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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057961
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】直流絶縁抵抗監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240418BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01R27/02 E
G01R27/02 R
H02H3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164981
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】石崎 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深大
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 能康
【テーマコード(参考)】
2G028
5G142
【Fターム(参考)】
2G028BB06
2G028BE05
2G028CG03
5G142AB01
5G142AC01
5G142BB02
(57)【要約】
【課題】直流絶縁抵抗監視システムにおいて、高感度な電流測定手段が不要で、測定結果が外部ノイズの影響を受けずに活線で配電系統の直流絶縁抵抗を監視する。
【解決手段】接地形計器用変圧器の中性点用開閉器により開閉される絶縁用コンデンサと、前記絶縁用コンデンサを充電する直流電源と、前記直流電源と前記絶縁用コンデンサとの接続を開閉する直流電源開閉器と、前記中性点用開閉器と前記直流電源開閉器の開閉状態をそれぞれ制御する開閉制御部と、前記絶縁用コンデンサの電圧信号を測定する電圧測定部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統の直流絶縁抵抗を測定して監視する直流絶縁抵抗監視システムであって、
接地形計器用変圧器と、
前記接地形計器用変圧器の中性点開閉器と、
前記中性点用開閉器により開閉される絶縁用コンデンサと、
前記絶縁用コンデンサを充電する直流電源と、
前記直流電源と前記絶縁用コンデンサとの接続を開閉する直流電源開閉器と、
前記中性点用開閉器と前記直流電源開閉器の開閉状態をそれぞれ制御する開閉制御部と、
前記絶縁用コンデンサの電圧信号を測定する電圧測定部と、
を有することを特徴とする直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項2】
前記接地形計器用変圧器の中性点と接地の間に前記絶縁用コンデンサが挿入されており、前記接地形計器用変圧器の前記中性点が前記絶縁用コンデンサで直流的に絶縁されており、
前記開閉制御部は、
前記直流電源開閉器を開状態にして前記絶縁用コンデンサを前記直流電源で一定の値に充電した後で、前記直流電源開閉器を閉状態にして前記直流電源を切り離し、
前記電圧測定部は、
前記配電系統の漏れ抵抗によって前記絶縁用コンデンサの前記電圧信号が低下する減衰時定数を測定することにより、前記配電系統の前記直流絶縁抵抗を測定することを特徴とする請求項1に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項3】
前記電圧信号の前記減衰時定数と前記絶縁用コンデンサの静電容量を用いて前記漏れ抵抗の漏れ抵抗値を計算する漏れ抵抗値計算部と、
前記漏れ抵抗値を表示する漏れ抵抗値表示部と、
を更に有することを特徴とする請求項2に記載の高圧配電系統の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項4】
前記漏れ抵抗値計算部は、
前記電圧信号の前記減衰時定数を前記絶縁用コンデンサの前記静電容量で除することにより前記漏れ抵抗値を計算することを特徴とする請求項3に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項5】
前記絶縁用コンデンサの前記静電容量は、1μFから10μFの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項6】
