IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァレオ システム テルミクの特許一覧

<>
  • 特開-車両用空調装置 図1
  • 特開-車両用空調装置 図2
  • 特開-車両用空調装置 図3
  • 特開-車両用空調装置 図4
  • 特開-車両用空調装置 図5
  • 特開-車両用空調装置 図6
  • 特開-車両用空調装置 図7
  • 特開-車両用空調装置 図8
  • 特開-車両用空調装置 図9
  • 特開-車両用空調装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057994
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B60H1/00 102L
B60H1/00 102R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165059
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211BA55
3L211CA04
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】前席乗員の足元のスペースを十分に確保することができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置(20;20A;20B;20C)は、車両の乗員が着席可能な前席(12)とこの前席(12)の後方に配置されている後席(13)とに向かって送風可能である。送風空気の流れる方向を基準として、加熱用熱交換器(33)の下流側には、加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を後席(13)に導くための後席用温風通路(RH)が設けられている。後席用温風通路(RH)を構成するダクト状の後席用送風部材(41;41A;41B;41C)は、冷却用熱交換器(32)と加熱用熱交換器(33)との間であって、ハウジング(50;50A;50B;50C)のうち車両進行方向を基準として左右方向の中央よりも送風ユニット(21)から遠い位置に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着席可能な前席(12)とこの前席(12)の後方に配置されている後席(13)とに向かって送風可能であり、
前記車両の外気または内気を取り込み、取り込んだ空気を送風可能な送風ユニット(21)と、この送風ユニット(21)の側方に設けられ前記送風ユニット(21)から送られた送風空気を所定の温度に調節可能な温度調節ユニット(30)と、を有し、
前記温度調節ユニット(30)は、ハウジング(50;50A;50B;50C)の内部空間(IS)に、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(32)と、この冷却用熱交換器(32)を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器(33)と、が設けられ、
車両の進行方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)は、前記冷却用熱交換器(32)よりも後方となるように設けられ、
前記内部空間(IS)には、前記冷却用熱交換器(32)のみを通過した送風空気が流れる冷風流路(CP)と、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が流れる温風流路(HP)と、前記冷風流路(CP)を流れた送風空気と前記温風流路(HP)を流れた送風空気とが混合される混合流路(MP)と、が形成されている車両用空調装置において、
送風空気の流れる方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)の下流側には、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を前記後席(13)に導くための後席用温風通路(RH)が設けられ、
前記後席用温風通路(RH)を構成するダクト状の後席用送風部材(41;41A;41B;41C)は、前記冷却用熱交換器(32)と前記加熱用熱交換器(33)との間に設けられていると共に、
前記後席用温風通路(RH)を通過した送風空気に混ぜるために、前記冷風流路(CP)からの送風空気を取入可能に開口している冷風取入開口部(42a;41Aa;41Ba;41Ca)は、前記ハウジング(50;50A;50B;50C)のうち車両進行方向を基準として左右方向の中央よりも前記送風ユニット(21)から遠い位置に形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記ハウジング(50B)には、前記後席用温風通路(RH)を通過した空気が送出されるリヤ開口部(55B)が形成され、
前記リヤ開口部(55B)は、前記ハウジング(50B)の下面かつ、車両進行方向を基準として左右方向の中央に位置している、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記ハウジング(50C)には、前記後席用温風通路(RH)を通過した空気が送出されるリヤ開口部(55C)が形成され、
