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  • 特開-金属有機構造体を備えたシート材 図1
  • 特開-金属有機構造体を備えたシート材 図2
  • 特開-金属有機構造体を備えたシート材 図3A
  • 特開-金属有機構造体を備えたシート材 図3B
  • 特開-金属有機構造体を備えたシート材 図4
  • 特開-金属有機構造体を備えたシート材 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005801
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】金属有機構造体を備えたシート材
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/06 20060101AFI20240110BHJP
   D21H 19/22 20060101ALI20240110BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20240110BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D21H19/06
D21H19/22
D21H19/10 A
B01J20/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106179
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】道田 航
(72)【発明者】
【氏名】河原 将人
【テーマコード(参考)】
4G066
4L055
【Fターム(参考)】
4G066AB07A
4G066AB12A
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA03
4G066BA07
4G066BA22
4G066CA02
4G066DA02
4G066DA03
4G066DA07
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG03
4L055AG58
4L055AH02
4L055AH29
4L055AH33
4L055AH37
4L055AH50
4L055AJ01
4L055BE08
4L055FA11
(57)【要約】
【課題】金属有機構造体が紙に対してより確実に固定されたシート材を提供すること。
【解決手段】シート材10は、繊維材料25を含む紙20と、紙20の表面20Aに結合されたバインダー40と、金属および有機配位子から構成された金属有機構造体50と、を備え、金属有機構造体50は、バインダー40によって紙20に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料を含む紙と、
前記紙の表面に結合されたバインダーと、
金属および有機配位子から構成された金属有機構造体と、を備え、
前記金属有機構造体は、前記バインダーによって前記紙に固定されている、シート材。
【請求項2】
前記バインダーは、ポリビニルピロリドンである、請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記バインダーは、セルロースナノファイバーである、請求項1に記載のシート材。
【請求項4】
繊維材料を含む紙と、前記紙の表面に結合されたバインダーと、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記バインダーによって前記紙に固定された金属有機構造体と、を備えた、シート材を製造する方法であって、
前記紙を準備する準備工程と、
前記金属有機構造体および前記バインダーを含む溶液を前記紙の表面に塗布する塗布工程と、を包含する、製造方法。
【請求項5】
前記バインダーは、ポリビニルピロリドンである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記バインダーは、セルロースナノファイバーである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記溶液は、界面活性剤および分散剤を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
繊維材料を含む紙と、前記紙の表面に結合されたバインダーと、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記バインダーによって前記紙に固定された金属有機構造体と、を備え、ハニカム構造を有する成形体を製造する方法であって、
前記紙を用いてハニカム構造を有する中間体を製造する製造工程と、
前記金属有機構造体および前記バインダーを含む溶液を製造された前記中間体に塗布する塗布工程と、を包含する製造方法。
【請求項9】
繊維材料を含む紙と、前記紙の表面に結合されたバインダーと、金属および有機配位子から構成され、かつ、前記バインダーによって前記紙に固定された金属有機構造体と、を備え、ハニカム構造を有する成形体を製造する方法であって、
前記紙と、前記バインダーと、前記バインダーによって前記紙に固定された前記金属有機構造体とを含むシート材を準備する準備工程と、
前記シート材を用いてハニカム構造を形成する形成工程と、を包含する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属有機構造体を備えたシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスの貯蔵や分離、脱臭、空気や水の浄化等に用いられる材料として金属有機構造体(MOF:Metal of Frameworks)の研究が活発に行われている。金属有機構造体は、金属および有機配位子から構成され、様々な構造を有している。また、金属有機構造体は、規則正しく配列された複数の微細な孔を有し、表面積が極めて大きい。このため、幅広い分野での利用が期待されている。例えば、特許文献1には、多孔性金属錯体を熱可塑性樹脂不織布に固定したシート材が開示されている。特許文献1では、多孔性金属錯体粒子を例えば、不織布に一体化する前の繊維の表面に接着したり、抄紙工程で固着剤と合わせて抄きこんだり、不織布シートに粒子を振りかけた後に熱を加えて固定したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-162573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属有機構造体は粒子が非常に小さいためその取扱いが難しいという問題がある。また、金属有機構造体を紙や不織布等の他の部材に固定したときに、他の部材に対する金属有機構造体の固定が不十分である結果、金属有機構造体が脱落してしまうという問題が生じ得る。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属有機構造体が紙に対してより確実に固定されたシート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシート材は、繊維材料を含む紙と、前記紙の表面に結合されたバインダーと、金属および有機配位子から構成された金属有機構造体と、を備え、前記金属有機構造体は、前記バインダーによって前記紙に固定されている。
