(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057959
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 5/12 20060101AFI20240418BHJP
G01N 3/20 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
E01C5/12
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164979
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】矢埜 泰武
(72)【発明者】
【氏名】星野 建
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】樋山 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
【テーマコード(参考)】
2D051
2G061
【Fターム(参考)】
2D051AG01
2D051AH02
2D051AH03
2G061AA07
2G061AB01
2G061AC03
2G061BA17
2G061BA20
2G061CA20
2G061CB01
2G061EA02
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮した舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法を提供する。
【解決手段】舗装材の評価方法は、舗装材を模した板状の試験片Pを試験温度に保持し、試験片Pの外縁を固定した状態で、試験片Pの一方の板面に押圧部材3を押し付けて他方の板面を突出させて凸部Aを形成し、押圧部材3の押し付け量に対する凸部Aの高さの比率である変形率を取得する変形率取得工程と、この変形率に基づいて舗装材の表面の変形特性を取得する評価工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装材を模した板状の試験片を試験温度に保持し、前記試験片の外縁を固定した状態で、前記試験片の一方の板面に押圧部材を押し付けて他方の板面を突出させて凸部を形成し、前記押圧部材の押し付け量に対する前記凸部の高さの比率である変形率を取得する変形率取得工程と、
前記変形率に基づいて前記舗装材の表面の変形特性を取得する評価工程とを含む舗装材の評価方法。
【請求項2】
前記評価工程では、2以上の前記試験温度で取得された前記変形率と、前記試験温度と、に基づいて前記変形特性を取得する請求項1に記載の舗装材の評価方法。
【請求項3】
前記評価工程では、2以上の前記試験温度で取得された前記変形率と、前記試験温度と、に基づいて前記変形率の温度依存性を求める請求項1に記載の舗装材の評価方法。
【請求項4】
前記舗装材は、路面に敷設された路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材であり、
前記変形率と前記路盤材の予測膨張量とに基づいて、前記アスファルト系舗装材が前記路盤材の上に敷設された後の前記アスファルト系舗装材の表面の変位量を予測する予測工程を含む請求項1から3の何れか1項に記載の舗装材の評価方法。
【請求項5】
請求項4に記載の舗装材の評価方法を用いて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材の厚さを調整する舗装材の施工方法。
【請求項6】
請求項4に記載の舗装材の評価方法を用いて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材の組成を調整する舗装材の施工方法。
【請求項7】
請求項4に記載の舗装材の評価方法を用いて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記路盤材の組成を調整して前記予測膨張量を調整する舗装材の施工方法。
【請求項8】
請求項4に記載の舗装材の評価方法を用いて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材を敷設する舗装材の施工方法であって、
前記変位量を予測するにあたり、前記アスファルト系舗装材が敷設される前記路面の最高温度を取得し、
