(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057942
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240418BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240418BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240418BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240418BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240418BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 658F
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/50 M
H01L29/44 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164946
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】福島 武
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB05
4M104BB21
4M104BB38
4M104CC01
4M104DD26
4M104DD37
4M104DD65
4M104DD79
4M104DD83
4M104DD84
4M104DD88
4M104FF02
4M104FF06
4M104FF17
4M104FF18
4M104GG09
4M104GG18
4M104HH15
(57)【要約】
【課題】p型半導体領域及びn型半導体領域と合金層とのコンタクト抵抗を低減できる炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板と、前記第1主面の上に設けられ、ニッケルと珪素とアルミニウムとを含む合金層と、前記合金層の上に設けられるバリア層と、前記バリア層の上に設けられ、アルミニウムを含む電極と、を備え、前記合金層は、前記p型半導体領域の上に設けられる第1合金領域と、前記n型半導体領域の上に設けられる第2合金領域とを有し、前記第1合金領域のアルミニウムの濃度は、前記第2合金領域のアルミニウムの濃度よりも高く、前記バリア層は、前記第1合金領域の上に設けられる第1バリア領域と、前記第2合金領域の上に設けられる第2バリア領域とを有し、前記第1バリア領域の厚さは、前記第2バリア領域の厚さよりも薄い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板と、
前記第1主面の上に設けられ、ニッケルと珪素とアルミニウムとを含む合金層と、
前記合金層の上に設けられるバリア層と、
前記バリア層の上に設けられ、アルミニウムを含む電極と、
を備え、
前記合金層は、前記p型半導体領域の上に設けられる第1合金領域と、前記n型半導体領域の上に設けられる第2合金領域とを有し、
前記第1合金領域のアルミニウムの濃度は、前記第2合金領域のアルミニウムの濃度よりも高く、
前記バリア層は、前記第1合金領域の上に設けられる第1バリア領域と、前記第2合金領域の上に設けられる第2バリア領域とを有し、
前記第1バリア領域の厚さは、前記第2バリア領域の厚さよりも薄い、
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板と、
前記第1主面の上に設けられる合金層と、
前記合金層の上に設けられるバリア層と、
前記バリア層の上に設けられ、アルミニウムを含む電極と、
を備え、
前記合金層は、
前記p型半導体領域の上に設けられ、ニッケルと珪素とアルミニウムとを含む第1合金領域と、
前記n型半導体領域の上に設けられ、ニッケルと珪素とを含みかつアルミニウムを含まない第2合金領域と、
を有し、
前記バリア層は、前記第1合金領域の上に設けられる第1バリア領域と、前記第2合金領域の上に設けられる第2バリア領域とを有し、
前記第1バリア領域の厚さは、前記第2バリア領域の厚さよりも薄い、
炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1バリア領域及び前記第2バリア領域は、チタン膜と窒化チタン膜との積層構造を有し、
前記第1バリア領域内の窒化チタン膜の厚さは、前記第2バリア領域内の窒化チタン膜の厚さよりも薄い、
請求項1又は請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板を準備する工程と、
前記p型半導体領域及び前記n型半導体領域の上にニッケルと珪素とを含む合金層を形成する工程と、
前記合金層の上にバリア層を形成する工程と、
前記p型半導体領域の上に形成された前記バリア層の少なくとも一部をエッチングする工程と、
前記エッチングする工程の後、前記バリア層の上にアルミニウムを含む電極を形成することにより、少なくとも前記p型半導体領域の上に形成された前記合金層にアルミニウムを拡散させる工程と、
を有する、
炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記バリア層は、チタン膜と窒化チタン膜との積層構造を有し、
