(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057939
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】車両の音出力装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B60Q5/00 670Z
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 680D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164942
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大豊 公志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢己
(72)【発明者】
【氏名】田中 義治
(57)【要約】
【課題】車外に伝播する音波の音圧を高めることができる。
【解決手段】車両の音出力装置10は、車両の外殻部分の一部を構成する外装部材20と、外装部材20の内方に位置し、外装部材20を加振する加振器30と、加振器30を外装部材20に向けて常時押圧する押圧部材60とを備える。音出力装置10は、加振器30により外装部材20が加振されることに伴い発生する音波が車外に伝播するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、
前記外装部材の内方に位置し、前記外装部材を加振する加振器と、
前記加振器を前記外装部材に向けて常時押圧する押圧部材と、を備え、
前記加振器により前記外装部材が加振されることに伴い発生する音波が車外に伝播するように構成されている、
車両の音出力装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記加振器を内方から覆うベース部と、前記ベース部から前記加振器に向かって突出する突部と、を有し、前記ベース部が前記外装部材に対して取り付けられることで、前記突部が前記加振器を常時押圧するように構成されている、
請求項1に記載の車両の音出力装置。
【請求項3】
前記外装部材の内面と前記加振器の外面との間に設けられ、前記内面及び前記外面の双方に接触する介在部と、を備える、
請求項1または請求項2に記載の車両の音出力装置。
【請求項4】
前記内面は、湾曲した凹面状であり、
前記外面は、平面状であり、
前記介在部は、前記内面に沿って湾曲し、前記内面に接触する凸面状の第1面と、前記外面に沿うとともに前記外面に接触する平面状の第2面と、を有する、
請求項3に記載の車両の音出力装置。
【請求項5】
前記介在部は、硬質樹脂材料により形成されている、
請求項3に記載の車両の音出力装置。
【請求項6】
前記介在部は、前記内面と前記外面との双方に固着されている、
請求項3に記載の車両の音出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の音出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の接近通報装置が開示されている。
この装置は、車両の下方へ向けて音波を放射可能なスピーカと、スピーカの下方に配置され、スピーカから下方へ向けて放射された音波を車外へ向けて反射させるアンダーカバーとを備える。
【0003】
近年、車両の電動化や空気抵抗の低減などの要請の高まりに伴い、フロントグリルなどの外装部材の開口部が縮小あるいは省略される傾向にある。
特許文献1に記載の装置によれば、外装部材の開口部が縮小あるいは省略された場合であっても、スピーカから下方へ向けて放射された音波を、アンダーカバーによって車外に向けて反射させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の装置の場合、スピーカから発せられる音波が空気伝播してアンダーカバーに到達するまでに音波のエネルギ損失が生じる。また、音波がアンダーカバーで反射される際にも音波のエネルギ損失が生じる。そのため、音波を効率よく車外に伝播することが望まれている。
【0006】
なお、こうした問題は、車両の前部を構成する外装部材及び同外装部材の後方に設けられる加振器に限定されるものではなく、車両の後部を構成する外装部材及び同外装部材の前方に設けられる加振器などにおいても同様にして生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための車両の音出力装置の各態様を記載する。
[態様1]
車両の外殻部分の一部を構成する外装部材と、前記外装部材の内方に位置し、前記外装部材を加振する加振器と、前記加振器を前記外装部材に向けて常時押圧する押圧部材と、を備え、前記加振器により前記外装部材が加振されることに伴い発生する音波が車外に伝播するように構成されている、車両の音出力装置。
