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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057990
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165054
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】武 誠司
(72)【発明者】
【氏名】木下 一樹
(72)【発明者】
【氏名】飯村 慶太
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB13
5J046PA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メッシュ配線を形成した配線基板を有する画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置60は、第1面11aと第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む基板11と、基板11の第1面11a上に配置されたメッシュ配線部20とを有する配線基板10と、基板11の第2面11b側に位置する表示装置61と、配線基板10と表示装置61との間に位置する誘電体層80と、を備えている。基板11は、透明性を有している。メッシュ配線部20は、電磁波の送受信部として構成されている。基板11の厚みTをAとし、基板11の誘電正接をBとし、誘電体層80の厚み(T+T11+T12)をAとし、誘電体層80の誘電正接をBとした場合、画像表示装置60は、
0.5×B+A 0.5×B≦1.5
という関係を満たしている。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを含む基板と、前記基板の前記第1面上に配置されたメッシュ配線部とを有する配線基板と、
前記基板の前記第2面側に位置する表示装置と、
前記配線基板と前記表示装置との間に位置する誘電体層とを備え、
前記基板は、透明性を有し、
前記メッシュ配線部は、電磁波の送受信部として構成されており、
前記基板の厚みをAとし、前記基板の誘電正接をBとし、前記誘電体層の厚みをAとし、前記誘電体層の誘電正接をBとした場合、
【数1】
という関係を満たす、画像表示装置。
【請求項2】
前記誘電体層は、N(Nは、自然数)個の層を有し、前記配線基板側からM(Mは、N以下の自然数)番目の層の厚みをAとし、前記M番目の層の誘電正接をBとした場合、
【数2】
という関係を満たす、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記メッシュ配線部の導電率は、8×10S/m以上である、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記メッシュ配線部の表面粗さRaは、100nm以下である、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記メッシュ配線部の40GHzにおけるS21は、-3dB/cm以上である、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化及び軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域に搭載できるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナにおいて、アンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-66610号公報
【特許文献2】特許第5636735号明細書
【特許文献3】特許第5695947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルムアンテナにおいては、画像表示装置内に存在する金属の影響によって、配線基板のアンテナ性能が低下し得る。このため、配線基板のアンテナ性能が低下することを抑制することが求められている。
【0006】
本実施の形態は、配線基板のアンテナ性能が低下することを抑制することが可能な、画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、第1面と前記第1面の反対側に位置する第2面とを含む基板と、前記基板の前記第1面上に配置されたメッシュ配線部とを有する配線基板と、前記基板の前記第2面側に位置する表示装置と、前記配線基板と前記表示装置との間に位置する誘電体層とを備え、前記基板は、透明性を有し、前記メッシュ配線部は、電磁波の送受信部として構成されており、前記基板の厚みをAとし、前記基板の誘電正接をBとし、前記誘電体層の厚みをAとし、前記誘電体層の誘電正接をBとした場合、
【数1】
という関係を満たす、画像表示装置である。
【0008】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による画像表示装置において、前記誘電体層は、N(Nは、自然数)個の層を有していても良く、前記配線基板側からM(Mは、N以下の自然数)番目の層の厚みをAとし、前記M番目の層の誘電正接をBとした場合、
【数2】
という関係を満していても良い。
【0009】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様による画像表示装置において、前記メッシュ配線部の導電率は、8×10S/m以上であっても良い。
【0010】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによる画像表示装置において、前記メッシュ配線部の表面粗さRaは、100nm以下であっても良い。
【0011】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様から上述した第4の態様のそれぞれによる画像表示装置において、前記メッシュ配線部の40GHzにおけるS21は、-3dB/cm以上であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本開示の実施の形態によると、配線基板のアンテナ性能が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施の形態による画像表示装置を示す平面図である。
図2A図2Aは、一実施の形態による画像表示装置を示す断面図(図1のIIA-IIA線断面図)である。
図2B図2Bは、一実施の形態による画像表示装置を示す断面図(図1のIIB-IIB線断面図)である。
図3A図3Aは、一実施の形態による画像表示装置におけるS21の測定方法を示す概略断面図である。
図3B図3Bは、一実施の形態による画像表示装置におけるS21の測定方法を示す概略平面図である。
図4図4は、一実施の形態による配線基板を示す平面図である。
図5図5は、一実施の形態による配線基板のメッシュ配線部を示す拡大平面図である。
図6図6は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(図5のVI-VI線断面図)である。
図7図7は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(図5のVII-VII線断面図)である。
図8図8(a)-(g)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
図9図9は、変形例による画像表示装置の配線基板を示す平面図である。
図10図10は、変形例による画像表示装置の配線基板のメッシュ配線部を示す拡大平面図である。
図11図11は、実施例における配線基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図1乃至図8により、一実施の形態について説明する。図1乃至図8は本実施の形態を示す図である。
【0015】
以下に示す各図は、模式的に示した図である。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されず、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
【0016】
また、以下の実施の形態において、「X方向」とは、画像表示装置の一辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ画像表示装置の他の一辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向及びY方向の両方に垂直かつ画像表示装置の厚み方向に平行な方向である。また、「表面」とは、Z方向プラス側の面であって、画像表示装置の発光面側であり、観察者側を向く面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面であって、画像表示装置の発光面及び観察者側を向く面と反対側の面をいう。メッシュ配線部メッシュ配線部メッシュ配線部
【0017】
図1乃至図2Bを参照して、本実施の形態による画像表示装置の構成について説明する。
【0018】
