(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057967
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】移動体給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20240418BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240418BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20240418BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240418BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/122
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164991
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA01
5G503FA06
5G503GB09
5H105BA01
5H105BB07
5H105CC03
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE14
5H125AA11
5H125AB01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC25
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】移動体への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現すること。
【解決手段】走行路R上を走行する移動体50の受電電極60へと交流電力を無線で伝送可能な移動体給電システム1Aは、床面Fから立ち上がるように設けられた壁本体20Aと、壁本体20Aの厚さ方向Dtの一方側の壁側面20sに取り付けられ、受電電極60と厚さ方向Dtに隙間Kを開けて対向したときに、受電電極60と電界結合する送電電極30と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路上を走行する移動体の受電電極へと交流電力を無線で伝送可能な移動体給電システムであって、
床面から立ち上がるように設けられた壁本体と、
前記壁本体の厚さ方向の一方側の壁側面に取り付けられ、前記受電電極と前記厚さ方向に隙間を開けて対向したときに、前記受電電極と電界結合する送電電極と、を備える
ことを特徴とする移動体給電システム。
【請求項2】
前記送電電極に対し、前記厚さ方向の他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分が、絶縁性材料のみによって形成されている
請求項1に記載の移動体給電システム。
【請求項3】
前記壁側面から前記厚さ方向の一方側に延び、絶縁性材料から形成されたスペーサをさらに備え、
前記送電電極は、前記スペーサに支持されている
請求項2に記載の移動体給電システム。
【請求項4】
前記壁本体は、
前記床面から上方に立ち上がるように設けられた下地材と、
前記下地材に対して前記厚さ方向の少なくとも一方側に固定された壁仕上材と、を備え、
前記下地材、及び前記壁仕上材が絶縁性材料から形成されている
請求項2又は3に記載の移動体給電システム。
【請求項5】
前記壁本体において、前記送電電極に対して前記厚さ方向の他方側に、導電性部材として設けられ、前記壁側面と平行な面に沿って延びる板状で、導電性材料から形成されたグランド部材をさらに備えている
請求項2又は3に記載の移動体給電システム。
【請求項6】
前記壁本体は、
前記床面から上方に立ち上がるように設けられた下地材と、
前記下地材に対して前記厚さ方向の少なくとも一方側に固定された壁仕上材と、を備え、
前記下地材が導電性材料から形成されるとともに、前記壁仕上材が絶縁性材料から形成されている
請求項2又は3に記載の移動体給電システム。
【請求項7】
前記定められた寸法が、40mmである
請求項2又は3に記載の移動体給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、電動カート、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)、等、電気エネルギーを動力に用いる移動体において、無線給電(ワイヤレス給電)により、外部からの給電を受けるものがある。このような移動体は、走行路に設けられた送電電極に対して対向する受電電極を備えている。受電電極は、送電電極から、例えば電界結合方式により、無線による電力供給を受けることができる。
例えば、特許文献1には、路面に沿った平面状の表面を有する第1送電電極、および第2送電電極を有する送電装置から、移動体が、交流電力を無線により受電する構成が開示されている。
【0003】