前記配電系統の前記直流絶縁抵抗を測定する際に、
前記開閉制御部は、
前記中性点開閉器と前記直流電源開閉器を開状態にして前記絶縁コンデンサを充電し、前記絶縁コンデンサを充電した後に前記直流電源開閉器を閉状態し、
前記電圧測定部は、
前記絶縁コンデンサの残留電圧をリークさせたときの前記電圧信号から電圧変化率を計算し、
前記漏れ抵抗値計算部は、
前記電圧変化率から前記漏れ抵抗値を計算し、
前記開閉制御部は、
前記漏れ抵抗値表示部により前記漏れ抵抗値を表示した後に前記中性点開閉器を閉状態にして、前記直流絶縁抵抗の測定を完了させることを特徴とする請求項3に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項7】
前記配電系統は、
特高変圧器、高圧配電盤、高圧受電盤、低圧盤及び高圧変圧器を有し、
前記高圧配電盤は前記接地形計器用変圧器を備えることを特徴とする請求項1に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項8】
前記絶縁用コンデンサの過電圧を抑制するための過電圧抑制手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項9】
前記過電圧抑制手段は、ツェナーダイオード又は酸化亜鉛形非線形抵抗で構成されることを特徴とする請求項8に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【請求項10】
前記中性電用開閉器は、常時閉接点で構成されることを特徴とする請求項1に記載の直流絶縁抵抗監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流絶縁抵抗監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配電系統の直流絶縁抵抗を測定する方法としては、配電系統を停電し、直流高圧電源を接続して、漏れ電流を測定する方法が一般的であった。これを改善するための直流絶縁抵抗監視システムとして、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、配電系統に接続されている接地形計器用変圧器の1次側中性点をコンデンサで直流的に絶縁し、その中性点に直流電源を接続して、流れる漏れ電流を測定することで、活線状態で配電系統の直流絶縁抵抗を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-55870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の直流絶縁抵抗監視システムでは、微小な漏れ電流を測定するための高感度な電流測定手段が必要である。また、測定結果が外部ノイズの影響を受けやすい。
【0006】
本発明の目的は、直流絶縁抵抗監視システムにおいて、高感度な電流測定手段が不要で、測定結果が外部ノイズの影響を受けずに活線で配電系統の直流絶縁抵抗を監視することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の直流絶縁抵抗監視システムは、配電系統の直流絶縁抵抗を測定して監視する直流絶縁抵抗監視システムであって、接地形計器用変圧器と、前記接地形計器用変圧器の中性点開閉器と、前記中性点用開閉器により開閉される絶縁用コンデンサと、前記絶縁用コンデンサを充電する直流電源と、前記直流電源と前記絶縁用コンデンサとの接続を開閉する直流電源開閉器と、前記中性点用開閉器と前記直流電源開閉器の開閉状態をそれぞれ制御する開閉制御部と、前記絶縁用コンデンサの電圧信号を測定する電圧測定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、直流絶縁抵抗監視システムにおいて、高感度な電流測定手段が不要で、測定結果が外部ノイズの影響を受けずに活線で配電系統の直流絶縁抵抗を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の直流絶縁抵抗監視システムを示す図である。
図2】実施例1の直流絶縁抵抗監視システムの絶縁コンデンサの電圧波形を示す図である。
図3】実施例1の直流絶縁抵抗監視システムの絶縁コンデンサのもう一つの電圧波形を示す図である。