前記最高温度に対応する前記試験温度で取得された前記変形率に基づいて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように、前記アスファルト系舗装材の厚さ及び前記アスファルト系舗装材の組成のうち、少なくとも一つを調整する舗装材の施工方法。
【請求項9】
請求項4に記載の舗装材の評価方法を用いて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材を敷設する舗装材の施工方法であって、
前記変位量を予測するにあたり、前記アスファルト系舗装材が敷設される前記路面の最高温度を取得し、
前記最高温度に対応する前記試験温度で取得された前記変形率に基づいて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように、前記路盤材の組成を調整して前記予測膨張量を調整する舗装材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面を舗装するアスファルトなどの舗装材は、路床の上に路盤材を敷き、さらにその上にアスファルト混合物を敷設して転圧することで形成される。舗装材は通行車両等の荷重やタイヤから受ける摩擦等の外的要因により破損、摩耗し、また、路盤材の膨張や陥没のような外的要因によって変形する。また、破損、摩耗又は変形は、路面の温度のような環境により、その起こりやすさや程度が変化する。そのため、外的要因を考慮した舗装材の変形特性の評価や、その変形特性を加味した舗装材の施工(敷設)が重要である。
【0003】
特許文献1には、アスファルト混合物の評価方法、評価装置及び供試体が開示されている。試験装置は、アスファルト混合物のねじりせん断による剛性、耐久性及び流動性を評価するためのものである。試験装置は、アスファルト混合物を円柱形状に成形した供試体の軸心まわりにねじりを加えたときのその供試体の応答に基づいて、供試体のせん断弾性係数、耐流動性及び耐久性の少なくとも一つを評価するように構成されている。特許文献1には、現実のアスファルト舗装道路においては、夏場での温度が60℃を超えることがあり、またねじりせん断が発生することがあると記載されている。
【0004】
特許文献2には、製鋼スラグの膨張抑制処理方法などが開示されている。特許文献2には、路盤材や土工資材の用途に製鋼スラグが利用されていることが記載されている。また、特許文献2には、製鋼スラグは未反応石灰や未反応酸化マグネシウム等を含む場合があり、これらは水と反応して体積膨張を起こす性質を有すること、また、この性質により、例えば製鋼スラグを路盤材に適用すると、路盤材上に敷設したアスファルトが隆起したり、亀裂が生じたりする場合があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-192391号公報
【特許文献2】特開2022-045088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、アスファルト系舗装材のような舗装材には、例えば使用環境や環境温度を考慮した耐久性や剛性を評価するニーズがある。しかし、従来の評価方法では、アスファルト系舗装材などの舗装材の変形特性に関し、例えば路面に敷設された路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材における路盤材の膨張のような外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮した評価を適切に行うことができない場合があった。また、このため、外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮した舗装材の施工が行えない場合があった。
【0007】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮した舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る舗装材の評価方法は、以下のとおりである。
【0009】
[1] 舗装材の評価方法は、
舗装材を模した板状の試験片を試験温度に保持し、前記試験片の外縁を固定した状態で、前記試験片の一方の板面に押圧部材を押し付けて他方の板面を突出させて凸部を形成し、前記押圧部材の押し付け量に対する前記凸部の高さの比率である変形率を取得する変形率取得工程と、
前記変形率に基づいて前記舗装材の表面の変形特性を取得する評価工程とを含む。
【0010】
本発明に係る舗装材の評価方法は、更に以下のようであってよい。
