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特開2024-57915武道場の床構造、及び、武道場の床施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057915
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】武道場の床構造、及び、武道場の床施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20240418BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20240418BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
E04F15/18 601D
E04B5/02 F
E04B5/43 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164899
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】512002699
【氏名又は名称】株式会社 五感
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA25
2E220AA29
2E220AB07
2E220AC03
2E220BA01
2E220CA04
2E220CA13
2E220DA19
2E220DB09
2E220DB11
2E220GA07Y
2E220GB32Y
2E220GB36Y
2E220GB39Y
2E220GB44X
(57)【要約】
【課題】競技者の踏み込みに対する適度な衝撃吸収性及び耐久性を備えつつ、良好なメンテナンス性を有する武道場の床構造を実現する。
【解決手段】第1方向に沿って延びる大引き部材(10)と、第1方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、大引き部材(10)を支持する支持部材(20)と、第1方向と直交する第2方向に隣り合う少なくとも2つの大引き部材(10)の間に架け渡された状態で大引き部材(10)の上面に固定された複数の床板部材(50)と、を備えた武道場の床構造であって、支持部材(20)は、床基礎上に設置するための土台部(21)と、大引き部材(10)の下面及び両側面を保持する保持部(22)と、を有し、土台部(21)と保持部(22)とは弾性体によって一体的に構成されており、第1方向及び第2方向に隣り合う床板部材(10)同士の突合せ面が何れも平面である
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延びる四角柱状の大引き部材と、
前記第1方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、床基礎から所定の高さだけ上方に前記大引き部材を支持する支持部材と、
前記第1方向と直交する第2方向に隣り合う少なくとも2つの前記大引き部材の間に架け渡された状態で前記大引き部材の上面に固定された複数の床板部材と、
を備えた武道場の床構造であって、
前記支持部材は、前記床基礎上に設置するための土台部と、前記大引き部材の下面及び両側面を保持する保持部と、を有し、前記土台部と前記保持部とは弾性体によって一体的に構成されており、
前記第1方向及び前記第2方向に隣り合う前記床板部材同士の突合せ面が何れも平面である、ことを特徴とする武道場の床構造。
【請求項2】
請求項1に記載の武道場の床構造であって、
複数の前記床板部材の各々は、木製の一枚板によって構成されている、ことを特徴とする武道場の床構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の武道場の床構造であって、
複数の前記床板部材の各々は、前記床板部材の厚さ方向に貫通する締結部材を用いて前記大引き部材に固定されている、ことを特徴とする武道場の床構造。
【請求項4】
請求項3に記載の武道場の床構造であって、
前記締結部材の上端部を覆うカバー部材を有し、
前記カバー部材によって前記床板部材を貫通する貫通孔が閉塞されている、ことを特徴とする武道場の床構造。
【請求項5】
請求項1または2に記載の武道場の床構造であって、
前記床板部材は、表面が薄く削ぎ落され、液剤が塗布されていない、ことを特徴とする武道場の床構造。
【請求項6】
請求項1または2に記載の武道場の床構造であって、
前記保持部は、前記第2方向において、前記大引き部材の一方側の側面と他方側の側面とを挟み込む一対の側壁部を有し、
一対の前記側壁部の上端部における前記第2方向の間隔は、一対の前記側壁部の下端部における前記第2方向の間隔よりも狭い、ことを特徴とする武道場の床構造。
【請求項7】
大引き部材に支持部材を取り付ける支持部材取り付け工程と、
前記大引き部材に取り付けられた前記支持部材を床基礎に設置する支持部材設置工程と、
前記大引き部材に床板部材を取り付ける床板部材取り付け工程と、
を有する武道場の床施工方法であって、
前記支持部材は、前記床基礎上に設置するための土台部と、前記大引き部材の下面及び両側面を保持する保持部と、を有し、前記土台部と前記保持部とは弾性体によって一体的に構成されており、
