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特開2024-57910情報処理方法、情報処理装置、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057910
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20240101AFI20240418BHJP
   G06F 16/908 20190101ALI20240418BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06F16/908
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164893
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】399094361
【氏名又は名称】株式会社東京カンテイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉道
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B175FB03
5B175HB03
5L049CC27
5L050CC27
(57)【要約】
【課題】複数の不動産の中から、鑑定対象の不動産と類似する不動産を精度よく特定する。
【解決手段】複数の第1の不動産それぞれについて、第2の不動産との類似度を、複数の要因それぞれの、第1の不動産の値と第2の不動産の値とを用いて算出し、複数の第1の不動産の中から、類似度に基づいて、第2の不動産と類似する不動産を出力する、情報処理方法である。類似度は、複数の要因それぞれについての、第1の不動産と第2の不動産との差分値である第1の値を用いて算出される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
複数の第1の不動産それぞれについて、第2の不動産との類似度を、複数の要因それぞれの、第1の不動産の値と前記第2の不動産の値とを用いて算出し、
前記複数の第1の不動産の中から、前記類似度に基づいて、前記第2の不動産と類似する不動産を出力する、
情報処理方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれについての、前記第1の不動産と前記第2の不動産との差分値である第1の値を用いて算出する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれについての値であって、前記複数の要因間で、前記第1の不動産と前記第2の不動産との差分値の単位を所定の方法で揃えた、第1の値を用いて算出する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれの前記第1の値を成分とするベクトルのノルムとして算出する、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれについての、前記第1の値に要因に応じた重み付けをした値を成分とするベクトルのノルムとして算出する、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれについての、変数の値が大きくなると関数の値も大きくなる所定の関数の前記変数のうちの一つに前記第1の値を代入して得られる値を成分とするベクトルのノルムとして算出する、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれについて、変数の値が大きくなると関数の値も大きくなる所定の関数の前記変数のうちの一つに、1に前記第1の値を加算した値を代入して得られる第2の値に、要因に応じた重み付けをした第3の値を成分とするベクトルのノルムとして算出する、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記複数の要因それぞれの前記第1の値に対応するスコアの合計値として算出する、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記コンピュータが、
前記類似度を、2つの不動産の前記複数の要因それぞれの差分値と、前記2つの不動産
の類似度と、の関係を学習した学習モデルに、前記複数の要因それぞれの前記第1の値を入力した場合の前記学習モデルの出力に基づいて取得する、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記コンピュータが、
前記類似度を、前記第1の不動産の前記複数の要因それぞれの値を成分とする第1のベクトルと、前記第2の不動産の前記複数の要因それぞれの値を成分とする第2のベクトルと、のコサイン類似度として算出する、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記複数の要因は、少なくとも、接面する道路の幅員、容積率、又は、地価水準のいずれかを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項12】
複数の第1の不動産それぞれについて、第2の不動産との類似度を、複数の要因それぞれの、第1の不動産の値と前記第2の不動産の値とを用いて算出し、
前記複数の第1の不動産の中から、前記類似度に基づいて、前記第2の不動産と類似する不動産を出力する、
制御部、
を備える情報処理装置。
【請求項13】
コンピュータに、
複数の第1の不動産それぞれについて、第2の不動産との類似度を、複数の要因それぞれの、第1の不動産の値と前記第2の不動産の値とを用いて算出させ、
前記複数の第1の不動産の中から、前記類似度に基づいて、前記第2の不動産と類似する不動産を出力させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象不動産と類似する不動産を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鑑定対象地点に近い取引事例や公示地・基準地の価格に関する情報を用いて、鑑定対象地点の評価額を求める技術が開示されている(例えば、特許文献1-3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-73239号公報
【特許文献2】特開2002-24357号公報
【特許文献3】特開2022-131425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、不動産鑑定士などの熟練者が対象不動産の評価に用いる取引事例や公示地・基準地を選択する場合には、対象不動産と距離が近いことだけでなく、接面する道路の幅員や対象不動産の周辺の環境などの複数の要因が加味され、対象不動産により類似する取引事例や公示地・基準地が選択される。
【0005】
