(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057985
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/16 20060101AFI20240418BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240418BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20240418BHJP
F16D 129/04 20120101ALN20240418BHJP
【FI】
F16D65/16
F16D121:24
F16D125:40
F16D129:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165031
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
(72)【発明者】
【氏名】杉本 成
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA63
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA83
3J058AA87
3J058BA23
3J058CC07
3J058CC15
3J058CC22
3J058CC62
3J058CC77
3J058DD05
(57)【要約】
【課題】直動変換機構の配置の自由度を高めつつ、耐振動性の向上を図ること。
【解決手段】回転部(52)の回転軸方向において直動部(54)と伝達機構(36)の間に、回転部(52)を直動部(54)側から伝達機構(36)側に付勢する付勢部材(56)が配置され、付勢部材(56)は、回転部(52)と係合されている第1係合部と、第1係合部よりも伝達機構(36)側でハウジング(14)に係合されている第2係合部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、前記直動変換機構において前記伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に連動する摩擦部材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、
前記回転部の回転軸方向において前記摩擦部材と前記伝達機構との間に配置されている前記直動変換機構を格納するハウジングと、
前記回転軸方向において前記直動部と前記伝達機構の間に配置され、前記回転部と係合されている第1係合部と前記第1係合部よりも前記伝達機構側で前記ハウジングに係合されている第2係合部とを有し、前記回転部を前記直動部側から前記伝達機構側に付勢する付勢部材と、を備える、電動制動装置。
【請求項2】
前記回転軸方向における前記直動部と前記付勢部材との間に設けられ、前記回転体に対する前記摩擦部材の押圧荷重を検出する荷重センサと、
前記回転軸方向における前記直動部と前記荷重センサとの間に設けられ、前記押圧荷重に対応する前記回転部からの前記回転軸方向の力を前記荷重センサに伝達する伝達部材と、を備える、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記第2係合部は、前記ハウジングに対して回り止めされている、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、帯状の板バネであり、前記板バネと係合する前記ハウジングは円筒形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動制動装置。
【請求項5】
前記回転部は、その軸心と同心円筒形状の回転軸部を有し、
前記回転軸部の外周部分には、周方向に伸びる凹部または凸部が形成され、
前記付勢部材は、前記回転軸部が挿通される貫通孔が形成された板バネであり、
前記板バネの前記貫通孔の周縁部分が前記第1係合部である、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、帯状の板バネであり、
前記ハウジングに、前記板バネの両端部分とそれぞれ係合して、前記板バネの前記回転部との供回りを規制する凹部または凸部が形成されている、請求項3に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式ディスクブレーキの先行技術として特許文献1に示すものがあり、その先行技術に係る電動式ディスクブレーキの構成について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