平面方向に隣り合う前記床板部材同士の突合せ面が何れも平面である、ことを特徴とする武道場の床施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、武道場の床構造、及び、武道場の床施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木製の床板部材を用いた剣道場等の武道場が知られている。例えば、特許文献1には、支持台20と支持ボルト22と受け部材30とを有する床板支持脚2によって大引材4を支持し、該大引材4の上部に根太材6、構造用板材8、床板10を配置することで、柔剣道場などのスポーツ施設として良好な緩衝性と、イベント開催時に高い載荷重性能を発揮する床緩衝構造に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-56486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような武道場の床は、競技者の踏み込みに対する適度な衝撃吸収性を備えつつ、踏み込みによって破損し難い耐久性が要求される。例えば、剣道場として使用する場合、競技者が床板材に対して裸足で踏み込む動作を行うため、衝撃の吸収が不十分であると足を怪我したり、血尿等の症状を発症したりするおそれがある。また、踏み込みによって床板材が割れたり破損したりするおそれがあるため、破損が発生した場合には、破損した箇所を容易かつ低コストで交換できる等の良好なメンテナンス性を有していることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、競技者の踏み込みに対する適度な衝撃吸収性及び耐久性を備えつつ、良好なメンテナンス性を有する武道場の床構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、第1方向に沿って延びる四角柱状の大引き部材と、前記第1方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、床基礎から所定の高さだけ上方に前記大引き部材を支持する支持部材と、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合う少なくとも2つの前記大引き部材の間に架け渡された状態で前記大引き部材の上面に固定された複数の床板部材と、を備えた武道場の床構造であって、前記支持部材は、前記床基礎上に設置するための土台部と、前記大引き部材の下面及び両側面を保持する保持部と、を有し、前記土台部と前記保持部とは弾性体によって一体的に構成されており、前記第1方向及び前記第2方向に隣り合う前記床板部材同士の突合せ面が何れも平面である、ことを特徴とする武道場の床構造である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、競技者の踏み込みに対する適度な衝撃吸収性及び耐久性を備えつつ、良好なメンテナンス性を有する武道場の床構造を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】剣道場の床構造を表す平面図及び断面図である。
図2】剣道場の床構造について具体的な構成を説明するための斜視図である。
図3図3A及び図3Bは、従来の武道場の床の構造例について説明する図である。
図4】支持部材20および大引き部材10によって床板部材50を支持する詳細な構造について説明する図である。
図5図5A及び図5Bは、比較例として一般的な床板部材の突合せ面の構造について説明する図である。
図6図6A及び図6Bは、本実施形態の床板部材の突合せ面の構造について説明する図である。
図7】本実施形態に係る床構造の施工方法について説明するフロー図である。
図8】床板部材50の交換方法の一例について説明する図である。
図9図9A及び図9Bは、床板部材50の交換方法の他の例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
(態様1)
第1方向に沿って延びる四角柱状の大引き部材と、前記第1方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、床基礎から所定の高さだけ上方に前記大引き部材を支持する支持部材と、前記第1方向と直交する第2方向に隣り合う少なくとも2つの前記大引き部材の間に架け渡された状態で前記大引き部材の上面に固定された複数の床板部材と、を備えた武道場の床構造であって、前記支持部材は、前記床基礎上に設置するための土台部と、前記大引き部材の下面及び両側面を保持する保持部と、を有し、前記土台部と前記保持部とは弾性体によって一体的に構成されており、前記第1方向及び前記第2方向に隣り合う前記床板部材同士の突合せ面が何れも平面である、ことを特徴とする武道場の床構造。
【0011】
