(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057916
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】空気圧管理装置および空気圧管理方法
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B60C23/04 160B
B60C23/04 160A
B60C23/04 220Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164903
(22)【出願日】2022-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://www.y-yokohama.com/release/?id=3825&lang=ja&sp=20 ニュースリリース1.pdf 掲載日 令和4年6月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】貞森 巧
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 大起
(72)【発明者】
【氏名】白井 顕一
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 洋
(72)【発明者】
【氏名】多田 成明
(57)【要約】
【課題】タイヤの空気圧の異常の有無および異常種別を精度良く判定できる空気圧管理装置および空気圧管理方法を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係るクラウドサーバ30は、車両1に装着されたタイヤ2の空気圧および温度を含むセンサ情報を所定のタイミングで取得する空気圧情報取得部32と、タイヤ2の基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定する基準情報設定部33と、センサ情報および基準情報に基づいて、基準温度におけるタイヤ2の温度換算空気圧を算出する温度換算空気圧算出部34と、基準空気圧と温度換算空気圧との比較結果に基づいて、タイヤ2の異常の有無および該異常の種別を判定する異常判定部36とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されたタイヤの空気圧および温度を含むセンサ情報を所定のタイミングで取得する情報取得部と、
前記タイヤの基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定する基準情報設定部と、
前記センサ情報および前記基準情報に基づいて、前記基準温度における前記タイヤの温度換算空気圧を算出する温度換算空気圧算出部と、
前記基準空気圧と前記温度換算空気圧との比較結果に基づいて、前記タイヤの異常の有無および該異常の種別を判定する異常判定部と、
を備える空気圧管理装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記基準空気圧と前記温度換算空気圧との差分値が第1閾値以上の場合に、前記タイヤに異常有りと判定し、かつ、前記差分値が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合に、前記異常の種別を前記タイヤのパンクと判定し、前記差分値が前記第2閾値より小さい場合に、前記異常の種別を前記タイヤのスローリークと判定する請求項1に記載の空気圧管理装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記スローリークと判定された回数を計測し、連続して該スローリークと判定された回数が所定回数を超えた場合、前記異常の種別として前記スローリークであることを出力する請求項2に記載の空気圧管理装置。
【請求項4】
前記温度換算空気圧の1日分の低下量を算出する空気圧低下量算出部を備え、
連続して該スローリークと判定された回数が所定回数を超えた場合、前記異常判定部は、前記基準空気圧と前記温度換算空気圧との差分値と、前記温度換算空気圧の1日分の低下量との比較結果に基づき、スローリークの異常を出力する請求項3に記載の空気圧管理装置。
【請求項5】
前記タイヤの前記温度換算空気圧と前記温度との対応関係を示すデータ群を記憶する記憶部を備え、
前記異常判定部は、前記温度換算空気圧と前記温度との組データを、前記データ群と比較したクラスタリング結果により、前記タイヤの異常の有無を判定し、かつ、前記基準空気圧と前記温度換算空気圧との差分値が所定閾値以上であるか否かにより、前記異常の種別を前記タイヤのスローリークか前記タイヤのパンクかを判定する請求項1に記載の空気圧管理装置。
【請求項6】
所定期間における前記温度換算空気圧の平均値を算出する平均値算出部を備え、
前記基準情報設定部は、前記温度換算空気圧の平均値を前記基準情報として設定する請求項1に記載の空気圧管理装置。
【請求項7】
前記情報取得部、前記温度換算空気圧算出部および前記異常判定部は、前記車両が規定の駐車地に駐車され、該車両の運行が終了して所定時間が経過した後に、動作を実行する請求項1に記載の空気圧管理装置。
【請求項8】
前記車両は、不特定のユーザに共用される共用車両である請求項7に記載の空気圧管理装置。
【請求項9】
車両に装着されたタイヤの空気圧および温度を含むセンサ情報を所定のタイミングで取得するステップと、
前記タイヤの基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定するステップと、
前記センサ情報および前記基準情報に基づいて、前記基準温度における前記タイヤの温度換算空気圧を算出するステップと、
前記温度換算空気圧と前記基準空気圧との比較結果に基づいて、前記タイヤの異常の有無および該異常の種別を判定するステップと、
を備える空気圧管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの空気圧を管理する空気圧管理装置および空気圧管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されたタイヤの空気圧を適正に管理することにより、車両の走行安定性が確保されている。近年、タイヤにTPMS(Tire Pressure Monitoring System)センサを設け、TPMSセンサから得られた空気圧情報をクラウドで管理しようとする試みが進められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のTPMSセンサでは、ある一定時間内に、任意の閾値まで空気圧が低下した場合、この空気圧異常がドライバーや車両管理者に通知されるようになっている。しかしながら、数時間~数日程度の期間でゆっくりと空気圧が低下する、いわゆるスローリーク(スローパンクチャー)においては、空気圧異常を精度よく判定することが困難という課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの空気圧異常の有無および異常の種別を精度良く判定できる空気圧管理装置および空気圧管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気圧管理装置は、車両に装着されたタイヤの空気圧および温度を含むセンサ情報を所定のタイミングで取得する情報取得部と、タイヤの基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定する基準情報設定部と、センサ情報および基準情報に基づいて、基準温度におけるタイヤの温度換算空気圧を算出する温度換算空気圧算出部と、基準空気圧と温度換算空気圧との比較結果に基づいて、タイヤの異常の有無および該異常の種別を判定する異常判定部と、を備える。
