(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057862
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】注入薬液移送システム
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164822
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】間野 真至
(72)【発明者】
【氏名】小野 航
(72)【発明者】
【氏名】瀧 穂高
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040FA08
(57)【要約】
【課題】地山に注入する注入材の薬液を貯留する薬液タンクに人力で薬液を供給する作業を無くす。
【解決手段】注入材を構成する薬液を供給する薬液タンク1a、1bと、薬液貯留コンテナ3a、3bと、薬液貯留コンテナ3a、3bから薬液タンク1a、1bに薬液を移送する移送ポンプ5a、5bと、薬液タンク1a、1bの下限液量値と上限液量値が設定記憶され、移送ポンプ5a、5bの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置6を備え、移送ポンプ制御装置6が、薬液タンク1a、1bに設置される液量センサ23から入力される液量値の下限液量値への到達に応じて、移送ポンプ5a、5bが運転開始するように制御し、入力される液量値の上限液量値への到達に応じて、運転状態の移送ポンプ5a、5bが運転停止するように制御する注入薬液移送システム。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に注入材を注入する注入ポンプに前記注入材を構成する薬液を供給する薬液タンクと、
前記薬液タンクに設置される液量センサと、
薬液貯留コンテナと、
前記薬液貯留コンテナから前記薬液タンクに薬液を移送する移送ポンプと、
前記移送ポンプの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置とを備え、
前記移送ポンプ制御装置に、前記薬液タンクの下限液量値と上限液量値が設定記憶され、
前記移送ポンプ制御装置が、前記薬液タンクの前記液量センサから入力される液量値の前記下限液量値への到達に応じて、前記移送ポンプが運転開始するように制御すると共に、前記薬液タンクの前記液量センサから入力される液量値の前記上限液量値への到達に応じて、運転状態の前記移送ポンプが運転停止するように制御することを特徴とする注入薬液移送システム。
【請求項2】
地山に注入材を注入する注入ポンプに前記注入材を構成する薬液を供給する薬液タンクと、
前記薬液タンクに設置される液量センサと、
薬液貯留コンテナと、
前記薬液貯留コンテナから前記薬液タンクに薬液を移送する移送ポンプと、
前記移送ポンプで移送される薬液の流量を計測する移送流量計と、
前記移送ポンプの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置とを備え、
前記移送ポンプ制御装置に、前記薬液タンクの下限液量値と前記移送流量計の下限流量値が設定記憶され、
前記移送ポンプ制御装置が、前記薬液タンクの前記液量センサから入力される液量値の前記下限液量値への到達に応じて、前記移送ポンプが運転開始するように制御すると共に、
前記移送流量計から入力される流量値の前記下限流量値への到達に応じて、運転状態の前記移送ポンプが運転停止するように制御することを特徴とする注入薬液移送システム。
【請求項3】
前記薬液タンクと、前記薬液タンクに設置される液量センサと、前記薬液貯留コンテナと、前記移送ポンプの組が複数組設けられ、
前記複数組の運転動作を一つの前記移送ポンプ制御装置で制御することを特徴とする請求項1又は2記載の注入薬液移送システム。
【請求項4】
前記薬液貯留コンテナの貯留可能量が前記薬液タンクの上限液量値と下限液量値との差以上であると共に、
前記薬液貯留コンテナが運搬して反復使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の注入薬液移送システム。
【請求項5】
前記薬液貯留コンテナの側壁が透光性材料で形成されていることを特徴とする請求項4記載の注入薬液移送システム。
【請求項6】