キャリパの円筒形状のシリンダ部の奥側には、直動変換機構(特許文献1では推力発生機構と称される)における回転体(特許文献1では駆動スピンドルと称される)の鍔部を収容するアウタ側ケースが設けられている。アウタ側ケースの内壁面と回転体の鍔部との間には、回転体をキャリパの爪部の反対側(軸方向の他方側)に付勢する弾性部材が設けられている。弾性部材は、その弾性力によって軸方向の一方側から回転体の鍔部に圧接する。これにより、回転体が弾性部材の付勢力によってキャリパに対して軸方向へ移動不能に保持され、車輪からの振動による回転体の軸方向の変位を抑えて、直動変換機構の耐振動性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、弾性部材が摩擦部材側から伝達機構側に回転体の鍔部を付勢しているが、弾性部材は底面が摩擦部材側に設けられているアウタ側ケースにより支持されている。これにより、弾性部材を支持するアウタ側ケースの底面を直動変換機構側に配置する必要があるため、直動変換機構の配置自由度が低くなる。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、直動変換機構の配置の自由度を高めつつ、耐振動性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る電動制動装置は、電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、前記直動変換機構において前記伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に連動する摩擦部材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、前記回転部の回転軸方向において前記摩擦部材と前記伝達機構との間に配置されている前記直動変換機構を格納するハウジングと、前記回転軸方向において前記直動部と前記伝達機構の間に配置され、前記回転部と係合されている第1係合部と前記第1係合部よりも前記伝達機構側で前記ハウジングに係合されている第2係合部とを有し、前記回転部を前記直動部側から前記伝達機構側に付勢する付勢部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、直動変換機構の配置の自由度を高めつつ、耐振動性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動式ディスクブレーキの模式的な断面図である。
【
図2】
図1に示す電動式ディスクブレーキの要部の拡大断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線に沿った拡大断面図である。
【
図5】板バネの貫通孔の周縁部分とスピンドルとの他の係合態様を説明する拡大断面図である。
【
図6】板バネの貫通孔の周縁部分とスピンドルとの他の係合態様を説明する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、明細書及び特許請求の範囲において、回転軸方向とは、回転部の回転軸方向のことである。回転軸方向の一方側とは、回転軸方向のうち、車両外側に向かう方向のことをいう。回転軸方向の他方側とは、軸方向のうち、車両内側に向かう方向のことをいう。図面中、「AD」は回転軸方向、「ADo」は回転軸方向の一方側、「ADi」は回転軸方向の他方側をそれぞれ指している。
【0011】
図1から
図6を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動式ディスクブレーキの模式的な断面図である。
図2は、
図1に示す電動式ディスクブレーキの要部の拡大断面図である。
図3は、
図2におけるIII-III線に沿った拡大断面図である。
図4は、
図2におけるIVの拡大断面図である。
図5及び
図6は、板バネの貫通孔の周縁部分とスピンドルとの他の係合態様を説明する拡大断面図である。
【0012】
(電動制動装置10、キャリパハウジング14)
図1に示すように、実施形態に係る電動制動装置10は、車両の車輪を制動する電動式ディスクブレーキである。電動制動装置10は回転体12の周縁部分を回転体12の回転軸方向の両側から跨ぐように設けられたキャリパハウジング14(請求項のハウジングに相当)を備えている。回転体12は、車両Hと一体的に回転する。
【0013】
(爪部16、シリンダ部18)
図1に示すように、キャリパハウジング14は、回転体12の近傍に設けられた非回転部材としてのマウント(不図示)に回転軸方向へ移動可能に支持されている。キャリパハウジング14は、その回転軸方向の一方側に爪部16を有しており、爪部16は、回転軸方向に直交する方向に向かって突出している。キャリパハウジング14は、その回転軸方向の他方側に円筒形状のシリンダ部18を有しており、シリンダ部18は、回転軸方向の一方側に向かって開口している。
【0014】
(アウタ摩擦部材20、インナ摩擦部材22)