【0011】
[2] 前記評価工程では、2以上の前記試験温度で取得された前記変形率と、前記試験温度と、に基づいて前記変形特性を取得する上記[1]に記載の舗装材の評価方法。
【0012】
[3] 前記評価工程では、2以上の前記試験温度で取得された前記変形率と、前記試験温度と、に基づいて前記変形率の温度依存性を求める上記[1]に記載の舗装材の評価方法。
【0013】
[4] 前記舗装材は、路面に敷設された路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材であり、
前記変形率と前記路盤材の予測膨張量とに基づいて、前記アスファルト系舗装材が前記路盤材の上に敷設された後の前記アスファルト系舗装材の表面の変位量を予測する予測工程を含む上記[1]から[3]の何れか一つに記載の舗装材の評価方法。
【0014】
上記[4]の舗装材の評価方法を用い、更に、以下の舗装材の施工方法を実現することができる。
【0015】
[5] 予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材の厚さを調整する舗装材の施工方法。
【0016】
[6] 予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材の組成を調整する舗装材の施工方法。
【0017】
[7] 予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記路盤材の組成を調整して前記予測膨張量を調整する舗装材の施工方法。
【0018】
[8] 予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材を敷設する舗装材の施工方法であって、
前記変位量を予測するにあたり、前記アスファルト系舗装材が敷設される前記路面の最高温度を取得し、
前記最高温度に対応する前記試験温度で取得された前記変形率に基づいて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように、前記アスファルト系舗装材の厚さ及び前記アスファルト系舗装材の組成のうち、少なくとも一つを調整する舗装材の施工方法。
【0019】
[9] 予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように前記アスファルト系舗装材を敷設する舗装材の施工方法であって、
前記変位量を予測するにあたり、前記アスファルト系舗装材が敷設される前記路面の最高温度を取得し、
前記最高温度に対応する前記試験温度で取得された前記変形率に基づいて予測した前記変位量があらかじめ定めた閾値以内になるように、前記路盤材の組成を調整して前記予測膨張量を調整する舗装材の施工方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮した舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る舗装材の評価方法及び試験装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法について説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る舗装材の評価方法の概要を説明する。
【0024】
図1には、本実施形態に係る舗装材の評価方法で用いる試験装置100の概念図の一例を示している。試験装置100は、舗装材を模した板状の試験片Pを試験温度に保持するための収容空間Sを形成する収容容器1と、試験片Pの外縁を固定する枠体2と、試験片Pの一方の板面に押し付けられる押圧部材3と、を備えている。押圧部材3は、試験片Pの板面に対して垂直に押し付けられる。なお、本実施形態において、「舗装材を模した板状の試験片」とは、実際に敷設する舗装材に対応する厚さや組成の試験片を指す。
【0025】
図1に示す例では、押圧部材3は円柱状に形成され、その軸心が鉛直方向に沿うように配置されている。枠体2は、試験片Pの板面が水平面に沿うように試験片Pを保持している。なお、枠体2は、試験片Pの外縁を固定しているが、試験片Pの中央部分における両面は鉛直方向視において露出させている(枠体2で隠れないようにしている)。本実施形態では、枠体2は円形状の開口部20を有し、試験片Pの中央部分における両面を露出させている。
【0026】
本実施形態に係る舗装材の評価方法は、
図1に示すように、舗装材を模した板状の試験片Pを試験温度に保持し、試験片Pの外縁を固定した状態で、試験片Pの一方の板面(