前記薬液タンクに設けられる無線通信部と前記移送ポンプ制御装置に設けられる無線通信部の双方と無線通信可能な携帯端末を備え、
前記携帯端末が、前記薬液タンクの前記液量センサが検出した液量値を無線通信で取り込んで表示可能であると共に、前記移送ポンプ制御装置に記憶される前記薬液タンクの下限液量値を含む所定データを無線通信を介して書換可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の注入薬液移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば長尺先受け工法(AGF工法)や鏡補強工のようなトンネル補助工法等で地山に注入材を注入する際に、注入材を構成する薬液を薬液タンクに移送する注入薬液移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル補助工法では、長尺先受け工法(AGF工法)や、鏡補強工等のための注入材を吐出する吐出孔を有する鋼管を切羽前方地山に向かって打設し、注入孔を形成するように打設した鋼管の内部から周辺地山に注入材を注入することが行われている。注入される注入材には、二種類の薬液を混合して硬化させる二液混合硬化タイプの注入材が多く用いられており、例えば二液混合硬化タイプのウレタン系注入材やシリカレジン系注入材が用いられている。
【0003】
二液混合硬化タイプの注入材を注入する際には、注入材を構成する第1薬液と第2薬液がそれぞれ第1薬液タンクと第2薬液タンクに貯留され、第1薬液タンクから注入ポンプで吸い上げられた第1薬液と第2薬液タンクから注入ポンプで吸い上げられた第2薬液が合流管に向かって吐出され、合流管の吐出側に接続されている注入管から第1薬液と第2薬液の混合液が鋼管内部に吐出される(特許文献1の段落[0029]、[0030]、
図2、
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二液混合硬化タイプの注入材を構成する第1薬液、第2薬液のように、注入材を構成する薬液は、注入ポンプで吸い上げられるように予め薬液タンクに貯留される。そして、薬液タンクに貯留されている薬液の量が少なくなってきたら、石油缶やドラム缶に収容した薬液を人力で薬液タンクに移し替えるという作業が行われている。この作業員が人力で薬液タンクに薬液を移し替える作業は多大な労力を要する作業であるため、人力で薬液を薬液タンクに供給する作業を無くすことが望まれている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、注入材を構成する薬液を貯留する薬液タンクに人力で薬液を供給する作業を無くすことができる注入薬液移送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の注入薬液移送システムは、地山に注入材を注入する注入ポンプに前記注入材を構成する薬液を供給する薬液タンクと、前記薬液タンクに設置される液量センサと、薬液貯留コンテナと、前記薬液貯留コンテナから前記薬液タンクに薬液を移送する移送ポンプと、前記移送ポンプの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置とを備え、前記移送ポンプ制御装置に、前記薬液タンクの下限液量値と上限液量値が設定記憶され、前記移送ポンプ制御装置が、前記薬液タンクの前記液量センサから入力される液量値の前記下限液量値への到達に応じて、前記移送ポンプが運転開始するように制御すると共に、前記薬液タンクの前記液量センサから入力される液量値の前記上限液量値への到達に応じて、運転状態の前記移送ポンプが運転停止するように制御することを特徴とする。
これによれば、薬液タンクの液量の減少に応じて薬液貯留コンテナから薬液タンクに自動的に適量の薬液を移送して供給することができ、注入材を構成する薬液を貯留する薬液タンクに石油缶やドラム缶を用いて人力で薬液を供給する作業を無くすことができる。
【0008】
