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特開2024-57917金属板の加工設備及び方法、スクラップ
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  • 特開-金属板の加工設備及び方法、スクラップ 図1
  • 特開-金属板の加工設備及び方法、スクラップ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057917
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】金属板の加工設備及び方法、スクラップ
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/22 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B21B1/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164905
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】591063202
【氏名又は名称】産業振興株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭造
(72)【発明者】
【氏名】竹下 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小泉 真志
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AD10
4E002BB01
4E002CB03
(57)【要約】
【課題】金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる際に、その嵩比重を小さくできるようにする。
【解決手段】金属板コイル(1)を巻き戻して、板状に切断して積み重ねる金属板の加工設備であって、切断後の前記金属板(1a)を積み重ねたときに隙間が確保されるように、切断前又は切断後の前記金属板(1a又は1b)に凹凸加工を行う凹凸加工装置(7a、7b)を備える。先行の切断後の前記金属板(1a)に形成される凹凸(12)の配置と、これに続く後行の切断後の前記金属板(1a)に形成される凹凸(12)の配置とが相違する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる金属板の加工設備であって、
切断後の前記金属板を積み重ねたときに隙間が確保されるように、切断前又は切断後の前記金属板に凹凸加工を行う凹凸加工装置を備えたことを特徴とする金属板の加工設備。
【請求項2】
先行の切断後の前記金属板に形成される凹凸の配置と、これに続く後行の切断後の前記金属板に形成される凹凸の配置とが相違することを特徴とする請求項1に記載の金属板の加工設備。
【請求項3】
前記凹凸加工装置として、切断前又は切断後の前記金属板を挟み込む上下のロールを備え、
前記上下のロールのうちの一方のロールが、切断前又は切断後の前記金属板にエンボスを形成するためのポンチを備えたロールであり、他方のロールが、前記ポンチに対応させた溝が形成されたロールであることを特徴とする請求項1に記載の金属板の加工設備。
【請求項4】
前記一方のロールでは、複数列で前記ポンチが配列され、各列において、前記ポンチが周方向に不等間隔に配置されており、
前記他方のロールでは、前記ポンチの列に対応させて、周方向に延びる前記溝が複数列形成されていることを特徴とする請求項3に記載の金属板の加工設備。
【請求項5】
切断後の前記金属板の長さと、前記一方のロールの周長のn倍(nは自然数)とが等しくないことを特徴とする請求項3又は4に記載の金属板の加工設備。
【請求項6】
切断後の前記金属板の長さと、前記一方のロールの周長のn倍との差の絶対値が、前記エンボスの裾野の直径以上になることを特徴とする請求項5に記載の金属板の加工設備。
【請求項7】
前記金属板コイルは、スクラップ化する薄板コイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の加工設備。
【請求項8】
金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる金属板の加工方法であって、
切断後の前記金属板を積み重ねたときに隙間が確保されるように、切断前又は切断後の前記金属板に凹凸加工を行う工程を有することを特徴とする金属板の加工方法。
【請求項9】
複数枚の金属板を積み重ねてバンディングしたスクラップであって、
前記金属板に凹凸が形成されており、上下の前記金属板間に隙間が確保された状態で積み重ねられていることを特徴とするスクラップ。
【請求項10】
前記金属板は、薄板コイルを巻き戻して、板状に切断したものであり、
電気炉製鋼法の電気炉に装入されることを特徴とする請求項9に記載のスクラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる金属板の加工設備及び方法、並びに複数枚の金属板を積み重ねてバンディングしたスクラップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルといった社会の実現に向けて、高級鋼の製造に適した技術として、二酸化炭素の排出量の少ない電気炉製鋼法のニーズが高まっている。電気炉製鋼法では、鉄系スクラップを利用することから、スクラップの需要が高まっている。従来、不要となった薄板コイルは、主に高炉法でリサイクルされているが、電気炉製鋼法で高級鋼を製造する際に、薄板コイルのように含有成分が明瞭で不純物が含有していないスクラップは有用である。