しかしながら、送電電極を走行路の路面に設置する場合、送電電極の表面上に、各種の誘電損失を伴う異物が載り、送電電極と受電電極との間における電力の伝送効率が影響を受けてしまうことがある。また、送電電極を走行路の路面に設置するには、路面を掘り起こして送電装置を埋設する必要があり設置に手間がかかる。もしくは、厚みを有する送電装置を設置することによって段差が生じ、移動体の走行を妨げる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、移動体への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現することが可能な、移動体給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の移動体給電システムは、走行路上を走行する移動体の受電電極へと交流電力を無線で伝送可能な移動体給電システムであって、床面から立ち上がるように設けられた壁本体と、前記壁本体の厚さ方向の一方側の壁側面に取り付けられ、前記受電電極と前記厚さ方向に隙間を開けて対向したときに、前記受電電極と電界結合する送電電極と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、送電電極を、壁本体の壁側面に設けることによって、送電電極上に誘電損失を伴う異物が載るのを抑えることができる。また、送電電極の設置に際しても、壁本体の壁側面に、送電電極を設ければよいため、設置に掛かる手間を抑えることができる。
したがって、移動体への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現することが可能な、移動体給電システムを提供することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、本発明の移動体給電システムは、前記送電電極に対し、前記厚さ方向の他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分が、絶縁性材料のみによって形成されている。
【0009】
このような構成によれば、送電電極に対して厚さ方向の他方側に設けられる導電性部材の影響によって、送電電極と受電電極との間における電力の伝送効率が低下するのを抑えることができる。その結果、例えば、送電電極と受電電極との隙間が大きい場合であっても、送電電極と受電電極との間における無線による電力の伝送を、効率良く行うことができる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の移動体給電システムは、前記壁側面から前記厚さ方向の一方側に延び、絶縁性材料から形成されたスペーサをさらに備え、前記送電電極は、前記スペーサに支持されている。
【0011】
このような構成によれば、壁本体の壁側面と送電電極との間に、絶縁性材料から形成されたスペーサを設けることで、送電電極に対し、厚さ方向の他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって形成することができる。これにより、送電電極に対して厚さ方向の他方側に設けられる導電性部材に対し、送電電極を、定められた寸法以上の間隔を隔てて配置することができる。
また、このようなスペーサを用いて送電電極を取り付けることで、壁本体の壁側面に対し、送電電極を容易に取り付けることができる。これにより、既設の壁本体に対し、スペーサ及び送電電極を後付けすることもでき、移動体給電システムを容易に構成することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、本発明の移動体給電システムは、前記壁本体が、前記床面から上方に立ち上がるように設けられた下地材と、前記下地材に対して前記厚さ方向の少なくとも一方側に固定された壁仕上材と、を備え、前記下地材、及び前記壁仕上材が絶縁性材料から形成されている。
【0013】
このような構成によれば、下地材及び壁仕上材が絶縁性材料から形成されることで、送電電極に対し、厚さ方向の他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって容易に形成することができる。
【0014】
本発明の一態様においては、本発明の移動体給電システムは、前記壁本体において、前記送電電極に対して前記厚さ方向の他方側に、導電性部材として設けられ、前記壁側面と平行な面に沿って延びる板状で、導電性材料から形成されたグランド部材をさらに備えている。
【0015】
このような構成によればグランド部材を備えることによって、グランド部材に対して厚さ方向の他方側に、他の導電性部材やコンクリート等の誘電体が存在する場合であっても、送電電極におけるインピーダンスが安定する。これにより、送電装置側と受電装置側とで、インピーダンスを容易に整合させることができる。
また、導電性部材としてのグランド部材を設ける場合であっても、送電電極に対し、厚さ方向の他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみで形成することによって、送電電極と受電電極との間における電力の伝送効率が低下するのを抑えることができる。
【0016】
本発明の一態様においては、本発明の移動体給電システムは、前記壁本体が、前記床面から上方に立ち上がるように設けられた下地材と、前記下地材に対して前記厚さ方向の少なくとも一方側に固定された壁仕上材と、を備え、前記下地材が導電性材料から形成されるとともに、前記壁仕上材が絶縁性材料から形成されている。