図1に示すように、電動制動装置10は、キャリパハウジング14の爪部16とシリンダ部18との間に配置された2つの摩擦部材20,22を備えており、2つの摩擦部材20,22は、マウントに回転軸方向へ移動可能に支持されている。2つの摩擦部材20,22のうち、回転軸方向の一方側に位置するアウタ摩擦部材20は、回転体12の一側面を押圧する。アウタ摩擦部材20は、回転体12の一側面を押圧した状態で、回転体12の一側面に摺接する。2つの摩擦部材20,22のうち、回転軸方向の他方側に位置するインナ摩擦部材22は、回転体12の他側面を押圧する。インナ摩擦部材22は、回転体12の他側面を押圧した状態で、回転体12の他側面に摺接する。
【0015】
(ピストン24)
図1及び
図2に示すように、キャリパハウジング14のシリンダ部18内には、インナ摩擦部材22を爪部側(回転軸方向の一方側)に押圧する有底円筒状のピストン24が回転軸方向へ移動可能に設けられている。ピストン24の回転軸方向の他方側は、開口されている。ピストン24は、キャリパハウジング14のシリンダ部18の固定された回り止めボルト(不図示)によって、キャリパハウジング14のシリンダ部18に対して回転不能に構成されている。また、シリンダ部18の内周面には、周溝18gが形成されている。シリンダ部18の周溝24gには、ピストンシール26が嵌入して設けられており、ピストンシール26は、ピストン24の外周面に摺接する。
【0016】
(モータギヤユニット28、ユニットケース30、電動モータ32、伝達機構36)
図1及び
図2に示すように、キャリパハウジング14のシリンダ部18の側部には、電動制動装置10を駆動させるためのモータギヤユニット28が設けられている。モータギヤユニット28は、キャリパハウジング14のシリンダ部18の側部に設けられたユニットケース30と、ユニットケース30内に設けられた電動モータ32と、電動モータ32の出力軸34に接続されかつ電動モータの回転トルクを増大する伝達機構36とを備えている。
【0017】
(主動ギヤ38、中間大ギヤ42、中間小ギヤ44、従動ギヤ48)
図2に示すように、伝達機構36は、電動モータ32の出力軸34に一体的に設けられた主動ギヤ38と、ユニットケース30内にギヤ軸40を介して回転可能に設けられた中間大ギヤ42とを有している。中間大ギヤ42は、主動ギヤ38に噛合しており、中間大ギヤ42の外径は、主動ギヤ38の外径よりも大きくなっている。伝達機構36は、中間大ギヤ42に同軸状に一体的に設けられた中間小ギヤ44と、ユニットケース30内にラジアル軸受46を介して回転可能に設けられた従動ギヤ48とを有している。中間小ギヤ44の外径は、中間大ギヤ42の外径よりも小さくなっている。従動ギヤ48は、中間小ギヤ44に噛合しており、従動ギヤ48の外径は、中間小ギヤ44の外径よりも大きくなっている。従動ギヤ48の中央部には、雌スプライン部48sが形成されている。
【0018】
(直動変換機構50、回転部52)
図2に示すように、キャリパハウジング14のシリンダ部18内には、伝達機構36から伝達された回転運動を直動運動に変換する直動変換機構50が設けられている。換言すれば、回転軸方向においてインナ摩擦部材22と伝達機構36との間には、直動変換機構50を格納する円筒形状のシリンダ部18が配置されている。直動変換機構50は、伝達機構36から伝達された回転運動によって回転する回転部52を有している。回転部52は、回転軸方向に延びており、回転部52の外周面における回転軸方向の他方側の部位には、従動ギヤ48の雌スプライン部48sにスプライン嵌合する雄スプライン部52sが形成されている。回転部52の雄スプライン部52sと従動ギヤ48の雌スプライン部48sがスプライン嵌合することで、回転部52が従動ギヤ48に接続される。回転部52の外周面における回転軸方向の一方側の部位には、雄ネジ部52mが形成されており、雄ネジ部52mの外径は、雄スプライン部52sの外径よりも大きくなっている。回転部52の軸心と同心円筒形状である、回転軸部(雄ネジ部52mと雄スプライン部52sの間の部位)の外周部分における雄スプライン部52sの近傍には、周方向に伸びる凹部としての52gが形成されている。
【0019】
(直動部54)
図2に示すように、直動変換機構50は、回転部52の回転に連動して回転軸方向へ直動する直動部54を有している。直動部54は、回転部52の雄ネジ部52mに螺合して設けられており、ピストン24の内側に位置している。直動部54には、回転部52の雄ネジ部52mに螺合する雌ネジ部54fが形成されている。
(板バネ56)
図2から
図4に示すように、キャリパハウジング14のシリンダ部18における回転軸方向の他方側の端部には、回転部52を直動部54側から伝達機構36側に付勢する付勢部材としての帯状の板バネ56が配置されている。換言すれば、回転軸方向における直動部54と伝達機構36との間には、帯状の板バネ56が配置されている。板バネ56は、回転部52を伝達機構36側に付勢することで回転部52に与圧を付与する。また、板バネ56の中間部には、回転部52を挿通させるための貫通孔56hが形成されており、貫通孔56hの内径は、回転部52の雄スプライン部52s及びその近傍の外径よりも小さくなっている。なお、板バネ56の形状は帯状に限られるものではない。