【0003】
特許文献1には、圧延加工方法またはプレス加工方法によって加工された凹凸状のエンボスを有するエンボス付金属板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-136905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄板コイルを高炉法でリサイクルする場合、薄板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねてバンディングした状態で、転炉に装入することが行われている。切断後の薄板を積み重ねてバンディングすると、あたかもスラブ等のような「塊り」の状態となるが、転炉には9割程度の溶銑が既に存在しており、その中に冷鉄源となる「塊り」を装入するときにも、十分な熱源があることから、溶融性に配慮する必要はない。
しかしながら、薄板コイルを電気炉製鋼法でリサイクルする場合、切断後の薄板を積み重ねてバンディングするだけでは、電気炉に冷鉄源となる「塊」を装入することになり、これを加熱して溶融するときに、溶け残りの不具合の発生が懸念される。或いは、溶け残りを防止するために、大きな熱容量や溶融時間が必要となる。このように電気炉に装入するスクラップの嵩比重が、その操業に大きく影響を与える。嵩比重が大きい方が出鋼量の点での効率は良いが、嵩比重が大きい「塊」の状態では、溶け残りの懸念が生じ、熱容量や溶融時間の点で効率を悪化させる。したがって、薄板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる際に、その嵩比重を小さくすることが求められる。
特許文献1は、表面に傷が付きにくく、傷が付いても目立ちにくく、汚れを除去し易く、摩耗に対する耐久性が高く、デザイン性のある細かなエンボスが設けられたエンボス付金属板を提供するものであり、金属板を積み重ねる際に、その嵩比重を小さくすることを想定したものではない。
【0006】
本発明は、前述の点に鑑みてなされたものであり、金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる際に、その嵩比重を小さくできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属板の加工設備は、金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる金属板の加工設備であって、切断後の前記金属板を積み重ねたときに隙間が確保されるように、切断前又は切断後の前記金属板に凹凸加工を行う凹凸加工装置を備えたことを特徴とする。
本発明の金属板の加工方法は、金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる金属板の加工方法であって、切断後の前記金属板を積み重ねたときに隙間が確保されるように、切断前又は切断後の前記金属板に凹凸加工を行う工程を有することを特徴とする。
本発明のスクラップは、複数枚の金属板を積み重ねてバンディングしたスクラップであって、前記金属板に凹凸が形成されており、上下の前記金属板間に隙間が確保された状態で積み重ねられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属板コイルを巻き戻して、板状に切断して積み重ねる際に、その嵩比重を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るレベラーシャーラインの概略構成を示す図である。
図2】エンボスロール及び受けロールを示す図である。
図3】切り板を示す図である。
図4】切り板を積み重ねた状態を示す図である。
図5】エンボスなしのスクラップ、及びエンボスありのスクラップのイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1に、実施形態に係る金属板の加工設備であるレベラーシャーラインの概略構成を示す。本実施形態では、本発明でいう金属板コイルとして、スクラップ化する、厚みが3mm以下の薄板コイル1を加工対象とする。レベラーシャーラインでは、薄板コイル1を巻き戻して、板状に切断し、切断後の鋼板(以下、切り板と呼ぶ)1aを積み重ねてバンディングして、スクラップ11にする。このように複数枚の切り板1aを積み重ねてバンディングしたスクラップ11は、電気炉製鋼法でのリサイクルに供され、電気炉に装入される。
【0011】
図1に示すように、レベラーシャーラインは、アンコイラー2と、ガイドロール3と、上下のピンチロール4a、4bと、複数のワークロール5a~5eを備えるレベラー5と、上下の刃6a、6bを備えるシャー切断機6と、凹凸加工装置として機能する上下のロール7a、7bと、コンベア8と、置き台9とを備える。