図1乃至図2Bに示すように、本実施の形態による画像表示装置60は、配線基板10と、配線基板10に積層された表示装置61と、配線基板10と表示装置61との間に位置する誘電体層80と、を備えている。
【0019】
図1に示すように、配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線部20とを有する。メッシュ配線部20には、給電部40が電気的に接続されている。また、基板11の後述する第2面11b側には、表示装置61が配置されている。また、表示装置61に対してZ方向マイナス側には、通信モジュール63が配置されている。配線基板10と、誘電体層80と、表示装置61と、通信モジュール63とは、筐体62内に収容されている。
【0020】
図1乃至図2Bに示す画像表示装置60において、通信モジュール63を介して、所定の周波数の電波を送受信でき、通信を行うことができる。通信モジュール63は、ミリ波用アンテナ、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかを含んでいても良い。このような画像表示装置60としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。なお、配線基板10の詳細については後述する。
【0021】
次に、図2Bを参照して、画像表示装置60の層構成について詳細に説明する。
【0022】
図2Bに示すように、画像表示装置60は、発光面64を有している。画像表示装置60は、表示装置61に対して発光面64側(Z方向プラス側)に位置する配線基板10と、表示装置61に対して発光面64の反対側(Z方向マイナス側)に位置する通信モジュール63と、を備えている。なお、図2Bにおいては、主に配線基板10、表示装置61及び通信モジュール63の断面について示しており、筐体62等の表示を省略している。
【0023】
表示装置61は、例えば有機EL(Electro Luminescence)表示装置からなる。表示装置61は、発光面64の反対側(Z方向マイナス側)から順に、金属層66と、支持基材67と、樹脂基材68と、薄膜トランジスタ(TFT)69と、有機EL層71と、を含んでいる。表示装置61上には、タッチセンサ73が配置されている。また、タッチセンサ73上には、第1透明接着層94を介して偏光板72が配置されている。また、偏光板72上には、第2透明接着層95を介して配線基板10が配置されている。配線基板10上には、第3透明接着層96を介して加飾フィルム74及びカバーガラス(表面保護板)75が配置されている。
【0024】
表示装置61は、有機EL表示装置に限られるものではない。例えば、表示装置61は、それ自体が発光する機能を持つ他の表示装置であっても良く、マイクロLED素子(発光体)を含むマイクロLED表示装置であっても良い。また、表示装置61は、液晶を含む液晶表示装置であっても良い。
【0025】
金属層66は、有機EL層71の有機発光層(発光体)86よりも発光面64の反対側(Z方向マイナス側)に位置する。この金属層66は、表示装置61の外部に位置する図示しない他の電子機器が発する電磁波から表示装置61を保護する役割を果たす。金属層66は、例えば銅等の導電性が良好な金属からなっても良い。金属層66の厚みは、例えば1μm以上100μm以下としても良く、10μm以上50μm以下とすることが好ましい。
【0026】
支持基材67は、金属層66上に配置されている。支持基材67は、表示装置61の全体を支持するものであり、例えば可撓性を有するフィルムからなっていても良い。支持基材67の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートを用いることができる。支持基材67の厚みは、例えば75μm以上300μm以下としても良く、100μm以上200μm以下とすることが好ましい。
【0027】
樹脂基材68は、支持基材67上に配置されている。樹脂基材68は、薄膜トランジスタ69及び有機EL層71等を支持する層であり、可撓性を有する平坦な層からなる。樹脂基材68は、ダイコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プラズマCVD法又は熱CVD法、キャピラリーコート法、スリット及びスピン法、又は、中央滴下法等の手法により塗布形成された層であっても良い。樹脂基材68としては、例えば、有色のポリイミドを用いることができる。樹脂基材68の厚みは、例えば7μm以上30μm以下としても良く、10μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0028】
薄膜トランジスタ(TFT)69は、樹脂基材68上に配置されている。薄膜トランジスタ69は、有機EL層71を駆動するための部材であり、有機EL層71の後述する第1電極85及び第2電極87に印加される電圧を制御するようになっている。薄膜トランジスタ69の厚みは、例えば7μm以上30μm以下としても良く、10μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0029】
薄膜トランジスタ69は、絶縁層81と、絶縁層81内に埋設されたゲート電極82、ソース電極83及びドレイン電極84と、を有している。絶縁層81は、例えば、電気絶縁性を有する材料を積層することによって構成された層であり、公知の有機材料や無機材料のいずれも用いることができる。例えば、絶縁層81の材料としては、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、又は酸化アルミニウム(AlOx)を用いても良い。ゲート電極82としては、例えば、モリブデンータングステン合金、チタンとアルミニウムとの積層体等を採用できる。ソース電極83及びドレイン電極84としては、例えば、チタンとアルミニウムとの積層体、銅マンガンと銅とモリブデンとの積層体等を用いることができる。
【0030】
有機EL層71は、薄膜トランジスタ69上に配置されており、薄膜トランジスタ69に電気的に接続されている。有機EL層71は、樹脂基材68上に配置された第1電極(反射電極、アノード電極)85と、第1電極85上に配置された有機発光層(発光体)86と、有機発光層86上に配置された第2電極(透明電極、カソード電極)87とを有している。また、薄膜トランジスタ69上には、第1電極85の端縁を被覆するようにバンク88が形成されている。このバンク88に取り囲まれることにより、各画素に対応する開口が形成され、この開口内に上述した有機発光層86が配置されている。さらに、第1電極85、有機発光層86、第2電極87及びバンク88は、封止樹脂89によって封止されている。なお、ここでは第1電極85がアノード電極を構成し、第2電極87がカソード電極を構成する。しかしながら、第1電極85及び第2電極87の極性が特に限られることはない。
【0031】
第1電極85は、樹脂基材68上にスパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の手法により形成されたものである。第1電極85の材質としては、効率良く正孔を注入できる材質を用いることが好ましく、例えば、アルミニウム、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀又は金、及びそれらの合金等の金属材料を挙げることができる。
【0032】
有機発光層(発光体)86は、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成されて発光する機能を有する。有機発光層86は、第1電極85上に蒸着法、ノズルから塗布液を塗布するノズル塗布法、インクジェット等の印刷法により形成された層である。有機発光層86としては、所定の電圧を印加することにより発光するよう構成された蛍光性有機物質を含有するものが好ましく、例えば、キノリノール錯体、オキサゾール錯体、各種レーザー色素、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。なお、複数の有機発光層86は、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層のいずれかであり、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層が、繰り返して並んで形成されている。
【0033】
第2電極(透明電極)87は、有機発光層86上に形成されている。第2電極87は、例えばスパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の手法により形成されても良い。第2電極87の材質としては、電子を注入しやすく、かつ光透過性の良好な材質を用いることが好ましい。具体的には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化リチウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0034】
バンク88は、樹脂等の絶縁性をもつ有機材料を用いて形成されている。バンク88の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0035】