【0008】
同構成によれば、押圧部材によって加振器が外装部材に向けて常時押圧されているので、加振器の振動に伴って加振器と外装部材との間に一時的に隙間が生じることがなくなる。したがって、加振器の振動が外装部材に対してより効率的に伝わるようになる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を高めることができる。
【0009】
[態様2]
前記押圧部材は、前記加振器を内方から覆うベース部と、前記ベース部から前記加振器に向かって突出する突部と、を有し、前記ベース部が前記外装部材に対して取り付けられることで、前記突部が前記加振器を常時押圧するように構成されている、態様1に記載の車両の音出力装置。
【0010】
同構成によれば、外装部材に対してベース部を取り付けることで、突部が加振器を常時押圧するようになる。これにより、簡単な構成により押圧部材を具現化することができる。
【0011】
[態様3]
前記外装部材の内面と前記加振器の外面との間に設けられ、前記内面及び前記外面の双方に接触する介在部と、を備える、態様1または態様2に記載の車両の音出力装置。
【0012】
外装部材の外面は意匠面を構成することから、外装部材の外面には平面状の部分が少ない。また一般に、外装部材は、樹脂材料により構成されている。そのため、樹脂成形時の成形不良、所謂ひけが生じないように、外装部材の板厚は略均一とされている。これらのことから、外装部材の内面には、平面状の部分が少ない。
【0013】
一方、一般の加振器の端面は略平面状である。そのため、外装部材の内面に加振器の外面を当接して配置すると、加振器と外装部材とが点接触または線接触となる。その結果、加振器の振動が外装部材に対して効率的に伝わらないために、車外に伝播する音波の音圧を高めることが難しいという問題がある。
【0014】
上記構成によれば、外装部材の内面の形状に起因して同内面と加振器の外面との間に隙間が生じる場合であっても、上記隙間が介在部によって埋められる。このため、加振器の振動が介在部を介することで外装部材に対して伝わりやすくなる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を一層高めることができる。
【0015】
[態様4]
前記内面は、湾曲した凹面状であり、前記外面は、平面状であり、前記介在部は、前記内面に沿って湾曲し、前記内面に接触する凸面状の第1面と、前記外面に沿うとともに前記外面に接触する平面状の第2面と、を有する、態様3に記載の車両の音出力装置。
【0016】
同構成によれば、介在部の第1面及び第2面が外装部材の内面及び加振器の外面にそれぞれ沿っているので、上記隙間のより広い範囲が介在部によって埋められるようになる。このため、加振器の振動が介在部を介することで外装部材に対してより効率的に伝わるようになる。したがって、車外に伝播する音波の音圧をより一層高めることができる。
【0017】
[態様5]
前記介在部は、硬質樹脂材料により形成されている、態様3または態様4に記載の車両の音出力装置。
【0018】
同構成によれば、介在部が硬質樹脂材料により形成されているので、加振器の振動が介在部を伝播する際に減衰されにくくなる。これにより、上記振動が外装部材に対してより効率的に伝わるようになる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を一層高めることができる。
【0019】
また、上記構成によれば、介在部が硬質樹脂材料により形成されているので、例えば外装部材の内面と加振器の外面との間の隙間に樹脂を注入するとともに硬化させることで上記隙間を容易に埋めることができる。
【0020】
[態様6]
前記介在部は、前記内面と前記外面との双方に固着されている、態様3から態様5のいずれか一項に記載の車両の音出力装置。
【0021】
同構成によれば、介在部が外装部材の内面と加振器の外面との双方に固着されているので、加振器の振動が、加振器から介在部に対して伝わりやすくなるとともに、介在部から外装部材に対して伝わりやすくなる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車外に伝播する音波の音圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、車両の音出力装置の第1実施形態における車両の正面図である。
【
図3】第2実施形態の車両の音出力装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態について説明する。
なお、以降において、車両の前後方向を単に前後方向Lとし、前後方向Lの前方及び後方をそれぞれ単に前方及び後方として説明する。また、車両の幅方向を単に車幅方向Wとし、車両の上下方向を単に上下方向Zとして説明する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、車両の前部には、音出力装置10が設けられている。音出力装置10は、外装部材20と、加振器30と、押圧部材60とを備えている。