薄板コイル1は、その巻き取り中心にアンコイラー2のマンドレルが差し込まれて支持される。薄板コイル1から巻き戻される鋼板1bは、ガイドロール3でガイドされながら、ピンチロール4a、4bにより搬送される。そして、鋼板1bは、レベラー5で歪み取りが行われて平坦化されて、シャー切断機6で所定の長さLの板状に切断される。切断後の鋼板(切り板)1aは、上下のロール7a、7bで凹凸加工が施された後、コンベア8で置き台9に搬送されて順次積み重ねられる。置き台9で積み重ねられた切り板1a群は、一定の重量になったところで払い出されて、バンディングフープ10を用いてバンディングされる。
【0012】
ここで、上下のロール7a、7bは、切り板1aを積み重ねたときに隙間が確保されるように、切り板1aに凹凸加工を行うものであり、本実施形態では、切り板1aにエンボス12を形成する。図3に、シャー切断機6で順次切断され、エンボス12が形成された、n枚目、n+1枚目、n+2枚目の切り板1aを模式的に示す。
【0013】
以下、図2を参照して、ロール7a、7bについて詳述する。図2(a)は、ロール7a、7bを模式的に示す斜視図、(b)はロール7a、7bの一部を模式的に示す正面図及び側面図である。
下側のロール7aは、切り板1aにエンボス12を形成するためのポンチ13を備えたロール(以下、エンボスロールと呼ぶ)である。また、上側のロール7bは、ポンチ13に対応させた溝14が形成されたロール(以下、受けロールと呼ぶ)である。
【0014】
エンボスロール7aでは、複数列(図示例では3列)で、凸状のポンチ13が配列される。各列において、複数のポンチ13が周方向にランダムに配置され、複数のポンチ13が周方向で不等間隔に配置されている。なお、ポンチ13の形状は、山形状や円錐台形状等、凸状となるものであればよい。また、ポンチ13は、超硬合金等の摩耗しにくい金属製とするのが望ましく、エンボスロール7aのロール本体へのねじ込み等の方式により、破損や摩耗時に取り換え可能とすることが望ましい。
【0015】
受けロール7bでは、ポンチ13の列に対応させて、周方向に延びる溝14が複数列(図示例では3列)形成されている。
【0016】
エンボスロール7aのポンチ13と、受けロール7bの溝14とは、圧下量を調整することで、切り板1aにポンチ13の形状が有効に転写されるように配置される。エンボスロール7aと受けロール7bとで切り板1aを挟み込むことにより、ポンチ13が切り板1aに押し付けられて、その押し付けられた部分が溝14側に凸になるように変形する。この結果、切り板1aには、上に凸となる複数のエンボス12が形成される。
【0017】
また、切り板1aの長さL(図3(a)を参照)と、エンボスロール7aの周長l(図2(a)を参照)のn倍(nは自然数)とが等しくならないようにする(L≠nl)。これにより、先行の切り板1aと、これに続く後行の切り板1aとで、エンボス12が形成される周期が同調しないようにすることができる。したがって、先行の切り板1aに形成されるエンボス12の配置と、後行の切り板1aに形成されるエンボス12の配置とが相違するようになる。
【0018】
また、切り板の長さLと、エンボスロールの周長lのn倍との差の絶対値が、エンボス12の裾野の直径2r(図3(a)を参照)以上になるようにする(|L-nl|>2r)。これにより、先行の切り板1aに、これに続く後行の切り板1aを積み重ねたときに、先行の切り板1aに形成されたエンボス12上に、後行の切り板1aに形成されたエンボス12が位置しないようにし、エンボス12同士の重なりを回避することができる。
【0019】
このようにしたレベラーシャーラインでは、図3に示すように、切り板1aに、複数のエンボス12が形成される。そして、先行の切り板1aに形成されるエンボス12の配置と、これに続く後行の切り板1aに形成されるエンボス12の配置とが相違する。図3でいえば、n枚目の切り板1aに形成されるエンボス12の配置は、n+1枚目の切り板1aに形成されるエンボス12の配置とは相違する。また、n+1枚目の切り板1aに形成されるエンボス12の配置は、n+2枚目の切り板1aに形成されるエンボス12の配置とは相違する。したがって、図4に示すように、切り板1aを積み重ねたときに、上下の切り板1a間に、エンボス12の高さに応じた隙間δが確保される。
【0020】
エンボス12の高さは、切り板1aの板厚や客先等からの要求高さに合わせて適宜設定すればよく、例えば0.03mm~2.0mm程度の高さに設定される。エンボス12の高さは、例えばエンボスロール7a及び受けロール7bによる圧下量を調整することにより変えることができる。
【0021】
図5は、同板厚かつ同枚数の切り板1aからなる、エンボスなしのスクラップ、及びエンボスありのスクラップのイメージを示す図である。
図5(a)に示すように、エンボスのない、フラットな切り板1aを積み重ねてバンディングした「塊」では、比重で表すと、その嵩比重が7程度になる。それに対して、図5(b)に示すように、エンボス12のある切り板1aを積み重ねてバンディングした「塊」では、上下の切り板1a間に隙間δが確保された状態になるので、その嵩比重を小さくすることができる。電気炉での溶融性に配慮すると、嵩比重が例えば2~4程度になるのが好ましい。切り板1aの板厚と同程度の高さのエンボス12を形成するようにすれば、フラットな切り板1aを積み重ねてバンディングした「塊」の嵩比重に対して、嵩比重を略半減させることができる。
【0022】