【0007】
上記した空気圧管理装置において、異常判定部は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が第1閾値以上の場合に、タイヤに異常有りと判定し、かつ、差分値が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合に、異常の種別をタイヤのパンクと判定し、差分値が第2閾値より小さい場合に、異常の種別をタイヤのスローリークと判定する。
【0008】
上記した空気圧管理装置において、異常判定部は、スローリークと判定された回数を計測し、連続して該スローリークと判定された回数が所定回数を超えた場合、異常の種別としてスローリークであることを出力する。
【0009】
上記した空気圧管理装置において、温度換算空気圧の1日分の低下量を算出する空気圧低下量算出部を備え、連続して該スローリークと判定された回数が所定回数を超えた場合、異常判定部は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値と、温度換算空気圧の1日分の低下量との比較結果に基づき、スローリークの異常を出力する。
【0010】
上記した空気圧管理装置において、タイヤの温度換算空気圧と温度との対応関係を示すデータ群を記憶する記憶部を備え、異常判定部は、温度換算空気圧と温度との組データを、データ群と比較したクラスタリング結果により、タイヤの異常の有無を判定し、かつ、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が所定閾値以上であるか否かにより、異常の種別をタイヤのスローリークかタイヤのパンクかを判定する。
【0011】
上記した空気圧管理装置において、所定期間における温度換算空気圧の平均値を算出する平均値算出部を備え、基準情報設定部は、温度換算空気圧の平均値を基準空気圧として設定する。
【0012】
上記した空気圧管理装置において、情報取得部、温度換算空気圧算出部および異常判定部は、車両が規定の駐車地に駐車され、該車両の運行が終了して所定時間が経過した後に、動作を実行する。
【0013】
上記した空気圧管理装置において、車両は、不特定のユーザに共用される共用車両である。
【0014】
本発明に係る空気圧管理方法は、車両に装着されたタイヤの空気圧および温度を含むセンサ情報を所定のタイミングで取得するステップと、タイヤの基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定するステップと、センサ情報および基準情報に基づいて、基準温度におけるタイヤの温度換算空気圧を算出するステップと、温度換算空気圧と基準空気圧との比較結果に基づいて、タイヤの異常の有無および該異常の種別を判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タイヤの空気圧異常の有無および異常の種別を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る空気圧管理装置を備えた空気圧管理システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、空気圧管理システムの動作手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、パンク判定処理の動作手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、空気圧管理装置がスローリーク判定を出力する際の動作手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、別の実施形態のパンク判定処理の動作手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、タイヤの温度換算空気圧と温度との対応関係を示すマップデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る空気圧管理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、本実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
本実施形態に係る空気圧管理装置は、複数の車両に装着されたタイヤ(空気入りタイヤ)の空気圧を一元的に管理する。具体的には、空気圧管理装置は、タクシーのような事業体が保有する多数の車両、もしくはカーシェアリングやレンタカーのように、事業体が保有して多数のユーザが共同利用する多数の共用車両に装着されるタイヤの空気圧を一元的に管理する場合に好適である。本実施形態では、空気圧管理装置がカーシェアリング事業に用いられる場合を例示して説明する。
【0019】
カーシェアリング事業は、事前に登録されたユーザに共用車両を貸し出して、これら共用車両をユーザ間で共同利用するサービスをいう。カーシェアリング事業では、複数の共用車両はそれぞれステーションと呼ばれる駐車地に駐車されている。このステーションに駐車される共用車両の数や、所定領域範囲内に点在するステーションの数は、事業規模などに応じて適宜決められる。ユーザが共用車両を利用するときには、ステーションが共用車両の出発地および返却地となる。本実施形態では、例えば、共用車両がステーションに返却されると、空気圧管理装置の管理の下、該共用車両の空気圧異常の有無および異常の種別が判定される。空気圧異常が発生した場合、空気圧管理装置は、該当する共用車両もしくはステーションを管理する車両管理者に通知する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る空気圧管理装置を備えたタイヤ空気圧管理システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、タイヤ空気圧管理システム100は、複数の共用車両(車両)1のタイヤ2にそれぞれ設けられたセンサ3と、複数の共用車両1が駐車されるステーションに設置されるセンサ受信端末10と、このステーションを管理する管理者端末20と、クラウドサーバ(空気圧管理装置)30とを備える。