本発明は、上記した問題に鑑み、複数の不動産の中から、鑑定対象の不動産と類似する不動産を精度よく特定可能な情報処理方法、情報処理装置、及び、プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、コンピュータが、複数の第1の不動産それぞれについて、第2の不動産との類似度を、複数の要因それぞれの、第1の不動産の値と第2の不動産の値とを用いて算出し、複数の第1の不動産の中から、類似度に基づいて、第2の不動産と類似する不動産を出力する、情報処理方法である。第2の不動産は、例えば、鑑定対象の不動産、ユーザの検索条件を満たす仮想の不動産である。第2の不動産が鑑定対象の不動産である場合には、第1の不動産は、例えば、取引事例のある不動産、及び、公示価格等の価格基準が設定されている不動産等である。第2の不動産がユーザの検索条件を満たす仮想の不動産である場合には、第1の不動産は、第2の不動産の周辺に所在する不動産等である。複数の要因は、不動産の評価の要因である。複数の要因は、例えば、距離、用途、容積率、面積、接面する道路の幅員、所在の市区町村又は所在の行政区、及び、価格水準等を含む。ただし、複数の要因はこれらに限定されない。
【0007】
本発明の態様の一つによれば、不動産の評価の複数の要因が加味された類似度を用いて、第2の不動産に類似する第1の不動産がコンピュータによって出力される。これによって、第2の不動産と類似する不動産を精度よく特定することができる。第2の不動産と類似する不動産の特定の精度がよいとは、特定された不動産に対して、複数の要因から総合的に見ても第2の不動産との類似性に違和感が少ないことである。
【0008】
第1の不動産と第2の不動産の類似度は、複数の要因それぞれについての、第1の不動産と第2の不動産との差分値に基づいて算出されてもよいし、各要因の当該差分値を複数の要因間で単位をそろえた値に基づいて算出されてもよい。値の単位を揃える方法には、例えば、正規化、標準化、及び、基準化がある。当該コンピュータが、複数の要因それぞ
れについての、第1の不動産と第2の不動産との差分値を用いて類似度を算出する場合には、当該コンピュータは、当該差分値に基づく値を成分とするベクトルのノルムとして、類似度を算出してもよい。または、当該コンピュータは、第1の不動産と第2の不動産との類似度を、複数の要因それぞれの第1の不動産と第2の不動産との差分値に基づく値に対応するスコアの合計値として算出してもよい。または、当該コンピュータは、第1の不動産と第2の不動産との類似度を、学習モデルに複数の要因それぞれの第1の不動産と第2の不動産との差分値に基づく値を入力した場合の当該学習モデルの出力に基づいて取得してもよい。当該学習モデルは、2つの不動産の複数の要因それぞれの差分値と当該2つの不動産の類似度との関係を学習済みのモデルである。当該学習モデルは、例えば、所定のアルゴリズムに従った機械学習モデル、ニューラルネットワーク、深層学習モデル、畳込ニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク等のいずれであってもよい。
【0009】
また、当該コンピュータは、第1の不動産と第2の不動産との類似度を、第1の不動産の複数の要因それぞれの値を成分とする第1のベクトルと、第2の不動産の複数の要因それぞれの値を成分とする第2のベクトルと、のコサイン類似度として算出してもよい。上記いずれの方法で第1の不動産と第2の不動産との類似度を算出する場合でも、複数の要因を同時に加味した類似度が得られるので、第2の不動産に類似する不動産の特定精度を向上させることができる。
【0010】
第1の不動産と第2の不動産との類似度の算出において加味される要因として、例えば、接面する道路の幅員が含まれることによって、接面する道路の幅員が近しい第1の不動産が類似する不動産として特定される可能性が高まる。例えば、鑑定対象の第2の不動産がいわゆる大通りに面しているのに、類似する不動産として、幅員の狭い道路に面する第1の不動産が特定されるような、類似性に違和感のある第1の不動産が第2の不動産に類似する不動産として特定されることを抑制することができる。
【0011】
第1の不動産と第2の不動産との類似度の算出において加味される要因として、例えば、容積率や地価水準が含まれることによって、繁華性、住環境、及び、利便性等が近しい第1の不動産が類似する不動産として特定される可能性が高まる。容積率や地価水準は、繁華性、住環境の良さ、及び、利便性等を考慮して決定されることが多いからである。地価水準は、例えば、固定資産税路線価、相続税路線価、地価公示価格、及び、都道府県地価調査価格等と不動産を関連付けることにより求められる。これらによって、例えば、鑑定対象の第2の不動産が閑静な住宅街に所在しているのに、類似する不動産として、繁華街に所在している第1の不動産が特定されるようなことを抑制することができる。
【0012】
本発明の他の態様の一つは、上記情報処理方法のいずれかを実行する情報処理装置としても特定することができる。また、本発明の他の態様の一つは、コンピュータに上記情報処理方法のいずれかを実行させるためのプログラムとしても特定可能である。なお、本発明の他の態様の一つは、上記プログラムを格納した非一時的記憶媒体として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、対象不動産と類似する不動産を精度よく特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係る事例検索システムとサーバのハードウェア構成との一例を示す図である。
図2図2は、サーバの機能構成の一例を示す図である。
図3図3は、不動産情報データベースに保持される情報の一例である。
図4図4は、取引事例データベースに保持される情報の一例である。
図5図5は、第1実施形態に係るサーバの類似事例検索処理のフローチャートの一例である。
図6図6は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理のフローチャートの一例である。
図7図7は、端末における類似事例の出力画面の一例である。
図8図8は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例1のフローチャートの一例である。
図9図9は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例2のフローチャートの一例である。
図10図10は、学習モデルを用いた対象不動産と比較事例との類似度取得処理の一例を示す図である。
図11図11は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例3のフローチャートの一例である。