図1では下面)に押圧部材3を押し付けて他方の板面(
図1では上面)を突出させて凸部A(
図2参照)を形成し、押圧部材3の押し付け量X(
図2参照)に対する凸部Aの高さY(
図2参照)の比率である変形率を取得する変形率取得工程と、この変形率に基づいて舗装材の表面の変形特性を取得する評価工程とを含む。
【0027】
本実施形態に係る舗装材の評価方法によれば、外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮した舗装材の評価方法及び外的要因に起因する変形と環境温度とを考慮して舗装材を敷設する施工方法を提供することができる。
【0028】
以下、本実施形態に係る舗装材の評価方法について詳述する。
【0029】
本実施形態に係る舗装材とは、道路等の路面の舗装に用いられるものである。本実施形態に係る舗装材には、路床上に敷設される路盤材や、路盤材上に敷設されるアスファルト混合物等のアスファルト系舗装材が含まれる。以下の説明では、主に、舗装材がアスファルト系舗装材である場合を例示して説明する。
【0030】
本実施形態に係る舗装材の評価方法は、道路の舗装材の表面の変形特性を取得するものである。具体例を挙げると、路面に敷設された路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材のような舗装材について、路盤材の膨張のような外的要因に起因する舗装材の変形要因と、路面の温度のような環境温度とを考慮した、舗装材の表面の変形のしやすさや変形の程度のような、いわゆる変形特性を取得し、また、評価するものである。舗装材の表面の変形特性の一例は、上記の変形率そのものである。また、変形特性の他の例は、環境温度と変形率との関係である。
【0031】
本実施形態に係る舗装材の評価方法は、舗装材の表面の変形特性を取得することで、舗装材の表面の変形特性を加味しつつ舗装材を敷設する舗装材の施工方法の実現に寄与する。具体的には、道路に舗装材が施工(敷設)される場合に、敷設後(舗装後)に変形が生じにくい厚さや組成での舗装材の施工(敷設)を実現することができる。また、道路に舗装材が敷設される場合に、敷設後に変形が生じにくいように、舗装材の厚さ(層厚)や組成に対応させて路盤材の予測膨張量(舗装材の敷設後に予測される路盤材の膨張量)を調整した施工(敷設)を実現することができる。なお、路盤材の膨張量は、路盤材の組成(例えば、未滓化の石灰や晶出CaOなどの量)を調整するなどして調整することができる。
【0032】
上述のごとく、本実施形態に係る舗装材の評価方法は、
図1に示すように、舗装材を模した板状の試験片Pを試験温度に保持し、試験片Pの外縁を固定した状態で行う。そして、
図2に示すように、試験片Pに押圧部材3を押し付けて凸部Aを形成する。なお、本実施形態において試験片Pは平板状である。
【0033】
舗装材の変形率αは、次式(1)のごとく、押圧部材の押し付け量Xに対する凸部Aの高さYの比率として求める。
【0034】
変形率α=Y(mm)/X(mm)・・・(1)
【0035】
図2に示すように、押し付け量Xは、押圧部材3を押し付ける前、すなわち、変形前の試験片Pにおける押圧部材3に対向する側の板面であった位置と、押圧部材3を試験片Pに押し付けた後の押圧部材3の押圧面30との最短距離である。なお、変形前の試験片Pにおける押圧部材3に対向する側の板面であった位置(板面に垂直な方向における位置)は、押圧部材3に対向する側の板面における、押圧部材3を試験片Pに押し付けた後においても変形していない板面の位置(板面に垂直な方向における位置)と同じである。
【0036】
押圧部材3の押圧面30とは、押圧部材3における試験片Pに対向する面(試験片Pに押圧される面)である。押圧部材3の変位の観点で説明した場合、押圧部材3の押し付け量Xは、押圧面30を試験片Pに軽く当接させた状態における押圧面30の位置から押圧部材3を試験片Pに押し付けた後の押圧面30までの押圧面30の変位量と同じである。
【0037】
図2に示すように、凸部Aの高さYは、押圧部材3を押し付ける前、すなわち、変形前の試験片Pにおける押圧部材3に対向する側と反対側の板面であった位置と、押圧部材3を試験片Pに押し付けた後に形成された、凸部Aの頂部との最短距離である。なお、変形前の試験片Pにおける押圧部材3に対向する側と反対側の板面であった位置(板面に垂直な方向における位置)は、押圧部材3に対向する側と反対側の板面における、押圧部材3を試験片Pに押し付けた後においても変形していない板面の位置(板面に垂直な方向における位置)と同じである。