【0007】
本発明に係るシート材によると、金属有機構造体は紙の表面に結合されたバインダーによって紙に固定されているため、金属有機構造体がそのまま紙に固定されている場合と比較してより強固に紙に固定されている。これにより、金属有機構造体がシート材から脱落することがより抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属有機構造体が紙に対してより確実に固定されたシート材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、シート材の一部を拡大した断面図である。
図2図2は、シート材の製造方法を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、成形体の斜視図である。
図3B図3Bは、成形体の正面図である。
図4図4は、成形体の第1の製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、成形体の第2の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るシート材の実施形態について説明する。シート材は、例えば、特定のガスを吸着するために用いられる部材である。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1に示すように、シート材10は、紙20と、紙20の表面20Aに結合されたバインダー40と、バインダー40によって紙20に固定された金属有機構造体50と、を備えている。
【0012】
図2に示すように、本実施形態のシート材10を製造する方法は、紙20を準備する準備工程S10と、金属有機構造体50およびバインダー40を含む溶液を紙20の表面20Aに塗布する塗布工程S20と、を包含する。準備工程S10では、予め製造された紙20を用意してもよいし、例えば湿式抄紙法によって自ら紙20を製造して紙20を用意してもよい。塗布工程S20については後述する。
【0013】
紙20は、繊維材料25(図2参照)を含む。繊維材料25としては、例えば、植物性天然繊維、動物性天然繊維、化学繊維(人造繊維)、無機繊維(例えばガラス繊維や炭素繊維)等が挙げられる。紙20は、1つの繊維材料25から成形されていてもよいし、2つ以上の繊維材料25から成形されていてもよい。繊維材料25の平均長さは、凡そ0.01μm~30mmμmである。繊維材料25の平均直径は、凡そ1nm~0.1mmである。平均長さおよび平均直径は、典型的には電子顕微鏡観察に基づく測定で得られた値を採用することができる。紙20は、好ましくは、バインダーを含む。バインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系バインダー、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。紙20は、金属酸化物を含んでいてもよい。金属酸化物としては、例えば、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、酸化スズ(SnO、SnO)等が挙げられる。
【0014】
金属有機構造体50は、金属(金属イオン)と、有機配位子とから構成されている。より詳細には、金属有機構造体50は、遷移金属とそれを連結する有機配位子とによって構成された多孔性の三次元構造(即ち多孔質構造)を有する金属錯体である。本実施形態の金属有機構造体50は、バインダー40によって紙20の表面20Aに固定されている。なお、金属有機構造体は、多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)と同義である。
【0015】
金属有機構造体50を構成する金属は、有機配位子との結合により特定の分子を収容可能な複数の細孔を形成できるものであれば特に限定されない。金属としては、例えば、周期表の1族~12族に属する金属、金、白金、銀、銅、ルテニウム、スズ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、イットリウム、マグネシウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、カドミウム、バナジウム、クロム、モリブデン、スカンジウム等が挙げられる。
【0016】
金属有機構造体50を構成する有機配位子は、金属(金属イオン)と配位結合可能な部位を分子内に2つ以上有し、かつ、金属(金属イオン)との結合によって特定の分子を収容可能な複数の細孔を形成できる有機化合物であれば特に限定されない。有機配位子としては、例えば、ジカルボン酸及びその誘導体、トリカルボン酸及びその誘導体、テトラカルボン酸及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピラゾール類及びその誘導体、トリアゾール類及びその誘導体、テトラゾール類及びその誘導体、ピリジン類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、トリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-アミノテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マロン酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0017】
金属有機構造体50は、例えば、上記金属を含む金属塩と上述の有機配位子とを、水または有機溶媒に溶解させて反応させることにより、溶媒からの析出物として合成される。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。上記有機溶媒を2種以上混合させた混合溶媒を用いてもよい。