封止樹脂89は、バンク88上及び第2電極87上に配置されている。この封止樹脂89は、有機発光層86を保護するものである。封止樹脂89としては、例えば、シリコーン樹脂やアクリル系樹脂を用いることができる。封止樹脂89の厚みは、例えば7μm以上30μm以下としても良く、10μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0036】
なお、有機EL層71において発光した光は、発光面64から取り出される。すなわち、有機EL層71からの光は、封止樹脂89の上方から取り出される。このように本実施の形態における表示装置61は、いわゆるトップエミッション型の表示装置となっている。
【0037】
タッチセンサ73は、有機EL層71上に配置されている。このタッチセンサ73は、表示装置61に指等を接触させたときに、接触位置データを検出して出力する部材である。タッチセンサ73は、銅等の金属部分を含んで構成されている。タッチセンサ73は、グランド層(GND)としての役割を果たしても良い。タッチセンサ73の厚みは、例えば0.1μm以上3.0μm以下としても良く、0.2μm以上0.5μm以下とすることが好ましい。
【0038】
第1透明接着層94は、偏光板72をタッチセンサ73に接着する接着層である。第1透明接着層94は、OCA(Optical Clear Adhesive)層であっても良い。OCA層は、例えば、以下のようにして作製された層である。まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の離型フィルム上に、重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物を塗布する。次に、これを例えば紫外線(UV)等を用いて硬化することにより、OCAシートを得る。上記硬化性接着層用組成物は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂等の光学用粘着剤であっても良い。このOCAシートを対象物に貼合した後、離型フィルムを剥離除去することにより、上記OCA層を得る。OCA層からなる第1透明接着層94は、光学透明性を有している。第1透明接着層94の厚みT11は、例えば10μm以上50μm以下としても良く、15μm以上30μm以下とすることが好ましい。
【0039】
第1透明接着層94は、可視光線の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、第1透明接着層94の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。第1透明接着層94の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、画像表示装置60の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。なお、可視光線とは、波長が400nm以上700nm以下の光線のことをいう。また、可視光線の透過率が85%以上であるとは、測定する部材(例えば第1透明接着層94)に対して吸光度の測定を行った際、400nm以上700nm以下の全波長領域で、その透過率が85%以上となることをいう。吸光度の測定は、公知の分光光度計(例えば、日本分光株式会社製の分光器:V-670)を用いて行うことができる。
【0040】
偏光板72は、第1透明接着層94を介してタッチセンサ73上に配置されている。この偏光板72は、有機EL層71からの光をフィルタリングするものである。偏光板72は、円偏光板であっても良い。偏光板72は、偏光子と、偏光子の両面に貼り合わされた透光性を有する一対の保護フィルムとを有していても良い。偏光板72の厚みT12は、例えば15μm以上200μm以下としても良く、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
【0041】
第2透明接着層95は、配線基板10を偏光板72に接着する接着層である。第2透明接着層95は、第1透明接着層94と同様に、OCA(Optical Clear Adhesive)層であっても良い。第2透明接着層95は、配線基板10の基板11の後述する第2面11b側に位置している。第2透明接着層95の厚みTは、後述するように、例えば15μm以上300μm以下としても良い。
【0042】
第2透明接着層95は、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、第2透明接着層95の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。第2透明接着層95の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、画像表示装置60の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。
【0043】
配線基板10は、上述したように、表示装置61に対して発光面64側に配置されている。この場合、配線基板10は、偏光板72と加飾フィルム74との間に位置する。配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線部20とを有する。基板11は、第1面11aと第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む。メッシュ配線部20は、基板11の第1面11a上に配置されている。メッシュ配線部20には、給電部40が電気的に接続されている。給電部40は、接続線41を介して通信モジュール63に電気的に接続されている。基板11の厚みTは、後述するように、例えば2μm以上200μm以下としても良い。なお、配線基板10の詳細については後述する。
【0044】
第3透明接着層96は、配線基板10を加飾フィルム74及びカバーガラス75に接着する接着層である。第3透明接着層96は、第1透明接着層94及び第2透明接着層95と同様に、OCA(Optical Clear Adhesive)層であっても良い。第3透明接着層96は、配線基板10の基板11の第1面11a側に位置している。第3透明接着層96の厚みTは、後述するように、例えば15μm以上500μm以下としても良い。
【0045】
第3透明接着層96は、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、第3透明接着層96の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。第3透明接着層96の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、画像表示装置60の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。
【0046】
このような画像表示装置60において、第2透明接着層95の材料と第3透明接着層96の材料とが、互いに同一の材料であることが好ましい。これにより、第2透明接着層95と第3透明接着層96との屈折率の差をより小さくできる。
【0047】
第2透明接着層95の厚みT及び第3透明接着層96の厚みTのうち少なくとも一方の厚みは、基板11の厚みTの10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。これにより、第2透明接着層95の厚みT又は第3透明接着層96の厚みTが厚くなりすぎることがなく、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。
【0048】
第2透明接着層95の厚みTと第3透明接着層96の厚みTとが互いに同一である場合、第2透明接着層95の厚みT及び第3透明接着層96の厚みTは、それぞれ基板11の厚みTの5倍以下であっても良く、3倍以下であることが好ましい。これにより、第2透明接着層95及び第3透明接着層96の両方の厚みT、Tが厚くなりすぎることがなく、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。
【0049】
具体的には、基板11の厚みTは、例えば2μm以上であっても良く、10μm以上であっても良く、15μm以上であることが好ましい。基板11の厚みTを2μm以上とすることにより、配線基板10の強度を保持し、メッシュ配線部20の後述する第1方向配線21及び第2方向配線22が変形しにくいようにできる。また、基板11の厚みTは、例えば200μm以下であっても良く、50μm以下であっても良く、25μm以下であることが好ましい。基板11の厚みTを200μm以下とすることにより、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。
【0050】
第2透明接着層95の厚みTは、例えば15μm以上であっても良く、20μm以上であることが好ましい。第2透明接着層95の厚みTは、例えば300μm以下であっても良く、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0051】
