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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057927
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】追尾制御装置、および追尾制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/695 20230101AFI20240418BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240418BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240418BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240418BHJP
【FI】
H04N5/232 990
H04N5/225 600
G03B17/56 A
G03B15/00 Q
G03B15/00 P
G03B15/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164922
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大木場 正
【テーマコード(参考)】
2H105
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA13
5C122EA65
5C122EA66
5C122FA18
5C122FH11
5C122FH14
5C122GD04
5C122GD06
5C122GG21
5C122HA75
5C122HA82
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】相互に光空間通信を行う目標物との間で光ビームの整合を容易とする。
【解決手段】追尾制御装置(1)は、目標物(OB)と相互に光通信する光学部(10)と、目標物から出射される第2光ビームの指向情報を取得する目標情報取得部(43b)と、制御部(40)と、を備え、制御部は、目標物の画像に基づいて、光学部を目標物に指向させるための目標角度を算出し、目標角度および指向情報に基づいて、光学部を目標物に指向させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信の対象である目標物に対して第1光ビームを出射し、前記目標物から出射される第2光ビームを受光することによって、前記目標物と相互に光通信する光学部と、
前記光学部を前記目標物に指向させるための追尾駆動部と、
前記目標物の画像を取得する画像取得部と、
前記第2光ビームの指向情報を取得する目標情報取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記取得された目標物の画像に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させるための目標角度を算出し、
前記目標角度および前記指向情報に基づいて、前記追尾駆動部を制御して、前記光学部を前記目標物に指向させる、
ことを特徴とする追尾制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記指向情報に基づいて前記目標角度を補正し、
前記補正された目標角度に基づいて、前記追尾駆動部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記算出された目標角度に基づいて、前記追尾駆動部を制御し、
前記制御部が前記追尾駆動部を制御することによって、前記光学部が前記目標物と通信可能となったときに、前記目標情報取得部は、前記目標物から前記指向情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の追尾制御装置。
【請求項4】
前記目標情報取得部は、前記目標物から前記指向情報および大気の擾乱情報を取得し、
前記制御部は、前記算出された目標角度、前記取得した指向情報、および前記擾乱情報に基づいて、前記追尾駆動部を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の追尾制御装置。
【請求項5】
前記追尾駆動部は、
前記目標物を粗追尾する粗追尾駆動部と、
前記目標物を精追尾する精追尾駆動部と、を有し、
前記制御部は、
前記粗追尾駆動部を制御する粗追尾制御部と、
前記精追尾駆動部を制御する精追尾制御部と、
