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  • 特開-金属箔付き樹脂シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057908
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】金属箔付き樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240418BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20240418BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B32B15/08 N
B32B15/092
H05K1/03 630H
H05K1/03 610L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164891
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AB17A
4F100AB33A
4F100AH06B
4F100AK01B
4F100AK42C
4F100AK53B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA23B
4F100DC30
4F100EJ67B
4F100EJ91C
4F100GB43
4F100JA02A
4F100JA06A
4F100JG04B
4F100JK06A
4F100JL14C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】膨れの発生が抑制され、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることが可能な金属箔付き樹脂シート等の提供。
【解決手段】第1面を有する金属箔と、該金属箔の第1面と接合している樹脂組成物層とを有する、金属箔付き樹脂シートであって、金属箔の第1面の最大高さ粗さ(Rz)が、1000nm以上であり、樹脂組成物層が、(A)無機充填材を含み、(A)無機充填材の含有量が、樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上80質量%以下であり、樹脂組成物層の90℃での溶融粘度が、5000poise以上100000poise以下であり、金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度が、0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下である、金属箔付き樹脂シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する金属箔と、該金属箔の第1面と接合している樹脂組成物層とを有する、金属箔付き樹脂シートであって、
金属箔の第1面の最大高さ粗さ(Rz)が、1000nm以上であり、
樹脂組成物層が、(A)無機充填材を含み、
(A)無機充填材の含有量が、樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上80質量%以下であり、
樹脂組成物層の90℃での溶融粘度が、5000poise以上100000poise以下であり、
金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度が、0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下である、金属箔付き樹脂シート。
【請求項2】
金属箔の第1面と樹脂組成物層との界面に連続的に形成された空隙を有する、請求項1に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項3】
樹脂組成物層が、(B)エポキシ樹脂を含有する、請求項1に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項4】
樹脂組成物層が、(C)硬化剤を含有する、請求項1に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項5】
樹脂組成物層の硬化物の線熱膨張係数が、40ppm/℃以下である、請求項1に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項6】
樹脂組成物層の金属箔と接合していない面に保護フィルムを有する、請求項1に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項7】
保護フィルムが離型処理されている、請求項6に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項8】
金属箔が、銅箔である、請求項1に記載の金属箔付き樹脂シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された絶縁層、及び請求項1~8のいずれか1項に記載の金属箔付き樹脂シートの金属箔より形成された導体層を含む、回路基板。
【請求項10】
請求項9に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔付き樹脂シートに関する。さらには、本発明は、金属箔付き樹脂シートを用いて製造される回路基板及び当該回路基板を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に広く使用されているプリント配線板等の回路基板は、電子機器の小型化、高機能化のために、層の薄型化や回路の微細配線化が求められている。回路基板の製造技術としては、絶縁層と導体層(配線層)を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法においては、一般に、絶縁層は樹脂シートにおける樹脂組成物層を熱硬化させて形成され、導体層はセミアディティブ法(SAP)、モディファイドセミアディティブ法(MSAP)、サブトラクティブ法等の技術により形成される。
【0003】
近年、絶縁層上に導体層を形成する方法として、金属箔付き樹脂シートを用いて金属箔を導体層として用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-43685号公報
【特許文献2】特開2010-161497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属箔付き樹脂シートは、通常、樹脂組成物層と金属箔とを貼り合わせて製造される。この貼り合わせは、一般に、大気圧下のもと加熱条件下で行われるが、貼り合わせの条件、又は樹脂組成物層の性状により金属箔と樹脂組成物層との界面に存在する空気を除去できず、ボイドが発生してしまうことがある。ボイドが発生すると、樹脂組成物層を硬化させる際に導体層と絶縁層との間に膨れが発生してしまう。
【0006】
ボイドの発生を抑制するには、樹脂組成物層に含まれる無機充填材の含有量を少なくして樹脂組成物層の溶融粘度を低くする方法が考えられる。
【0007】
しかし、無機充填材の含有量を少なくすると、絶縁層の線熱膨張係数(CTE)が高くなってしまう。線熱膨張係数が高いと、絶縁層が温度変化にともなって膨張や収縮を繰り返し、その歪みによってクラックが生じることがある。
【0008】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、膨れの発生が抑制され、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることが可能な金属箔付き樹脂シート;当該金属箔付き樹脂シートを用いて製造される回路基板;及び当該回路基板を備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討した結果、第1面を有する金属箔と、該金属箔の第1面と接合している樹脂組成物層とを有する、金属箔付き樹脂シートであって、金属箔の第1面、樹脂組成物層の90℃での溶融粘度、樹脂組成物層中に含まれる無機充填材の含有量、及び金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度を所定の範囲内となるように調整することにより、空気を除去することが可能になることを知見した。これにより、膨れが抑制され、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることが可能になることを見出すことで本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 第1面を有する金属箔と、該金属箔の第1面と接合している樹脂組成物層とを有する、金属箔付き樹脂シートであって、
金属箔の第1面の最大高さ粗さ(Rz)が、1000nm以上であり、
樹脂組成物層が、(A)無機充填材を含み、
(A)無機充填材の含有量が、樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上80質量%以下であり、
樹脂組成物層の90℃での溶融粘度が、5000poise以上100000poise以下であり、
