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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057898
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/02 20060101AFI20240418BHJP
   F16D 51/20 20060101ALI20240418BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F16D66/02 F
F16D51/20
G01B21/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164878
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松木 孝憲
【テーマコード(参考)】
2F069
3J058
【Fターム(参考)】
2F069AA24
2F069BB40
2F069CC07
2F069DD26
2F069GG19
2F069HH30
2F069JJ17
3J058AA08
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA24
3J058AA28
3J058AA33
3J058AA37
3J058BA62
3J058CA22
3J058DB02
3J058DB06
3J058DB29
3J058FA11
3J058GA92
(57)【要約】
【課題】ライニングの内部に加工をしなくても、ライニングの摩耗を検知できる産業車両を提供する。
【解決手段】フォークリフト10は、ドラムブレーキ16を備えている。ドラムブレーキ16は、筒状のドラム21と、ドラム21と組み付けられるブレーキアッセンブリ22とを有している。ブレーキアッセンブリ22は、ドラム21の内周面に接触可能なライニング23bを有している。フォークリフト10は、振動センサ17と検知部19bとを備えている。振動センサ17は、ブレーキアッセンブリ22に設けられている。振動センサ17は、ドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの振動を検出する。検知部19bは、振動センサ17によって検出されたドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの振動から固有振動数を算出し、算出した固有振動数が所定の振動数以上である場合、ライニング23bが摩耗していると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムブレーキを備え、
前記ドラムブレーキは、筒状のドラムと、前記ドラムと組み付けられるブレーキアッセンブリとを有し、
前記ブレーキアッセンブリは、前記ドラムの内側に配置されたブレーキシューを有し、
前記ブレーキシューは、前記ドラムの内周面に接触可能なライニングを有する産業車両であって、
前記ブレーキアッセンブリに設けられ、前記ドラムの内周面に接触しているときの前記ライニングの振動を検出する振動センサと、
前記振動センサによって検出された前記ドラムの内周面に接触しているときの前記ライニングの振動から固有振動数を算出し、算出した固有振動数が所定の振動数以上である場合、前記ライニングが摩耗していると判定する検知部と、
を備えることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記ブレーキアッセンブリは、前記ドラムの開口を閉塞するバックプレートを有し、
前記バックプレートは、前記ドラムブレーキの内側に臨むとともに前記ブレーキシューと当接する当接部を有する内面と、前記内面とは反対側の面であり、前記ドラムブレーキの外部に露出する外面とを有し、
前記振動センサは、前記外面に設けられている請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記振動センサは、前記外面における前記当接部とは反対側に位置する部分に設けられている請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
ディスプレイを備え、