【0017】
このような構成によれば、下地材が導電性材料から形成される場合であっても、送電電極に対し、厚さ方向の他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみで形成することによって、送電電極と受電電極との間における電力の伝送効率が低下するのを抑えることができる。
【0018】
本発明の一態様においては、本発明の移動体給電システムは、前記定められた寸法が、40mmである。
【0019】
このような構成によれば、送電電極に対し、厚さ方向の他方側に40mm以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって形成することで、導電性部材の影響によって、送電電極と受電電極との間における電力の伝送効率が低下するのを有効に抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動体への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る移動体給電システムの構成を示す平面図である。
【
図2】
図1の移動体給電システムを構成する送電部を示す平断面図である。
【
図3】
図2の送電部を壁本体の厚さ方向から見た図である。
【
図4】
図2の送電部を、走行路の延伸方向から見た断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る移動体給電システムを構成する送電部を示す平断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る移動体給電システムを構成する送電部を示す平断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る移動体給電システムの検討例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明による移動体給電システムを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
発明の実施形態に係る移動体給電システムの構成を示す平面図を
図1に示す。
図2は、
図1の移動体給電システムを構成する送電部を示す平断面図である。
図3は、
図2の送電部を壁本体の厚さ方向から見た図である。
図4は、
図2の送電部を、走行路の延伸方向から見た断面図である。
【0024】
図1~
図4に示されるように、移動体給電システム1Aは、送電部10Aと、移動体50と、を備えている。
【0025】
移動体50は、床面F上に設定された走行路R上で、走行移動可能に構成されている。このような移動体50としては、例えば、ロボット、AGV、電動カート、電動フォークリフト、電気自動車等が挙げられる。
移動体50は、移動体本体51と、受電部55と、を備えている。
移動体本体51の下部には、走行路Rの延伸方向Drの前後に、それぞれ車輪52(
図4参照)が設けられている。車輪52は、移動体本体51に搭載されたモータ(図示無し)によって回転駆動される。
【0026】
受電部55は、移動体本体51の側面51sに設けられている。受電部55は、受電電極60を備え、送電部10Aから交流電力を無線で受電可能に構成されている。受電電極60は、第1受電電極61と、第2受電電極62と、を備えている。第1受電電極61、及び第2受電電極62は、水平面内で延伸方向Drに交差する側方を向いて設けられている。第1受電電極61、第2受電電極62は、それぞれ、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛等の導電性を有した金属板によって形成されている。第1受電電極61と、第2受電電極62とは、上下方向に間隔を開けて配置されている。第1受電電極61、第2受電電極62は、それぞれ延伸方向Drに所定長の長さを有している。
【0027】
図1に示すように、送電部10Aは、走行路Rが設けられた室Sの壁Wを形成する。送電部10Aは、壁本体20Aと、送電電極30と、スペーサ40と、を備えている。
【0028】
図4に示すように、壁本体20Aは、室Sの床面Fから上方に立ち上がっている。
図2、
図4に示すように、壁本体20Aは、下地材21Aと、壁仕上材22と、を備えている。
下地材21Aは、例えば、縦下地材21vと、横下地材21hと、を有している。縦下地材21vは、床面F上で、水平方向に間隔を開けて複数配置されている。横下地材21hは、互いに隣り合う縦下地材21v同士の間に架設されている。本実施形態において、下地材21A(縦下地材21v、及び横下地材21h)は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛等の等の導電性材料により形成されている。下地材21Aは、例えば、壁仕上材22の外周部に沿って延びる矩形枠状等、他の構成であってもよい。
壁仕上材22は、壁本体20Aの厚さ方向Dtの少なくとも一方側に配置されている。本実施形態において、壁仕上材22は、壁本体20Aの厚さ方向Dtの両側にそれぞれ配置されている。壁仕上材22は、下地材21Aに対して厚さ方向Dtの両側に取り付けられている。壁仕上材22は、例えば、木材、石膏系材料を用いたプラスターボード、ガラス、樹脂等の絶縁性材料から形成されている。壁仕上材22は、厚さ方向Dtに所定の厚さT1を有している。