【0021】
センサ受信端末10、管理者端末20およびクラウドサーバ30は、インターネット回線などの通信ネットワーク40を介して通信可能に接続されている。また、クラウドサーバ30は、カーシェアリング事業体が有するカーシェアリング管理サーバ(不図示)と通信ネットワーク40を介して通信可能に接続されている。このカーシェアリング管理サーバは、複数の共用車両に対するユーザの利用予約を受け付け、予約された共有車用の利用予定情報を作成する。この利用予定情報には、共用車両1の車両情報、利用開始時刻、利用終了時刻、並びに、出発地および返却地となるステーションに関する情報を含む。
図1の例では、共用車両1、センサ受信端末10および管理者端末20は、便宜上、それぞれ1つずつ示しているが、これら共用車両1、センサ受信端末10および管理者端末20は、実際にはそれぞれ複数設けられている。
【0022】
センサ3は、少なくともTPMS(Tire Pressure Monitoring System)機能を備えており、タイヤ2の空気圧を検知する空気圧センサ3aと、タイヤ2内の空気の温度を検知する温度センサ3bとを備えて構成される。また、センサ3は、タイヤ2に作用する遠心方向加速度を検知する加速度センサを更に備えた構成としてもよく、摩耗検知、路面検知、故障検知、取付けボルトの緩み検知などの付加的な検知機能を実現するために、圧電センサや静電容量センサ、磁気センサ、MEMSマイクセンサなどを適宜、追加した構成とすることもできる。センサ3は、それぞれタイヤ2内の内面に取り付けられている。このため、センサ3は、タイヤ2の外側空間の環境の影響を受け難くなっているとともに、センサ3付きのタイヤ2に交換するといった簡易な構成で、タイヤ2の空気圧や温度を容易に検知することが可能となる。センサ3には、それぞれセンサID(識別情報)が設定されており、センサ3のセンサIDと、該センサ3を備えるタイヤ2の車輪位置(左前輪、右前輪、左後輪または右後輪)との対応関係がセンサ受信端末10に登録されている。センサ3は、駆動電源となる電池と備えており、例えば、共用車両1がステーションに駐車されている間、所定時間(例えば3分間)ごとに空気圧および温度のデータ(センサ情報)を検知して、この検知したデータをセンサID(識別情報)とともにセンサ受信端末10に送信する。この構成により、共用車両1が所定のステーションに返却された後(例えば夜間時間帯)におけるタイヤ2の空気圧の変化(低減)を検知することができる。センサ3の電池の寿命は、一般的なタイヤ2の耐用年数よりも長く設定されている。センサ3からセンサ受信端末10へのデータの送信は、例えば、RF(Radio Frequency)通信のような近距離無線通信を用いることができる。
【0023】
センサ受信端末10は、共用車両1が駐車されるステーションに設置される。センサ受信端末10は、
図1に示すように、センサ受信部11と、記憶部12と、通信部13と、制御部14とを備える。センサ受信部11は、各共用車両1における4つのタイヤ2のセンサ3からそれぞれ送信されたデータを受信する。記憶部12は、揮発性または不揮発性のメモリやHDDなどの記憶手段を備えて構成される。記憶部12には、制御部14が実施する各種のプログラムや、各種のデータが記憶される。本実施形態では、記憶部12は、センサ受信部11が所定時間毎に受信したデータのセンサIDから対応する共用車両1および車輪位置を判定し、受信したデータに含まれる各タイヤ2の空気圧および温度を対応する共用車両1の各車輪位置のタイヤの空気圧および温度の履歴情報として記憶する。なお、記憶部12には、所定期間(例えば直近6カ月)の各タイヤ2の空気圧および温度を更新しつつ記憶してもよい。また、共用車両1において、タイヤ2をローテーションした際には、センサ受信端末10に登録されたセンサIDと車輪位置との対応関係を修正するものとする。
【0024】
通信部13は、通信ネットワーク40を介してクラウドサーバ30と無線通信可能に構成される。通信部13は、共用車両1の車両IDとともに、共用車両1に装着されたタイヤ2の空気圧情報を所定時間毎にクラウドサーバ30に送信する。具体的には、通信部13は、センサIDに対応する各共用車両1のタイヤ2の空気圧および温度を含む空気圧情報をクラウドサーバ30に送信する。
【0025】
制御部14はCPUを有し、受信した各共用車両1の各タイヤ2の空気圧情報、または記憶部12に記憶されたデータに基づいて所定の処理を実施する。
【0026】
クラウドサーバ30は、複数の共用車両1のタイヤ2の空気圧を一元的に管理する。クラウドサーバ30は、センサ受信端末10から送信された共用車両1の各タイヤ2の空気圧情報を取得して記憶するとともに、各タイヤ2の空気圧異常の有無および異常の種別を判定する。また、クラウドサーバ30は、タイヤ2の空気圧異常が判定された場合、該空気圧異常が生じた点、および異常の種別を、このタイヤ2が装着された共用車両1のステーションを管理する管理者端末20に送信する。
【0027】
クラウドサーバ30は、例えば、クラウドに設置されたコンピュータなどによって構成される。クラウドサーバ30は、
図1に示すように、通信部31と、空気圧情報取得部(情報取得部)32と、基準情報設定部33と、温度換算空気圧算出部34と、平均値算出部35と、異常判定部36と、空気圧低下量算出部37と、記憶部38と、制御部39とを備える。
【0028】
通信部31は、通信ネットワーク40を介してセンサ受信端末10および管理者端末20と無線通信可能に構成される。通信部31は、センサ受信端末10から送信される各タイヤ2のデータ(センサ情報)を受信する。また、タイヤ2の空気圧異常が生じた場合には、該当する共用車両1が駐車されるステーションを管理する管理者端末20に空気圧異常が生じた点、および空気圧異常の種別等の情報を送信する。
【0029】
空気圧情報取得部32は、通信部31を介して、センサ受信端末10から受信した共用車両1の各タイヤ2の空気圧情報(センサ情報)を所定のタイミングで取得する。この所定のタイミングは適宜設定することができるが、各タイヤ2の空気圧異常の有無等を精度良く判定するために、所定時間(例えば3時間など)ごとにセンサ受信端末10が集めた各タイヤ2の空気圧情報を取得してもよい。この空気圧情報には、共用車両1の車両IDと、各センサ3のセンサIDと、センサIDと車輪位置との対応関係と、各センサ3が検知した各タイヤ2の空気圧および温度とを含む。
【0030】
基準情報設定部33は、タイヤ2の基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定する。この基準情報は、タイヤ2の空気圧異常の有無、および異常の種別を判断する際の基準となる。基準情報は、例えば固定値でもよいし、あるパラメータに応じて変動する値であってもよい。本実施形態では、基準情報設定部33は、基準空気圧としての初期値を、後述する温度換算空気圧の所定期間の平均値により随時更新して設定する。