本発明の注入薬液移送システムは、地山に注入材を注入する注入ポンプに前記注入材を構成する薬液を供給する薬液タンクと、前記薬液タンクに設置される液量センサと、薬液貯留コンテナと、前記薬液貯留コンテナから前記薬液タンクに薬液を移送する移送ポンプと、前記移送ポンプで移送される薬液の流量を計測する移送流量計と、前記移送ポンプの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置とを備え、前記移送ポンプ制御装置に、前記薬液タンクの下限液量値と前記移送流量計の下限流量値が設定記憶され、前記移送ポンプ制御装置が、前記薬液タンクの前記液量センサから入力される液量値の前記下限液量値への到達に応じて、前記移送ポンプが運転開始するように制御すると共に、前記移送流量計から入力される流量値の前記下限流量値への到達に応じて、運転状態の前記移送ポンプが運転停止するように制御することを特徴とする。
これによれば、薬液タンクの液量の減少に応じて薬液貯留コンテナから薬液タンクに自動的に適量の薬液を移送して供給することができ、注入材を構成する薬液を貯留する薬液タンクに石油缶やドラム缶を用いて人力で薬液を供給する作業を無くすことができる。
【0009】
本発明の注入薬液移送システムは、前記薬液タンクと、前記薬液タンクに設置される液量センサと、前記薬液貯留コンテナと、前記移送ポンプの組が複数組設けられ、前記複数組の運転動作を一つの前記移送ポンプ制御装置で制御することを特徴とする。
これによれば、薬液貯留コンテナから薬液タンクに薬液を移送する移送ポンプの複数組の動作を一つの移送ポンプ制御装置で制御することができ、装置コストの低減、制御装置のハードウェア資源の有効活用を図ることができる。
【0010】
本発明の注入薬液移送システムは、前記薬液貯留コンテナの貯留可能量が前記薬液タンクの上限液量値と下限液量値との差以上であると共に、前記薬液貯留コンテナが運搬して反復使用されることを特徴とする。
これによれば、薬液貯留コンテナを取り換える作業無しで、薬液タンクの上限液量値と下限液量値との差に対応する量の薬液を移送することができる。また、同じ薬液運搬コンテナを薬液収容容器として何度も利用することが可能となり、薬液を移し替える石油缶やドラム缶のような産業廃棄物を無くすことができる。
【0011】
本発明の注入薬液移送システムは、前記薬液貯留コンテナの側壁が透光性材料で形成されていることを特徴とする。
これによれば、薬液貯留コンテナが空になった状態や、薬液貯留コンテナの薬液の減り具合を容易に確認することができ、薬液貯留コンテナの取り換えのタイミングを容易に認識することができる。
【0012】
本発明の注入薬液移送システムは、前記薬液タンクに設けられる無線通信部と前記移送ポンプ制御装置に設けられる無線通信部の双方と無線通信可能な携帯端末を備え、前記携帯端末が、前記薬液タンクの前記液量センサが検出した液量値を無線通信で取り込んで表示可能であると共に、前記移送ポンプ制御装置に記憶される前記薬液タンクの下限液量値を含む所定データを無線通信を介して書換可能であることを特徴とする。
これによれば、現場から離れた遠隔地で地山への薬液注入状況や薬液移送が必要とされている程度、移送ポンプの運転状態等を随時確認することができる。また、現場状況の変化や薬液変更に応じて移送ポンプの制御条件を遠隔地から柔軟に変更することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の注入薬液移送システムによれば、注入材を構成する薬液を貯留する薬液タンクに人力で薬液を供給する作業を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による第1実施形態の注入薬液移送システムの全体構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態の注入薬液移送システムにおける液量検出ユニットのブロック図。
【
図3】第1実施形態の注入薬液移送システムにおける移送ポンプ制御装置のブロック図。
【
図4】第1実施形態の注入薬液移送システムにおける携帯端末のブロック図。
【
図5】第1実施形態の注入薬液移送システムにおける薬液タンクから注入管への薬液供給を説明する説明図。
【
図6】第1実施形態の注入薬液移送システムによる薬液移送制御処理を示すフローチャート。
【
図7】本発明による第2実施形態の注入薬液移送システムの全体構成を示すブロック図。
【
図8】第2実施形態の注入薬液移送システムによる薬液移送制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態の注入薬液移送システム〕
本発明による第1実施形態の注入薬液移送システムは、地山に注入される注入材を構成する薬液を移送するシステムであり、