態様1の武道場の床構造によれば、金属製の支持部材を使用せず、弾性ゴムによって一体的に形成された支持部材によって大引部材の下面及び両側面が支持されるため、上下方向及び平面方向に衝撃を受けた際に、支持部材が塑性変形することなく大引き部材や床板部材が安定して保持されやすい。そして、競技者の踏み込み時に床板部材を介して大引部材に作用する衝撃を吸収し、適度な反発力を発生するため、競技者の行軍性血尿等の問題が生じ難い。また、隣り合う床板部材同士の突き合わせ面に凹凸(さね)が設けられていないため、衝撃を受けた際に突き合わせ面が破損し難い。さらに、隣り合う床板部材同士が凹凸(さね)によってはめ込まれておらず、各々の床板部材が大引部材に対して独立して着脱可能であるため、ある床板部材が破損したとしても、破損した床板部材のみを簡単に交換可能となる。これにより、競技者の踏み込みに対する適度な衝撃吸収性及び耐久性を備えつつ、良好なメンテナンス性を有する武道場の床構造を実現することができる。
【0012】
(態様2)
複数の前記床板部材の各々は、木製の一枚板によって構成されている、態様1に記載の武道場の床構造。
【0013】
態様2の武道場の床構造によれば、床板部材に接着部や張り合わせ部が形成されないため、踏み込みに対する耐久性が向上し、割れにくくなる。また、床板部材同士を接合するための接着剤等が用いられていないため、人体に対して化学物質の影響が生じ難く安全である。
【0014】
(態様3)
複数の前記床板部材の各々は、前記床板部材の厚さ方向に貫通する締結部材を用いて前記大引き部材に固定されている、態様1または態様2に記載の武道場の床構造。
【0015】
態様3の武道場の床構造によれば、各々の床板部材が大引き部材に対して単独で固定や取り外しが自在となり、隣り合って配置されている他の床板部材に影響を与えることなく、最小単位でメンテナンスや修理を行うことができる。
【0016】
(態様4)
前記締結部材の上端部を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材によって前記床板部材を貫通する貫通孔が閉塞されている、態様1~態様3の何れかに記載の武道場の床構造。
【0017】
態様4の武道場の床構造によれば、床板部材に設けられた貫通孔が閉塞されることにより、武道場の床表面が平滑に形成されるため、競技者の安全性が確保されやすくなる。また、カバー部材自体は簡単に貫通孔から取り外すことが可能であり、締結部材の着脱を妨げることなく床板部材のメンテナンスや修理を行うことができる。
【0018】
(態様5)
前記床板部材は、表面が薄く削ぎ落され、液剤が塗布されていない、態様1~態様4の何れかに記載の武道場の床構造。
【0019】
態様5の武道場の床構造によれば、裸足で競技を行う場合でも安全であり、足裏との摩擦が大きすぎず、且つ、滑り難い良好な肌触りを実現できる。また、鉋等によって床板部材の表面が削ぎ落されることにより、木材の滑らかで良好な肌触りを競技者に感じさせやすい。
【0020】
(態様6)
前記保持部は、前記第2方向において、前記大引き部材の一方側の側面と他方側の側面とを挟み込む一対の側壁部を有し、一対の前記側壁部の上端部における前記第2方向の間隔は、一対の前記側壁部の下端部における前記第2方向の間隔よりも狭い、態様1~態様5の何れかに記載の武道場の床構造。
【0021】
態様6の武道場の床構造によれば、一対の側壁部の上端部では、弾性体の弾性力によって大引き部材の両側面を挟み込む方向に力が作用するため、大引き部材をより安定して保持することができる。これにより、大引き部材に対して競技者の踏み込みによる衝撃が作用した場合であっても、支持部材によって衝撃が吸収されやすく、安定して大引き部材を支持することができる。
【0022】
(態様7)
大引き部材に支持部材を取り付ける支持部材取り付け工程と、前記大引き部材に取り付けられた前記支持部材を床基礎に設置する支持部材設置工程と、前記大引き部材に床板部材を取り付ける床板部材取り付け工程と、を有する武道場の床施工方法であって、前記支持部材は、前記床基礎上に設置するための土台部と、前記大引き部材の下面及び両側面を保持する保持部と、を有し、前記土台部と前記保持部とは弾性体によって一体的に構成されており、平面方向に隣り合う前記床板部材同士の突合せ面が何れも平面である、ことを特徴とする武道場の床施工方法。
【0023】
態様7の武道場の床施工方法によれば、競技者の踏み込みに対する適度な衝撃吸収性及び耐久性を備えつつ、良好なメンテナンス性を有する武道場の床構造を実現することができる。
【0024】
===実施形態===
本実施形態に係る武道場の床構造の一例として、剣道場の床構造について説明する。本明細書中では、水平面上の或る方向を「第1方向」とし、同水平面上で第1方向と直交する方向を「第2方向」と定義する。以下では、第1方向と第2方向とを合わせて「平面方向」と呼ぶ場合もある。また、第1方向及び第2方向と直交し、鉛直方向に沿った方向を「上下方向」と定義する。
【0025】
<床構造の基本構成>
図1は、剣道場の床構造を表す平面図及び断面図である。同図1では、剣道場の床構造の一部を上下方向の上側から見た状態の平面と、当該平面のA-A断面について表している。図2は、剣道場の床構造について具体的な構成を説明するための斜視図である。
【0026】
本実施形態に係る剣道場の床は、大引き部材10と、支持部材20と、床板部材50とをそれぞれ複数備えている。大引き部材10は、四角柱状の木製梁部材である。本実施形態では、図1に示されるように、複数の大引き部材10,10…が、それぞれ長手方向を第1方向に沿わせた状態で、第2方向に間隔W10を空けて並ぶことにより、所謂、床組みを構成し、床板部材50を支持する。各々の大引き部材10は、断面形状が90mm~120mm角程度の略正方形状であり、例えば檜や他の木材を用いて形成される。また、間隔W10は、例えば600mm程度とすることができる。但し、大引き部材10のサイズや配置は、剣道場の広さや使用環境に応じて、適宜変更可能である。
