dを含み、かつその外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dの終端の相互間に位置する外周側端部31aを含む。この外周側端部31aが上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接(隣接ともいう)している。
【0028】
磁極J1において、磁石収容領域24の他端部24bと、その他端部24bが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接し、その他端部24bと対応する位置から同他端部24bが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bまで相対向しながら延びる外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dを含み、かつその外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dの終端の相互間に位置する外周側端部31aを含む。この外周側端部31aが上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接(隣接ともいう)している。
【0029】
この磁極J1において、磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bに接する磁気空隙31,31は、非磁性体である例えば空気を含み、磁石収容領域24に収容される永久磁石25の両端部(後述の一端部25aおよび他端部25b)における磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。非磁性体である例えば樹脂を磁気空隙31,31に充填する構成としてもよい。
【0030】
一方、磁極J2の磁石収容領域24は、q軸から図示下方に距離L1離れた位置でq軸と平行かつd軸と直交する状態に設けられ、
図5に示すように、そのd軸を境とする一方の側(図示右方側)に位置する一端部24aおよび他方の側(図示左方側)に位置する他端部24b、その一端部24aおよび他端部24bの相互間に位置して相対向する外周側長辺部24cおよび内周側長辺部24dを含む。
【0031】
磁極J2において、磁石収容領域24の一端部24aは、q軸からの距離がほぼ同じところに存する所定の1つのスロット22(q軸より図示下方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向している。磁石収容領域24の他端部24bは、q軸からの距離がほぼ同じところに存する所定の1つのスロット22(q軸より図示下方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向している。
【0032】
磁極J2において、磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接し、その一端部24aと対応する位置からその一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bまで相対向しながら延びる外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dを含み、かつその外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dの終端の相互間に位置する外周側端部31aを含む。この外周側端部31aが上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接(隣接ともいう)している。
【0033】
磁極J2において、磁石収容領域24の他端部24bと、その他端部24bが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接し、その他端部24bと対応する位置から同他端部24bが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bまで相対向しながら延びる外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dを含み、かつその外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dの終端の相互間に位置する外周側端部31aを含む。この外周側端部31aが上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接(隣接ともいう)している。
【0034】
この磁極J2において、磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bに接する磁気空隙31,31は、非磁性体である例えば空気を含み、磁石収容領域24に収容される永久磁石25の両端部(後述の一端部25aおよび他端部25b)における磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。非磁性体である例えば樹脂を磁気空隙31,31に充填する構成としてもよい。
【0035】
各永久磁石25は、回転子鉄心21の軸方向長さとほぼ等しい軸方向長さを有するとともに、横断面が細長い矩形状に形成され、各磁石収容領域24に収容(埋設)される。各永久磁石25は、各磁石収容領域24に収容された状態で、各磁石収容領域24の一端部24aに接する一端部25a、各磁石収容領域24の他端部24bに接する他端部25b、この一端部25aおよび他端部25bの相互間に位置して各磁石収容領域24の外周側長辺部24cおよび内周側長辺部24dにそれぞれ当接する互いに平行な側辺部25c,25dを有する。各永久磁石25は、軸方向に複数に分割された永久磁石を組み合わせて構成したものでもよい。この場合、分割された複数の永久磁石の合計の長さが回転子鉄心21の軸方向長さとほぼ等しくなるように形成される。
【0036】
上記磁極J1において、磁石収容領域24および磁気空隙31,31は、その磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、および磁石収容領域24に収まる永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って延びる細長形状(帯状)のフラックスバリアバンドF1を形成している。このフラックスバリアバンドF1は、隣接する磁極J2との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF1とq軸との間の磁極J1側の鉄心部分に規定する。
【0037】
このフラックスバリアバンドF1の形成要素となるトップブリッジ部D,Dは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF1の一部として機能する。
【0038】
磁極J1における磁路Hのd軸方向の幅はL1である。この磁路Hの一端側には非磁性体を含む1つのスロット22が存し、磁路Hの他端側にも非磁性体を含む1つのスロット22が存するが、これらのスロット22はq軸に沿う細長い形状を有していて磁路Hにおける磁束の流れを大きく遮るものではない。したがって、磁路Hの磁気抵抗は非常に小さい。
【0039】
上記磁極J2において、磁石収容領域24および磁気空隙31,31は、その磁気空隙31,31が接する上記所定のスロット22,22、これらスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、および磁石収容領域24に収まる永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って延びる細長形状(帯状)のフラックスバリアバンドF2を形成している。このフラックスバリアバンドF2は、隣接する磁極J1との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF2とq軸との間の磁極J2側の鉄心部分に規定する。
【0040】
このフラックスバリアバンドF2の形成要素となるトップブリッジ部D,Dは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF2の一部として機能する。
【0041】
磁極J2における磁路Hのd軸方向の幅は、磁極J1における磁路Hのd軸方向の幅と同じL1である。この磁路Hの一端側には非磁性体を含む1つのスロット22が存し、磁路Hの他端側にも非磁性体を含む1つのスロット22が存するが、これらのスロット22はq軸に沿う細長い形状を有していて磁路Hにおける磁束の流れを大きく遮るものではない。したがって、磁路Hの磁気抵抗は非常に小さい。
【0042】
q軸には、固定子10によって形成される回転磁界の磁束が最も多く流れる。この最も多く流れる磁束いわゆるq軸磁束は、リラクタンストルクに最も寄与するもので、フラックスバリアバンドF1,F2の相互間の磁気抵抗が非常に小さい各磁路Hを効率よく流れる。