図4】実施例1の直流絶縁抵抗監視システムで、監視中に配電系統に一線地絡が発生したときの絶縁コンデンサの電圧波形を示す図である。
図5】実施例1の直流絶縁抵抗監視システムで、監視中に配電系統に一線地絡が発生したときの相電圧波形を示す図である。
図6】実施例1の直流絶縁抵抗監視システムで、監視中に配電系統に一線地絡が発生したときの接地形計器用変圧器で測定した系統電圧の零相電圧波形を示す図である。
図7】実施例2の直流絶縁抵抗監視システムを示す図である。
図8】本発明の動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施する上で好適となる実施例について図面を用いて説明する。尚、下記はあくまでも実施の例に過ぎず、発明の内容が下記具体的態様に限定されるものではない。本発明は、下記態様を含めて種々の態様に変形することが無論可能である。以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例0011】
実施例1について図1から図6を用いて説明する。
【0012】
まず、図1を参照して、実施例1の直流絶縁抵抗監視システムについて説明する。
直流絶縁抵抗を測定する配電系統は、特高変圧器1、高圧配電盤2、高圧受電盤3、低圧盤4及び高圧変圧器5から構成される。高圧配電盤2は接地形計器用変圧器10を備える。
【0013】
接地形計器用変圧器10の中性点100と接地の間に絶縁用コンデンサ12を挿入し、中性点開閉器11を絶縁用コンデンサ12に並列に接続する。また、直流電源13を、直流電源開閉器14を介して絶縁用コンデンサ12に接続する。
【0014】
絶縁用コンデンサ12の電圧信号を測定するために、電圧測定部15を備える。電圧信号は漏れ抵抗値計算部102に送られ、電圧信号の減衰時定数τを絶縁用コンデンサ12の静電容量Cで除することにより漏れ抵抗値Rを計算する。漏れ抵抗値は漏れ抵抗値表示部103に転送されて表示される。開閉制御部101は中性点開閉器11と直流電源開閉器14の開閉状態をそれぞれ制御する。
【0015】
図2は、絶縁用コンデンサ12の電圧波形を示す図である。
図2に示すように、開閉制御部101により中性点開閉器11をONにすることにより、通常状態から直流絶縁抵抗測定状態に移行する。
【0016】
絶縁用コンデンサ12の電圧波形には、商用周波数の誘導電圧が重畳するが、適切な区間を設定して移動平均するか、ローパスフィルタを通すことによりマクロな電圧変化を計算することができる。
【0017】
その時定数τは絶縁用コンデンサ12の静電容量Cと高圧配電系統の漏れ抵抗Rの積で決まる。このため、時定数τが分かれば配電系統の漏れ抵抗値を計算することができる。漏れ抵抗値計算部102で計算された漏れ抵抗値は漏れ抵抗値表示部103で表示される。その後、開閉制御部101により中性点開閉器11をOFFにすることにより直流絶縁抵抗測定が完了して直流絶縁抵抗測定状態が終了する。
【0018】
図3は、高圧配電系統の漏れ抵抗Rが大きい場合の絶縁用コンデンサ12の電圧波形である。
図3に示すように、開閉制御部101により中性点開閉器11をONにすることにより、通常状態から直流絶縁抵抗測定状態に移行する。
【0019】
放電時定数τが大きくなるため、絶縁用コンデンサ12の電圧波形はほぼ一定の値を示す。
【0020】
以上より、絶縁用コンデンサ12の電圧変化を測定することにより、高感度な電流測定手段を備えなくても、高圧配電系統の漏れ抵抗値Rの変化を活線で監視することができる。また、絶縁用コンデンサ12の電圧波形は外部ノイズの影響を受けにくいため、正確に高圧配電系統の漏れ抵抗値を測定することができる。
【0021】
図4は、直流絶縁抵抗を測定中の時刻2秒において、高圧配電系統で一線地絡が発生した場合の、絶縁用コンデンサ12の電圧波形を示す。一線地絡が発生すると、絶縁コンデンサ12の電圧が-700Vに低下する。
【0022】
図5は、系統の相電圧波形で一線地絡が発生している時刻2秒から2.1秒の間は、地絡相の電圧が低下し健全相の電圧がおよそ1.7倍に増加する。
【0023】
図6は、接地形計器用変圧器で測定した零相電圧波形を示す。零相電圧は、絶縁用コンデンサ12を短絡している通常状態の波形と同じであり、直流絶縁抵抗を測定している途中で、高圧配電系統で一線地絡が発生しても、その事故検出が可能である。
【0024】