【0038】
以下では、試験片に押圧部材を押し当てて凸部を形成する操作を、単に貫入試験と称する場合がある。
【0039】
貫入試験は、例えばJIS A1211に規定されるCBR試験方法のCBR試験機や、アムスラー試験機(圧縮試験)等で用いられる油圧システムや貫入ピストンを流用して行うことができる。貫入試験の手順は、JIS A1211に規定されるCBR試験方法のモールドを舗装材の試験片に置き換え、また、貫入ピストンを押圧部材に置き換えることでCBR試験方法と同様に行うことができる。
【0040】
押圧部材を試験片に押し付ける際の押圧部材の移動速度(以下、貫入速度と記載する場合がある)は1mm/分程度が好ましいが、押し付け量と凸部の高さとを計測できれば方法は問わない。
【0041】
変形率を測定する際の押し付け量は5mm程度が望ましいが、押圧部材が試験片を突き抜けない範囲であれば問わない。
【0042】
押圧部材は、一例として円柱状であるが、形状は特に問わない。以下では、押圧部材が円柱状である場合を例示して説明する。
【0043】
試験片の大きさや押圧部材の太さ又は直径は、舗装材の評価目的を考慮して適宜設定してよい。すなわち、試験片の大きさや押圧部材の太さ又は直径は、想定する外的要因の種類、変位量又は応力の大きさなどに応じて適宜設定すればよい。
【0044】
例えば舗装材が路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材である場合、路盤材に含まれる骨材(スラグ)の膨張による影響を受けやすい。そのため、貫入試験を行う際には、この骨材(スラグ)の影響を評価するため、
図1に示す押圧部材3の直径を路盤材の骨材の最大粒径相当とすることが好ましい。なお、押圧部材3があまり細すぎると、押圧部材3を試験片Pに押し付けた際に凸部を形成しない場合がある。そのため押圧部材3の直径は10mm以上とすることが好ましく、評価目的に応じて変更できるようにしておくことが好ましい。また、試験片Pを保持する枠体2の開口部20の内径(直径)は、少なくとも路盤材に含まれる骨材の最大粒径の4倍以上の長さとするとよい。開口部20の内径は、例えば、押圧部材3の直径の4倍とするとよい。
【0045】
試験片Pのサイズは、押圧部材3の直径にもよるが、少なくとも路盤材に含まれる骨材の最大粒径の5倍の長さを一辺とする正方形とすることが好ましい。試験片Pを正方形とした場合における一辺の長さは、例えば、押圧部材3の直径の5倍以上とするとよい。
【0046】
試験片Pの厚さは、実際に敷設する舗装材を想定した厚さ(最大で100mm)とするとよい。
【0047】
試験片Pの試験温度の調整は、温度の調整された恒温槽内に収容したり水槽に水浸したりすることで行ってよい。
図1に示す例では、収容容器1が恒温槽や水槽であってよい。以下では、収容容器が恒温槽である場合を例示して以下説明する。
【0048】
アスファルトの物性は温度の影響を大きく受ける。そのため、舗装材がアスファルト系舗装材である場合、押し付け量や凸部Aの高さの計測を行う際は、試験片を試験温度の上下3℃以内(試験温度-3℃以上、試験温度+3℃以下)に保つことが好ましい。
【0049】
本実施形態では、上記の変形率に基づいて舗装材の表面の変形特性(例えば、変形し易さ、変形容易性)を取得する。
【0050】
変形特性は、2以上の試験温度で取得された変形率と、その変形率を取得した際のそれぞれの試験温度と、に基づいて取得してよい。この場合、2以上の試験温度で取得された変形率と、その変形率を取得した際のそれぞれの試験温度と、に基づいて、変形率の温度依存性を変形特性として求めてよい。
【0051】
変形率の温度依存性は、一例として、次式(2)に示されるような、試験片の温度Tの関数α(T)として取得することができる。
【0052】
α(T)=aT+C (ただし、a及びCは定数)・・・(2)
【0053】
関数α(T)は、例えば以下のようにして求めてよい。まず、複数(2以上)の試験温度Tで貫入試験を実施し、それぞれの試験温度における変形率αを取得する。そして、それぞれの試験温度Tとこれらにおける変形率αとの関係を、例えば最小二乗法により一次の近似関数として求め、当該近似関数を関数α(T)として採用する。
【0054】
図3には、ある一定の押し付け量における変形率αと試験温度Tとの関係を示すグラフの一例を示している。
図3に示すグラフでは、横軸を試験温度Tとし、縦軸を変形率αとして、試験温度Tごとの変形率αをプロットしたグラフを例示している。