金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度が、0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下である、金属箔付き樹脂シート。
[2] 金属箔の第1面と樹脂組成物層との界面に連続的に形成された空隙を有する、[1]に記載の金属箔付き樹脂シート。
[3] 樹脂組成物層が、(B)エポキシ樹脂を含有する、[1]又は[2]に記載の金属箔付き樹脂シート。
[4] 樹脂組成物層が、(C)硬化剤を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の金属箔付き樹脂シート。
[5] 樹脂組成物層の硬化物の線熱膨張係数が、40ppm/℃以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の金属箔付き樹脂シート。
[6] 樹脂組成物層の金属箔と接合していない面に保護フィルムを有する、[1]~[5]のいずれかに記載の金属箔付き樹脂シート。
[7] 保護フィルムが離型処理されている、[6]に記載の金属箔付き樹脂シート。
[8] 金属箔が、銅箔である、[1]~[7]のいずれかに記載の金属箔付き樹脂シート。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された絶縁層、及び[1]~[8]のいずれかに記載の金属箔付き樹脂シートの金属箔より形成された導体層を含む、回路基板。
[10] [9]に記載の回路基板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、膨れの発生が抑制され、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることが可能な金属箔付き樹脂シート;当該金属箔付き樹脂シートを用いて製造される回路基板及び当該回路基板を備える半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の金属箔付き樹脂シートの一例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
[金属箔付き樹脂シート]
本発明の金属箔付き樹脂シートは、第1面を有する金属箔と、該金属箔の第1面と接合している樹脂組成物層とを有し、金属箔の第1面の最大高さ粗さ(Rz)が、1000nm以上であり、樹脂組成物層が、(A)無機充填材を含み、(A)無機充填材の含有量が、樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上80質量%以下であり、樹脂組成物層の90℃での溶融粘度が、5000poise以上100000poise以下であり、金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度が、0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下である。このような金属箔付き樹脂シートを用いることによって、膨れの発生が抑制された硬化物を得ることが可能になる。
【0015】
図1に、本発明の金属箔付き樹脂シートの一例である概略断面図を示す。金属箔付き樹脂シート1は、第1面2aを有する金属箔2と、樹脂組成物層3とを含む。樹脂組成物層3は、金属箔2の第1面2aと接合している。金属箔付き樹脂シート1は、樹脂組成物層3の金属箔2と接合していない面に保護フィルム4を含んでいてもよい。
【0016】
金属箔2の第1面2aは最大高さ粗さ(Rz)が1000nm以上であるから、第1面2a全体に複数の微細な突起21が連続的に形成されている。すなわち、第1面2a全体に無数の凹凸が形成されている。金属箔付き樹脂シート1は、金属箔2と樹脂組成物層3との間の剥離強度が0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下となるように金属箔2と樹脂組成物層3とが接合されている。樹脂組成物層3の90℃での溶融粘度が5000poise以上100000poise以下である場合に、金属箔2と樹脂組成物層3との間の剥離強度が0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下となるように金属箔2と樹脂組成物層3とが接合すると、第1面2aの突起21が樹脂組成物層3に完全に埋め込まれるように接合しているのではなく、突起21の一部が樹脂組成物層3に埋め込まれる態様となる。このため、金属箔2と樹脂組成物層3との界面には突起21同士の間に連続的に形成された空隙22を有する。この空隙22は、通常、厚み方向に対して垂直な面内方向に連続して形成され、外部空間に連通しうる。
【0017】
金属箔付き樹脂シートを用いて回路基板を形成する場合、通常、真空ホットプレス処理により、金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層させる。従来の金属箔付き樹脂シートは、本発明の金属箔付き樹脂シート1のように金属箔2と樹脂組成物層3との間に空隙22を有していないので、真空ホットプレス処理を行ってもボイド(空気)の逃げ場がないので、樹脂組成物層の硬化物に膨れが発生していた。また、上記したが、従来の金属箔付き樹脂シートは、ボイドの発生を抑制するために樹脂組成物層中に含まれる無機充填材の含有量を少なくし、樹脂組成物層の溶融粘度を低くする必要があった。このため、絶縁層の線熱膨張係数が高くなってしまう。
【0018】
これに対し、本発明の金属箔付き樹脂シート1は空隙22を有し、空隙22は、突起21同士の間に連続的に形成されている。その結果、真空ホットプレス処理での真空条件にて空隙中の空気を除去することができ、膨れの発生が抑制された硬化物を得ることが可能になる。また、本発明の金属箔付き樹脂シート1は空隙22を有するので、樹脂組成物層3の溶融粘度を下げる必要がない。このため、樹脂組成物層中に含まれる無機充填材の含有量を少なくする必要はないので、絶縁層の線熱膨張係数をより低減させることも可能になる。また、本発明の金属箔付き樹脂シートは、通常、ガラス転移温度(Tg)が高い樹脂組成物層の硬化物を得ることも可能になる。
【0019】
金属箔の第1面の最大高さ粗さ(Rz)としては、膨れの発生が抑制された硬化物を得る観点から、1000nm以上であり、好ましくは2000nm以上、より好ましくは3000nm以上、さらに好ましくは4000nm以上、4500nm以上である。上限は、好ましくは20000nm以下、より好ましくは15000nm以下、さらに好ましくは10000nm以下、8000nm以下である。最大高さ粗さ(Rz)は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0020】
金属箔付き樹脂シートは、金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度としては、膨れの発生が抑制され、線熱膨張係数が低い硬化物を得る観点から、0.01kgf/cm以上であり、好ましくは0.015kgf/cm以上、より好ましくは0.02kgf/cm以上である。上限は、0.3kgf/cm以下であり、好ましくは0.25kgf/cm以下、より好ましくは0.2kgf/cm以下である。剥離強度は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0021】
樹脂組成物層の90℃での溶融粘度としては、線熱膨張係数が低い硬化物を得る観点から、5000poise以上であり、好ましくは10000poise以上、より好ましくは15000poise以上である。上限は100000poise以下であり、好ましくは75000poise以下、より好ましくは50000poise以下である。溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0022】
<金属箔>
本発明の金属箔付き樹脂シートは金属箔を有する。回路基板の導体層は金属箔から形成してもよい。
【0023】
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0024】
金属箔は、単層構造であっても、異なる種類の金属もしくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。複層構造の金属箔としては、例えば、キャリア金属箔と、該キャリア金属箔と接合する極薄金属箔とを含む金属箔が挙げられる。斯かる複層構造の金属箔は、キャリア金属箔と極薄金属箔との間に、キャリア金属箔から極薄金属箔を剥離可能とする剥離層を含んでもよい。剥離層は、キャリア金属箔から極薄金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。なお、複層構造の金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、極薄金属箔上に設けられる。
【0025】
金属箔の厚みは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。上限については特に限定されないが、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。金属箔が複層構造の場合、金属箔全体の厚さが斯かる範囲であることが好ましく、そのうち極薄金属箔の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下の範囲であってよい。
