(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005800
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】金属有機構造体を備えたシート材
(51)【国際特許分類】
D21H 13/48 20060101AFI20240110BHJP
D21H 17/03 20060101ALI20240110BHJP
D21H 17/70 20060101ALI20240110BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D21H13/48
D21H17/03
D21H17/70
B01J20/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106178
(22)【出願日】2022-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】道田 航
(72)【発明者】
【氏名】河原 将人
【テーマコード(参考)】
4G066
4L055
【Fターム(参考)】
4G066AB07A
4G066AB12A
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA03
4G066BA07
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA22
4G066CA02
4G066DA02
4G066DA03
4G066DA07
4L055AF02
4L055AG03
4L055AG32
4L055AH01
4L055AH37
4L055AH50
4L055AJ01
4L055BE20
4L055FA11
(57)【要約】
【課題】金属有機構造体が紙に対してより確実に固定されたシート材を提供すること。
【解決手段】シート材10は、繊維材料25を含む紙20と、紙20に設けられた金属材料30と、金属および有機配位子から構成された金属有機構造体50と、を備え、金属有機構造体50は、金属材料30に担持している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料を含む紙と、
前記紙に設けられた金属材料と、
金属および有機配位子から構成された金属有機構造体と、を備え、
前記金属有機構造体は、前記金属材料に担持している、シート材。
【請求項2】
前記金属材料は、少なくともその一部が前記紙の表面に設けられている、請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記金属材料は、少なくともその一部が前記紙の内部に設けられている、請求項1に記載のシート材。
【請求項4】
前記金属材料と、前記金属有機構造体の前記金属は同じである、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項5】
前記金属材料と、前記金属有機構造体の前記金属と異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項6】
前記金属材料は、第1の金属材料と、第2の金属材料とを含み、
前記金属有機構造体は、前記第1の金属材料と同じ金属を含む第1の金属有機構造体と、前記第2の金属材料と同じ金属を含む第2の金属有機構造体と、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項7】
前記金属材料は、繊維状である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項8】
前記金属材料は、粒子状である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項9】
前記金属材料は、多孔質体である、請求項8に記載のシート材。
【請求項10】
前記紙は、バインダーを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項11】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた金属材料と、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記金属材料に担持する金属有機構造体と、を備えたシート材を製造する方法であって、
前記繊維材料と前記金属材料とを用いて前記紙を製造する製造工程と、
製造された前記紙において、前記金属有機構造体を合成する合成工程と、を包含する製造方法。
【請求項12】
前記紙は、バインダーを含み、
前記製造工程において、前記紙は、前記繊維材料と前記バインダーと前記金属材料とを用いて製造される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた金属材料と、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記金属材料に担持する金属有機構造体と、を備えたシート材を製造する方法であって、
前記金属材料において前記金属有機構造体を合成する合成工程と、
前記金属材料に担持した前記金属有機構造体と前記繊維材料とを用いて前記紙を製造する製造工程と、を包含する製造方法。
【請求項14】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた金属材料と、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記金属材料に担持する金属有機構造体と、を備えたシート材を製造する方法であって、
前記紙の表面に前記金属材料を配置する配置工程と、
前記紙の表面に配置された前記金属材料において、前記金属有機構造体を合成する合成工程と、を包含する製造方法。
