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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057873
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04119 20160101AFI20240418BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240418BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/04 N
F24F6/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164845
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 孝頼
(72)【発明者】
【氏名】池田 健司
【テーマコード(参考)】
3L055
5H127
【Fターム(参考)】
3L055AA10
3L055DA05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BB02
5H127BB34
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】加湿効率を維持しつつ加湿器を小型化することができる加湿器を提供する。
【解決手段】加湿器は、厚さ方向に交互に積層される膜フレーム19と通路フレーム20とを備える。膜フレーム19は、水蒸気透過膜26が取り付けられた保持部27を備える。保持部27は、水蒸気透過膜26における厚さ方向の一方側の面を膜フレーム19の厚さ方向の一方側に露出させるとともに、水蒸気透過膜26における厚さ方向の他方側の面を膜フレーム19の厚さ方向の他方側に露出させるものとされる。通路フレーム20には、その通路フレーム20を厚さ方向に貫通する通路部32が形成されている。通路部32は、通路フレーム20における厚さ方向両側に位置する膜フレーム19の水蒸気透過膜26で挟まれることにより、それら水蒸気透過膜26に接する通路を形成し、その通路をウエットガス通路もしくはドライガス通路とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気透過膜における厚さ方向の一方側にドライガス通路が形成されるとともに、前記水蒸気透過膜における厚さ方向の他方側にウエットガス通路が形成され、前記ウエットガス通路を流れるウエットガスに含まれた水分を前記水蒸気透過膜に取り込みつつ、前記ドライガス通路を流れるドライガスに対し前記水蒸気透過膜から水分を付与する加湿器において、
厚さ方向に交互に積層される膜フレームと通路フレームとを備え、
前記膜フレームは、前記水蒸気透過膜が取り付けられた保持部を備え、
前記保持部は、前記水蒸気透過膜における厚さ方向の一方側の面を前記膜フレームの厚さ方向の一方側に露出させるとともに、前記水蒸気透過膜における厚さ方向の他方側の面を前記膜フレームの厚さ方向の他方側に露出させるものであり、
前記通路フレームには、その通路フレームを厚さ方向に貫通する通路部が形成されており、
前記通路部は、前記通路フレームにおける厚さ方向両側に位置する前記膜フレームの前記水蒸気透過膜で挟まれることにより、それら水蒸気透過膜に接する通路を形成し、その通路を前記ウエットガス通路もしくは前記ドライガス通路とするものである加湿器。
【請求項2】
前記膜フレームは、長方形状に形成されており、
前記保持部は、前記膜フレームの長辺方向の中央部に位置しており、
前記膜フレームにおける第1の対角線の両端部にはそれぞれ、前記膜フレームを厚さ方向に貫通する第1ガス孔が形成されており、
前記膜フレームにおける前記第1の対角線と交差する第2の対角線の両端部にはそれぞれ、前記膜フレームを厚さ方向に貫通する第2ガス孔が形成されており、
前記通路フレームは、長方形状に形成されており、
前記通路部は、前記通路フレームの対角線に沿って延びており、
前記通路フレームにおける前記通路部と交差する対角線の両端部にはそれぞれ、前記通路フレームを厚さ方向に貫通するガス孔が形成されており、