第3透明接着層96の厚みTは、20μm以上200μm以下であることが好ましい。第3透明接着層96の厚みTが20μm以上であることにより、タッチセンサ73等と重なる領域で第3透明接着層96が厚み方向に変形し、タッチセンサ73等の厚みを吸収する。これにより、タッチセンサ73等の周縁において第3透明接着層96に段差が生じることを抑えることができる。また、第3透明接着層96の厚みTが200μm以下であることにより、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。なお、第3透明接着層96の厚みTは、例えば15μm以上であっても良い。また、第3透明接着層96の厚みTは、例えば250μm以下であっても良く、300μm以下であっても良く、500μm以下であっても良い。
【0052】
加飾フィルム74は、配線基板10上に配置されている。この加飾フィルム74は、第3透明接着層96とカバーガラス75との間に設けられている。加飾フィルム74は、例えば、観察者側から見て表示装置61の表示領域と重なる部分の全部又は一部が開口しており、表示領域以外の部分を遮光する。すなわち、加飾フィルム74は、観察者側から見て表示装置61の端部を覆うように配置される。
【0053】
カバーガラス75は、加飾フィルム74上に配置されている。このカバーガラス75は、光を透過するガラス製の部材である。カバーガラス75は、板状であり、平面視で矩形状であっても良い。カバーガラス75の厚みは、例えば200μm以上1000μm以下としても良く、300μm以上700μm以下とすることが好ましい。カバーガラス75の長手方向(Y方向)の長さは、例えば20mm以上500mm以下、望ましくは100mm以上200mm以下であっても良い。カバーガラス75の短手方向(X方向)の長さは、20mm以上500mm以下、望ましくは50mm以上100mm以下であっても良い。
【0054】
本実施の形態において、配線基板10の基板11側に誘電体層80が積層されている。誘電体層80は、実質的に金属を含まない層であり、絶縁性をもつ層である。この場合、誘電体層80は、N(Nは、0ではない自然数)個の層を有している。本実施の形態では、誘電体層80は、3個の層を有している。具体的には、誘電体層80は、上述した第1透明接着層94と、偏光板72と、第2透明接着層95とを有している。誘電体層80の面のうち、配線基板10の反対側の面には、金属を含む層が隣接している。具体的には、誘電体層80には、タッチセンサ73が直接積層されている。
【0055】
この場合、誘電体層80及び基板11の合計厚みT10は、50μm以上500μm以下となっており、好ましくは、100μm以上400μm以下である。
【0056】
誘電体層80及び基板11の合計厚みT10を50μm以上とすることにより、配線基板10のメッシュ配線部20と、メッシュ配線部20に最も近い金属層(タッチセンサ73)と間には、50μm以上の誘電体の層が形成される。この場合、メッシュ配線部20とタッチセンサ73との間隔(厚み方向の距離)を十分に離すことができる。これにより、タッチセンサ73の金属とメッシュ配線部20とが電気的に結合することを抑え、メッシュ配線部20による筐体62の外部への放射が弱くなることを抑制できる。この結果、例えばアンテナ機能等、メッシュ配線部20の機能の低下を抑えることができる。一方、誘電体層80及び基板11の合計厚みT10を500μm以下とすることにより、画像表示装置60の全体の厚みが過度に厚くなってしまうことを抑制できる。
【0057】
画像表示装置60の層構成によっては、誘電体層80は、第1透明接着層94、偏光板72及び第2透明接着層95の全てを必ずしも含まなくても良い。すなわち、第1透明接着層94、偏光板72及び第2透明接着層95のうちの一部が存在しなくても良い。あるいは、第1透明接着層94、偏光板72及び第2透明接着層95以外の、誘電体として機能する層が設けられていても良い。いずれの場合も、誘電体層80は、金属等の導電体を実質的に含まない、絶縁体としての機能を有する。
【0058】
誘電体層80の誘電率は、3.5以下とすることが好ましく、3.0以下とすることがさらに好ましい。誘電体層80の誘電率を抑えることにより、上述したアンテナ機能等のメッシュ配線部20の機能が低下することを、より効果的に抑制できる。
【0059】
誘電体層80の全体の誘電正接は、0.1以下であることが好ましい。誘電体層80の全体の誘電正接が上記範囲であることにより、とりわけメッシュ配線部20が送受信する電磁波(例えばミリ波)が高周波である場合に、電磁波の送受信に伴う利得の損失(感度の低下)を小さくできる。なお、誘電体層80の誘電正接は、IEC 62562に準拠して測定できる。具体的には、まず、誘電体層80を切り出して試験片を準備する。試験片の寸法は、幅10mm以上20mm以下、長さ50mm以上100mm以下とする。次に、IEC 62562に準拠し、誘電正接を測定する。
【0060】
ここで、本実施の形態では、配線基板10の基板11の厚みTをAとし、基板11の誘電正接をBとし、誘電体層80の厚み(T+T11+T12)をAとし、誘電体層80の誘電正接をBとした場合、画像表示装置60は、
【数3】
という関係を満たしている。これにより、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21を高くできる。このため、画像表示装置60における伝送効率を高めることができる。なお、基板11の誘電正接は、後述するように、誘電体層80の誘電正接を測定する場合と同様に、IEC 62562に準拠して測定できる。また、S21は、入力端子から出力端子への透過係数を意味する。また、誘電体層80の誘電正接Bは、誘電体層80の全体の誘電正接を意味する。
【0061】
また、上述したように、誘電体層80は、N個の層を有している。このとき、配線基板10側からM(Mは、N以下の0ではない自然数)番目の層の厚みをA(μm)とし、M番目の層の誘電正接をBとした場合、
【数4】
という関係を満たすことが好ましい。これにより、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21を効果的に高くできる。このため、画像表示装置60における伝送効率を更に高めることができる。なお、誘電体層80の各層の誘電正接は、誘電体層80の全体の誘電正接を測定する場合と同様に、IEC 62562に準拠して測定できる。
【0062】
このような画像表示装置60において、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21は、-3dB/cm以上であることが好ましい。これにより、画像表示装置60において、伝送損失を低減できる。
【0063】
ここで、S21は、以下のようにして測定する。まず、図3A及び図3Bに示すように、ネットワークアナライザ100の入力ポート101及び出力ポート102に、それぞれプローバー103、104を接続する。プローバー103、104は、それぞれ、信号部103a、104aと、グランド部103b、104bとを有している。
【0064】
次に、入力ポート101に接続したプローバー103の信号部103aと、出力ポート102に接続したプローバー104の信号部104aとを、測定対象である画像表示装置60における配線基板10のメッシュ配線部20に接触させる。このとき、信号部103a、104aを、メッシュ配線部20の後述する先端側部分20bにおけるY方向端部にそれぞれ接触させる。図示された例においては、信号部103aが、先端側部分20bにおけるY方向プラス側端部に接触し、信号部104aが、先端側部分20bにおけるY方向マイナス側端部に接触している。また、メッシュ配線部20を覆う第3透明接着層96及び保護層17は、メッシュ配線部20から剥離する。
【0065】
次いで、入力ポート101に接続したプローバー103のグランド部103bと、出力ポート102に接続したプローバー104のグランド部104bとを、配線基板10の第2面11b側に位置するタッチセンサ73に接触させる。この際、グランド部103bとグランド部104bとをタッチセンサ73に接触させるために、タッチセンサ73の層のうち、第1透明接着層94側の層の一部を、予めタッチセンサ73から剥離除去しておく。なお、本実施の形態では、タッチセンサ73がグランド層としての役割を果たしている。このため、S21を測定する際に、グランド部103bとグランド部104bとを、タッチセンサ73に接触させている。一方、グランド層としては、例えば、表示装置61の電極層、TFT層等の他の導電層が使用可能である。このため、当該導電層をグランド層として使用する場合には、S21を測定する際に、グランド部103bとグランド部104bとを、当該導電層に接触させる。
【0066】
次に、ネットワークアナライザ100を用いて、測定する周波数のS21値(dB)を測定する。その後、S21値の測定時における信号部103a、104a間の距離に基づいて、S21値(dB/cm)を求める。信号部103a、104a間の距離は、ノギスで測定する。
【0067】
このような画像表示装置60の形状は、図1に示すように、平面視で、全体として略長方形であり、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行となっている。画像表示装置60の長手方向(Y方向)の長さLは、例えば20mm以上500mm以下、望ましくは100mm以上200mm以下の範囲で選択できる。画像表示装置60の短手方向(X方向)の長さLは、例えば20mm以上500mm以下、望ましくは50mm以上100mm以下の範囲で選択できる。なお、画像表示装置60の平面形状は、その角部がそれぞれ丸みを帯びた長方形であっても良い。
【0068】