【0031】
温度換算空気圧算出部34は、制御部39の制御下、取得した空気圧情報(センサ情報)および設定された基準情報に基づいて、基準温度における空気圧に換算した温度換算空気圧を算出する。一般に、タイヤ2の空気圧は、空気温度に応じて変化する傾向にあるため、車両運転中と停止中では空気圧が異なることもあり、空気圧の変動状態を正確に管理することが難しい。このため、温度換算空気圧算出部34は、例えばボイル=シャルルの法則などに基づき、タイヤ2の空気圧を上記した基準温度(例えば20℃など)における空気圧に換算する。これによれば、タイヤ2の温度変化に伴う空気圧の変動を考慮することができるため、空気圧の変化をより正確に管理することができる。
【0032】
平均値算出部35は、所定期間における温度換算空気圧の平均値を算出する。具体的には、同一のタイヤ2における過去の所定期間(例えば直近10日間)の温度換算空気圧の平均値を算出する。共用車両1の重量変化(搭乗人数や荷物)や季節変動などによる外気温の変化などもタイヤ2の空気圧を変化させる外部変動要因となるが、この構成によれば、基準空気圧を温度換算空気圧の平均値で更新することにより、前記外部変動要因の影響を抑制した適正な基準空気圧を設定できるため、タイヤ2の空気圧異常の有無を精度良く判定することができる。
【0033】
異常判定部36は、算出された温度換算空気圧と設定された基準空気圧との比較結果に基づいて、タイヤ2の異常の有無および該異常の種別を判定する。この場合、タイヤ2の異常とは主に空気圧異常である。また、タイヤ2の異常の種別とは、主に空気圧低下の状況をいい、例えば、1分間に50kPa以上の空気圧低下を生じるパンクや、1日に5~20kPa程度の空気圧低下を生じるスローリークなどがある。一般に、スローリークは、自然漏洩(温度一定条件で1ケ月に数kPa~20kPa程度)よりも空気圧の低下速度が速く、通常のパンクよりも空気圧の低下速度が遅い。このため、スローリークの発生に運転者が気付きにくい点がある。特に、カーシェアリングの共用車両1では、ユーザ(運転者)は共用車両1を日常的に運転していないため、空気圧の低下傾向にある場合でもスローリークに気付きにくい。一方、スローリークが進んで空気圧が所定の基準値を下回ると、走行安全性が損なわれるため、スローリークを早急に判定することが要望されている。本実施形態では、異常判定部36は、タイヤ2の空気圧異常が発生した場合、この異常種別をパンクであるかスローリークであるかを判定することにより、空気圧異常を適切に判定できる。
【0034】
具体的には、異常判定部36は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が第1閾値K1以上の場合に、タイヤ2に異常有りと判定する。また、異常判定部36は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が第1閾値K1よりも大きい第2閾値K2以上の場合に、異常の種別をタイヤ2の通常のパンクと判定し、差分値が第1閾値K1以上で第2閾値より小さい場合に、異常の種別をタイヤ2のスローリークと判定する。この第1閾値K1は、少なくともタイヤ2のスローリークが推定される閾値であり、第2閾値K2は、タイヤ2のパンクが推定される閾値である。これら閾値K1,K2は、例えば、JATMAに規定される「最大空気圧」などに応じて定められる数値である。本実施形態では、タイヤ2の最大空気圧を240kPaとした場合、第1閾値K1は、最大空気圧の約6%(15kPa)に設定されている。この第1閾値K1は、最大空気圧の3~12%に設定されることが好ましく、5~10%に設定されることがより好ましい。また、第2閾値K2は、最大空気圧の約20%(50kPa)に設定されている。この第2閾値K2は、最大空気圧の15~25%に設定されることが好ましい。このように、異常判定部36は、2段階の閾値を用いて、空気圧異常の種別を判定することにより、タイヤ2のスローリークを適切に判定することができる。
【0035】
また、異常判定部36は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が第1閾値K1以上で第2閾値より小さい場合、すなわち、空気圧異常の種別がタイヤ2のスローリークと判定された場合、この判定の正確性を担保する構成となっている。具体的には、異常判定部36は、タイヤ2のスローリークと連続して判定された回数を計測し、この回数が所定回数(例えば10回)を超えた場合に、スローリーク異常を出力してもよい。本実施形態では、毎日、温度換算空気圧の1日分の低下量を算出しておき、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が、例えば共用車両1の直近運行日1日分の上記低下量以上となった場合に、スローリークの異常を出力している。この構成では、タイヤ2の空気漏れが、直近運行日の1日分の温度換算空気圧の低下量以上生じていると判定されるため、該タイヤ2のスローリークを精度良く判定することができる。
【0036】
空気圧低下量算出部37は、温度換算空気圧の1日分の低下量を算出する。上記したように、タイヤ2の空気圧は、パンクやスローリークなどの異常でなくても自然に漏洩する。このため、空気圧低下量算出部37は、1日に1回、温度換算空気圧の1日分の低下量を算出し、この低下量を記憶部38に記憶する。この低下量の算出は定時(例えば0時)に行うことが好ましく、定時の温度換算空気圧からその前日1日分(24時間分)の低下量を算出することができる。本実施形態では、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が、共用車両1の前日(好ましくは直近運行日)1日分の温度換算空気圧低下量以上となった場合に、スローリークの異常を出力することで、該タイヤ2のスローリークを精度良く判定することができる。タイヤ2は、静的(止まっている)な状態よりも動的(運行している)な状態の方が、空気漏れが多く、空気圧の低下量が大きい。このため、本構成では、共用車両1が直近に運行された日の1日分の温度換算空気圧の低下量を基準とすることで、タイヤ2のスローリークを精度良く判定することができる。
【0037】
記憶部38は、揮発性または不揮発性のメモリやHDDなどの記憶手段を備えて構成される。記憶部38には、制御部39が実施する各種のプログラムや、算出された各種データが記憶される。記憶部38は、所定時間ごとに空気圧情報取得部32が取得した空気圧情報を、車両ID(共用車両1)毎に、センサIDに対応する車輪位置のタイヤ2の空気圧および温度を履歴情報として記憶する。また、記憶部38は、対象の共用車両1に対して空気圧のメンテナンスが実施された場合、このメンテナンス履歴情報を記録する。
【0038】