前記膜フレームにおける厚さ方向の一方側に位置する前記通路フレームの前記通路部は、前記膜フレームの前記第1ガス孔と繋がるものであり、
前記膜フレームにおける厚さ方向の他方側に位置する前記通路フレームの前記通路部は、前記膜フレームの前記第2ガス孔と繋がるものである請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記水蒸気透過膜は、前記保持部における厚さ方向の一方側の面に取り付けられるものであり、
前記保持部は、取付部と貫通部とを備え、
前記取付部は、前記水蒸気透過膜が取り付けられるものであり、
前記貫通部は、前記取付部を厚さ方向に貫通することにより、前記水蒸気透過膜を前記保持部における厚さ方向の他方側に露出させるものである請求項1に記載の加湿器。
【請求項4】
前記膜フレームは、長方形状に形成されており、
前記保持部は、前記膜フレームの長辺方向の中央部に位置するものであって、取付部と貫通部とを備え、
前記取付部は、その厚さ方向の一方側の面に前記水蒸気透過膜が取り付けられるものであり、
前記貫通部は、前記取付部を厚さ方向に貫通することにより、前記水蒸気透過膜を前記保持部における厚さ方向の他方側に露出させるものであり、
前記膜フレームにおける第1の対角線の両端部にはそれぞれ、前記膜フレームを厚さ方向に貫通する第1ガス孔が形成されており、
前記膜フレームにおける前記第1の対角線と交差する第2の対角線の両端部にはそれぞれ、前記膜フレームを厚さ方向に貫通する第2ガス孔が形成されており、
前記通路フレームは、長方形状に形成されており、
前記通路部は、前記通路フレームの対角線に沿って延びており、
前記通路フレームにおける前記通路部と交差する対角線の両端部にはそれぞれ、前記通路フレームを厚さ方向に貫通するガス孔が形成されており、
前記膜フレームにおける厚さ方向の一方側に位置する前記通路フレームの前記通路部は、前記膜フレームの前記第1ガス孔と繋がるものであり、
前記膜フレームにおける厚さ方向の他方側に位置する前記通路フレームの前記通路部は、前記膜フレームの前記第2ガス孔と繋がるものである請求項1に記載の加湿器。
【請求項5】
前記貫通部は、前記膜フレームの長辺方向に延びる複数のスリットである請求項4に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される加湿器は、水蒸気透過膜を用いてウエットガスに含まれる水分をドライガスに付与するものである。上記加湿器は、厚さ方向に交互に積層された水蒸気透過膜とセパレータ板とを備えている。このため、上記加湿器では、水蒸気透過膜がセパレータ板によって厚さ方向の両側から挟まれるとともに、セパレータ板が水蒸気透過膜によって厚さ方向の両側から挟まれている。
【0003】
セパレータ板における厚さ方向の一方側の面には、その面と接する水蒸気透過膜との間にドライガスを流すためのドライガス通路が形成されている。上記セパレータ板における厚さ方向の他方側の面には、その面と接する水蒸気透過膜との間にドライガスを流すためのドライガス通路が形成されている。これにより、所定の水蒸気透過膜における厚さ方向の一方側の面にドライガス通路が接するとともに、水蒸気透過膜における厚さ方向の他方側の面にウエットガス通路が接する。
【0004】
上記加湿器では、水蒸気透過膜の厚さ方向の一方側に形成されたウエットガス通路に含まれる水分を水蒸気透過膜に取り込みつつ、水蒸気透過膜の厚さ方向の他方側に形成されたドライガス通路を流れるドライガスに対し上記水蒸気透過膜から水分を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-121729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記加湿器におけるセパレータ板は、隣合う二つの水蒸気透過膜を仕切るとともに、ドライガス通路及びウエットガス通路を形成するという機能を有している。これらの機能をセパレータ板に持たせようとすると、セパレータ板が厚くなることは避けられない。このため、加湿器が水蒸気透過膜とセパレータ板との積層方向に大きくなり、そのことが加湿器を小型化するうえでの妨げとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する加湿器は、水蒸気透過膜における厚さ方向の一方側にドライガス通路が形成されるとともに、水蒸気透過膜における厚さ方向の他方側にウエットガス通路が形成される。