前記エッチングする工程において、前記チタン膜をエッチングすることなく、前記窒化チタン膜をエッチングする、
請求項4に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記拡散させる工程は、
前記バリア層の上にアルミニウム膜を成膜する工程と、
前記成膜する工程の後に前記アルミニウム膜を熱処理する工程と、
を有する、
請求項4又は請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記拡散させる工程は、
前記バリア層の上にアルミニウム膜を成膜する工程と、
前記成膜する工程の途中で前記アルミニウム膜を冷却する工程と、
を有する、
請求項4又は請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の一つとして、p型半導体領域及びn型半導体領域とオーミック接合するNiSi膜が設けられたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のNiSi膜が設けられた炭化珪素半導体装置では、p型半導体領域とNiSi膜とのコンタクト抵抗を低減することが求められる。
【0005】
本開示は、p型半導体領域及びn型半導体領域と合金層とのコンタクト抵抗を低減できる炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置は、p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板と、前記第1主面の上に設けられ、ニッケルと珪素とアルミニウムとを含む合金層と、前記合金層の上に設けられるバリア層と、前記バリア層の上に設けられ、アルミニウムを含む電極と、を備え、前記合金層は、前記p型半導体領域の上に設けられる第1合金領域と、前記n型半導体領域の上に設けられる第2合金領域とを有し、前記第1合金領域のアルミニウムの濃度は、前記第2合金領域のアルミニウムの濃度よりも高く、前記バリア層は、前記第1合金領域の上に設けられる第1バリア領域と、前記第2合金領域の上に設けられる第2バリア領域とを有し、前記第1バリア領域の厚さは、前記第2バリア領域の厚さよりも薄い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、p型半導体領域及びn型半導体領域と合金層とのコンタクト抵抗を低減できる炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置を示す平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板と、前記第1主面の上に設けられ、ニッケルと珪素とアルミニウムとを含む合金層と、前記合金層の上に設けられるバリア層と、前記バリア層の上に設けられ、アルミニウムを含む電極と、を備え、前記合金層は、前記p型半導体領域の上に設けられる第1合金領域と、前記n型半導体領域の上に設けられる第2合金領域とを有し、前記第1合金領域のアルミニウムの濃度は、前記第2合金領域のアルミニウムの濃度よりも高く、前記バリア層は、前記第1合金領域の上に設けられる第1バリア領域と、前記第2合金領域の上に設けられる第2バリア領域とを有し、前記第1バリア領域の厚さは、前記第2バリア領域の厚さよりも薄い。この場合、アルミニウム濃度が高い第1合金領域がp型半導体領域とオーミック接合し、アルミニウム濃度が低い第2合金領域がn型半導体領域とオーミック接合する。このため、p型半導体領域及びn型半導体領域と合金層とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0012】
〔2〕 本開示の他の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板と、前記第1主面の上に設けられる合金層と、前記合金層の上に設けられるバリア層と、前記バリア層の上に設けられ、アルミニウムを含む電極と、を備え、前記合金層は、前記p型半導体領域の上に設けられ、ニッケルと珪素とアルミニウムとを含む第1合金領域と、前記n型半導体領域の上に設けられ、ニッケルと珪素とを含みかつアルミニウムを含まない第2合金領域と、を有し、前記バリア層は、前記第1合金領域の上に設けられる第1バリア領域と、前記第2合金領域の上に設けられる第2バリア領域とを有し、前記第1バリア領域の厚さは、前記第2バリア領域の厚さよりも薄い。この場合、アルミニウムを含む第1合金領域がp型半導体領域とオーミック接合し、アルミニウムを含まない第2合金領域がn型半導体領域とオーミック接合する。このため、p型半導体領域及びn型半導体領域と合金層とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0013】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記第1バリア領域及び前記第2バリア領域は、チタン膜と窒化チタン膜との積層構造を有し、前記第1バリア領域内の窒化チタン膜の厚さは、前記第2バリア領域内の窒化チタン膜の厚さよりも薄くてもよい。この場合、p型半導体領域上の合金層にアルミニウムを拡散させつつ、n型半導体領域上の合金層へのアルミニウムの拡散を抑制しやすい。
【0014】
