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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057947
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】磁場測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/20 20060101AFI20240418BHJP
   G01R 33/26 20060101ALI20240418BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01R33/20
G01R33/26
G01R33/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164955
(22)【出願日】2022-10-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム委託事業、「超スマート社会実現のカギを握る革新的半導体技術を基盤としたエネルギーイノベーションの創出に関する国立大学法人京都大学による研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】芳井 義治
(72)【発明者】
【氏名】浜田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】佐光 暁史
(72)【発明者】
【氏名】竹村 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】水落 憲和
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC01
2G017AC09
2G017AD15
2G017AD69
2G017BA02
2G017BA05
2G017BA15
2G017CB01
2G017CB10
2G017CB20
2G017CC03
(57)【要約】
【課題】 磁場測定のために、フラックストランスフォーマー(FT)で被測定磁場に対応する磁場を磁気共鳴部材に対して効率良く印加する。
【解決手段】 磁気共鳴部材1は、高周波磁場発生器2によりマイクロ波を印加され磁石3により静磁場を印加される。FT4は、1次側コイル4aで被測定磁場を感受し、感受した被測定磁場に対応する印加磁場を2次側コイル4bで磁気共鳴部材1に印加する。導光部材41は、特定波長の入射光を磁気共鳴部材1へ導き、導光部材42は、磁気共鳴部材1の発する蛍光を磁気共鳴部材1から導く。磁気共鳴部材1は、FT4の2次側コイル4bの中空部かつ磁石3の中空部において、導光部材41の端面と導光部材42の端面とに挟まれて配置されている。また、2次側コイル4bはボビンレスコイルとされる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波で電子スピン量子操作の可能な磁気共鳴部材と、
前記磁気共鳴部材に前記マイクロ波を印加する高周波磁場発生器と、
前記磁気共鳴部材に静磁場を印加する磁石と、
前記磁気共鳴部材に特定波長の入射光を照射する照射装置と、
1次側コイルで被測定磁場を感受し、感受した前記被測定磁場に対応する印加磁場を2次側コイルで前記磁気共鳴部材に印加するフラックストランスフォーマーと、
前記入射光を前記磁気共鳴部材へ導く柱状の第1導光部材と、
前記磁気共鳴部材の発する蛍光を前記磁気共鳴部材から導く柱状の第2導光部材とを備え、
前記磁気共鳴部材は、前記フラックストランスフォーマーの前記2次側コイルの中空部かつ前記磁石の中空部において、前記第1導光部材の端面と前記第2導光部材の端面とに挟まれて配置されており、
前記2次側コイルは、ボビンレスコイルであること、
を特徴とする磁場測定装置。
【請求項2】
前記高周波磁場発生器は、マイクロ波を放出する略円形状かつ板状のコイル部を備え、
前記コイル部は、2つの開口部を備え、
前記第1導光部材は、前記2つの開口部のうちの一方を貫通するように配置され、
前記第2導光部材は、前記2つの開口部のうちの他方を貫通するように配置されていること、
を特徴とする請求項1記載の磁場測定装置。
【請求項3】
前記高周波磁場発生器は、マイクロ波を放出する略円形状の2つのコイル部を備え、
前記第1導光部材の少なくとも一部および前記第2導光部材の少なくとも一部は、前記2つのコイル部の間の空間に配置されていること、
を特徴とする請求項1記載の磁場測定装置。
【請求項4】
前記マイクロ波の高周波電流を導通させる配線パターンを備えた基板をさらに備え、
第1板状部材と、
前記第1板状部材と略平行に配置された第2板状部材と、
前記2つのコイル部のうちの第1コイル部は、前記第1板状部材の表面上に配置されており、
前記2つのコイル部のうちの第2コイル部は、前記第1板状部材の表面に対向する前記第2板状部材の表面上に配置されており、
前記高周波磁場発生器は、前記第1コイル部から前記第1板状部材の側面に沿って延びる第1端子部と、前記第2コイル部から前記第2板状部材の側面に沿って延びる第2端子部とをさらに備え、
前記第1板状部材および前記第2板状部材は、それぞれ前記基板に直立して配置され、
前記第1端子部および前記第2端子部は、前記基板の前記配線パターンに電気的に接続されていること、
を特徴とする請求項3記載の磁場測定装置。
【請求項5】
前記第1板状部材および前記第2板状部材の間の空間に硬化樹脂を充填して形成された充填部材をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の磁場測定装置。
【請求項6】
前記充填部材は、前記基板とは反対側から前記磁気共鳴部材を光学的に観測するための観測孔を備えることを特徴とする請求項5記載の磁場測定装置。
【請求項7】
前記第1導光部材の端面に隣接して配置され、前記励起光を透過し前記蛍光を反射する光学部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の磁場測定装置。
【請求項8】
前記2次側コイルは、前記第1導光部材、前記第2導光部材、および前記磁気共鳴部材の少なくとも1つに巻回されていることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の磁場測定装置。