図1に示すように、例えばウレタン系注入材、又はシリカレジン系注入材のような二液混合硬化タイプの注入材を構成する第1薬液を貯留して供給する薬液タンク1aと、二液混合硬化タイプの注入材を構成する第2薬液を貯留して供給する薬液タンク1bと、各薬液タンク1a、1bに設置されて各薬液タンク1a、1bの液量の検出と検出した液量の送信を担う液量検出ユニット2a、2bと、薬液タンク1aに移送される第1薬液を貯留する薬液貯留コンテナ3a及び薬液タンク1bに移送される第2薬液を貯留する薬液貯留コンテナ3bと、薬液移送路4a、4bを介して各薬液貯留コンテナ3a、3bから各薬液タンク1aに第1薬液、第2薬液をそれぞれ移送する移送ポンプ5a、5bと、移送ポンプ5a及び移送ポンプ5bの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置6を備える。
【0016】
液量検出ユニット2aと液量検出ユニット2bは同一構成であり、
図2に示すように、CPU等の制御部21と、ROM、RAM等で構成される記憶部22と、レベル計等の液量センサ23と、無線通信部24を備える。液量検出ユニット2a(又は2b)或いは制御部21は、無線通信部24により、無線通信を介して移送ポンプ制御装置6と携帯端末7にそれぞれ通信接続される。記憶部22には、液量検出ユニット2a(又は2b)或いは制御部21に所定の制御処理を実行させる制御プログラムを格納する制御プログラム格納部221が設けられている。
【0017】
移送ポンプ制御装置6は、
図3に示すように、MPU、CPU等の制御部61と、HDD、SSD、ROM、RAM等で構成される記憶部62と、タッチパネル等の入力部63と、有線の通信接続等を介して移送ポンプ5a、5bに所定の制御指令を出力する出力I/F等の出力部64と、無線通信部65を備える。移送ポンプ制御装置6或いは制御部61は、無線通信部65により、無線通信を介して液量検出ユニット2a、液量検出ユニット2bと携帯端末7にそれぞれ通信接続される。
【0018】
記憶部62には、移送ポンプ制御装置6或いは制御部61に所定の制御処理を実行させる制御プログラムを格納する制御プログラム格納部621と、設定値が格納されている設定値格納部622が設けられている。本実施形態における設定値格納部622には、薬液タンク1aの下限液量値と、薬液タンク1aの上限液量値と、薬液タンク1bの下限液量値と、薬液タンク1bの上限液量値とが設定記憶されている。
【0019】
更に、本実施形態の注入薬液移送システムは、
図1及び
図4に示すように、タブレット端末等の携帯端末7を備える。携帯端末7は、CPU等の制御部71と、ROM、RAM、フラッシュメモリ等で構成される記憶部72と、タッチパネル等の入力部73と、入力部73を兼ねるタッチパネル、ディスプレイ等の出力部74と、携帯端末7を無線通信回線に接続する無線通信部75を備える。携帯端末7は、無線通信部75により、無線通信を介して無線通信を介して液量検出ユニット2a、液量検出ユニット2bと移送ポンプ制御装置6にそれぞれ通信接続され、薬液タンク1a、1bに設けられる無線通信部24と移送ポンプ制御装置6に設けられる無線通信部65の双方と無線通信可能になっている。携帯端末7の記憶部72には、制御部71と協働して携帯端末7の制御を担う制御プログラムを格納する制御プログラム格納部721が設けられている。
【0020】
携帯端末7は、薬液タンク1aの液量検出ユニット2aの液量センサ23が検出した液量値と、薬液タンク1bの液量検出ユニット2bの液量センサ23が検出した液量値のそれぞれを、無線通信で取り込んで表示可能であり、薬液タンク1aの第1薬液の貯留状態と薬液タンク1bの第2薬液の貯留状態を確認可能になっている。また、携帯端末7は、移送ポンプ制御装置6が検出する移送ポンプ5a、5bの稼働状態即ち運転中であるか停止中であるかを無線通信で取り込んで表示する。さらに携帯端末7は、移送ポンプ制御装置6の設定値格納部622に記憶されている薬液タンク1aの下限液量値、薬液タンク1bの下限液量値を含む所定データ、例えば設定値格納部622に書換可能に記憶されている薬液タンク1aの下限液量値と、薬液タンク1aの上限液量値と、薬液タンク1bの下限液量値と、薬液タンク1bの上限液量値を無線通信を介して書換可能になっており、携帯端末7における入力部73での所要値の入力、送信要求の入力に応じて設定値格納部622に格納されている所定値が所要値に書き換えられるようになっている。