【請求項15】
前記配置工程において、前記金属材料は、化学蒸着法または物理蒸着法により前記紙の表面に配置される、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記配置工程において、前記金属材料は金属蒸着またはめっき処理またはスパッタリング処理により前記紙の表面に配置される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた金属材料と、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記金属材料に担持する金属有機構造体と、を備え、ハニカム構造を有する成形体を製造する方法であって、
前記繊維材料と前記金属材料とを含む前記紙を準備する準備工程と、
前記紙を用いてハニカム構造を有する中間体を製造する製造工程と、
製造された前記中間体において、前記金属有機構造体を合成する合成工程と、を包含する製造方法。
【請求項18】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた金属材料と、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記金属材料に担持する金属有機構造体と、を備え、ハニカム構造を有する成形体を製造する方法であって、
前記紙と、前記金属材料と、前記金属材料に担持した前記金属有機構造体とを含むシート材を準備する準備工程と、
前記シート材を用いてハニカム構造を形成する形成工程と、を包含する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属有機構造体を備えたシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスの貯蔵や分離、脱臭、空気や水の浄化等に用いられる材料として金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)の研究が活発に行われている。金属有機構造体は、金属および有機配位子から構成され、様々な構造を有している。また、金属有機構造体は、規則正しく配列された複数の微細な孔を有し、表面積が極めて大きい。このため、幅広い分野での利用が期待されている。例えば、特許文献1には、多孔性金属錯体を熱可塑性樹脂不織布に固定したシート材が開示されている。特許文献1では、多孔性金属錯体粒子を例えば、不織布に一体化する前の繊維の表面に接着したり、抄紙工程で固着剤と合わせて抄きこんだり、不織布シートに粒子を振りかけた後に熱を加えて固定したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属有機構造体は粒子が非常に小さいためその取扱いが難しいという問題がある。また、金属有機構造体を紙や不織布等の他の部材に固定したときに、他の部材に対する金属有機構造体の固定が不十分である結果、金属有機構造体が脱落してしまうという問題が生じ得る。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属有機構造体が紙に対してより確実に固定されたシート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、金属有機構造体をそのまま紙に固定するのではなく、紙に設けられた金属材料に金属有機構造体を担持させることで、金属有機構造体をより強固に紙に固定することができることを見出した。
【0007】
本発明に係るシート材は、繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた金属材料と、金属および有機配位子から構成された金属有機構造体と、を備え、前記金属有機構造体は、前記金属材料に担持している。
【0008】
本発明に係るシート材によると、金属有機構造体は紙に設けられた金属材料に担持しているため、金属有機構造がそのまま紙に担持している場合と比較してより強固に紙に固定されている。これにより、金属有機構造体がシート材から脱落することがより抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属有機構造体が紙に対してより確実に固定されたシート材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るシート材の一部を拡大した断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るシート材の製造方法であり、第1の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るシート材の製造方法であり、第2の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るシート材の一部を拡大した断面図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係るシート材の一部を拡大した断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係るシート材の製造方法であり、第3の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、成形体の第1の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、成形体の第2の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るシート材の実施形態について説明する。シート材は、例えば、特定のガスを吸着するために用いられる部材である。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示すように、シート材10は、紙20と、紙20に設けられた金属材料30と、金属材料30に担持する金属有機構造体50と、を備えている。本実施形態では、金属材料30は、少なくともその一部が紙20の内部に設けられている。例えば、紙20に含まれる金属材料30の70wt%~100wt%が紙20内に位置し外部に露出していない。ここでは、金属材料30の全てが紙20の内部に設けられている。