【0026】
金属箔の製造方法は、所定の最大高さ粗さ(Rz)が得られる限り特に限定されない。金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。
【0027】
金属箔の第1面の算術平均粗さ(Ra)としては、樹脂組成物層との密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは400nm以上、さらに好ましくは500nm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。算術平均粗さ(Ra)は、ISO 25178に準拠して測定された値であり、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計としては、例えば、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
【0028】
金属箔は市販品を用いてもよい。金属箔の市販品としては、例えば、三井金属鉱業社製「マイクロシンMT18Ex」、「マイクロシンMT18FL」、「3EC-III」、「3EC-M3-VLP」、「3EC-M2S-VLP」、JX金属鉱業社製「JDLC」、「JTCSLC」、「HA-V2」、「HA」、「HG」、福田金属箔粉工業株式会社製「CF-TX4-SV」、「V9」、「HD」、「FLEQ HD」、「FUTF」、「RCF-T4X」、「RCF-T5B」等が挙げられる。
【0029】
<樹脂組成物層>
金属箔付き樹脂シートは樹脂組成物層を有する。樹脂組成物層は熱硬化する機能を有する。
【0030】
樹脂組成物層に含まれる成分は、線熱膨張係数を低下させる観点から、(A)無機充填材を含む。また、樹脂組成物層は、必要に応じて(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)ラジカル重合性化合物、(E)硬化促進剤、(F)熱可塑性樹脂、及び(G)その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
-(A)無機充填材-
樹脂組成物層は、(A)成分として無機充填材を含有する。(A)成分を含有する樹脂組成物層を用いることにより、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることができる。
【0032】
(A)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物層に含まれる。(A)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(A)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(A)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(A)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0034】
(A)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。(A)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。(A)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0035】
(A)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。(A)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは70m/g以下、さらに好ましくは50m/g以下、さらにより好ましくは30m/g以下、特に好ましくは10m/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0036】
(A)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0037】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0038】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0039】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物層の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0040】
(A)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0041】
(A)無機充填材の含有量は、線熱膨張係数が低い硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。上限は80質量%以下であり、好ましくは75質量%以下である。
【0042】
なお、本発明において、樹脂組成物層中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、樹脂組成物層中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0043】
-(B)エポキシ樹脂-
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、(B)エポキシ樹脂を含んでいてもよい。(B)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0045】
樹脂組成物層は、(B)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(B)エポキシ樹脂100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0046】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物層は、(B)成分として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0047】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0048】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂がより好ましい。
【0049】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂がより好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0051】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0052】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000H」、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR-991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(B)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:10、特に好ましくは1:0.5~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0054】
(B)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分な硬化体をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0055】
(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは150~3000、さらに好ましくは200~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0056】
(B)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
【0057】
-(C)硬化剤-
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、(C)硬化剤を含んでいてもよい。(C)成分は、(B)成分に該当するものは除かれる。(C)硬化剤としては、(B)成分と反応して樹脂組成物層を硬化させる機能を有する化合物を用いることができ、例えば、カルボジイミド系硬化剤、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。中でも、絶縁信頼性を向上させる観点から、(C)硬化剤は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤のいずれか1種以上を含むことが好ましい。(C)硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0058】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0059】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA3018-50P」、「EXB-9500」、「KA-1163」等が挙げられる。