【0043】
したがって、q軸磁束によるリラクタンストルクを回転子20において最大限に活用することができる。リラクタンストルクを最大限に活用できるので、各永久磁石25の磁石トルクつまり各永久磁石25の量を少なく抑えながら、モータトルクの向上が図れる。モータトルクが向上するので、モータ1の小形化および高効率を実現できる。各永久磁石25の量を増やさないですむので、各永久磁石25の材料費を抑制できる。複数の導電体23を有することによる回転子20の自己始動ももちろん可能である。
要するに、自己始動可能で小形かつ高効率のモータ1を低コストで実現することができる。
以上が回転子20の基本的な構成である。
【0044】
この基本的な構成に加え、フラックスバリアバンドF1が存する磁極J1では、回転中心Cから磁石収容領域24の一端部24aが当接しているスロット22を通って径方向に延びる径方向線(第1径方向線)X1と、回転中心Cから磁石収容領域24の他端部24bが当接しているスロット22を通って径方向に延びる径方向線(第2径方向線)X1´と、の間の電気的な角度(電気角)αが、例えば120°~146.5°の範囲に設定される。この電気角αをフラックスバリアバンドF1の開き角という。
【0045】
フラックスバリアバンドF2が存する磁極J2においても、回転中心Cから磁石収容領域24の一端部24aが当接しているスロット22を通って径方向に延びる径方向線X2と、回転中心Cから磁石収容領域24の他端部24bが当接しているスロット22を通って径方向に延びる径方向線X2´と、の間の電気的な角度(電気角)αが、例えば120°~146.5°の範囲に設定される。この電気角αをフラックスバリアバンドF2の開き角という。
【0046】
電気角とは、1つの磁極の周角度領域を180°として見る電気的な角度のことである。電気角180°は、2つの磁極を有するいわゆる2極モータでは1磁極分の機械角(物理的な角度)180°に一致し、4つの磁極を有するいわゆる4極モータでは1磁極分の機械角90°に一致する。
【0047】
2極モータである
図1のモータ1の回転子20では、フラックスバリアバンドF1,F2のそれぞれ開き角αとして、機械角(=145°)と同じ145°が設定されている。4極モータである後述の
図20および
図21に示すモータ1の回転子20では、4つのフラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4のそれぞれ開き角αとして、機械角(=71°)の2倍の142°が設定される。6極モータの回転子の場合、6つのフラックスバリアのそれぞれ開き角αは機械角の3倍の値となる。
【0048】
<基本的概念の説明>
図2に示す回転子20は、複数のスロット22を回転子鉄心21の外周面21aの内側にその外周面21aに沿って所定間隔で形成し、これらスロット22に複数の導電体(二次巻線)23を埋設した構成である。この回転子20は、導電体23を有することによる自己始動が可能であるが、磁石トルクやリラクタンストルクがない、いわゆる通常の誘導モータにおける回転子であり、常に滑りが発生する状態で運転される。導電体23においては誘導電流によるジュール損失が発生する。このため、効率が低い。
【0049】
図3に示す回転子20は、細長形状で幅寸法がほぼ同じ複数のフラックスバリア(非磁性体)41をq軸と平行に配置した構成である。この回転子20においては、各フラックスバリア41の相互間に磁路が設けられており、q軸方向(図示左方向)に磁束が流れ易いのでリラクタンストルクが大きく、効率は高くなるが、導電体23を有しないので自己始動ができない。
図4に示す回転子20は、細長形状で幅寸法が互いに異なる複数のフラックスバリア41をq軸と平行に配置した構成である。この回転子20においても、q軸磁束が流れ易いので、
図3の回転子と同様に効率は高くなるが、導電体23を有しないので自己始動ができない。
【0050】
図5に示す回転子20は、自己始動を可能とするために、
図3や
図4の回転子20に導電体23を付加した構成であり、複数の導電体23を回転子鉄心21の外周面21aの内側にその外周面21aに沿って所定間隔で埋設し、かつ2つの磁石収容領域24をq軸を間に挟んで配置している。この回転子20は、導電体23を有することによる自己始動が可能であることに加え、スロット22の細長い形状とそれに接する磁気空隙31の細長い形状とが滑らかな角度で連なっているので、互いに隣り合うスロット22の相互間から磁気空隙31の周辺にかけての鉄心部分に磁束の流れを妨げるものがない。しかも、q軸を挟んで上下に配置された2つの磁石収容領域24の相互間(鉄心部分)には、q軸に沿う磁路Hが存している。つまり、q軸磁束の流れを妨げるものが極力排除されていて、q軸磁束が流れ易いので、リラクタンストルクを極めて大きくすることが可能である。
【0051】
図6に示す回転子20は、自己始動を可能とするために、
図3や
図4の回転子20に導電体23を付加した構成であり、磁極J1の磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bがそれぞれq軸より図示上方に3つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接し、かつ磁極J2の磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bがそれぞれq軸より図示下方に3つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。この回転子20は、導電体23を有することによる自己始動が可能であることに加え、互いに隣り合うスロット22の相互間および2つの磁石収容領域24の相互間にq軸磁束が流れ易いので、リラクタンストルクを極めて大きくすることが可能である。
【0052】
ところで、
図3の回転子20および
図4の回転子20を持つ同期リラクタンスモータの性能(リラクタンストルクの大きさや効率)は、回転子20の突極性(d軸磁束の通り難さとq軸磁束の通り易さとの差または比)によって決まる。この突極性は、複数のフラックスバリア41の配置に依らず、複数のフラックスバリア41の合計面積で決まることが知られている(例えば東芝レビュー・vol.70・no.5 2015など)。
図3の回転子20と
図4の回転子20を比べると、複数のフラックスバリア41の配置および形状は異なるが、複数のフラックスバリア41の合計面積が同じであれば、同期リラクタンスモータとしての性能(リラクタンストルクの大きさや効率)は等しい。
【0053】
上記と同様の議論により、
図5の回転子20と
図6の回転子20を比較すると、各磁石収容領域24を主体に形成されるフラックスバリアバンドF1,F2の開き角αおよび相互間隔は異なるが、フラックスバリアバンドF1,F2の合計面積はほぼ等しいので、同期リラクタンスモータとしての性能(トルクや効率)は同じとなる。換言すれば、同期リラクタンスモータとしてだけを考えて回転子20を設計する場合は、フラックスバリアバンドF1,F2の開き角αには自由度があるといえる。
【0054】
ここで、フラックスバリアバンドF1,F2の開き角αを規定する径方向線X1,X1´について説明する。
磁気空隙31の外周側端部31aに隣接するスロット22の外周側端部22aが
図7に示すような円弧形状である場合、回転中心Cから、外周側端部22aのうち外周面21aに最も近い部位(トップブリッジ部Dの幅が最小となる部位)を通って回転子鉄心21の径方向に延びる線を、径方向線X1´として定める。
図7は径方向線X1´のみ示しているが、径方向線X1についても同様に定める。
【0055】
磁気空隙31の外周側端部31aに隣接するスロット22の外周側端部22aが
図8に示すような三角形状である場合、回転中心Cから、外周側端部22aのうち外周面21aに最も近い部位(トップブリッジ部Dの幅が最小となる部位)を通って回転子鉄心21の径方向に延びる線を、径方向線X1´として定める。
図8は径方向線X1´のみ示しているが、径方向線X1についても同様に定める。
【0056】
磁気空隙31の外周側端部31aに隣接するスロット22の外周側端部22aが、
図9に示すように外周面21aに対峙する直線状の端辺を含み、その直線状の端辺の両端(一端Aおよび他端B)が外周面21aに近接する矩形状である場合、回転中心Cから、直線状の端辺の中央位置(一端Aと他端Bを結ぶ線分の中央位置)Eを通って回転子鉄心21の径方向に延びる線を、径方向線X1´として定める。
図9は径方向線X1´のみ示しているが、径方向線X1についても同様に定める。
【0057】
磁気空隙31の外周側端部31aに隣接するスロット22の外周側端部22aが、
図10に示すように外周面21aと平行に対峙する円弧状の端辺を含み、その円弧状の端辺の一端(始端ともいう)Aから他端(終端ともいう)Bまでの全領域が外周面21aに一定距離で近接する円弧形状である場合、回転中心Cから、円弧状の端辺の中央位置(一端Aと他端Bを結ぶ線分の中央位置)Eを通って回転子鉄心21の径方向に延びる線を、径方向線X1´として定める。