【0013】
図2に示すように、本実施形態のシート材10を製造する方法(以下第1の製造方法ともいう)は、繊維材料25(
図1参照)と金属材料30とを用いて紙20を製造する製造工程S10と、製造された紙20において、金属有機構造体50を合成する合成工程S20と、を包含する。第1の製造方法の製造工程S10では、繊維材料25と金属材料30とを用いて、例えば、湿式抄紙法によって紙20を製造する。製造工程S10では、後述するバインダーを用いるとよい。合成工程S20については後述する。
【0014】
紙20は、繊維材料25を含む。繊維材料25としては、例えば、植物性天然繊維、動物性天然繊維、化学繊維(人造繊維)、無機繊維(例えばガラス繊維や炭素繊維)等が挙げられる。紙20は、1つの繊維材料25から成形されていてもよいし、2つ以上の繊維材料25から成形されていてもよい。繊維材料25の平均長さは、凡そ0.01μm~30mmμmである。繊維材料25の平均直径は、凡そ1nm~0.1mmnmである。平均長さおよび平均直径は、典型的には電子顕微鏡観察に基づく測定で得られた値を採用することができる。紙20は、好ましくは、バインダーを含む。バインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系バインダー、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。紙20は、金属酸化物を含んでいてもよい。金属酸化物としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化スズ(SnO、SnO2)等が挙げられる。
【0015】
本実施形態の金属材料30は、例えば、繊維状に形成されている。繊維状の金属材料30は、紙20の繊維材料25と絡み合うため、金属材料30は繊維材料25に強固に固定されている。金属材料30の平均長さは、凡そ10μm~30mmμmである。金属材料30の平均直径は、凡そ5μm~200μmである。金属材料30としては、例えば、後述する金属有機構造体50の金属(金属イオン)と同種のものが用いられる。なお、金属材料30と金属有機構造体50の金属(金属イオン)とは異なっていてもよい。金属材料30としては、例えば、周期表の1族~12族に属する金属、金、白金、銀、銅、ルテニウム、スズ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、イットリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、カドミウム、バナジウム、クロム、モリブデン、スカンジウム等が挙げられる。金属材料30は、上述の金属の中から用途等に応じて1種または2種以上の金属が適宜用いられる。
【0016】
金属有機構造体50は、金属(金属イオン)と、有機配位子とから構成されている。より詳細には、金属有機構造体50は、遷移金属とそれを連結する有機配位子とによって構成された多孔性の三次元構造(即ち多孔質構造)を有する金属錯体である。本実施形態の金属有機構造体50は、金属材料30に担持している。なお、金属有機構造体は、多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)と同義である。
【0017】
金属有機構造体50を構成する金属は、有機配位子との結合により特定の分子を収容可能な複数の細孔を形成できるものであれば特に限定されない。金属としては、例えば、周期表の1族~12族に属する金属、金、白金、銀、銅、ルテニウム、スズ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、イットリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、カドミウム、バナジウム、クロム、モリブデン、スカンジウム等が挙げられる。金属有機構造体50を構成する金属は、金属材料30と同じであってもよいし異なっていてもよい。金属有機構造体50を構成する金属は、好ましくは金属材料30と同じである。
【0018】
金属有機構造体50を構成する有機配位子は、金属(金属イオン)と配位結合可能な部位を分子内に2つ以上有し、かつ、金属(金属イオン)との結合によって特定の分子を収容可能な複数の細孔を形成できる有機化合物であれば特に限定されない。有機配位子としては、例えば、ジカルボン酸及びその誘導体、トリカルボン酸及びその誘導体、テトラカルボン酸及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピラゾール類及びその誘導体、トリアゾール類及びその誘導体、テトラゾール類及びその誘導体、ピリジン類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、トリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-アミノテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マロン酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0019】