前記粗追尾駆動部と前記精追尾制御部とを協調させて制御する協調制御部と、を有し、
前記協調制御部は、
前記目標角度を算出し、
前記粗追尾制御部と前記精追尾制御部とを制御することによって、前記追尾駆動部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の追尾制御装置。
【請求項6】
光学部を光通信の対象である目標物に指向させるための追尾制御方法であって、
前記光学部は、前記目標物に対して第1光ビームを出射し、前記目標物から出射される第2光ビームを受光することによって、前記目標物と相互に光通信を行い、
前記追尾制御方法は、
前記目標物の画像を取得すること、
前記第2光ビームの指向情報を取得すること、
前記取得された目標物の画像に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させるための目標角度を算出すること、および
前記目標角度および前記指向情報に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させること、
を含むことを特徴とする追尾制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾制御装置、および追尾制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
追尾装置を用いて、移動体等の目標物を追尾することがある。例えば、特許文献1は、目標物に関する画像情報から目標物の位置情報を取得し、遅延時間分の補正を行ないながら目標物の位置を予測推定することで、目標物を追尾する技術を開示する(要約および段落[0030]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-161630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、追尾装置と目標物との間で相互に光空間通信を行うことがある。この場合、追尾装置は、目標物に光通信用の光ビームを適切に照射し、かつ、目標物から出射される光通信用の光ビームを適切に受光するように、目標物を追尾することが好ましい。すなわち、追尾装置と目標物との間で光ビームを整合させることが好ましい。しかし、特許文献1には、追尾装置と目標物との間で相互の光ビームを整合させることは示されていない。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、相互に光空間通信を行う目標物との間で光ビームの整合を容易とする追尾制御装置および追尾制御方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る追尾制御装置は、光通信の対象である目標物に対して第1光ビームを出射し、前記目標物から出射される第2光ビームを受光することによって、前記目標物と相互に光通信する光学部と、前記光学部を前記目標物に指向させるための追尾駆動部と、前記目標物の画像を取得する画像取得部と、前記第2光ビームの指向情報を取得する目標情報取得部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記取得された目標物の画像に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させるための目標角度を算出し、前記目標角度および前記指向情報に基づいて、前記追尾駆動部を制御して、前記光学部を前記目標物に指向させる。
【0007】
本発明の一態様に係る追尾制御方法は、光学部を光通信の対象である目標物に指向させるための追尾制御方法であって、前記光学部は、前記目標物に対して第1光ビームを出射し、前記目標物から出射される第2光ビームを受光することによって、前記目標物と相互に光通信を行い、前記追尾制御方法は、前記目標物の画像を取得すること、前記第2光ビームの指向情報を取得すること、前記取得された目標物の画像に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させるための目標角度を算出すること、および前記目標角度および前記指向情報に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させること、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、相互に光空間通信を行う目標物との間で光ビームの整合を容容易とする追尾制御装置および追尾制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る追尾制御装置を表すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る追尾制御方法を表すフロー図である。