このような壁本体20Aは、その一部を構成する下地材21Aが、導電性材料により形成されている。
尚、本実施形態を含む、本発明の複数の実施形態において、用いられる絶縁性材料は、伝送効率を考慮して、誘電正接の低いものが好ましい。さらに、絶縁性材料は、100kHzの交流電界において、誘電正接が0.001から0.005のものを用いるのが好ましい。
【0029】
図2~
図4に示されるように、送電電極30は、第1送電電極31と、第2送電電極32とを備えている。第1送電電極31、第2送電電極32は、それぞれ、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛等の導電性を有した金属板によって形成されている。第1送電電極31と、第2送電電極32とは、上下方向に間隔を開けて配置されている。第1送電電極31、及び第2送電電極32は、それぞれ、走行路Rの延伸方向Drに帯状に延びている。第1送電電極31、及び第2送電電極32は、それぞれ、延伸方向Drに所定長を有した電極部材33を、複数本接続することで形成されている。
図2、
図4に示すように、第1送電電極31は、第1受電電極61と厚さ方向Dtに隙間Kを開けて対向したときに、第1受電電極61と電界結合する。第2送電電極32は、第2受電電極62と厚さ方向Dtに隙間Kを開けて対向したときに、第2受電電極62と電界結合する。
【0030】
図2、
図3に示されるように、第1送電電極31、及び第2送電電極32は、回路部35を介して電源装置(図示無し)に接続されている。電源装置は、商用電源等から供給される交流電力を基に、例えば100kHz以上といった高周波の入力電力を生成する高周波電源を備えている。回路部35は、高周波電源で生成した高周波の入力電力を、整合回路(図示せず)、バラン(図示せず)を介して第1送電電極31と第2送電電極32とに入力する。
【0031】
送電電極30(第1送電電極31、第2送電電極32)は、壁本体20Aの厚さ方向Dtの一方側の壁側面20sに取り付けられている。本実施形態において、送電電極30は、壁側面20sに、スペーサ40を介して取り付けられている。スペーサ40は、木材、プラスターボード等の絶縁性材料から形成されている。スペーサ40は、壁側面20sから厚さ方向Dtの一方側に延びて、厚さ方向Dtに所定の厚さT2を有している。
本実施形態において、スペーサ40は、送電電極30の第1送電電極31、及び第2送電電極32が延びる延伸方向Drに間隔をあけて複数配置されている。スペーサ40は、延伸方向Drに連続して設けられていてもよい。また、スペーサ40は、壁側面20sに沿って延びるパネル状であってもよい。
【0032】
このような送電部10Aにおいて、
図2に示されるように、送電電極30(第1送電電極31、第2送電電極32)は、壁本体20Aに設けられた導電性部材である下地材21Aに対し、間隙G1を隔てて配置されている。この間隙G1の厚さ方向Dtにおける寸法は、壁仕上材22の厚さT1と、スペーサ40の厚さT2とを合わせたもの(T1+T2)となる。これにより、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法にわたる部分が、絶縁性材料のみによって形成されている。
この間隙G1の寸法は、40mm以上、200mm以下とするのが好ましい。さらに、間隙G1の寸法は、80mm以上、200mm以下とするのが好ましい。
【0033】
なお、上記したような送電部10Aは、走行路Rの全長にわたって設けてもよいが、走行路Rの全長のうちの一部に沿って配置してもよい。すなわち、走行路Rのうちの一部にが、送電部10Aが設けられた壁Wに沿って配置される。走行路Rを移動する移動体50は、送電部10Aが設けられた壁Wに沿った領域を走行する際に、送電部10Aからの無線による電力の給電を受ける。
【0034】
図2、
図4に示すように、移動体50は、送電部10Aに対向する領域で、受電部55の第1受電電極61、及び第2受電電極62が、送電電極30の、第1送電電極31、及び第2送電電極32に対し、厚さ方向Dtで隙間Kを隔てて対向する。このとき、走行路Rを走行する移動体50は、走行路Rの幅方向、すなわち厚さ方向Dtに、例えば100mmの誤差範囲内で位置ずれを生じうる。したがって、第1受電電極61、及び第2受電電極62と、第1送電電極31、及び第2送電電極32との隙間Kは、最大で100mm程度必要となる。
【0035】
第1受電電極61、及び第2受電電極62と、第1送電電極31、及び第2送電電極32が対向した状態で、送電部10Aの電源装置(図示無し)の高周波電源により、商用電源等から供給される交流電力を基に生成した高周波の入力電力が、回路部35を介して第1送電電極31と第2送電電極32とに入力される。すると、第1送電電極31と第1受電電極61、第2送電電極32と第2受電電極62との電界結合により、送電部10Aから受電部55へと、無線による電力の伝送がなされる。受電部55で受電した電力は、移動体50に設けられたバッテリー(図示無し)等に供給される。
【0036】
上述したような移動体給電システム1Aによれば、走行路R上を走行する移動体50の受電電極60へと交流電力を無線で伝送可能な移動体給電システム1Aであって、床面Fから立ち上がるように設けられた壁本体20Aと、壁本体20Aの厚さ方向Dtの一方側の壁側面20sに取り付けられ、受電電極60と厚さ方向Dtに隙間Kを開けて対向したときに、受電電極60と電界結合する送電電極30と、を備える。