図12図12は、学習モデルの学習処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る事例検索システムとサーバのハードウェア構成との一例を示す図である。事例検索システム100は、複数の不動産の取引事例の中から、対象不動産に類似する不動産の取引事例を検索するシステムである。類似する不動産の取引事例は、例えば、対象不動産の評価額の算出に用いられたりする。事例検索システム100によって類似する不動産の取引事例を検索可能な不動産の種類は、例えば、土地、一軒家、マンションの部屋、アパートの部屋、マンション一棟、アパート一棟、ビル、店舗、及び、事務所等である。第1実施形態では、対象の不動産をマンションの一室とし、マンションの一室の取引事例の中から類似する取引事例を検索する場合を想定して説明する。取引事例は成約事例に限らず、所有者が売却を希望した売り出し事例でも過去の評価先例でも良い。対象不動産が土地の場合は、取引事例の代わりに、又は、取引事例に加えて、公示地・基準地のような公的評価地点が用いられてもよい。以下、不動産の取引事例を、単に、取引事例、又は、事例、と称する。また、対象の不動産と類似する不動産の取引事例を、単に、類似事例、と称する。
【0017】
事例検索システム100は、サーバ1と、端末2とを含む。事例検索システム100は、端末2を複数含むことも可能であるが、図1では、簡略化のため、端末2は、1台のみ表示されている。サーバ1と端末2とは、例えば、通信ネットワークN1を介して接続されている。通信ネットワークN1は、例えば、インターネット等の公衆ネットワークであってもよいし、社内ネットワーク等のプライベートなネットワークであってもよい。
【0018】
端末2は、例えば、PC、スマートフォン、及び、タブレット端末等である。端末2は、サーバ1へ、類似事例の検索リクエストを送信する。当該リクエストとともに、例えば、対象不動産に関する情報も送信される。類似事例の検索リクエストとともに送信される対象不動産に関する情報には、例えば、対象の不動産の、位置情報、名称、容積率、面積、築年数、及び、間取り等の情報が含まれる。ただし、これに限られず、対象の不動産が予め事例検索システム100に登録されている不動産である場合には、類似事例の検索リクエストとともに送信される対象不動産に関する情報は、対象不動産の識別情報だけであってもよい。
【0019】
サーバ1は、端末2から、類似事例の検索リクエストを受信すると、複数の取引事例に
ついて、対象不動産との類似度を算出する。対象不動産との類似度が算出される複数の取引事例は、対象不動産に関する所定の条件を満たす取引事例である。対象不動産に関する所定の条件は、例えば、対象不動産から所定の距離の範囲内に所在する、対象不動産と同じ地域(都道府県、市区町村)に所在する、及び、対象不動産と同じ用途(住宅地、商業地
、工業地)である、等のいずれか又は複数の組み合わせである。以下、対象不動産に関す
る所定の条件を満たす取引事例を、単に、比較事例、と称する。比較事例は、「第1の不動産」の一例である。対象不動産は、「第2の不動産」の一例である。
【0020】
対象不動産と比較事例との類似度は、第1実施形態では、対象不動産と比較事例との、位置、接面道路の幅員、容積率、面積、価格水準、及び、所在の市区町村等の不動産の評価額に影響する複数の要因を加味して算出される。サーバ1は、類似度に基づいて比較事例の中から類似事例を特定し、当該類似事例に関する情報を端末2へ送信する。
【0021】
第1実施形態によれば、対象不動産と比較事例との類似度が、不動産の評価額に影響する複数の要因が加味されて算出される。これによって、例えば、熟達者が類似事例を特定する場合のように、対象不動産と類似性において違和感のない取引事例を類似事例として特定することができる。
【0022】
図1には、サーバ1のハードウェア構成も示されている。サーバ1は、例えば、専用のコンピュータ、又は、PC(Personal Computer)等の汎用のコンピュータである。サー
バ1は、例えば、ハードウェア構成要素として、CPU(Central Processing Unit)1
01、メモリ102、外部記憶装置103、及び、通信部104を備え、これらがバスにより互いに接続されている情報処理装置である。
【0023】
通信部104は、例えば、有線のネットワーク、又は、無線のネットワークと接続する。通信部104は、例えば、NIC(Network Interface Card)、光通信用のユニット、無線LAN(Local Area Network)カード、又は、携帯電話網に接続するための無線回路等である。通信部104で受信されたデータ等は、CPU 101に出力される。
【0024】
メモリ102は、CPU 101に、外部記憶装置103に格納されているプログラムをロードする記憶領域および作業領域を提供したり、バッファとして用いられたりする記憶装置である。メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)のような半導体メモリである。
【0025】
外部記憶装置103は、様々なプログラムや、各プログラムの実行に際してCPU 101が使用するデータを格納する。外部記憶装置103は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスク(Hard Drive Disc)、又は、SSD(Solid State Drive)である。外部記憶装置103は、例えば、オペレーティングシステム(OS
)、類似事例検索プログラム、及び、その他様々なアプリケーションプログラムを保持する。類似事例検索プログラムは、複数の取引事例の中から対象不動産の類似事例を検索するためのプログラムである。
【0026】
CPU 101は、補助記憶装置105に保持されたOSや様々なアプリケーションプログラムをメモリ102にロードして実行することによって、様々な処理を実行する。CPU 101は、1つであってもよいし、複数であってもよい。CPU 101は、「制御部」の一例である。
【0027】
なお、図1に示されるサーバ1のハードウェア構成は、一例であり、上記に限られず、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略や置換、追加が可能である。例えば、サーバ1は、キーボードやマウス等の入力装置、及び、ディスプレイ等の出力装置を備えてもよ
い。例えば、サーバ1は、可搬記録媒体を駆動し、可搬記録媒体に記録されたデータを読み出す可搬記録媒体駆動装置を備えてもよい。可搬記録媒体は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスクのようなディスク記録媒体、フラッシュメモリカードのような記録媒体である。
【0028】
端末2は、例えば、PC、タブレット端末、又は、スマートフォン等の端末である。端末2もハードウェア構成として、CPU、メモリ、補助記憶装置、通信部を備えており、さらに、ディスプレイ又はタッチパネルディスプレイやキーボード等も備える。端末2は、例えば、補助記憶装置に事例検索システム100のクライアント用のアプリケーションプログラムをインストールしており、当該アプリケーションプログラムを実行することによって、類似事例の検索リクエストをサーバ1へ送信したり、類似事例の検索結果を画面に出力したりする。
【0029】