そして、ウエットガス通路を流れるウエットガスに含まれた水分を水蒸気透過膜に取り込みつつ、ドライガス通路を流れるドライガスに対し水蒸気透過膜から水分を付与する。上記加湿器は、厚さ方向に交互に積層される膜フレームと通路フレームとを備える。膜フレームは、水蒸気透過膜が取り付けられた保持部を備える。保持部は、水蒸気透過膜における厚さ方向の一方側の面を膜フレームの厚さ方向の一方側に露出させるとともに、水蒸気透過膜における厚さ方向の他方側の面を膜フレームの厚さ方向の他方側に露出させるものとされる。通路フレームには、その通路フレームを厚さ方向に貫通する通路部が形成されている。通路部は、通路フレームにおける厚さ方向両側に位置する膜フレームの水蒸気透過膜で挟まれることにより、それら水蒸気透過膜に接する通路を形成し、その通路をウエットガス通路もしくはドライガス通路とする。
【0008】
上記構成によれば、通路フレームが膜フレームの厚さ方向の両側に配置される。そして、膜フレームの厚さ方向の一方側に位置する通路フレームの通路部によって形成される通路がウエットガス通路とされるとともに、膜フレームの厚さ方向の他方側に位置する通路フレームの通路部によって形成される通路がドライガス通路とされる。上記ウエットガス通路は、そのウエットガス通路を形成する通路フレームを厚さ方向両側から挟む膜フレームの水蒸気透過膜に対しそれぞれ接している。また、ドライガス通路は、そのドライガス通路を形成する通路フレームを厚さ方向両側から挟む膜フレームの水蒸気透過膜に対しそれぞれ接している。これらのことから、ウエットガス通路を流れるウエットガスに含まれた水分が、水蒸気透過膜を介して、ドライガス通路を流れるドライガスに効率よく付与される。また、通路フレームの通路部によって形成される通路が上記通路フレームの厚さ方向の両側に位置する膜フレームの水蒸気透過膜に対しそれぞれ接するという構造を採用することにより、通路フレームを薄くすることができる。このため、加湿器による加湿効率を維持しつつ加湿器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】加湿器が適用される燃料電池及びその周辺の構造を示す略図である。
図2図1の加湿器を示す斜視図である。
図3図1の加湿器の膜フレーム及び通路フレームを示す分解斜視図である。
図4図3の膜フレームを示す平面図である。
図5図3の膜フレームを示す底面図である。
図6図3の膜フレームの水蒸気透過膜、並びに、通路フレームのドライガス通路及びウエットガス通路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、加湿器の一実施形態について、図1図6を参照して説明する。
図1に示す燃料電池11は、セパレータによって隔てられた複数層の膜電極接合体を備えている。燃料電池11は、燃料ガス(この例では水素)及び酸化ガス(この例では大気)の供給を受け、それら水素と大気中の酸素との反応に基づいて発電を行う。
【0011】
燃料電池11のアノード側には、燃料側通路12が接続されている。この燃料側通路12の上流端は、水素を溜めるための水素タンク14に繋がっている。燃料側通路12は、燃料電池11のアノード側、より詳しくは膜電極接合体のアノード電極層とそれに隣合うセパレータとの間に、水素タンク14からの水素を供給する。また、燃料側通路12は、燃料電池11のアノード側から排気を流出させる。
【0012】
燃料電池11のカソード側には、大気側通路13が接続されている。この大気側通路13の上流端は大気に開放されている。大気側通路13は、燃料電池11のカソード側、より詳しくは膜電極接合体のカソード電極層とそれに隣合うセパレータとの間に、大気を供給する。また、大気側通路13は、燃料電池11のカソード側から排気を流出させる。
【0013】
燃料電池11では、アノード側に供給された水素とカソード側に供給された大気中の酸素との反応に基づき発電が行われる。更に、燃料電池11では、水素と酸素との反応に伴って水が生成される。こうして生成された水は、燃料電池11のアノード側から燃料側通路12を介して流出される排気に含まれるようになるとともに、燃料電池11のカソード側から大気側通路13を介して流出する排気にも含まれるようになる。