前記リヤ開口部(55C)は、車両進行方向を基準として前記ハウジング(50C)の側面に位置している、請求項1に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後席への送風が可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両に車室内の温度を調節するために車両用空調装置が搭載されている。一部の車両用空調装置は、後席への送付を行うことができる。このような車両用空調装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、ハウジングに送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器と、この冷却用熱交換器を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器と、が設けられてなる。加熱用熱交換器の後方には、後席に向かって延び、後席の乗員へ送風を行なうためのダクトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-36738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、車両用空調装置は、前席の前方に配置される。後席へ送風を行なうためのダクトが車両用空調装置の後方に大きく突出すると、前席の乗員の足元のスペースが狭くなる。
【0006】
本発明は、前席乗員の足元のスペースを十分に確保することができる車両用空調装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本開示によれば、車両の乗員が着席可能な前席(12)とこの前席(12)の後方に配置されている後席(13)とに向かって送風可能であり、
前記車両の外気または内気を取り込み、取り込んだ空気を送風可能な送風ユニット(21)と、この送風ユニット(21)の側方に設けられ前記送風ユニット(21)から送られた送風空気を所定の温度に調節可能な温度調節ユニット(30)と、を有し、
前記温度調節ユニット(30)は、ハウジング(50)の内部空間(IS)に、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器(32)と、この冷却用熱交換器(32)を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器(33)と、が設けられ、
車両の進行方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)は、前記冷却用熱交換器(32)よりも後方となるように設けられ、
前記内部空間(IS)には、前記冷却用熱交換器(32)のみを通過した送風空気が流れる冷風流路(CP)と、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気が流れる温風流路(HP)と、前記冷風流路(CP)を流れた送風空気と前記温風流路(HP)を流れた送風空気とが混合される混合流路(MP)と、が形成されている車両用空調装置において、
送風空気の流れる方向を基準として、前記加熱用熱交換器(33)の下流側には、前記加熱用熱交換器(33)を通過した送風空気を前記後席(13)に導くための後席用温風通路(RH)が設けられ、
前記後席用温風通路(RH)を構成するダクト状の後席用送風部材(41;41A;41B;41C)は、前記冷却用熱交換器(32)と前記加熱用熱交換器(33)との間に設けられていると共に、
前記後席用温風通路(RH)を通過した送風空気に混ぜるために、前記冷風流路(CP)からの送風空気を取入可能に開口している冷風取入開口部(42a;41Aa;41Ba;41Ca)は、前記ハウジング(50)のうち車両進行方向を基準として左右方向の中央よりも前記送風ユニット(21)から遠い位置に形成されていることを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前席乗員の足元のスペースを十分に確保することができる車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1による車両用空調装置が搭載された車両の模式図である。
図2図1に示された車両用空調装置の斜視図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4図3の4-4線断面図である。
図5図3の5-5線断面図である。
図6】実施例2による車両用空調装置を側方から見た状態の断面図である。
図7図6の7-7線断面図である。
図8】実施例3による車両用空調装置を側方から見た状態の断面図である。
図9図8の9-9線断面図である。
図10】実施例4による車両用空調装置の温度調節ユニットを上方から見た状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。説明中、前後とは車両用空調装置の搭載されている車両の進行方向を基準として前後、左右とは車両の乗員を基準として左右をいう。図中Frは車両進行方向を基準として前、Rrは車両進行方向を基準として後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0012】