金属有機構造体50は、例えば、上記金属を含む金属塩と上述の有機配位子とを、水または有機溶媒に溶解させて反応させることにより、溶媒からの析出物として合成される。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。上記有機溶媒を2種以上混合させた混合溶媒を用いてもよい。第1の製造方法の合成工程S20では、例えば、繊維材料25と金属材料30とを含む紙20に上述の有機配位子を溶解させた溶液を塗布することで、金属材料30から溶出した金属イオンと有機配位子とが結合し、金属材料30に担持した金属有機構造体50が合成される。なお、金属材料30に塗布する溶液には、金属材料30と同じ金属を含む金属塩または異なる金属を含む金属塩が含まれていてもよい。なお、シート材10が金属材料30として、第1の金属材料と、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料とを含むとき、金属有機構造体50は、第1の金属材料と同じ金属を含む第1の金属有機構造体と、第2の金属材料と同じ金属を含む第2の金属有機構造体とを含むとよい。
【0020】
以上のように、本実施形態のシート材10によると、金属有機構造体50は紙20に設けられた金属材料30に担持しているため、金属有機構造体50がそのまま紙20に担持している場合と比較してより強固に紙20に固定されている。これにより、金属有機構造体50がシート材10から脱落することがより抑制される。
【0021】
本実施形態のシート材10では、金属材料30は、その少なくとも一部が紙20の内部に設けられている。上記態様によれば、金属有機構造体50が担持した金属材料30の少なくとも一部が紙20の内部に設けられているため、金属材料30は紙20の繊維材料25により強固に固定されている。また、ガス等が紙20を通過することで、ガスと金属有機構造体50との接触機会を増やすことができる。また、金属材料30は、その全てが紙20の内部に設けられているとよい。金属材料30の全てが紙20の内部に設けられているため、金属材料30が紙20により一層強固に固定されていると共に、紙20を通過するガス等と金属有機構造体50との接触機会をより一層増やすことができる。
【0022】
本実施形態のシート材10では、金属材料30と、金属有機構造体50の金属は同じである。上記態様によれば、金属材料30と金属有機構造体50との固定がより強固になる。また、金属材料が紙20により一層強固に固定される。
【0023】
本実施形態のシート材10では、金属材料30と、金属有機構造体50の金属は異なっていてもよい。上記態様によれば、異なる金属を用いることができるため、コストの低減を実現することができ得る。
【0024】
本実施形態のシート材10では、金属材料30は、第1の金属材料と、第2の金属材料とを含み、金属有機構造体50は、第1の金属材料と同じ金属を含む第1の金属有機構造体と、第2の金属材料と同じ金属を含む第2の金属有機構造体と、を含んでいてもよい。上記態様によれば、紙20に異なる金属有機構造体50が含まれるため、シート材10に複数の機能を持たせることができる。
【0025】
本実施形態のシート材10では、金属材料30は、繊維状である。上記態様によれば、紙20の繊維材料25と金属材料30とが絡み合ってより強固に固定されるため、金属有機構造体50の脱落を抑制することができる。また、紙20においてより広範囲に金属有機構造体50を配置することができる。
【0026】
本実施形態のシート材10では、紙20は、バインダーを含む。上記態様によれば、繊維材料25と金属材料30とがバインダーによってより強固に結合される。
【0027】
本実施形態のシート材10の製造方法は、繊維材料25と金属材料30とを用いて紙20を製造する製造工程S10と、製造された紙20において、金属有機構造体50を合成する合成工程S20と、を包含する。上記態様によれば、紙20を製造した後に金属有機構造体50を合成するため、金属有機構造体50内に繊維材料25が入り込むことを抑制することができる。
【0028】
本実施形態のシート材10の製造方法では、紙20は、バインダーを含み、製造工程S10において、紙20は、繊維材料25とバインダーと金属材料30とを用いて製造される。上記態様によれば、バインダーを含む紙20を製造した後に金属有機構造体50を合成するため、金属有機構造体50内にバインダーが入り込むことを抑制することができる。また、バインダーを用いることによって紙20の強度が向上する。
【0029】
シート材10を製造する方法は、上述の第1の製造方法に限定されない。
図3に示すように、シート材10を製造する他の方法(以下第2の製造方法ともいう)は、金属材料30において金属有機構造体50を合成する合成工程S110と、金属材料30に担持した金属有機構造体50と繊維材料25とを用いて紙20を製造する製造工程S120と、を包含する。第2の製造方法の合成工程S110では、例えば、金属材料30に上述の有機配位子を溶解させた溶液を塗布することで、金属材料30から溶出した金属イオンと有機配位子とが結合し、金属材料30に担持した金属有機構造体50が合成される。なお、金属材料30に塗布する溶液には、金属材料30と同じ金属を含む金属塩または異なる金属を含む金属塩が含まれていてもよい。第2の製造方法の製造工程S120では、金属材料30に担持した金属有機構造体50と繊維材料25とを用いて、例えば、湿式抄紙法によって紙20を製造する。製造工程S120では、バインダーを用いるとよい。
【0030】
第2の製造方法によると、まず金属有機構造体50を金属材料30に担持させるため、繊維材料25の性状による制約がなく最も好適な条件下で金属有機構造体50を合成することができる。
【0031】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、シート材10の金属材料30は、繊維状に形成されていたが、これに限定されない。
