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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057874
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ロータリ型多方弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/085 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
F16K11/085 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164846
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 基正
(72)【発明者】
【氏名】能村 亮
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA23
3H067CC02
3H067CC45
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067FF11
3H067GG13
3H067GG23
(57)【要約】
【課題】バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを抑え、且つ、ロータの駆動トルクを小さくすることの可能なロータリ型多方弁を提供する。
【解決手段】ハウジング10は、円筒状のハウジング穴14を有する。複数のポート20は、ハウジング10においてハウジング穴14の軸心方向、周方向または径方向に配置される。少なくとも1つ以上の分割ロータ30は、ハウジング穴14の内側でハウジング穴14の軸心方向に配置される。連通路としての溝部40および切欠部50は、分割ロータ30に設けられ、所定のポート20と他のポート20との連通状態と遮断状態とを切り替える。シャフト60は、分割ロータ30をハウジング穴14の軸心CLまわりに回転させる。ここで、分割ロータ30とハウジング穴14の内壁との間に微小な隙間S2が形成されており、分割ロータ30はそれぞれ径方向に微小な移動が許容されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体流路の連通状態および遮断状態を切り替えることの可能なロータリ型多方弁であって、
円筒状のハウジング穴(14)を有するハウジング(10)と、
前記ハウジングにおいて前記ハウジング穴の軸心方向、周方向または径方向に配置され、前記ハウジングの外壁と内壁とを貫通する複数のポート(20)と、
前記ハウジング穴の内側で前記ハウジング穴の軸心方向に配置される少なくとも1つ以上の分割ロータ(30)であって、前記ハウジングに対して相対回転可能な前記分割ロータと、
前記分割ロータに設けられ、所定の前記ポートと他の前記ポートとの連通状態と遮断状態とを切り替える連通路(40、50)と、
前記分割ロータを前記ハウジング穴の軸心まわりに回転させるシャフト(60)と、を備え、
前記分割ロータと前記ハウジング穴の内壁との間に微小な隙間(S2)が形成されており、前記分割ロータはそれぞれ径方向に微小な移動が許容されているロータリ型多方弁。
【請求項2】
前記分割ロータと前記シャフトとの相対回転を規制し、前記シャフトの回転を前記分割ロータに伝達する規制部(70)をさらに備え、
前記分割ロータは、前記シャフトが挿通する挿通孔(35、36)を有し、
前記シャフトの外径(D1)と前記挿通孔の内径(D2)との差は、前記分割ロータの径方向の外縁を周方向に結んだ仮想円の外径(D3)と前記ハウジング穴の内径(D4)との差と同じか又は大きい、請求項1に記載のロータリ型多方弁。
【請求項3】
複数の前記分割ロータは、
前記ハウジング穴の軸心方向に配置される複数のブロック(31)と、
複数の前記ブロック同士の間に配置される複数のプレート(32)と、を有し、
前記連通路は、
複数の前記ブロックのうち少なくとも1つに設けられ、所定の前記ポートと他の前記ポートとの連通状態と遮断状態を切り替える溝部(40)と、
複数の前記プレートのうち少なくとも1つに設けられ、前記ハウジング穴の軸心方向に前記プレートを挟んで配置される所定の前記ブロックの前記溝部と他の前記ブロックの前記溝部とを連通する切欠部(50)とを有する、請求項1または2に記載のロータリ型多方弁。
【請求項4】
複数の前記分割ロータは、前記溝部の位置が異なる複数の前記ブロック、および、前記切欠部の位置が異なる複数の前記プレートの少なくとも一方の配置、形状を替えることで、複数の前記ポートの連通パターンを変更可能に構成されている、請求項3に記載のロータリ型多方弁。
【請求項5】
複数の前記プレートは、
複数の前記プレートのうち前記ハウジング穴の軸心方向の一方側または他方側に配置され、前記ハウジングに対して相対回転が規制されている固定プレート(321、322)と、
複数の前記プレートのうち前記ハウジング穴の軸心方向の一方側または他方側の間に配置され、前記ハウジングに対して相対回転可能な回転プレート(323)と、を有し、
前記固定プレートに対して荷重を印加し、前記固定プレートと前記回転プレートと複数の前記ブロックを前記ハウジング穴の軸心方向の一方側から他方側に押圧する押圧部材(80)をさらに備える、請求項3に記載のロータリ型多方弁。
【請求項6】
前記ハウジングは、
前記ハウジング穴を有するシリンダ(16)と、
前記シリンダを格納する格納穴(17)を有し、前記ハウジングの外殻を形成する外部ハウジング(15)と、を有する、請求項1または2に記載のロータリ型多方弁。
【請求項7】