〔4〕 本開示の他の一態様に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、p型半導体領域とn型半導体領域とが露出する第1主面を有する炭化珪素基板を準備する工程と、前記p型半導体領域及び前記n型半導体領域の上にニッケルと珪素とを含む合金層を形成する工程と、前記合金層の上にバリア層を形成する工程と、前記p型半導体領域の上に形成された前記バリア層の少なくとも一部をエッチングする工程と、前記エッチングする工程の後、前記バリア層の上にアルミニウムを含む電極を形成することにより、少なくとも前記p型半導体領域の上に形成された前記合金層にアルミニウムを拡散させる工程と、を有する。この場合、アルミニウム濃度が高い合金領域がp型半導体領域とオーミック接合し、アルミニウム濃度が低い又はアルミニウムを含まない合金領域がn型半導体領域とオーミック接合する炭化珪素半導体装置を製造できる。このため、p型半導体領域及びn型半導体領域と合金層とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0015】
〔5〕 〔4〕において、前記バリア層は、チタン膜と窒化チタン膜との積層構造を有し、前記エッチングする工程において、前記チタン膜をエッチングすることなく、前記窒化チタン膜をエッチングしてもよい。この場合、p型半導体領域上の合金層にアルミニウムを拡散させつつ、n型半導体領域上の合金層へのアルミニウムの拡散を抑制しやすい。
【0016】
〔6〕 〔4〕又は〔5〕において、前記拡散させる工程は、前記バリア層の上にアルミニウム膜を成膜する工程と、前記成膜する工程の後に前記アルミニウム膜を熱処理する工程と、を有してもよい。この場合、バリア層及び合金層へのアルミニウムの拡散が促進される。
【0017】
〔7〕 〔4〕又は〔5〕において、前記拡散させる工程は、前記バリア層の上にアルミニウム膜を成膜する工程と、前記成膜する工程の途中で前記アルミニウム膜を冷却する工程と、を有してもよい。この場合、バリア層の厚さが薄い部分にクラックが生じ、バリア層がアルミニウムを拡散しやすくなる。このため、p型半導体領域上の合金層へのアルミニウムの拡散が促進される。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(炭化珪素半導体装置)
図1から
図5を参照し、実施形態に係る炭化珪素半導体装置について説明する。
図1は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す平面図である。
図2から
図5は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
図3は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図5は、
図4の一部を拡大して示す図である。
【0020】
図1から
図5に示されるように、実施形態に係る炭化珪素半導体装置は、いわゆるトレンチ型のMOSFET100である。MOSFET100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60と、ドレイン電極70とを主に有する。
【0021】
炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50及び炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成される。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)などのn型不純物を含み、n型を有する。
【0022】
実施形態では、炭化珪素基板10に半導体素子の一例として電界効果トランジスタが形成されている。炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0023】
ドリフト領域11は、例えば窒素又はリン(P)などのn型不純物を含み、n型を有する。
【0024】
ボディ領域12は、ドリフト領域11上に設けられる。ボディ領域12は、例えばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型を有する。
【0025】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられる。ソース領域13は、例えば窒素又はリンなどのn型不純物を含み、n型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成する。ソース領域13は、n型半導体領域の一例である。
【0026】
コンタクト領域18は、例えばアルミニウムなどのp型不純物を含み、p型を有する。コンタクト領域18は、第1主面1を構成する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は、p型半導体領域の一例である。
【0027】
第1主面1には、複数のゲートトレンチ5が設けられる。ゲートトレンチ5は、例えば第1主面1に平行な第1方向に延びており、複数のゲートトレンチ5が第2方向に並んでいる。ゲートトレンチ5は、ドリフト領域11からなる底面4を有する。底面4は、例えば第2主面2と平行な平面である。ゲートトレンチ5は、コンタクト領域18、ソース領域13及びボディ領域12を貫通して底面4に連なる側面3を有する。側面3は、例えば底面4を含む平面に対して垂直である。
【0028】