<実施例1>
図1を参照する。図1には、車両用空調装置20(以下、「空調装置20」という。)の搭載された車両10が示されている。車両10は、例えば乗用車であり、車室VI内の前部に設けられた左右の前席12、12と、これらの前席12、12の後方に車幅方向の両端に亘って設けられた後席13と、を有する。
【0013】
空調装置20は、前席12、12の前方に設けられ、前席12、12及び後席13の乗員に所定の温度に調節された空気を送風するために用いられる。前席12の前方であって車幅方向の右側端と左側端にはそれぞれ、送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能なサイドベント切替部14、14が形成されている。前席12の前方であって車幅方向の中央側には、送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能なセンターベント切替部15、15が形成されている。
【0014】
空調装置20には後席13へ向かって延びるリヤダクト16が接続されており、リヤダクト16を介して後席13へ送風を行なうことができる。リヤダクト16の後端あるいは下流端には、後席13への送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能な後席用送風切替部17が設けられている。
【0015】
リヤダクト16は、例えば、センターコンソールの下面に沿って後方に向かって延びると共に、センターコンソールの後面に沿って上方に向かって延びるように配置することができる。又は、車室内の床下を通りBピラーに沿って立ち上げられていても良い。また、途中で分岐して後席乗員の上半身及び下半身に送風可能となるよう配置されても良い。
【0016】
それぞれの切替部14、15、17は、ルーバーによって構成され乗員が操作部14a、15a、17aをスイングさせることにより、全開から全閉まで送風量を切り替えることができる。
【0017】
図2を参照する。空調装置20は、車室内及び/又は車外の空気を取り入れて送風することが可能な送風ユニット21と、この送風ユニット21から送られた送風空気を所定の温度に調節可能な温度調節ユニット30と、を有する。送風ユニット21から左に向かって送られた風は、温度調節ユニット30内を後方に向かって流れる。
【0018】
送風ユニット21は、周知の構成を採用することができ、例えば、ブロアファンが内蔵されている。
【0019】
なお、空調装置20は、送風ユニット21が温度調節ユニット30の左側に配置される構成であっても良い。ステアリングハンドルの左右位置等により適宜選択可能である。
【0020】
図3を参照する。温度調節ユニット30は、送風ユニット21(図2参照)からの送風空気が送られるハウジング50と、このハウジング50の内部空間ISに設けられ送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器32と、この冷却用熱交換器32を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器33と、この加熱用熱交換器33の下流に設けられ加熱用熱交換器33を通過する送風空気の量を調節する前席用温度調整装置34と、この前席用温度調整装置34の下流に設けられ開口部51~54の開閉を切り替えるデフロスタ開閉ドア36、ベント開閉ドア37、フット開閉ドア38と、加熱用熱交換器33の前部において下方に延び加熱用熱交換器33を通過した空気を後席13(図1参照)に導く後席用送風部材41と、この後席用送風部材41の後部に沿って延び冷風を導入可能な冷風導入部42と、ハウジング50の下部に設けられ後席用送風部材41を通過した送風空気と冷風導入部42を通過した送風空気とが混ぜられる混合部60と、を有している。
【0021】
ハウジング50は、例えば、複数のパーツによって構成される。より具体的には、上部の左右を構成するパーツ、及び、下部を構成するパーツの3つのパーツにより構成される。それぞれのパーツには、射出成形品を用いることができる。なお、ハウジング50は、2つのパーツによって構成されていても良いし、4つ以上のパーツによって構成されていても良い。
【0022】
図1を併せて参照する。ハウジング50には、フロントガラスへ送られる送風空気が通過するデフロスタ開口部51と、前席12の乗員の上半身に送られる送風空気が通過するベント開口部52、53と、前席12の乗員の足元に送られる送風空気が通過するフット開口部54と、後席13の乗員に送られる送風空気が通過するリヤ開口部55と、が空けられている。
【0023】
また、内部空間ISは、冷却用熱交換器32のみを通過した送風空気が流れる冷風流路CPと、加熱用熱交換器33を通過した送風空気が流れる温風流路HPと、冷風流路CPを流れた送風空気と温風流路HPを流れた送風空気とが混合される混合流路MPと、を有している。
【0024】