図3】本発明の実施形態2に係る追尾制御装置を表すブロック図である。
図4】相互に光通信を行う追尾制御装置と目標物の一例を表す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る追尾制御方法を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0011】
(追尾制御装置の構成)
本例示的実施形態に係る追尾制御装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、追尾制御装置1の構成を示すブロック図である。第1の例示的実施形態に係る追尾制御装置1は、光学部10、画像取得部20、追尾駆動部30、制御部40、目標情報取得部43bを有する。
【0012】
光学部10は、光通信の対象である目標物OBに対して第1光ビームLBaを出射し、目標物OBから出射される第2光ビームLBbを受光することによって、目標物OBと相互に光通信する。このため、光学部10は、目標物OBに第1光ビームLBaを出射するための発光部と、目標物OBから出射される第2光ビームLBbを受光するための受光部とを有する。
【0013】
画像取得部20は、例えば、カメラであり、目標物OBの画像を取得する。
【0014】
追尾駆動部30は、制御部40によって制御され、光学部10が目標物OBを指向するように光学部10を駆動する。追尾駆動部30は、光学部10の向き(結局、第1光ビームLBaの向き)を、例えば、2軸で制御する。
【0015】
目標情報取得部43bは、目標物OBから出射される光ビームLBbの指向情報を取得する。指向情報は、目標物OBから取得してもよいし、目標物OB以外から取得してもよい。指向情報は、例えば、光ビームLBbの向きを表す。ここでは、目標情報取得部43bは、制御部40の一部を構成するが、目標情報取得部43bは、制御部40とは別個に構成されてもよい。
【0016】
制御部40は、画像取得部20が取得した目標物OBの画像に基づいて、光学部10を目標物OBに指向させるための目標角度を算出し、目標角度および目標情報取得部43bが取得した指向情報(第2光ビームLBbの向き)に基づいて、追尾駆動部30を制御して、光学部10(結局は、第1光ビームLBa)を目標物OBに指向させる。第2光ビームLBbの指向情報を用いて、光学部10の指向を制御することにより、第2光ビームLBbに対して、第1光ビームLBaを整合させること、例えば、第1光ビームLBaと第2光ビームLBbの軸を合わせることが容易となる。
【0017】
制御部40は、少なくとも1つのプロセッサC1、および少なくとも1つのメモリC2から構成することができる。メモリC2には、プロセッサC1を制御部40として動作させるためのプログラムPが記録されている。プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、制御部40の各機能(目標情報取得部43bの機能を含む)を実現する。
【0018】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0019】
以上のように、本例示的実施形態に係る追尾制御装置1においては、目標角度および指向情報に基づいて、光学部10が目標物OBを指向するように追尾駆動部30が制御される。これにより、第2光ビームLBbに対して、第1光ビームLBaを整合させることが容易となる。
【0020】
(追尾制御方法の流れ)
本例示的実施形態に係る追尾制御方法の流れについて、図2を参照して説明する。図2は、追尾制御方法S1の流れを示すフロー図である。
【0021】
画像取得部20が目標物OBの画像を取得する(ステップS11)。制御部40は、画像取得部20が取得した目標物OBの画像に基づいて、光学部10を目標物OBに指向させるための目標角度を算出する(ステップS12)。
【0022】
目標情報取得部43bは、目標物OBから出射される光ビームLBbの指向情報を取得する(ステップS13)。制御部40は、目標角度および目標情報取得部43bが取得した指向情報に基づいて、光学部10から出射される光ビームLBaが目標物OBを指向するように追尾駆動部30を制御する。
【0023】
以上のように、本例示的実施形態に係る追尾制御方法S1においては、目標角度および指向情報に基づいて、光学部10から出射される光ビームLBaが目標物OBを指向するように制御される。これにより、第2光ビームLBbに対して、第1光ビームLBaを整合させることが容易となる。