【0020】
板バネ56の貫通孔56hの周縁部分は、回転部52の52gに係合される第1係合部である。板バネ56の貫通孔56の周縁部分は、回転部52の52gに対して相対的に回転可能かつ移動不能になっている。板バネ56の両端部分56eは、第1係合部としての板バネ56の両端部分56eよりも伝達機構36側で、シリンダ部18に係合される第2係合部である。板バネ56の中間部が回転軸方向の一方側に突出するように、板バネ56は曲げ成形されている。換言すれば、板バネ56の両端部分56eが板バネ56の貫通孔56hの周縁部分よりも伝達機構36側に位置するように、板バネ56は曲げ成形されている。板バネ56の貫通孔56hの周縁部分は、回転部52の周溝52gに直接的に係合される代わりに、他の部材を介して間接的に係合されてもよい。
【0021】
シリンダ部18における回転軸方向の他方側の端部には、板バネ56の両端部分56eとそれぞれ係合する2つの凹部18dが回転軸方向の一方側に窪んで形成されている。換言すれば、板バネ56の両端部分56eとシリンダ部18の2つの凹部18dとの係合によって、第1係合部である板バネ56の両端部分56eは、シリンダ部18に対して回り止めされている。また、板バネ56の両端部分56eは、シリンダ部18の2つの凹部18dに係合した状態で、キャリパハウジング14のシリンダ部18とユニットケース30によって挟持されている。
【0022】
図5に示すように、板バネ56の貫通孔56hの周縁部分は、回転部52の周溝52gに滑動部材としての複数のボール58を介して係合されてもよい。この場合に、複数のボール58は、回転部52の周溝52g内から離脱しないように構成されている。なお、滑動部材としてはボール58に限らず、グリスなど潤滑を良くする部材であればよい。
【0023】
回転部52の回転軸部の外周部分に、周溝52gの代わりに、
図6に示すように、周方向に伸びる凸部として環状の突起部52bを形成してよい。そして、板バネ56の貫通孔56hの周縁部分は、回転部52の突起部52bに係合されてもよい。この場合には、板バネ56の貫通孔56hの内径は、回転部52の突起部52bの外径よりも小さくなっている。回転部52における雄スプライン部52sの近傍に環状の突起部52bを形成する代わりに、複数の突起部を周方向に間隔を置いて形成してもよい。
【0024】
(荷重センサ62、伝達部材66)
図1及び
図2に示すように、キャリパハウジング14のシリンダ部18内の奥側には、回転体12に対する摩擦部材であるインナ摩擦部材22の押圧荷重を検出する荷重センサ62が設けられている。換言すれば、回転軸方向において直動部54と板バネ56との間には、荷重センサ62が設けられている。また、
図3に示すように、荷重センサ62のセンサ接続部64は、キャリパハウジング14のシリンダ部18の奥側から見たときに、板バネ56と外れた位置に位置している。なお、板バネ56の形状が帯状とは異なる形状である場合であっても、センサ接続部64は、キャリパハウジング14のシリンダ部18の奥側から見たときに、板バネ56と外れた位置に位置している。
【0025】
図1及び
図2に示すように、回転部52の中間部と荷重センサ62との間には、インナ摩擦部材22の押圧荷重に対応(相当)する回転部52からの回転軸方向の力を荷重センサ62に伝達する環状の伝達部材66がスラスト軸受68及び座金70を介して設けられている。換言すれば、回転軸方向において直動部54と荷重センサ62との間には、環状の伝達部材66が設けられている。
【0026】
(電動制動装置10の動作)
続いて、電動制動装置10の動作について説明する。
【0027】
図1に示すように、例えば、運転者によってブレーキペダル(不図示)が踏込操作されると、伝達機構36によって電動モータ32の回転トルクを増大させた状態で、電動モータ32の駆動により回転部52を正方向に回転させる。すると、直動部54が雄ネジ部52mと雌ネジ部54fの螺合作用によってキャリパハウジング14の爪部16側(回転軸方向の一方側)に移動し、ピストン24も直動部54と一体的にキャリパハウジング14の爪部16側に移動する。その結果、ピストン24がインナ摩擦部材22に当接して、インナ摩擦部材22をキャリパハウジング14の爪部16側に押圧することができる。更に、ピストン24がインナ摩擦部材22に当接すると、回転体12から受ける反力により図示しないキャリパハウジング14のスライドピンによりキャリパハウジング14が動くことでアウタ摩擦部材20が回転体12に当接する。これにより、摩擦部材である2つの摩擦部材20,22を、回転体12に挟持するように押圧して、車両の車輪に制動力を発生させることができる。
【0028】
(作用効果)
続いて、本発明の実施形態の作用効果について説明する。
【0029】