前記ライニングが摩耗していると前記検知部が判定した場合、前記ディスプレイには、前記ライニングが摩耗している旨の表示が表示される請求項1~3の何れか一項に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の産業車両は、ドラムブレーキを備えている。ドラムブレーキは、筒状のドラムと、ドラムと組み付けられるブレーキアッセンブリとを有している。ブレーキアッセンブリは、ドラムの内側に配置されたブレーキシューを有している。ブレーキシューは、ドラムの内周面に接触可能なライニングを有している。ドラムブレーキは、車軸とともに回転するドラムの内周面にライニングを接触させることによって制動力を発生させる。ドラムブレーキが繰り返し作動することによって、ライニングは徐々に摩耗する。このため、摩耗したライニングと新しいライニングとを交換する必要がある。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、ライニングの摩耗を検知する構成が開示されている。特許文献1では、導電性を有するライニングの内部に一対の電極が埋設された構成が開示されている。この構成では、ライニングが摩耗するにつれて一対の電極間の抵抗値が大きくなるため、ライニングの摩耗を検知することができる。特許文献2では、ライニングの内部に複数の電線が埋設される構成が開示されている。複数の電線は、ライニングの厚さ方向に並んでいる。この構成では、ライニングが摩耗するにつれて、ライニングの厚さ方向に並ぶ電線が順番に切断されるため、ライニングの摩耗を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-54402号公報
【特許文献2】特開2003-14020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2では、ライニングの摩耗を検知するためにライニングの内部に加工を施す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための産業車両は、ドラムブレーキを備え、前記ドラムブレーキは、筒状のドラムと、前記ドラムと組み付けられるブレーキアッセンブリとを有し、前記ブレーキアッセンブリは、前記ドラムの内側に配置されたブレーキシューを有し、前記ブレーキシューは、前記ドラムの内周面に接触可能なライニングを有する産業車両であって、前記ブレーキアッセンブリに設けられ、前記ドラムの内周面に接触しているときの前記ライニングの振動を検出する振動センサと、前記振動センサによって検出された前記ドラムの内周面に接触しているときの前記ライニングの振動から固有振動数を算出し、算出した固有振動数が所定の振動数以上である場合、前記ライニングが摩耗していると判定する検知部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
ライニングは、ドラムブレーキの作動中、ドラムの内周面に接触することによって振動する。ライニングの振動は、ライニング以外のブレーキアッセンブリを構成する部材にも伝達される。ライニングが摩耗すると、ライニングの質量が減少することによって、ライニングの固有振動数は上昇する。したがって、検知部は、ライニングの固有振動数が所定の振動数以上である場合、ライニングが摩耗していると判定する。この場合、ライニングの内部に加工をしなくても、ブレーキアッセンブリに対して振動センサを取り付けるだけでライニングの摩耗を検知できる。
【0008】
上記産業車両において、前記ブレーキアッセンブリは、前記ドラムの開口を閉塞するバックプレートを有し、前記バックプレートは、前記ドラムブレーキの内側に臨むとともに前記ブレーキシューと当接する当接部を有する内面と、前記内面とは反対側の面であり、前記ドラムブレーキの外部に露出する外面とを有し、前記振動センサは、前記外面に設けられていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、振動センサは、ドラムブレーキの外部に露出している。したがって、振動センサの配線の取り回しやバックプレートに対する振動センサの着脱が容易である。
【0010】
上記産業車両において、前記振動センサは、前記外面における前記当接部とは反対側に位置する部分に設けられていてもよい。
上記構成によれば、振動センサはライニングの振動を検出しやすくなる。
【0011】
上記産業車両は、ディスプレイを備え、前記ライニングが摩耗していると前記検知部が判定した場合、前記ディスプレイには、前記ライニングが摩耗している旨の表示が表示されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、産業車両の運転者は、ディスプレイに表示されたライニングが摩耗している旨の表示によって、ライニングが摩耗していることを知ることができる。したがって、運転者は、ライニングの交換等の対応を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ライニングの内部に加工をしなくても、ライニングの摩耗を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における産業車両を示す側面図である。