以上述べたように、複数枚の金属板1aを積み重ねてバンディングしたスクラップ11において、上下の切り板1a間に隙間δが確保された状態になるので、その嵩比重を小さくすることができる。したがって、スクラップ11を電気炉に装入して、加熱して溶融するときに、溶け残りの不具合が発生したり、溶け残りを防止するために大きな熱容量や溶融時間が必要となったりするのを防ぐことができる。なお、薄板の場合、エンボス12のある切り板1aを積み重ねたときに、現実には、切り板1aが撓んで、必ずしも切り板1aの全領域で隙間δが確保されないこともあるが、嵩比重を小さくして、電気炉での溶解性を高めるといった効果は十分に得られる。
【0023】
なお、切り板の長さLは、例えば電気炉のサイズに合わせて変更できるようにするのが望ましい。鋼板1bの搬送速度やシャー切断機6での切断のタイミングを制御することで、切り板の長さLを変更することができる。切り板の長さLを変更するときに、上述したL≠nlや|L-nl|>2rの関係が保たれるようにする。
【0024】
また、専用のエンボスロール7a及び受けロール7bを配置してもよいが、これに限定されるものではなく、既存のロールがエンボスロール7aや受けロール7bとして機能するようにしてもよい。例えばレベラー5の後段に、鋼板1bをシャー切断機6に送り込むための上下のピンチロールが配置されることがある。この場合、この上下のピンチロールが、エンボスロール7a及び受けロール7bとして機能するようにしてもよい。
また、ロール7a、7bのうちの少なくともいずれか一方を動かせるようにして、切り板1aの板厚やエンボス12の要求高さ等に応じて、ロール7a、7bの間隔を調整できるようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、シャー切断機6の後段にエンボスロール7a及び受けロール7bを配置し、切り板1aにエンボス12を形成するようにした。この場合、シャー切断機6では、フラットな鋼板1bを切断すればよく、凹凸のある鋼板を切断するのと比較して切断しやすい。ただし、これに限定されるものではなく、シャー切断機6の前段にエンボスロール7a及び受けロール7bを配置し、切断前の鋼板1bにエンボス12を形成するようにしてもよい。ただし、エンボスロール7a及び受けロール7bは、レベラー5の後段に配置されるのが好ましい。レベラー5で平坦化された鋼板に対してエンボス12を形成することで、エンボス12の高さを正確にコントロールすることが可能になる。
【0026】
以下、他の実施形態を説明する。
実施形態では、凹凸加工装置として、エンボスロール7a及び受けロール7bを説明したが、これに限られるものではない。凹凸加工装置として、ハンマリング装置を用いてもよい。例えば鋼板の搬送方向に複数台のハンマリング装置を設置し、切り板1a又は切断前の鋼板1bをハンマーでランダムに打ち付けることで、切り板1aに凹凸が形成されるようにする。これにより、先行の切り板1aに形成される凹凸の配置と、これに続く後行の切り板1aに形成される凹凸の配置とが相違することになり、上下の切り板1a間に隙間が確保される。
【0027】
また、薄板コイル1(鋼板1b、切り板1a)の板幅方向において、切り板1aとロール7a、7bとの相対位置を可変にしてもよい。鋼板1bを切断するたびに、切り板1aがロール7a、7bに進入する直前に、切り板1aのセンター位置を板幅方向にずらす制御を繰り返し行う。或いは、鋼板1bを切断するたびに、切り板1aがロール7a、7bに進入する直前に、ロール7a、7bを一体でそのセンター位置を幅方向にずらす制御を繰り返し行う。これにより、先行の切り板1aに形成されるエンボス12と、これに続く後行の切り板1aに形成されるエンボス12とが板幅方向にずれるので、先行の切り板1aに形成されるエンボス12の配置と、これに続く後行の切り板1aに形成されるエンボス12の配置とが相違することになり、上下の切り板1a間に隙間が確保される。
この場合は、切り板1aごとにエンボス12の位置が板幅方向にずれるので、エンボスロール7aの周方向にポンチが等間隔で配置されていてもよいし、L≠nlを満たさなくてもよい。
なお、切り板1aとロール7a、7bとの板幅方向へのずらし量は、エンボス12の裾野の直径2r以上になるようにする。これにより、先行の切り板1aに、これに続く後行の切り板1aを積み重ねたときに、先行の切り板1aに形成されたエンボス12上に、後行の切り板1aに形成されたエンボス12が位置しないようにし、エンボス12同士の重なりを回避することができる。例えば切り板1aとロール7a、7bとの板幅方向へのずらし量を10mm程度とすればよい。
【0028】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明でいう凹凸加工による凹凸形状は、エンボス12に限定されるものではなく、積み重ねたときに隙間が確保されるようにするものであれば、どのようなものでもよい。
【0029】
なお、切り板1aを積み重ねるときに、上下の切り板1a間にスペーサを介在させて隙間を確保するような手法でも、嵩荷重を小さくするのに有効である。スペーサとしては、電気炉で溶融させることを考慮して、鉄系スクラップを使用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1:薄板コイル、1a:切り板、1b:鋼板、2:アンコイラー、3:ガイドロール、4a、4b:ピンチロール、5:レベラー、6:シャー切断機、7a:エンボスロール、7b:受けロール、8:コンベア、9:置き台、10:バンディングフープ、11:スクラップ、12:エンボス、13:ポンチ、14:溝
図1
図2
図3
図4
図5