【請求項9】
前記2次側コイルは、銅線と透明被覆とを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の磁場測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある磁場測定装置は、窒素と格子欠陥(NVセンター:Nitrogen Vacancy Center)を有するダイヤモンド構造などといったセンシング部材の電子スピン共鳴を利用した光検出磁気共鳴(ODMR:Optically Detected Magnetic Resonance)で磁気計測を行っている(例えば特許文献1参照)。ODMRでは、このようなNVセンターを有するダイヤモンドといった磁気共鳴部材に対して、被測定磁場とは別に静磁場が印加されるとともに、所定のシーケンスでレーザー光(励起光および測定光)並びにマイクロ波が印加され、その磁気共鳴部材から出射する蛍光の光量が検出されその光量に基づいて被測定磁場の磁束密度が導出される。
【0003】
例えば、ラムゼイパルスシーケンスでは、(a)励起光をNVセンターに照射し、(b)マイクロ波の第1のπ/2パルスをNVセンターに印加し、(c)第1のπ/2パルスから所定の時間間隔ttでマイクロ波の第2のπ/2パルスをNVセンターに印加し、(d)測定光をNVセンターに照射してNVセンターの発光量を測定し、(e)測定した発光量に基づいて磁束密度を導出する。また、スピンエコーパルスシーケンスでは、(a)励起光をNVセンターに照射し、(b)マイクロ波の第1のπ/2パルスを被測定磁場の位相0度でNVセンターに印加し、(c)マイクロ波のπパルスを被測定磁場の位相180度でNVセンターに印加し、(d)マイクロ波の第2のπ/2パルスを被測定磁場の位相360度でNVセンターに印加し、(e)測定光をNVセンターに照射してNVセンターの発光量を測定し、(f)測定した発光量に基づいて磁束密度を導出する。
【0004】
また、ある磁気センサーは、超伝導量子干渉計 (SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)と、被測定磁場をピックアップコイルで検出しインプットコイルでSQUIDへ印加する磁束トランス(フラックストランスフォーマー)とを備えている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-8298号公報
【特許文献2】特開平8-75834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の磁場測定装置は、磁気共鳴部材に対して、被測定磁場の他に、レーザー光、マイクロ波、および静磁場を印加しているため、磁気共鳴部材の周辺に、レーザー光、マイクロ波、および静磁場をそれぞれ印加する手段が実装されている。したがって、レーザー光、マイクロ波、および静磁場を磁気共鳴部材に対して印加する場合において、フラックストランスフォーマーを使用するにはレーザー光、マイクロ波、および静磁場の印加を妨げずにフラックストランスフォーマーの2次側コイルを配置する必要があり、幾何学的な構成上、フラックストランスフォーマーで被測定磁場に対応する磁場を磁気共鳴部材に対して効率良く印加することは困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、フラックストランスフォーマーで被測定磁場に対応する磁場を磁気共鳴部材に対して効率良く印加し、また、磁気共鳴部材、高周波磁場発生器および磁石とフラックストランスフォーマーの磁束の向きとを相対的に配置しやすく、レーザー光を照射する空間が確保されやすい磁場測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁場測定装置は、マイクロ波で電子スピン量子操作の可能な磁気共鳴部材と、磁気共鳴部材にマイクロ波を印加する高周波磁場発生器と、磁気共鳴部材に静磁場を印加する磁石と、磁気共鳴部材に特定波長の入射光を照射する照射装置と、1次側コイルで被測定磁場を感受し、感受した被測定磁場に対応する印加磁場を2次側コイルで磁気共鳴部材に印加するフラックストランスフォーマーと、入射光を磁気共鳴部材へ導く柱状の第1導光部材と、磁気共鳴部材の発する蛍光を磁気共鳴部材から導く柱状の第2導光部材とを備える。そして、磁気共鳴部材は、フラックストランスフォーマーの2次側コイルの中空部かつ磁石の中空部において、第1導光部材の端面と第2導光部材の端面とに挟まれて配置されており、2次側コイルは、ボビンレスコイルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フラックストランスフォーマーで被測定磁場に対応する磁場を磁気共鳴部材に対して効率良く印加し、また、磁気共鳴部材、高周波磁場発生器および磁石とフラックストランスフォーマーの磁束の向きとを相対的に配置しやすく、レーザー光を照射する空間が確保されやすい磁場測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る磁場測定装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1におけるトランスフォーマーの1次側コイルを示す断面図である。
図3図3は、磁場測定時のトランスフォーマーの1次側コイルの配置について説明する図である。
図4図4は、図1に示す磁気センサー部(一部)の構成例を示す斜視図である。
図5図5は、図1に示す磁気センサー部における光学系の構成例を示す側面図である。
図6図6は、図1に示す磁気センサー部(一部)の変形例を示す斜視図である(1/3)。
図7図7は、図1に示す磁気センサー部(一部)の変形例を示す斜視図である(2/3)。
図8図8は、図1に示す磁気センサー部(一部)の変形例を示す斜視図である(3/3)。
図9図9は、実施の形態2に係る磁場測定装置における導光部材および磁気共鳴部材の一例を示す断面図である。
図10図10は、実施の形態3における高周波磁場発生器の一例を示す斜視図である(1/3)。
図11図11は、実施の形態3における高周波磁場発生器の一例を示す斜視図である(2/3)。
図12図12は、実施の形態3における高周波磁場発生器の一例を示す斜視図である(3/3)。