【0060】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0061】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0062】
カルボジイミド系硬化剤は、1分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を1個以上有する化合物であり、カルボジイミド系硬化剤は、1分子中にカルボジイミド基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0063】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、市販のカルボジイミド系硬化剤としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライトV-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:262)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾールP(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0064】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0065】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0066】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB-9451」、「EXB-9460」、「EXB-9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「HPC-8000L-65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として、「EXB-9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8150L-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HP-B-8151-62T」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0067】
(B)エポキシ樹脂と(C)成分との量比は、[(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(C)成分の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物層中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(C)成分の活性基数」とは、樹脂組成物層中に存在する(C)成分の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(C)成分として、エポキシ樹脂との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0068】
(C)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0069】
-(D)ラジカル重合性樹脂-
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、(D)ラジカル重合性樹脂を含んでいてもよい。この(D)成分としての(D)ラジカル重合性樹脂には、上述した(B)~(C)成分に該当するものは含めない。
【0070】
ラジカル重合性樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル重合性不飽和基を有する限り、その種類は特に限定されない。ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基として、マレイミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、及びマレオイル基から選ばれる1種以上を有する樹脂が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点からは、ラジカル重合性樹脂は、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、マレイミド樹脂がより好ましい。
【0071】
マレイミド樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有する限り、その種類は特に限定されない。マレイミド樹脂としては、例えば、(1)「BMI-3000J」、「BMI-5000」、「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-689」(いずれもデジクナーモレキュールズ社製)、「SLK6895-T90」(信越化学工業社製)などの、脂肪族骨格(好ましくはダイマージアミン由来の炭素原子数36の脂肪族骨格)を含むマレイミド樹脂;(2)発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載される、インダン骨格を含むマレイミド樹脂;(3)「MIR-3000-70MT」(日本化薬社製)、「BMI-4000」(大和化成社製)、「BMI-80」(ケイアイ化成社製)などの、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂が挙げられる。
【0072】
(メタ)アクリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。ここで、「(メタ)アクリロイル基」という用語は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。メタクリル樹脂としては、(メタ)アクリレートモノマーのほか、例えば、「A-DOG」(新中村化学工業社製)、「DCP-A」(共栄社化学社製)、「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」(何れも日本化薬社製)などの、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0073】
スチリル樹脂としては、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のスチリル基又はビニルフェニル基を有する限り、その種類は特に限定されず、モノマー、オリゴマーであってもよい。スチリル樹脂としては、スチレンモノマーのほか、例えば、「OPE-2St」、「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(何れも三菱ガス化学社製)などの、スチリル樹脂が挙げられる。
【0074】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0075】
-(E)硬化促進剤-
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、(E)硬化促進剤を含んでいてもよい。この(E)成分としての(E)硬化促進剤には、上述した(B)~(D)成分に該当するものは含めない。(E)硬化促進剤は、(B)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0076】
(E)硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進させる化合物を用いることができる。このような(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(E)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0078】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0079】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0080】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0081】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0082】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0083】
(E)硬化促進剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0084】
-(F)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、(F)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。この(F)成分としての(F)熱可塑性樹脂には、上述した(B)~(E)成分に該当するものは含めない。
【0085】