【0027】
支持部材20は、剣道場の床基礎(例えばコンクリート基礎、以下では「床基礎GL」とも呼ぶ)に設置され、該床基礎GLから所定の高さだけ上方に大引き部材10を支持する部材である。すなわち、複数の大引き部材10,10…の上面の高さが揃うように、各々の大引き部材10を支持する。図1では、第1方向に間隔L20を空けて配置された複数の支持部材20によって各々の大引き部材10が支持されている。支持部材20が配置される間隔L20は、例えば1200mm程度とすることができる。また、第2方向に隣り合う2つの大引き部材10,10では、支持部材20の第1方向における配置(支持位置)を図1のようにずらしておくことが好ましい。但し、間隔L20や、大引き部材10の支持高さは剣道場の広さや使用環境に応じて、適宜変更可能である。
【0028】
支持部材20は、図2に示されるように、土台部21と、保持部22とを有している。土台部21は、支持部材20を床基礎GL上に設置するための部位であり、土台部21の底面は平面状に構成されている。保持部22は、大引き部材10を保持するための部位であり、大引き部材10を載せて上下方向に支持する載置部22bと、載置部22bの第2方向の両側から上下方向の上側に突出する一対の側壁部22s,22sとを有している。保持部22の載置部22b及び一対の側壁部22s,22sによって、四角柱状の大引き部材10のうち下側の面と両側の面とが保持されることにより、大引き部材10を安定的に支持することができる。
【0029】
本実施形態において、支持部材20は、弾性体によって一体的に構成されている。例えば、硫化物を含んだ弾性ゴム(天然ゴムや合成ゴム)等の材料を用いて土台部21と保持部22とが一体的に形成されている。これにより、剣道場の床の荷重を支える強度と、競技者の踏み込み等によって生じる振動や衝撃を適度に吸収・減衰させる防振性とを両立することができる。なお、支持部材20を構成する弾性体としては、弾性ゴム以外にも、シリコンやエラストマー樹脂等を使用することもできる。
【0030】
床板部材50は、剣道場の床を構成する矩形状(長方形状)の木製板材である。本実施形態では、複数の床板部材50の各々が、長辺方向を第2方向に沿わせて配置され、第2方向に隣り合う複数の大引き部材10に架け渡された状態で大引き部材10の上面に固定されている。図1では、第2方向に隣り合って並ぶ4本の大引き部材10に対して、1枚の床板部材50が架け渡された状態で配置されているが、各々の床板部材50は、少なくとも2本の大引き部材10,10の間に架け渡されていれば良い。その際、床板部材50の長手方向(第2方向)における端部が、何れかの大引き部材10と重複する位置に配置されていることが好ましい。
【0031】
床板部材50は、木製の一枚板(無垢材)により構成されており、少なくとも上下方向上側の表面(すなわち、競技者が足で踏む面)は、鉋(かんな)掛けによって表面が削ぎ落とされ、且つ、塗料やコーティング材等の液剤が塗布されていない。剣道場の床として使用する場合、競技者によって裸足で踏まれることが想定されるため、床板部材50を構成する木材はとしては、ある程度の強度と柔軟性を有しつつ肌触りが良いものが好ましく、例えば杉を使用することができる。
【0032】
また、床板部材50は、木ねじ等の締結部材60を用いて大引き部材10の上面に固定される。図2において、上下方向に見たときに床板部材50と大引き部材10とが重複する位置には、床板部材50を上下方向に貫通するねじ孔55(貫通孔)が設けられ、当該ねじ孔55(貫通孔)に締結部材60(木ねじ)を挿入して締めることで、締結部材60を介して大引き部材10と床板部材50とが締結される。そして、締結部材60が挿入されたねじ孔55には、締結部材60の上側から更にカバー部材70が嵌め込まれ、床板部材50の上側表面に段差が生じないようにする。カバー部材70は、床板部材50と同等の木材によって形成される円筒状の部材であり、ねじ孔55を閉塞するための蓋としての機能を有する。武道場の床構造において、床板部材50の表面にねじ孔55のような孔が露出していると、怪我や事故の原因となるおそれがある。特に、剣道のように裸足で行う競技では、競技者の足指がねじ孔55に引っかかりやすく危険である。これに対して、カバー部材70によって床板部材50の表面が面一に構成されていることにより、競技者は、安全に裸足で競技を行うことが可能となる。
【0033】
<裸足で競技を行う場合の課題について>
一般的に、裸足で行われる競技(武道)では、競技者が裸足で武道場の床板を踏むことになる。例えば、剣道では、竹刀を振る際に、床板に対して足を強く踏み込む動作が行われ、大きな衝撃が繰り返して発生する。その結果、足底の毛細血管にて物理的・機械的に血管内溶血が生じることでヘモグロビン尿を来たす血管内溶血疾患(行軍性血尿)を発症しやすいことが報告されている(尿細管への鉄沈着を認めた剣道行軍ヘモグロビン尿症候群の1例:日本内科学会雑誌第106巻第6号,1191~1198,2017参照)
【0034】
また、踏み込みによる衝撃によって武道場自体が破損しやすくなるおそれがある。例えば、武道場の床板にヒビや亀裂が生じたり、床板を支持している支持部材が破損したりして、耐久性やメンテナンス性に問題を生じる場合がある。