【0014】
ところで、燃料電池11は、その内部の膜電極接合体を湿潤状態とすることによって発電効率が高くなる性質を有している。このため、燃料側通路12と大気側通路13との少なくとも一方の通路に、燃料電池11から流出した排気(ウエットガス)に含まれる水分を取り出して同燃料電池11に流入する燃料ガスや酸化ガスといったガス(ドライガス)に上記水分を付与する加湿器を設けることが考えられる。ちなみに、この実施形態では、大気側通路13に加湿器15が設けられている。
【0015】
燃料電池11から大気側通路13を介して流出した排気(大気)は、燃料電池11内で生成された水を水蒸気の状態で含むウエットガスとなっている。そして、上記加湿器15は、上記排気中に含まれている水分(水蒸気)を取り出す。その後、加湿器15は、大気側通路13における燃料電池11よりも上流で流れる乾燥した大気(ドライガス)に対し、上記水分を付与して同大気をウエットガスとする。ウエットガスとなった大気は、燃料電池11のカソード側に供給される。これにより、燃料電池11内が湿潤状態とされる。
【0016】
一方、燃料側通路12は、燃料電池11よりも下流で気液分離器17に繋がっている。この気液分離器17は、燃料電池11から流出した排気(燃料電池11で用いられなかった水素)に含まれる水を同排気から分離する。そして、気液分離器17で水と分離した排気(水素)は、水素通路18を介して燃料側通路12における燃料電池11の上流に再循環される。
【0017】
<加湿器15>
図2に示すように、加湿器15は、多数の膜フレーム19と、多数の通路フレーム20と、二つの端部プレート21とを備えている。膜フレーム19、通路フレーム20、端部プレート21は、例えば樹脂、ステンレス、チタン、もしくはカーボンといった材料により、長方形状に形成されている。膜フレーム19と通路フレーム20とは、それらの厚さ方向に交互に積層されている。端部プレート21は、加湿器15における膜フレーム19と通路フレーム20との積層方向の端部に位置している。
【0018】
加湿器15における図2の下端に位置する端部プレート21は、ウエットガス導入口22及びドライガス導入口24を有している。加湿器15における図2の上端に位置する端部プレート21は、ウエットガス導出口23及びドライガス導出口25を有している。ウエットガスは、ウエットガス導入口22から加湿器15内に流入した後、ウエットガス導出口23から加湿器15外に流出する。また、ドライガスは、ドライガス導入口24から加湿器15内に流入した後、ドライガス導出口25から加湿器15外に流出する。
【0019】
ドライガス導入口24は、図1に示す大気側通路13における燃料電池11よりも上流、且つ加湿器15よりも上流に繋がっている。ドライガス導出口25は、大気側通路13における燃料電池11よりも上流、且つ加湿器15よりも下流に繋がっている。ウエットガス導入口22は、大気側通路13における燃料電池11よりも下流、且つ加湿器15よりも上流に繋がっている。ウエットガス導出口23は、大気側通路13における燃料電池11よりも下流、且つ加湿器15よりも下流に繋がっている。
【0020】
<膜フレーム19、通路フレーム20の構造>
図3に示すように、膜フレーム19は、水蒸気透過膜26が取り付けられた保持部27を備えている。保持部27は、膜フレーム19の長辺方向の中央部に位置している。水蒸気透過膜26は、保持部27における厚さ方向の一方側の面に取り付けられている。保持部27は、水蒸気透過膜26における厚さ方向の一方側の面を膜フレーム19の厚さ方向の一方側に露出させるとともに、水蒸気透過膜26における厚さ方向の他方側の面を膜フレーム19の厚さ方向の他方側に露出させるものとして機能する。
【0021】
図4及び図5は、膜フレーム19における厚さ方向についての一方側の面及び他方側の面を示している。膜フレーム19の保持部27は、取付部35とスリット36とを備えている。取付部35は、その厚さ方向の一方側の面、すなわち図4に示す面に接着剤等によって水蒸気透過膜26が取り付けられるものである。スリット36は、取付部35を厚さ方向に貫通しており、水蒸気透過膜26を保持部27における厚さ方向の他方側に露出させる貫通部として機能する。スリット36は、膜フレーム19の長辺方向に延びている。スリット36は、膜フレーム19の短辺方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0022】