図10は径方向線X1´のみ示しているが、径方向線X1についても同様に定める。
【0058】
フラックスバリアバンドF2の開き角αを規定する径方向線X2,X2´についても、径方向線X1,X1´と同じく、スロット22の外周側端部22aの形状に合わせて定める。
【0059】
回転子形状に関する説明に戻る。
図11に示す回転子20は、仮にフラックスバリアバンドF1,F2がない状態で、複数の導電体23を回転子鉄心21の外周面21aの内側にその外周面21aに沿って所定間隔で埋設し、かつq軸の両側に2つの永久磁石25を埋設した構成である。この回転子20は、複数の導電体23を有することによる自己始動が可能でしかもq軸磁束が流れ易いが、各永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bの磁石磁束が太い破線矢印で示すように最短経路で短絡し、固定子鉄心11まで到達しない漏れ磁束が多くなってしまう。より多くの磁石磁束を固定子鉄心11まで到達させようとすると、各永久磁石25の量を増やさねばならない。
【0060】
本実施形態は、
図5の回転子20または
図6の回転子20において、各磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25を収めることにより、リラクタンストルクを最大限に活用しながら(q軸磁束が流れ易くて突極性が大きい)、磁石トルクも活用すること(フラックスバリアにより磁石磁束の短絡が抑制されるため磁石磁束が大きい)を前提としている。
【0061】
図5の回転子20の各磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25を収めた場合と、
図6の回転子20の各磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25を収めた場合のリラクタンストルクは、先の議論(
図3と
図4のようにフラックスバリアバンドF1,F2の合計面積が同じならリラクタンストルクも同じ)に基づき、リラクタンストルク(∝突極性)は同じとなる。一方で、磁石トルク(∝磁石磁束)は開き角αによって異なる。
【0062】
したがって、各永久磁石25の量は変えないまま、磁石トルクに比例する磁石磁束が最大となるように(各永久磁石25の利用率が高くなるように)、かつ鉄損やトルクリップルの原因となる空間的な高調波磁束が小さくなるように、フラックスバリアバンドF1,F2の開き角αを設定することが望ましい。
【0063】
実際には、フラックスバリアバンドF1,F2の開き角αを120°~146.5°の範囲に設定することで、上記要求を満たすことができる。この理由について説明する。
【0064】
フラックスバリアバンドF1,F2の開き角αとギャップ磁束密度分布B(回転子鉄心21の外周面21aと固定子鉄心11の内周面との間の空隙いわゆるエアギャップにおける磁束密度の分布)との関係を
図11に示す。磁石より発生する磁束は一定であるため、開き角αが大きいほど、ギャップ磁束密度分布B(=1/α)は小さくなる。すなわち、面積(=磁束)が一定となるようにギャップ磁束密度が変化する。これをフーリエ級数展開すると、ギャップ磁束密度分布Bのn次高調波成分の振幅Anは下式のようになる。
【0065】
【数1】
ギャップ磁束密度分布Bの基本波成分を除く全高調波成分(1<n)の二乗和Ahを計算すると、下式のようになる。
【0066】
【数2】
ここでは、ギャップ磁束密度分布Bの基本波成分の振幅A1、最も大きな高調波成分である3次高調波の振幅A3、上記数2の式で計算した全高調波成分の振幅Ahを考える。
図12は、これらの3つの成分A1,A3,Ahを、開き角αに対してプロットしたものである。トルクに起因する基本波成分の振幅A1は、開き角αに対して単調減少である。この基本波成分の振幅A1をできる限り大きくするためには、開き角αを小さくしたほうがよい。ただし、開き角αを小さくすると、3次高調波の振幅A3が大きくなってしまい、鉄損の増加やトルクリップルの増加など、様々なデメリットが生じてしまう。
【0067】
できるだけ基本波成分の振幅A1を大きくしつつ、3次高調波の振幅A3を最小とするためには、開き角α=120°が好適である。一方、3次高調波を含めた全高調波を最小とするためには、開き角α=139°が好適である。
【0068】
以上のように、開き角αは120°~139°に設定することが好ましいことが分かる。しかし、これは、数学的に扱いやすくするために、固定子鉄心11の内周面が各スロット23によって磁気的に凸凹する点(スロット高調波)を無視した理論的検討の結果である。すなわち、スロット高調波までも考慮する場合には、全高調波成分の振幅Ahが最小となる開き角αは、固定子スロット半周期分の範囲でずれ得る。例えば、回転子鉄心21の磁極が2つ(2極モータ)で、各スロット23の数が一般的な“24”の場合、固定子スロット1周期は15°であるため、最適な開き角αは理論値から7.5°ずれる可能性がある。このように、スロット高調波までを考慮した最適な開き角αの上限としては、上記139°に7.5°を加えた146.5°を定めるのが適切である。
【0069】
したがって、磁石磁束の空間高調波をできるだけ抑制しながら、磁石磁束の基本波成分の振幅A1をできるだけ大きくするのに好適なフラックスバリアバンドF1,F2の開き角αは、120°~146.5°の範囲である。
【0070】
[2]第2実施形態
フラックスバリアバンドF1,F2間の各磁路Hにそれぞれ2つのスロット22が存する例を第1実施形態として説明したが、各磁路Hにスロット23が存しない例を第2実施形態として
図14に示す。
【0071】
各磁路Hに非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)が存在しないので、各磁路Hの磁気抵抗をさらに小さくすることができる。これにより、q軸磁束によるリラクタンストルクをさらに活用することができる。
他の構成および効果は第1実施形態と同じである。
【0072】
[3]第3実施形態
各磁気空隙31が当接する各スロット22の位置が第1実施形態と異なる例を
図15に示す。
【0073】
磁極J1において、磁石収容領域24の一端部24aに接する磁気空隙31は、図示上方に屈曲してq軸から4つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。磁極J1において、磁石収容領域24の他端部24bに接する磁気空隙31は、図示上方に屈曲してq軸から4つ目のスロット22およびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0074】
磁極J2において、磁石収容領域24の一端部24aに接する磁気空隙31は、図示下方に屈曲してq軸から4つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。磁極J2において、磁石収容領域24の他端部24bに接する磁気空隙31は、図示下方に屈曲してq軸から4つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
他の構成は第1実施形態と同じである。
【0075】
フラックスバリアバンドF1,F2の開き角αが好適範囲の120°~146.5°より狭くなるが、自己始動が可能でしかも磁気抵抗が非常に小さい各磁路Hをq軸磁束が効率よく流れるという効果は、第1実施形態と同じである。
【0076】
[4]第4実施形態
第1~第3実施形態では、磁極J1,J2にそれぞれ1つの永久磁石25を設けたが、磁極J1,J2にそれぞれ複数の永久磁石25を設けてもよい。この例を第4実施形態として
図16に示す。
【0077】
磁極J1において、d軸を境とする一方の側(図示左側)に磁石収容領域(第1磁石収容領域)24が設けられ、d軸を境とする他方の側(図示右側)にも磁石収容領域(第2磁石収容領域)24が設けられている。一方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ一方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示上方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。他方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ他方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示上方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。
【0078】
磁極J1において、一方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第1磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0079】