ゲート絶縁膜81は、側面3及び底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成される。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてコンタクト領域18、ソース領域13、ボディ領域12及びドリフト領域11の各々と接する。
【0029】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に設けられる。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコンから構成される。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置される。
【0030】
層間絶縁膜83は、ゲート絶縁膜81及びゲート電極82に接する。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成される。層間絶縁膜83には、第2方向に一定の間隔でコンタクトホール90が形成される。コンタクトホール90は、第2方向において隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように設けられる。コンタクトホール90は、第1方向に延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13及びコンタクト領域18が層間絶縁膜83から露出する。
【0031】
ソース電極60は、第1主面1に接する。ソース電極60は、層間絶縁膜83によりゲート電極82から電気的に絶縁される。ソース電極60は、合金層61と、金属層62と、バリア層63と、ソース配線64とを有する。
【0032】
合金層61は、コンタクトホール90内に設けられる。合金層61は、第1主面1の上に設けられる。合金層61は、第1主面1において、ソース領域13及びコンタクト領域18と接する。合金層61は、コンタクトホール90を通じて炭化珪素基板10に接続される。合金層61は、第1合金領域61aと、第2合金領域61bとを有する。
【0033】
第1合金領域61aは、コンタクト領域18と接する。第1合金領域61aは、コンタクト領域18とオーミック接合する。第1合金領域61aは、例えばニッケル(Ni)と珪素(Si)とアルミニウムとを含む材料から構成される。第1合金領域61aは、例えばNiSiAl合金により形成される。
【0034】
第2合金領域61bは、ソース領域13と接する。第2合金領域61bは、ソース領域13とオーミック接合する。第2合金領域61bは、例えばニッケルと珪素とアルミニウムとを含む材料から構成される。第2合金領域61bは、例えばNiSiAl合金により形成される。第2合金領域61bは、ニッケルと珪素とを含み、アルミニウムを含まない材料から構成されてもよい。第2合金領域61bは、例えばNiSi合金により形成されてもよい。
【0035】
第1合金領域61aのアルミニウムの濃度は、第2合金領域61bのアルミニウムの濃度よりも高い。この場合、アルミニウム濃度が高い第1合金領域61aがコンタクト領域18とオーミック接合し、アルミニウム濃度が低い第2合金領域61bがソース領域13とオーミック接合する。このため、コンタクト領域18及びソース領域13と合金層61とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0036】
金属層62は、層間絶縁膜83の上面及び側面を覆う。金属層62は、例えばNi膜により形成される。
【0037】
バリア層63は、合金層61及び金属層62の上に設けられる。バリア層63は、合金層61及び金属層62を覆う。バリア層63は、合金層61及び金属層62と接する。バリア層63は、第1バリア領域63aと、第2バリア領域63bと、第3バリア領域63cとを有する。
【0038】
第1バリア領域63aは、第1合金領域61aの上に設けられる。第1バリア領域63aは、第1合金領域61aと接する。第1バリア領域63aは、例えば
図5に示されるように、チタン膜63dと窒化チタン膜63eとの積層構造を有する。第1バリア領域63aは、窒化チタン膜63eを含まず、チタン膜63dのみから構成されてもよい。
【0039】
第2バリア領域63bは、第2合金領域61bの上に設けられる。第2バリア領域63bは、第2合金領域61bと接する。第2バリア領域63bは、例えば
図5に示されるように、チタン膜63fと窒化チタン膜63gとの積層構造を有する。第2バリア領域63b内のチタン膜63fの厚さは、例えば5nmであってよい。第2バリア領域63b内の窒化チタン膜63gの厚さは、例えば100nmであってよい。
【0040】
第1バリア領域63aの厚さは、第2バリア領域63bの厚さよりも薄い。第1バリア領域63a内の窒化チタン膜63eの厚さは、第2バリア領域63b内の窒化チタン膜63gの厚さよりも薄くてよい。この場合、第1合金領域61aにアルミニウムを拡散させつつ、第2合金領域61bへのアルミニウムの拡散を抑制しやすい。第1バリア領域63aの厚さと第2バリア領域63bの厚さの比は、例えば1:2から1:10であってよい。
【0041】
第3バリア領域63cは、金属層62の上に設けられる。第3バリア領域63cは、金属層62を覆う。第3バリア領域63cは、例えばチタン膜と窒化チタン膜との積層構造を有する。
【0042】