この状態は、絶縁用コンデンサ12の静電容量を1μF~10μFに設定することで実現できることを回路解析で確認した。絶縁用コンデンサ12の静電容量が1μF以下では、絶縁用コンデンサ12のリアクタンスが大きくなる。その結果、接地形計器用変圧器10と絶縁用コンデンサ12の直列回路における接地形計器用変圧器10の電圧分担率が小さくなるため、零相電圧信号が小さくなって、地絡が検出できなくなる。
【0025】
一方、絶縁コンデンサ12の静電容量が10μF以上では、絶縁コンデンサ12の電圧低下の時定数τが大きくなりすぎて、配電系統の漏れ抵抗値Rの変化が測定しにくくなる。このため、両者のトレードオフとして絶縁用コンデンサ12の静電容量Cを1μF~10μFの範囲に設定することが適切である。
【0026】
また、絶縁コンデンサ12の充電電圧を10V程度に設定すれば、接地形計器用変圧器の10の偏磁を含め、他のシステムへの影響が無視できることを確認した。
【0027】
図8を参照して、配電系統の直流絶縁抵抗を測定する際の動作を説明する。
最初に、開閉制御部101により中性点開閉器11をON(開状態)にする(ステップ801)。次に、開閉制御部101により直流電源開閉器をON(開状態)する(ステップ802)。
【0028】
次に、絶縁コンデンサを充電する(ステップ803)。次に、開閉制御部101により直流電源開閉器をOFF(閉状態)にする(ステップ804)。
【0029】
次に、電圧測定部15により絶縁コンデンサ12の残留電圧をリークさせる(ステップ805)。次に、電圧測定部15により絶縁コンデンサ12の残留電圧をリークさせたときの電圧変化を記憶する(ステップ806)。
【0030】
次に、電圧測定部15により絶縁コンデンサ12の残留電圧をリークさせたときの電圧信号から電圧変化率を計算する(ステップ807)。次に、漏れ抵抗値計算部102により電圧変化率から漏れ抵抗値を計算する(ステップ808)。次に、漏れ抵抗値表示部103により漏れ抵抗値を表示する(ステップ809)。
【0031】
最後に、開閉制御部101により中性点開閉器11をOFF(開状態)にして、直流絶縁抵抗の測定を完了させる(ステップ810)。
【0032】
実施例1によれば、直流絶縁抵抗監視システムにおいて、高感度な電流測定手段が不要で、測定結果が外部ノイズの影響を受けずに活線で配電系統の直流絶縁抵抗を監視することができる。
【実施例0033】
図7を参照して、実施例2の直流絶縁抵抗監視システムについて説明する。
図7に示す実施例2が図1に示す実施例1と異なる点は、絶縁用コンデンサ12の過電圧を抑制するための過電圧抑制手段16を新たに追加した点である。その他の構成は、図1に示す実施例1と同じなのでその説明は省略する。過電圧抑制手段16は、例えば、ツェナーダイオードや酸化亜鉛形非線形抵抗などにより構成される。
【0034】
実施例2によれば、定格電圧が低いコンデンサを絶縁用コンデンサ12に適用することが可能になる。
【実施例0035】
実施例3の直流絶縁抵抗監視システムについて説明する。
実施例3では、中性点開閉器11をB接点(常時閉)で構成している。
その他の構成は、図1に示す実施例1と同じなのでその説明は省略する。
【0036】
実施例3によれば、中性点開閉器11の操作回路が故障しても、接地側計器用変圧器10の中性点が接地されるため、配電系統の一線地絡を検出する機能を維持することが可能になる。
【0037】
上記実施例では、計器用変圧器の中性点をコンデンサで直流的に絶縁し、そのコンデンサを直流電源で一定の値に充電した後で、直流電源を切り離し、配電系統の漏れ抵抗によってコンデンサの電圧が低下する時定数を測定することにより配電系統の直流絶縁抵抗を測定する。
【0038】
上記実施例によれば、直流絶縁抵抗監視システムにおいて、高感度な電流測定手段が不要で、測定結果が外部ノイズの影響を受けずに活線で配電系統の直流絶縁抵抗を監視することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 特高変圧器
2 高圧配電盤
3 高圧受電盤
4 低圧盤
5 高圧変圧器
10 接地形計器用変圧器
11 中性点開閉器
12 絶縁用コンデンサ
13 直流電源
14 直流電源開閉器
15 電圧測定部
16 過電圧抑制手段
101 開閉制御部
102 漏れ抵抗値計算部
103 漏れ抵抗値表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8