膜フレーム19における第1の対角線L1の両端部にはそれぞれ、膜フレーム19を厚さ方向に貫通する第1ガス孔28,29が形成されている。膜フレーム19における第1の対角線L1と交差する第2の対角線L2の両端部にはそれぞれ、膜フレーム19を厚さ方向に貫通する第2ガス孔30,31が形成されている。
【0023】
図3に示すように、通路フレーム20には通路部32が形成されている。通路部32は、通路フレーム20を厚さ方向に貫通している。通路部32は、通路フレーム20における厚さ方向両側に位置する膜フレーム19の水蒸気透過膜26で挟まれることにより、それら水蒸気透過膜26に接する通路を形成する。この通路は、ウエットガスを流すウエットガス通路、もしくはドライガスを流すドライガス通路とされる。通路部32は、通路フレーム20の対角線L3に沿って延びている。通路フレーム20における通路部32と交差する対角線L4の両端部にはそれぞれ、通路フレーム20を厚さ方向に貫通するガス孔33,34が形成されている。
【0024】
<膜フレーム19、通路フレーム20の配置>
加湿器15における複数の膜フレーム19は、すべて同一の形状となっている。膜フレーム19及び通路フレーム20の積層方向に並ぶ複数の膜フレーム19は、その厚さ方向の表裏が一つずつ反転するように上記積層方向に沿って配置されている。また、加湿器15における複数の通路フレーム20も、すべて同一の形状となっている。膜フレーム19及び通路フレーム20の積層方向に並ぶ複数の通路フレーム20も、その厚さ方向の表裏が一つずつ反転するように上記積層方向に沿って配置されている。
【0025】
膜フレーム19における厚さ方向の一方側に位置する通路フレーム20の通路部32は、上記膜フレーム19の第1ガス孔28,29と繋がっている。また、膜フレーム19における厚さ方向の他方側に位置する通路フレーム20の通路部32は、上記膜フレーム19の第2ガス孔30,31と繋がっている。ただし、上記積層方向に並ぶ膜フレーム19の表裏が一つずつ反転している関係から、膜フレーム19における第1ガス孔28,29と第2ガス孔30,31とは、隣同士の膜フレーム19で位置関係が逆になっている。
【0026】
従って、図3における上から二つ目の膜フレーム19の上側に位置する通路フレーム20の通路部32は、上記上から二つ目の膜フレーム19の第2ガス孔30,31に繋がる。また、上記上から二つ目の膜フレーム19の下側に位置する通路フレーム20の通路部32は、上記上から二つ目の膜フレーム19の第1ガス孔28,29に繋がる。
【0027】
更に、上記上から二つ目の膜フレーム19の隣に位置する膜フレーム19、すなわち図3における下から二つ目の膜フレーム19に対し、上側に位置する通路フレーム20の通路部32は、上記下から二つ目の膜フレーム19の第2ガス孔30,31に繋がる。また、上記下から二つ目の膜フレーム19に対し、下側に位置する通路フレーム20の通路部32は、上記下から二つ目の膜フレーム19の第1ガス孔28,29に繋がる。
【0028】
通路フレーム20の通路部32の内部には、その通路部32を挟むように配置された膜フレーム19の水蒸気透過膜26によってウエットガス通路またはドライガス通路が形成される。
【0029】
例えば、図3の上から二つの膜フレーム19の上側に位置する通路フレーム20の通路部32の内部は、ドライガス通路37とされる。また、上記上から二つ目の膜フレーム19の下側に位置する通路フレーム20の通路部32の内部は、ウエットガス通路38とされる。更に、上記上から二つ目の膜フレーム19の隣に位置する膜フレーム19、すなわち図3における下から二つ目の膜フレーム19に対し、下側に位置する通路フレーム20の通路部32は、ドライガス通路37とされる。
【0030】