前記シリンダと前記分割ロータとは同一の材質で形成されている、請求項6に記載のロータリ型多方弁。
【請求項8】
前記ハウジング穴の軸心に垂直な断面視において軸心を中心として180°以内の所定の範囲に複数の前記ポートが設けられている、請求項1または2に記載のロータリ型多方弁。
【請求項9】
前記ハウジングに対して前記シャフトを複数の前記ポートが設けられている側へ押し付ける押付部材(90、91)をさらに備える、請求項8に記載のロータリ型多方弁。
【請求項10】
電気自動車に用いられる熱分配システムにおいて、
請求項1に記載の前記ロータリ型多方弁と、
前記ロータリ型多方弁の備える複数の前記ポートに接続される前記流体流路(106)と、
前記流体流路の途中に接続される電池(105)、電気駆動機器(102、103)または空調機器(104)と、を備え、
前記ロータリ型多方弁が備える前記分割ロータと前記シャフトを軸心まわりに回転させ、所定の位置に設定することで、適宜必要な機器に必要なタイミングで温水および冷水を循環させることの可能な熱分配システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ型多方弁、および、それを用いた熱分配システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、電池、駆動系、電気系、空調など様々な吸廃熱を必要とする機器があり、状況に応じて冷水および温水(以下「冷温水」という)を様々なパターンで流通させ、熱マネージメントを行うことで電費の向上を図っている。この冷温水の流通パターンを切り替えるためのバルブとして、多数のポートを有し多数の流通パターンを実現可能な多方弁を用いればシステムを簡素化することが可能となる。そのような多方弁の成立性では、ロータリ型のバルブが有利である。ロータリ型のバルブは、円筒状の穴を有するハウジングの内側にロータを配置し、そのロータを軸心まわりに回転させることで、流通パターンを切り替える構成である。このロータリ型のバルブは、ハウジングの円筒穴の軸方向および径方向に流路を増やすことや、流路の繋がり方をロータ内で任意に設定することが出来るので、多方弁における多数のポートおよび多数の流路パターンの成立性に有利である。それに対し、ディスク型またはボール弁型のバルブでは、スペース効率が悪くなるので多方弁の成立性に不利である。
【0003】
特許文献1には、ロータリ型のバルブの一例が開示されている。特許文献1では、ハウジングがアウターハウジングと固定部材(fixing element)で構成されており、ロータはバルブコアと呼ばれている。特許文献1のバルブは、ロータの外周に設けられたシール部材(sealing element)が、ハウジングを構成する固定部材の内周面に接触し、バルブ内で複数の流路間における流体の漏れを防ぐ構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3550189号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者は、特許文献1に記載のバルブの構成に関し、次の様な課題を見出した。それは、特許文献1のバルブの構成においてハウジングの円筒穴の軸心方向に流路の段数を増やして多方弁とした場合、それに伴ってシール部材の長さも非常に長くなる。そのようなシール部材とハウジングの内周面とに面圧が加わり、両者の摺動摩擦が極めて大きくなることで、ロータを回転させる駆動力が非常に大きくなる。そのため、ロータを回転させるアクチュエータが大型化し、その駆動に必要な電力も増大してしまう。
一方、仮に、特許文献1のバルブの構成において、ロータの外周のシール部材を廃止すれば、バルブ内で複数の流路間における流体の漏れが増加してしまう。特に、多方弁とした場合、ハウジングとロータの円筒度の公差が大きくなるので、その隙間から、バルブ内で複数の流路間における流体の漏れがより増加してしまう。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを抑え、且つ、ロータの駆動トルクを小さくすることの可能なロータリ型多方弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明によると、複数の流体流路の連通状態および遮断状態を切り替えることの可能なロータリ型多方弁は、ハウジング(10)、複数のポート(20)、分割ロータ(30)、連通路(40、50)およびシャフト(60)を備える。ハウジングは、円筒状のハウジング穴(14)を有する。複数のポートは、ハウジングにおいてハウジング穴の軸心方向、周方向または径方向に配置され、ハウジングの外壁と内壁とを貫通する。ハウジング穴の内側でハウジング穴の軸心方向に配置される少なくとも1つ以上の分割ロータは、ハウジングに対して相対回転可能である。連通路は、分割ロータに設けられ、所定のポートと他のポートとの連通状態と遮断状態とを切り替える。シャフトは、分割ロータをハウジング穴の軸心まわりに回転させる。ここで、分割ロータとハウジング穴の内壁との間に微小な隙間(S2)が形成されており、分割ロータは径方向に微小な移動が許容されている。
【0008】