図13図13は、実施の形態4に係る磁場測定装置における導光部材、磁気共鳴部材、およびフラックストランスフォーマーの2次側コイルの例を示す斜視図である(1/2)。
図14図14は、実施の形態4に係る磁場測定装置における導光部材、磁気共鳴部材、およびフラックストランスフォーマーの2次側コイルの例を示す斜視図である(2/2)。
図15図15は、実施の形態5に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。
図16図16は、実施の形態6におけるフラックストランスフォーマーの2次側コイルの一例を示す斜視図である(1/2)。
図17図17は、実施の形態6におけるフラックストランスフォーマーの2次側コイルの一例を示す斜視図である(2/2)。
図18図18は、実施の形態7に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。
図19図19は、実施の形態8に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である(1/2)。
図20図20は、実施の形態8に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である(2/2)。
図21図21は、実施の形態9に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。
図22図22は、実施の形態9に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す断面図である。
図23図23は、実施の形態10に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。
図24図24は、実施の形態10に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁場測定装置の構成を示すブロック図である。図1に示す磁場測定装置は、磁気センサー部10と、高周波電源11と、照射装置12と、受光装置13と、演算処理装置14とを備える。
【0014】
磁気センサー部10は、所定の位置(例えば、検査対象物体の表面上または表面上方)において、被測定磁場(例えば磁場の強度、向きなど)を検出する。なお、被測定磁場は、単一周波数の交流磁場でもよいし、複数の周波数成分を有する所定周期の交流磁場でもよい。
【0015】
この実施の形態では、磁気センサー部10は、磁気共鳴部材1、高周波磁場発生器2、磁石3、およびフラックストランスフォーマー4を備える。
【0016】
磁気共鳴部材1は、結晶構造を有し、結晶格子における欠陥および不純物の配列方向に応じた周波数のマイクロ波で(ラビ振動に基づく)電子スピン量子操作の可能な部材である。
【0017】
この実施の形態では、磁気共鳴部材1は、複数(つまり、アンサンブル)の特定カラーセンターを有する光検出磁気共鳴部材である。この特定カラーセンターは、ゼーマン分裂可能なエネルギー準位を有し、かつ、ゼーマン分裂時のエネルギー準位のシフト幅が互いに異なる複数の向きを取り得る。
【0018】
ここでは、磁気共鳴部材1は、単一種別の特定カラーセンターとして複数のNV(Nitrogen Vacancy)センターを含むダイヤモンドなどの部材である。NVセンターの場合、基底状態がms=0,+1,-1の三重項状態であり、ms=+1の準位およびms=-1の準位がゼーマン分裂する。なお、磁気共鳴部材1に含まれるカラーセンターは、NVセンター以外のカラーセンターでもよい。
【0019】
高周波磁場発生器2は、上述のマイクロ波を磁気共鳴部材1に印加する。
【0020】
また、磁石3は、磁気共鳴部材1に静磁場(直流磁場)を印加する。ここでは、磁石3は、リング型の永久磁石であり、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマコバ磁石などである。
【0021】
磁気共鳴部材1は、上述のマイクロ波で電子スピン量子操作の可能な複数のカラーセンター(ここでは、NVセンター)を備え、磁石3は、磁気共鳴部材1の所定領域(励起光および測定光の照射領域)に対して略均一な静磁場を印加し、磁気共鳴部材1内の複数の特定カラーセンター(ここでは、複数のNVセンター)のエネルギー準位をゼーマン分裂させる。例えば、その所定領域における静磁場の強度についての最大値と最低値との差分や比率が所定値以下となるように静磁場が印加される。
【0022】
NVセンターの場合、ダイヤモンド結晶において、欠陥(空孔)(V)および不純物としての窒素(N)によってカラーセンターが形成されており、ダイヤモンド結晶内の欠陥(空孔)(V)に対して、隣接する窒素(N)の取り得る位置(つまり空孔と窒素との対の配列方向)は4種類あり、それらの配列方向のそれぞれに対応するゼーマン分裂後のサブ準位(つまり、基底からのエネルギー準位)が互いに異なる。したがって、マイクロ波の周波数に対する静磁場によるゼーマン分裂後の蛍光強度の特性において、それぞれの向きi(i=1,2,3,4)に対応して、互いに異なる4つのディップ周波数対(fi+,fi-)が現れる。ここでは、この4つのディップ周波数対のうちのいずれかのディップ周波数に対応して、上述のマイクロ波の周波数(波長)が設定される。
【0023】
また、フラックストランスフォーマー4は、1次側コイル4aと、1次側コイル4aにケーブル(同軸ケーブル、リッツ線など)などで電気的に接続された2次側コイル4bとを備える。図2に示すように、1次側コイル4aが0.5~数十ターンの巻線により構成されている。また、図3に示すように、1次側コイル4aで、例えば測定対象物101の上方の所定測定位置の被測定磁場を感受し、その測定位置で感受した被測定磁場に対応する印加磁場(フラックストランスフォーマー4によって測定位置から伝達された磁場)を、2次側コイル4bで磁気共鳴部材1に印加する。つまり、1次側コイル4aは、感受した被測定磁場に対応する電気信号を誘起し、2次側コイル4bは、その電気信号に対応する印加磁場を誘起する。
【0024】
さらに、磁気共鳴部材1から、上述の印加磁場に対応する物理的事象で生成される蛍光を検出する検出装置として、照射装置12および受光装置13が設けられている。
【0025】