<外装部材20及び加振器30>
図1に示すように、外装部材20は、車両の外殻部分の一部を構成する。外装部材20は、例えばフロントグリルである。
【0026】
図2に示すように、外装部材20は、車両の前面の意匠面を構成する外面21と、外面21とは反対側、すなわち後側の面である内面22とを有している。
外装部材20は、例えば硬質樹脂材料により形成されている。
【0027】
加振器30は、外装部材20の内方、すなわち後方に位置し、外装部材20を加振する。
加振器30は、平面状の外面31、すなわち前面を有している。
【0028】
加振器30には、加振器30の作動を制御する制御部50が電気的に接続されている。
外装部材20の内面22には、加振器30の外面31が接触している。内面22のうち加振器30に対向する部分は、平面状であることが好ましい。
【0029】
外装部材20の内面22における加振器30の外周側の部分には、複数の取付座23が後方に向かって突出して設けられている。取付座23には、内方、すなわち後方に向かって開口する係止孔24が設けられている。
【0030】
<押圧部材60>
押圧部材60は、ベース部61と、突部62と、係止部63と、支持部64とを有している。
【0031】
ベース部61は、板状であり、加振器30を内方、すなわち後方から覆っている。ベース部61には、複数の係止部63が設けられている。係止部63は、ベース部61から外方、すなわち前方に突出するとともに、係止孔24に係止されている。
【0032】
突部62は、ベース部61から加振器30に向かって突出している。突部62は、湾曲した凸面状であることが好ましい。
支持部64は、ベース部61から外装部材20に向かって突出するとともに、加振器30の外周面を支持している。
【0033】
押圧部材60は、例えば硬質樹脂材料により一体に形成されている。
ベース部61が外装部材20に対して取り付けられることで、突部62が加振器30を常時押圧するように構成されている。
【0034】
こうした音出力装置10においては、加振器30により外装部材20が加振されることに伴い発生する音波が車外に伝播するように構成されている。
音波は、自車両に接近した人に対し、自車両が接近していることを通報するために発せられる接近通報音などである。
【0035】
音波は、例えば20Hz~20000Hzの範囲内の所定の周波数である。なお、上記所定の周波数には、基本周波数に加えて、基本周波数の2以上の整数倍の周波数が含まれていてもよい。
【0036】
接近通報音の基本周波数は、20Hz~5000Hzの範囲内であることが好ましい。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)押圧部材60によって加振器30が外装部材20に向けて常時押圧されているので、加振器30の振動に伴って加振器30と外装部材20との間に一時的に隙間が生じることがなくなる。これにより、加振器30の振動が外装部材20に対してより効率的に伝わるようになる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を高めることができる。
【0037】
(2)外装部材20に対してベース部61を取り付けることで、突部62が加振器30を常時押圧するようになる。これにより、簡単な構成により押圧部材60を具現化することができる。
【0038】
<第2実施形態>
以下、
図3を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態の音出力装置10は、介在部40を備えている点が第1実施形態と相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
なお、以降においては、第2実施形態の構成のうち第1実施形態の構成と同一または対応する構成については同一の符号を付すことにより重複する説明を省略することがある。
図3に示すように、本実施形態の音出力装置10は、外装部材20と、加振器30と、介在部40と、押圧部材60とを備えている。
【0040】
<外装部材20>
外装部材20の外面21は、湾曲した凸面状である。内面22は、外面21に沿って湾曲した凹面状である。
【0041】
<介在部40>
介在部40は、外装部材20の内面22と加振器30の外面31との間に設けられ、内面22及び外面31の双方に接触している。
【0042】
介在部40は、内面22に沿って湾曲し、内面22に接触する凸面状の第1面41と、外面31に沿うとともに外面31に接触する平面状の第2面42とを有している。
介在部40は、硬質材料により形成されていることが好ましい。また、介在部40は、樹脂材料により形成されていることが好ましい。また、介在部40は、内面22と外面31との双方に固着されていることが好ましい。
【0043】