このような構成によれば、送電電極30を、壁本体20Aの壁側面20sに設けることによって、送電電極30上に誘電損失を伴う異物が載るのを抑えることができる。また、送電電極30の設置に際しても、壁本体20Aの壁側面20sに、送電電極30を設ければよいため、設置に掛かる手間を抑えることができる。
したがって、移動体50への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現することが可能な、移動体給電システム1Aを提供することができる。
【0037】
また、移動体給電システム1Aは、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分が、絶縁性材料のみによって形成されている。
このような構成によれば、送電電極30に対して厚さ方向Dtの他方側に設けられる導電性部材の影響によって、送電電極30と受電電極60との間における電力の伝送効率が低下するのを抑えることができる。その結果、例えば、送電電極30と受電電極60との隙間Kが大きい場合であっても、送電電極30と受電電極60との間における無線による電力の伝送を、効率良く行うことができる。
【0038】
また、移動体給電システム1Aは、壁側面20sから厚さ方向Dtの一方側に延び、絶縁性材料から形成されたスペーサ40をさらに備え、送電電極30は、スペーサ40に支持されている。
このような構成によれば、壁本体20Aの壁側面20sと送電電極30との間に、絶縁性材料から形成されたスペーサ40を設けることで、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって容易に形成することができる。これにより、送電電極30に対して厚さ方向Dtの他方側に設けられる導電性部材に対し、送電電極30を、定められた寸法以上の間隔を隔てて配置することができる。
また、このようなスペーサ40を用いて送電電極30を取り付けることで、壁本体20Aの壁側面20sに対し、送電電極30を容易に取り付けることができる。これにより、既設の壁本体20Aに対し、スペーサ40及び送電電極30を後付けすることもでき、移動体給電システム1Aを容易に構成することができる。
【0039】
また、壁本体20Aは、床面Fから上方に立ち上がるように設けられた下地材21Aと、下地材21Aに対して厚さ方向Dtの少なくとも一方側に固定された壁仕上材22と、を備え、下地材21Aが導電性材料から形成されるとともに、壁仕上材22が絶縁性材料から形成されている。
このような構成によれば、下地材21Aが導電性材料から形成される場合であっても、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみで形成することによって、送電電極30と受電電極60との間における電力の伝送効率が低下するのを抑えることができる。
【0040】
また、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に40mm以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって形成することで、導電性部材の影響によって、送電電極30と受電電極60との間における電力の伝送効率が低下するのを有効に抑えることができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る移動体給電システムを構成する送電部を示す平断面図を
図5に示す。以下の説明において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付し、その説明を省略することがある。
【0042】
図5に示されるように、移動体給電システム1Bは、送電部10Bと、上記第1実施形態と同様の構成の移動体50と、を備えている。
【0043】
本実施形態における送電部10Bは、壁本体20Bと、送電電極30と、スペーサ40と、を備えている。
【0044】
壁本体20Bは、室Sの床面Fから上方に立ち上がっている。壁本体20Bは、下地材21Bと、壁仕上材22と、を備えている。
本実施形態において、下地材21Bは、例えば、木材、石膏系材料を用いたプラスターボード、ガラス、樹脂等の絶縁性材料により形成されている。
壁仕上材22は、例えば、木材、石膏系材料を用いたプラスターボード、ガラス、樹脂等の絶縁性材料から形成されている。
このような壁本体20Bは、その全体が絶縁性材料によって形成されており、導電性材料を含んでいない。壁本体20Bは、厚さ方向Dtに、所定の厚さT3を有している。
【0045】
送電電極30(第1送電電極31、第2送電電極32)は、壁本体20Bの厚さ方向Dtの一方側の壁側面20sに取り付けられている。本実施形態において、送電電極30は、壁側面20sに、スペーサ40を介して取り付けられている。スペーサ40は、木材、プラスターボード、ガラス、樹脂等の絶縁性材料から形成されている。スペーサ40は、厚さ方向Dtに所定の厚さT2を有している。
【0046】