これによれば、発明者は、鋭意研究の末、ロータリ型多方弁にクリアランスシール構造を採用した。クリアランスシール構造とは、ハウジングとロータとの隙間を小さくして、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを抑制する構造である。しかし、ロータリ型多方弁はハウジングとロータが軸心方向に長いことから、クリアランスシール構造を採用した場合、ロータおよびハウジングの円筒度の公差が厳しくなる(即ち、円筒度の公差が大きくなる)といった新たな課題が生じる。そこで、発明者は、クリアランスシール構造を採用するに当たり、分割ロータの径方向の微小な移動を許容する構成としたことで、その課題を解決した。すなわち、少なくとも1つ以上の分割ロータはハウジング穴の内壁に倣って自己調心する。そのため、このロータリ型多方弁は、分割ロータおよびハウジングの円筒度の公差を緩和できると共に、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを小さく抑えることができる。また、クリアランスシール構造により、分割ロータとハウジング穴の内壁との間に微小な隙間が形成されるので、ハウジング穴の内壁と分割ロータとの摺動摩擦が低減する。したがって、ロータリ型多方弁は、分割ロータとシャフトを軸心まわりに回転するための駆動トルクを小さくすることができる。
【0009】
請求項10に係る発明によると、電気自動車に用いられる熱分配システムは、請求項1に記載のロータリ型多方弁と、そのロータリ型多方弁の備える複数のポートに接続される流体流路(106)と、その流体流路の途中に接続される電池(105)、電気駆動機器(102、103)または空調機器(104)とを備える。そして、ロータリ型多方弁が備える分割ロータとシャフトを軸心まわりに回転させ、所定の位置に設定することで、適宜必要な機器に必要なタイミングで温水および冷水を循環させることが可能である。
【0010】
これによれば、熱分配システムは、請求項1に記載のロータリ型多方弁を備えることで、ロータリ型多方弁のシャフトを駆動するアクチュエータの体格を小型化すると共に、その駆動に消費される電力を低減することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るロータリ型多方弁の側面図である。
図2図1のII―II線の断面図である。
図3図2に示したハウジングと分割ロータとシャフトを分けた図である。
図4図2のIV―IV線の断面図である。
図5図2のV―V線の断面図である。
図6】第1実施形態に係るロータリ型多方弁が備える分割ロータとシャフトを組み付けた状態を示す側面図である。
図7】第1実施形態に係るロータリ型多方弁が備える分割ロータの分解図であり、ブロックとプレートを軸心方向から視た図である。
図8】第1実施形態に係るロータリ型多方弁が備える分割ロータを径方向外側から視た状態を周方向に展開した展開図である。
図9】第2実施形態に係る熱分配システムを説明するための説明図である。
図10】第3実施形態に係るロータリ型多方弁の断面図であり、図2に相当する部位を示す図である。
図11図10のXI―XI線の断面図である。
図12】第4実施形態に係るロータリ型多方弁の断面図であり、図11に相当する部位を示す図である。
図13図12のXIII―XIII線の断面図である。
図14】第5実施形態に係るロータリ型多方弁が備えるハウジングの斜視図である。
図15】第5実施形態に係るロータリ型多方弁が備える分割ロータとシャフトを組み付けた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態のロータリ型多方弁は、複数の流体通路の連通状態および遮断状態を切り替えることの可能なバルブであり、詳細には、多数のポートを有し、多数の流通パターンを実現した、いわゆる超多方弁である。
【0015】
まず、第1実施形態のロータリ型多方弁の構成について説明する。図1図5に示すように、ロータリ型多方弁は、ハウジング10、複数のポート20、少なくとも1つ以上の分割ロータ30、連通路としての溝部40および切欠部50、シャフト60、規制部70、並びに押圧部材80などを備えている。
【0016】
図1図4および図5に示すように、ハウジング10は、有底筒状に形成され、底部11と、その底部11から筒状に延びる筒部12を有している。ハウジング10の筒部12のうち底部11とは反対側の部位には、蓋部材13が液密に固定されている。ハウジング10は、内側に円筒状の穴であるハウジング穴14を有している。以下の説明では、ハウジング穴14の軸心CLが延びる方向を「軸心方向」といい、ハウジング穴14において軸心CLに垂直な断面視の径方向を「径方向」といい、ハウジング穴14において軸心CLに垂直な断面視の周方向を「周方向」という。
【0017】
図1図3に示すように、複数のポート20は、ハウジング10の外壁と内壁とを貫通する流路開口部であり、ハウジング10において軸心方向、周方向、径方向の任意の位置に配置することが可能である。また、複数のポート20の個数についても任意に設定可能である。第1実施形態では、例えば10個のポート20が、周方向に2個、軸心方向に5段配置されている。また、図2に示すように、第1実施形態では、複数のポート20は、ハウジング穴14の軸心CLに垂直な断面視において軸心CLを中心として180°以内(詳細には、90°以内)の所定の範囲に設けられている。
【0018】
なお、ハウジング10は、複数のポート20の段数(即ち、軸心方向の数)が増えるほど軸心方向に長くなるので、円筒度の公差が大きくなるといった課題がある。
【0019】
図4図7に示すように、分割ロータ30は、ハウジング穴14の内側で軸心方向に積層配置されている。分割ロータ30は、ハウジング10に対して相対回転可能となっている。図2および図5に示すように、分割ロータ30とハウジング穴14の内壁との間には微小な隙間S2が設けられており、クリアランスシール構造を構成している。クリアランスシール構造とは、ハウジング穴14の内壁と分割ロータ30との隙間を小さくして、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを抑制する構造である。なお、微小な隙間S2は、製品(即ち、所定の熱分配システムに適用されるロータリ型多方弁)に許容される流体の漏れ量などによって設定される。第1実施形態では、微小な隙間S2は、例えば数十μmに設定されている。