図3中、白抜きの丸印のプロットが、各試験温度Tごとの変形率αである。
図3では、これらプロットを最小二乗法により一次関数で近似したグラフ(直線近似したグラフ)を破線で示している。
図3のグラフに示す関係についての詳細は後述する(実施例参照)。
【0055】
上述のごとく、アスファルトの物性は温度の影響を大きく受ける。例えば、舗装材がアスファルト系舗装材の場合、温度によって変形の起こりやすさや変形の生じ方が変化する。一般に、アスファルト系舗装材は高温になるほど強度が低下して脆弱になり、外的要因の影響を受けて変形しやすくなる。そこで、複数の試験片を作製し、これら複数の試験片を、例えば0℃から80℃の温度範囲のような、異なる複数の試験温度に保持し、各試験温度ごとに貫入試験を行って、変形率αを算出することが好ましい。なお、
図3に示す例では、押し付け量が一定であるため、試験温度Tが高温になるほど変形率αが小さくなっている。
【0056】
変形率又は変形率の温度依存性を取得する場合、試験温度として、舗装材の敷設予定場所の路面において想定される最高温度を考慮するとよい。具体的には、試験温度の一つとして、当該最高温度を採用することが好ましい。また、この最高温度の上下の温度を少なくとも一つずつ試験温度として採用することが好ましい。例えば、最高温度の-5℃以内の温度と、最高温度の+5℃以内の温度とを試験温度として採用することが好ましい。更に好ましくは、この最高温度と、最高温度の上下の温度とを含む、少なくとも3つの温度を試験温度として採用するとよい。もちろん、舗装材の敷設予定場所の路面の最高温度があらかじめ特定されている場合は、その最高温度1点のみを試験温度として採用し、この最高温度のみに対応する変形率を取得してもよい。このように、舗装材の敷設予定場所の路面において想定される最高温度を考慮して試験温度を設定することで、最高温度時の変形特性を取得し、最高温度における、外的要因の舗装材の表面への影響、特に起こりうる変形の最大量を評価することが可能となる。
【0057】
舗装材を模した試験片を用いて変形率又は変形率の温度依存性を取得した場合、これらに基づいて、外的要因(例えば、路盤材などの舗装材下の部材の膨張)に基づく敷設後の舗装材の表面の変位量を予測することができる(予測工程の一例)。敷設後の舗装材の表面の変位量を予測することにより、敷設後の舗装材の表面の変位量があらかじめ定めた閾値(例えば、舗装後の道路の要求品質における基準値や法令等に定められた基準値)以内になるように舗装材を敷設することができる。例えば、敷設後の舗装材の表面の変位量があらかじめ定めた閾値となるように、アスファルト系舗装材などの舗装材の厚さや舗装材の組成を調整することができるようになる。また、路盤材の組成を調整して路盤材の予測膨張量(予測される膨張量)を調整することもできるようになる。
【0058】
舗装材が路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材である場合を例示して、路盤材が膨張する場合における、敷設後のアスファルト系舗装材の表面の変位量を予測する方法を説明すると以下のとおりである。
【0059】
アスファルト系舗装材の温度が温度Taである場合における舗装材の表面の変位量の予測値yは、次式(3)のごとく、式(2)で示した関数α(T)に温度Taを代入した値に舗装材下の部材(例えば、路盤材)の局所的な予測膨張量xを乗じて求めることができる。
【0060】
y=α(Ta)×x・・・(3)
【0061】
なお、舗装材下の部材の局所的な予測膨張量の算出に用いる水浸膨張試験の方法に関しては方法を問わない。例えば舗装材が路盤材の上に敷設されるアスファルト系舗装材であり、路盤材(下層路盤である場合を含む)が骨材としてスラグ(製鋼スラグ)を含む場合、路盤材の局所的な予測膨張量は、例えばJIS A 5015に規定される道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験(100日間実施)を行って予想することができる。なお、水浸膨張試験の温度と日数は、必要に応じて上記規定に定める値から変更(調整)してもよい。水浸膨張試験は、例えば水温80℃で40日間の連続加速水浸膨張試験として行ってもよい。
【実施例0062】
以下では実施例を説明する。
【0063】