ベント開口部52、53は、サイドベント切替部14から吹き出される送風空気が通過するサイドベント開口部52と、センターベント切替部15から吹き出される送風空気が通過するセンターベント開口部53と、からなる。
【0025】
なお、ベント開口部52、53は、必ずしも車幅中央用と外側用の2カ所ずつに形成される必要はない。
【0026】
図3を参照する。冷却用熱交換器32は、ハウジング50の前部において、略前後方向に送風空気が通過するよう設けられている。送風空気は、冷却用熱交換器32の内部を通過する熱媒体との熱交換により冷却される。熱媒体には、例えばフロン系の冷媒や、二酸化炭素を用いることができる。
【0027】
加熱用熱交換器33は、冷却用熱交換器32の後方に設けられていると共に、略上下方向に送風空気が通過するよう設けられている。加熱用熱交換器33は、例えば、エンジンを通過し温められた温水が内部を流れる温水ヒータ33aと、通電することにより加熱される電気ヒータ33bと、からなる。
【0028】
図に示される状態において、冷却用熱交換器32を通過した送風空気の一部は、後席用送風部材41の左右を通過して加熱用熱交換器33の下方に導かれ、上方に向かって流れる。この際、送風空気は、加熱用熱交換器33によって温められる。
【0029】
なお、加熱用熱交換器33は、必ずしも温水ヒータ33a及び電気ヒータ33bの2つから構成される必要はなく、どちらか1つであっても良い。また、温水以外の熱媒体を用いたヒータを採用することもできる。熱媒体には、例えばフロン系の冷媒や、二酸化炭素を用いることができる。
【0030】
前席用温度調整装置34は、通電することにより回転駆動力を発生する図示しない前席温度調整用アクチュエータと、ピニオンギヤ34aを有し前席温度調整用アクチュエータに連結されて回転する駆動力伝達軸と、ピニオンギヤ34aと嵌合されて駆動力伝達軸が回転することにより略前後方向にスライドするドア本体34bと、を有する。ドア本体34bは、ピニオンギヤ34aに噛み合うラックを含む。
【0031】
ドア本体34bが移動することにより冷風流路CPと温風流路HPとの開放量が調節される。これにより、混合流路MPへ流れる冷風の風量と温風の風量とが調節され、混合流路MPで混合された際に所定の温度となる。
【0032】
なお、前席用温度調整装置34は、スライドドアではなく、回転軸を中心に回転可能なスイングドアによって構成されていても良い。
【0033】
デフロスタ開閉ドア36は、スイングドアによって構成され、スイングすることによりデフロスタ開口部51の開放量を調節可能である。
【0034】
ベント開閉ドア37は、スイングドアによって構成され、スイングすることによりベント開口部52、53の開放量を調節可能である。
【0035】
フット開閉ドア38は、スイングドアによって構成され、スイングすることによりフット開口部54の開放量を調節可能である。
【0036】
後席用送風部材41は、加熱用熱交換器33の前方において上下方向に延びているダクト状の部材である。後席用送風部材41の左右方向の幅は、加熱用熱交換器33の左右方向の幅に比べて小さく形成されている。これにより、冷却用熱交換器32通過した送風空気は、後席用送風部材41の左右を通過して加熱用熱交換器33へ流れることが可能とされている。後席用送風部材41の上端は、加熱用熱交換器33の下流側の端部に臨み、後席用送風部材41の下端は、混合部60に臨んでいる。
【0037】
図4を参照する。後席用送風部材41は、ハウジング50の左右方向の中央位置である仮想面Cよりも左側に配置されている。換言すれば、後席用送風部材41は、ハウジング50のうち車両進行方向を基準として左右方向の中央よりも送風ユニット21から遠い位置に形成されている、ということができる。
【0038】
図3を参照する。後席用送風部材41の内部は、加熱用熱交換器33によって温められた送風空気が通過する後席用温風通路RHとされている。後席用温風通路RHは、加熱用熱交換器33を通過した送風空気を後席13(図1参照)に導くための流路、ということができる。後席用温風通路RHは、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33の間に設けられている。
【0039】
このように後席用温風通路RHは、周囲を冷風流路CPによって囲まれるため、後席用温風通路RHを通流する温風が意図せずに冷却される懸念がある。あるいは、冷風流路CPを流れる冷風が意図せずに温められる懸念がある。この場合、例えば後席用送風部材41の周囲に発泡ウレタンなどの断熱材を貼り付けることや、後席用送風部材41自体を発泡樹脂により構成し、断熱性を向上して、意図しない熱交換を防止できる。このような断熱対策は必ずしも実施せずともよく、空調装置20から吹き出される調和空気の吹出温度やコスト等を勘案し、適宜選択される。また、後席用送風部材41に断熱材を貼り付ける場合、その場所は、後席用送風部材41のうち外表面でもよく、あるいは後席用温風通路RHに面する内表面でもよい。
【0040】
なお、後席用送風部材41は、ハウジング50に一体的に形成されていても良いし、ハウジング50とは別部材によって構成されていても良い。
【0041】
冷風導入部42は、冷風流路CP内を流れる冷たい送風空気を混合部60へ導くための部位である。冷風導入部42は、後席用送風部材41の後方、且つ、加熱用熱交換器33の下方に設けられている。