【0035】
図3A及び図3Bは、従来の武道場の床の構造例について説明する図である。図3Aは、床束を用いて大引き材を支持する床構造について表す概略斜視図である。同図3Aに示される床構造では、床基礎GLの上に複数の床束120,120を設置して、当該床束120によって大引き部材10を支持し、大引き部材10の上に床板部材50(図3Aでは不図示)が配置される。すなわち、図1図2で説明した弾性ゴム製の支持部材20の代わりに床束120を用いて大引き部材10を支持する構成となっている。
【0036】
ここで、床束120は、上下方向に高さ調整が可能な金属製の棒状部材であり、所謂「鋼製束」とも呼ばれる部材である。床束120を用いた床構造は、武道場以外の一般的な建築物にも広く採用されている構造であり、金属製の床束120を使用することにより、乾燥や収縮、害虫による被害等を抑制しつつ、大引き部材10を支持するための強度を確保しやすい。
【0037】
しかしながら、床束120を用いた床構造では、上述したような剣道における「踏み込み」の衝撃を想定しておらず、剣道場として使用した場合、問題が生じるおそれがある。例えば、踏み込みによって、床束120の軸方向(上下方向)に対して瞬間的な撃力が作用すると、床束120の一部が変形したり、傾きが生じたりする場合がある。この場合、大引き部材10を安全に支持できなくなったり、床板部材50に歪が発生したりするおそれがある。また、図3Aに示される床構造について、修理やメンテナンスを行う場合には、床板部材50や大引き部材10を一旦除去して、不具合が生じた個所を特定し、床束120を交換する等、多大な手間やコストがかかる。また、競技者の踏み込みによって生じる上下方向の力は、床束120によって吸収されないため、踏み込みによる力がそのまま反発力として競技者の足に作用しやすく、行軍性血尿を発症しやすくするおそれがある。
【0038】
次に、図3Bは、床基礎GLの上に床板部材50を直接配置した床構造について表す概略断面図である。同図3Bに示される床構造では、床束120(支持部材20)や大引き部材10を用いずに、床基礎GLの上に複数の床板部材50が直接並べられ、接着剤等を用いて固定されている。このようにすれば、構造が単純であり、また、踏み込みの衝撃によって床束120が変形してしまう等の問題が生じないため、図3Aの場合と比較してコストや床束120交換の手間を低減することができる。しかし、図3Bの場合、踏み込みによる衝撃が吸収され難く、競技者の足により大きな反発力が作用しやすいため、剣道等の裸足で競技を行う武道場として使用するには安全上の問題が大きい。また、踏み込みによる衝撃が直接床板部材50に作用するため、床板部材50自体が割れやすくなり、メンテナンス性にも課題が生じる。
【0039】
これに対して、本実施形態の床構造では、上述したような競技者の足に作用する衝撃や、メンテナンス性に関する問題を低減しやすい。図4は、本実施形態において、支持部材20および大引き部材10によって床板部材50を支持する詳細な構造について説明する図である。
【0040】
先ず、本実施形態の床構造では、弾性ゴム等によって土台部21と保持部22とが一体的に形成された支持部材20によって大引き部材10が保持されている。具体的には、断面矩形状の大引き部材10のうち下面10bが保持部22の載置部22bに保持され、大引き部材10の左右両側面(右側面10rs,左側面10ls)が、保持部22の側壁部22s,22sによってそれぞれ保持されている。従来の床構造で使用されていた床束120(図3A参照)の様な金属製の支持部材を使用することなく大引き部材10が支持されているため、競技者の踏み込み等によって衝撃を受けた際に、支持部材20が塑性変形したり破損したりすることなく、大引き部材10や床板部材50を安定して保持することができる。
【0041】
そして、競技者の踏み込み時に床板部材50を介して大引き部材10に作用する衝撃を、弾性ゴム製の支持部材20によって吸収し、適度な反発力を発生するため、競技者の行軍性血尿等の問題が生じ難い。その際、上下方向(鉛直方向)及び平面方向(第1方向及び第2方向)への衝撃が、それぞれ載置部22b及び側壁部22s,22sによって吸収されるため、床板部材50や大引き部材10の位置ずれや破損を生じ難くすることができる。したがって、競技者の踏み込みに対する適度な反発性や耐久性を備えた武道場の床構造を実現することが可能となる。
【0042】
さらに、本実施形態では、大引き部材10の上に配置される複数の床板部材50,50の突合せ面同士が何れも平面状に構成されていることにより、床板部材50が破損し難く、破損した場合でも簡単に修理やメンテナンスを行うことができる。図5A及び図5Bは、比較例として一般的な床板部材の突合せ面の構造について説明する図である。図6A及び図6Bは、本実施形態の床板部材の突合せ面の構造について説明する図である。
【0043】