図2】実施形態における産業車両の構成を示すブロック図である。
図3】実施形態におけるドラムブレーキを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、産業車両を具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。本実施形態の産業車両は、フォークリフトである。
<フォークリフト>
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11と、4つの車輪12とを備えている。なお、図1では、4つの車輪12のうち、2つの車輪12が図示されている。車体11は、運転室13を有している。運転室13の床面には、ブレーキペダル14が設けられている。4つの車輪12は、2つの前輪12aと2つの後輪12bとから構成されている。各前輪12aは、車体11の前下部において車軸15に連結されている。各後輪12bは、車体11の後下部において車軸15に連結されている。各前輪12aには、ドラムブレーキ16が設けられている。ドラムブレーキ16は、車輪12の制動力を発生させるブレーキ装置である。
【0016】
図2に示すように、フォークリフト10は、振動センサ17と、ディスプレイ18と、コントローラ19とを備えている。図1では図示を省略しているが、ディスプレイ18は、車体11に対し、フォークリフト10の運転者が視認可能な位置に設けられている。
【0017】
<ドラムブレーキ>
ドラムブレーキ16の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、ドラムブレーキ16は、ドラム21と、ドラム21と組み付けられるブレーキアッセンブリ22とを有している。
【0018】
ドラム21は、有底円筒状である。ドラム21は、円板状の底壁21aと、底壁21aの周縁部から立設された円筒状の周壁21bとを有している。ドラム21は、車軸15に固定されている。ドラム21は、車軸15とともに回転する。
【0019】
ブレーキアッセンブリ22は、一対のブレーキシュー23と、バックプレート24と、ホールド部材25と、ホイールシリンダ26と、図示しないリターンスプリングとを有している。
【0020】
一対のブレーキシュー23は、ドラム21の内側に配置されている。各ブレーキシュー23は、シューウェブ23aと、ライニング23bとを有している。
シューウェブ23aは、金属材料よりなる。シューウェブ23aは、第1板部231と第2板部232とを有している。第1板部231の板厚方向は、ドラム21の底壁21aの厚さ方向と一致している。第1板部231は、円弧状である。第2板部232は、第1板部231の外周縁からドラム21の底壁21aに向かって第1板部231の板厚方向に立設されている。第2板部232の板厚方向は、ドラム21の周壁21bの厚さ方向と一致している。第2板部232は、円弧状である。一対のシューウェブ23aは、第2板部232の内周面同士が対向するように配置されている。
【0021】
ライニング23bは、シューウェブ23aの第2板部232の外周面に沿って設けられている。ライニング23bは、摩擦材よりなる。ライニング23bは、例えば、テフロン(登録商標)系、シリコンゴム系、ボリエチレン系、及びナイロン系の材料中にグラファイト粒や金属粒を混合した合成樹脂膜よりなる。ライニング23bは、円弧状である。ライニング23bの厚さ方向は、ドラム21の周壁21bの厚さ方向及び第2板部232の板厚方向と一致している。ライニング23bの内周面は、シューウェブ23aの第2板部232の外周面と対向している。ライニング23bの外周面は、ドラム21の内周面と対向している。
【0022】
ライニング23bは、ドラム21の内周面に接触可能である。詳細については後述するが、ドラムブレーキ16が作動していない状態では、図2及び図3に示すように、ライニング23bは、ドラム21の内周面に接触していない。したがって、ライニング23bの外周面とドラム21の内周面との間には隙間が存在している。一方、ドラムブレーキ16が作動している状態では、ライニング23bの外周面は、ドラム21の内周面に接触している。
【0023】
バックプレート24は、円板状の部材である。バックプレート24は、ドラム21の開口を閉塞している。バックプレート24以外のブレーキアッセンブリ22を構成する部材は、ドラム21とバックプレート24とによって囲まれた空間に収容されている。
【0024】