【0024】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0025】
(追尾制御装置の構成)
図3は、第2の例示的実施形態に係る追尾制御装置1を表すブロック部である。第2の例示的実施形態に係る追尾制御装置1は、光学部10、画像取得部20、追尾駆動部30、制御部40を有する。このうち、光学部10および画像取得部20は、第1の例示的実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0026】
追尾駆動部30は、制御部40によって制御され、光学部10が目標物OBを指向するように光学部10を駆動する。本例示的実施形態において、追尾駆動部30は、粗追尾駆動部31、精追尾駆動部32を有する。
【0027】
制御部40は、追尾駆動部30を制御し、光学部10を目標物OBに指向させる。本例示的実施形態において、制御部40は、粗追尾制御部41、精追尾制御部42、協調制御部43を有する。
【0028】
なお、制御部40(粗追尾制御部41、精追尾制御部42、協調制御部43も含む)は、第1の例示的実施形態と同様、少なくとも1つのプロセッサC1、および少なくとも1つのメモリC2から構成することができる。
【0029】
粗追尾駆動部31は、目標物OBを粗追尾するように、光学部10を駆動する。より具体的には、粗追尾駆動部31は、ジンバル31a(例えば、大型ジンバル)、モータ31bを備え、AZ軸(アジマス軸)/EL軸(エレベーション軸)の2軸以上で、光学部10を駆動する。この結果、粗追尾駆動部31は、目標物OBに対して、光学部10から出射される第1光ビームLBaの向きを粗調節できる。
【0030】
精追尾駆動部32は、目標物OBを精追尾するように、光学部10を駆動する。より具体的には、精追尾駆動部32は、光学部10の本体に対して、第1光ビームLBaの向きをAZ軸(アジマス軸)/EL軸(エレベーション軸)の2軸以上で、高精度に駆動する。この結果、精追尾駆動部32は、目標物OBに対して、光学部10から出射される第1光ビームLBaの向きを微調節できる。精追尾駆動部32は、例えば、光学部10から出射される第1光ビームLBaを偏向して、目標物OBに出射する偏向器(一例として、光ビームを反射するミラーおよびミラーの向きを調節する調節器)を有する。
【0031】
粗追尾制御部41は、粗追尾駆動部31を制御する。より具体的には、粗追尾制御部41は、協調制御部43から出力される目標角度に基づいて、粗追尾駆動部31を制御して、光学部10(結局は、第1光ビームLBa)を目標物OBに指向させる。
【0032】
精追尾制御部42は、精追尾駆動部32を制御する。より具体的には、精追尾制御部42は、協調制御部43から出力される目標角度に基づいて、精追尾駆動部32を制御して、第1光ビームLBaを目標物OBに指向させる。
【0033】
協調制御部43は、粗追尾制御部41と精追尾制御部42とを協調させて制御するものであり、目標位置推定部43a、目標情報取得部43b、協調制御補償部43cを有する。
【0034】
目標位置推定部43a(協調制御部43)は、目標角度を算出する。より具体的には、目標位置推定部43aは、画像取得部20が取得した目標物OBの画像に基づき、目標物OBの位置を推定し、目標角度を決定して、協調制御補償部43cに出力する。以下、詳細に説明する。
【0035】
目標位置推定部43aは、画像取得部20が時系列で取得した目標物OBの画像を画像処理して、画像上での目標物OBの位置、さらには、追尾制御装置1に対する目標物OBの相対的な位置(相対位置)を時系列で特定する。
【0036】
次に、目標位置推定部43aは、目標物OBの時系列の相対位置に基づき、目標物OBの将来の位置を予測する。この予測には、目標物OBの運動を表す運動方程式E1および粗追尾駆動部31の駆動特性を示す運動方程式E2が用いられる。運動方程式E2を用いるのは、粗追尾駆動部31(特に、ジンバル)の動作遅延を考慮するためである。ジンバルは、ある程度の質量を有するため、慣性があり、速やかな方向変換は制限される。運動方程式E1、E2を用いることで、目標物OBの位置を正確に推定(予測)できる。
【0037】
その後、目標位置推定部43aは、予測された目標物OBの位置に基づき、目標物OBを指向する第1光ビームLBaの目標角度を算出(決定)し、協調制御補償部43cに出力する。
【0038】
目標情報取得部43bは、光学部10を介して、目標物OBから送信されてきた、目標物OBから出射される第2光ビームLBbの指向情報や大気擾乱情報等を取得する。
【0039】