(F)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(F)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0087】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0088】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0089】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0090】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0091】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0092】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0093】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0094】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0095】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0096】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0097】
(F)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0098】
(F)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。
【0099】
-(G)その他の添加剤-
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、更に任意の不揮発成分として、(G)その他の添加剤を含んでいてもよい。(G)任意の添加剤としては、例えば、有機充填材;重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤;第三級アミン類等の光重合開始助剤;ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類等の光増感剤;が挙げられる。(G)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
樹脂組成物層は、揮発性成分としての溶剤を含んでいてもよい。樹脂組成物層の90℃での溶融粘度を調整する観点から、樹脂組成物層中の有機溶剤等の溶剤の量は少ないことが好ましい。樹脂組成物層中の溶剤の量(残留溶剤量)は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。下限は特に制限はないが、0.0001質量%以上等とし得る。
【0101】
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0102】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物層の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは55μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0103】
<保護フィルム>
金属箔付き樹脂シートは、さらに必要に応じて、保護フィルムを含んでいてもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0104】
保護フィルムとしては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。保護フィルムは、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0105】
<金属箔付き樹脂シートの製造方法>
金属箔付き樹脂シートの製造方法は、例えば、樹脂組成物層に含まれる成分を溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて保護フィルム上に塗布し、更に乾燥させて、保護フィルム上に樹脂組成物層を形成させる。次いで、樹脂組成物層の表面に、ロールラミネーター等を用いて金属箔を貼り合わせることで金属箔付き樹脂シートを製造することができる。溶剤については上述したものを用いることができる。
【0106】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0107】
金属箔付き樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。金属箔付き樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0108】
<金属箔付き樹脂シートの物性等>
金属箔付き樹脂シートを、真空ホットプレス機を用いて100℃で30分、次いで190℃で120分間加熱し、樹脂組成物層を硬化させた当該金属箔付き樹脂シートは、金属箔と硬化物との間に膨れ等の異常が見られないという特性を示す。すなわち、導体層と絶縁層との間に発生する膨れが抑制された絶縁層をもたらす。金属箔付き樹脂シートを、100℃で30分、次いで190℃で120分間加熱しても、絶縁層の小片に膨れ等の異常が見られない。膨れの評価は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0109】
本発明の金属箔付き樹脂シートは、樹脂組成物層に無機充填材を含み、その含有量が樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上80質量%以下であることから、樹脂組成物層の硬化物は線熱膨張係数(CTE)が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、線熱膨張係数が低い絶縁層をもたらす。線熱膨張係数は、好ましくは40ppm/℃以下、より好ましくは35ppm/℃以下、より好ましくは30ppm/℃以下である。下限は特に限定されないが、1ppm/℃以上等とし得る。線熱膨張係数の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0110】
本発明の金属箔付き樹脂シートは、樹脂組成物層に無機充填材を含み、その含有量が樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%以上80質量%以下であることから、通常、真空ホットプレス機を用いて硬化させた、樹脂組成物層の硬化物のガラス転移温度(Tg)が高いという特性を示す。よって、ガラス転移温度が高い絶縁層をもたらす。樹脂組成物層の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上限値は、特に制限されないが、例えば、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度(Tg)の測定は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0111】
本発明の金属箔付き樹脂シートの金属箔の第1面は、最大高さ粗さ(Rz)が1000nm以上であるから、第1面には突起が連続的に形成されている。本発明の金属箔付き樹脂シートは、金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度が0.01kgf/cm以上0.3kgf/cm以下となるように金属箔と樹脂組成物層とが接合されているので、第1面に連続的に有する突起の一部が樹脂組成物層に埋め込まれている。このため、金属箔と樹脂組成物層との界面には突起同士の間に連続的に形成された空隙を有する。金属箔付き樹脂シートを水に浸すと、金属箔付き樹脂シートの空隙に水が浸入する。水が浸入した空隙の箇所は色が変色する。よって、変色した箇所が金属箔付き樹脂シート全体に広がっている場合は空隙が連続していると評価できる。本発明の金属箔付き樹脂シートを水に浸すと、金属箔付き樹脂シート全体が変色する。よって、本発明の金属箔付き樹脂シートは空隙が連続的に形成されている。空隙の連続性の評価は、後述する実施例に記載の方法にて測定する。
【0112】
本発明の金属箔付き樹脂シートを用いることで、膨れの発生が抑制され、線熱膨張係数が低い絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の金属箔付き樹脂シートは、回路基板の製造において、絶縁層と導体層の両層を形成するための樹脂シート(絶縁層及び導体層形成用)として好適に使用することができ、回路基板の製造において、真空ホットプレス処理を用いて絶縁層と導体層の両層を形成するための樹脂シート(真空ホットプレス処理を用いた絶縁層及び導体層形成用)として好適に使用することができ、プリント配線板の製造において、絶縁層と導体層の両層を形成するための樹脂シート(絶縁層及び導体層形成用)として好適に使用することができ、プリント配線板の製造において、真空ホットプレス処理を用いて絶縁層と導体層の両層を形成するための樹脂シート(真空ホットプレス処理を用いた絶縁層及び導体層形成用)として好適に使用することができる。
【0113】
[回路基板]