【0042】
冷風導入部42は、例えば、上面が開口したダクト状の部材によって構成されていると共に、後席用送風部材41の後面に一体的に形成されている。冷風導入部42の上端は、冷風流路CPからの送風空気を取入可能に開口している冷風取入開口部42aとされている。冷風取入開口部42aは、後方に向かって下がり勾配に形成されている。
【0043】
図4を併せて参照する。後席用送風部材41の後部に隣接して設けられている冷風導入部42も、ハウジング50の左右方向の中央位置である仮想面Cよりも左側に配置されている。このため、冷風取入開口部42aも、ハウジング50の左右方向の中央位置である仮想面Cよりも左側に位置している。即ち、冷風取入開口部42aは、ハウジング50のうち車両進行方向を基準として左右方向の中央よりも送風ユニット21から遠い位置に形成されている、ということができる。
【0044】
図3のみを参照する。なお、冷風導入部42は、後席用送風部材41に対して離間して設けられても良いし、後席用送風部材41とは別部材によって構成されていても良い。また、冷風取入開口部42aは、リヤ開口部55によって構成することもできる。また、冷風導入部42は、全体が加熱用熱交換器33よりも前方に位置することが特に好ましい。乗員の足元のスペースをより広く確保することが可能となる。
【0045】
混合部60は、後席用温風通路RHを通過した温かい送風空気と、冷風導入部42から導入された冷たい送風空気とが混合される部材である。混合部60は、ハウジング50とは別部材によって構成され、ハウジング50の下部に取り付けられている。換言すれば、混合部60は、ハウジング50の外部に隣接して設けられている、ということができる。
【0046】
加えて、混合部60は、一部が加熱用熱交換器33よりも前方に位置し、残部が加熱用熱交換器33の下方に位置している。少なくとも、混合部60は、加熱用熱交換器33の後端よりも前方に設けられていることが好ましい。なお、混合部60は、全体が加熱用熱交換器33よりも前方に設けられていることが最も好ましい。乗員の足元のスペースをより広く確保することが可能となるためである。
【0047】
混合部60は、ハウジング50の下面に密着している混合部ケース61と、この混合部ケース61の外部に設けられ送風空気の温度を調節する後席用温度調節装置70と、を有する。
【0048】
後席用温度調節装置70は、混合部ケース61の外部に設けられ通電することにより回転駆動力を発生する後席温度調整用アクチュエータ71と、混合部ケース61の内部に設けられ後席温度調整用アクチュエータ71が作動することによりスイングし温風と冷風との混合割合を調節する後席用温度調節ドア72と、を有する。後席温度調整用アクチュエータ71には、例えば、ステッピングモータを用いることができる。
【0049】
混合部60の下部にはリヤダクト16が接続されている。リヤダクト16は、混合部60の下端から下方に延び、床面に沿って後方に延びる。
【0050】
<実施例2>
次に、実施例2による空調装置20Aを図面に基づいて説明する。
【0051】
図6及び図7には、実施例2による空調装置20Aに用いられる温度調節ユニット30Aが示されている。実施例1と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0052】
図6を参照する。冷風流路CPを通過する送風空気を取り入れるための冷風取入開口部41Aaは、後席用送風部材41Aの後面(後席用温風通路RHの側面)に形成されている。後席用送風部材41Aの内部のうち、加熱用熱交換器33から冷風取入開口部41Aaが形成される部位までは、加熱用熱交換器33によって暖められた送風空気が通過する後席用温風通路RHとされている。後席用送風部材41Aの冷風取入開口部41Aaが形成されている部位には、送風空気の温度を調節するための後席用温度調節装置70Aが設けられている。
【0053】
後席用温度調節装置70Aは、後席用送風部材41Aの外部に設けられ通電することにより回転駆動力を発生する後席温度調整用アクチュエータ71と、後席用送風部材41Aの内部に設けられ後席温度調整用アクチュエータ71が作動することによりスイングし温風と冷風との混合割合を調節する後席用温度調節ドア72Aと、を有する。後席用温度調節ドア72Aは、後席用送風部材41Aの内部をスイング可能である。
【0054】
後席用送風部材41Aの内部のうち、後席用温風通路RHより下流の部位は、後席用温風通路RHを流れた送風空気と冷風取入開口部41Aaから取り入れられた送風空気とが混合される後席用混合流路RMである。
【0055】
後席用温度調節ドア72Aは、後席用温風通路RHを全閉にする位置から冷風取入開口部41Aaを全閉にする位置までスイング可能に設けられている。後席用温度調節ドア72Aの位置によって、後席13(図1参照)に送られる送風空気の温度が調節される。
【0056】