建造物の床は、複数の床板部材を平面方向(上下方向に対して垂直な方向)に隣り合うように並べて配置することによって形成されているが、このとき、平面方向に隣り合う床板部材の対向する面(突合せ面)同士には凹凸部が形成されることが一般的である。図5Aでは、床板部材50Aと床板部材50Bとが平面方向に隣り合って配置されている。そして、床板部材50Aの面50Atには凹部51が形成されており、面50Atと対向する床板部材50Bの面50Btには、凸部52が形成されている。凹部51及び凸部52は、所謂「実(さね)」と呼ばれる部位であり、互いに篏合することによって、隣り合って配置された床板部材50Aと床板部材50Bとの相対位置が互いに固定され、高さのばらつきや床板部材の変形が抑制される。なお、凹部51と凸部52(さね)を篏合させた際には、釘を打ち込んで篏合部を固定したり、接着剤や塗料を塗って篏合部の隙間を埋めたりする作業が必要となる。
【0044】
比較例の床板部材50A,50Bのように凹部51,凸部52(さね)を備えた床構造を、剣道場等の武道場に採用した場合、当該凹部51,凸部52において破損が生じ易くなるおそれがある。例えば、凹部51と凸部52との篏合部に、踏み込みによる衝撃が作用した場合、凹部51及び凸部52の根本部分に応力が集中するため、図5Bのように凹部51及び凸部52にひび割れや亀裂が生じて割れやすくなるおそれがある。この場合、安全のため、床板部材50A,50Bを交換する必要が生じ、メンテナンスや修理に要する手間やコストが大きくなる。
【0045】
これに対して、本実施形態の床構造では、図6Aのように、平面方向に並んで配置された床板部材50Cと床板部材50Dの対向する面(突合せ面)50Ct,50Dtに凹凸(さね)が形成されていない。すなわち、対向する面(突合せ面)50Ct,50Dt同士が何れも平面状に形成されている。そして、図6Bのように、面50Ctと面50Dtとが向かい合って当接した状態で、締結部材60を用いて床板部材50C,50Dがそれぞれ大引き部材10に固定されている。
【0046】
隣り合う床板部材50C,50D同士の突き合わせ面50Ct,50Dtに、比較例のような凹凸(さね)を有していないため、踏み込みによる衝撃が作用したとしても、床板部材50C,50Dに破損が生じ難く、耐久性が向上する。そして、各々の床板部材50C,50Dは締結部材60によって大引き部材10に固定されているため、凹凸(さね)がなくても位置ずれ等は生じ難い。さらに、隣り合う床板部材50C,50D同士が凹凸(さね)によって互いにはめ込まれておらず、大引き部材10に対してそれぞれ独立して着脱可能となっている。したがって、例えば、床板部材50Cに破損が生じた場合、破損した床板部材50Cのみを簡単に取り外して交換することが可能であり、床板部材50Dは取り外す必要が無い。したがって、比較例の場合よりもメンテナンス性を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態の床構造では、複数の床板部材50,50…の各々が、木製の一枚板によって構成されている。すなわち、複数枚の板を貼り合わせた合板や集成材とは異なる無垢の板部材を用いて構成されている。床板部材50自体に接着部や張り合わせ部が形成されていないため、競技者の踏み込みによる衝撃に対する耐久性が向上し、割れにくくなる。そして、積層された板同士を接合するための接着剤等が用いられていないため、人体に対して化学物質の影響が生じ難く、競技者が裸足で競技を行う剣道場等に好適である。
【0048】
また、各々の床板部材50は、該床板部材50の厚さ方向(図2において上下方向)に貫通する締結部材60を用いて大引き部材10に固定されている。したがって、図6Bで説明したように、大引き部材10に対して各々の床板部材50が独立して固定や取り外しが可能であり、隣り合って配置されている他の床板部材50に影響を与えることなく、最小単位でメンテナンスや修理を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態の床構造は、大引き部材10に床板部材50を固定する締結部材60の上端部(すなわち、ねじの頭部)を覆うカバー部材70を有している。カバー部材70によって、床板部材50に設けられたねじ孔55が閉塞されることにより、武道場の床全体が平滑(大きな凹凸が無い状態)に形成されるため、競技者の安全性が確保されやすくなる。また、カバー部材70自体は簡単にねじ孔55から取り外すことが可能であるため、締結部材60の着脱を妨げることなく床板部材50のメンテナンスや修理を行うことができる。
【0050】
また、床板部材50の表面は、鉋(かんな)を用いて表面が薄く削ぎ落とされ、塗料やコーティング材等の液剤が塗布されていない。したがって、裸足で競技を行う場合でも安全であり、足裏との摩擦が大きくなりすぎず、且つ、滑り難い良好な肌触りを実現できる。なお、本実施形態の床構造では、平面方向に隣り合って並ぶ床板部材50,50の対向面同士に凹凸(さね)が形成されていないため、凹凸の篏合部を接着剤やコーティング材等で固める必要が無い。したがって、鉋によって表面がそぎ落とされた木材の滑らかで良好な肌触りを競技者に感じさせやすい。
【0051】
また、大引き部材10を支持している支持部材20は、第2方向(平面方向)に一対の側壁部22s,22sを有しており、当該側壁部22s,22sによって大引き部材10の一方側の側面10rsと、他方側の側面10lsとを挟持することにより、大引き部材10を安定して支持可能となっている。そして、図4に示されるように、一対の側壁部22s,22sの上端部における第2方向の間隔W22sは、下端部における第2方向の間隔W22bよりも狭くなっている(W22s>W22b)。言い換えると、一対の側壁部22s,22sの第2方向における間隔は、上下方向の上側ほど狭くなっている。そして、一対の側壁部22s,22sの下端部における間隔W22b(載置部22bの第2方向における長さに相当)は、大引き部材10の下面10bの第2方向における長さW10とほぼ等しくなっている(W22b=W10b)。