図2は、サーバ1の機能構成の一例を示す図である。サーバ1は、機能構成要素として、事例抽出部11、類似度取得部12、類似事例決定部13、不動産情報DB 14、位置情報DB 15、及び、取引事例DB 16を備える。これらの機能構成要素は、サーバ1のCPU 101が外部記憶装置103に保持されているプログラムを実行することによって達成される機能構成要素である。
【0030】
事例抽出部11は、端末2からの類似事例の検索リクエストを受信すると、抽出条件を満たす取引事例を比較事例として取引事例DB 16から抽出する。抽出条件は、例えば、対象不動産から所定の距離の範囲内に所在すること、対象不動産と同じ地域(都道府県、市区町村)内に所在すること、及び、対象不動産から用途が同じであること、等のうちのいずれか又は組み合わせである。なお、抽出条件はこれらに限定されず、事例検索システム100の管理者によって任意に設定可能である。事例抽出部11によって抽出された比較事例の数は、例えば、数十から数百程度である。
【0031】
類似度取得部12は、事例抽出部11によって抽出された複数の比較事例それぞれについて、対象不動産との類似度を算出する。第1実施形態では、対象不動産と比較事例との類似度は、複数の要因それぞれの差分値に基づく値を成分とするベクトルのノルムとして取得される。類似度の算出の詳細については、後述される。
【0032】
類似事例決定部13は、類似度取得部12によって算出された、複数の比較事例それぞれの対象不動産との類似度に基づいて、類似事例を決定する。類似事例決定部13は、例えば、複数の比較事例のうち、類似度が上位所定数の比較事例を類似事例として決定する。類似事例の数は、1以上である。ただし、これに限定されず、類似事例決定部13は、例えば、類似度の値が小さいほど類似性が高いことが示される場合には、類似度が所定の閾値未満である比較事例を類似事例として決定してもよい。類似度の値が大きいほど類似性が高いことが示される場合には、類似事例決定部13は、類似度が所定の閾値以上である比較事例を類似事例として決定してもよい。類似事例決定部13は、類似事例に関する情報を端末2へ送信する。端末2へ送信される類似事例に関する情報は、例えば、物件名、所在地、及び、複数の要因それぞれの値等が含まれる。
【0033】
不動産情報DB 14、位置情報DB 15、及び、取引事例DB 16は、外部記憶装置103の記憶領域に作成される。不動産情報DB 14には、事例検索システム100に登録されている不動産に関する情報が格納されている。不動産情報DB 14に保持されている情報の詳細は、後述される。位置情報DB 15には、住所データ、沿線及び駅データ、用途や容積率等のGISデータ、及び、地図情報等の不動産の位置を特定する情報が格納されている。取引事例DB 16には、不動産の売買の取引事例に関する情報
が格納されている。取引事例DB 16に保持されている情報の詳細は後述される。なお、図2に示されるサーバ1の機能構成は一例であって、これに限定されない。
【0034】
図3は、不動産情報DB 14に保持される情報の一例である。不動産情報DB 14には、例えば、取引事例のある不動産、事例検索システム100の管理者によって調査された不動産、及び、事例検索システム100のユーザによって登録された不動産等に関する情報が格納されている。図3に示される例では、物件の識別情報(物件ID)、物件名、所在地、築年数、面積、及び、容積率が不動産に関する情報として保持されている。物件名は、例えば、不動産がマンションである場合にはマンション名、不動産がビルである場合にはビル名である。所在地には、例えば、住所、又は、緯度及び経度が用いられる。容積率は、不動産がマンションの一室である場合には、マンション一棟についての容積率である。なお、不動産情報DB 14に保持される情報は、図3に示される情報に限定されず、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0035】
図4は、取引事例DB 16に保持される情報の一例である。図4に示される取引事例DB 16には、例えば、事例の識別情報(事例ID)、物件の識別情報(物件ID)、販売開始年月、販売開始価格、成約年月、及び、成約価格、の情報が格納されている。販売開始価格及び成約価格は、物件そのものの価格であってもよいし、単位面積当たりの価格であってもよい。取引事例の物件の詳細な情報は、物件の識別情報を用いて不動産情報DB 14から取得することができる。なお、取引事例DB 16に保持される情報は、図4に示される情報に限定されず、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0036】
<処理の流れ>
図5は、第1実施形態に係るサーバ1の類似事例検索処理のフローチャートの一例である。図5に示される処理は、例えば、端末2から類似事例の検索リクエストが受信された場合に開始される。図5に示される処理の実行主体は、CPU 101であるが、便宜上、機能構成要素を主体として説明する。図5以降のフローチャートについても同様である。
【0037】
OP101では、事例抽出部11は、対象不動産に関する情報を取得する。OP101で取得される対象不動産に関する情報は、例えば、類似度の算出に用いられる複数の要因の値である。対象不動産が事例検索システム100に登録されている不動産であり、類似事例の検索リクエストとともに、対象不動産の識別情報が受信された場合には、事例抽出部11は、対象不動産に関する情報を不動産情報DB 14から取得する。対象不動産が事例検索システム100に登録されていない不動産である場合には、端末2から類似事例の検索リクエストとともに、対象不動産に関する情報が受信される。なお、例えば、類似度の算出に用いられる要因として、接面道路の幅員、最寄り駅までの距離、及び、徒歩時間等の対象不動産の周辺の地図情報等が必要な場合には、OP101において、事例抽出部11は、位置情報DB 15を参照して、該当の情報を取得する。例えば、類似度の算出に用いられる要因として、不動産情報DB 14及び位置情報DB 15を参照しても得られない情報がある場合には、事例抽出部11は、端末2へ当該情報の取得要求を送信し、ユーザに端末2へ対象不動産について当該情報の入力をしてもらうことで取得してもよい。
【0038】
OP102では、事例抽出部11は、不動産情報DB 14、位置情報DB 15、及び、取引事例DB 16を参照して、抽出条件を満たす複数の取引事例を比較事例として取得する。事例抽出部11は、類似度取得部12へ、複数の比較事例を通知する。
【0039】
OP103では、類似度取得部12は、事例抽出部11によって取得された複数の比較事例について、対象不動産との類似度を取得する。OP103における処理の詳細は後述
される。類似度取得部12は、複数の比較事例それぞれの対象不動産との類似度を類似事例決定部13へ出力する。
【0040】
OP104では、類似事例決定部13は、複数の比較事例それぞれの対象不動産との類似度に基づいて、類似事例を決定する。例えば、類似度の値が小さいほど類似度が高いことが示される場合には、類似度の値が小さい上位所定数の比較事例、又は、類似度が所定の閾値未満である比較事例を類似事例として決定する。例えば、類似度の値が大きいほど類似度が高いことが示される場合には、類似度の値が大きい上位所定数の比較事例、又は、類似度が所定の閾値以上である比較事例を類似事例として決定する。