また、記憶部38は、タイヤ2の温度換算空気圧と温度との対応関係を示すデータ群(学習モデル)を記憶してもよい。このデータ群は、タイヤ2の温度とその温度で換算された温度換算空気圧との組データを多数集計し、例えば機械学習のアルゴリズムであるK-means法、SVM、LOF等を用いたクラスタリング手法を用いることで、これら多数の組データ(学習データ)に基づいた学習モデルとして生成される。タイヤ2の温度換算空気圧と温度とは、空気圧の正常時に、走行時の発熱や外気温の上昇により、いずれも上昇する。また、走行した後に一定時間以上停車したり、外気温が低下すると、タイヤ2の温度換算空気圧と温度とはいずれも下降する。このように相対的に同様な変化を起こす現象を利用して、少なくともこれら2つの組データを学習データとして用いることで、精度の高い群データ(学習モデル)を生成できる。
【0039】
また、組データには、タイヤサイズパラメータ、例えばタイヤ2の寸法値(タイヤ幅、外径、断面高さなど)や種類(トレッドラジアルなど)を更に含み、これらタイヤ2の寸法値や種類ごとに、データ群(学習モデル)が作成されてもよい。この構成によれば、タイヤサイズパラメータを学習データに追加することで、学習データが無い/不足しているタイヤサイズにおいて、異常判定の精度低下を抑制することができる。また、組データには、タイヤ2の温度換算空気圧と温度を計測した際の時間を、時系列情報として用いることもできる。この時系列情報も学習データに追加することで、自然空気漏れの影響をも考慮することが可能となる。クラウドサーバ30は、定期的に多数の共用車両1から空気圧情報(センサ情報)を取得するため、この取得した空気圧情報から得られるタイヤ2の温度と温度換算空気圧との組データを、定期的に追加することで、データ群(学習モデル)を更新してもよい。
【0040】
この構成では、異常判定部36は、生成されたデータ群(学習モデル)に、温度換算空気圧と温度との組データを入力したクラスタリング結果により、タイヤの異常の有無および異常の種別を判定することができる。
【0041】
制御部39はCPUを有し、通信部31を介してセンサ受信端末10、管理者端末20およびカーシェアリング管理サーバから受信した情報、または記憶部38に記憶されたデータに基づいて所定の処理を実施する。また、制御部39は、対象の共用車両1の空気圧異常がパンクと判定された場合、この共用車両1のステーションの管理者端末20およびカーシェアリング管理サーバに対して、該共用車両1のタイヤ2にパンクが生じた点を出力する。この場合、カーシェアリング管理サーバは、その当日に該共用車両1の利用予約が入っているかを確認し、利用予約が入っている場合には、同クラスの別の共用車両1に利用予約を振り替えるとともに、その旨をユーザに通知する。一方、管理者端末20を通じて、パンクが生じた点が通知されたステーション側では、該共用車両1のタイヤ2のメンテナンス(パンク修理)を行う。
【0042】
また、制御部39は、対象の共用車両1の空気圧異常がスローリークと判定された場合、この共用車両1のステーションの管理者端末20およびカーシェアリング管理サーバに対して、該共用車両1のタイヤ2にスローリークが生じている点を出力する。一般に、スローリークは、その段階で即座に共用車両1の利用を停止する程度のものではない。このため、カーシェアリング管理サーバは、その当日に該共用車両1の利用予約が入っている場合には、ユーザに対して、利用する共用車両1の空気補充の依頼を通知する。そして、ユーザが空気補充を実行した場合には、例えば利用料金の割引クーポンなどを送ってもよい。一方、管理者端末20を通じて、スローリークが生じた点が通知されたステーション側では、該共用車両1の利用予約がない場合に、タイヤ2のメンテナンス(空気補充、あるいは、タイヤやエアバルブ、ホイールなどの損傷確認等)を行う。
【0043】
管理者端末20は、共用車両1が駐車されるステーションに設けられる端末装置である。管理者端末20は、
図1に示すように、通信部21と、記憶部22と、表示部23と、入力部24と、報知部25と、制御部26とを備える。通信部21は、通信ネットワーク40を介してクラウドサーバ30と無線通信可能に構成される。通信部21は、クラウドサーバ30から対象の共用車両1の空気圧異常の有無、および空気圧異常の種別に関する情報を受信する。また、通信部21は、ステーションの作業員によって、共用車両1に対するパンク修理の実行が入力されると、該共用車両1の車両IDとともにメンテナンス終了情報をクラウドサーバ30に送信する。ここで、クラウドサーバ30はメンテナンス終了情報を受信すると、メンテナンスの終了報告をカーシェアリング管理サーバに送信する。これにより、メンテナンスが終了した共用車両1から順次、新たな利用予約を受け付けることが可能となる。
【0044】
記憶部22は、揮発性または不揮発性のメモリやHDDなどの記憶手段を備えて構成される。記憶部22には、制御部26が実施する各種のプログラムや、各種のデータが記憶される。
【0045】
表示部23は、端末の略中央部に配置され、各種情報を表示してステーションの作業員に提供する表示画面である。表示部23には、作業員の操作に基づき、対象の共用車両1の各種情報を表示することができる。
【0046】
入力部24は、例えば、表示部23上に重ねて形成されたタッチパネルであり、管理者端末20に対する各種情報の入力を実施する。報知部25は、クラウドサーバ30から対象の共用車両1の空気圧異常に関する情報を受信すると、その旨を報知する。報知部25は、例えば表示部23に空気圧異常が発生した共用車両1とタイヤ2の位置情報を表示してもよいし、これに加えて表示灯の点灯や報知音の発報といった構成としてもよい。制御部26はCPUを有し、通信部21を介してクラウドサーバ30から受信した情報、または記憶部22に記憶されたデータに基づいて所定の処理を実施する。
【0047】
次に、本実施形態に係るクラウドサーバ30の動作について説明する。
図2は、空気圧管理システムの動作手順を示すフローチャートである。
図3は、
図2における空気圧管理装置のパンク判定処理の動作手順を示すフローチャートである。
【0048】
図2に示すように、共用車両1がステーションに返却される(ステップST1)と、管理者端末20の制御部26は、返却されてから任意の所定時間が経過するか否かを判定する(ステップST2)。この所定時間は、共用車両1のタイヤ2が冷間されるまでの期間に相当しており、制御部26は、返却されてから例えば15分が経過したか否かを判定する。この判定において、所定時間の経過前の場合(ステップST2;No)、タイヤ2の温度の変動(低下)が大きい場合があり、その場合は空気圧も変動(低下)することになるため、所定時間か経過するまで待機することで、精度良い判定をすることができる。
【0049】
一方、所定時間が経過している場合(ステップST2;Yes)には、クラウドサーバ30の制御部39は、パンク判定処理を実行する(ステップST3)。そして、クラウドサーバ30の制御部39は、共用車両1のタイヤ2に通常パンク判定があったか否かを判定し(ステップST4)、通常パンク判定があった場合(ステップST4;Yes)には、処理をステップST6に移行する。また、通常パンク判定がなかった場合(ステップST4;No)、クラウドサーバ30の制御部39は、共用車両1のタイヤ2にスローリーク判定があったか否かを判定する(ステップST5)。この判定において、スローリーク判定があった場合(ステップST5;Yes)には、処理をステップST6に移行し、スローリーク判定がなかった場合(ステップST5;No)には、処理を終了する。