指向情報は、第2光ビームLBbの指向方向に関する情報、例えば、第2光ビームLBbの軸LAbの方位である。目標物OBは、第2光ビームLBbの指向情報を保持し、追尾制御装置1に送信する。指向情報を用いて、目標物OBに対する第1光ビームLBaの指向の制御の高精度化を図ることができる。
【0040】
なお、追尾制御装置1は、第1光ビームLBaの指向情報を保持し、目標物OBに送信してもよい。目標物OB側において、第2光ビームLBbの指向の制御の高精度化を図ることができる。制御部40(例えば、協調制御補償部43c)は、粗追尾駆動部31、精追尾駆動部32から出力される角度を、第1光ビームLBaの指向情報として取得できる。
【0041】
大気擾乱情報は、追尾制御装置1と目標物OB間での光空間通信に対する大気の擾乱の影響を表す情報である。本明細書において、光空間通信に対する大気の擾乱の影響とは、光空間通信のための光ビームが屈折、散乱等されることを指し、大気擾乱情報は、大気の擾乱の状態を示す情報、または、光ビームが大気擾乱にて幾何的な目標値よりも屈折、散乱等する度合いを示す情報を指す。追尾制御装置1および目標物OBは、大気擾乱の状態を高速で撮影可能な画像カメラ等を用いて、または、光ビームが大気擾乱にて幾何的な目標値よりも屈折、散乱等する度合いを把握できるセンシング機器等を介して、大気擾乱情報を取得し、取得した大気擾乱情報を互いに送信してよい。これにより、追尾制御装置1から目標物OBに向かう方向の光路と、目標物OBから追尾制御装置1に向かう方向の光路の両方の大気擾乱情報を取得することができる。後述のように、大気擾乱情報を用いて、目標物OBに対する光ビームの指向の制御の高精度化を図ることができる。
【0042】
協調制御補償部43c(制御部40)は、補正された目標角度に基づいて、追尾駆動部30(粗追尾駆動部31、精追尾駆動部32)を制御する。すなわち、協調制御補償部43cは、目標情報取得部43bが取得した指向情報に基づいて、目標位置推定部43aが決定した目標角度を補正し、粗追尾制御部41、精追尾制御部42を介して、補正された目標角度に基づいて、追尾駆動部30(粗追尾駆動部31、精追尾駆動部32)を制御する。
【0043】
より具体的には、協調制御補償部43c(制御部40)は、目標情報取得部43bが取得した指向情報および大気擾乱情報に基づいて、目標位置推定部43aが決定した目標角度を補正し、粗追尾制御部41、精追尾制御部42を介して、補正された目標角度に基づいて、追尾駆動部30(粗追尾駆動部31、精追尾駆動部32)を制御する。
【0044】
この補正は、例えば、次の式(1)に基づく。
【0045】
θt1 = θt*w + θb*(1-w) …… 式(1)
θt:目標位置推定部43aが決定した目標角度
θt1:補正後の目標角度
θb:目標情報取得部43bが取得した指向情報(第2光ビームLBbの向き(角度))
w: 目標角度θt、角度θb間の重みを表す重み係数(0≦w≦1)
なお、重み係数wに替えて、時々刻々と変化する大気擾乱状態を考慮した、時間による関数で表現される重み関数wf(t)を用いてもよい。また、上述したように、追尾制御装置1から目標物OBに向かう方向の光路の大気擾乱情報と、目標物OBから追尾制御装置1に向かう方向の光路の大気擾乱情報の両方が取得されている場合、協調制御補償部43c(制御部40)は、重み係数wを決定する際に、追尾制御装置1から目標物OBに向かう方向の光路の大気擾乱情報と、目標物OBから追尾制御装置1に向かう方向の光路の大気擾乱情報と、のどちらを優先するかを決定し、優先すると決定した大気擾乱情報を用いて重み係数wを決定してもよい。これにより、相互の大気擾乱の影響を考慮してさらに指向方向の精度を高めることができる。
【0046】
図4は、相互に光通信を行う追尾制御装置1と目標物OBの一例を表す図である。ここでは、自装置である追尾制御装置1aと、他装置(目標物OB)である追尾制御装置1bとの間で光通信を行っている状態を表す。追尾制御装置1a、1bは、本例示的の実施形態に係る追尾制御装置1と同様の構成を有しているため詳細な説明を省略する。
【0047】
追尾制御装置1a、1bは、それぞれ、第1光ビームLBa、第2光ビームLBbを相手に向かって照射する。ここで、プロファイル51A~53Aは、第1光ビームLBa、第2光ビームLBbの軸LAa、LAbに沿う方向での第1光ビームLBa、第2光ビームLBbのプロファイルを表す。プロファイル51B~53Bはそれぞれ、プロファイル51A~53Aと対応し、第1光ビームLBa、第2光ビームLBbの軸LAa、LAbを横断する方向での第1光ビームLBa、第2光ビームLBbのプロファイルを表す。
【0048】
プロファイル51A、51Bは、追尾制御装置1aからの第1光ビームLBaの軸LAaと追尾制御装置1bからの第2光ビームLBbの軸LAbが一致し、追尾制御装置1a、1b間での通信が安定な状態を表す。