【0041】
OP105では、類似事例決定部13は、類似事例に関する情報を端末2へ送信する。端末2へ送信される類似事例に関する情報は、例えば、類似事例の識別情報、物件名、所在地、及び、類似度の算出に用いられる複数の要因の値等である。なお、端末2へ送信される類似事例に関する情報の詳細は、これに限定されず、実施の形態に応じて事例検索システム100の管理者が任意に設定可能である。その後、図5に示される処理が終了する。
【0042】
図6は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理のフローチャートの一例である。図6に示される処理は、図5のOP103において実行される処理に相当する。図6に示される処理は、複数の比較事例それぞれについて実行される。図6に示される例では、要因として、距離、接面道路の幅員、容積率、面積、価格水準として路線価、及び、市区町村の6つを用いて類似度が算出される場合について説明される。
【0043】
OP201では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との距離に基づいて、d1を取得する。距離は、対象不動産と比較事例との位置の差分値とも言える。OP202では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との接面道路の幅員の差分値に基づいて、d2を取得する。OP203では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との容積率の差分値に基づいて、d3を取得する。OP204では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との面積の差分値に基づいて、d4を取得する。OP205では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との路線価の差分値に基づいて、d5を取得する。
【0044】
d1からd5は、例えば、以下の式1で求められる。
【数1】
【0045】
複数の要因それぞれは単位が異なり、1単位(例えば、距離における1m、面積における1平方メートル)の持つ影響力が要因ごとに異なる。その為、複数の要因間で単位を揃えて、d1からd5を、例えば、以下の式2で求めてもよい。
【数2】
【0046】
S1からS5は、例えば、複数の要因それぞれの対象不動産と比較事例との差分値について、全ての比較事例中での、最大値、標準偏差値、又は、固定値のいずれであってもよい。S1として最大値を用いる場合には正規化となる。S1として標準偏差値を用いる場合には標準化となる。S1として固定値を用いる場合には基準化となる。
【0047】
また、S1からS5は、以下の式3で求められてもよい。
【数3】
【0048】
引数kは、0から100の整数であり、初期値は100である。kは、事例検索システム100の管理者が任意に設定可能である。kが100である場合には、比較事例中の最大値となる。kが50である場合には、比較事例中の中央値となる。kが25である場合には、四分位置となる。αは、例えば、0.001等の値であり、事例検索システム100の管理者が任意に設定可能である。
【0049】
次に、OP206では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例とが同一の市区町村に所在する場合にはd6を0、対象不動産と比較事例とが異なる市区町村に所在する場
合にはd6を所定値として取得する。所在する市区町村は数値表現されるものではないが、異なる場合には差分が生じていると捉えることができ、d6を所定値とする。すなわち、d6も、所在の市区町村という要因における、対象不動産と比較事例との差分値、と言える。なお、所在する市区町村が異なる場合のd6の値は、d1からd5の値が単位を揃えられている場合(正規化、標準化、基準化等)には、1が用いられる。なお、OP201からOP206のようにd1からd6が取得される場合には、類似度は、値が小さいほど類似していることを示すようになる。d1からd6の値は、それぞれ、「第1の値」の一例である。
【0050】
OP207では、類似度取得部12は、d1からd6に基づく値を成分とするベクトルのノルムを算出して、対象不動産と比較事例との類似度Dとして取得する。ノルムは、ユークリッドノルム、絶対値ノルム、及び、最大値ノルムのいずれが用いられてもよいし、ミンコフスキー距離やマハラノビス距離のような一般化されたノルムでも良い。以下では、ユークリッドノルムが採用される場合について説明する。類似度Dは、ユークリッドノルムとして、d1からd6をベクトルの成分とする場合には、以下の式4で求められる。nは、要因の数である。
【数4】
【0051】
複数の要因間で重み付けを行う場合には、重み付けされたd1からd6がベクトルの成分となり、重みwiとすると、類似度Dは、以下の式5で求められる。重みwiは、例えば、複数の要因から、ユーザが重視する要因の選択に応じて決定される。初期値は、wi=1である。例えば、ユーザによって重視することが選択されると、該当の要因の重みwiに所定値が加算される。なお、ユーザによって重視することが選択された場合に該当の要因の重みwiは、1より大きい値の係数が乗じられてもよい。
【数5】
【0052】
また、極端な要因の値を持つ比較事例が含まれる場合には、類似度の精度が下がってし
まう可能性がある。極端な要因の値を持つ比較事例が類似事例として選択されることを抑制するため、類似度Dは、例えば、要因の値を指数関数化した値をベクトルの成分として、以下の式6で求められてもよい。式6によれば、極端な要因の値を持つ比較事例の類似度の値が大きくなるようにすることができ、当該比較事例が類似事例として選択されることを抑制することができる。式6における指数関数e^diは、「所定の関数」の一例である。式6における指数関数e^diにおける指数部分の“di”は、「変数」の一例である。
【数6】
【0053】
また、式5と式6とを組み合わせて、類似度Dは、以下の式7で求められてもよい。式7のように、e^(1+di)とすることで、極端な要因の値を持つ比較事例を類似度が大きくなるようにする効果をより得ることができる。式7における指数関数e^(1+di)は、「所定の関数」の一例である。指数関数の指数は、「変数」の一例である。e^(1+di)の値は、「第2の値」の一例である。wi・e^(1+di)の値は、「第3の値」の一例である。
【数7】
【0054】