照射装置12は、磁気共鳴部材1に照射すべきレーザー光(ここでは、ODMR用の所定波長の励起光と所定波長の測定光)を生成して、後述の光学系を介して、光検出磁気共鳴部材としての磁気共鳴部材1に照射する。
【0026】
また、受光装置13は、測定光の照射時において、後述の光学系を介して、磁気共鳴部材1から発せられる蛍光を受光して検出する。
【0027】
演算処理装置14は、例えばコンピューターを備え、プログラムをコンピューターで実行して、各種処理部として動作する。この実施の形態では、演算処理装置14は、検出された光学的あるいは電気的な信号データを図示せぬ記憶装置(メモリーなど)に保存し、測定制御部21および演算部22として制御および演算動作を行う。
【0028】
測定制御部21は、高周波電源11を制御し、上述の検出装置(ここでは、照射装置12および受光装置13)により検出された、上述の物理的事象(ここでは蛍光強度)の検出値を特定する。
【0029】
この実施の形態では、測定制御部21は、例えばODMRに基づき、所定の測定シーケンスに従って高周波電源11および照射装置12を制御し、受光装置13により検出された蛍光の検出光量を特定する。例えば、照射装置12は、レーザーダイオードなどを光源として備え、受光装置13は、フォトダイオードなどを受光素子として備え、測定制御部21は、受光素子の出力信号に対して増幅などを行って得られる受光装置13の出力信号に基づいて、上述の検出光量を特定する。
【0030】
演算部22は、測定制御部21によって得られ、記憶装置に保存されていた検出値に基づいて上述の測定位置での被測定磁場(強度、波形など)を演算する。
【0031】
なお、上述の測定シーケンスは、被測定磁場の周波数などに従って設定される。例えば、被測定磁場が比較的高周波数の交流磁場である場合には、この測定シーケンスには、スピンエコーパルスシーケンス(ハーンエコーシーケンスなど)が適用される。ただし、測定シーケンスは、これに限定されるものではない。また、例えば、被測定磁場が比較的低周波数の交流磁場である場合、被測定磁場の1周期において、複数回、ラムゼイパルスシーケンス(つまり、直流磁場の測定シーケンス)で、磁場測定を行い、それらの磁場測定の結果に基づいて、被測定磁場(強度、波形など)を特定するようにしてもよい。
【0032】
以下、磁気センサー部10の詳細について説明する。
【0033】
図4は、図1に示す磁気センサー部10(一部)の構成例を示す斜視図である。図5は、図1に示す磁気センサー部10における光学系の構成例を示す側面図である。
【0034】
この実施の形態では、例えば図4および図5に示すように、高周波磁場発生器2は、板状コイルであって、その中空部に対してマイクロ波を放出する略円形状のコイル部2aと、コイル部2aの両端から延び図示せぬ基板などに固定される端子部2bとを備える。高周波電源11は、そのマイクロ波の高周波電流を生成して高周波磁場発生器2に導通させる。高周波磁場発生器2のコイル部2aは、その両端面部分2a-1,2a-2において、磁気共鳴部材1を挟むように所定の間隔で互いに平行な2つの電流を導通させ、上述のマイクロ波を放出する。ここでは、高周波磁場発生器2は板状コイルであるが、表皮効果により、コイル部2aの端面部分2a-1,2a-2をマイクロ波の電流が流れるため、2つの電流が形成される。これにより、磁気共鳴部材1において空間的に略均一な強度のマイクロ波が印加される。
【0035】
また、図4および図5に示すように、磁気センサー部10は、さらに、導光部材41,42を備える。
【0036】
導光部材41は、光を透過する柱状(ここでは四角柱状)の部材であり、照射装置12からの入射光を磁気共鳴部材1へ導く。導光部材42は、光を透過する柱状(ここでは四角柱状)の部材であり、磁気共鳴部材1の発する蛍光を磁気共鳴部材1から受光装置13に向けて導く。導光部材41,42は、例えばガラス製の部材であり、長手方向に対して垂直方向において同一形状の断面を有する。
【0037】
そして、磁気共鳴部材1は、フラックストランスフォーマー4の2次側コイル4bの中空部かつ磁石3の中空部において、導光部材41の端面と導光部材42の端面とに挟まれて配置されている。
【0038】
具体的には、磁気共鳴部材1は、例えば略直方体の板状の形状を有し、磁気共鳴部材1の対向する2面のうちの一方の面が導光部材41の端面に面接触するか(例えば接着剤で)面接合され、他方の面が導光部材42の端面に面接触するか(例えば接着剤で)面接合されている。これにより、導光部材41,42および磁気共鳴部材1が直線上に配置されている。
【0039】
2次側コイル4bは、ボビンレスコイルであって、2次側コイル4bの中心軸が導光部材41,42および磁気共鳴部材1の中心に略一致するように、かつ高周波磁場発生器2のコイル部2aの中心軸に対して略垂直になるように配置されるように、2次側コイル4bの外周を支持する図示せぬ支持部材や後述の充填部材などで固定されている。2次側コイル4bは、1次側コイル4aに対して所定の巻数比で、リング状に(ここでは円環状に)巻回されており、例えば図4および図5に示すように、高周波磁場発生器2における略円形状かつ板状のコイル部2aの中空部に、2次側コイル4bが配置されている。2次側コイル4bが細線であり巻回数が多い場合、コイル導線の解れを防止するために、例えば、コイル導線に自己融着線を使用したり、ボビン治具にコイル導線を巻回して接着剤などでコーティングした後にボビン治具を除去するようにして、ボビンレスの2次側コイル4bが形成される。
【0040】
また、高周波磁場発生器2における略円形状かつ板状のコイル部2aの側面に開口部2c,2dが形成されており、開口部2c,2dは、2次側コイル4bから見て、2次側コイル4bの軸方向に位置しており、コイル部2aの中心軸方向に対して略垂直な方向において、コイル部2aの中心を介して互いに対向する位置にある。
【0041】
これにより、高周波磁場発生器2によるマイクロ波(磁場)の方向が、2次側コイル4bによる磁場の方向に対して略垂直になる。なお、高周波磁場発生器2によるマイクロ波(磁場)の方向と2次側コイル4bによる磁場の方向とのなす角度は、90度±8度の範囲とされることが好ましく、90度とされることが最も好ましい。
【0042】