このような送電部10Bにおいて、壁本体20Bの全体が絶縁性材料によって形成されているので、例えば、壁本体20Bに対し、厚さ方向Dtの他方側の壁側面20tに沿うように導電性部材が配置されたとしても、送電電極30(第1送電電極31、第2送電電極32)は、壁側面20tに対し、間隙G2を隔てて配置されている。この間隙G2の厚さ方向Dtにおける寸法は、壁本体20B全体の厚さT3と、スペーサ40の厚さT2とを合わせたもの(T3+T2)となる。これにより、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法にわたる部分(間隙G2)が、絶縁性材料のみによって形成されている。
この間隙G2の寸法は、40mm以上とするのが好ましい。さらに、間隙G2の寸法は、80mm以上とするのが好ましい。
【0047】
上述したような移動体給電システム1Bによれば、上記第1実施形態と同様、送電電極30を、壁本体20Bの壁側面20sに設けることによって、送電電極30上に誘電損失を伴う異物が載るのを抑えることができる。また、送電電極30の設置に際しても、壁本体20Bの壁側面20sに、送電電極30を設ければよいため、設置に掛かる手間を抑えることができる。
したがって、移動体50への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現することが可能な、移動体給電システム1Bを提供することができる。
【0048】
また、移動体給電システム1Bは、壁本体20Bは、床面Fから上方に立ち上がるように設けられた下地材21Bと、下地材21Bに対して厚さ方向Dtの少なくとも一方側に固定された壁仕上材22と、を備え、下地材21B、及び壁仕上材22が絶縁性材料から形成されている。
このような構成によれば、下地材21B及び壁仕上材22が絶縁性材料から形成されることで、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって容易に形成することができる。
【0049】
また、壁本体20Bの壁側面20sと送電電極30との間に、絶縁性材料から形成されたスペーサ40を設けることで、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって形成することができる。これにより、送電電極30に対して厚さ方向Dtの他方側に設けられる導電性部材に対し、送電電極30を、定められた寸法以上の間隔を隔てて配置することができる。
【0050】
(第3実施形態)
本発明の第2実施形態に係る移動体給電システムを構成する送電部を示す平断面図を
図6に示す。以下の説明において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付し、その説明を省略することがある。
【0051】
図6に示されるように、移動体給電システム1Cは、送電部10Cと、上記第1、第2実施形態と同様の構成の移動体50と、を備えている。
【0052】
本実施形態における送電部10Cは、上記第2実施形態と同様の壁本体20Bと、送電電極30と、スペーサ40と、グランド部材70とを備えている。
【0053】
壁本体20Bは、室Sの床面Fから上方に立ち上がっている。壁本体20Bは、下地材21Bと、壁仕上材22と、を備えている。
本実施形態において、下地材21Bは、例えば、木材、石膏系材料、ガラス、樹脂を用いたプラスターボード等の絶縁性材料により形成されている。
壁仕上材22は、例えば、木材、ガラス、樹脂、石膏材系材料を用いたプラスターボード等の絶縁性材料から形成されている。
このような壁本体20Bは、その全体が絶縁性材料によって形成されており、導電性材料を含んでいない。壁本体20Bは、厚さ方向Dtに、所定の厚さT3を有している。
【0054】
送電電極30(第1送電電極31、第2送電電極32)は、壁本体20Bの厚さ方向Dtの一方側の壁側面20sに取り付けられている。本実施形態において、送電電極30は、壁側面20sに、スペーサ40を介して取り付けられている。スペーサ40は、木材、プラスターボード等の絶縁性材料から形成されている。スペーサ40は、厚さ方向Dtに所定の厚さT2を有している。
【0055】
グランド部材70は、壁本体20Bに対し、厚さ方向Dtの他方側の壁側面20tに沿って設けられている。グランド部材70は、壁側面20tと平行な面に沿って延びる板状である。グランド部材70は、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛等の導電性を有した金属板によって形成されている。このようにして、壁本体20Bにおいて、送電電極30に対して厚さ方向Dtの他方側に、導電性部材としてのグランド部材70が設けられている。グランド部材70は、厚さ方向Dtから見た際に、例えば、平面視長方形状に形成されている。グランド部材70は、厚さ方向Dtから見た際に、第1送電電極31と、第2送電電極32との双方に重なるように形成されている。
【0056】
このような送電部10Cにおいて、送電電極30(第1送電電極31、第2送電電極32)は、壁本体20Bの全体が絶縁性材料によって形成されているので、厚さ方向Dtの他方側の壁側面20tに沿うように配置された導電性部材としてのグランド部材70に対し、間隙G2を隔てて配置されている。この間隙G2の厚さ方向Dtにおける寸法は、壁本体20B全体の厚さT3と、スペーサ40の厚さT2とを合わせたもの(T3+T2)となる。これにより、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側の定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみによって容易に形成することができる。