【0050】
通常パンク判定、またはスローリーク判定があった場合、クラウドサーバ30の制御部39は、通信部31を介して、対象の共用車両1が駐車されたステーションを管理する管理者端末20に空気圧異常の種別を報知する(ステップST6)。具体的には、制御部39は、対象の共用車両1の空気圧異常の種別がパンク(通常パンク)と判定された場合、この共用車両1のステーションの管理者端末20およびカーシェアリング管理サーバに対して、該共用車両1のタイヤ2にパンクが生じた点を通知する。この場合、カーシェアリング管理サーバは、その当日に該共用車両1の利用予約が入っているかを確認し、利用予約が入っている場合には、同クラスの別の共用車両1に利用予約を振り替えるとともに、その旨をユーザに通知する。また、管理者端末20にパンクが生じた点が通知されると、ステーション側では、該共用車両1のタイヤ2のパンク修理を行う。
【0051】
また、制御部39は、対象の共用車両1の空気圧異常の種別がスローリークと判定された場合、この共用車両1のステーションの管理者端末20およびカーシェアリング管理サーバに対して、該共用車両1のタイヤ2にスローリークが生じている点を報知する。この場合、カーシェアリング管理サーバは、その当日に該共用車両1の利用予約が入っている場合には、ユーザに対して、利用する共用車両1の空気補充の依頼を通知することが好ましい。そして、ユーザが空気補充を実行した場合には、例えば利用料金の割引クーポンなどを送る。一方、管理者端末20を通じて、スローリークが生じた点が通知されたステーション側では、該共用車両1の利用予約がない場合に、タイヤ2のメンテナンス(空気補充)を行う。
【0052】
次に、クラウドサーバ30のパンク判定処理について説明する。
図3に示すように、クラウドサーバ30は、空気圧情報取得部32により、センサ受信端末10から受信した共用車両1の各タイヤ2の空気圧情報(センサ情報(Pi、Ti))を所定のタイミングで取得する(ステップST11)。この空気圧情報には、共用車両1の車両IDと、各センサ3のセンサIDと、センサIDと車輪位置との対応関係と、各センサ3が検知した各タイヤ2の空気圧および温度とを含む。
【0053】
次に、クラウドサーバ30は、基準情報設定部33により、タイヤ2の基準空気圧および基準温度を含む基準情報(Po、To)を設定する(ステップST12)。本実施形態では、基準情報設定部33は、同一のタイヤ2における過去の所定期間(例えば直近10日間)の温度換算空気圧の平均値を基準温度として設定する。
【0054】
次に、クラウドサーバ30は、温度換算空気圧算出部34により、空気圧情報(センサ情報(Pi、Ti))および設定された基準情報(Po、To)に基づいて、基準温度における空気圧に換算した温度換算空気圧(Pi´)を算出する(ステップST13)。温度換算空気圧算出部34は、例えばボイル=シャルルの法則などに基づき、タイヤ2の空気圧(Pi)を基準温度(To)における空気圧に換算する。
【0055】
次に、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第1閾値K1以上であるか否かを判定する(ステップST14)。この第1閾値K1は、空気圧異常の有無を判定するための閾値であり、少なくともタイヤ2のスローリークが推定される閾値である。本実施形態では、JATMAに規定されるタイヤ2の最大空気圧を240kPaとした場合、第1閾値K1は、最大空気圧の約8%(20kPa)に設定されている。この判定において、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第1閾値K1以上である場合(ステップST14;Yes)、クラウドサーバ30は、処理をステップST15に移行する。
【0056】
また、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第1閾値K1以上でない場合(ステップST14;No)、異常判定部36は、共用車両1のタイヤ2には空気圧異常はないと判定して(ステップST16)処理を終了する。
【0057】
次に、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第2閾値K2以上であるか否かを判定する(ステップST15)。この第2閾値K2は、空気圧異常の種別をタイヤ2のパンクかスローリークかを判定する基準となり、タイヤ2のパンクが推定される閾値である。第2閾値K2は、第1閾値K1よりも大きな値である。本実施形態では、JATMAに規定されるタイヤ2の最大空気圧を240kPaとした場合、第2閾値K2は、最大空気圧の約20%(50kPa)に設定されている。この判定において、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第2閾値K2以上でない場合(ステップST15;No)、クラウドサーバ30は、処理をステップST17に移行する。この場合、異常判定部36は、共用車両1のタイヤ2は、異常種別がスローリークの異常であると判定し(ステップST17)、処理を終了する。
【0058】
この判定において、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第2閾値K2以上である場合(ステップST15;Yes)、クラウドサーバ30は、処理をステップST18に移行する。この場合、異常判定部36は、共用車両1のタイヤ2は、異常種別がパンクの異常であると判定し(ステップST18)、処理を終了する。このように、本実施形態では、異常判定部36は、2段階の閾値K1、K2を用いて、空気圧異常の種別を判定することにより、タイヤ2のスローリークを適切に判定することができる。
【0059】
本実施形態では、異常判定部36が空気圧異常の種別をタイヤ2のスローリークと判定した場合、異常判定部36は、この判定の正確性を担保するための動作を実行する。
図4は、空気圧管理装置がスローリーク判定を出力する際の動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートでは、ステップST101からステップST107に処理を繰り返し実行する。また、このフローチャートでは、
図3におけるフローチャートでスローリークの異常があると判定される(ステップST17)と、判定フラグを立てるようになっている。
【0060】