なお、開口部2c,2dの大きさは、磁気共鳴部材1における上述の照射領域の大きさ、及び表皮効果の下でコイル部2aにおいて電流が流れる領域の大きさにより決定される。この実施の形態では、磁気共鳴部材1における照射領域は長方形または円形とされ、高周波磁場発生器2の板状コイルは略円形であるため、開口部2c,2dは円弧状の長方形となり、また、磁気共鳴部材1への開口部2c,2dの投影領域の面積が照射領域の面積より大きくなり、その投影領域にその照射領域が含まれるように、開口部2c,2dが設計される。
【0043】
そして、板状の磁気共鳴部材1および柱状の導光部材41,42が、開口部2c,2d内に配置され固定されている。つまり、実施の形態1では、高周波磁場発生器2は、マイクロ波を放出する略円形状かつ板状のコイル部2aを備えており、コイル部2aは、2つの開口部2c,2dを備え、第1導光部材41は、2つの開口部2c,2dのうちの一方(開口部2c)を貫通するように配置され、第2導光部材42は、2つの開口部2c,2dのうちの他方(開口部2d)を貫通するように配置されている。
【0044】
また、この実施の形態では、図4に示すように、磁石3は、リング型磁石であり、2次側コイル4bは、リング状に巻回されており、磁石3の中心軸および2次側コイル4bの中心軸は互いに一致しており、磁気共鳴部材1、導光部材41、および導光部材42は、その中心軸上に配置されている。
【0045】
例えば図4に示すように、上述の磁気共鳴部材1は、当該フラックストランスフォーマー4の2次側コイル4bの中空部にあり、かつ磁石3の中空部にある位置に配置されている。また、この実施の形態では、2次側コイル4bは、磁石3の中空部に配置されている。磁気共鳴部材1は、磁石3の中心軸および2次側コイル4bの中心軸に対して垂直するそれぞれの横断面において、中心点から半径=(横断面の半径×a%)の中心エリア内に配置されている。特に、磁気共鳴部材1が中心点に配置されることが好ましい。ここでは、aは30以下であり、より好ましいのは20以下であり、さらにより好ましいのは10以下であり、さらにより好ましいのは5以下である。
【0046】
したがって、この実施の形態では、2次側コイル4bによる上述の印加磁場の印加方向は、磁石3による上述の静磁場の印加方向と同一となり、上述の静磁場の印加によって、上述のディップ周波数での蛍光強度変化が増強され、感度が高くなる。
【0047】
また、磁気共鳴部材1において、上述の欠陥および不純物の配列方向が、上述の静磁場の向き(および印加磁場の向き)に略一致するように、磁気共鳴部材1の結晶が形成され、磁気共鳴部材1の向きが設定される。
【0048】
なお、上述の欠陥および不純物の配列方向と上述の静磁場の向き(および印加磁場の向き)とのなす角度(絶対値)は8度以下であることが好ましく、0度であることが最も好ましい。また、上述の静磁場の向きと上述の印加磁場の向きとのなす角度(絶対値)は8度以下であることが好ましく、0度であることが最も好ましい
【0049】
さらに、磁石3の中心軸の方向において、磁気共鳴部材1は、リング型の磁石3の幅の中心区域に配置されている。ここでの「中心区域」とは、リング型の磁石3の中心軸の中心点から、中心軸方向に沿って±(中心軸長さ1/2×b%)の空間を指す。ここでは、bは30以下であり、より好ましいのは20以下であり、さらにより好ましいのは10以下であり、さらにより好ましいのは5以下である。
【0050】
また、この実施の形態においては、磁気共鳴部材1は、リング型の磁石3の幅の中心に配置されている(つまり、磁気共鳴部材1は、磁石3の両端面から略等距離の位置に配置されている)。さらに、トランスフォーマー4の2次側コイル4bの中心軸の方向において、磁気共鳴部材1は、2次側コイル4bの幅の中心区域に配置されている。ここでの「中心区域」とは、2次側コイル4bの中心軸の中心点から、中心軸方向に沿って±(中心軸長さ1/2×c%)の空間を指す。ここでは、cは30以下であり、より好ましいのは20以下であり、さらにより好ましいのは10以下であり、さらにより好ましいのは5以下である。また、本実施の形態においては、2次側コイル4bの幅の中心に配置されている(つまり、磁気共鳴部材1は、2次側コイル4bの両端面から略等距離の位置に配置されている )。さらに、磁石3の中空部の中心軸に対して垂直な面において、当該中空部の断面積は、磁気共鳴部材1における励起光および測定光の照射領域の面積の100倍以上、特に当該中空部の断面において、径方向において、測定光の照射領域の径の10倍以上の径長とすることが好ましい。この実施の形態においては、例えば、測定光の照射領域が50μm×100μmで、中空部の断面積が500μm×1000μm以上となる。このようにすることで、励起光および測定光の照射領域に対して均一な静磁場(方向および強度が略一定な静磁場)が印加される。
【0051】
また、磁気共鳴部材1の発する蛍光は、例えば図5に示すように、磁気共鳴部材1から導光部材42および所定の光学系43を介して受光装置13へ向けて集光される。この実施の形態では、この光学系43は、例えば図5に示すように、複合放物面型集光器(CPC)43a,43bを備える。なお、この光学系43は、他のレンズ構成を有していてもよい。導光部材42の端面がCPC43aの端面に面接触または(例えば接着剤で)面接合されており、導光部材42により導かれた蛍光は、この端面を介してCPC43aの内部へ入射する。
【0052】
この光学系43は、上述の入射光(つまり、磁気共鳴部材1を透過してきた残余成分)を受光装置13に入射させないようになっている。具体的には、例えば図5に示すように、上述の蛍光を透過し上述の入射光を反射するダイクロイックミラー43cおよび/または上述の蛍光を透過し上述の入射光を減衰させるロングパスフィルター43dが当該光学系43に設けられる。なお、ダイクロイックミラー43cにより反射された上述の入射光は、参照用の受光装置13aにより検出され、演算部22は、参照用の受光装置13aにより検出された入射光の光量(例えば所定の基準光量からの偏差など)に基づいて被測定磁場の測定値を補正する。
【0053】
この実施の形態では、照射装置12は、導光部材41を介して、上述の入射光を上述の中心軸に沿って磁気共鳴部材1に照射する。これにより、その入射光は、導光部材41の端面41aから導光部材41の内部に入射し、導光部材41の側面で反射しつつ、磁気共鳴部材1に向けて進行する。このように、導光部材41によって、照射装置12からのレーザー光(測定光)の光路、および磁気共鳴部材1からの蛍光の光路が通る空間が確保でき、測定光および蛍光が外部空間へ漏れることがなくなる 。