これにより、上記ウエットガス通路38は、そのウエットガス通路38を形成する通路フレーム20を厚さ方向両側から挟む膜フレーム19の水蒸気透過膜26に対しそれぞれ接する。また、上記ドライガス通路37は、そのドライガス通路37を形成する通路フレーム20を厚さ方向両側から挟む膜フレーム19の水蒸気透過膜26に対しそれぞれ接する。膜フレーム19は、その保持部27における厚さ方向の一方側の面に取り付けられた水蒸気透過膜26がドライガス通路37に面するように、通路フレーム20に対し配置されている。
【0031】
図2に示すウエットガス導入口22は、図3に破線L5で示す経路を介してウエットガス通路38に繋がっている。上記経路は、第1ガス孔28、第2ガス孔31、及びガス孔33等によって形成されている。図2に示すウエットガス導出口23は、図3に破線L6で示す経路を介してウエットガス通路38に繋がっている。上記経路は、第1ガス孔29、第2ガス孔30、及びガス孔33等によって形成されている。従って、ウエットガス導入口22から加湿器15内に導入されたウエットガスは、破線L5で示す経路を通って上記ウエットガス通路38に流れる。ウエットガスは、ウエットガス通路38を通過した後に破線L6で示す経路を通ってウエットガス導出口23に流れ、そのウエットガス導出口23から加湿器15の外部に導出される。
【0032】
図2に示すドライガス導入口24は、図3に破線L7で示す経路を介してドライガス通路37に繋がっている。上記経路は、第1ガス孔29、第2ガス孔30、及びガス孔34等によって形成されている。図2に示すドライガス導出口25は、図3に破線L8で示す経路を介してドライガス通路37に繋がっている。上記経路は、第1ガス孔28、第2ガス孔31、及びガス孔33等によって形成されている。従って、ドライガス導入口24から加湿器15内に導入されたドライガスは、破線L7で示す経路を通って上記ドライガス通路37に流れる。ドライガスは、ドライガス通路37を通過した後に破線L8で示す経路を通ってドライガス導出口25に流れ、そのドライガス導出口25から加湿器15の外部に導出される。
【0033】
次に、本実施形態の加湿器15の作用効果について説明する。
(1)図6は、加湿器15における図3の膜フレーム19の水蒸気透過膜26、並びに、通路フレーム20のドライガス通路37及びウエットガス通路38を示している。ウエットガスは、ウエットガス通路38を図6の矢印Y1方向に通過する際、スリット36を介して水蒸気透過膜26に接する。これにより、ウエットガスに含まれる水分が水蒸気透過膜26に取り込まれる。一方、ドライガスは、ドライガス通路37を図6の矢印Y2方向に通過する際、水蒸気透過膜26に接する。これにより、ドライガスには水蒸気透過膜26から水分が付与される。
【0034】
上記ウエットガス通路38は、膜フレーム19の厚さ方向の一方側に位置する通路フレーム20の通路部32によって形成されている。このウエットガス通路38は、同ウエットガス通路38が形成された通路フレーム20を厚さ方向両側から挟む膜フレーム19の水蒸気透過膜26によって挟まれており、それら水蒸気透過膜26に接している。また、上記ドライガス通路37は、膜フレーム19の厚さ方向の他方側に位置する通路フレーム20の通路部32によって形成されている。このドライガス通路37は、同ドライガス通路37が形成された通路フレーム20を厚さ方向両側から挟む膜フレーム19の水蒸気透過膜26によって挟まれており、それら水蒸気透過膜26に接している。
【0035】
以上のことから、ウエットガス通路38を流れるウエットガスに含まれた水分が、水蒸気透過膜26を介して、ドライガス通路37を流れるドライガスに効率よく付与される。また、通路部32によって形成されるドライガス通路37及びウエットガス通路38が通路フレーム20の厚さ方向の両側に位置する膜フレーム19の水蒸気透過膜26に対しそれぞれ接するという構造により、通路フレーム20を薄くすることができる。このため、加湿器15による加湿効率を維持しつつ、加湿器15を膜フレーム19と通路フレーム20との積層方向に小型化することができる。
【0036】
(2)通路フレーム20は、厚さ方向の表裏を反転させることにより、ウエットガス通路38を形成する通路フレーム20と、ドライガス通路37を形成する通路フレーム20とのいずれにも用いることができる。このように、ウエットガス通路38を形成する通路フレーム20とドライガス通路37を形成する通路フレーム20との共通化により、加湿器15を形成する部品の種類を少なく抑えることができるため、加湿器15の製造コストを低減することができる。