図7を併せて参照する。リヤ開口部55Aは、ハウジング50Aの下面のうち左端部(ハウジング50Aの下面の左右端部のうち、送風ユニット21から遠い方の端部)に形成されている。後席用送風部材41A及び冷風取入開口部41Aaは、ハウジング50Aの左右方向の中央位置である仮想面Cよりも左側に位置している。即ち、冷風取入開口部41Aaは、ハウジング50Aのうち車両進行方向を基準として左右方向の中央位置である仮想面Cよりも送風ユニット21から遠い位置に形成されている、ということができる。
【0057】
後席用送風部材41Aがハウジング50Aの端部に沿って配置されていることにより、後席温度調整用アクチュエータ71の軸71aを短くすることができ、後席用温度調節装置70Aをコンパクトに配置することができる。これにより乗員の足元のスペースをより広く確保することが可能となる
【0058】
なお、後席用温度調節ドア72Aと後席用送風部材41A(後席用混合流路RM)とは、全体が加熱用熱交換器33よりも前方に位置することが特に好ましい。
【0059】
<実施例3>
次に、実施例3による空調装置20Bを図面に基づいて説明する。
【0060】
図8及び図9には、実施例3による空調装置20Bに用いられる温度調節ユニット30Bが示されている。実施例1及び/又は実施例2と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0061】
図8を参照する。冷風流路CPを通過する送風空気を取り入れるための冷風取入開口部41Baは、後席用送風部材41Bの前部下面(後席用温風通路RHの側面)に形成されている。後席用送風部材41Bの内部のうち、加熱用熱交換器33から冷風取入開口部41Baが形成される部位までは、加熱用熱交換器33によって暖められた送風空気が通過する後席用温風通路RHとされている。後席用送風部材41Bの冷風取入開口部41Baが形成されている部位には、送風空気の温度を調節するための後席用温度調節装置70Aが設けられている。
【0062】
後席用温度調節装置70Aは、後席用送風部材41Bの外部に設けられ通電することにより回転駆動力を発生する後席温度調整用アクチュエータ71と、後席用送風部材41Bの内部に設けられ後席温度調整用アクチュエータ71が作動することによりスイングし温風と冷風との混合割合を調節する後席用温度調節ドア72Aと、を有する。後席用温度調節ドア72Aは、後席用送風部材41Bの内部をスイング可能である。
【0063】
後席用送風部材41の内部のうち、後席用温風通路RHより下流の部位は、後席用温風通路RHを流れた送風空気と冷風取入開口部41Baから取り入れられた送風空気とが混合される後席用混合流路RMである。
【0064】
後席用温度調節ドア72Aは、後席用温風通路RHを全閉にする位置から冷風取入開口部41Baを全閉にする位置までスイング可能に設けられている。後席用温度調節ドア72Aの位置によって、後席13(図1参照)に送られる送風空気の温度が調節される。
【0065】
図9を併せて参照する。リヤ開口部55Bは、ハウジング50Bの下面のうち左右方向の中央に形成されている。後席用送風部材41Bは、上部がハウジング50Bの左右方向の中央位置である仮想面Cよりも左側に位置し、下部が左右方向中央に位置するよう、途中の部位が曲がっている。
【0066】
後席用送風部材41Bの上部に形成されている冷風取入開口部41Baは、ハウジング50Aのうち車両進行方向を基準として左右方向の中央位置である仮想面Cよりも送風ユニット21から遠い位置に形成されている。
【0067】
なお、後席用温度調節ドア72Aと後席用送風部材41B(後席用混合流路RM)とは、全体が加熱用熱交換器33よりも前方に位置することが特に好ましい。乗員の足元のスペースをより広く確保することが可能となる。
【0068】
<実施例4>
次に、実施例4による空調装置20Cを図面に基づいて説明する。
【0069】
図10には、実施例4による空調装置20Cに用いられる温度調節ユニット30Cが示されている。実施例1乃至実施例3と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0070】
リヤ開口部55Cは、ハウジング50Cの左側面(ハウジング50Cの左右の側面のうち、送風ユニット21から遠い方の側面)に形成されている。後席用送風部材41Cは、ハウジング50Cの側面に沿って設けられ、下端が側面に形成されたリヤ開口部55に接続されている。
【0071】
冷風取入開口部41Caは、ハウジング50Aのうち車両進行方向を基準として左右方向の中央位置である仮想面Cよりも送風ユニット21から遠い位置に形成されている。
【0072】
<その他の実施例>
これまで、加熱用熱交換器33は、略上下方向に送風空気が通過するよう設けられているものとして説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、加熱用熱交換器33が立設され(上下方向に延びるように配置され)、送風空気が略前後方向に通過するよう設けられていてもよい。このとき、後席用送風部材41が加熱用熱交換器33の後方(すなわち加熱用熱交換器33を流出した温風が流れる温風流路HP)に開口し、加熱用熱交換器33の上面を経由して、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33との間に配置されるよう構成されていてもよい。
【0073】
本発明について以下に纏める。
【0074】