次に、図4乃至図7を参照して、配線基板の構成について説明する。図4乃至図7は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0069】
本実施の形態による配線基板10は、上述した画像表示装置60(図1乃至図2B参照)に用いられる基板である。配線基板10は、表示装置61よりも発光面64側であって、第2透明接着層95と第3透明接着層96との間に配置され得る。図4に示すように、このような配線基板10は、上述したように、透明性を有する基板11と、基板11上に配置された複数のメッシュ配線部20とを有する。また、メッシュ配線部20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0070】
基板11の形状は、平面視で略長方形である。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。画像表示装置60の長手方向(Y方向)における基板11の長さL図1及び図4参照)は、例えば10mm以上500mm以下の範囲で選択できる。画像表示装置60の短手方向(X方向)における基板11の長さL図1参照)は、例えば3mm以上100mm以下の範囲で選択できる。なお、基板11の平面形状は、その角部がそれぞれ丸みを帯びた長方形であっても良い。
【0071】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性と電気絶縁性とを有する材料であれば良い。基板11の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、又はフッ素樹脂材料等の有機絶縁性材料が用いられることが好ましい。ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート等であっても良い。アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレート等であっても良い。ポリオレフィン系樹脂は、シクロオレフィン重合体等であっても良い。セルロース系樹脂は、トリアセチルセルロース等であっても良い。フッ素樹脂材料は、PTFE又はPFA等であっても良い。例えば、基板11の材料としては、シクロオレフィンポリマー(例えば日本ゼオン社製ZF-16)、又はポリノルボルネンポリマー(住友ベークライト社製)等の有機絶縁性材料が用いられても良い。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、又はセラミックス等が適宜選択されても良い。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であっても良い。また、基板11はフィルム状の部材であっても良く、板状の部材であっても良い。
【0072】
基板11の誘電正接は、0.002以下であることが好ましい。基板11の誘電正接が上記範囲であることにより、とりわけメッシュ配線部20が送受信する電磁波(例えばミリ波)が高周波である場合に、電磁波の送受信に伴う利得の損失(感度の低下)を小さくできる。
【0073】
基板11の比誘電率は、2以上10以下であることが好ましい。基板11の比誘電率が2以上であることにより、基板11の材料の選択肢を多くできる。また、基板11の比誘電率が10以下であることにより、電磁波の送受信に伴う利得の損失を小さくできる。すなわち、基板11の比誘電率が大きくなった場合、基板11の厚みが電磁波の伝搬に与える影響が、大きくなる。また、電磁波の伝搬に悪影響がある場合、基板11の誘電正接が大きくなり、電磁波の送受信に伴う利得の損失が大きくなり得る。これに対して、基板11の比誘電率が10以下であることにより、基板11の厚みが電磁波の伝搬に与える影響を小さくできる。このため、電磁波の送受信に伴う利得の損失を小さくできる。とりわけメッシュ配線部20が送受信する電磁波(例えばミリ波)が高周波である場合に、電磁波の送受信に伴う利得の損失を小さくできる。
【0074】
基板11の誘電正接及び比誘電率は、IEC 62562に準拠して測定できる。具体的には、まず、メッシュ配線部20が形成されてない部分の基板11を切り出して試験片を準備する。試験片の寸法は、幅10mm以上20mm以下、長さ50mm以上100mm以下とする。次に、IEC 62562に準拠し、誘電正接又は比誘電率を測定する。
【0075】
本実施の形態では、基板11は、透明性を有している。本明細書中、「透明性を有する」とは、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率が85%以上であることを意味する。基板11は、可視光線の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、基板11の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。基板11の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、配線基板10の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。
【0076】
本実施の形態において、メッシュ配線部20は、電磁波の送受信部として構成されている。この場合、メッシュ配線部20は、アンテナとしての機能をもつアンテナパターンからなっている。このメッシュ配線部20は、アレイアンテナとして構成されていても良い。このように、メッシュ配線部20を、アレイアンテナとして構成する場合、直進性の高いミリ波を送受信するミリ波用アンテナ性能を高めることができる。なお、アレイアンテナとは、複数のアンテナ素子(放射素子)を規則的に配置したアンテナであって、素子の励振の振幅及び位相を独立して制御できるアンテナをいう。
【0077】
図4に示すように、メッシュ配線部20は、基板11上に複数形成されている。メッシュ配線部20は、4つ以上設けられていることが好ましい。図示された例においては、メッシュ配線部20は、基板11上に4つ形成されている(図1参照)。また、図4に示すように、メッシュ配線部20は、基板11の全面に存在するのではなく、基板11上の一部領域のみに存在していても良い。各々のメッシュ配線部20は、互いに同一形状を有していても良い。この場合、各々のメッシュ配線部20は、後述する先端側部分20bの長さ(Y方向距離)Lの誤差及び幅(X方向距離)Wの誤差が、それぞれ10%内であることが好ましい。これにより、ミリ波用アンテナ性能を効果的に高めることができる。
【0078】
メッシュ配線部20は、給電部40側の基端側部分(伝送部)20aと、基端側部分20aに接続された先端側部分(送受信部)20bとを有する。基端側部分20aは、給電部40に接続されている。この場合、基端側部分(伝送部)20aは、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路を構成していても良い。基端側部分20aの形状と先端側部分20bの形状とは、それぞれ平面視で略長方形である。この場合、先端側部分20bの幅(X方向距離)は基端側部分20aの幅(X方向距離)よりも広い。
【0079】
このメッシュ配線部20の先端側部分20bは、所定の周波数帯に対応している。すなわち、先端側部分20bは、その長さ(Y方向距離)Lが特定の周波数帯に対応した長さとなっている。なお、対応する周波数帯が低周波であるほど先端側部分20bの長さLが長くなる。メッシュ配線部20は、ミリ波用アンテナの他、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。なお、複数の先端側部分20bの長さが互いに異なり、それぞれ異なる周波数帯に対応しても良い。あるいは、配線基板10の電波送受信機能を利用して、各メッシュ配線部20は、例えば指紋認証、ミリ波センサー等の機能を果たしても良い。
【0080】
図示された例においては、先端側部分20bは、その長手方向がX方向に平行であり、その短手方向がY方向に平行となっている。なお、先端側部分20bは、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行であっても良い。先端側部分20bのY方向の長さLは、例えば1mm以上100mm以下の範囲で選択できる。先端側部分20bのX方向の幅Wは、例えば1mm以上100mm以下の範囲で選択できる。とりわけ、メッシュ配線部20がミリ波用アンテナである場合、先端側部分20bの長さLは、1mm以上、より好ましくは1.5mm以上の範囲で選択できる。メッシュ配線部20がミリ波用アンテナである場合、先端側部分20bの長さLは、10mm以下、より好ましくは5mm以下の範囲で選択できる。
【0081】
メッシュ配線部20同士の距離は、対応する周波数に応じて適宜設定できるが、1mm以上30mm以下であることが好ましい。すなわち、先端側部分20b同士の距離D20b図4参照)は、1mm以上30mm以下であることが好ましい。適切な距離を設定することで所望のアンテナ指向性、利得向上を得ることができる。
【0082】
図5に示すように、メッシュ配線部20は、それぞれ金属線が格子状又は網目状に配置されたパターン形状を有している。このパターン形状は、X方向及びY方向に繰り返し配置されている。すなわちメッシュ配線部20は、所定の方向である第1方向に延びる部分(後述する第1方向配線21)と、第1方向とは異なる第2方向に延びる部分(後述する第2方向配線22)とから構成されるパターン形状を有している。