図4に示すように、シート材110は、紙20と、紙20に設けられた粒子状の金属材料130と、金属材料130に担持する金属有機構造体50と、を備えていてもよい。金属材料130が粒子状に形成されている場合、金属材料130は好ましくは多孔質体である。金属材料130の平均粒子径は、凡そ5nm~1mmである。平均粒子径は、典型的には電子顕微鏡観察に基づく測定で得られた値を採用することができる。シート材110は、上述のシート材10と同様に、第1の製造方法および第2の製造方法によって製造される。
【0032】
本実施形態のシート材110では、金属材料130は、粒子状である。上記態様によれば、紙20において部分的に金属有機構造体50を配置することができる。
【0033】
本実施形態のシート材110では、金属材料130は、多孔質体である。上記態様によれば、金属材料130の表面積がより大きくなるため、金属材料130により多くの金属有機構造体50を担持させることができる。
【0034】
<第3実施形態>
上述した第1実施形態および第2実施形態では、金属材料30は、紙20の内部に設けられていたが、これに限定されない。
図5に示すように、シート材210は、紙20と、紙20に設けられた金属材料230と、金属材料230に担持する金属有機構造体50と、を備えている。本実施形態では、金属材料230は、少なくともその一部が紙20の表面20Aに設けられている。例えば、金属材料230の70wt%~100wt%が紙20の表面20Aに位置し外部に露出している。ここでは、金属材料230の全てが紙20の表面20Aに設けられている。
【0035】
図6に示すように、本実施形態のシート材210を製造する方法(以下第3の製造方法ともいう)は、紙20を準備する準備工程S210と、紙20の表面20Aに金属材料230を配置する配置工程S220と、紙20の表面20Aに配置された金属材料230において金属有機構造体50を合成する合成工程S230と、を含む。第3の製造方法の準備工程S210では、紙20を準備する。即ち、予め製造された紙20を用意してもよいし、例えば湿式抄紙法によって自ら紙20を製造して紙20を用意してもよい。第3の製造方法の配置工程S220において、金属材料230は、例えば、化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)により紙20の表面20Aに配置される。金属材料230は、例えば、金属蒸着、メッキ処理またはスパッタリング処理により紙20の表面20Aに配置される。これにより、紙20の表面20Aの全体に亘って均一に金属材料230を配置することができる。配置工程S220によって配置された金属材料230は、粒子状である。金属材料230の平均粒子径は、第2実施形態の金属材料130の平均粒子径より小さく、凡そ5nm~1mmである。第3の製造方法の合成工程S230では、例えば、紙20の表面20Aに配置された金属材料230に上述の有機配位子を溶解させた溶液を塗布することで、金属材料230から溶出した金属イオンと有機配位子とが結合し、金属材料230に担持した金属有機構造体50が合成される。なお、金属材料230に塗布する溶液には、金属材料230と同じ金属を含む金属塩または異なる金属を含む金属塩が含まれていてもよい。
【0036】
本実施形態のシート材210では、金属材料230は、紙20の表面20Aに設けられている。上記態様によれば、金属有機構造体50が担持した金属材料230が紙20の表面20Aに位置するため、紙20の表面20Aにおいて金属有機構造体50の機能を効果的に発揮することができる。即ち、紙20の表面20Aに沿ってガス等を通過させることで、ガスと金属有機構造体50との接触機会を増やすことができる。
【0037】
本実施形態のシート材210の製造方法は、紙20の表面20Aに金属材料230を配置する配置工程S220と、紙20の表面20Aに配置された金属材料230において、金属有機構造体50を合成する合成工程S230と、を包含する。上記態様によれば、紙20の表面20Aの全体に亘ってより均一に金属有機構造体50を合成することができる。
【0038】
本実施形態のシート材210の製造方法では、配置工程S220において、化学蒸着法または物理蒸着法により紙20の表面20Aに配置される。上記態様によれば、紙20の表面20Aに金属材料230を容易に配置することができる。また、金属材料230は金属蒸着またはめっき処理またはスパッタリング処理により紙20の表面20Aに配置されとよい。上記態様によれば、紙20の表面20Aにより均一に金属材料230を配置することができる。
【0039】
図7Aおよび
図7Bは、ハニカム構造を有する成形体100の一例を示す図である。成形体100は、上述したシート材10、シート材110またはシート材210から形成されている。成形体100は、例えば、繊維材料25を含む紙20と、紙20に設けられた金属材料30と、金属および有機配位子から構成され、かつ、金属材料30に担持する金属有機構造体50と、を備えている。成形体100は、ハニカム構造を有する。成形体100は、例えば、内部にハニカム構造を有する円柱状に形成される。なお、成形体100の形状は円柱状に限定されない。成形体100は、例えば、自動二輪車や発電機等の汎用エンジンから排出される排気ガスを浄化するために用いられる。
【0040】