ソース配線64は、バリア層63の上に設けられる。ソース配線64は、バリア層63を覆う。ソース配線64は、バリア層63と接する。ソース配線64は、例えばアルミニウムを含む材料から構成される。ソース配線64は、電極の一例である。
【0043】
ドレイン電極70は、第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接する。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続される。ドレイン電極70は、例えばニッケルシリサイドを含む材料から構成される。ドレイン電極70は、チタンと、アルミニウムと、珪素とを含む材料から構成されてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合する。
【0044】
以上に説明したように、実施形態に係るMOSFET100によれば、炭化珪素基板10にp型のコンタクト領域18とn型のソース領域13とが形成される。コンタクト領域18上にはアルミニウム濃度が高い第1合金領域61aが設けられ、ソース領域13上にはアルミニウム濃度が低い第2合金領域61bが設けられる。この場合、アルミニウム濃度が高い第1合金領域61aがコンタクト領域18とオーミック接合し、アルミニウム濃度が低い第2合金領域61bがソース領域13とオーミック接合する。このため、コンタクト領域18及びソース領域13と合金層61とのコンタクト抵抗を低減できる。
【0045】
なお、第1合金領域61a及び第2合金領域61bのアルミニウム濃度は、例えばエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray spectroscopy:EDX)により測定できる。
【0046】
上記の実施形態では、炭化珪素半導体装置がいわゆるトレンチ型のMOSFET100である場合を説明したが、これに限定されない。例えば、炭化珪素半導体装置はいわゆるプレーナ型のMOSFET200であってもよい。
【0047】
図6は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置を示す平面図である。
図7から
図9は、実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図7は、
図6中のVII-VII線に沿った断面図に相当する。
図8は、
図6中のVIII-VIII線に沿った断面図に相当する。
図9は、
図6中のIX-IX線に沿った断面図に相当する。
【0048】
図6から
図9に示されるように、MOSFET200は、炭化珪素基板10の第1主面1にゲートトレンチ5が設けられておらず、第1主面1上にゲート絶縁膜81及びゲート電極82がこの順に形成されている。
【0049】
MOSFET200は、炭化珪素基板10を有する。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、p領域15と、n領域16とを有する。p領域15及びn領域16は、第1主面1において露出する。p領域15は、p型半導体領域の一例である。n領域16は、n型半導体領域の一例である。MOSFET200のその他の構成については、MOSFET100と同様であってよい。
【0050】
実施形態の変形例に係るMOSFET200においても、実施形態に係るMOFET100と同様の作用効果が奏される。
【0051】
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
実施形態に係るMOSFET100の製造方法について説明する。
図10から
図14は、実施形態に係るMOSFET100の製造方法を示す断面図である。
図10から
図14は、
図1中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
【0052】
まず、
図10に示されるように、ソース領域13とコンタクト領域18とが露出する第1主面1を有する炭化珪素基板10を準備する。
【0053】
炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域18とを主に有する。第1主面1には、複数のゲートトレンチ5(
図2及び
図3)が設けられる。各ゲートトレンチ5には、ゲート絶縁膜81、ゲート電極82及び層間絶縁膜83(
図2及び
図3)が設けられる。
【0054】
次に、
図11に示されるように、第1主面1においてソース領域13及びコンタクト領域18に接する合金層61用の金属膜(図示せず)を形成し、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50に接するドレイン電極70用の金属膜を形成する。合金層61用の金属膜及びドレイン電極70用の金属膜は、例えばスパッタリング法により形成される。合金層61用の金属膜及びドレイン電極70用の金属膜は、例えばニッケルを含む材料から構成される。
【0055】
次に、合金化アニールを行う。合金層61用の金属膜及びドレイン電極70用の金属膜が、例えば900℃以下1100℃以下の温度において5分間程度保持される。これにより、合金層61用の金属膜の少なくとも一部及びドレイン電極70用の金属膜の少なくとも一部が、炭化珪素基板10に含まれる珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13及びコンタクト領域18とオーミック接合する合金層61と、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合するドレイン電極70とが形成される。