実施例1では、舗装材がアスファルト系舗装材であり、骨材としてスラグを含む路盤材上に層厚(厚さ)50mmで敷設される場合を想定して、舗装材の表面の変形特性を取得する。以下の説明では、実施例1におけるアスファルト系舗装材の組成(配合)を組成Aと記載する。また、舗装材の敷設予定場所の路面の最高温度(環境温度)を70℃と想定して舗装材の表面の変位量を予測する。実施例1では、敷設後の舗装材の表面の変位量が1.2mm以下(あらかじめ定めた閾値の一例)となる場合を出荷基準(アスファルト系舗装材としての品質基準)における合格とし、1.2mmを超える場合を不合格(不良)と判定する。
【0064】
本実施例において、アスファルト系舗装材に含まれる骨材の最大粒径(最大直径)は19mmである。
【0065】
本実施例では、路盤材の層厚を200mmと想定した。また、路盤材として、予測される局所的な最大の膨張率(予測膨張量の一例)が0.92%の物を用いた。本実施例において想定する、舗装材としてのアスファルト系舗装材を変形させる外的要因は路盤材の膨張である。
【0066】
なお、本実施例において、局所的な最大の膨張量は、上述のごとくJIS A 5015に規定される水浸膨張試験の結果から推定した。具体的には、各ロット又はグレード(以下、単にロットと記載する)の路盤材に関し、水浸膨張試験を複数回実施し、各試験によって求めた膨張量を膨張率に換算した。そして、ロット平均の膨張率Vaveとロットの標準偏差σとを求め、次式(4)に示す経験式(実績から推定したもの)に当てはめて、局所的な最大の膨張率Vmaxを求めた。
【0067】
Vmax=Vave+5σ・・・(4)
【0068】
本実施例では、上記のように路盤材の層厚を200mmと想定している。したがって、路盤材において予測される局所的な最大の膨張量は、路盤材の層厚200mmに上記の最大の膨張率0.92%を乗じて、1.84mmであると予測される。
【0069】
アスファルト系舗装材に含まれる骨材の最大粒径が19mmであることを考慮して、評価用の試験片は、1辺が300mm(骨材の最大粒径である19mmの5倍を超える長さ)の正方形とした。また、試験片の厚さは、想定する舗装材の敷設条件(厚さ50mmでの敷設を想定)に対応させて50mmとした。
【0070】
貫入試験には、
図1に示す構成の試験装置を用いた。まず、恒温槽である収容容器内の枠体に試験片を保持させた。なお、枠体に保持させる前の試験片及び収容容器内の温度(本実施例における試験温度)は、あらかじめ20℃に温度調節している。そして、保持された試験片の下面に円柱状の押圧部材の上面を当接させた。さらに、押圧部材を、鉛直方向に沿って上方に向けて押し上げ、押圧部材を試験片に押し付けた。なお、押圧部材の直径は40mmとした。また、貫入速度は1mm/分とし、押し付け量は4mmとした。そして、試験片の上面に形成された凸部の高さを計測した。凸部の高さは、レーザー変位計で計測した。そして、押し付け量(4mm)と、計測した凸部の高さとに基づいて、試験温度が20℃である場合の変形率を求めた。
【0071】
上記と同様にして、枠体に保持させる前の試験片及び収容容器内の温度を30℃から80℃まで10℃ずつ変更しながら、各試験温度で貫入試験を行い、各試験温度における変形率を求めた。
【0072】
上述の
図3のグラフは、本実施例における20℃から80℃の各試験温度における変形率をプロットしたものである。
【0073】
図3に示す変形率(α)と試験温度(T)との関係から、更に、変形率の温度依存性として、関数α(T)を求めた。関数α(T)は、最小二乗法により変形率(α)と試験温度(T)との関係を一次関数で近似して求めた。本実施例における関数α(T)は、定数aが-0.0079で、定数Cが1.0221であった。本実施例における関数α(T)を次式(5)に示す。
【0074】
α(T)=-0.0079T+1.0221・・・(5)
【0075】
本実施例では、舗装材の敷設予定場所の路面の最高温度を70℃と想定しているため、上式(5)より、路面の最高温度における変形率は0.4691と予測される。
【0076】
上記のように予測した舗装材の変形率に、路盤材の局所的な最大の膨張量(1.84mm)を予測膨張量として乗ずると、舗装材の表面の変位量の予測値(約0.86mm)を得ることができる(式3参照)。この予測値(約0.86mm)は、上記の出荷基準(舗装材の表面の変位量が1.2mm以下)に照らし、合格と判定される。
【0077】
実施例1に関し以上で説明した結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