本発明の回路基板は、本発明の金属箔付き樹脂シートを用いて製造することができる。すなわち、本発明の金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層、及び金属箔より形成された導体層を含む回路基板が提供可能である。
【0114】
回路基板の一実施形態としてプリント配線板がある。プリント配線板は、本発明の金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層、及び金属箔より形成された導体層を含む。
【0115】
プリント配線板は、例えば、上述の金属箔付き樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、金属箔付き樹脂シートにおける樹脂組成物層を真空ホットプレス処理にて積層させる工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0116】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0117】
内層基板と金属箔付き樹脂シートの積層は、真空ホットプレス処理により、金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する。
【0118】
はじめに金属箔付き樹脂シートの樹脂組成物層と内層基板とが接合するように、内層基板及び金属箔付き樹脂シートを真空ホットプレス装置にセットする。次いで、減圧条件下で内層基板と樹脂組成物層とを加熱圧着する真空ホットプレス処理を行う。
【0119】
内層基板及び金属箔付き樹脂シートは、クッション紙、ステンレス板(SUS板)等の金属板、離型フィルムなどを介して真空ホットプレス装置にセットしてもよい。
【0120】
真空ホットプレス処理は、加熱されたSUS板等の金属板によって、内層基板及び金属箔付き樹脂シートをその両面側から押圧する従来公知の真空ホットプレス装置を用いて実施することができる。市販の真空ホットプレス装置としては、例えば、北川精機社製の「VH1-1603」等が挙げられる。
【0121】
真空ホットプレス処理は、1回のみ実施してもよく、2回以上繰り返して実施してもよい。2回以上繰り返して実施する場合、圧着圧力、加熱温度、プレス時間等は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0122】
真空ホットプレス処理において、圧着圧力(押圧力)は、好ましくは5kgf/cm以上、より好ましくは10kgf/cm以上、さらに好ましくは15kgf/cm以上であり、好ましくは50kgf/cm以下、より好ましくは35kgf/cm以下、さらに好ましくは25kgf/cm以下である。
【0123】
真空ホットプレス処理において、雰囲気の圧力、すなわち、処理対象の積層構造が格納されるチャンバ内の減圧時の圧力(減圧度)は、好ましくは3×10-2MPa以下、より好ましくは1×10-2MPa以下である。下限は特に制限はないが、1×10-10MPa以上等とし得る。
【0124】
真空ホットプレス処理において、加熱温度は、樹脂組成物層の組成によっても異なるが、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。加熱温度の上限は特に限定されないが、通常、300℃以下などとし得る。なお、真空ホットプレス処理における加熱により、樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成してもよい。
【0125】
真空ホットプレス処理において、プレス時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは300分以下、より好ましくは200分以下、さらに好ましくは150分以下である。
【0126】
真空ホットプレス処理による積層工程では、チャンバ内が減圧されたときに、金属箔と樹脂組成物層との間のボイドから空気が空隙を通って排出される。そして、ボイドから空気が排出された後、プレスによって内層基板と樹脂組成物層とが密着させられると同時に、樹脂組成物層と金属箔とが密着させられる。前記のようにボイドから空気が排出された後にプレスが行われるので、膨れの抑制を達成できる。
【0127】
内層基板上に、金属箔付き樹脂シートを真空プレス処理にて積層させた後、工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層を熱硬化する方法としては、例えば、真空ホットプレス処理にてプレス処理を行う場合、プレス時の熱を用いて樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する方法が挙げられる。
【0128】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0129】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物層の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0130】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0131】
本発明で用いる金属箔付き樹脂シートは、金属箔を含むので、工程(III)として、サブトラクティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により導体層(回路)を形成する工程を含んでいてもよい。
【0132】
工程(III)においては、金属箔付き樹脂シートにおける金属箔を利用して、サブトラクティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により導体層を形成することができる。
【0133】
サブトラクティブ法においては、金属箔の不要部分(非回路形成部)をエッチング等によって選択的に除去して、回路を形成する。サブトラクティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、サブトラクティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面(すなわち、樹脂組成物層と接合している面とは反対側の面)にエッチングレジストを設けること、ii)エッチングレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)露出した金属箔部分をエッチングして除去すること、iv)エッチングレジストを除去すること、を含む方法により実施することができる。
【0134】
モディファイドセミアディティブ法においては、金属箔の非回路形成部をめっきレジストにより保護し、電解めっきにより回路形成部に銅等の金属を厚付けした後、めっきレジストを除去し、回路形成部以外の金属箔をエッチングで除去して、回路を形成する。モディファイドセミアディティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、モディファイドセミアディティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面(すなわち、樹脂組成物層と接合している面とは反対側の面)にめっきレジストを設けること、ii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)めっきレジストを介して電解めっきすること、iv)めっきレジストを除去すること、v)回路形成部以外の金属箔をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。なお、金属箔が厚い場合には、上記i)の前に、金属箔が所望の厚さ(通常5μm以下、4μm以下、又は3μm以下)となるようにエッチング等により金属箔全面を薄化してもよい。
【0135】
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)穴あけする工程、(V)絶縁層を粗化処理する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0136】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の回路基板、又はプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明の回路基板、又はプリント配線板を用いて製造することができる。
【0137】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0138】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0139】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例0140】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0141】