【0056】
次に、
図12に示されるように、合金層61の上にバリア層63を形成する。バリア層63は、例えばスパッタリング法により形成される。バリア層63は、例えば合金層61の上に形成されたチタン膜と、チタン膜の上に形成された窒化チタン膜との積層構造を有する。
【0057】
次に、
図13に示されるように、コンタクト領域18の上に開口30aを有するレジストパターン30を形成する。具体的には、コンタクト領域18の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、開口30aを有するレジストパターン30を形成する。この後、反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)などにより、レジストパターン30の開口30aにおけるバリア層63の少なくとも一部をエッチングにより除去する。これにより、コンタクト領域18の上に厚さが薄いバリア層63(第1バリア領域63a)が形成され、ソース領域13の上に厚さが厚いバリア層63(第2バリア領域63b)が形成される。バリア層63のエッチングでは、チタン膜をエッチングすることなく、窒化チタン膜の一部をエッチングにより除去する。この場合、ソース配線64を形成する際に、コンタクト領域18上の合金層61にアルミニウムを拡散させつつ、ソース領域13上の合金層61へのアルミニウムの拡散を抑制しやすい。バリア層63のエッチングでは、窒化チタン膜と、チタン膜の一部とをエッチングしてもよい。この後、有機溶剤などにより、レジストパターン30を除去する。
【0058】
次に、
図14に示されるように、ソース配線64を形成する。具体的には、バリア層63を覆うソース配線64が形成される。ソース配線64は、例えばスパッタリング法により形成される。ソース配線64は、例えばバリア層63を加熱しながら形成される。ソース配線64は、例えばアルミニウムを含む材料から構成される。ソース配線64を形成する条件は、ソース配線64に含まれるアルミニウムが、少なくともコンタクト領域18上の合金層61に拡散する条件である。
【0059】
第1バリア領域63aの厚さは、第2バリア領域63bの厚さよりも薄い。この場合、合金層61のうち、第1バリア領域63aと接する領域にアルミニウムが拡散しやすいのに対し、第2バリア領域63bと接する領域にはアルミニウムが拡散しにくい。このため、合金層61のうち、第1バリア領域63aと接する領域にアルミニウム濃度が高いNiSiAl合金が形成され、第2バリア領域63bと接する領域にアルミニウム濃度が低いNiSiAl合金又はアルミニウムを含まないNiSi合金が形成される。このようにして、コンタクト領域18上にアルミニウム濃度が高い第1合金領域61aが形成され、ソース領域13上にアルミニウム濃度が低い第2合金領域61bが形成される。
【0060】
バリア層63の上にソース配線64が形成された後、例えば400℃以上500℃以下の温度においてソース配線64が熱処理されてもよい。この場合、バリア層63及び合金層61へのアルミニウムの拡散が促進される。
【0061】
ソース配線64を形成する際、成膜の途中でソース配線64を冷却してもよい。この場合、バリア層63の厚さが薄い第1バリア領域63aにクラックが生じ、第1バリア領域63aがアルミニウムを拡散しやすくなる。このため、コンタクト領域18上の合金層61(第1合金領域61a)へのアルミニウムの拡散が促進される。例えば、目標膜厚の半分の厚さのソース配線64を形成し、次いでソース配線64を空冷し、次いで目標膜厚の残りの半分の厚さのソース配線64を形成してもよい。
【0062】
このようにして、実施形態に係る炭化珪素半導体装置100を製造できる。
【0063】
以上に説明したように、実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法によれば、まず、コンタクト領域18の上に形成されたバリア層63の少なくとも一部をエッチングする。次に、バリア層63の上にソース配線64を形成することにより、少なくともコンタクト領域18の上に形成された合金層61にアルミニウムを拡散させる。この場合、アルミニウム濃度が高い第1合金領域61aがコンタクト領域18とオーミック接合し、アルミニウム濃度が低い又はアルミニウムを含まない第2合金領域61bがソース領域13とオーミック接合する炭化珪素半導体装置を製造できる。このため、コンタクト領域18及びソース領域13と合金層61のコンタクト抵抗を低減できる。
【0064】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
15 p領域
16 n領域
18 コンタクト領域
30 レジストパターン
30a 開口
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
60 ソース電極
61 合金層
61a 第1合金領域
61b 第2合金領域
62 金属層
63 バリア層
63a 第1バリア領域
63b 第2バリア領域
63c 第3バリア領域
63d チタン膜
63e 窒化チタン膜
63f チタン膜
63g 窒化チタン膜
64 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
83 層間絶縁膜
90 コンタクトホール
100 炭化珪素半導体装置