バックプレート24は、内面24a及び外面24bを有している。内面24a及び外面24bは、バックプレート24の板厚方向に対して垂直な面である。外面24bは、内面24aとは反対側に位置している。内面24aは、ドラムブレーキ16の内側に臨む面である。外面24bは、ドラムブレーキ16の外部に露出する面である。
【0025】
ホールド部材25は、ブレーキシュー23をバックプレート24に取り付けるための部材である。本実施形態のホールド部材25は、ピン25aと、ホールドスプリング25bとを有している。ブレーキシュー23は、ピン25aによって、バックプレート24に取り付けられている。ホールドスプリング25bは、ブレーキシュー23をバックプレート24に向けて付勢している。これにより、バックプレート24の内面24aは、シューウェブ23aと当接する当接部27を有している。本実施形態では、当接部27は、バックプレート24をドラムブレーキ16の外側から内側に向けて変形させることによって形成されている。当接部27は、バックプレート24の周方向において間隔を空けて複数設けられている。
【0026】
図3に示すように、ホイールシリンダ26は、シリンダ本体26aと、一対のピストンロッド26bとを有している。一対のピストンロッド26bは、シリンダ本体26aから突出している。シリンダ本体26aから一方のピストンロッド26bが突出する方向と、シリンダ本体26aから他方のピストンロッド26bが突出する方向とは、反対方向である。一対のピストンロッド26bの先端部は、一対のシューウェブ23aに接続されている。
【0027】
シリンダ本体26a内に作動油が送り込まれると、一対のピストンロッド26bは、シリンダ本体26aからの一対のピストンロッド26bの突出量が増大するように、シリンダ本体26aに対して移動する。これにより、一対のピストンロッド26bは、一対のブレーキシュー23をドラム21の内周面に向けて押し出す。
【0028】
リターンスプリングは、ブレーキシュー23に対してドラム21の内周面から離れる方向に力を加えている。
ドラムブレーキ16の動作について説明する。
【0029】
運転者がブレーキペダル14を踏むと、ホイールシリンダ26のシリンダ本体26a内に作動油が送り込まれることによって、シリンダ本体26aからの一対のピストンロッド26bの突出量が増大する。これにより、一対のピストンロッド26bは、リターンスプリングのばね力に抗するように一対のシューウェブ23aをドラム21の内周面に向けて押し出す。一対のシューウェブ23aがドラム21の内周面に向けて押し出されると、一対のライニング23bの外周面はドラム21の内周面に接触する。これにより、一対のライニング23bの外周面と、車軸15とともに回転するドラム21の内周面との間には摩擦力が作用する。当該摩擦力は、車輪12の制動力となる。このように、運転者がブレーキペダル14を踏むと、ドラムブレーキ16が作動することによって、車輪12の制動力が発生する。
【0030】
なお、運転者がブレーキペダル14を踏んでいないときには、一対のピストンロッド26bは、一対のブレーキシュー23をドラム21の内周面に向けて押し出さない。また、一対のブレーキシュー23には、リターンスプリングによって、ドラム21の内周面から離れる方向の力が加えられている。このため、一対のライニング23bの外周面とドラム21の内周面との間には隙間が存在している。したがって、一対のライニング23bの外周面と、車軸15とともに回転するドラム21の内周面との間には摩擦力が作用しないため、車輪12の制動力は発生しない。
【0031】
ドラムブレーキ16が繰り返し作動することによって、ライニング23bは徐々に摩耗する。具体的には、ライニング23bの厚さが徐々に薄くなる。したがって、ライニング23bの質量も徐々に減少する。
【0032】
<振動センサ>
図2及び図3に示すように、振動センサ17は、ブレーキアッセンブリ22に取り付けられている。本実施形態では、振動センサ17は、バックプレート24の外面24bにおける当接部27とは反対側に位置する部分に取り付けられている。
【0033】
振動センサ17は、ライニング23bの振動を検出する。本実施形態の振動センサ17は、バックプレート24の振動を検出することによって、ライニング23bの振動を検出する。詳しくは、ライニング23bの振動は、シューウェブ23aに伝達される。シューウェブ23aに伝達された振動は、シューウェブ23aとバックプレート24との当接部分又はホールド部材25のピン25aからバックプレート24に伝達される。したがって、振動センサ17が検出するバックプレート24の振動は、ライニング23bの振動と同じである。
【0034】
<コントローラ>