<配合例1>樹脂ワニス1の作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)20部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部にメチルエチルケトン(MEK)40部を加え、攪拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂溶解組成物を調製した。このエポキシ樹脂溶解組成物にトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)50部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)180部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分10質量%のMEK溶液)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス1を調製した。
【0142】
<配合例2>樹脂ワニス2の作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000」、エポキシ当量約250g/eq.)10部にメチルエチルケトン(MEK)20部を加え、攪拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂溶解組成物を調製した。このエポキシ樹脂溶解組成物にトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-7054」、活性基当量約125g/eq.不揮発成分率60%のMEK溶液)15部、ナフトール型硬化剤(日鉄ケミカル&マテリアル社製「SN-485」、水酸基当量約205g/eq.)10部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)100部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分10質量%のMEK溶液)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス2を調製した。
【0143】
<配合例3>樹脂ワニス3の作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)15部、ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC製「HP-6000」、エポキシ当量約250g/eq.)10部にメチルエチルケトン(MEK)40部を加え、攪拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂溶解組成物を調製した。この溶解組成物に活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)30部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230S75」、シアネート当量約232g/eq.、不揮発分75質量%のMEK溶液)20部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)180部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)4部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製、Co(III))の1質量%のMEK溶液1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス3を調製した。
【0144】
<配合例4>樹脂ワニス4の作製
配合例1において、
1)ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)の量を20部から5部に変え、
2)ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」)10部をさらに用い、
3)脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量約137g/eq.)5部をさらに用い、
4)トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)の量を10部から5部に変え、
5)活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)の量を50部から30部に変え、
6)シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)180部を、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm)100部に変え、
7)さらに、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環骨格を含むマレイミド樹脂(日本化薬社製、「MIR-3000-70MT」)を15部用い、
8)さらに、スチリル樹脂(三菱ガス化学社製、「OPE-2St 1200」)5部を用いた。
以上の事項以外は配合例1と同様にして樹脂ワニス4を作製した。
【0145】
<配合例5>樹脂ワニス5の作製
配合例1において、
1)シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の量を180部から50部に変え、
2)フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部をさらに用い、
3)ゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」)2部をさらに用いた。
以上の事項以外は配合例1と同様にして樹脂ワニス5を作製した。
【0146】
<配合例6>樹脂ワニス6の作製
配合例1において、
1)シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の量を180部から330部に変え、
2)フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部をさらに用いた。
以上の事項以外は配合例1と同様にして樹脂ワニス6を作製した。
【0147】
<樹脂組成物層の硬化物のガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定>
離型剤で処理されたPETフィルム(リンテック社製「501010」、厚み50μm、240mm角)の離型剤未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)を重ね四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した(以下、「固定PETフィルム」ということがある。)。
【0148】
配合例1~6で作製した樹脂ワニス1~6を、上記「固定PETフィルム」の離型処理面上に乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で10分間乾燥し樹脂シートを得た。次いで、190℃のオーブンに投入後90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させた。熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外し、更にPETフィルム(リンテック社製「501010」)も剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」と称する。
【0149】
評価用硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置(リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回目の測定において、ガラス転移温度(Tg;℃)と、25℃から150℃までの範囲における平均線熱膨張係数(CTE;ppm/℃)とを算出し、以下の判断基準で判定を行った。
○:平均熱膨張係数が40ppm/℃以下であるもの
×:平均熱膨張係数が40ppm/℃を超えるもの
【0150】
<樹脂組成物層の90℃での溶融粘度の測定>
配合例1~6で得られた樹脂ワニス1~6を、保護フィルムである離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥した。保護フィルムを剥離した後、同じ樹脂組成物層を25枚重ね合わせて、厚み1.25mmの樹脂組成物層積層体を得た。続いて、樹脂組成物層積層体を、積層方向に直径20mmで打ち抜き、測定試料を作製した。作製した測定試料について、動的粘弾性測定装置(UBM社製「Rheogel-G3000」)を使用して、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/min、測定温度間隔2.5℃、振動周波数1Hz、ひずみ5degの測定条件にて動的粘弾性率を測定することで得られる溶融粘度曲線から、90℃での溶融粘度(poise)を特定し、以下の判断基準で判定を行った。
○:90℃での溶融粘度が5,000poise以上100,000poise以下。
×:90℃での溶融粘度が5,000poise未満もしくは100,000poiseを越えるもの。
【0151】
【表1】
*表中、(A)成分の含有量は、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表す。
【0152】
<実施例1>金属箔付き樹脂シート1の作製