【0020】
第1実施形態では、複数の分割ロータ30は、複数のブロック31と複数のプレート32とを有している。複数のブロック31は、ハウジング穴14の軸心方向に配置されている。複数のプレート32は、複数のブロック31同士の間に配置されている。すなわち、複数のブロック31と複数のプレート32とは、ハウジング穴14の内側で軸心方向に交互に配置されている。
【0021】
図2および図3に示すように、複数のブロック31はそれぞれ、中央部33と、その中央部33から放射状に延びる壁部34とを有している。ブロック31の中央部33には、シャフト60が挿通する挿通孔35が設けられている。ブロック31の有する周方向に隣り合う壁部34同士の間に連通路としての溝部40が形成される。以下の説明では、便宜上、図4図7に示した5個のブロック31を、図の上から順に第1ブロック31a、第2ブロック31b・・・第5ブロック31eと呼ぶことがある。
【0022】
複数のプレート32の中央にも、複数のブロック31と同様に、シャフト60が挿通する挿通孔36が設けられている。複数のプレート32のうち軸心方向の一方側のプレート32と他方側のプレート32は、ハウジング10に対して相対回転が規制された固定プレートである。以下の説明では、便宜上、固定プレートのうち、蓋部材13側に配置されたものを第1固定プレート321と呼び、底部11側に配置されたものと第2固定プレート322と呼ぶ。なお、ハウジング10の底部11と第2固定プレート322との間には、不図示のシール部材が設けられている。
【0023】
複数のプレート32のうち第1固定プレート321と第2固定プレート322の間に配置されたプレート32は、ハウジング10に対して相対回転可能な回転プレート323である。回転プレート323には、外周縁から中心側に切り欠かれた切欠部50が設けられている。なお、切欠部50の形状は、上記のものに限らず、例えば回転プレート323を板厚方向に貫通する孔でもよい。
【0024】
分割ロータ30に設けられる連通路としての溝部40と切欠部50は、所定のポート20と他のポート20との連通状態と遮断状態とを切り替えるものである。具体的に、溝部40は、複数のブロック31のうち少なくとも1つに設けられ、所定のポート20と他のポート20との連通状態と遮断状態とを切り替えるものである。図7に示すように、第1実施形態では、溝部40は全てのブロック31に、それぞれ任意の数にて設けられている。また、第2ブロック31b、第3ブロック31c、第4ブロック31dには、周方向に隣り合う壁部34同士の距離が遠く配置され、溝部40が周方向に大きく形成されたものがある。以下の説明では、溝部40のうち周方向に大きく形成されたものを「周方向連通溝部41」と呼ぶ。ハウジング10の周方向に隣り合う複数のポート20に周方向連通溝部41が跨ると、その複数のポート20同士は、周方向連通溝部41を経由して連通する。
【0025】
切欠部50は、複数のプレート32のうち少なくとも1つに設けられ、軸心方向にプレート32を挟んで配置される所定のブロック31の溝部40と他のブロック31の溝部40とを連通するものである。なお、第1実施形態では、切欠部50は全ての回転プレート323に、それぞれ任意の数にて設けられている。
【0026】
図4および図5に示すように、シャフト60は、軸心方向の一方の端部が蓋部材13に設けられた軸受61により回転可能に支持され、他方の端部がハウジング10の底部11に回転可能に支持されている。そして、シャフト60の一方の端部は、蓋部材13よりも外側に突出している。シャフト60は、蓋部材13よりも外側に突出した部位63に不図示のアクチュエータからトルクを印加されて、軸心CLまわりに回転する。
【0027】
図2および図5に示すように、回転プレート323とブロック31とシャフト60とは、規制部70によって相対回転が規制されている。規制部70は、径方向外側の部位が回転プレート323およびブロック31に設けられた嵌合溝71に嵌合し、径方向内側の部位がシャフト60に設けられた嵌合溝72に嵌合している。規制部70は、シャフト60の回転を、分割ロータ30の有する回転プレート323およびブロック31に伝達する。したがって、シャフト60が軸心CLまわりに回転すると、それに伴って回転プレート323とブロック31も回転する。なお、規制部70は、シャフト60に対する回転プレート323およびブロック31の軸心方向の移動を規制していない。また、規制部70は、嵌合溝71、72よりも径方向に小さく形成されているので、シャフト60に対する回転プレート323およびブロック31の径方向の僅かな移動が許容されている。
【0028】
図4および図5に示すように、蓋部材13と第1固定プレート321との間に配置される押圧部材80は、例えば圧縮コイルスプリングにより構成されている。押圧部材80は、その一端が蓋部材13に係止され、他端が第1固定プレート321に係止されている。押圧部材80は、第1固定プレート321に対して軸心方向底部11側に荷重を印加している。上述したように、分割ロータ30とハウジング穴14の内壁との間には微小な隙間S2が設けられている。そのため、押圧部材80が第1固定プレート321に印加した荷重は、ハウジング穴14の内壁と分割ロータ30との摩擦等によって損失することが殆どない。したがって、押圧部材80は、第1固定プレート321と回転プレート323と複数のブロック31を、軸心方向の一方側から他方側に向けてほぼ同一の押圧力を維持したまま第2固定プレート322まで押圧することが可能である。
【0029】