図4に示すように、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、スローリークの判定フラグ数Nが1以上であるか否かを判定する(ステップST101)。この判定において、スローリークの判定フラグ数Nが1以上でなければ(ステップST101;No)、処理を終了して、再度ステップST101を開始する。また、スローリークの判定フラグ数Nが1以上であれば(ステップST101;Yes)、クラウドサーバ30は、処理をステップST102に移行する。
【0061】
次に、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、新たなスローリークの異常判定があるか否かを判定する(ステップST102)。具体的には、
図3のフローチャートにおけるステップST17の処理が新たになされた場合には、新たなスローリークの異常判定があると判定される。一方、
図3のフローチャートにおいて、例えば、空気圧異常がないと判定されたり、パンクの異常が判定されたりした場合には、新たなスローリークの異常判定がないと判定される。この判定において、新たなスローリークの異常判定がある場合(ステップST102;Yes)には、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、スローリークの判定フラグ数Nに1を加える(ステップST103)。すなわち、異常判定部36は、スローリークの判定フラグ数(判定された回数)を積算する。一方、新たなスローリークの異常判定がない場合(ステップST102;No)には、クラウドサーバ30は、処理をステップST107に移行する。
【0062】
次に、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、スローリークの判定フラグ数Nが所定値a(例えば10)よりも大きいか否かを判定する(ステップST104)。この判定では、積算されたスローリークの判定フラグ数(判定された回数)が所定値a(例えば10)を超えたか否かを判定する。この判定において、スローリークの判定フラグ数Nが所定値aよりも大きい場合(ステップST104;Yes)には、クラウドサーバ30は、処理をステップST105に移行する。また、スローリークの判定フラグ数Nが所定値aよりも大きくない場合(ステップST104;No)には、クラウドサーバ30は、処理を終了して、再度ステップST101を開始する。
【0063】
次に、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第3閾値K3以上であるか否かを判定する(ステップST105)。この第3閾値K3は、毎日算出される1日分(0時から翌日の0時まで)の温度換算空気圧の低下量である。この構成では、1日の空気圧の低下量(第3閾値K3)以上に、温度換算空気圧が該温度換算空気圧の平均値から低下していることとなる。このため、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第3閾値K3以上であるか否かを判定することで、該タイヤ2のスローリークの判定精度を高めることができる。ここで、タイヤ2は、静的(止まっている)な状態よりも動的(運行している)な状態の方が、空気漏れが多く、空気圧の低下量が大きい。このため、本構成では、共用車両1が直近に運行された日の温度換算空気圧の低下量を基準とするが好ましい。この構成によれば、タイヤ2のスローリークをさらに精度良く判定することができる。
【0064】
この判定において、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第3閾値K3以上である場合(ステップST105;Yes)には、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、スローリーク判定を出力する(ステップST106)。この構成では、スローリークの判定精度を高めることができる。
【0065】
一方、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第3閾値K3以上でない場合(ステップST105;No)には、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、スローリークの判定フラグ数Nを0にして(ステップST107)、処理を終了する。
【0066】
上記した実施形態では、異常判定部36は、2段階の閾値K1、K2を用いて、空気圧異常の種別を判定するパンク判定処理を説明したが、この判定手法に限るものではない。次に、異常判定部36がタイヤ2の温度換算空気圧と温度との対応関係を示すデータ群を用いて、空気圧異常の種別を判定するパンク判定処理について説明する。
図5は、別のパンク判定処理の動作手順を示すフローチャートであり、
図6は、タイヤの温度換算空気圧と温度との対応関係を示すデータ群の一例を示す図である。
【0067】
図5において、クラウドサーバ30は、空気圧情報取得部32により、センサ受信端末10から受信した共用車両1の各タイヤ2の空気圧情報(センサ情報(Pi、Ti))を所定のタイミングで取得する(ステップST111)。この空気圧情報には、共用車両1の車両IDと、各センサ3のセンサIDと、センサIDと車輪位置との対応関係と、各センサ3が検知した各タイヤ2の空気圧および温度とを含む。
【0068】
次に、クラウドサーバ30は、基準情報設定部33により、タイヤ2の基準空気圧および基準温度を含む基準情報(Po、To)を設定する(ステップST112)。本実施形態では、基準情報設定部33は、同一のタイヤ2における過去の所定期間(例えば直近10日間)の温度換算空気圧の平均値を基準温度として設定する。
【0069】
次に、クラウドサーバ30は、温度換算空気圧算出部34により、空気圧情報(センサ情報(Pi、Ti))および設定された基準情報(Po、To)に基づいて、基準温度における空気圧に換算した温度換算空気圧(Pi´)を算出する(ステップST113)。温度換算空気圧算出部34は、例えばボイル=シャルルの法則などに基づき、タイヤ2の空気圧(Pi)を基準温度(To)における空気圧に換算する。
【0070】
次に、クラウドサーバ30は、異常判定部36により、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第4閾値K4(所定閾値)以上であるか否かを判定する(ステップST114)。この第4閾値K4は、空気圧異常の種別をタイヤ2のパンクかスローリークかを判定する基準となり、タイヤ2のパンクが推定される閾値であり、上記した第2閾値K2とほぼ同一の値を用いることができる。本実施形態では、JATMAに規定されるタイヤ2の最大空気圧を240kPaとした場合、第4閾値K4は、最大空気圧の約20%(50kPa)に設定されている。この判定において、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第4閾値K4以上である場合(ステップST114;Yes)、クラウドサーバ30は、処理をステップST119に移行する。この場合、異常判定部36は、共用車両1のタイヤ2は、異常種別がパンクの異常であると判定し(ステップST19)、処理を終了する。