この間隙G2の寸法は、40mm以上とするのが好ましい。さらに、間隙G2の寸法は、80mm以上とするのが好ましい。
【0057】
上述したような移動体給電システム1Cによれば、上記第1、第2実施形態と同様、送電電極30を、壁本体20Bの壁側面20sに設けることによって、送電電極30上に誘電損失を伴う異物が載るのを抑えることができる。また、送電電極30の設置に際しても、壁本体20Bの壁側面20sに、送電電極30を設ければよいため、設置に掛かる手間を抑えることができる。
したがって、移動体50への無線給電を、効率良く行うことができる構成を、容易に実現することが可能な、移動体給電システム1Cを提供することができる。
【0058】
また、移動体給電システム1Cは、壁本体20Bにおいて、送電電極30に対して厚さ方向Dtの他方側に、導電性部材として設けられ、壁側面20sと平行な面に沿って延びる板状で、導電性材料から形成されたグランド部材70を備えている。
このような構成によれば、グランド部材70を備えることによって、グランド部材70に対して厚さ方向Dtの他方側に、他の導電性部材やコンクリート等の誘電体が存在する場合であっても、送電電極30におけるインピーダンスが安定する。これにより、送電装置側と受電装置側とで、インピーダンスを容易に整合させることができる。
また、導電性部材としてのグランド部材70を設ける場合であっても、送電電極30に対し、厚さ方向Dtの他方側に定められた寸法以上の厚さにわたる部分を、絶縁性材料のみで形成することによって、送電電極30と受電電極60との間における電力の伝送効率が低下するのを抑えることができる。
【0059】
なお、上記第2、第3実施形態では、絶縁性材料のみによって形成された壁本体20Bの厚さT3が、間隙G2の厚さ方向Dtにおける寸法としての40mm以上、あるいは80mm以上を有する場合、スペーサ40を省略してもよい。その場合、送電電極30(第1送電電極31、及び第2送電電極32)は、壁本体20Bの壁側面20sに直接取り付ける。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0060】
(検討例)
上記実施形態で示したような構成について、シミュレーションによる検討を行ったので、その結果を以下に示す。
検討対象としては、壁本体として、2通りのものを用意した。
検討例1:壁本体の下地材を導電性材料である金属材料により形成し、厚さ21mmの絶縁性材料により形成した。壁仕上材の表面(壁側面)に、送電電極を取り付けた。
検討例2:壁本体の下地材を絶縁性材料とし、壁仕上材を、厚さ21mmの絶縁性材料により形成した。壁仕上材の表面(壁側面)に、送電電極を取り付けた。
検討例3:検討例2と同様の構成に加え、壁本体の厚さ方向において、送電電極と反対側に、導電性材料からなるグランド部材を取り付けた。
送電電極と受電電極との間の隙間Kを、50mm、100mmの2通りとした場合における、送電電極と受電電極との間における伝送効率ηmaxをシミュレーションにより得た。
【0061】
その結果、下地材が導電性材料からなる検討例1では、隙間Kが50mmの場合、伝送効率ηmaxが80%程度、隙間Kが100mmでは伝送効率ηmaxが75%程度であった。
これに対し、検討例2では、隙間Kが50mmの場合、伝送効率ηmaxが90%以上、隙間Kが100mmでは伝送効率ηmaxが85%以上であった。
また、グランド部材を備えた検討例3では、隙間Kが50mmの場合、伝送効率ηmaxが90%程度、隙間Kが100mmでは伝送効率ηmaxが80%程度であった。
このことから、壁本体の下地材が導電性材料からなる検討例1では、検討例2,3に対し、伝送効率が大幅に低下することがわかる。
【0062】
次に、検討例1~3のそれぞれにおいて、送電電極と、下地材との間隔を、21~100mmに変化させ、伝送効率ηmaxをシミュレーションした。なお、間隔が21mmの場合、送電電極は、壁本体の壁側面に直接取り付けた。間隔が21mmより大きい場合、送電電極は、絶縁性材料からなるスペーサを介して壁側面に取り付け、スペーサの厚さ方向における長さを調整することで、送電電極と下地材との間隔を調整した。
【0063】
その結果を
図7に示す。
図7に示されるように、間隔を21mmとして、送電電極を壁側面に取り付けていた場合であっても、高い伝送効率ηmaxを有していた検討例2,3では、間隔を40mm以上とすることにより、伝送効率ηmaxは85%以上となった。また、送電電橋を壁側面に取り付けた場合では、伝送効率ηmaxが低かった検討例1においても、間隔を40mm以上とすることにより、伝送効率ηmaxが85%以上となることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1A~1C 移動体給電システム 51s 側面
20A、20B 壁本体 60 受電電極
20s 壁側面 70 グランド部材
21A、21B 下地材 Dt 厚さ方向
22 壁仕上材 F 床面
30 送電電極 K 隙間
40 スペーサ R 走行路
50 移動体