ここで、図3に示すように、シャフト60の外径D1と挿通孔35、36の内径D2との差は、分割ロータ30(即ち、ブロック31およびプレート32)の径方向の外縁を周方向に結んだ仮想円の外径D3とハウジング穴14の内径D4との差と同じか又は大きく形成されている。そのため、図2の拡大図に示すように、シャフト60の軸心CLと分割ロータ30の軸心CLとが一致している状態では、シャフト60の外壁と挿通孔35、36の内壁との隙間S1は、分割ロータ30の外壁とハウジング穴14の内壁との隙間S2と同じか又は大きいものとなる。したがって、分割ロータ30は径方向に微小な移動が許容されている。その結果、分割ロータ30の円筒度の公差およびハウジング10の円筒度の公差が比較的大きい場合でも、複数の分割ロータ30はそれぞれハウジング穴14の内壁に倣って自己調心する。そのため、このロータリ型多方弁は、分割ロータ30の円筒度の公差およびハウジング10の円筒度の公差を緩和できると共に、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを小さく抑えることができる。
【0030】
次に、ロータリ型多方弁の作動について、図6図8を参照しつつ説明する。
【0031】
図6は、分割ロータ30とシャフト60を組み付けた状態を示す側面図である。図6では、ハウジング10に対して分割ロータ30とシャフト60を所定の位置に回転させたときのハウジング10のポート20の位置を一点鎖線で示している。
【0032】
また、図8は、分割ロータ30を径方向外側から視た状態を周方向に展開した展開図である。図8では、第1ブロック31aに設けられた溝部40に対し、説明の便宜上、a1~j1の符号を付している。また、第2~第5ブロック31b~31eに設けられた溝部40のうち、e1の軸心方向に並ぶものにe2~e5の符号を付し、f1の軸心方向に並ぶものにf2~f5の符号を付している。なお、e4とf4は1つの周方向連通溝部41である。さらに、図8では、複数の溝部40が連通している箇所を、2つの黒点を太線で繋いだ記号で示している。なお、周方向連通溝部41についても同様の記号で示している。図8でも、ハウジング10に対して分割ロータ30とシャフト60を所定の位置に回転させたときのハウジング10のポート20の位置を一点鎖線で示している。なお、ハウジング10に対して分割ロータ30とシャフト60を回転させることで、分割ロータ30とポート20との相対的な位置関係は、図8の左右方向に変化する。
【0033】
図8に示した状態では、e2とe3の溝部40が連通し、f2とf3の溝部40が連通し、e4とf4の溝部40(即ち、周方向連通溝部41)が連通している。一方、e1、f1、e5、f5の溝部40はどこにも連通していない。そのため、この状態では、連通する溝部40に対応するポート20同士は流体の流れが許容されており、どこにも連通していない溝部40に対応するポート20は流体の流れが遮断されている。なお、ハウジング10に対して分割ロータ30とシャフト60を回転させると、分割ロータ30とポート20との相対的な位置関係が変化するので、複数のポート20の連通状態および遮断状態が切り替わる。このように、ロータリ型多方弁は、複数の流体通路の連通状態および遮断状態を切り替え、多数の流通パターンを実現することが可能である。
【0034】
以上説明した第1実施形態のロータリ型多方弁は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態では、ロータリ型多方弁は、ハウジング穴14の内側に分割ロータ30を配置した構成である。その分割ロータ30とハウジング穴14の内壁との間には微小な隙間S2が形成されており、分割ロータ30は径方向に微小な移動が許容されている。
これによれば、クリアランスシール構造を採用したロータリ型多方弁において、分割ロータ30はハウジング穴14の内壁に倣って自己調心する。そのため、このロータリ型多方弁は、分割ロータ30およびハウジング10の円筒度の公差を緩和できると共に、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れを小さく抑えることができる。また、クリアランスシール構造により、分割ロータ30とハウジング穴14の内壁との間に微小な隙間S2が形成されるので、ハウジング穴14の内壁と分割ロータ30との摺動摩擦が低減する。したがって、ロータリ型多方弁は、分割ロータ30とシャフト60を軸心CLまわりに回転するための駆動トルクを小さくすることができる。
【0035】
(2)第1実施形態では、シャフト60の外径D1と挿通孔35、36の内径D2との差は、分割ロータ30の径方向の外縁を周方向に結んだ仮想円の外径D3とハウジング穴14の内径D4との差と同じか又は大きい。なお、差は絶対値で比較したものである。
これによれば、シャフト60の外壁と挿通孔35、36の内壁と隙間S1は、分割ロータ30の外縁とハウジング穴14の内壁との隙間S2と同じか又は大きいものとなる。そのため、シャフト60と共に分割ロータ30が軸心CLまわりに回転する際、分割ロータ30の外縁がハウジング穴14の内壁に接すると、その分割ロータ30はハウジング穴14の内壁に干渉しない位置に自己調心することが可能である。
【0036】
(3)第1実施形態では、複数の分割ロータ30は、ハウジング穴14の軸心方向に配置される複数のブロック31と、複数のブロック31同士の間に配置される複数のプレート32を有する。複数のブロック31のうち少なくとも1つに溝部40が設けられ、複数のプレート32のうち少なくとも1つに切欠部50が設けられる。