【0018】
塗布工程S20で用いる溶液は、金属有機構造体50と、バインダー40と、溶媒とを含む。溶液は、所定の粘性(例えば20℃において5mPa・s~100000mPa・s)を有する。バインダー40は、金属有機構造体50を紙20の表面20Aに固定する機能を有する物質である。バインダー40としては、例えばポリビニルピロリドン(PVP)等の高分子化合物や、セルロースナノファイバー(CNF)等のナノサイズの繊維状物質等が挙げられる。溶媒としては、水または有機溶媒が挙げられる。有機溶媒は、金属有機構造体50を合成する際に用いられるものと同様のものが用いられる。溶液は、界面活性剤や分散剤をさらに含んでいてもよい。塗布工程S20では、例えば、上述の溶液を紙20の表面20Aに塗布した後に、紙20を乾燥させて溶媒を揮発(蒸発)させる。
【0019】
以上のように、本実施形態のシート材10によると、金属有機構造体50は紙20の表面20Aに結合されたバインダー40によって紙20に固定されているため、金属有機構造体50がそのまま紙20に固定されている場合と比較してより強固に紙20に固定されている。これにより、金属有機構造体50がシート材10から脱落することがより抑制される。
【0020】
本実施形態のシート材10では、バインダー40は、ポリビニルピロリドンであってもよい。ポリビニルピロリドンは、紙20の繊維材料25との親和性が比較的高いため、バインダー40と紙20とがより強固に結合している。
【0021】
本実施形態のシート材10では、バインダー40は、セルロースナノファイバーであってもよい。セルロースナノファイバーは、紙20の繊維材料25との親和性が比較的高いため、バインダー40と紙20とがより強固に結合している。
【0022】
本実施形態のシート材10の製造方法は、紙20を準備する準備工程S10と、金属有機構造体50およびバインダー40を含む溶液を紙20の表面20Aに塗布する塗布工程S20と、を包含する。上記態様によれば、金属有機構造体50をバインダー40によって紙20に容易に固定することができる。
【0023】
本実施形態のシート材10の製造方法では、バインダー40は、ポリビニルピロリドンであってもよい。ポリビニルピロリドンは溶液における分散性が比較的高いため、紙20の表面20Aの全体に亘ってより均一に金属有機構造体50を固定することができる。
【0024】
本実施形態のシート材の製造方法では、バインダー40は、セルロースナノファイバーであってもよい。セルロースナノファイバーは溶液における分散性が比較的高いため、紙20の表面20Aの全体に亘ってより均一に金属有機構造体50を固定することができる。
【0025】
本実施形態のシート材10の製造方法では、溶液は、界面活性剤および分散剤を含んでいてもよい。上記態様によれば、溶液においてバインダー40および金属有機構造体50がより均一に分散するため、紙20の表面20Aの全体に亘ってより均一に金属有機構造体50を固定することができる。
【0026】
図3Aおよび図3Bは、ハニカム構造を有する成形体100の一例を示す図である。成形体100は、上述したシート材10から形成されている。成形体100は、例えば、繊維材料25を含む紙20と、紙20の表面20Aに結合されたバインダー40と、金属および有機配位子から構成され、かつ、バインダー40によって紙20に固定された金属有機構造体50と、を備えている。成形体100は、ハニカム構造を有する。成形体100は、例えば、内部にハニカム構造を有する円柱状に形成される。なお、成形体100の形状は円柱状に限定されない。成形体100は、例えば、自動二輪車や発電機等の汎用エンジンから排出される排気ガスを浄化するために用いられる。
【0027】
図4に示すように、成形体100を製造する方法(以下第1の成形体製造方法ともいう)は、繊維材料25を含む紙20を準備する準備工程S110と、紙20を用いてハニカム構造を有する中間体を製造する製造工程S120と、金属有機構造体50およびバインダー40を含む溶液を製造された中間体に塗布する塗布工程S130と、を包含する。第1の成形体製造方法の準備工程S110では、予め製造された紙20を用意してもよいし、例えば湿式抄紙法によって自ら紙20を製造して紙20を用意してもよい。第1の成形体製造方法の製造工程S120では、複数の紙20を適宜折り曲げかつ接着剤等によって相互に接着させることで、ハニカム構造を有する中間体(図示せず)が製造される。第1の成形体製造方法の塗布工程S130では、例えば、ハニカム構造を有する中間体に上記の溶液を塗布することで、金属有機構造体50をバインダー40によって紙20に固定させる。なお、塗布工程S130では、例えば、上述の溶液を紙20の表面20Aに塗布した後に、紙20を乾燥させて溶媒を揮発(蒸発)させる。
【0028】
第1の成形体製造方法によると、ハニカム構造を形成する際には紙を折り曲げたり接着したりするが、ハニカム構造を形成した後に金属有機構造体50をバインダー40によって紙20に固定するため、ハニカム構造を形成する際に発生する応力が金属有機構造体50に加わらず、金属有機構造体50の状態を維持することができる。
【0029】
成形体100を製造する方法は、上述の第1の成形体製造方法に限定されない。図5に示すように、成形体100を製造する他の方法(以下第2の成形体製造方法ともいう)は、紙20と、バインダー40と、バインダー40によって紙20に固定された金属有機構造体50とを含むシート材10を準備する準備工程S210と、シート材10を用いてハニカム構造を形成する形成工程S220と、を包含する。第2の成形体製造方法の準備工程S210は、例えば、上述したシート材10の製造方法によって製造されたシート材10を準備する。第2の成形体製造方法の形成工程S220では、複数のシート材10を適宜折り曲げかつ接着剤等によって相互に接着させることで、ハニカム構造を有する成形体100が製造される。
【0030】
第2の成形体製造方法によると、金属有機構造体50を含むシート材10を用いてハニカム構造を形成するため、シート材10のハニカム構造の全体に亘って金属有機構造体50をより均一に配置することができる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 シート材
20 紙
20A 表面
25 繊維材料
40 バインダー
50 金属有機構造体
100 成形体
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5