【0049】
プロファイル52A、52Bは、追尾制御装置1aからの第1光ビームLBaの軸LAaと追尾制御装置1bからの第2光ビームLBbの軸LAbが一致せず、光ビームLBa、LBbの広がりを考慮しても、追尾制御装置1a、1b間での通信が限界に近い状態(やや不安定)を表す。
【0050】
プロファイル53A、53Bは、追尾制御装置1aからの第1光ビームLBaの軸LAaと追尾制御装置1bからの第2光ビームLBbの軸LAbの角度は異なるが、大気擾乱の影響で、追尾制御装置1a、1b間での通信が安定な状態を表す。
【0051】
以上のように、第1光ビームLBa、第2光ビームLBbの軸LAa、LAbの角度(方位)のみならず、大気擾乱の影響を考慮することが必要となる。基本的には、軸LAa、LAbの角度(方位)のずれと通信の安定性の傾向が対応しない場合、目標角度θtを優先して、補正後の目標角度θt1を決定する(式(1)の重み係数wを1に近づける)ことが好ましい。逆に、軸LAa、LAbの角度(方位)のずれと通信の安定性の傾向が対応する場合、指向情報(第2光ビームLBbの向き:角度θb)を優先して、補正後の目標角度θt1を決定する(重み係数wを0に近づける)ことが好ましい。
【0052】
この重み係数wは、ニューラルネットワークを学習させた学習済みのモデルを用いて求めることができる。すなわち、第1光ビームLBaの向きをθaとして、過去におけるθaの値、θbの値、θtの値、wの値、および、大気擾乱情報を学習データとして用いて、θaまたはθbの値、θtの値、および、大気擾乱情報を入力として、wの値を出力する学習モデルを生成し、当該学習モデルを用いることにより、重み係数wを取得することができる。
【0053】
以上のように、本例示的実施形態に係る追尾制御装置1においては、指向情報(第2光ビームLBbの向き)に基づいて目標角度を補正している。このため、本例示的実施形態に係る追尾制御装置1によれば、第2光ビーム(LBb)に対して、第1光ビーム(LBa)を整合させることが容易となる。
【0054】
(追尾制御方法の流れ)
本例示的実施形態に係る追尾制御方法の流れについて、図5を参照して説明する。図5は、第2の例示的実施形態に係る追尾制御方法S2の流れを表すフロー部である。
【0055】
画像取得部20が目標物OBの画像を取得する(ステップS21)。目標位置推定部43aは、画像取得部20が取得した目標物OBの画像に基づき、目標角度を算出する(ステップS22)。
【0056】
協調制御補償部43cは、目標角度に基づき、粗追尾制御部41を制御して、光学部10を目標物OBに指向させる(追尾制御、ステップS23)。
【0057】
その後、光学部10を介して、追尾制御装置1と目標物OB間の相互通信が確立されたか否かが判断される(ステップS24)。相互通信が確立されていないと判断された場合(ステップS24での「No」)、相互通信が確立するまで、追尾制御(ステップS24)が繰り替えされる。
【0058】
相互通信が確立したら、目標物OBから追尾制御装置1に第2光ビームLBbの指向情報や大気擾乱情報等が送信される。この結果、目標情報取得部43bは、目標物OBと通信可能となったときに、目標物OBからの第2光ビームLBbの指向情報や大気擾乱情報等を取得する(ステップS25)。なお、追尾制御装置1は、相互通信が確立したときに、目標物OBに対して、第1光ビームLBaの指向情報や大気擾乱情報等を送信してもよい。
【0059】
すなわち、協調制御補償部43c(制御部40)が算出された目標角度θ1に基づき、粗追尾制御部41を介して、粗追尾駆動部31(追尾駆動部30)を制御し、光学部10が目標物OBと通信可能となる。このとき、目標情報取得部43bは、目標物OBから第2光ビームLBbの指向情報や大気擾乱情報等を取得する。
【0060】
協調制御補償部43cは、目標情報取得部43bからの指向情報および大気擾乱情報に基づいて、目標位置推定部43aからの目標角度を補正する(ステップS26)。この決定には、既述の式(1)を用いることができる。精追尾駆動部32は、補正後の目標角度θb1に基づいて、光ビームの指向制御を行う(ステップS27)。
【0061】
以上のように、本例示的実施形態に係る追尾制御方法S2においては、指向情報(第2光ビームLBbの向き)に基づいて目標角度を補正している。このため、本例示的実施形態に係る追尾制御方法S2によれば、第2光ビーム(LBb)に対して、第1光ビーム(LBa)を整合させることが容易となる。
【0062】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、目標物OBは、移動体に限られない。目標物OBは、光ビームLBbを出射して、追尾制御装置と相互に光通信を行い、追尾制御装置はこの光ビームLBbの指向情報を何らかの手法で取得可能であればよい。