これによれば、ブロック31に設けた溝部40(具体的には、周方向連通溝部41)により、所定のポート20と他のポート20とを、ハウジング穴14の周方向または径方向に連通させることが可能である。また、プレート32に設けた切欠部50により、所定のブロック31が有する溝部40と他のブロック31が有する溝部40とを、ハウジング穴14の軸心方向に連通させることが可能である。そのため、複数のブロック31の溝部40と複数のプレート32の切欠部50を組み合わせることで、任意の連通パターンを実現できる。
【0037】
ところで、プレート32に切欠き部50が無く、プレート32表裏で圧力差が大きくなった場合(例えば図8に示した状態で、e3,f3に低圧、e4,f4に高圧の流体が流れている場合)、ブロック31とプレート32が離間し、本来シールしたい流路に漏れが生じる恐れがある。
【0038】
(4)それに対し、第1実施形態では、押圧部材80が、第1固定プレート321に対して荷重を印加し、第1固定プレート321と回転プレート323と第2固定プレート322と複数のブロック31をハウジング穴14の軸心方向の一方側から他方側に押圧する構成である。
これによれば、ハウジング10内に流れる流体の圧力差が大きくなった場合でも、複数のブロック31と複数のプレート32がハウジング穴14の軸心方向に離れることを防ぐことが可能である。これにより、ロータリ型多方弁は、ハウジング10内での複数の流路間における流体の漏れを抑制できる。また、押圧部材80から荷重が印加される第1固定プレート321は、ハウジング10に対して相対回転が規制されているので、押圧部材80と第1固定プレート321との摩耗を防ぐことが可能である。したがって、ロータリ型多方弁は、信頼性を確保できる。
【0039】
ところで、上記特許文献1に開示されたロータリ型バルブのようにロータの外周に設けたシール部材とハウジング穴14の内壁とが所定の面圧で摺接する構成では、シール部材の長さ分、ゴムの弾性変形の復元力と摩擦係数に応じた摩擦力が積み重なる。そのため、多方弁のポート20数が軸心方向に増えれば増えるほど押圧部材80の押付力を増加しなければならず、その結果、ロータの回転に大きな駆動トルクを必要とすることになる。
【0040】
それに対し、第1実形態のロータリ型多方弁は、クリアランスシール構造としたことで、多方弁の段数がどれだけ増えても押圧部材80の押付力は理論上一定値で良い。この点でも、クリアランスシール構造と分割ロータ構造とは相性が良く、分割ロータ30とシャフト60の回転に必要な駆動トルクを小さくできる。
【0041】
(5)第1実施形態では、ハウジング穴14の軸心CLに垂直な断面視において軸心CLを中心として180°以内の所定の範囲に複数のポート20が設けられている。
これによれば、例えば、ロータリ型多方弁を車両に搭載する際に、車両側の配管の取り回しを容易にし、ロータリ型多方弁のポート20と車両側の配管との組み付けの作業性を向上できる。
また、この構成により、例えばポンプやチラーなどの熱マネージメント機器とロータリ型多方弁とをモジュール化にする場合にも有効である。すなわち、ロータリ多方弁は一方向にポート20が纏めて配置されているので、そのポート20が配置されている面を熱マネージメント機器の流体流路の開口部が設けられた面に結合する事で配管を用いずに連結できる。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態で説明したロータリ型多方弁を熱分配システムに適用したものである。
【0043】
図9に示すように、ロータリ型多方弁は、電気自動車に用いられる熱分配システムに適用することが可能である。熱分配システムは、電気自動車が備える電気駆動機器、空調機器、電池105などの吸廃熱を必要とする機器に対し、状況に応じて冷温水(例えばLLC:Long Life Coolantの略)を様々なパターンで流通し、熱マネージメントを行うシステムである。図9では、熱分配システムが備える機器として、ラジエータ101、モータジェネレータ102(即ち、電気駆動機器の一例)、インバータ103(即ち、電気駆動機器の一例)、チラー104(即ち、空調機器の一例)、電池105が示されている。それらの機器は、流体流路としての配管106を経由してロータリ型多方弁と接続されている。なお、流体流路としての配管の途中には、流体ポンプ107および不図示の液貯めなどが設けられている。
【0044】
ロータリ型多方弁は、ハウジング10に対してシャフト60と分割ロータ30とを軸心CLまわりに回転させ、所定の位置に設定することで、適宜必要な機器に必要なタイミングで冷温水を循環させることが可能である。なお、図9に示したものは、熱分配システムの一部であり、実際には、ロータリ型多方弁に対し、より多くの配管106と吸廃熱を必要とする機器などが接続されている。
【0045】
ところで、電動自動車の熱マネージメントシステムにおいては、各車両メーカ毎に様々なシステム構成があり、それらに合わせて多方弁の連通パターンを多種類用意する必要がある。それに対し、第2実施形態では、図7および図8で示したように、種々のパターンのプレート32とブロック31を組み合わせる事により、あらゆる連通パターンを実現する事が出来る。具体的には、プレート32に設ける切欠部50のパターン、ブロック31に設ける溝部40のパターンを複数用意し、それらを組み合わせる事により、必要に応じた連通パターンを任意に構成する事ができ、ニーズに応じたバリエーションを容易に実現可能である。
【0046】
以上説明した第2実施形態の熱分配システムは、上記第1実施形態または後述の実施形態のロータリ型多方弁を備えることで、ロータリ型多方弁のシャフト60を駆動するアクチュエータの体格を小型化すると共に、その駆動に必要な電力を低減することができる。
【0047】
また、第2実施形態のロータリ型多方弁は、第1実施形態と同様に、溝部40の位置が異なる複数のブロック31、および、切欠部50の位置が異なる複数のプレート32の少なくとも一方の配置や形状を替えることで、複数のポート20の連通パターンを変更可能である。