類似度Dをベクトルのノルムとして取得する場合に、当該ベクトルの成分の算出に用いられる関数は、式6及び式7に用いられている指数関数に限定されない。例えば、二次関数、及び、対数関数等の、変数の値が大きくなると関数の値も大きくなるような関数であれば、類似度Dをベクトルのノルムとして取得する場合の当該ベクトルの成分の算出に用いることができる。類似度Dの算出に式4から式7のいずれを用いるかは、事例検索システム100の管理者が任意に選択可能である。OP207の処理が終了すると、次の比較事例についてOP201からの処理が実行される。全ての比較事例について類似度が取得されると、処理が図5のOP104に進む。
【0055】
図7は、端末2における類似事例の出力画面の一例である。図7では、地図上に対象不
動産と類似事例とが表示される場合の類似事例の出力画面の一例が示されている。図7では、対象不動産は黒塗りで示されており、比較事例は白塗りで示されている。その他の建物の表示は、簡略化のため、省略されている。比較事例のうち類似事例として決定された不動産の位置には、マーカーが配置されている。
【0056】
図7に示される例では、対象不動産と最も近い不動産の取引事例ではなく、対象不動産と同じ通り沿いで少し離れた位置にある不動産の取引事例が類似事例として選択されている。このように、第1実施形態によれば、複数の要因を加味して、対象不動産と比較事例との類似度が算出されるので、一つの要因に依らず複数の要因を総合的に見て、対象不動産と類似する取引事例が類似事例として選択される。
【0057】
図7に示される例では、画面の下に、「近さをより重視する」、「幅員をより重視する」、「容積率をより重視する」、「面積をより重視する」、「価格水準をより重視する」、及び、「同一市区町村であることをより重視する」の項目とそれぞれのチェックボックスが配置されている。ユーザは、自身が重視する要因にチェックを付けて選択することによって、その情報が端末2からサーバ1へ送信され、サーバ1は、選択された要因の重みをより大きいものに設定し、類似事例の取得処理を、例えば、式5又は式7を用いて、再度実行する。その結果、選択された要因がより重視された取引事例が類似事例として決定されることになる。なお、類似事例は、1つでなく複数選択されることも可能である。その場合には、複数の類似事例がリスト形式又は地図上にプロットされて提示されてもよい。また、図7に示される例では、類似事例の位置が示されているが、この他に、物件名、所在地、及び、各要因の値等が表示されてもよい。
【0058】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態によれば、複数の要因を加味して対象不動産と比較事例との類似度が算出されるので、複数の要因から総合的に見て、対象不動産と類似性の高い類似事例を提示することができる。また、ユーザは、端末2を通じて、対象不動産に関する情報を入力すれば、自動的に、対象不動産に類似する取引事例を、熟達者が選択した場合と同様の精度で簡便に、取得することができる。
【0059】
<類似度取得処理の変形例1>
第1実施形態では、対象不動産と比較事例との類似度は、複数の要因のそれぞれについて、対象不動産と比較事例との差分値に基づく値を成分とするベクトルのノルムとして取得される。これに代えて、対象不動産の複数の要因の値を成分とするベクトルと、比較事例の複数の要因の値を成分とするベクトルと、のコサイン類似度を、対象不動産と比較事例との類似度として用いてもよい。
【0060】
図8は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例1のフローチャートの一例である。図8に示される処理は、図6で示される類似度取得処理の代わりに、図5のOP103に相当する処理として実行可能な処理である。図8に示される処理は、比較事例ごとに実行される。
【0061】
OP301では、類似度取得部12は、対象不動産の複数の要因それぞれの値を成分とするベクトルAを取得する。例えば、類似度の算出に用いられる要因が、図6に示される例と同じ場合には、ベクトルA=(対象不動産の位置情報、対象不動産の接面道路の幅員、対象不動産の容積率、対象不動産の面積、対象不動産の路線価、及び、対象不動産が所在する市区町村)である。なお、市区町村は数値でないため、例えば、隣接する市区町村では値が近くなるように、予め各市区町村に数値(番号)を割り当てておき、ベクトルの成分には当該数値を用いてもよい。
【0062】
OP302では、類似度取得部12は、比較事例の複数の要因それぞれの値を成分とするベクトルBを取得する。例えば、類似度の算出に用いられる要因が、図6に示される例と同じ場合には、ベクトルB=(比較事例の位置情報、比較事例の接面道路の幅員、比較事例の容積率、比較事例の面積、比較事例の路線価、及び、比較事例が所在する市区町村)である。
【0063】
OP303では、類似度取得部12は、ベクトルAとベクトルBとのコサイン類似度を算出する。ベクトルAとベクトルBとのコサイン類似度は、以下の式8で取得される。Ai及びBiは、それぞれ、ベクトルA及びベクトルBの成分を示す。
【数8】
【0064】
コサイン類似度は、-1から1の範囲の値として取得される。コサイン類似度が1である場合には、2つのベクトルが同じ向きのベクトルであり、完全に似ていることが示される。コサイン類似度が0である場合には、2つのベクトルがなす角が90度であり、似ている及び似ていないのどちらにも無関係であることが示される。コサイン類似度が-1である場合には、2つのベクトルがなす角が180度であり、完全に似ていないことが示される。
【0065】
なお、対象不動産のベクトルAと比較事例のベクトルBとの成分は、それぞれ、各要因の値がそのまま用いられてもよいし、例えば、式2、式3で説明されたのと同様にして、各要素間で単位が揃えられてもよい。または、対象不動産のベクトルAと比較事例のベクトルBとの成分は、ユーザが重視することを選択した要因に応じて、重み付けがなされてもよい。
【0066】
<類似度取得処理の変形例2>
対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例2では、サーバ1は、各要因について用意されたスコア表から、各要因の差分値の値に応じたスコアを取得し、当該スコアの合計値を類似度として取得する。各要因のスコア表では、例えば、差分値が大きくなるほどスコアも大きくなるように設定されている。この場合には、類似度は値が小さいほど類似度が高くなることが示される。ただし、各要因のスコア表における差分値とスコアとの関係はこれに限定されず、差分値が大きいほどスコアの値が小さくなるように設定されてもよい。この場合には、類似度は値が大きいほど類似度が高くなることが示される。各要因のスコア表は、例えば、外部記憶装置103に保持されている。
【0067】
図9は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例2のフローチャートの一例である。図9に示される処理は、図6で示される類似度取得処理の代わりに、図5のOP103に相当する処理として実行可能な処理である。図8に示される処理は、比較事例ご
とに実行される。
【0068】