磁極J1において、他方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第2磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部に連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0080】
磁極J1において、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bと他方の側の磁石収容領域24の他端部24bとの間に、磁気空隙(第3磁気空隙)32が設けられている。この磁気空隙32は、d軸上に位置し、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接するとともに、他方の側の磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接している。この磁気空隙32は、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置から他方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置まで相対向しながら延びる外周側長辺部32cおよび内周側長辺部32dを含んでいる。
【0081】
この磁極J1において、一方の側の磁石収容領域24および他方の側の磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25が収容されている。磁気空隙31,31および磁気空隙32は、非磁性体である例えば空気を含んでいる。
【0082】
この磁極J1において、一方の側に位置する磁気空隙31および一方の側に位置しかつd軸上に位置する磁気空隙32は、一方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。他方の側に位置する磁気空隙31および他方の側に位置しかつd軸上に位置する磁気空隙32は、他方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。
【0083】
そして、磁極J1において、磁石収容領域24,24、磁気空隙31,31、および磁気空隙32は、磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、および磁石収容領域24,24に収まる2つの永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って延びる細長形状(帯状)のフラックスバリアバンドF1を形成している。このフラックスバリアバンドF1は、隣接する磁極J2との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF1とq軸との間の磁極J1側の鉄心部分に規定する。
【0084】
一方、磁極J2において、d軸を境とする一方の側(図示右側)に磁石収容領域(第1磁石収容領域)24が設けられ、d軸を境とする他方の側(図示左側)に磁石収容領域(第2磁石収容領域)24が設けられている。一方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ一方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示下方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。他方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ他方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示下方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。
【0085】
磁極J2において、一方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第1磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0086】
磁極J2において、他方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第2磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0087】
磁極J2において、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bと他方の側の磁石収容領域24の他端部24bとの間に、磁気空隙(第3磁気空隙)32が設けられている。この磁気空隙32は、d軸上に位置し、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接するとともに、他方の側の磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接している。この磁気空隙32は、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置から他方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置まで相対向しながら延びる外周側長辺部32cおよび内周側長辺部32dを含んでいる。
【0088】
この磁極J2において、一方の側の磁石収容領域24および他方の側の磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25が収容されている。磁気空隙31,31および磁気空隙32は、非磁性体である例えば空気を含んでいる。
【0089】
この磁極J2において、一方の側に位置する磁気空隙31および一方の側に位置しかつd磁極上に位置する磁気空隙32は、一方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。他方の側に位置する磁気空隙31および他方の側に位置しかつd磁極上に位置する磁気空隙32は、他方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。
【0090】
そして、磁極J2において、磁石収容領域24,24、磁気空隙31,31、および磁気空隙32は、磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、および磁石収容領域24,24に収まる2つの永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って延びる細長形状(帯状)のフラックスバリアバンドF2を形成している。このフラックスバリアバンドF2は、隣接する磁極J1との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF2とq軸との間の鉄心部分に規定する。
他の構成および効果は第1実施形態と同じである。
【0091】
[5]第5実施形態
第4実施形態において回転子鉄心21の機械的強度を保つための構成を加えた例を第5実施形態として
図17に示す。
磁極J1において、d軸を境とする一方の側(図示左側)に磁石収容領域(第1磁石収容領域)24が設けられ、d軸を境とする他方の側(図示右側)にも磁石収容領域(第2磁石収容領域)24が設けられている。一方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ一方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示上方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。他方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ一方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示上方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。
【0092】
磁極J1において、一方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第1磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に近接(隣接ともいう)している。この近接部分であるスロット22と磁気空隙31との間の鉄心部分に、回転子鉄心21の機械的強度を保つための細い幅のサイドブリッジ部(第1サイドブリッジ部)Maが規定されている。
【0093】
磁極J1において、他方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第2磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に近接している。この近接部分であるスロット22と磁気空隙31との間の鉄心部分にも、回転子鉄心21の機械的強度を保つための細い幅のサイドブリッジ部(第2サイドブリッジ部)Maが規定されている。