これによれば、ロータリ型多方弁は、例えば、流体通路の構成が異なる種々の熱分配システムに対応することができる。
【0048】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態のロータリ型多方弁は、第1実施形態で説明したものに対し、ハウジング10の構成の一部を変更したものである。
【0049】
図10および図11に示すように、第3実施形態のロータリ型多方弁が備えるハウジング10は、外部ハウジング15とシリンダ16とを有している。外部ハウジング15は、シリンダ16を格納する格納穴17を有し、ハウジング10の外殻を形成する。外部ハウジング15の格納穴17に格納されるシリンダ16は、円筒状のハウジング穴14を有している。なお、外部ハウジング15とシリンダ16との結合方法は、例えば圧入など種々の方法を採用できる。また、外部ハウジング15とシリンダ16との間に不図示のシール部材を挿入して結合部のシールを確保してもよい。
【0050】
以上説明した第3実施形態のロータリ型多方弁は、ハウジング10を、外部ハウジング15とシリンダ16により構成している。これによれば、ハウジング穴14の内径の寸法精度および円筒度の加工精度が要求されるシリンダ16を、外部ハウジング15とは別部材で構成することで、シリンダ16の加工精度を高め、且つ、その加工を容易に行うことができる。
【0051】
また、第3実施形態のロータリ型多方弁において、シリンダ16と分割ロータ30とは同一の材質で形成することが好ましい。これにより、ロータリ型多方弁を流れる作動流体の温度変化によりシリンダ16と分割ロータ30とが熱膨張した場合、それらが同じ材料であれば、同じ線膨張係数で膨張する。そのため、ハウジング穴14の内壁と分割ロータ30との隙間が温度変化に応じて増減することを防ぐことができる。
【0052】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態のロータリ型多方弁は、第1、第3実施形態で説明したものに対し、構成の一部を変更したものである。
【0053】
図12に示すように、シャフト60は、一方の端部が蓋部材13に設けられた第1軸受61により回転可能に支持され、他方の端部がハウジング10の底部11に設けられた第2軸受62により回転可能に支持されている。なお、第1軸受61は、蓋部材13に設けられた軸受穴18に設けられる例えばボールベアリングであり、第2軸受62は、ハウジング10の底部11に設けられた軸受穴19に設けられる例えばスリーブベアリングである。
【0054】
また、図13に示すように、第4実施形態のロータリ型多方弁が備える複数のポート20も、第1実施形態と同じく、ハウジング穴14の軸心CLに垂直な断面視において軸心CLを中心として180°以内(詳細には、90°以内)の所定の範囲に設けられている。
【0055】
図12および図13に示すように、第4実施形態のロータリ型多方弁は、ハウジング10に対してシャフト60を複数のポート20が設けられている側へ押し付ける押付部材90、91を備えている。押付部材90、91は、例えば2つの板ばねにより構成されている。その一方の押付部材90は、蓋部材13に設けられた軸受穴18の内壁と第1軸受61との間に配置されている。他方の押付部材91は、ハウジング10の底部11に設けられた軸受穴19の内壁と第2軸受62との間に配置されている。2つの押付部材90、91は、第1軸受61と第2軸受62を複数のポート20が設けられている側へ押圧する。これにより、第4実施形態のロータリ型多方弁は、ハウジング穴14の内壁のうちポート20が設けられている部位の近傍と分割ロータ30との隙間を小さくすることが可能である。したがって、分割ロータ30およびハウジング10の円筒度の公差をより緩和できると共に、バルブ内での複数の流路間における流体の漏れもより小さく抑えることができる。なお、ハウジング穴14の内壁のうちポート20とは反対側の部位は、流路として使わないので、隙間が大きくなっても問題ない。
【0056】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態ロータリ型多方弁は、第1、第3、第4実施形態で説明したものに対し、分割ロータ30の構成の一部を変更したものである
【0057】
第5実施形態の説明において、図14はロータリ型多方弁が備えるハウジング10を示し、図15は分割ロータ30とシャフト60を組み付けた状態を示している。図15に示すように、第5実施形態のロータリ型多方弁が備える分割ロータ30は、ブロック31とプレート32が一体に構成されたものである。分割ロータ30は、ハウジング穴14の軸心方向に配置されている。なお、分割ロータ30の数は、図15に示した2個に限らず、例えば1個でもよく、3個以上でもよい。
以上説明したように第5実施形態のロータリ型多方弁も、第1、第3、第4実施形態で説明したものと同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、分割ロータ30はブロック31とプレート32を有するものとして説明したが、これに限らず、例えばブロックのみ、または、プレート32のみで構成してもよい。
【0059】
(2)上記各実施形態では、ハウジング穴14の内壁と分割ロータ30との間にシール部材を備えないものとして説明したが、これに限らず、例えば、必要に応じて一部のみにシール部材を備えてもよい。
【0060】
(3)上記各実施形態では、ハウジング穴の軸心CLに垂直な断面視において軸心を中心として180°以内の所定の範囲に複数のポート20を配置したものについて説明したが、これに限らず、例えば、180°以内の所定の範囲の外側にポート20を配置してもよい。