本実施形態の介在部40は、硬質樹脂材料である熱硬化製樹脂材料により形成されている。熱硬化製樹脂材料は、例えばアクリル樹脂である。
本実施形態の介在部40は以下のようにして形成される。
【0044】
外装部材20の内面22に対して外面31が対向するように加振器30を配置した状態で、内面22と外面31との間の隙間にアクリル樹脂系の接着剤を注入するとともに加熱する。これにより、接着剤が硬化されることで本実施形態の介在部40が形成される。
【0045】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(3)外装部材20の内面22の形状に起因して同内面22と加振器30の外面31との間に生じる隙間が、介在部40によって埋められる。このため、加振器30の振動が介在部40を介することで外装部材20に対して伝わりやすくなる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を高めることができる。
【0046】
(4)外装部材20の内面22は、湾曲した凹面状であり、加振器30の外面31は、平面状である。介在部40は、内面22に沿って湾曲し、内面22に接触する凸面状の第1面41と、外面31に沿うとともに外面31に接触する平面状の第2面42とを有する。
【0047】
こうした構成によれば、介在部40の第1面41及び第2面42が外装部材20の内面22及び加振器30の外面31にそれぞれ沿っているので、上記隙間のより広い範囲が介在部40によって埋められるようになる。このため、加振器30の振動が介在部40を介することで外装部材20に対してより効率的に伝わるようになる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を一層高めることができる。
【0048】
(5)介在部40が硬質樹脂材料により形成されているので、加振器30の振動が介在部40を伝播する際に減衰されにくくなる。これにより、上記振動が外装部材20に対してより効率的に伝わるようになる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を一層高めることができる。また、介在部40が樹脂材料により形成されているので、例えば外装部材20の内面22と加振器30の外面31との間の隙間に樹脂を注入するとともに硬化させることで上記隙間を容易に埋めることができる。
【0049】
(6)介在部40が外装部材20の内面22と加振器30の外面31との双方に固着されているので、加振器30の振動が、加振器30から介在部40に対して伝わりやすくなるとともに、介在部40から外装部材20に対して伝わりやすくなる。したがって、車外に伝播する音波の音圧を一層高めることができる。
【0050】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・介在部40を熱可塑性樹脂により形成することもできる。
・
図4に示すように、成形型によって成形された介在部40を、外装部材20の内面22と加振器30の外面31とにそれぞれ両面テープ71,72を介して接着するようにしてもよい。この場合であっても、介在部40の第1面41は、外装部材20の内面22の形状に沿う形状であることが好ましい。また、介在部40の第2面42は、加振器30の外面31の形状に沿う形状であることが好ましい。なお、
図4においては、押圧部材60及び取付座23の図示を省略している。
【0052】
・介在部40が外装部材20の内面22及び加振器30の外面31の少なくとも一方に対して固着されていなくてもよい。
・介在部40を金属材料など硬質樹脂材料以外の材料により形成することもできる。
【0053】
・介在部40は、硬質樹脂材料により形成されていることが好ましいが、例えば軟質樹脂材料などにより形成することもできる。
・第2実施形態の外装部材20の内面22の形状は湾曲した凹面状に限定されず、任意の形状に変更することができる。また、加振器30の外面31は平面状に限定されず、任意の形状に変更することができる。
【0054】
・外装部材20は、フロントグリルに限定されない。例えば、フロントバンパカバー、フォグランプカバー、ボンネットフード、あるいはカウルルーバーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。また、フェンダー、フェンダーアーチ、ロッカーモール、ルーフサイドモール、あるいはピラーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。また、リヤガーニッシュ、リヤスポイラー、リヤバンパカバーとして本開示の外装部材を具体化することもできる。
【符号の説明】
【0055】
10…音出力装置
20…外装部材
21…外面
22…内面
23…取付座
24…係止孔
30…加振器
31…外面
40…介在部
41…第1面
42…第2面
50…制御部
60…押圧部材
61…ベース部
62…突部
63…係止部
64…支持部
71,72…両面テープ