【0054】
なお、磁気センサー部10における磁気共鳴部材1の周辺には磁気シールドが設けられ、外部からの磁場が磁気共鳴部材1に直接印加されないようになっている。
【0055】
図6図8は、図1に示す磁気センサー部10(一部)の変形例を示す斜視図である。例えば図6図8に示すように、2次側コイル4bは、導光部材41,42および磁気共鳴部材1の形状に対応して矩形状に巻回されたリング状のコイルでもよい。さらに、略円環状に湾曲した板状のコイル部2aの直径は、特に限定されず、コイル部2aは、例えば図6図8に示すようなサイズとしてもよい。
【0056】
次に、当該実施の形態に係る磁場測定装置の動作について説明する。
【0057】
例えば図3に示すように、被測定物体101に対して、磁気センサー部10におけるフラックストランスフォーマー4の1次側コイル4aが所望の測定位置に所望の向きで配置される。これにより、被測定磁場が1次側コイル4aにより感受され、2次側コイル4bにより印加磁場が誘起され、磁気共鳴部材1に印加される。また、磁気センサー部10における磁石3によって、磁気共鳴部材1に略均一な静磁場が印加される。
【0058】
そして、測定制御部21は、高周波電源11および照射装置12を制御して、所定の測定シーケンスに従って、高周波磁場発生器2からマイクロ波を磁気共鳴部材1に印加するとともに、照射装置12から導光部材41を介してレーザー光(励起光および測定光)を磁気共鳴部材1に印加する。受光装置13は、導光部材42および光学系43を介して、この励起光および測定光に対応して発せられる磁気共鳴部材1の蛍光を受光し、その蛍光の光量(蛍光強度)に応じた電気信号を出力する。測定制御部21は、その電気信号を取得し、演算部22は、その蛍光強度の検出値に基づいて、その測定シーケンスに対応する計算を行って、その測定位置の磁場(強度、向きなど)を特定する。
【0059】
これにより、磁気センサー部10(つまり、磁気共鳴部材1)によって測定位置の磁場が測定される。なお、所定の走査経路パターンに沿って磁気センサー部10を走査し、走査経路上の複数の測定位置について上述の磁場測定を行うようにしてもよい。
【0060】
以上のように、上記実施の形態1によれば、高周波磁場発生器2は、マイクロ波で電子スピン量子操作の可能な磁気共鳴部材1にマイクロ波を印加する。磁石3は、磁気共鳴部材1に静磁場を印加する。照射装置12は、磁気共鳴部材1に特定波長の入射光を照射する。フラックストランスフォーマー4は、1次側コイル4aで被測定磁場を感受し、感受した被測定磁場に対応する印加磁場を2次側コイル4bで磁気共鳴部材1に印加する。柱状の導光部材41は、その入射光を磁気共鳴部材1へ導き、柱状の導光部材42は、磁気共鳴部材1の発する蛍光を磁気共鳴部材1から導く。そして、磁気共鳴部材1は、フラックストランスフォーマー4の2次側コイル4bの中空部かつ上述の磁石3の中空部において、導光部材41の端面と導光部材42の端面とに挟まれて配置されている。また、フラックストランスフォーマー4の2次側コイル4bは、ボビンレスコイルである。
【0061】
これにより、上述の励起光および測定光(並びに蛍光)の光路を妨げずに、被測定磁場に対応する磁場を、静磁場とともに磁気共鳴部材1に印加することができる。したがって、フラックストランスフォーマー4で被測定磁場に対応する磁場を磁気共鳴部材1に対して効率良く印加して磁場測定を行うことができる。また、磁気共鳴部材1、高周波磁場発生器2および磁石3とフラックストランスフォーマー4の磁束の向きとを相対的に配置しやすくなり、さらに、レーザー光を照射する空間が確保されやすくなる。
【0062】
次に、当該実施の形態に係る磁場測定装置の製造方法について説明する。
【0063】
まず、磁気共鳴部材1、高周波磁場発生器2、磁石3及びフラックストランスフォーマー4をそれぞれ用意する。
【0064】
次に、図示せぬ回路基板に高周波磁場発生器2を取り付ける。また、小型化の観点から、SiC等の半導体基板が利用される場合、高周波磁場発生器2がその基板に一体的に実装される。
【0065】
次に、その回路基板を固定することで高周波磁場発生器2を固定するとともに、フラックストランスフォーマー4の2次側コイル4bを、2次側コイル4bの開口端部が高周波磁場発生器2の開口部2c,2dにそれぞれ面するように配置する。なお、磁気共鳴部材1の欠陥の配列方向の1つが、開口部2c,2dの中心に向かうように組み立てられる。これにより、磁気共鳴部材1の少なくとも一つの外面に対して、高周波磁場発生器2から発生された磁束が垂直になるようになる。
【0066】
そして、導光部材41、磁気共鳴部材1、および導光部材42を、開口部2c,2dを挿通して固定する。このとき、磁気共鳴部材1が2次側コイル4bの中心エリアおよび中心区域に配置されるようにする。また、高周波磁場発生器2から発生されている磁束と、2次側コイル4bから発生されている磁束とが垂直となるように、各部の向きや位置が調整される。
【0067】
さらに、高周波磁場発生器2の外側に磁石3を取り付ける。また、照射装置12、光学系43、および受光装置13を別途設置して固定する。
【0068】
上記の製造方法により、磁気共鳴部材1、高周波磁場発生器2および磁石3と、フラックストランスフォーマー4の磁束の向きとを段階的に調整でき、相対的に配置しやすく、組み立てた後で煩雑な調整を行う必要がなくなる。
【0069】
実施の形態2.
【0070】
図9は、実施の形態2に係る磁場測定装置における導光部材および磁気共鳴部材の一例を示す断面図である。実施の形態2では、導光部材41および導光部材42のうちの一方のみまたは両方(ここでは両方)は、その端面に、磁気共鳴部材1の形状に対応する凹部45,46を備える。そして、磁気共鳴部材1がこの凹部45,46に配置される。
【0071】
具体的には、磁気共鳴部材1がこの凹部45,46に配置され、導光部材41の端面の凹部45以外の部分と導光部材42の端面の凹部46以外の部分とが互いに面接触または(例えば接着剤で)面接合され互いに固定される。
【0072】
実施の形態2に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態3.