【0052】
したがって、一対の側壁部22s,22sは、上下方向の下端部(すなわち載置部22b)では大引き部材10の下面10bを位置ズレなくピタリと支持できる。一方、上下方向の上端部では、弾性ゴムの弾性力によって大引き部材10の両側面10rs,10lsを挟み込む方向に力が作用するため、大引き部材10をより安定して保持することができる。これにより、大引き部材10に対して競技者の踏み込みによる上下方向や平面方向の衝撃が作用した場合であっても、当該衝撃が支持部材20によって吸収されやすく、安定して大引き部材10を支持することができる。
【0053】
また、本実施形態の床構造において、第2方向に隣り合う2つの大引き部材10,10では、支持部材20による支持位置が第1方向にずれている。具体的には、図1のように、或る大引き部材10を支持する支持部材20,20の第1方向における中間の位置に、当該或る大引き部材10の第2方向に隣り合う大引き部材10を支持する支持部材20が配置されている。これにより、床板部材50に作用する踏み込みによる衝撃が、床面全体にバランスよく分散されやすくなり、支持部材20によって効率的に衝撃を吸収しやすくすることができる。つまり、個々の支持部材20が受け持つ衝撃による力が均等に分散されやすくなり、床構造全体としての衝撃吸収性能(支持部材20による弾力性能)を高めることができる。
【0054】
<床構造の施工方法及び修理方法について>
次に、本実施形態に係る床構造の施工方法、及び、床板部材50が破損した場合の修理方法(メンテナンス方法)について説明する。
【0055】
図7は、本実施形態に係る床構造の施工方法について説明するフロー図である。はじめに、大引き部材10に対して支持部材20を取り付ける、支持部材取り付け工程が行われる(S101)。支持部材取り付け工程では、大引き部材10の長手方向(図1の第1方向に相当)に間隔L20を空けて、複数の支持部材20,20…を取り付ける。図4で説明したように、支持部材20の保持部22は、一対の側壁部22s,22sによって大引き部材10の両側面を挟み込んで保持することが可能であるため、特殊な工具等を使用することなく、簡単に支持部材20を取り付けることができる。なお、大引き部材10に支持部材20を取り付けた後、一対の側壁部22s,22sの第2方向の外側から内側に向かって釘等を打ち込むことにより、大引き部材10に対して支持部材20をより強固に固定するようにしても良い。
【0056】
次いで、大引き部材10に支持部材20が取り付けられた状態で、支持部材20の土台部21を床基礎GLの所定位置に設置する、支持部材設置工程が行われる(S102)。支持部材20を設置する位置は、図1に示されるように、複数の大引き部材10,10…の配置に応じて予め決定されており、これにより、床基礎GLより所定の高さだけ上方に、大引き部材10,10…が支持された状態(床組み)となる。本実施形態における支持部材20は弾性ゴム等によって構成されているため、大引き部材10の荷重に基づいて床基礎GLと土台部21との間に大きな摩擦力が作用する。したがって、床基礎GLに対して土台部21を置くだけで位置ずれ等が生じ難い構造となっている。但し、接着剤や固定用のボルト等を用いて床基礎GLに対して支持部材20を取り付けることで、位置ずれをより生じ難くしてもよい。
【0057】
次いで、大引き部材10の上に床板部材50を取り付ける、床板部材取り付け工程が行われる(S103)。床板部材取り付け工程では、図1のように第2方向に隣り合う少なくとも2本の大引き部材10,10の間に架け渡されるように床板部材50が配置され、締結部材60を用いて大引き部材10に対して床板部材50が固定される。なお、締結部材60を挿入するねじ孔55は、予め床板部材50に形成されていても良いし、床板部材50を大引き部材10に配置した後で位置を調整しながら形成されるのであってもよい。そして、締結部材60によって大引き部材10に床板部材50が固定された後、締結部材60の上からカバー部材70が嵌め込まれ、ねじ孔55が閉塞される。このような工程を経て、図1に示されるような床構造が施工される。
【0058】
床構造の修理やメンテナンスを行う場合は、図7で説明したフローを逆の順番で行えば良い。例えば、大引き部材10の交換が必要な場合は、カバー部材70及び締結部材60を除去して大引き部材10から床板部材50を取り外す(S103)。次いで、支持部材20を床基礎GLから取り外し(S102)、交換対象である大引き部材10を支持部材20から取り外して、新しい大引き部材10と交換する。
【0059】
なお、本実施形態に係る床構造において想定される代表的な破損の態様として、床板部材50自体が割れたりひびが入ったりすることが挙げられる。この場合、破損した床板部材50を交換する作業を行う必要がある。以下、床板部材50の交換作業を行う場合について具体的に説明する。
【0060】