OP401では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との距離に対応するスコアを、例えば、距離スコア表から取得する。OP402では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との接面道路の幅員の差分値に対応するスコアを、例えば、幅員スコア表から取得する。OP403では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との容積率の差分値に対応するスコアを、例えば、容積率スコア表から取得する。OP404では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との面積の差分値に対応するスコアを、例えば、面積スコア表から取得する。OP405では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との路線価の差分値に対応するスコアを、例えば、価格水準スコア表から取得する。
【0069】
OP406では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例とがそれぞれ所在する市区町村の差分に対応するスコアを、例えば、市区町村スコア表から取得する。なお、市区町村は数値ではないため、例えば、対象不動産と比較事例とがそれぞれ所在する市区町村が同じである場合のスコア、隣接している場合のスコア、及び、異なる県である場合のスコア等が市区町村スコア表に用意されている。このほか、対象不動産と比較事例とがそれぞれ所在する市区町村の役所間の距離を差分値として用い、市区町村スコア表は市区町村の役所間の距離とスコアとの対応を保持していてもよい。
【0070】
OP407では、類似度取得部12は、各要因のスコアの合計値を類似度として取得する。なお、各要因のスコア値は、ユーザが重視することを選択した要因に応じて、重み付けがなされてもよい。また、各要因のスコアは、各要因について用意された所定の関数に差分値を入力して算出される値が用いられてもよい。
【0071】
<類似度取得処理の変形例3>
対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例3では、サーバ1は、学習モデルを用いて当該類似度を算出する。
【0072】
図10は、学習モデルを用いた対象不動産と比較事例との類似度取得処理の一例を示す図である。用いる学習モデルは、例えば、所定のアルゴリズムに従った機械学習モデル、ニューラルネットワーク、深層学習モデル、畳込ニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク等のいずれであってもよい。
【0073】
学習モデルは、2つの不動産の複数の要因それぞれの差分値を入力データ、当該2つの不動産の類似レベルを出力データとする所定数の学習用データによって、2つの不動産の複数の要因の差分値と当該2つの不動産の類似レベルとの関係を学習済みである。類似レベルは、例えば、類似性の高い順で、レベルS>レベルA>レベルB>レベルC>レベルDの5段階である。ただし、類似レベルの段階分けはこれらに限定されず、事例検索システム100の管理者が任意に設定可能である。
【0074】
学習用データは、例えば、不動産鑑定士等の所定数の不動産鑑定の熟達者に、所定数の不動産のうちの2つの組み合わせ複数についての類似レベルを判定させることによって取得される。学習用データを作成する熟達者の数、及び、学習用データを作成するための不動産の数は、多ければ多いほど良い。
【0075】
上述のように学習された学習モデルに、複数の要因について、対象不動産と比較事例との差分値を入力すると、当該学習モデルからは、対象不動産と比較事例との類似度が各レベルに分類される確率が出力として得られる。類似度取得部12は、例えば、最も確率の高いレベルを、対象不動産と比較事例との類似レベルとして判定する。なお、学習用デー
タで用いられる複数の要因と類似度の推定時に用いられる複数の要因とは、同じ要因である。
【0076】
類似度取得部12は、各比較事例のうち、例えば、最も高い類似レベルに分類された比較事例を類似事例に決定する。例えば、類似レベルSに分類された比較事例がある場合には、当該類似レベルSに分類された比較事例が類似事例として決定される。例えば、類似レベルSに分類された比較事例がない場合には、類似レベルAに分類された比較事例が類似事例として決定される。なお、学習モデルの学習及び推定において用いられる要因の種類が変更される場合には、学習モデルは新たな学習用データで学習し直す必要がある。
【0077】
図11は、対象不動産と比較事例との類似度取得処理の変形例3のフローチャートの一例である。図11に示される処理は、図6で示される類似度取得処理の代わりに、図5のOP103に相当する処理として実行可能な処理である。図18に示される処理は、比較事例ごとに実行される。図11に示される例では、要因として、距離、接面道路の幅員、容積率、面積、価格水準として路線価、及び、市区町村の6つを用いて類似度が算出される場合について説明される。
【0078】
OP501では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との距離を取得する。OP502では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との接面道路の幅員の差分値を取得する。OP503では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との容積率の差分値を取得する。OP504では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との面積の差分値を取得する。OP505では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例との路線価の差分値を取得する。
【0079】
OP506では、類似度取得部12は、対象不動産と比較事例とが同一の市区町村に所在する場合には対象不動産と比較事例と差分値を0、対象不動産と比較事例とが異なる市区町村に所在する場合には対象不動産と比較事例との差分値を1として取得する。
【0080】
OP507では、類似度取得部12は、学習モデルに、複数の要因のそれぞれの、対象不動産と比較事例との差分値を入力して、学習モデルの出力値から、対象不動産と比較事例との類似レベルを類似度として取得する。その後、次の比較事例についてOP501からの処理が実行される。また、すべての比較事例について類似レベルが取得された場合には、処理が図5のOP104へ進む。なお、各要因の対象不動産と比較事例との差分値は、ユーザが重視することを選択した要因に応じて、重み付けがなされてから、学習モデルに入力されてもよい。また、各要因の対象不動産と比較事例との差分値は、複数の要因間で単位が揃えられてもよい。この場合には、学習用データの入力データでも複数の要因間で単位が揃えられている必要がある。
【0081】
図12は、学習モデルの学習処理のフローチャートの一例である。例えば、学習モデルの学習の制御は類似度取得部12によって実行される。ただし、これに限定されず、学習モデルの学習処理を実行する機能構成が別途サーバ1に備えられてもよい。