【0061】
(4)上記各実施形態では、ロータリ型多方弁は電気自動車に用いられるものとして説明したが、これに限らず、電気自動車以外に用いてもよい。
【0062】
(5)上記各実施形態では、押圧部材80を圧縮コイルスプリングで構成したが、これに限らず、押圧部材80は例えばゴムなどの弾性力を有する部材で構成してもよく、或いは、ロータリ型多方弁は押圧部材を備えない構成としてもよい。
【0063】
(6)上記第1実施形態では、ロータリ型多方弁はポート数10、モード数10を実現可能なものについて説明したが、これに限らず、ポート数や配置、およびモード数は任意に設定できる。
【0064】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0065】
本発明の特徴は次のとおりである。
[請求項1]
複数の流体流路の連通状態および遮断状態を切り替えることの可能なロータリ型多方弁であって、
円筒状のハウジング穴(14)を有するハウジング(10)と、
前記ハウジングにおいて前記ハウジング穴の軸心方向、周方向または径方向に配置され、前記ハウジングの外壁と内壁とを貫通する複数のポート(20)と、
前記ハウジング穴の内側で前記ハウジング穴の軸心方向に配置される少なくとも1つ以上の分割ロータ(30)であって、前記ハウジングに対して相対回転可能な前記分割ロータと、
前記分割ロータに設けられ、所定の前記ポートと他の前記ポートとの連通状態と遮断状態とを切り替える連通路(40、50)と、
前記分割ロータを前記ハウジング穴の軸心まわりに回転させるシャフト(60)と、を備え、
前記分割ロータと前記ハウジング穴の内壁との間に微小な隙間(S2)が形成されており、前記分割ロータはそれぞれ径方向に微小な移動が許容されているロータリ型多方弁。
[請求項2]
前記分割ロータと前記シャフトとの相対回転を規制し、前記シャフトの回転を前記分割ロータに伝達する規制部(70)をさらに備え、
前記分割ロータは、前記シャフトが挿通する挿通孔(35、36)を有し、
前記シャフトの外径(D1)と前記挿通孔の内径(D2)との差は、前記分割ロータの径方向の外縁を周方向に結んだ仮想円の外径(D3)と前記ハウジング穴の内径(D4)との差と同じか又は大きい、請求項1に記載のロータリ型多方弁。
[請求項3]
複数の前記分割ロータは、
前記ハウジング穴の軸心方向に配置される複数のブロック(31)と、
複数の前記ブロック同士の間に配置される複数のプレート(32)と、を有し、
前記連通路は、
複数の前記ブロックのうち少なくとも1つに設けられ、所定の前記ポートと他の前記ポートとの連通状態と遮断状態を切り替える溝部(40)と、
複数の前記プレートのうち少なくとも1つに設けられ、前記ハウジング穴の軸心方向に前記プレートを挟んで配置される所定の前記ブロックの前記溝部と他の前記ブロックの前記溝部とを連通する切欠部(50)とを有する、請求項1または2に記載のロータリ型多方弁。
[請求項4]
複数の前記分割ロータは、前記溝部の位置が異なる複数の前記ブロック、および、前記切欠部の位置が異なる複数の前記プレートの少なくとも一方の配置、形状を替えることで、複数の前記ポートの連通パターンを変更可能に構成されている、請求項3に記載のロータリ型多方弁。
[請求項5]
複数の前記プレートは、
複数の前記プレートのうち前記ハウジング穴の軸心方向の一方側または他方側に配置され、前記ハウジングに対して相対回転が規制されている固定プレート(321、322)と、
複数の前記プレートのうち前記ハウジング穴の軸心方向の一方側または他方側の間に配置され、前記ハウジングに対して相対回転可能な回転プレート(323)と、を有し、
前記固定プレートに対して荷重を印加し、前記固定プレートと前記回転プレートと複数の前記ブロックを前記ハウジング穴の軸心方向の一方側から他方側に押圧する押圧部材(80)をさらに備える、請求項3または4に記載のロータリ型多方弁。
[請求項6]
前記ハウジングは、
前記ハウジング穴を有するシリンダ(16)と、
前記シリンダを格納する格納穴(17)を有し、前記ハウジングの外殻を形成する外部ハウジング(15)と、を有する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のロータリ型多方弁。
[請求項7]
前記シリンダと前記分割ロータとは同一の材質で形成されている、請求項6に記載のロータリ型多方弁。
[請求項8]
前記ハウジング穴の軸心に垂直な断面視において軸心を中心として180°以内の所定の範囲に複数の前記ポートが設けられている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のロータリ型多方弁。
[請求項9]
前記ハウジングに対して前記シャフトを複数の前記ポートが設けられている側へ押し付ける押付部材(90、91)をさらに備える、請求項8に記載のロータリ型多方弁。
[請求項10]
電気自動車に用いられる熱分配システムにおいて、
請求項1に記載の前記ロータリ型多方弁と、
前記ロータリ型多方弁の備える複数の前記ポートに接続される前記流体流路(106)と、
前記流体流路の途中に接続される電池(105)、電気駆動機器(102、103)または空調機器(104)と、を備え、
前記ロータリ型多方弁が備える前記分割ロータと前記シャフトを軸心まわりに回転させ、所定の位置に設定することで、適宜必要な機器に必要なタイミングで温水および冷水を循環させることの可能な熱分配システム。
【符号の説明】
【0066】
14 ハウジング穴
10 ハウジング
20 ポート
30 分割ロータ
40 溝部(連通路)
50 切欠部(連通路)
60 シャフト
S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15