【0074】
図10図12は、実施の形態3における高周波磁場発生器2の一例を示す斜視図である。実施の形態3では、高周波磁場発生器2は、コイル部2aの代わりに、2つのコイル部a61-1,61a-2を備え、端子部2bの代わりに、端子部61b-1,61b-2を備える。
【0075】
例えば図10に示すように、高周波磁場発生器2は、それぞれ、マイクロ波を放出する略円形状のコイル部61a-1,61-2と、コイル部61a-1,61a-2の両端から延び図示せぬ基板などに固定される端子部61b-1,61b-2とを備える。
【0076】
コイル部61a-1,61a-2は、磁気共鳴部材1を挟むように所定の間隔で互いに平行な2つの電流(略同一の振幅かつ略同一の周波数で互いに同期した電流)を導通させ、上述のマイクロ波を放出する。これにより、磁気共鳴部材1において空間的に略均一な強度のマイクロ波が印加される。
【0077】
実施の形態1では、高周波磁場発生器2は、横巻き(α巻き)の板状コイルであるが、実施の形態3では、高周波磁場発生器2は、縦巻き(エッジワイズ巻き)の板状コイルである。
【0078】
そして、導光部材41の少なくとも一部、導光部材41の少なくとも一部、および磁気共鳴部材1は、2つのコイル部61a-1,61a-2の間の空間に配置されている。
【0079】
さらに、例えば図11に示すように、実施の形態3では、板状部材62-1と、板状部材62-1と略平行に配置された板状部材62-2とが設けられており、コイル部61a-1は、板状部材62-1の表面上に配置されており、コイル部61a-2は、板状部材62-1の表面に対向する板状部材62-2の表面上に配置されている。
【0080】
なお、板状部材62-1および板状部材62-2を基板とし、コイル部61a-1,61a-2をそれぞれ、それらの基板上の配線パターンとしてもよい。また、板状部材62-1,62-2は、ガラス基板でもよいし、フッ素樹脂(PTEF)基板でもよい。
【0081】
さらに、例えば図12に示すように、端子部61b-1は、板状部材62-1のエッジで屈曲して、コイル部61a-1から第1板状部材62-1の側面に沿って延び、端子部61b-2は、板状部材62-2のエッジで屈曲して、コイル部61a-2から板状部材62-2の側面に沿って延びるようにしてもよい。
【0082】
実施の形態3に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
実施の形態4.
【0084】
図13および図14は、実施の形態4に係る磁場測定装置における導光部材、磁気共鳴部材、およびフラックストランスフォーマーの2次側コイルの例を示す斜視図である。例えば図13および図14に示すように、実施の形態4では、導光部材41,42は、略円柱形状を有している。実施の形態4における導光部材41,42のその他の光学的な特性は、実施の形態1における導光部材41,42の光学的な特性と同様である。ここで、図13は、図11に示す導光部材41,42を変更したものを示しており、図14は、図12に示す導光部材41,42を変更したものを示している。
【0085】
なお、導光部材41および導光部材42に挟まれている磁気共鳴部材1は、(例えば第1導光部材41と同一の径の)略円柱形状でもよい。また、実施の形態2と同様の凹部を設けて、磁気共鳴部材1がその凹部45,46に配置されるようにしてもよい。
【0086】
実施の形態4に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0087】
実施の形態5.
【0088】
図15は、実施の形態5に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。例えば図15に示すように、実施の形態5では、磁気センサー部10には、光学部材71が設けられている。光学部材71は、導光部材41の端面41aに隣接して配置され、上述の励起光を透過し蛍光を反射する。ここでは、光学部材71の端面71aが導光部材41の端面41aに接触している。
【0089】
例えば、光学部材71では、透明なガラスなどの平板状の本体の端面71aに誘電体多層膜が形成されている。この誘電体多層膜は、導光部材41への励起光の波長(例えば533nm)の光を透過し、導光部材41からの蛍光の波長(例えば600nm~800nm)の光を反射する。これにより、磁気共鳴部材1から導光部材41へ進行した蛍光が、当該光学部材71で反射して、導光部材41,42を進行し、受光装置13により受光される。したがって、受光装置13により受光される蛍光の光量が、当該光学部材71によって増加する。
【0090】
実施の形態5に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
実施の形態6.
【0092】
図16および図17は、実施の形態6におけるフラックストランスフォーマー4の2次側コイルの一例を示す斜視図である。
【0093】
実施の形態6では、例えば図16および図17に示すように、フラックストランスフォーマー4の2次側コイル4bが、2つの分割コイル4b-1,4b-2となっている。この2つの分割コイル4b-1,4b-2は、電気的に直列または並列に(ここでは、直列に)接続されている。2次側コイル4bの分割コイル4b-1,4b-2は、上述の電気信号に対応する印加磁場を誘起する。
【0094】
さらに、例えば図17に示すように、分割コイル4b-1,4b-2が直列に電気的に接続され、2次側コイル4bの端部65は、高周波磁場発生器2の端子部61b-1,61b-2とは反対方向に延びていてもよい。
【0095】
実施の形態6に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0096】
実施の形態7.
【0097】
図18は、実施の形態7に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。実施の形態7では、例えば図18に示すように、基板81が設けられている。基板81は、上述のマイクロ波の高周波電流を導通させる配線パターン82,83-1,83-2を備えている。
【0098】
そして、基板81上には、板状部材62-1および板状部材62-2が、それぞれ基板81に対して直立して配置されて固定され、端子部61b-1および端子部61b-2は、はんだ付けなどによって、基板81の配線パターン82,83-1,83-2に電気的に接続されている。
【0099】
具体的には、配線パターン82には、端部61b-1の一方および端部61b-2の一方が接続されており、配線パターン83-1,83-2には、端部61b-1の他方および端部61b-2の他方がそれぞれ接続されている。なお、配線パターン82は、高周波電源11に電気的に接続されており、配線パターン83-1,83-2は、例えば、スルーホール84-1,84-2で終端されている。なお、配線パターン83-1,83-2終端部分は、図示したスルーホールに限定されるものではない。
【0100】
実施の形態7に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0101】
実施の形態8.