コントローラ19は、プロセッサと記憶部とを備える。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。コントローラ19は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路であるコントローラ19は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0035】
図2に示すように、コントローラ19は、ブレーキペダル14、振動センサ17、及びディスプレイ18と接続されている。コントローラ19は、車両制御部19aと、検知部19bと、表示制御部19cとを有している。車両制御部19aは、フォークリフト10の走行動作及び荷役動作を制御する。車両制御部19aは、ブレーキペダル14の操作状態、すなわちブレーキペダル14が踏まれているか否かを把握している。検知部19bは、振動センサ17の検出結果に基づいてライニング23bの摩耗を検知する。表示制御部19cは、ディスプレイ18の表示制御を行う。
【0036】
本実施形態では、車両制御部19aは、ブレーキペダル14が踏まれていると把握すると、振動センサ17に振動を検出させる。したがって、振動センサ17は、ドラムブレーキ16の作動中のライニング23bの振動、すなわちドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの振動を検出する。検知部19bは、振動センサ17から、ドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの振動を取得する。検知部19bは、取得した振動から、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を行うことによって、ライニング23bの固有振動数を算出する。検知部19bは、算出した固有振動数が所定の振動数以上である場合、ライニング23bが摩耗していると判定する。ここで、「ライニング23bが摩耗している」とは、ライニング23bの交換が必要な程度にライニング23bが摩耗していることを指す。ライニング23bの交換が不要な程度のライニング23bの摩耗については、「ライニング23bが摩耗している」に含まれない。
【0037】
このように、振動センサ17及び検知部19bは、ライニング23bの摩耗を検知する摩耗検知装置20を構成している。摩耗検知装置20は、ドラムブレーキ16が作動する度に、ライニング23bが摩耗しているか否かを検知する。
【0038】
ライニング23bが摩耗していると検知部19bが判定した場合、表示制御部19cは、ライニング23bが摩耗している旨の表示をディスプレイ18に表示させる。言い換えると、ライニング23bが摩耗していると検知部19bが判定した場合、ディスプレイ18には、ライニング23bが摩耗している旨の表示が表示される。なお、ライニング23bが摩耗している旨の表示としては、例えば、ライニング23bが摩耗していることを示すマークや、ライニング23bの交換を促すメッセージが挙げられる。
【0039】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)フォークリフト10は、振動センサ17と、検知部19bとを備えている。振動センサ17は、ブレーキアッセンブリ22に設けられている。振動センサ17は、ドラムブレーキ16の作動中のライニング23bの振動、すなわちドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの振動を検出する。検知部19bは、振動センサ17によって検出されたドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの振動から固有振動数を算出する。検知部19bは、算出した固有振動数が所定の振動数以上である場合、ライニング23bが摩耗していると判定する。
【0040】
ライニング23bは、ドラムブレーキ16の作動中、ドラム21の内周面に接触することによって振動する。ライニング23bの振動は、ライニング23b以外のブレーキアッセンブリ22を構成する部材にも伝達される。ライニング23bが摩耗すると、ライニング23bの質量が減少することによって、ライニング23bの固有振動数は上昇する。したがって、検知部19bは、ライニング23bの固有振動数が所定の振動数以上である場合、ライニング23bが摩耗していると判定する。この場合、ライニング23bの内部に加工をしなくても、ブレーキアッセンブリ22に対して振動センサ17を取り付けるだけでライニング23bの摩耗を検知できる。したがって、例えば、既存のドラムブレーキ16に対しても振動センサ17を追加するだけで、ライニング23bの摩耗を検知できる。
【0041】