電動制動装置10においては、前述のように、回転軸方向における直動部54と伝達機構36との間には、回転部52を伝達機構36側(回転軸方向の他方側)に付勢する板バネ56が配置されている。シリンダ部18と係合する第2係合部である板バネ56の両端部分56eは、回転軸方向において回転部52と係合する第1係合部である板バネ56の貫通孔56hの周縁部分よりも伝達機構36側に配置されることで、付勢部材である板バネ56は回転部52を直動部54側から伝達機構36側に付勢する。これにより、板バネ56の両端部分56eと直動部54とが干渉することがないため、直動変換機構50の配置自由度を高めつつ、車輪からの振動(衝撃)による回転部52の軸方向の変位を抑えて、直動変換機構50の耐振動性の向上を図ることができる。
【0030】
特に、板バネ56の貫通孔56hの周縁部分が回転部52の周溝52gに複数のボール58などの滑動部材を介して相対的に回転可能に係合する場合には、回転部52の回転運動が板バネ56によってより阻害され難くなる。これにより、ロストルクの増加をより抑えて、電動制動装置10の作動効率を高めることができる。
【0031】
また、電動制動装置10においては、荷重センサ62が回転軸方向における直動部54と板バネ56との間に設けられ、伝達部材66が回転軸方向における直動部54と荷重センサ62との間に設けられる。伝達部材66によって押圧荷重に対応する回転部52からの回転軸方向の力を荷重センサ62に伝達するため、板バネ56が回転部52を伝達機構36側に付勢すると、荷重センサ62は伝達部材66を介して伝達機構36側に付勢される。これにより、本発明の実施形態によれば、車輪からの振動による荷重センサ62の軸方向の変位を抑えて、荷重センサ62の検出精度の低下を抑制や荷重センサ62の損傷の防止といった効果を得ることができる。また、伝達部材66を回転部52と別体で構成することで、回転部53の径方向において、回転部52から突出する部分がなくなるため、回転部52を転造で成形でき、回転部52を安価に製造することができる。
【0032】
また、電動制動装置10においては、付勢部材の第2係合部である板バネ56の両端部分56eがシリンダ部18に対して回り止めされている。すなわち、回転部52の回転運動によって板バネ56が供回りすることが防止されるため、板バネ56の両端部分56eが摺動し摩耗することでの異物発生の抑制や板バネ56自体の耐久性の向上に寄与する。
【0033】
また、帯状に形成された板バネ56の両端部分56eをシリンダ部18の2つの凹部18dに係合することで、板バネ56の回り止めを簡素な構造で実現できる。なお、ここで、シリンダ部18に凹部18dの代わりに凸部を設け、凸部と板バネ56の両端部分56eとの係合によって回り止めを実現してもよい。
【0034】
また、円筒形状のシリンダ部18に帯状の板バネ56を係合することで、回転部52の径方向においてシリンダ部18と板バネ56との間に空間を設けることが出来る。これにより、電動制動装置10の構成部品、例えば、センサ接続部64を配置することができるため、電動制動装置10の小型化に寄与する。
【0035】
回転部52は、その軸心と同心円筒形状の回転軸部を有し、回転部52の回転軸部の外周部分には、周方向に伸びる凹部(周溝52g)または凸部(突起部52b)が形成され、付勢部材は回転部52の回転軸部が挿通される貫通孔52hが形成された板バネ56として構成される。板バネ56の貫通孔56hの周縁部分を第1係合部とすることで、回転部52の回転軸部を均一な力で付勢することができ、回転部52の回転軸部を偏った力で付勢する場合と比較して、直動変換機構50の耐久性を向上させることが出来る。また、板バネ56の貫通孔56hに回転部52を通すという工程のみで板バネ56と回転部52を係合することができるため、電動制動装置10の組み立て性を高めることが出来る。
【0036】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態の説明に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本実施形態では、電動制動装置10を電動式ディスクブレーキの例で説明したが、ドラムブレーキに適応してもよい。また、直動部54が回転し、回転部52が直動する構成に適応してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 電動制動装置
12 回転体
14 キャリパハウジング(ハウジング)
16 爪部
18 シリンダ部
18d 凹部
18g 周溝
20 アウタ摩擦部材
22 インナ摩擦部材
24 ピストン
26 ピストンシール
28 モータギヤユニット
30 ユニットケース
32 電動モータ
34 出力軸
36 伝達機構
38 主動ギヤ
40 ギヤ軸
42 中間大ギヤ
44 中間小ギヤ
46 ラジアル軸受
48 従動ギヤ
48s 雌スプライン部
50 直動変換機構
52 回転部
52m 雄ネジ部
52s 雄スプライン部
52b 突起部
54 直動部
54f 雌ネジ部
54g 周溝
56 板バネ(付勢部材)
56e 端部分
56h 貫通孔
58 ボール
62 荷重センサ
64 センサ接続部
66 伝達部材
68 スラスト軸受
70 座金