【0021】
本実施形態の注入薬液移送システムで移送されて薬液タンク1aに貯留された第1薬液と、薬液タンク1bに貯留された第2薬液は、例えば特許文献1と同様の分配制御装置8、ポンプユニット9を用いて合流管10に供給され、合流管10の吐出側に接続されている注入管11に供給された第1薬液と第2薬液の混合液或いは注入材が、地山の注入孔の内部或いは地山の注入孔に打設された吐出孔を周壁に有する補強管の内部に注入されるようになっている(
図5参照)。
図5の例では、4個のポンプユニット9がそれぞれ分配制御装置8に接続されており、4個のポンプユニット9は、いずれも地山の同一の注入孔に注入材を注入するようになっている。
【0022】
それぞれのポンプユニット9は、分配制御装置8から送信される注入制御指令に応じて注入ポンプ93a、93bの駆動制御を実行する駆動制御部91と、駆動制御部91を無線或いは有線の通信回線に接続する通信部92と、薬液タンク1aから第1薬液を移送して移送路94aから注入する注入ポンプ93aと、薬液タンク1bから第2薬液を移送して移送路94bから注入する注入ポンプ93bを備える。注入ポンプ93aは、二液混合硬化タイプの注入材を構成する第1薬液を貯留している薬液タンク1aから第1薬液を吸い上げて移送路94aに吐出し、注入ポンプ93bは、二液混合硬化タイプの注入材を構成する第2薬液を貯留している薬液タンク1bから第2薬液を吸い上げて移送路94bに吐出する。
【0023】
二液混合硬化タイプの注入材を構成する第1薬液と第2薬液は、注入材の種類に応じて所定比率で吐出されるようにして、分配制御装置8或いは駆動制御部91で注入ポンプ93a、93bの注入動作が制御され、例えばウレタン系注入材では第1薬液:第2薬液=1:2(容積比率)、シリカレジン系注入材では第1薬液:第2薬液=1:1(容積比率)となるように、注入ポンプ93a、93bから吐出される第1薬液と第2薬液の吐出流量が調整される。
【0024】
第1薬液を移送する移送路94aの先端部と第2薬液を移送する移送路94bの先端部は第1薬液と第2薬液を合流させる合流管10に接続されている。注入ポンプ93a、93bは、第1薬液と第2薬液を合流管10に向かって吐出するように、分配制御装置8或いは駆動制御部91で注入動作を制御される。注入材を構成する第1薬液と第2薬液の混合液を吐出する合流管10の吐出側には地山に注入材を注入する注入管11が接続されている。尚、後述する第2実施形態でも、薬液タンク1a、1bから注入管11まで薬液を移送する構成は第1実施形態と同じである。
【0025】
移送ポンプ制御装置6は、液量検出ユニット2aと液量検出ユニット2bのそれぞれと常時通信を行い、薬液タンク1aの液量センサ23に相当する液量検出ユニット2aの液量センサ23から入力される液量値と、設定値格納部622に格納されている薬液タンク1aの下限液量値との対比を実行し、
図6に示すように、液量検出ユニット2aの液量センサ23から入力される液量値の薬液タンク1aの下限液量値への到達に応じて、移送ポンプ5aが運転開始するように制御し、薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aに第1薬液を移送する(S11、S12参照)。同様に、移送ポンプ制御装置6は、薬液タンク1bの液量センサ23に相当する液量検出ユニット2bの液量センサ23から入力される液量値と、設定値格納部622に格納されている薬液タンク1bの下限液量値との対比を実行し、液量検出ユニット2bの液量センサ23から入力される液量値の薬液タンク1bの下限液量値への到達に応じて、移送ポンプ5bが運転開始するように制御し、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bに第2薬液を移送する。
【0026】
薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aへの第1薬液の移送を開始した後、移送ポンプ制御装置6は、薬液タンク1aの液量検出ユニット2aの液量センサ23から入力される液量値と、設定値格納部622に格納されている薬液タンク1aの上限液量値との対比を実行し、入力される液量値の薬液タンク1aの上限液量値への到達に応じて、運転状態の移送ポンプ5aが運転停止するように制御し、薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aへの第1薬液の移送を停止する(S13、S14参照)。同様に、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bへの第2薬液の移送を開始した後、移送ポンプ制御装置6は、薬液タンク1bの液量検出ユニット2bの液量センサ23から入力される液量値と、設定値格納部622に格納されている薬液タンク1bの上限液量値との対比を実行し、入力される液量値の薬液タンク1bの上限液量値への到達に応じて、運転状態の移送ポンプ5bが運転停止するように制御し、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bへの第2薬液の移送を停止する。
【0027】
上述の薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aに第1薬液を移送する移送開始動作及び移送停止動作と、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bに第2薬液を移送する移送開始動作及び移送停止動作は、移送ポンプ制御装置6によってそれぞれ独立して実行される。即ち、本実施形態では、薬液タンク1a、1bと、薬液タンク1a、1bに設置される液量センサ23、23と、薬液貯留コンテナ3a、3bと、移送ポンプ5a、5bが2組設けられ、2組の運転動作が一つの移送ポンプ制御装置6で制御されている。尚、薬液タンクと、薬液タンクに設置される液量センサと、薬液貯留コンテナと、移送ポンプの組が3組以上の複数組設けられる場合にも、複数組の運転動作を一つの移送ポンプ制御装置で制御するようにすると好適である。
【0028】
また、薬液移送時の薬液貯留コンテナ3a、3bの取り替え作業を無くすため、薬液タンク1aに移送される第1薬液を貯留する薬液貯留コンテナ3aには、薬液貯留コンテナ3aの貯留可能量が薬液タンク1aの上限液量値と下限液量値との差以上であり、薬液タンク1bに移送される第2薬液を貯留する薬液貯留コンテナ3bには、薬液貯留コンテナ3bの貯留可能量が薬液タンク1bの上限液量値と下限液量値との差以上であるものを用いると好適である。また、産業廃棄物削減の観点から、薬液貯留コンテナ3a、3bには、それぞれ運搬して反復使用できるものを用いると好適である。
【0029】
また、薬液貯留コンテナ3a、3bの薬液の減り具合を容易に確認できるように、薬液貯留コンテナ3a、3bには、その側壁31が透光性材料で形成されているものを用いると好適であり、より好適には、周壁全体が透光性材料で形成されているものや、薬液収容槽の下端まで或いは下端近傍まで側壁31が透光性材料で形成されているものを用いると良い。
【0030】
第1実施形態の注入薬液移送システムによれば、薬液タンク1a、1bの液量の減少に応じて薬液貯留コンテナ3a、3bから薬液タンク1a、1bに自動的に適量の第1薬液、第2薬液をそれぞれ移送して供給することができ、注入材を構成する第1薬液、第2薬液を貯留する薬液タンク1a、1bに石油缶やドラム缶を用いて人力で薬液を供給する作業を無くすことができる。
【0031】
また、薬液貯留コンテナ3a、3bから薬液タンク1a、1bに第1薬液、第2薬液を移送する移送ポンプ5a、5bの複数組の動作を一つの移送ポンプ制御装置6で制御することができ、装置コストの低減、制御装置のハードウェア資源の有効活用を図ることができる。
【0032】
また、薬液貯留コンテナ3aの貯留可能量を薬液タンク1aの上限液量値と下限液量値との差以上とし、薬液貯留コンテナ3bの貯留可能量を薬液タンク1bの上限液量値と下限液量値との差以上とする場合には、薬液貯留コンテナ3a、3bを取り換える作業無しで、薬液タンク1a、1bの上限液量値と下限液量値との差に対応する量の第1薬液、第2薬液をそれぞれ移送することができる。また、薬液貯留コンテナ3a、3bを運搬して反復使用可能なものとすることにより、同じ薬液運搬コンテナ3a、3bを薬液収容容器として何度も利用することが可能となり、薬液を移し替える石油缶やドラム缶のような産業廃棄物を無くすことができる。
【0033】
また、薬液貯留コンテナ3a、3bの側壁31を透光性材料で形成することにより、薬液貯留コンテナ3a、3bが空になった状態や、薬液貯留コンテナ3a、3bの第1薬液や第2薬液の減り具合を容易に確認することができ、薬液貯留コンテナ3a、3bの取り換えのタイミングを容易に認識することができる。