(2)ブレーキアッセンブリ22は、ドラム21の開口を閉塞するバックプレート24を有している。バックプレート24は、ドラムブレーキ16の内側に臨む内面24aと、ドラムブレーキ16の外部に露出する外面24bとを有している。内面24aは、ブレーキシュー23と当接する当接部27を有している。振動センサ17は、バックプレート24の外面24bに設けられている。この構成によれば、振動センサ17は、ドラムブレーキ16の外部に露出している。したがって、振動センサ17の配線の取り回しやバックプレート24に対する振動センサ17の着脱が容易である。
【0042】
(3)振動センサ17は、バックプレート24の外面24bにおける当接部27とは反対側に位置する部分に設けられている。この構成によれば、振動センサ17はライニング23bの振動を検出しやすくなる。
【0043】
(4)フォークリフト10は、ディスプレイ18を備える。ライニング23bが摩耗していると検知部19bが判定した場合、ディスプレイ18には、ライニング23bが摩耗している旨の表示が表示される。この構成によれば、フォークリフト10の運転者は、ディスプレイ18に表示されたライニング23bが摩耗している旨の表示によって、ライニング23bが摩耗していることを知ることができる。したがって、運転者は、ライニング23bの交換等の対応を行うことができる。
【0044】
(5)ライニング23bの質量は、ライニング23bの摩耗だけでなく、ライニング23bの欠けでも減少する。したがって、ライニング23bの摩耗だけでなく、ライニング23bの欠けも検知できる。
【0045】
(6)ブレーキ装置には、ブレーキ装置の作動中にブレーキ装置の振動とは逆位相の振動を加えることによって、ブレーキ装置の鳴きを抑制する加振装置を備えるものがある。例えば、この加振装置を利用して、ライニング23bの振動を検出することも考えられる。すなわち、ブレーキ装置が作動していないときに加振装置をあえて作動させることによって、ライニング23bを振動させる。しかしながら、この場合には加振装置が必要になる。これに対し、本実施形態では、ドラムブレーキ16の作動に伴うライニング23bの振動を利用するため、加振装置がないドラムブレーキ16であっても、ライニング23bの摩耗を検知できる。
【0046】
なお、ブレーキ装置がディスクブレーキである場合、ディスクロータの側方に加振装置を配置することができる。これに対し、ブレーキ装置がドラムブレーキ16である場合、ドラム21とバックプレート24とによって囲まれた空間に加振装置を収容する必要がある。このため、ドラムブレーキ16では、加振装置を配置するスペースを確保しづらい。また、ブレーキ装置がディスクブレーキである場合、加振装置は、例えば、一対のブレーキパッドをディスクロータに対して押し付けるためのピストン内に設けられる。この配置を本実施形態のドラムブレーキ16に適用する場合、加振装置はホイールシリンダ26内に設けられる。しかしながら、ドラムブレーキ16のホイールシリンダ26は、ディスクブレーキのピストンよりも小さいため、ホイールシリンダ26内に加振装置を配置することは困難である。このようにドラムブレーキ16では、加振装置が不要な本実施形態の構成が特に効果的である。
【0047】
(7)フォークリフト10などの産業車両は、方向を変えながら重量物を運搬するため、乗用車などの一般車両よりもドラムブレーキ16の作動時間が長くなりやすい。このため、摩耗検知装置20は、ドラムブレーキ16の作動時間を利用してライニング23bの摩耗を検知することができる。また、産業車両では、一般車両よりもドラムブレーキ16の作動回数が多い。このため、摩耗検知装置20は、ライニング23bの摩耗を早期に検知することができる。さらに、産業車両のドラムブレーキ16は、一般車両のドラムブレーキ16よりも大きいため、産業車両のライニング23bの振動は、一般車両のライニング23bの振動よりも大きくなりやすい。このため、産業車両は、ドラムブレーキ16の作動中のライニング23bの振動に基づくライニング23bの摩耗の検知に適している。
【0048】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0049】
○ 振動センサ17がライニング23bの振動を検出可能であれば、ブレーキアッセンブリ22に対する振動センサ17の取り付け位置は適宜変更されてもよい。
例えば、振動センサ17は、バックプレート24の外面24bにおける当接部27とは反対側に位置する部分以外の部分や、バックプレート24の内面24aに設けられていてもよい。
【0050】
例えば、振動センサ17は、バックプレート24ではなく、シューウェブ23aに設けられていてもよい。