【0102】
図19および図20は、実施の形態8に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。実施の形態8では、例えば図19に示すように、基板91が設けられている。基板91は、上述のマイクロ波の高周波電流を導通させる配線パターン92,93を備えている。
【0103】
そして、基板91上には、板状部材62-1および板状部材62-2が、それぞれ基板81に対して直立して配置されて固定され、端子部61b-1および端子部61b-2は、はんだ付けなどによって、基板91の配線パターン92,93に電気的に接続されている。
【0104】
具体的には、配線パターン92には、端部61b-1の一方および端部61b-2の一方が接続されており、配線パターン93には、端部61b-1の他方および端部61b-2の他方が接続されている。なお、配線パターン92は、高周波電源11に電気的に接続されており、配線パターン93は、スルーホール94で終端されている。
【0105】
さらに、例えば図19に示すように、2次側コイル4bの端部65は、基板91とは反対方向に延びている。
【0106】
図20は、実施の形態8における磁気センサー部10の変形例を示している。例えば図20に示すように、光学部材71が、フレーム部材95で固定されており、フレーム部材95が板状部材62-1および板状部材62-2の側面(基板91に対して垂直な側面)に接触して固定されている。
【0107】
実施の形態8に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
実施の形態9.
【0109】
図21は、実施の形態9に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。図22は、実施の形態9に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す断面図である。
【0110】
図21および図22に示す磁気センサー部10は、上述の図20に示す磁気センサー部10に充填部材96を追加したものである。充填部材96は、板状部材62-1および板状部材62-2の間の空間(より具体的には板状部材62-1、板状部材62-2、基板91、およびフレーム部材95によって囲まれた空間)に硬化樹脂(熱硬化樹脂など)を充填して形成されている。
【0111】
例えば、図20に示すように、導光部材41,42、磁気共鳴部材1、および2次側コイル4bを組み立てるとともに板状部材62-1,62-2、基板91、およびフレーム部材95を組み立てた後、導光部材41,42、磁気共鳴部材1、および2次側コイル4bのアセンブリを上述の空間内部に治具などを使用して配置した状態で硬化樹脂を注入し、硬化樹脂を硬化させることで、充填部材96が形成される。なお、その際、光学部材71およびフレーム部材95の下部の開放部分や光学部材71およびフレーム部材95とは反対側の開放部分については、注入した硬化樹脂が流出しないように、必要に応じて仮枠が配置され硬化後に取り除かれる。
【0112】
実施の形態9に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、他のいずれかの実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0113】
実施の形態10.
【0114】
図23は、実施の形態10に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す斜視図である。図24は、実施の形態10に係る磁場測定装置における磁気センサー部(一部)の構成を示す断面図である。
【0115】
実施の形態10では、図23および図24に示すように、充填部材96は、基板91とは反対側から磁気共鳴部材1を光学的に観測するための観測孔97を備える。例えば、観測孔97にファイバースコープを挿入し、ファイバースコープで磁気共鳴部材1を観測する。なお、観測を行わないときは、遮光部材を観測孔97に取り付けることで、磁気共鳴部材1への外光の入射が防止される。
【0116】
実施の形態10に係る磁場測定装置のその他の構成および動作については、実施の形態9と同様であるので、その説明を省略する。
【0117】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0118】
例えば、上記実施の形態のいずれかにおいて、磁石3は電磁石でもよい。
【0119】
さらに、上記実施の形態のいずれかにおいて、導光部材41,42の側面に反射膜(誘電体多層膜など)を設けてもよい。また、CPC43a,43bの側面に反射膜(誘電体多層膜など)を設けてもよい。
【0120】
さらに、上記実施の形態のいずれかにおいて、導光部材41,42は、互いに同一の長さを有するようにしてもよい。また、導光部材41,42の断面形状は、円形、および四角形に限定されず、六角形など他の形状となっていてもよい。また、導光部材41,42の材質は、アクリルなどの透明な樹脂であってもよい。
【0121】
さらに、上記実施の形態のいずれかにおいて、2次側コイル4bは、第1導光部材41、第2導光部材42、および磁気共鳴部材1の少なくとも1つに直接的に巻回されているようにしてもよい。
【0122】
さらに、上記実施の形態のいずれかにおいて、2次側コイル4bは、透明被覆を備えた銅線で構成されていてもよい。この場合、磁気共鳴部材1から、磁気共鳴部材1および導光部材41,42の外部へ出射した蛍光の一部が透明被覆を介して銅線表面で反射して導光部材41,42、または磁気共鳴部材1の内部へ戻るため、受光装置13により受光される蛍光の光量が増加する。
【0123】
さらに、上記実施の形態のいずれかにおいて、2次側コイル4bは、多層巻きのコイルでもよい。
【0124】
なお、上記実施の形態では、2次側コイルは、ボビンレスコイルであるが、必要に応じて、ボビンに巻回されていてもよい。その場合、当該ボビンは、貫通孔を有し、その貫通孔に挿入された上述の導光部材41,42(および磁気共鳴部材1)を支持する。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、例えば、磁場測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 磁気共鳴部材
2 高周波磁場発生器
2a,61a-1,61a-2 コイル部
2c,2d 開口部
3 磁石
4 フラックストランスフォーマー
4a 1次側コイル
4b 2次側コイル
10 磁気センサー部
11 高周波電源
12 照射装置
13 受光装置
41 導光部材(第1導光部材の例)
42 導光部材(第2導光部材の例)
45,46 凹部
61b-1,61b-2 端子部
62-1 板状部材(第1板状部材の一例)
62-2 板状部材(第2板状部材の一例)
95 光学部材
96 充填部材
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