【0094】
磁極J1において、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bとd軸との間に、磁気空隙(第3磁気空隙)32が設けられている。この磁気空隙32は、磁石収容領域24の他端部24bに接するとともに、d軸に近接している。この磁気空隙32は、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置からd軸に向かって相対向しながら延びる外周側長辺部32cおよび内周側長辺部32dを含んでいる。
【0095】
磁極J1において、他方の側の磁石収容領域24の他端部24bとd軸との間に、磁気空隙(第4磁気空隙)32が設けられている。この磁気空隙32は、磁石収容領域24の他端部24bに接するとともに、d軸に近接している。この磁気空隙32は、他方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置からd軸に向かって相対向しながら延びる外周側長辺部32cおよび内周側長辺部32dを含んでいる。
【0096】
磁極J1において、一方の側に存する磁気空隙32と他方の側に存する磁気空隙32との間の鉄心部分に、かつd軸上に、回転子鉄心21の機械的強度を保つための細い幅のセンタブリッジ部Mbが規定されている。
【0097】
この磁極J1において、一方の側の磁石収容領域24および他方の側の磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25が収容されている。磁気空隙31,31および磁気空隙32,32は、非磁性体である例えば空気を含んでいる。
【0098】
この磁極J1において、一方の側に位置する磁気空隙31,32は、一方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。他方の側に位置する磁気空隙31,32は、他方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。
【0099】
そして、磁極J1において、磁石収容領域24,24、磁気空隙31,31、および磁気空隙32,32は、磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、センタブリッジ部Mb、および磁石収容領域24,24に収まる2つの永久磁石25,25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って延びる細長形状(帯状)のフラックスバリアバンドF1を形成している。このフラックスバリアバンドF1は、隣接する磁極J2との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF1とq軸との間の磁極J1側の鉄心部分に規定する。
【0100】
このフラックスバリアバンドF1の形成要素となるトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つためのもので、磁束を通すためのものではない。これらトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF1の一部として機能する。
【0101】
フラックスバリアバンドF1の開き角αは、回転中心Cから、一方の側の磁気空隙31、サイドブリッジ部Ma、そのサイドブリッジ部Maが隣接するスロット22を通って径方向に延びる径方向線X1と、回転中心Cから他方の側の磁気空隙31、サイドブリッジ部Ma、そのサイドブリッジ部Maが隣接するスロット22を通って径方向に延びる径方向線X1´と、で規定される。径方向線X1,X1´の定め方は、
図7~
図10で説明した定め方と同じである。
【0102】
一方、磁極J2において、d軸を境とする一方の側(図示右側)に磁石収容領域(第1磁石収容領域)24が設けられ、d軸を境とする他方の側(図示右側)にも磁石収容領域(第2磁石収容領域)24が設けられている。一方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ一方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示下方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。他方の側の磁石収容領域24は、一端部24aが同じ一方の側に存する所定の1つのスロット22(q軸より図示下方に2つ目のスロット22)の内周側端部22bに対向し、他端部24bがd軸に対向している。
【0103】
磁極J2において、一方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第1磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に近接している。この近接部分であるスロット22と磁気空隙31との間の鉄心部分に、回転子鉄心21の機械的強度を保つための細い幅のサイドブリッジ部(第1サイドブリッジ部)Maが規定されている。
【0104】
磁極J2において、他方の側の磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第2磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接するとともに、その一端部24aが対向する上記所定の1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に近接している。この近接部分であるスロット22と磁気空隙31との間の鉄心部分にも、回転子鉄心21の機械的強度を保つための細い幅のサイドブリッジ部(第2サイドブリッジ部)Maが規定されている。
【0105】
磁極J2において、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bとd軸との間に、磁気空隙(第3磁気空隙)32が設けられている。この磁気空隙32は、磁石収容領域24の他端部24bに接するとともに、d軸に近接している。この磁気空隙32は、一方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置からd軸に向かって相対向しながら延びる外周側長辺部32cおよび内周側長辺部32dを含んでいる。
【0106】
磁極J2において、他方の側の磁石収容領域24の他端部24bとd軸との間に、磁気空隙(第4磁気空隙)32が設けられている。この磁気空隙32は、磁石収容領域24の他端部24bに接するとともに、d軸に近接している。この磁気空隙32は、他方の側の磁石収容領域24の他端部24bと対応する位置からd軸に向かって相対向しながら延びる外周側長辺部32cおよび内周側長辺部32dを含んでいる。
【0107】
磁極J2において、一方の側に存する磁気空隙32と他方の側に存する磁気空隙32との間の鉄心部分に、かつd軸上に、回転子鉄心21の機械的強度を保つための細い幅のセンタブリッジ部Mbが規定されている。
【0108】
この磁極J2において、一方の側の磁石収容領域24および他方の側の磁石収容領域24にそれぞれ永久磁石25が収容されている。磁気空隙31,31および磁気空隙32,32は、非磁性体である例えば空気を含んでいる。
【0109】
この磁極J2において、一方の側に位置する磁気空隙31,32は、一方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。他方の側に位置する磁気空隙31,32は、他方の側の磁石収容領域24に収容される永久磁石25の一端部25aおよび他端部25bにおける磁石磁束の短絡を抑制するフラックスバリアとして機能する。
【0110】
そして、磁極J2において、磁石収容領域24,24、磁気空隙31,31、および磁気空隙32,32は、磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、センタブリッジ部Mb、および磁石収容領域24,24に収まる2つの永久磁石25,25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って延びる細長形状(帯状)のフラックスバリアバンドF2を形成している。このフラックスバリアバンドF2は、隣接する磁極J2との境界となるq軸に沿う磁路Hを当該フラックスバリアバンドF2とq軸との間の磁極J2側の鉄心部分に規定する。
【0111】
このフラックスバリアバンドF2の形成要素となるトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つためのもので、磁束を通すためのものではない。これらトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF2の一部として機能する。
【0112】