【0071】
この判定において、基準空気圧(Po)と温度換算空気圧(Pi´)との差分値が第4閾値K4以上でない場合(ステップST114;No)、クラウドサーバ30は、処理をステップST115に移行する。この場合、異常判定部36は、温度換算空気圧(Pi´)と温度(Ti)と組データを、記憶部38に記憶されたデータ群(学習モデル)に入力(比較)する(ステップST115)。そして、異常判定部36は、クラスタリング結果により、タイヤの異常の有無を判定する(ステップST116)。具体的には、
図6に示すように、データ群(学習モデル)は、タイヤ2の温度とその温度で換算された温度換算空気圧との組データを多数集計し、例えば機械学習のアルゴリズムであるK-means法、SVM、LOF等を用いてクラスタリングすることで、異常なしのクラスタと異常あり(スローリーク)のクラスタとに分類されている。異常判定部36は、データ群(学習モデル)に、温度換算空気圧(Pi´)と温度(Ti)と組データをその都度、入力することにより、そのクラスタリング結果によって、共用車両1のタイヤ2に異常があるか否かを判定することができる。
【0072】
この判定において、異常がない場合(ステップST116;No)、クラウドサーバ30は、処理をステップST117に移行する。この場合、異常判定部36は、共用車両1のタイヤ2には空気圧異常はないと判定して(ステップST117)処理を終了する。
【0073】
また、この判定において、異常がある場合(ステップST116;Yes)、クラウドサーバ30は、処理をステップST118に移行する。この場合、異常判定部36は、共用車両1のタイヤ2は、異常種別がスローリークの異常であると判定し(ステップST118)、処理を終了する。このように、この別の手法では、1つの閾値K4と、データ群(学習モデル)とを用いて、空気圧異常の種別を判定することにより、タイヤ2のスローリークを適切に判定することができる。なお、
図5のフローチャートにおいて、ステップST114と、ステップST115およびステップST116との順番を入れ替えて実行してもよい。
【0074】
以上、説明したように、本実施形態に係るクラウドサーバ30は、共用車両1に装着されたタイヤ2の空気圧および温度を含むセンサ情報を所定のタイミングで取得する空気圧情報取得部32と、タイヤ2の基準空気圧および基準温度を含む基準情報を設定する基準情報設定部33と、センサ情報および基準情報に基づいて、基準温度におけるタイヤ2の温度換算空気圧を算出する温度換算空気圧算出部34と、基準空気圧と温度換算空気圧との比較結果に基づいて、タイヤ2の異常の有無および該異常の種別を判定する異常判定部36とを備える。この構成によれば、タイヤ2の空気圧異常の有無および異常の種別を精度良く判定できる。
【0075】
また、本実施形態に係るクラウドサーバ30において、異常判定部36は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が第1閾値K1以上の場合に、タイヤ2に異常有りと判定し、かつ、差分値が第1閾値K1よりも大きい第2閾値K2以上の場合に、異常の種別をタイヤ2のパンクと判定し、差分値が第2閾値K2より小さい場合に、異常の種別をタイヤのスローリークと判定する。この構成によれば、2段階の閾値K1、K2を用いて、空気圧異常の種別を判定することにより、タイヤ2のスローリークを適切に判定することができる。
【0076】
本実施形態に係るクラウドサーバ30において、異常判定部36は、スローリークと判定された回数を計測し、連続して該スローリークと判定された回数が所定回数を超えた場合、スローリークの異常を出力する。この構成によれば、タイヤ2のスローリークを精度良く判定することができる。
【0077】
本実施形態に係るクラウドサーバ30において、温度換算空気圧の1日分の低下量を算出する空気圧低下量算出部37を備え、連続して該スローリークと判定された回数が所定回数を超えた場合、異常判定部36は、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値と、温度換算空気圧の1日分の低下量との比較結果に基づき、スローリークの異常を出力する。この構成によれば、温度換算空気圧の1日分の低下量を加味して、タイヤ2のスローリークを精度良く判定することができる。
【0078】
本実施形態に係るクラウドサーバ30において、タイヤ2の温度換算空気圧と温度との対応関係を示すデータ群を記憶する記憶部38を備え、異常判定部36は、温度換算空気圧と温度との組データを、データ群と比較したクラスタリング結果により、タイヤ2の異常の有無を判定し、かつ、基準空気圧と温度換算空気圧との差分値が第4閾値K4以上であるか否かにより、異常の種別をタイヤ2のスローリークかタイヤ2のパンクかを判定する。この構成によれば、1つの閾値K4と、データ群(学習モデル)とを用いて、空気圧異常の種別を判定することにより、タイヤ2のスローリークを適切に判定することができる。
【0079】
本実施形態に係るクラウドサーバ30において、所定期間における温度換算空気圧の平均値を算出する平均値算出部35を備え、基準情報設定部33は、温度換算空気圧の平均値を基準空気圧として設定する。この構成によれば、基準空気圧を温度換算空気圧の平均値で定期的に更新するため、適正な基準空気圧を用いることができ、タイヤ2の空気圧異常の有無を精度良く判定することができる。
【0080】
本実施形態に係るクラウドサーバ30において、空気圧情報取得部32、温度換算空気圧算出部34および異常判定部36は、共用車両1が規定の駐車地に駐車され、該共用車両1の運行が終了して所定時間が経過した後に、動作を実行する。この構成によれば、タイヤ2がある程度冷えているため、異常判定部36によるパンク判定処理を精度良く実行することができる。
【0081】
本実施形態に係るクラウドサーバ30において、車両1は、不特定のユーザに共用される共用車両であるため、例えば、カーシェアリングで利用される共用車両1のタイヤ2の空気圧異常の有無および異常の種別を適切に判定することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、クラウドサーバ30は、カーシェアリング事業で利用される共用車両1に装着されたタイヤ2の空気圧を管理するものであったが、例えば、予め登録されたユーザの車両に装着されたタイヤ2の空気圧を管理するものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 共用車両(車両)
2 タイヤ
3 センサ
3a 空気圧センサ
3b 温度センサ
10 センサ受信端末
20 管理者端末
30 クラウドサーバ
31 通信部
32 空気圧情報取得部(情報取得部)
33 基準情報設定部
34 温度換算空気圧算出部
35 平均値算出部
36 異常判定部
37 空気圧低下量算出部
38 記憶部
39 制御部
100 タイヤ空気圧管理システム