【0083】
メッシュ配線部20は、複数の配線を有している。具体的には、メッシュ配線部20は、複数の第1方向配線21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22とを有している。複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、格子状又は網目状の形状を形成している。各第1方向配線21及び各第2方向配線22は、それぞれアンテナの周波数帯に対応する方向(Y方向)に傾斜して延びている。なお、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに鋭角又は鈍角に交差しているが、これに限らず、互いに直交していても良い。この場合、第1方向配線21は、アンテナの周波数帯に対応する方向(Y方向)に延びていても良く、第2方向配線22は、第1方向配線21に直交する方向(X方向)に延びていても良い。
【0084】
メッシュ配線部20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。これにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。
【0085】
各開口部23の平面形状は、それぞれ、略菱形である。すなわち、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチPは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチPは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、メッシュ配線部20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、メッシュ配線部20を肉眼で視認しにくくできる。また、第1方向配線21のピッチPは、第2方向配線22のピッチPと等しい。このため、各開口部23の形状は、上述したように、それぞれ平面視で略菱形となっている。この場合、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23のX方向に沿った長さLは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、各開口部23のY方向に沿った長さLは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、各開口部23の平面形状は、それぞれ略正方形であっても良く、略長方形であっても良い。さらに、開口部23の形状は、全面で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0086】
図6に示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形又は略正方形となる形状を有している。この場合、第1方向配線21の断面形状は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。図7に示すように、各第2方向配線22は、その長手方向に垂直な断面(Y方向断面)が略長方形又は略正方形であり、上述した第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一の形状を有している。この場合、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。第1方向配線21の断面形状と第2方向配線22の断面形状とは、必ずしも略長方形又は略正方形でなくても良い。例えば、第1方向配線21の断面形状と第2方向配線22の断面形状とが、表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形、あるいは、幅方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0087】
本実施の形態において、第1方向配線21の線幅W図6参照)及び第2方向配線22の線幅W図7参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。ここで、第1方向配線21の線幅Wは、その長手方向に垂直な断面における幅(X方向距離)であり、第2方向配線22の線幅Wは、その長手方向に垂直な断面における幅(Y方向距離)である。例えば、第1方向配線21の線幅Wは0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択でき、0.2μm以上2.0μm以下とすることが好ましい。また、第2方向配線22の線幅Wは、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択でき、0.2μm以上2.0μm以下とすることが好ましい。
【0088】
第1方向配線21の高さH図6参照)及び第2方向配線22の高さH図7参照)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。ここで、第1方向配線21の高さH及び第2方向配線22の高さHは、それぞれZ方向の長さである。第1方向配線21の高さH及び第2方向配線22の高さHは、それぞれ例えば0.1μm以上の範囲で選択でき、0.2μm以上であることが好ましい。第1方向配線21の高さH及び第2方向配線22の高さHは、それぞれ例えば5.0μm以下の範囲で選択でき、2.0μm以下であることが好ましい。
【0089】
第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であれば良い。本実施の形態において第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄若しくはニッケルなどの金属材料、又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。また、第1方向配線21及び第2方向配線22は、電解めっき法によって形成されためっき層であっても良い。
【0090】
本実施の形態では、このようなメッシュ配線部20の導電率は、8×10S/m以上であることが好ましい。これにより、後述するように、メッシュ配線部20のS21を効果的に高くできる。このため、画像表示装置60における伝送効率を高めることができる。
【0091】
メッシュ配線部20の表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましい。ここで、表面粗さRaとは、算術平均粗さのことであり、JIS B 0601-2013に基づいて測定される。メッシュ配線部20の表面粗さRaが100nm以下であることにより、メッシュ配線部20のアンテナ性能を高めることができる。
【0092】
ここで、ミリ波は、高周波である。一般に、交流電流を配線に流したとき、周波数が高くなるほど、配線の中心部分には電流が流れにくくなり、配線の表面を電流が流れるようになる。このように、配線に交流電流を流したときに表面にのみ電流が流れる現象のことを表皮効果という。また、表皮深さとは、最も電流が流れやすい配線の表面の電流に対して、1/e(約0.37)倍に減衰する、配線の表面からの深さのことをいう。この表皮深さδは、一般に下記の式によって求めることができる。
【0093】
【数5】
【0094】
なお、上記式中、ωは角周波数(=2πf)、μは透磁率(真空中では4π×10-7[H/m])、σは配線を構成する導体の導電率(銅の場合は5.8×10[S/m])を意味する。銅の配線の表皮深さδは、周波数が0.8GHzの場合、δ=約2.3μmであり、周波数が2.4GHzの場合、δ=約1.3μmであり、周波数が4.4GHzの場合、δ=約1.0μmであり、周波数が6GHzの場合、δ=約0.85μmである。また、5G用のアンテナが送受信する電波(ミリ波)は、例えば4G用のアンテナが送受信する電波と比べて高周波(28GHz~39GHz)であり、例えば電流の周波数が28GHz~39GHzである場合、δ=約0.3μm~約0.4μmとなる。
【0095】
また、表皮効果によって電波が通過する距離は、表面粗さRaが大きくなるほど長くなる。これにより、表皮抵抗は、表面粗さRaが大きくなるほど、大きくなる。このため、メッシュ配線部20の表面が平滑なほど、つまり表面粗さRaが小さいほど、配線の表皮抵抗が増加することが抑えられ、電波の送受信時に生じる伝送損失を低減できる。これに対して、配線の表面粗さRaが大きい場合、上述したように配線の表皮抵抗が増加し、電波の送受信時に伝送損失が生じるおそれがある。とりわけ、メッシュ配線部20が送受信する電波(ミリ波)が高周波である場合、第1方向配線21及び第2方向配線22の表面粗さRaを100nm以下に抑えることにより、第1方向配線21及び第2方向配線22の表皮抵抗を小さくできる。このため、第1方向配線21及び第2方向配線22の表皮抵抗によって、メッシュ配線部20中の電流の流れを阻害しないようにできる。この結果、メッシュ配線部20の表面粗さRaが100nm以下であることにより、ミリ波を送受信するミリ波用アンテナ性能を効果的に高めることができる。なお、表面粗さRaが100nm以下であることにより、電磁波の伝送損失を低減できることは、国際公開第2021/221119号に記載されている。