フラックスバリアバンドF2の開き角αは、回転中心Cから一方の側の磁気空隙31、サイドブリッジ部Ma、そのサイドブリッジ部Maが隣接するスロット22を通って径方向に延びる径方向線X1と、回転中心Cから他方の側の磁気空隙31、サイドブリッジ部Ma、そのサイドブリッジ部Maが隣接するスロット22を通って径方向に延びる径方向線X1´と、で規定される。径方向線X1,X1´の定め方は、
図7~
図10で説明した定め方と同じである。
他の構成および効果は第4実施形態と同じである。
【0113】
なお、本実施形態では、磁極J1,J2ごとに2つのサイドブリッジ部Ma,Maおよび1つのセンタブリッジ部Mbを設ける構成としたが、磁極J1,J2ごとに2つのサイドブリッジ部Ma,Maのみ設けてセンタブリッジ部Mbは設けない構成としてもよく、あるいは磁極J1,J2ごとに1つのセンタブリッジ部Mbのみ設けてサイドブリッジ部Ma,Maは設けない構成としてもよい。センタブリッジ部Mbを設けない構成の場合、磁極J1,J2ごとに1つの磁石収容領域24が存する構成となる。サイドブリッジ部Ma,Maを設けない構成の場合、磁極J1,J2のそれぞれ2つの磁石収容領域24が2つのスロット22に当接する構成となる。
【0114】
[6]第6実施形態
図1の回転中心Cに回転軸を設けた構成を第6実施形態として
図18に示す。
図18において、
図1と同一部分への符号付けは省略している。
【0115】
回転子鉄心21の回転中心Cの部分に内孔21bが形成され、その内孔21bに所定の太さの回転軸50が挿通される。回転軸50は、回転子鉄心21を固定子10内で回転自在に支持する。回転軸50は、磁性体たとえば鉄などの強磁性体を棒状に成形したもので、内孔21bに圧入または焼き嵌めされる。
【0116】
回転軸50が圧入または焼き嵌めされる内孔21bと各磁石収容領域24の長手方向中途部との間には、圧入や焼き嵌めにかかわらず回転子鉄心21の形を維持するための所定の大きさの間隙Pが確保される。
【0117】
磁極J1の磁石収容領域24は、永久磁石25を収容する長手方向中途部が上記間隙Pの分だけ内孔21bから離れた位置に存している。この磁石収容領域24の一端部24aに接している磁気空隙31が、内孔21bに沿うように図示下方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。同磁石収容領域24の他端部24bに接している磁気空隙31が、内孔21bに沿うように図示下方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22およびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0118】
磁極J2の磁石収容領域24は、永久磁石25を収容する長手方向中途部が上記間隙Pの分だけ内孔21bから離れた位置に存している。この磁石収容領域24の一端部24aに接している磁気空隙31が、内孔21bに沿うように図示上方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。同磁石収容領域24の他端部24bに接している磁気空隙31が、内孔21bに沿うように図示上方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22およびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0119】
q軸磁束が流れる各磁路Hに回転軸50が介在するが、回転軸50は磁性体(強磁性体)なので、q軸磁束は回転軸50に妨げられることなくその回転軸50を横切るように流れる。
【0120】
なお、アルミニウムなどの非磁性体で成形した回転軸50を採用しなければならない場合には、q軸磁束が回転軸50を横切らないことに対処し、各磁石収容領域24の長手方向中途部の位置を外周面21a側に移して間隙Pを拡げ、これにより各磁路Hの幅を拡げればよい。
他の構成および効果は第1実施形態と同じである。
【0121】
[7]第7実施形態
第6実施形態の
図18において、回転子鉄心21の機械的強度を高めるべく、あるいは磁路H,Hの幅を拡げるべく、間隙Pを拡げた構成を第7実施形態として
図19に示す。
【0122】
磁極J1の磁石収容領域24の長手方向中途部と内孔21bとの間隔Pが第6実施形態の場合より大きい。磁石収容領域24の長手方向の長さも第6実施形態の場合より長く、その長くなった分だけ、磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bが各スロット22に近いところまで延在している。これに伴い、磁石収容領域24に収まる永久磁石25の長手方向の長さも第6実施形態の場合より長くなっている。
【0123】
磁極J1の磁石収容領域24の一端部24aに接している磁気空隙31は、内孔21bに沿うように図示下方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。磁極J1の磁石収容領域24の他端部24bに接している磁気空隙31も、内孔21bに沿うように図示下方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0124】
一方、磁極J2の磁石収容領域24の長手方向中途部と内孔21bとの間隔Pが第6実施形態の場合より大きい。磁石収容領域24の長手方向中途部の長手方向の長さも第6実施形態の場合より長く、その長くなった分だけ、磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bが各スロット22に近いところまで延在している。これに伴い、磁石収容領域24に収まる永久磁石25の長手方向の長さも第6実施形態の場合より長くなっている。
【0125】
磁極J2の磁石収容領域24の一端部24aに接している磁気空隙31は、内孔21bに沿うように図示上方のq軸に向け一旦屈曲しつつ、q軸から2つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。磁極J2の磁石収容領域24の他端部24bに接している磁気空隙31も、内孔21bに沿うように図示上方のq軸に向け一旦屈曲し、q軸から2つ目のスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
他の構成および効果は第6実施形態と同じである。
【0126】
[8]第8実施形態
第7実施形態の
図19の場合、各磁石収容領域24の一端部24aおよび他端部24bが各スロット22に近いところまで延在しているので、各磁石収容領域24と各スロット22との間隔が狭くなる。この狭くなったところでは磁気飽和が発生して磁束が流れ難くなり、それがモータ1の性能低下を招く可能性がある。
【0127】
この懸念を解消する構成を第8実施形態として
図20に示す。この
図20の構成は、磁極J1,J2ごとに2つの磁石収容領域24,24、2つの磁気空隙31,31、2つの磁気空隙32,32、2つのサイドブリッジ部Ma,Ma、1つのセンタブリッジ部Mbを有する点で、第5実施形態の
図17の構成と類似する。その類似部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0128】
回転子鉄心21の回転中心Cの部分に内孔21bが形成され、その内孔21bに所定の太さの回転軸50が挿通される。回転軸50は、回転子鉄心21を固定子10内で回転自在に支持する。回転軸50は、磁性体たとえば鉄などの強磁性体を棒状に成形したもので、内孔21bに圧入または焼き嵌めされる。回転軸50が圧入または焼き嵌めされる内孔21bと磁気空隙32,32およびセンタブリッジ部Mbとの間には、圧入や焼き嵌めにかかわらず回転子鉄心21の形を維持するための所定の大きさの間隙Pが確保される。
【0129】
磁極J1における一方の側の磁石収容領域24は、上記所定の大きさの間隙Pを確保するため、一端部24aがq軸から図示上方に2番目のスロット22との近接位置を維持しながら、一端部24aを除く残りの部位がq軸から徐々に離れていくように、q軸に対し傾斜状に配置されている。磁極J1における他方の側の磁石収容領域24も、上記所定の大きさの間隙Pを確保するため、一端部24aがq軸から図示上方に2番目のスロット22との近接位置を維持しながら、一端部24aを除く残りの部位がq軸から徐々に離れていくように、q軸に対し傾斜状に配置されている。
【0130】
磁極J2における一方の側の磁石収容領域24は、上記所定の大きさの間隙Pを確保するため、一端部24aがq軸から図示下方に2番目のスロット22との近接位置を維持しながら、一端部24aを除く残りの部位がq軸から徐々に離れていくように、q軸に対し傾斜状に配置されている。磁極J2における他方の側の磁石収容領域24も、上記所定の大きさの間隙Pを確保するため、一端部24aがq軸から図示下方に2番目のスロット22との近接位置を維持しながら、一端部24aを除く残りの部位がq軸から徐々に離れていくように、q軸に対し傾斜状に配置されている。
【0131】