実施例2から5及び比較例1、2では、アスファルト系舗装材の組成又は層厚を変更し、その他は実施例1と同様にしてそれぞれ変化率及び舗装材の表面の変位量の予測値を求めた。これら結果を併せて表1に示す。
【0080】
実施例2、3におけるアスファルト系舗装材の組成は実施例1と同様に組成Aとした。実施例4、5及び比較例1におけるアスファルト系舗装材の組成は組成Bとした。比較例2におけるアスファルト系舗装材の組成は組成Cとした。ここで、組成AからCは、骨材の粒度分布(粗粒含有率)にそれぞれ差がある。骨材の粒度(粗粒含有率)は、組成C、組成B、組成Aの順に小さい。
【0081】
実施例4及び比較例2では、実施例1と同様にアスファルト系舗装材の層厚を50mmとした。実施例2、5では、実施例1と異なり、アスファルト系舗装材の層厚を40mmとした。また、実施例3及び比較例1では、実施例1と異なり、アスファルト系舗装材の層厚を30mmとした。
【0082】
なお、実施例2から5及び比較例1、2について、舗装材の敷設予定場所の路面の最高温度は実施例1と同様に70℃と想定した。また、路盤材は実施例1の場合と同じである。
【0083】
実施例2から5及び比較例1、2について、合格又は不合格(不良)の判定基準も実施例1と同様である。これら判定結果も併せて表1に示す。
【0084】
実施例1から5は、舗装材の表面の変位量の予測値が1.2mm未満であるため合格と判定される。
【0085】
表1に示す通り、比較例1、2では、舗装材の表面の変位量の予測値が1.2mmを超えているため不合格と判定される。比較例1、2の結果より、比較例1、2で用いた舗装材は、その組成を変更(例えば、骨材の粗粒含有率を低減)して変位が生じにくいものに改善したり、想定する舗装材の敷設条件を変更してより厚い層厚で敷設する条件変更を行ったりする必要があることがわかる。また、比較例1、2で想定した舗装材の厚さ(層厚)や組成に対応させて、路盤材の膨張量が小さくなるように路盤材の組成を調整(例えば、未滓化の石灰や晶出CaOなどの量を少なくする調整)する必要があることがわかる。想定する舗装材の敷設条件の変更や路盤材の組成の調整は同時に行ってもよい。
【0086】
このように、舗装材の表面の変形特性を取得すれば、舗装材の表面の変形特性を加味して舗装材を敷設する舗装材の施工方法を実現することができる。具体的には、道路に舗装材を敷設する場合に、舗装材を、舗装後に変形が生じにくい厚さや組成にあらかじめ調整して舗装材を敷設することができるようになる。また、路盤材について組成の調整を行うこともできるようになる。
【0087】
以上のようにして、本実施形態に係る舗装材の評価方法及び舗装材の施工方法を提供することができる。
【0088】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、本実施形態に係る舗装材の評価方法の一例として、
図1において、板面が水平面に沿うようにして試験片Pの外縁を固定した状態で、試験片Pの下面に押圧部材3を押し付ける場合を例示して説明した。しかし、本実施形態に係る舗装材の評価方法では、試験片Pの下面に押圧部材3を押し付ける場合に限られない。
【0089】
本実施形態に係る舗装材の評価方法では、
図4に示すように、試験片Pの上面に押圧部材3を押し付けてもよい。ただし、この場合、試験片Pが自重で下方に凸になるように変形する場合がある。そのため、試験片Pを枠体2に固定したのち速やかに計測を開始し、また計測を終えることが好ましい。例えば、貫入試験は1分以内に開始することが好ましい。特にCBR試験機を流用して貫入試験を行う場合は、恒温槽や水槽を用いて試験片の温度調整をすることが難しい。そのため、セットしてから可能な限り素早く(例えば1分以内に)貫入試験を開始することを要する。
【0090】
また、本実施形態に係る舗装材の評価方法では、板面が水平面と交差するようにして試験片Pの外縁を固定した状態で、試験片Pの板面に押圧部材3を押し付けるようにしてもよい。
【0091】
(2)上記実施形態では、評価される舗装材がアスファルト系舗装材である場合を例示して説明したが、評価される舗装材はアスファルト系舗装材に限られない。例えば、評価される舗装材が、路床上に敷設される路盤材(アスファルト系舗装材の下に敷設される路盤材)であってもよい。
【0092】
なお、舗装材が路盤材の場合は、温度による物性の変化が少ない(温度による影響が少ない)ため、舗装材として評価する場合における試験温度は室温のみ選択すれば足りる場合が多い。
【0093】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。