【0082】
図12に示される処理は、例えば、1日に1回、1週間に1回、1ヶ月に1回、又は、1年に1回等の周期で予め決められたタイミングで実行される。ただし、これに限定されず、図12に示される処理は、事例検索システム100の管理者からの学習開始の指示によって開始されてもよい。または、学習用データの追加のタイミングで実行されてもよい。
【0083】
OP601では、類似度取得部12は、学習用データを取得する。学習用データは、サーバ1とは別のデータベースから取得されてもよいし、サーバ1が学習用データのデータ
ベースを保持し、当該データベースから取得してもよい。
【0084】
OP602からOP605の処理は、学習データごとに繰り返し実行される。OP602では、類似度取得部12は、学習用データの入力データを学習モデルに入力し、出力を得る。OP603では、類似度取得部12は、学習モデルの出力値と、学習用データの出力データとを比較する。学習モデルの出力値は、各類似レベルに分類される確率である。学習用データの出力データは、熟達者によって分類された2つの不動産の類似レベルは1、その他の類似レベルは0である。OP604では、類似度取得部12は、OP603の比較結果に基づいて、学習モデルのパラメータを調整する。
【0085】
OP605では、類似度取得部12は、終了条件が満たされたか否かを判定する。終了条件は、例えば、学習モデルの出力値と、学習用データの出力データとの差分値が所定の閾値未満となること、又は、OP602からOP605の処理が所定回数繰り返し実行されたこと、である。終了条件が満たされていない場合には(OP605:NO)、処理がOP602に進み、対象の学習用データについてOP602からOP605の処理が繰り返し実行される。終了条件が満たされた場合には(OP605:YES)、次の学習用データに対してOP602からOP605の処理が実行される。全ての学習用データについてOP602からOP605の処理が終了すると、図12に示される処理が終了する。
【0086】
なお、学習モデルを用いて対象不動産と比較事例との類似度を取得する方法は、上述の方法に限定されない。
【0087】
<その他の類似度取得処理の変形例>
上述の対象不動産と比較事例との類似度取得処理のそれぞれにおいて、類似度の算出に用いる要因の数が多い(例えば、30個以上等)場合には、複数の要因の値を主成分分析により次元を所定数に圧縮し、圧縮後の値を用いて、類似度を算出してもよい。
【0088】
また、第1実施形態における、ノルムを類似度として用いる、対象不動産と比較事例との類似度取得処理と類似した方法として、クラスター分析を用いて類似事例を決定してもよい。クラスター分析により、複数の要因を用いて、対象不動産と複数の比較事例とをクラスターに分類し、対象不動産と同一のクラスターに分類される比較事例を類似事例として決定してもよい。このとき用いられるクラスター分析は、非階層的クラスタリングでも階層的クラスタリングでもよい。
【0089】
ここまでで説明された複数の類似度取得処理の変形例は、いずれも、複数の要因を加味して類似度を算出するので、複数の要因から総合的に見ても違和感のない類似度を取得することができる。
【0090】
<要因の種類>
類似度の算出に用いられる要因の一つとして、例えば、事例検索システム100の管理者が任意に設定したエリアを用いることができる。事例検索システム100の管理者が設定するエリアとして、例えば、地名や通り名に基づいて、いわゆる高級住宅街と呼ばれるエリア、下町と呼ばれるエリア、及び、繁華性が類似しているエリア等の、住環境の特徴で設定したエリアがある。例えば、対象不動産と比較事例とが同一エリア内にある場合には差分値を0、異なるエリアにある場合には差分値を所定値に設定し、当該差分値を用いて上述の類似度取得処理のいずれかで対象不動産と比較事例との類似度を算出してもよい。または、例えば、対象不動産と比較事例とが同じ種類のエリア内にある場合には差分値を0、異なる種類のエリアにある場合には差分値を所定値に設定し、当該差分値を用いて上述の類似度取得処理のいずれかで対象不動産と比較事例との類似度を算出してもよい。このように、住環境の特徴で設定したエリアを類似度の算出に用いることによって、対象
不動産が高級住宅街に所在する場合に、類似事例として高級住宅街に所在する比較事例が選択される可能性が高まる。
【0091】
第1実施形態では、対象不動産がマンションの一室である場合について説明された。対象不動産は、マンションの一室に限定されない。対象不動産がいずれの種類(一軒家、マンション、ビル、及び、土地等)であっても、共通して、類似度の算出に用いることができる要因としては、例えば、位置情報(距離)、接面道路の幅員、容積率、面積、価格水準、市区町村、行政区、開口部の方位、事例検索システム100の管理者が任意に設定したエリア、用途地域、最寄駅、及び、最寄駅までの距離等がある。対象不動産が一軒家である場合には、類似度の算出に用いることができる要因としては、上記の共通の要因以外に、築年数、階数、間取り、木造か鉄筋コンクリートか、及び、駐車場の有無、庭の有無等がある。対象不動産がマンションやアパートである場合には、類似度の算出に用いることができる要因としては、上記の共通の要因以外に、築年数、階数(建物全体)、部屋の所在階、間取り、木造か鉄筋コンクリートか、駐車場の有無、エレベータの有無、及び、管理費等がある。また、対象不動産が賃貸物件である場合には、賃料水準や利回り水準等がある。なお、類似度の算出に用いることができる要因は、上述されたものに限定されない。
【0092】
<応用例>
第1実施形態では、対象不動産の類似事例を検索する事例検索システム100について説明された。同様の技術を、例えば、インターネット上の不動産検索サイト等の、ユーザの希望する条件に合う物件を検索するシステムにも応用することができる。この場合には、対象不動産をユーザの希望する条件に、取引事例を物件に置き換えることによって、実現可能である。
【0093】
<記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0094】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスク、ROM(リードオンリーメモリ)等がある。さらに、SSD(Solid State Drive)は、コンピュータ等から取り外し可能な記録媒体としても、コ
ンピュータ等に固定された記録媒体としても利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1・・サーバ
2・・端末
11・・事例抽出部
12・・類似度取得部
13・・類似事例決定部
14・・不動産情報DB
15・・位置情報DB
16・・取引事例DB
100・・事例検索システム
101・・CPU
102・・メモリ
103・・外部記憶装置
104・・通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12