そして、磁極J1において、磁石収容領域24,24、磁気空隙31,31、および磁気空隙32,32は、磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、センタブリッジ部Mb、および磁石収容領域24,24に収まる2つの永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸および内孔21bに沿って屈曲する帯状のフラックスバリアバンドF1を形成している。このフラックスバリアバンドF1は、隣接する磁極J2との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF1とq軸との間の磁極J1側の鉄心部分および回転軸50に規定する。
【0132】
このフラックスバリアバンドF1の形成要素となるトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つためのもので、磁束を通すためのものではない。これらトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF1の一部として機能する。
【0133】
磁極J2において、磁石収容領域24,24、磁気空隙31,31、および磁気空隙32,32は、磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、各トップブリッジ部Dのうち磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22と外周面21aとの間に存する各トップブリッジ部D、上記サイドブリッジ部Ma,Ma、上記センタブリッジ部Mb、および磁石収容領域24,24内のそれぞれ永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って屈曲する帯状のフラックスバリアバンドF2を形成している。このフラックスバリアバンドF2は、隣接する磁極J1との境界となるq軸に沿う磁路Hを、当該フラックスバリアバンドF2とq軸との間の磁極J2側の鉄心部分および回転軸50に規定する。
【0134】
このフラックスバリアバンドF2の形成要素となるトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つためのもので、磁束を通すためのものではない。これらトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF2の一部として機能する。
【0135】
フラックスバリアバンドF1,F2間の各磁路Hに回転軸50が介在するが、回転軸50は磁性体(強磁性体)なので、q軸磁束は回転軸50に妨げられることなくその回転軸50を横切るように流れる。
回転軸50を囲むように各磁石収容領域24が傾斜しているので、内孔21bと磁気空隙32,32およびセンタブリッジ部Mbとの間の間隙Pを、回転軸50の圧入や焼き嵌め耐え得る十分な大きさに設定しても、各磁石収容領域24の両端部が
図19のように各スロット22に近いところまで延在しない。近いところまで延在しないので、各磁石収容領域24の両端部と各スロット22との間隔が狭くなり過ぎない。狭くなり過ぎた場合の磁気飽和やその磁気飽和に伴うモータ1の性能低下を回避することができる。
他の構成および効果は第5実施形態(
図17)と同じである。
【0136】
[9]第9実施形態
モータ1として4極モータを採用した例を第9実施形態として
図21に示す。
回転子20は、固定子鉄心21と同軸の回転中心Cを中心にして回転する円筒状の回転子鉄心21、この回転子鉄心21の外周面21aのすぐ内側領域にその外周面21aに沿って所定間隔(例えば一定間隔や不等間隔)で形成された複数のスロット22、これらスロット22に収容(嵌合)された複数の導電体23、回転子鉄心21の外周面21aと各スロット22との間の細い幅の鉄心部分である複数のトップブリッジ部D、回転子鉄心21の回転中心Cの周りに設けられた複数たとえば4つの磁石収容領域24、これら磁石収容領域24に収容(埋設)された複数たとえば4つの永久磁石25を含む。これら永久磁石25により、回転子鉄心11の円周方向に4つの磁極(第1~第4磁極)J1,J2,J3,J4が形成される。
【0137】
各スロット22の全てに導電体23を収容する必要はなく、いくつかのスロット22に導電体23を収容し、残りのスロット22には空気や樹脂などの非磁性体を含める構成としてもよい。要は、全てのスロット22が非磁性体を含む構成であればよい。各トップブリッジ部Dは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されている。
【0138】
回転中心Cから磁極J1,J2,J3,J4のそれぞれ円周方向における中心を通って径方向に延びる磁極中心軸がd軸、これらd軸に対し電気的に90°離れた位置で回転中心Cから径方向に延びる軸がそれぞれq軸となる。固定子10の電機子巻線12に流れる電流によって固定子10側に磁極が形成されたとき、その磁極がq軸に対向した際に、固定子10側から回転子20側に最も多くの磁束が流れる。d軸およびq軸は、回転子鉄心21の円周方向において交互に存する。q軸とq軸との相互間の領域(1/4周の周角度領域)が1つの磁極に相当する。1つの磁極は、機械角で90°、電気角で180°である。
【0139】
磁極J1,J2,J3,J4は、それぞれ7個のスロット22を含む。1つの磁極において、7個のスロット22のうち、d軸と対応する中央位置のスロット22の長手方向の長さ(外周側端部22aと内周側端部22bとの間の長さ)および横断面が最も大きく、このスロット22の両側に位置する2つのスロット22の長手方向の長さおよび横断面が2番目に大きく、この2つのスロット22の外側に位置する2つのスロット22の長手方向の長さおよび横断面が最も小さい。この最も小さい2つのスロット22のさらに外側に位置する2つのスロット22の長手方向の長さおよび横断面が3番目に大きく、この3番目に大きい2つのスロット22の内周側端部22bおよびその各スロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に、磁石収容領域24の両端部が対向している。
【0140】
これらスロット22の個数・形状・大きさ・順序などについて限定はなく、例えばd軸と対応する中央位置のスロット22の長手方向の長さおよび横断面が最も小さい構成としてもよい。
【0141】
磁極J1の磁石収容領域24は、回転中心Cから所定距離離れた位置でd軸と直交する状態に設けられ、d軸を境とする一方の側に位置する一端部24aおよびd軸を境とする他方の側に位置する他端部24b、その一端部24aおよび他端部24bの相互間に位置して相対向する外周側長辺部24cおよび内周側長辺部24dを含む。磁石収容領域24の一端部24aは一方の側においてq軸に最も近い1つのスロット(所定のスロット)22の内周側端部22bに対向し、磁石収容領域24の他端部24bは他方の側においてq軸に最も近い1つのスロット(所定のスロット)22の内周側端部22bに対向している。磁石収容領域24の長手方向中途部は、回転中心Cを挟んで向かい側の磁極J3の磁極収容領域24の長手方向中途部と対向している。
【0142】
磁極J1において、磁石収容領域24の一端部24aと、その一端部24aに隣接する上記1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接している。また、磁気空隙31は、上記1つのスロット22の内周側端部22bまでq軸に沿って延びる外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dを含み、かつその外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dの終端の相互間に位置する外周側端部31aを含む。この外周側端部31aが上記1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0143】
磁極J1において、磁石収容領域24の他端部24bと、その他端部24bに隣接する上記1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接している。また、磁気空隙31は、上記1つのスロット22の内周側端部22bまでq軸に沿って延びる外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dを含み、かつその外周側長辺部31cおよび内周側長辺部31dの終端の相互間に位置する外周側端部31aを含む。この外周側端部31aが上記1つのスロット22の内周側端部22bおよびそのスロット22内の非磁性体(導電体23・空気・樹脂等)に当接している。
【0144】