【0096】
メッシュ配線部20の全体の開口率Atは、例えば87%以上100%未満の範囲であっても良い。メッシュ配線部20の全体の開口率Atをこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保できる。メッシュ配線部20の全体の開口率Atは、95%以上100%未満であることが好ましい。これにより、配線基板10の導電性を確保しつつ、配線基板10の透明性を高くできる。なお、開口率とは、所定の領域(例えばメッシュ配線部20の全域)の単位面積に占める、開口領域の面積の割合(%)をいう。開口領域とは、第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域をいう。
【0097】
さらに、図6及び図7に示すように、基板11の第1面11a上であって、メッシュ配線部20を覆うように保護層17が形成されている。保護層17は、メッシュ配線部20を保護するものであり、基板11の表面の略全域に形成されている。保護層17の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂が用いられても良い。また、保護層17の厚みTは、0.3μm以上100μm以下の範囲で選択できる。なお、保護層17は、基板11のうち少なくともメッシュ配線部20を覆うように形成されていれば良い。また、保護層17は、必ずしも形成されていなくても良い。
【0098】
再度図4を参照すると、メッシュ配線部20に、給電部40が電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。
【0099】
また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄若しくはニッケルなどの金属材料、又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。
【0100】
この給電部40は、配線基板10が画像表示装置60(図1乃至図2B参照)に組み込まれた際、接続線41を介して画像表示装置60の通信モジュール63と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の第1面11a上に設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。また、給電部40を柔軟に形成することにより、給電部40が画像表示装置60の側面や裏面に回り込むように構成されていても良い。この場合、給電部40が、画像表示装置60の側面や裏面側で通信モジュール63と電気的に接続できても良い。
【0101】
給電部40には、Y方向プラス側において、メッシュ配線部20が電気的に接続されている。この場合、給電部40は、メッシュ配線部20と一体に形成されている。給電部40の厚みは、第1方向配線21の高さH図6参照)及び第2方向配線22の高さH図7参照)と同一とすることができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択できる。
【0102】
[配線基板の製造方法]
次に、図8(a)-(g)を参照して、本実施の形態による配線基板10の製造方法及び画像表示装置60の製造方法について説明する。
【0103】
まず、図8(a)に示すように、第1面11aと第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む基板11を準備する。基板11は、透明性を有する。
【0104】
次に、基板11の第1面11a上に、メッシュ配線部20と、メッシュ配線部20に電気的に接続された給電部40とを形成する。
【0105】
この際、まず、図8(b)に示すように、基板11の第1面11aの略全域に金属箔51を積層する。本実施の形態において金属箔51の厚さは、0.1μm以上5.0μm以下であっても良い。本実施の形態において金属箔51は、銅を含んでいても良い。
【0106】
次に、図8(c)に示すように、金属箔51の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。この光硬化性絶縁レジスト52としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂が挙げられる。
【0107】
続いて、図8(d)に示すように、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト52をパターニングし、絶縁層54(レジストパターン)を形成する。この際、第1方向配線21及び第2方向配線22に対応する金属箔51が露出するように、絶縁層54を形成する。
【0108】
次に、図8(e)に示すように、基板11の第1面11a上の、絶縁層54に覆われていない部分に位置する金属箔51を除去する。この際、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸・塩酸等の強酸、過硫酸塩、過酸化水素若しくはこれらの水溶液、又はこれらの組合せ等を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の第1面11aが露出するように金属箔51をエッチングする。
【0109】
続いて、図8(f)に示すように、絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドン、酸又はアルカリ溶液等を用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、金属箔51上の絶縁層54を除去する。
【0110】
このようにして、基板11と、基板11の第1面11a上に設けられたメッシュ配線部20とを有する配線基板10が得られる。この場合、メッシュ配線部20は、第1方向配線21及び第2方向配線22を含む。このとき、金属箔の一部によって、給電部40が形成されても良い。あるいは、平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40をメッシュ配線部20に電気的に接続しても良い。
【0111】
その後、図8(g)に示すように、基板11上のメッシュ配線部20を覆うように保護層17を形成する。保護層17を形成する方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、スロットダイコート、ダイコート、ナイフコート、インクジェットコート、ディスペンサーコート、キスコート、スプレーコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷が用いられても良い。
【0112】
そして、配線基板10に、表示装置61及び誘電体層80を積層することにより、配線基板10と、表示装置61と、誘電体層80とを備える画像表示装置60が得られる。
【0113】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0114】
図1乃至図2Bに示すように、配線基板10は、表示装置61を有する画像表示装置60に組み込まれる。このとき配線基板10は、表示装置61上に配置される。配線基板10のメッシュ配線部20は、給電部40及び接続線41を介して画像表示装置60の通信モジュール63に電気的に接続される。このようにして、メッシュ配線部20を介して、所定の周波数の電波を送受信でき、画像表示装置60を用いて通信を行うことができる。
【0115】
本実施の形態によれば、配線基板10の基板11の厚みTをAとし、基板11の誘電正接をBとし、誘電体層80の厚み(T+T11+T12)をAとし、誘電体層80の誘電正接をBとした場合、画像表示装置60は、
【数6】
という関係を満たしている。これにより、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21を高くできる。このため、画像表示装置60における伝送効率を高めることができる。なお、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21を高くできることは、後述する実施例によって説明する。
【0116】
また、本実施の形態によれば、配線基板10が、基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線部20とを備えている。また、基板11が、透明性を有する。さらに、メッシュ配線部20が、不透明な導電体層の形成部としての導体部と、多数の開口部とによるメッシュ状のパターンとを有している。このため、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10が表示装置61上に配置されたとき、メッシュ配線部20の開口部23から表示装置61を視認でき、表示装置61の視認性が妨げられることがない。
【0117】
次に、画像表示装置の変形例について説明する。
【0118】
図9及び図10は、画像表示装置の変形例の配線基板を示している。図9及び図10に示す変形例は、メッシュ配線部20の周囲にダミー配線層30が設けられている点が異なるものであり、他の構成は上述した図1乃至図8に示す形態と略同一である。図9及び図10において、図1乃至図8に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0119】