図8に示すように、成形体100を製造する方法(以下第1の成形体製造方法ともいう)は、繊維材料25と金属材料30とを含む紙20を準備する準備工程S310と、紙20を用いてハニカム構造を有する中間体を製造する製造工程S320と、製造された中間体において、金属有機構造体50を合成する合成工程S330と、を包含する。第1の成形体製造方法の準備工程S310では、繊維材料25と金属材料30とを含む紙20を準備する。即ち、予め製造された紙20を用意してもよいし、例えば湿式抄紙法によって自ら紙20を製造して紙20を用意してもよい。なお、紙20に含まれる金属材料は、上述した金属材料130や金属材料230であってもよい。第1の成形体製造方法の製造工程S320では、複数の紙20を適宜折り曲げかつ接着剤等によって相互に接着させることで、ハニカム構造を有する中間体(図示せず)が製造される。第1の成形体製造方法の合成工程S330では、例えば、ハニカム構造を有する中間体に含まれる金属材料30に上述の有機配位子を溶解させた溶液を塗布することで、金属材料30から溶出した金属イオンと有機配位子とが結合し、金属材料30に担持した金属有機構造体50が合成される。なお、金属材料30に塗布する溶液には、金属材料30と同じ金属を含む金属塩または異なる金属を含む金属塩が含まれていてもよい。
【0041】
第1の成形体製造方法によると、ハニカム構造を形成する際には紙20を折り曲げたり接着したりするが、ハニカム構造を形成した後に金属有機構造体50を合成するため、ハニカム構造を形成する際に発生する応力が金属有機構造体50に加わらず、金属有機構造体50の状態を維持することができる。
【0042】
成形体100を製造する方法は、上述の第1の成形体製造方法に限定されない。
図9に示すように、成形体100を製造する他の方法(以下第2の成形体製造方法ともいう)は、紙20と、金属材料30と、金属材料30に担持した金属有機構造体50とを含むシート材10を準備する準備工程S410と、シート材10を用いてハニカム構造を形成する形成工程S420と、を包含する。第2の成形体製造方法の準備工程S410は、例えば、上述した第1の製造方法または第2の製造方法によって製造されたシート材10を準備する。なお、準備工程S410では、シート材10に代えて、シート材110やシート材210を準備してもよい。第2の成形体製造方法の形成工程S420では、複数のシート材10を適宜折り曲げかつ接着剤等によって相互に接着させることで、ハニカム構造を有する成形体100が製造される。
【0043】
第2の成形体製造方法によると、金属有機構造体50を含むシート材10を用いてハニカム構造を形成するため、シート材10のハニカム構造の全体に亘って金属有機構造体50をより均一に配置することができる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0045】
上述した実施形態では、紙20には繊維状の金属材料30および粒子状の金属材料130のいずれか一方が設けられてたが、紙20には繊維状の金属材料30および粒子状の金属材料130両方が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 シート材
20 紙
20A 表面
25 繊維材料
30 金属材料
50 金属有機構造体
100 成形体
110 シート材
130 金属材料
210 シート材
230 金属材料
【手続補正書】
【提出日】2022-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料を含む紙と、
前記紙に設けられた繊維状の金属と、
金属および有機配位子から構成された金属有機構造体と、を備え、
前記金属有機構造体の前記金属と前記繊維状の金属とは結合している、シート材。
【請求項2】
前記繊維状の金属は、少なくともその一部が前記紙の表面に設けられている、請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記繊維状の金属は、少なくともその一部が前記紙の内部に設けられている、請求項1に記載のシート材。
【請求項4】
前記繊維状の金属と前記金属有機構造体の前記金属とは同じである、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項5】
前記繊維状の金属と前記金属有機構造体の前記金属とは異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項6】
前記繊維状の金属は、第1の金属と、第2の金属とを含み、
前記金属有機構造体は、前記第1の金属と同じ金属を含む第1の金属有機構造体と、前記第2の金属と同じ金属を含む第2の金属有機構造体と、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項7】
前記紙は、バインダーを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項8】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた第1の金属と、第2の金属および有機配位子から構成され、かつ、前記第1の金属と前記第2の金属とが結合した金属有機構造体と、を備えたシート材を製造する方法であって、
前記繊維材料と前記第1の金属とを用いて前記紙を製造する製造工程と、
製造された前記紙において、前記金属有機構造体を合成する合成工程と、を包含する製造方法。
【請求項9】
前記紙は、バインダーを含み、
前記製造工程において、前記紙は、前記繊維材料と前記バインダーと前記第1の金属とを用いて製造される、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
繊維材料を含む紙と、前記紙に設けられた第1の金属と、第2の金属および有機配位子から構成され、かつ、前記第1の金属と前記第2の金属とが結合した金属有機構造体と、を備え、ハニカム構造を有する成形体を製造する方法であって、
前記繊維材料と前記第1の金属とを含む前記紙を準備する準備工程と、
前記紙を用いてハニカム構造を有する中間体を製造する製造工程と、
製造された前記中間体において、前記金属有機構造体を合成する合成工程と、を包含する製造方法。