【0063】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0064】
(付記1)
光通信の対象である目標物(OB)に対して第1光ビーム(LBa)を出射し、前記目標物から出射される第2光ビーム(LBb)を受光することによって、前記目標物と相互に光通信する光学部(10)と、前記光学部を前記目標物に指向させるための追尾駆動部(30)と、前記目標物の画像を取得する画像取得部(20)と、前記第2光ビームの指向情報を取得する目標情報取得部(43b)と、制御部(40)と、を備え、前記制御部は、前記取得された目標物の画像に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させるための目標角度を算出し、前記目標角度および前記指向情報に基づいて、前記追尾駆動部を制御して、前記光学部を前記目標物に指向させる、ことを特徴とする追尾制御装置(1)。
【0065】
上記の構成によれば、目標角度および指向情報に基づいて、第2光ビーム(LBb)に対して、第1光ビーム(LBa)を整合させることが容易となる。
【0066】
(付記2)
前記制御部は、前記指向情報に基づいて前記目標角度を補正し、前記補正された目標角度に基づいて、前記追尾駆動部を制御する、ことを特徴とする付記1に記載の追尾制御装置。
【0067】
上記の構成によれば、補正された目標角度に基づいて、第2光ビームに対して、第1光ビームを整合させることが容易となる。
【0068】
(付記3)
前記制御部は、前記算出された目標角度に基づいて、前記追尾駆動部を制御し、前記制御部が前記追尾駆動部を制御することによって、前記光学部が前記目標物と通信可能となったときに、前記目標情報取得部は、前記目標物から前記指向情報を取得する、ことを特徴とする付記1又は2に記載の追尾制御装置。
【0069】
上記の構成によれば、目標物から取得した指向情報に基づいて、第2光ビームに対して、第1光ビームを整合させることが容易となる。
【0070】
(付記4)
前記目標情報取得部は、前記目標物から前記指向情報および大気の擾乱情報を取得し、
前記制御部は、前記算出された目標角度、前記取得した指向情報、および前記擾乱情報に基づいて、前記追尾駆動部を制御する、ことを特徴とする付記3に記載の追尾制御装置。
【0071】
上記の構成によれば、目標物から取得した指向情報、および擾乱情報に基づいて、第2光ビームに対して、第1光ビームを整合させることが容易となる。
【0072】
(付記5)
前記追尾駆動部は、前記目標物を粗追尾する粗追尾駆動部と、前記目標物を精追尾する精追尾駆動部と、を有し、前記制御部は、前記粗追尾駆動部を制御する粗追尾制御部と、前記精追尾駆動部を制御する精追尾制御部と、前記粗追尾駆動部と前記精追尾制御部とを協調させて制御する協調制御部と、を有し、前記協調制御部は、前記目標角度を算出し、前記粗追尾制御部と前記精追尾制御部とを制御することによって、前記追尾駆動部を制御する、ことを特徴とする付記1に記載の追尾制御装置。
【0073】
上記の構成によれば、目標物から取得した指向情報、および擾乱情報に基づいて、第2光ビームに対して、第1光ビームを整合させることが容易となる。
【0074】
(付記6)
光学部を光通信の対象である目標物に指向させるための追尾制御方法であって、前記光学部は、前記目標物に対して第1光ビームを出射し、前記目標物から出射される第2光ビームを受光することによって、前記目標物と相互に光通信を行い、前記追尾制御方法は、前記目標物の画像を取得すること、前記第2光ビームの指向情報を取得すること、前記取得された目標物の画像に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させるための目標角度を算出すること、および前記目標角度および前記指向情報に基づいて、前記光学部を前記目標物に指向させること、を含むことを特徴とする追尾制御方法。
【0075】
上記の構成によれば、目標角度および指向情報に基づいて、第2光ビームに対して、第1光ビームを整合させることが容易となる。
【符号の説明】
【0076】
1、1a、1b 追尾制御装置
10 光学部
20 画像取得部
30 追尾駆動部
31 粗追尾駆動部
31a ジンバル
31b モータ
32 精追尾駆動部
40 制御部
41 粗追尾制御部
42 精追尾制御部
43 協調制御部
43c 協調制御補償部
43a 目標位置推定部
43b 目標情報取得部
43c 協調制御補償部
LB、LBa、LBb 光ビーム
図1
図2
図3
図4
図5