図9に示す配線基板10において、メッシュ配線部20の周囲に沿ってダミー配線層30が設けられている。このダミー配線層30は、メッシュ配線部20とは異なり、実質的にアンテナとしての機能を果たすことはない。
【0120】
図10に示すように、ダミー配線層30は、所定のパターン形状をもつダミー配線30aの繰り返しから構成されている。すなわち、ダミー配線層30は、複数のダミー配線30aを含んでおり、各ダミー配線30aは、それぞれメッシュ配線部20(第1方向配線21及び第2方向配線22)から電気的に独立している。また、複数のダミー配線30aは、ダミー配線層30内の全域にわたって規則的に配置されている。複数のダミー配線30aは、互いに平面方向に離間するとともに、基板11上に突出して配置されている。すなわち各ダミー配線30aは、メッシュ配線部20、給電部40及び他のダミー配線30aから電気的に独立している。各ダミー配線30aの形状は、それぞれ平面視で略逆V字形である。
【0121】
この場合、ダミー配線30aは、上述したメッシュ配線部20のパターン形状の一部が欠落した形状をもつ。これにより、メッシュ配線部20とダミー配線層30との相違を目視で認識しにくくでき、基板11上に配置されたメッシュ配線部20を見えにくくできる。図10に示すように、ダミー配線30aは、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びている。具体的には、ダミー配線30aは、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31aと、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32aとを含んでいる。このように、ダミー配線30aが、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びていることにより、基板11上に配置されたメッシュ配線部20をさらに見えにくくできる。ダミー配線層30の開口率は、メッシュ配線部20の開口率と同一であっても良く、異なっていても良いが、メッシュ配線部20の開口率に近いことが好ましい。
【0122】
本変形例のように、メッシュ配線部20の周囲に、メッシュ配線部20から電気的に独立したダミー配線層30が設けられていることにより、メッシュ配線部20の外縁を不明瞭にできる。これにより、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線部20を見えにくくでき、画像表示装置60の使用者がメッシュ配線部20を肉眼で認識しにくくできる。
【0123】
[実施例]
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0124】
(実施例A1)
図2Bに示す構成をもつ画像表示装置60において、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。なお、メッシュ配線部20のインピーダンスは、計測系(同軸ケーブル等)で通常用いられる50Ωに調整されている必要がある。本シミュレーションでは、メッシュ配線部20と計測系との間において、インピーダンス整合がとれているものとして、S21を算出した。また、メッシュ配線部20と計測系との間において、実際にインピーダンスを整合する場合、一般的な手法として知られているバランを配置する方法、又は適切なコンデンサー若しくはコイルを配置する方法等が適用可能である。
【0125】
本シミュレーションにおいて、配線基板10の基板11は、厚み100μmのシクロオレフィンポリマー製基板とした。このとき、基板11の誘電率は、2.25に設定し、誘電正接は、0.00031に設定した。第1方向配線21及び第2方向配線22は、線幅2μm、高さ2μmの銀配線とした。このとき、開口部23のX方向に沿った長さLは、0.175mmに設定し、開口部23のY方向に沿った長さLは、0.350mmに設定した。誘電体層80は、厚み100μmのOCA層とした。このとき、誘電体層80の誘電率は、2.76に設定し、誘電正接は、0.07に設定した。タッチセンサ73は、銅製の部材とした。このとき、タッチセンサ73は、誘電体層80の全面を覆うように設定した。
【0126】
このとき、基板11の厚みをAとし、基板11の誘電正接をBとし、誘電体層80の厚みをAとし、誘電体層80の誘電正接をBとした場合、A 0.5×B+A 0.5×B(以下、単に[数3]の左辺とも記す)は、0.7031であった。
【0127】
(実施例A2)
誘電体層80の誘電正接を0.02に設定したこと、[数3]の左辺が0.4981であったこと、以外は、実施例A1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0128】
(実施例A3)
誘電体層80の厚みを200μmに設定したこと、[数3]の左辺が0.9930であったこと、以外は、実施例A1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0129】
(実施例A4)
基板11の厚みを200μmに設定したこと、誘電体層80を設けなかったこと、[数3]の左辺が0.0043であったこと、以外は、実施例A1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0130】
(比較例A1)
誘電体層80の誘電正接を0.2に設定したこと、[数3]の左辺が2.0031であったこと、以外は、実施例A1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0131】
(比較例A2)
誘電体層80の厚みを1000μmに設定したこと、誘電体層80の誘電正接を0.07に設定したこと、[数3]の左辺が2.2167であったこと、以外は、実施例A1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0132】
以上の結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
この結果、表1に示すように、比較例A1及び比較例A2では、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21が-3dB/cm以下であった。これに対して、実施例A1乃至実施例A4では、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21を-2.55dB/cm以上にできた。このため、本実施の形態による画像表示装置60では、伝送損失を低減できることがわかった。
【0135】
(実施例B1)
図11に示すように、基板11の第2面側に金属板18を配置した配線基板10において、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。本シミュレーションにおいて、配線基板10の基板11は、厚み100μmのシクロオレフィンポリマー製基板とした。このとき、基板11の誘電率は、2.25に設定し、誘電正接は、0.00031に設定した。第1方向配線21及び第2方向配線22は、線幅2μm、高さ2μmの銀配線とした。このとき、開口部23のX方向に沿った長さLは、0.100mmに設定し、開口部23のY方向に沿った長さLは、0.100mmに設定した。金属板18は、銅製の部材とした。このとき、金属板18は、基板11の第2面11bの全面を覆うように設定した。
【0136】
このとき、メッシュ配線部20の導電率は、1.78×10S/mであった。
【0137】
(実施例B2)
開口部23のX方向に沿った長さLを0.175mmに設定したこと、開口部23のY方向に沿った長さLを0.350mmに設定したこと、メッシュ配線部20の導電率が1.28×10S/mであったこと、以外は、実施例B1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0138】
(比較例B1)
第1方向配線21及び第2方向配線22の線幅を1μmに設定したこと、第1方向配線21及び第2方向配線22の高さを1μmに設定したこと、開口部23のX方向に沿った長さLを0.175mmに設定したこと、開口部23のY方向に沿った長さLを0.350mmに設定したこと、メッシュ配線部20の導電率が6.43×10S/mであったこと、以外は、実施例B1と同様にして、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21をシミュレーションにより算出した。
【0139】
以上の結果を表2に示す。
【0140】
【表2】
【0141】
この結果、表2に示すように、比較例B1では、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21が-3dB/cm以下であった。これに対して、実施例B1及び実施例B2では、メッシュ配線部20の40GHzにおけるS21を-1.83dB/cm以上にできた。このため、本実施の形態による配線基板10では、メッシュ配線部20の導電率を調整することにより、配線基板10の伝送損失を効果的に低減できることがわかった。
【0142】
上記実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11