○ ライニング23bが摩耗していると検知部19bが判定した場合、ライニング23bが摩耗していることをフォークリフト10の運転者に通知するための方法は、ディスプレイ18への表示に限定されない。コントローラ19は、例えば、ブザー音を鳴らしたりライトを点灯させたりことによって、ライニング23bが摩耗していることを運転者に知らせてもよい。
【0051】
○ 振動センサ17は、ドラムブレーキ16の作動中だけでなく、常時、ライニング23bの振動を検出していてもよい。この場合、検知部19bは、振動センサ17の検出結果のうち、ドラムブレーキ16の作動中の振動センサ17の検出結果によって、ドラム21の内周面に接触しているときのライニング23bの固有振動数を算出する。
【0052】
○ 上記実施形態のホールド部材25の構成は一例である。ホールド部材25によって、ブレーキシュー23がバックプレート24と当接するように取り付けられるのであれば、ホールド部材25の構成は適宜変更されてもよい。
【0053】
○ 車両制御部19a、検知部19b、及び表示制御部19cはそれぞれ異なるデバイスによって構成されてもよい。
○ フォークリフト10は、自動運転可能に構成されていてもよい。この場合、車両制御部19aは、フォークリフト10周辺の障害物を検出する障害物センサの検出結果等に基づいて、フォークリフト10の走行動作及び荷役動作を制御する。具体的には、車両制御部19aは、障害物センサが検出したフォークリフト10周辺の障害物とフォークリフト10とが接触するおそれがある場合、ドラムブレーキ16を作動させることによって、車輪12の制動力を発生させる。なお、自動運転されるフォークリフト10では、ブレーキペダル14及びディスプレイ18は設けられていなくてもよい。
【0054】
自動運転されるフォークリフト10において、フォークリフト10を統括的に制御するフォークリフト制御装置と、検知部19bとはそれぞれ異なるデバイスによって構成されていてもよい。フォークリフト制御装置は、車両制御部19aを含む。この場合、検知部19bは、ライニング23bが摩耗していると判定した場合、ライニング23bが摩耗している旨の信号をフォークリフト制御装置に送信する。フォークリフト制御装置は、ライニング23bが摩耗している旨の信号を検知部19bから受信すると、例えば、ライニング23bの交換作業等が行われる整備エリアに向かってフォークリフト10を走行させるように車両制御部19aに指令を出してもよい。
【0055】
○ フォークリフト10は遠隔操作可能に構成されていてもよい。この場合、フォークリフト10のオペレータは、フォークリフト10が使用される作業場とは異なる操作室からフォークリフト10を操作する。フォークリフト10は、操作室と無線通信可能な通信部を有している。検知部19bは、ライニング23bが摩耗していると判定した場合、ライニング23bが摩耗している旨の信号を通信部によって操作室に送信する。操作室は、ライニング23bが摩耗している旨の信号をフォークリフト10から受信する。操作室のディスプレイには、ライニング23bが摩耗している旨の表示が表示される。したがって、オペレータは、操作室のディスプレイに表示されたライニング23bが摩耗している旨の表示によって、ライニング23bが摩耗していることを知ることができる。なお、遠隔操作されるフォークリフト10では、ブレーキペダル14及びディスプレイ18は設けられていなくてもよい。
【0056】
○ 産業車両は、ドラムブレーキ16を備える産業車両であれば、フォークリフト10に限定されない。
○ ドラムブレーキ16は、各後輪12bに設けられていてもよい。
【0057】
[付記]
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)ドラムブレーキを備え、前記ドラムブレーキは、筒状のドラムと、前記ドラムと組み付けられるブレーキアッセンブリとを有し、前記ブレーキアッセンブリは、前記ドラムの内側に配置されたブレーキシューを有し、前記ブレーキシューは、前記ドラムの内周面に接触可能なライニングを有する産業車両に用いられ、前記ライニングの摩耗を検知する摩耗検知装置であって、前記ブレーキアッセンブリに設けられ、前記ドラムの内周面に接触しているときの前記ライニングの振動を検出する振動センサと、前記振動センサによって検出された前記ドラムの内周面に接触しているときの前記ライニングの振動から固有振動数を算出し、算出した固有振動数が所定の振動数以上である場合、前記ライニングが摩耗していると判定する検知部と、を有することを特徴とする摩耗検知装置。
【符号の説明】
【0058】
10…産業車両としてのフォークリフト、16…ドラムブレーキ、17…振動センサ、18…ディスプレイ、19b…検知部、21…ドラム、22…ブレーキアッセンブリ、23…ブレーキシュー、23b…ライニング、24…バックプレート、24a…内面、24b…外面、27…当接部。
図1
図2
図3