図8は、床板部材50の交換方法の一例について説明する図であり、図1と同様に剣道場の床構造の一部を上下方向の上側から見た状態の平面を表している。同図8では、第2方向に所定の間隔を空けて複数の大引き部材10,10が配置されており、それらのうち隣り合う4本の大引き部材10A~10Dに架け渡されて床板部材50Fが配置されている。そして、床板部材50Fの第2方向における中間位置(図8において、大引き部材10Bと10Cとの間の位置)に割れ目(ひび)が入ったため、床板部材50Fの交換作業を行うものとする。
【0061】
先ず、4本の大引き部材10A~10Dに床板部材50Fを取り付けている締結部材60(カバー部材70)を全て除去する。次に、割れ目の入った床板部材50Fを大引き部材10A~10Dから取り外す。なお、床板部材50Fは、平面方向(第1方向及び第2方向)において他の床板部材50G1~50G6と隣り合って配置されている。そのため、仮に、従来の床構造のように隣り合う床板部材の突合せ面に凹凸(さね)が形成されていた場合(図5A参照)、交換対象である床板部材50Fを1枚だけ取り外すことは困難であり、隣り合って配置されている床板部材50G1~50G6も移動させる必要が生じる。一方、本実施形態では、床板部材50Fと隣り合う床板部材50G1~50G6との突合せ面に凹凸が形成されていないため(図6A参照)、交換対象である床板部材50Fのみを簡単に取り外すことが可能である。
【0062】
床板部材50Fを大引き部材10A~10Dから取り外した後、取り外した床板部材50Fの代わりに、新しい床板部材50を配置し、締結部材60及びカバー部材70を用いて、大引き部材10A~10Dに取り付ける。このようにすることで、交換対象となる床板部材50Fのみを簡単に交換することができる。すなわち、床板部材50Fと隣り合って配置されている床板部材50G1~50G6や、大引き部材10及び支持部材20には影響を与えることなく、床板部材50Fの交換を行うことができる。これにより、交換作業に要する工数やコストを大きく低減することができる。
【0063】
図9A及び図9Bは、床板部材50の交換方法の他の例について説明する図である。同図9A,9Bでは、図8の場合と同様に、第2方向に隣り合う4つの大引き部材10A~10Dに床板部材50Fが架け渡されて配置されており、該床板部材50Fに割れ目(ひび)が生じているものとする。
【0064】
図8の例では、交換対象となる床板部材50Fの全体を交換していたが、図9A,9Bの例では、交換対象となる床板部材50Fの一部のみを交換する。はじめに、交換対象となる床板部材50Fのうち、割れ目が生じた位置を特定する。図9Aでは、第2方向において、大引き部材10Bと10Cとの間の位置に割れ目が生じている。この場合、床板部材50Fのうち、大引き部材10Bと10Cとの間の斜線で示した領域のみを交換する。
【0065】
先ず、床板部材50Fを大引き部材10B及び10Cに固定している4カ所の締結部材60(カバー部材70)を除去する。次いで、床板部材50Fを第1方向に沿った切断線Cr,Clにて切断する。そして、床板部材50Fのうち図9Aに示される斜線部の領域を大引き部材10B,10Cから取り外す。次いで、切断して取り外された部分と同じ大きさの床板部材50F2を用意して、図9Bの斜線部の領域に取り付ける。そして、大引き部材10B及び10Cに新たにねじ孔55を空け、締結部材60及びカバー部材70を用いて、床板部材50F2を取り付ける。なお、このとき、床板部材50Fのうち、取り外されなかった部分50F1,50F1も、再度締結部材60及びカバー部材70を用いて大引き部材10B及び10Cに固定する。
【0066】
図9A,9Bの方法によれば、交換対象となる床板部材50Fのうち、最小の区間のみを交換することができるため、交換材料のコストをより低減することができる。例えば、1枚の床板部材50の第2方向における長さが4m程度である場合、4mの床板部材全体を交換しようとすると、交換に係る床板部材の材料コストが高くなる。これに対して、第2方向に隣り合う2つの大引き部材10,10の間(600mm程度)の区間のみを交換するのであれば、床板部材の材料コストを抑えることが可能となる。このように、本実施形態の床構造では、従来の床構造と比較してメンテナンス性をより高めることができる。
【0067】
===その他の実施形態===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱すること無く、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0068】
<武道場の床構造について>
上記の実施形態では、武道場の床構造の一例として剣道場の床構造について説明したが、これに限らず、合気道場や空手場等の武道場にも適用することが可能である。また、床板部材を裸足で踏む競技に好適であることを説明したが、靴等の履物を履いて行う競技や、床板の上に畳やマットを敷いて行う競技にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 大引き部材、
10b 下面、10rs 側面、10ls 側面、
20 支持部材、
21 土台部、
22 保持部、22b 載置部、22s 側壁部、
50 床板部材、
51 凹部(さね)、52 凸部(さね)、
55 ねじ孔(貫通孔)、
60 締結部材、
70 カバー部材、
120 床束(鋼製束)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9