【0037】
(3)燃料電池11に供給されるドライガスと上記燃料電池11から排出されるウエットガスとの間で水分のやりとりをする加湿器15の場合、加湿器15を通過するドライガスとウエットガスとでは、ドライガスの方がウエットガスよりも高圧になる。このことを考慮して、膜フレーム19の保持部27(取付部35)における厚さ方向の一方側の面に取り付けられた水蒸気透過膜26がドライガス通路37に面するよう、膜フレーム19が通路フレーム20に対し配置されている。これにより、次のことを実現することができる。すなわち、ウエットガスとドライガスとの圧力差に基づく力が膜フレーム19の水蒸気透過膜26に作用したとき、水蒸気透過膜26を膜フレーム19における保持部27の取付部35によって支えることができる。
【0038】
(4)積層された膜フレーム19及び通路フレーム20では、膜フレーム19に対するドライガス通路37とウエットガス通路38との位置関係が逆になる場合がある。この場合でも、膜フレーム19における厚さ方向の表裏を反転して膜フレーム19を配置することにより、上記(3)と同様の効果を得ることができる。また、上述したようにドライガス通路37とウエットガス通路38との位置関係が入れ替わる場合でも、膜フレーム19における厚さ方向の表裏を反転することによって対応でき、上記位置関係の入れ替わりに対応した別の膜フレーム19を用意する必要はない。従って、加湿器15の部品の種類が増加することを抑制でき、その増加に伴って加湿器15の製造コストが増加することを抑制できる。
【0039】
(5)通路フレーム20の保持部27におけるスリット36は、通路フレーム20の対角線L3に沿って延びるドライガス通路37を流れるドライガスを、水蒸気透過膜26に接触させるためのものである。スリット36は、膜フレーム19の長辺方向に延びることにより、ほぼドライガス通路37の延びる方向に沿うようになる。このため、ドライガス通路37内におけるドライガスの流れがスリット36によって阻害されにくくなる。また、膜フレーム19の厚さ方向の表裏が反転するよう膜フレーム19の配置を変えても、スリット36が膜フレーム19の長辺方向に延びた状態となることに変わりはない。このため、膜フレーム19の厚さ方向の表裏が反転するよう膜フレーム19の配置を変えたとしても、ドライガス通路37内におけるドライガスの流れがスリット36によって阻害されにくい。
【0040】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・スリット36は、必ずしも膜フレーム19の長辺方向に延びている必要はない。
【0041】
・貫通部として所定の長さを有するスリット36を例示したが、これに代えて他の形状の貫通部を採用してもよい。
・膜フレーム19をその厚さ方向両側から挟む通路フレーム20は、厚さ方向の一方側のものと他方側のものとで、必ずしも同じ形状のものである必要はない。
【0042】
・通路フレーム20をその厚さ方向両側から挟む膜フレーム19は、厚さ方向の一方側のものと他方側のものとで、必ずしも同じ形状のものである必要はない。
・加湿器15を燃料側通路12に設けるようにしてもよい。この場合、燃料側通路12における燃料電池11よりも下流に流出する排気がウエットガスとなる一方、燃料側通路12における燃料電池11よりも上流の部分から同燃料電池11に流入する水素がドライガスとなり、上記加湿器15によって上記ウエットガスから上記ドライガスへの水分の受け渡しが行われる。
【符号の説明】
【0043】
11…燃料電池
12…燃料側通路
14…水素タンク
13…大気側通路
15…加湿器
17…気液分離器
18…水素通路
19…膜フレーム
20…通路フレーム
21…端部プレート
22…ウエットガス導入口
23…ウエットガス導出口
24…ドライガス導入口
25…ドライガス導出口
26…水蒸気透過膜
27…保持部
28,29…第1ガス孔
30,31…第2ガス孔
32…通路部
33,34…ガス孔
35…取付部
36…スリット
37…ドライガス通路
38…ウエットガス通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6