そして、磁極J1において、磁石収容領域24および磁気空隙31,31は、磁気空隙31,31が当接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、上記各トップブリッジ部Dのうち上記2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D,D、および磁石収容領域24,24にそれぞれ収まる2つの永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って屈曲状に延びるフラックスバリアバンドF1を形成している。このフラックスバリアバンドF1は、隣接する磁極J4,J2との境界となるq軸に沿う磁路Hを当該フラックスバリアバンドF1とq軸との間の磁極J1側の鉄心部分に規定する。
【0145】
この磁極J1と同じく、磁極J2には、d軸と直交しつつq軸に沿って屈曲状に延びるフラックスバリアバンドF2が存する。フラックスバリアバンドF2は、隣接する磁極J1,J3との境界となるq軸に沿う磁路Hを当該フラックスバリアバンドF2とq軸との間の磁極J2側の鉄心部分に規定する。
【0146】
磁極J3には、d軸と直交しつつq軸に沿って屈曲状に延びるフラックスバリアバンドF3が存する。フラックスバリアバンドF3は、隣接する磁極J2との境界および隣接する磁極J2,J4との境界となるq軸に沿う磁路Hを当該フラックスバリアバンドF3とq軸との間の磁極J3側の鉄心部分に規定する。
【0147】
磁極J4には、d軸と直交しつつq軸に沿って屈曲状に延びるフラックスバリアバンドF4が存する。フラックスバリアバンドF4は、隣接する磁極J3との境界および隣接する磁極J3,J1との境界となるq軸に沿う磁路Hを当該フラックスバリアバンドF4とq軸との間の磁極J4側の鉄心部分に規定する。
【0148】
フラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4のそれぞれ形成要素となるトップブリッジD,Dは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4の一部として機能する。
【0149】
フラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4の相互間の各磁路Hには非磁性体である導電体23や空隙がないので、各磁路Hの磁気抵抗は非常に小さい。
q軸には、固定子10によって形成される回転磁界の磁束が最も多く流れる。この最も多く流れる磁束いわゆるq軸磁束は、リラクタンストルクに最も寄与するもので、フラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4の相互間の磁気抵抗が非常に小さい各磁路Hを効率よく流れる。
【0150】
フラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4のそれぞれの開き角αは、回転中心Cから各磁石収容領域24の一端部24aが当接しているスロット22を通って径方向に延びる径方向線X1と、回転中心Cから各磁石収容領域24の他端部24bが当接しているスロット22を通って径方向に延びる径方向線X1´と、で規定される。径方向線X1,X1´の定め方は、
図7~
図10で説明した定め方と同じである。開き角αは、第1実施形態と同じ120°~146.5°の範囲たとえば142°に設定される。この設定により、各永久磁石25の量は変えないまま、磁石トルクに比例する磁石磁束を最大にすることができる。
他の構成および効果は第1実施形態と同じである。
【0151】
なお、本実施形態において、第4実施形態(
図16)と同様に、磁極ごとに、2つの磁石収容領域24,24および3つの磁気空隙31,31,32を設ける構成としてもよい。また、本実施形態において、第5実施形態(
図17)と同様に、磁極ごとに、2つの磁石収容領域24,24、4つの磁気空隙31,31,32,32、2つのサイドブリッジ部Ma,Ma、および1つのセンタブリッジ部Mbを設ける構成としてもよい。
【0152】
[10]第10実施形態
図21の第9実施形態において、回転中心Cに回転軸50を設けるとともに、磁気空隙31,31と所定のスロット22,22との間にサイドブリッジ部Ma,Maを設ける構成を、第10実施形態として
図22に示す。
図22において、
図21と同一部分には同一符号を付している。
【0153】
回転子鉄心21の回転中心Cの部分に内孔21bが形成され、その内孔21bに所定の太さの回転軸(シャフトともいう)50が挿通される。回転軸50は、回転子鉄心21を固定子10内で回転自在に支持する。回転軸50は、磁性体たとえば鉄などの強磁性体を棒状に成形したもので、内孔21bに圧入または焼き嵌めされる。
【0154】
磁極J1~J4において、回転軸50が圧入または焼き嵌めされる内孔21bと磁石収容領域24の長手方向中途部との間には、圧入や焼き嵌めにかかわらず回転子鉄心21の形を維持するための所定の大きさの間隙Pが確保される。
【0155】
磁極J1~J4において、磁石収容領域24の一端部24aは、d軸を境とする一方の側においてq軸に最も近い位置の1つのスロット(所定のスロット)22の内周側端部22bに隣接している。磁極J1~J4において、磁石収容領域24の他端部24bは、d軸を境とする他方の側においてq軸に最も近い位置の1つのスロット(所定のスロット)22の内周側端部22bに隣接している。
【0156】
磁極J1~J4において、磁石収容領域24の一端部24aとその一端部24aが隣接する上記1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第1磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の一端部24aに連通状態で接している。また、この磁気空隙31は、外周側端部31aが上記1つのスロット22に近接し、そのスロット22との間の鉄心部分にサイドブリッジ部Maを規定している。
磁極J1~J4において、磁石収容領域24の他端部24bとその他端部24bに隣接する上記1つのスロット22の内周側端部22bとの間に、磁気空隙(第2磁気空隙)31が設けられている。この磁気空隙31は、磁石収容領域24の他端部24bに連通状態で接している。また、この磁気空隙31は、外周側端部31aが上記1つのスロット22に近接し、そのスロット22との間の鉄心部分にサイドブリッジ部Maを規定している。
【0157】
そして、磁極J1~J4において、磁石収容領域24および磁気空隙31,31は、磁気空隙31,31が近接する2つのスロット22,22、このスロット22,22内の非磁性体、上記各トップブリッジ部Dのうち上記2つのスロット22,22と外周面21aとの間に存する2つのトップブリッジ部D、サイドブリッジ部Ma,Ma、および磁石収容領域24,24に収まる2つの永久磁石25と共に、d軸と直交しつつq軸に沿って屈曲状に延びるフラックスバリアバンドF1~F4を形成している。
【0158】
フラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4のそれぞれ形成要素となるトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つためのもので、磁束を通すためのものではない。これらトップブリッジD,D、サイドブリッジ部Ma,Ma、およびセンタブリッジ部Mbは、回転子鉄心21の機械的強度を保つ範囲で、幅が限りなく細く(つまり磁束が通り難く)なるように設定されており、あくまでもフラックスバリアバンドF1,F2,F3,F4の一部として機能する。
【0159】
q軸磁束が流れる各磁路Hに回転軸50が介在するが、回転軸50は磁性体(強磁性体)なので、q軸磁束は回転軸50に妨げられることなくその回転軸50を横切るように流れる。
【0160】
アルミニウムなどの非磁性体で成形した回転軸50を採用しなければならない場合には、q軸磁束が回転軸50を横切らないことに対処し、各磁石収容領域24の長手方向中途部の位置を外周面21a側に移して間隙Pを拡げ、これにより磁路Hの幅を拡げればよい。
【0161】
他の構成および効果は第9実施形態と同じである。
【0162】
なお、本実施形態において、第4実施形態(
図16)と同様に、磁極ごとに、2つの磁石収容領域24,24および3つの磁気空隙31,31,32を設ける構成としてもよい。また、本実施形態において、第5実施形態(
図17)と同様に、磁極ごとに、2つの磁石収容領域24,24、4つの磁気空隙31,31,32,32、2つのサイドブリッジ部Ma,Ma、および1つのセンタブリッジ部Mbを設ける構成としてもよい。
【0163】
[11]変形例
本発明は上述した各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、回転子の磁極数、寸法、形状等は、前述した各実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。スロット、磁石収容領域、永久磁石などの断面形状は、実施形態の形状に限定されることなく、種々の形状を選択可能である。
【符号の説明】
【0164】
1…モータ、10…固定子、20…回転子、21…回転子鉄心、C…軸芯、21a…外周面、21b…内孔、22…スロット、23…導電体、24…磁石収容領域、25…永久磁石、F1,F2,F3,F4…フラックスバリアバンド、H…磁路