図1図6図8図10を参照する。第1に、空調装置20、20A、20B、20Cは、車両の乗員が着席可能な前席12とこの前席12の後方に配置されている後席13とに向かって送風可能である。加えて、空調装置20、20A、20B、20Cは、車両の外気または内気を取り込み、取り込んだ空気を送風可能な送風ユニット21と、この送風ユニット21の側方に設けられ送風ユニット21から送られた送風空気を所定の温度に調節可能な温度調節ユニット30、30A、30B、30Cと、を有している。
【0075】
図3図6図8図10を参照する。温度調節ユニット30、30A、30B、30Cは、ハウジング50、50A、50B、50Cの内部空間(IS)に、送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器32と、この冷却用熱交換器32を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器33と、が設けられている。車両の進行方向を基準として、加熱用熱交換器33は、冷却用熱交換器32よりも後方となるように設けられている。内部空間ISには、冷却用熱交換器32のみを通過した送風空気が流れる冷風流路CPと、加熱用熱交換器33を通過した送風空気が流れる温風流路HPと、冷風流路CPを流れた送風空気と温風流路HPを流れた送風空気とが混合される混合流路MPと、が形成されている。送風空気の流れる方向を基準として、加熱用熱交換器33の下流側には、加熱用熱交換器33を通過した送風空気を後席13に導くための後席用温風通路RHが設けられている。後席用温風通路RHを構成するダクト状の後席用送風部材41、41A、41B、41Cは、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33との間に設けられている。
【0076】
図4図7図9を併せて参照する。後席用送風部材41、41A、41B、41Cは、ハウジング50、50A、50B、50Cのうち車両進行方向を基準として左右方向の中央位置である仮想面Cよりも送風ユニット21から遠い位置に設けられていると共に、後席用温風通路RHを通過した送風空気に混ぜるために、冷風流路CPからの送風空気を取入可能に開口している冷風取入開口部42a、41Aa、41Ba、41Caは、ハウジング50、50A、50B、50Cのうち車両進行方向を基準として左右方向の中央位置である仮想面Cよりも送風ユニット21から遠い位置に形成されている。
【0077】
後席用温風通路RHは、冷却用熱交換器32と加熱用熱交換器33の間に設けられている。これにより、ハウジング50、50A、50B、50Cの後方下部を避けてリヤダクト16(図1参照)等を接続することができる。前席12乗員の足元のスペースを十分に確保することができる。
【0078】
図5を併せて参照する。さらに、冷風取入開口部42a、41Aa、41Ba、41Caは、ハウジング50、50A、50B、50Cの中央位置である仮想面Cよりも送風ユニットから遠い位置に設けられている。一般に、送風ユニットから送られる送風空気は、ハウジングの内部のうち送風ユニットから遠い部位をより多く通過する。このような部位に冷風取入開口部42a、41Aa、41Ba、41Caを設けることにより、後席に向かってより多くの送風空気を容易に導くことが可能となる。
【0079】
図9を参照する。第2に、第1の空調装置20Bであって、ハウジング50Bには、後席用温風通路RHを通過した空気が送出されるリヤ開口部55Bが形成されている。リヤ開口部55Bは、ハウジング50B下面かつ、車両進行方向を基準として左右方向の中央に(中央位置である仮想面Cを挟んで対称に)位置している。
【0080】
リヤ開口部55Bは、ハウジング50Bの下面、かつ左右方向の中央に位置している。後席用の調和空気を、車室内の左右方向の中央を通じて後席に導くように構成された車両に適用することができる。
【0081】
図10を参照する。第3に、第1の空調装置20Cであって、ハウジング50Cには、後席用温風通路(RH)を通過した空気が送出されるリヤ開口部55Cが形成されている。リヤ開口部55Cは、車両進行方向を基準として前記ハウジング50Cの側面に位置している。リヤ開口部55Cは、ハウジング50Cの側面に位置している。送風空気をハウジング50Cの側面から送出することにより、乗員の足元の空間をより広く確保することができる。
【0082】
尚、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の空調装置は、乗用車に搭載する空調装置に好適である。
【符号の説明】
【0084】
12…前席
13…後席
20、20A、20B、20C…車両用空調装置
21…送風ユニット
30、30A、30B、30C…温度調節ユニット
32…冷却用熱交換器
33…加熱用熱交換器
41、41A、41B、41C…後席用送風部材
42a、41Aa、41Ba、41Ca…冷風取入開口部
50、50A、50B、50C…ハウジング
55、55A、55B、55C…リヤ開口部
IS…内部空間
CP…冷風流路
HP…温風流路
MP…混合流路
RH…後席用温風通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10