保護フィルムである離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)の離型面上に樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて樹脂ワニス1を塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥した。続いて樹脂組成物層の表面にキャリア銅箔及び極薄銅箔を備えるキャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製「マイクロシンMT18Ex」、厚さ3μmの極薄銅箔/厚さ18μmのキャリア銅箔、最大高さ粗さ(Rz)4900nm)を、極薄銅箔が樹脂組成物層と接合するようにロールラミネーター(大成ラミネーター社製、「FIRST LAMINATOR VA-770H」)を用い、ロール加圧力0.25MPa、送り速度0.3m/min、ロール温度90℃で貼り合わせ金属箔付き樹脂シート1を得た。
【0153】
<実施例2>金属箔付き樹脂シート2の作製
実施例1において、
1)樹脂ワニス1を樹脂ワニス2に変え、
2)キャリア銅箔及び極薄銅箔を備えるキャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製「マイクロシンMT18Ex」、厚さ3μmの極薄銅箔/厚さ18μmのキャリア銅箔、最大高さ粗さ(Rz)4900nm)を、銅箔(JX金属鉱業社製「JDLC」、厚さ12μmの銅箔、最大高さ粗さ(Rz)8200nm)に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様に金属箔付き樹脂シート2を得た。
【0154】
<実施例3>金属箔付き樹脂シート3の作製
実施例1において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス3に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様に金属箔付き樹脂シート3を得た。
【0155】
<実施例4>金属箔付き樹脂シート4の作製
実施例1において、樹脂ワニス1を樹脂ワニス4に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様に金属箔付き樹脂シート4を得た。
【0156】
<比較例1>金属箔付き樹脂シート5の作製
実施例2において、樹脂ワニス2を樹脂ワニス5に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様に金属箔付き樹脂シート5を得た。
【0157】
<比較例2>金属箔付き樹脂シート6の作製
実施例1において、キャリア銅箔及び極薄銅箔を備えるキャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製「マイクロシンMT18Ex」、厚さ3μmの極薄銅箔/厚さ18μmのキャリア銅箔、最大高さ粗さ(Rz)4900nm)を、特許第5633124号記載の金属膜付きフィルム(厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み1μmのセルロース層と厚み0.5μmの銅層がこの順で形成されたフィルム、最大高さ粗さ(Rz)300nm)に変えた。以上の事項以外は実施例2と同様に金属箔付き樹脂シート6を得た。
【0158】
<比較例3>金属箔付き樹脂シート7の作製
比較例2において、樹脂ワニス2を樹脂ワニス6に変えた。以上の事項以外は比較例2と同様にして行ったが、樹脂ワニス6の溶融粘度が高いため、樹脂ワニス6を塗布することができず、金属膜付きフィルムをロールラミネーターで貼り合わせることが不可能であった。すなわち、比較例3は、樹脂ワニス6を保護フィルム上に塗布することができなかったため、樹脂組成物層に金属膜付きフィルムを貼り合わせることができなかった。
【0159】
<金属箔の最大高さ粗さ(Rz)測定>
実施例および比較例で用いたキャリア銅箔及び極薄銅箔を備えるキャリア付き銅箔(三井金属鉱業社製「マイクロシンMT18Ex」、厚さ3μmの極薄銅箔/厚さ18μmのキャリア銅箔)、銅箔(JX金属鉱業社製「JDLC」、厚さ12μmの銅箔)、及び特許第5633124号記載の金属膜付きフィルム(厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み1μmのセルロース層と厚み0.5μmの銅層がこの順で形成されたフィルム)について、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRz値を求めた。測定は互いに3cm以上の距離を隔てた10点について行い、その平均値を求めることにより算出した。
【0160】
<金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度の測定、及び積層後の膨れの評価>
(1)下地処理内層基板の作製
表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この積層板の表面の銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。その後、190℃にて30分乾燥を行い下地処理内層基板を作製した。
【0161】
(2)剥離強度の測定
下地処理内層基板を30mm×120mmに切り出し、両面粘着テープ(ニチバン社製「ナイスタックNW-25」)を貼りつけた。両面粘着テープの剥離紙を剥離した後、実施例および比較例で得られた金属箔付き樹脂シートから保護フィルムを剥離して樹脂組成物層が両面粘着テープと接するよう貼りつけた。
【0162】
実施例1、3、4はキャリア箔を剥離した後、比較例2、3は保護フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムとセルロース層を除去した後、実施例2、比較例1はそのまま4辺を逆エンボス銅箔導電性テープ(スリーエムジャパン社製「3245」)でめっき液が入らないように封止した。
【0163】
次いで金属箔の総厚みが20μmとなるまで硫酸銅めっきを行い、130℃にて30分間乾燥を行なった。その後、カッターにて幅10mm、長さ100mmの切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製のオートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に20mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)をJIS C6481に準拠して測定し、以下の判断基準で判定を行った。なお、比較例1、2は樹脂組成物層と両面粘着テープの間で剥離し、その剥離強度が1.28kgf/cmであったことから、金属箔と樹脂組成物層との間の剥離強度は1.28kgf/cmより高いと推察された。また、比較例3は、樹脂ワニス6を塗布することができなかったため、樹脂組成物層に金属箔を貼り合わせることができず、剥離強度の測定をすることができなかった。
○:剥離強度が0.01kgf/cm以上0.30kgf/cm未満であるもの
×:剥離強度が0.01kgf/cm未満もしくは0.30kgf/cmを越えるもの、または試験片が作製不能であるもの
【0164】
(2)積層後の膨れの評価
実施例及び比較例で得られた金属箔付き樹脂シートを、真空ホットプレス機(北川精機社製、VH1-1603)を用いて、樹脂組成物層が下地処理内層基板と接するように、下地処理内層基板の両面に積層した。プレス条件は、減圧度1×10-3MPa以下の減圧下とし、圧力条件が20kgf/cmの条件下で、加熱条件として1段階目のプレスは、温度が100℃、時間30分、2段階目のプレスは、温度が190℃、時間は120分で行い、評価用基板を得た。評価用基板を100mm×50mmの小片に切断し目視観察により以下の評価基準で評価した。比較例3は、樹脂ワニス6を塗布することができなかったため、樹脂組成物層に金属箔を貼り合わせることができず、積層後の膨れを評価することができなかった。
〇:小片に全く異常がない。
×:小片に膨れの異常がある。
【0165】
<空隙の連続性の評価>
実施例および比較例で得られた金属箔付き樹脂シートを、20mm×20mmに切り出し、保護フィルムを剥離した後に純水50mLが入ったガラスビーカー中に投入した。次に金属箔付き樹脂シートが入ったガラスビーカーをデシケータ内に静置し、ダイアフラム式真空ポンプを用い10kPaまで減圧し、10分間保持した。その後、約30秒かけて徐々に大気圧に戻した。金属箔付き樹脂シートを水に浸すと、金属箔付き樹脂シートの空隙に水が浸入し、水が浸入した空隙の箇所の色が変色する。変色した箇所が金属箔付き樹脂シート全体に広がっている場合は空隙が連続していると評価した。比較例3は、樹脂ワニス6を塗布することができなかったため、樹脂組成物層に金属箔を貼り合わせることができず、空隙の連続性を評価をすることができなかった。
〇:空隙が連続であるもの:空隙に水が浸入しているもの。
×:空隙が無い、または不連続であるもの、空隙に水が浸入しないもの。
【0166】
【表2】
*表中、(A)成分の含有量は、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表す。
【符号の説明】
【0167】
1 金属箔付き樹脂シート
2 金属箔
2a 第1面
21 突起
22 空隙
3 樹脂組成物層
4 保護フィルム
図1