【0034】
また、携帯端末7で薬液タンク1a、1bの液量センサ23、23が検出した液量値を無線通信で取り込んで表示することにより、現場から離れた遠隔地で地山への薬液注入状況や薬液移送が必要とされている程度、移送ポンプの運転状態等を随時確認することができる。また、携帯端末7で移送ポンプ制御装置6に記憶されている薬液タンク1a、1bの下限液量値を含む所定データを無線通信を介して書換可能とすることにより、現場状況の変化や薬液変更に応じて移送ポンプ5a、5bの制御条件を遠隔地から柔軟に変更することができる。
【0035】
〔第2実施形態の注入薬液移送システム〕
本発明による第2実施形態の注入薬液移送システムの基本的構成は第1実施形態と同様であり、
図7に示すように、二液混合硬化タイプの注入材を構成する第1薬液を貯留して供給する薬液タンク1a及び第2薬液を貯留して供給する薬液タンク1bと、各薬液タンク1a、1bに設置されて各薬液タンク1a、1bの液量の検出と検出した液量の送信を担う液量検出ユニット2a、2bと、薬液タンク1aに移送される第1薬液を貯留する薬液貯留コンテナ3a及び薬液タンク1bに移送される第2薬液を貯留する薬液貯留コンテナ3bと、薬液移送路4a、4bを介して各薬液貯留コンテナ3a、3bから各薬液タンク1aに第1薬液、第2薬液をそれぞれ移送する移送ポンプ5a、5bと、移送ポンプ5a及び移送ポンプ5bの運転開始と運転停止を制御する移送ポンプ制御装置6を備えるが、第1実施形態と異なり、第1薬液を移送する薬液移送路4aに移送ポンプ5aで移送される第1薬液の流量を計測する移送流量計51aと、第2薬液を移送する薬液移送路4bに移送ポンプ5bで移送される第2薬液の流量を計測する移送流量計51bが設けられている。
【0036】
更に、移送ポンプ制御装置6の設定値格納部622には、第1実施形態における薬液タンク1aの下限液量値と、薬液タンク1aの上限液量値と、薬液タンク1bの下限液量値と、薬液タンク1bの上限液量値の設定記憶に代えて、薬液タンク1aの下限液量値と、薬液移送路4aに設置された移送流量計51aの下限流量値と、薬液タンク1bの下限液量値と、薬液移送路4bに設置された移送流量計51bの下限流量値とが設定記憶されている。移送ポンプ制御装置6には、移送流量計51a、51bのそれぞれからリアルタイムで計測される流量値が入力され、取り込まれる。
【0037】
また、携帯端末7は、設定値格納部622に書換可能に記憶されている薬液タンク1aの下限液量値と、薬液移送路4aに設置された移送流量計51aの下限流量値と、薬液タンク1bの下限液量値と、薬液移送路4bに設置された移送流量計51bの下限流量値を無線通信を介して書換可能になっており、携帯端末7における入力部73での所要値の入力、送信要求の入力に応じて設定値格納部622に格納されている所定値が所要値に書き換えられるようになっている。
【0038】
そして、第2実施形態における移送ポンプ制御装置6は、液量検出ユニット2aと液量検出ユニット2bのそれぞれと常時通信を行い、薬液タンク1aの液量センサ23に相当する液量検出ユニット2aの液量センサ23から入力される液量値と、設定値格納部622に格納されている薬液タンク1aの下限液量値との対比を実行し、
図8に示すように、液量検出ユニット2aの液量センサ23から入力される液量値の薬液タンク1aの下限液量値への到達に応じて、移送ポンプ5aが運転開始するように制御し、薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aに第1薬液を移送する(S21、S22参照)。同様に、移送ポンプ制御装置6は、薬液タンク1bの液量センサ23に相当する液量検出ユニット2bの液量センサ23から入力される液量値と、設定値格納部622に格納されている薬液タンク1bの下限液量値との対比を実行し、液量検出ユニット2bの液量センサ23から入力される液量値の薬液タンク1bの下限液量値への到達に応じて、移送ポンプ5bが運転開始するように制御し、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bに第2薬液を移送する。
【0039】
薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aへの第1薬液の移送を開始した後、移送ポンプ制御装置6は、薬液移送路4aに設置されている移送流量計51aから入力される流量値と、設定値格納部622に格納されている移送流量計51aの下限流量値との対比を実行し、移送流量計51aから入力される流量値の移送流量計51aの下限流量値への到達に応じて、運転状態の移送ポンプ5aが運転停止するように制御し、薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aへの第1薬液の移送を停止する(S23、S24参照)。同様に、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bへの第2薬液の移送を開始した後、移送ポンプ制御装置6は、薬液移送路4bに設置されている移送流量計51bから入力される流量値と、設定値格納部622に格納されている移送流量計51bの下限流量値との対比を実行し、移送流量計51bから入力される流量値の移送流量計51bの下限流量値への到達に応じて、運転状態の移送ポンプ5bが運転停止するように制御し、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bへの第2薬液の移送を停止する。
【0040】
上述の第2実施形態の薬液貯留コンテナ3aから薬液タンク1aに第1薬液を移送する移送開始動作及び移送停止動作と、薬液貯留コンテナ3bから薬液タンク1bに第2薬液を移送する移送開始動作及び移送停止動作も、移送ポンプ制御装置6によってそれぞれ独立して実行される。尚、移送流量計51aの下限流量値、移送流量計51bの下限流量値は双方とも0に設定してもよく、0より若干大きい所定値に設定してもよい。その他の第2実施形態の注入薬液移送システムの構成及びその変形例は、第1実施形態の注入薬液移送システムの構成及びその変形例と同様である。
【0041】
第2実施形態の注入薬液移送システムによれば、薬液タンク1a、1bの液量の減少に応じて薬液貯留コンテナ3a、3bから薬液タンク1a、1bに自動的に適量の第1薬液、第2薬液をそれぞれ移送して供給することができ、注入材を構成する第1薬液、第2薬液を貯留する薬液タンク1a、1bに石油缶やドラム缶を用いて人力で薬液を供給する作業を無くすことができる。その他、第2実施形態の注入薬液移送システムは、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0042】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や変形例も含まれる。
【0043】
例えば第1、第2実施形態の注入薬液移送システムでは、二液混合硬化タイプの注入材を構成する第1薬液を貯留する薬液タンク1aと第2薬液を貯留する薬液タンク1bに対する注入薬液移送システムの例について説明したが、本発明の注入薬液移送システムには、注入材を構成する薬液を貯留して供給する単独の薬液タンクに単独の薬液貯留コンテナから薬液を移送する場合も含まれ、二液混合硬化タイプの注入材以外の注入材を構成する薬液を移送する場合も含まれる。
【0044】
また、本発明の注入薬液移送システムには、薬液タンクと、薬液タンクに設置される液量センサと、薬液貯留コンテナと、移送ポンプの組が複数組設けられる場合に、各組毎に運転動作を制御する移送ポンプ制御装置を設ける構成とするものも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば長尺先受け工法(AGF工法)や鏡補強工のようなトンネル補助工法等で地山に注入材を注入する際に、注入材を構成する薬液を薬液タンクに移送する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1a、1b…薬液タンク 2a、2b…液量検出ユニット 21…制御部 22…記憶部 221…制御プログラム格納部 23…液量センサ 24…無線通信部 3a、3b…薬液貯留コンテナ 31…側壁 4a、4b…薬液移送路 5a、5b…移送ポンプ 51a、51b…移送流量計 6…移送ポンプ制御装置 61…制御部 62…記憶部 621…制御プログラム格納部 622…設定値格納部 63…入力部 64…出力部 65…無線通信部 7…携帯端末 71…制御部 72…記憶部 721…制御プログラム格納部 73…入力部 74…出力部 75…無線通信部 8…分配制御装置 9…ポンプユニット 91…駆動制御部 92…通信部 93a、93b…注入ポンプ 94a、94b…移送路 10…合流管 11…注入管