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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058026
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】偏波共用パッチアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20240418BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20240418BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01Q21/24
H01Q23/00
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165129
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】野呂 崇徳
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA01
5J021AB06
5J021FA34
5J045AA14
5J045CA02
5J045CA03
5J045DA10
5J045JA12
(57)【要約】
【課題】本開示は、互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナにおいて、構造を複雑しないで、両偏波ポートの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波に対する交差偏波を発生させないことを目的とする。
【解決手段】本開示は、矩形パッチ31と、グランド板と、矩形パッチ31とグランド板との間の誘電体層と、矩形パッチ31に配置され、互いに直交する偏波のうちの水平偏波を励振し、矩形パッチ31の高次モードの電流分布を回避する位置に配置される水平偏波ポート311Hと、矩形パッチ31に配置され、互いに直交する偏波のうちの垂直偏波を励振し、矩形パッチ31の高次モードの電流分布を回避する位置に配置される垂直偏波ポート311Vと、を備えることを特徴とする偏波共用パッチアンテナA3である。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナであって、
放射パッチと、グランド板と、前記放射パッチと前記グランド板との間の誘電体層と、
前記放射パッチに配置され、前記互いに直交する偏波のうちの第1偏波を励振し、前記放射パッチの高次モードの電流分布を回避する位置に配置される第1偏波ポートと、
前記放射パッチに配置され、前記互いに直交する偏波のうちの第2偏波を励振し、前記放射パッチの高次モードの電流分布を回避する位置に配置される第2偏波ポートと、
を備えることを特徴とする偏波共用パッチアンテナ。
【請求項2】
前記第1偏波ポートの配置位置と前記放射パッチの中央位置との間の、前記第1偏波と平行方向における距離は、前記放射パッチの中心波長の1/8倍以下であり、
前記第2偏波ポートの配置位置と前記放射パッチの中央位置との間の、前記第2偏波と平行方向における距離は、前記放射パッチの中心波長の1/8倍以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の偏波共用パッチアンテナ。
【請求項3】
前記放射パッチの入力インピーダンスとアンテナ電源の出力インピーダンスとの間の整合を図る、前記放射パッチと前記アンテナ電源との間の外部インピーダンス整合回路、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の偏波共用パッチアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナは、MIMOを利用する基地局アンテナ等に適用されており、特許文献1~3等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-059605号公報
【特許文献2】特開2004-032046号公報
【特許文献3】特表2020-511890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1従来技術の偏波共用パッチアンテナの構成を図1に示す。第1従来技術の偏波共用パッチアンテナA1は、放射パッチ11、グランド板、放射パッチ11とグランド板との間の誘電体層、水平偏波電源12H及び垂直偏波電源12Vを備える。放射パッチ11は、水平偏波ポート111H及び垂直偏波ポート111Vを備える。
【0005】
水平偏波ポート111Hは、放射パッチ11に配置され、互いに直交する偏波のうちの水平偏波を励振し、放射パッチ11の入力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの間の整合を図る位置(放射パッチ11の端部近傍)に配置される。具体的には、水平偏波ポート111Hの配置位置と放射パッチ11の中心位置112との間の、水平偏波と平行方向における距離dは、放射パッチ11の中心波長λの1/4倍程度である。
【0006】
垂直偏波ポート111Vは、放射パッチ11に配置され、互いに直交する偏波のうちの垂直偏波を励振し、放射パッチ11の入力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの間の整合を図る位置(放射パッチ11の端部近傍)に配置される。具体的には、垂直偏波ポート111Vの配置位置と放射パッチ11の中心位置112との間の、垂直偏波と平行方向における距離dは、放射パッチ11の中心波長λの1/4倍程度である。
【0007】
第1従来技術の偏波共用パッチアンテナの解決課題を図2に示す。偏波共用パッチアンテナA1のリターンロスの広帯域特性を重視して、放射パッチ11とグランド板との間の誘電体層厚さを増加すると、放射パッチ11の高次モードが意図せず励振される。
【0008】
図2の上段では、水平偏波ポート111Hが、水平偏波を励振すると、放射パッチ11の水平偏波の基本モードが、所望通り励振されるとともに、放射パッチ11の水平偏波の高次モードが、意図せず励振される。図2の下段では、垂直偏波ポート111Vが、垂直偏波を励振すると、放射パッチ11の垂直偏波の基本モードが、所望通り励振されるとともに、放射パッチ11の垂直偏波の高次モードが、意図せず励振される。
【0009】
ここで、水平偏波ポート111H及び垂直偏波ポート111Vは、放射パッチ11の入力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの間の整合を図る位置(放射パッチ11の端部近傍)に配置される。よって、水平偏波ポート111H及び垂直偏波ポート111Vの配置位置は、放射パッチ11の高次モードの電流分布と重複する。そして、水平偏波ポート111Hと垂直偏波ポート111Vとの間のアイソレーションが劣化するとともに、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)が発生する。
【0010】
第2従来技術の偏波共用パッチアンテナの構成を図3に示す。第2従来技術の偏波共用パッチアンテナA2は、放射パッチ21、グランド板、放射パッチ21とグランド板との間の誘電体層、水平偏波電源22H、垂直偏波電源22V、180°ハイブリッド23H及び180°ハイブリッド23Vを備える。放射パッチ21は、水平偏波ポート211H-1、211H-2及び垂直偏波ポート211V-1、211V-2を備える。
【0011】
水平偏波ポート211H-1、211H-2は、放射パッチ21の入力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの間の整合を図る位置(放射パッチ21の右端部及び左端部の近傍)に配置される。そして、水平偏波ポート211H-1、211H-2は、180°ハイブリッド23Hを利用して、励振位相差180°で水平偏波を励振する。
【0012】
垂直偏波ポート211V-1、211V-2は、放射パッチ21の入力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの間の整合を図る位置(放射パッチ21の下端部及び上端部の近傍)に配置される。そして、垂直偏波ポート211V-1、211V-2は、180°ハイブリッド23Vを利用して、励振位相差180°で垂直偏波を励振する。
【0013】
第2従来技術の偏波共用パッチアンテナの解決課題を図4に示す。偏波共用パッチアンテナA2のリターンロスの広帯域特性を重視して、放射パッチ21とグランド板との間の誘電体層厚さを増加しても、放射パッチ21の高次モードが所望通り励振されない。図4では、水平偏波励振について説明するが、垂直偏波励振についても同様である。
【0014】
図4の上段では、水平偏波ポート211H-1が、励振位相0°で水平偏波を励振すると、放射パッチ21の水平偏波の基本モードが、所望通り励振されるとともに、放射パッチ21の水平偏波の高次モードが、意図せず励振される(後述のように除去される)。図4の中段では、水平偏波ポート211H-2が、励振位相180°で水平偏波を励振すると、放射パッチ21の水平偏波の基本モードが、所望通り励振されるとともに、放射パッチ21の水平偏波の高次モードが、意図せず励振される(後述のように除去される)。
【0015】
図4の下段では、水平偏波ポート211H-1、211H-2が、励振位相差180°で水平偏波を同時に励振すると、放射パッチ21のそれぞれの水平偏波の基本モードが、所望通り重ね合わせて励振されるものの、放射パッチ21のそれぞれの水平偏波の高次モードが、所望通り弱め合って除去される。つまり、水平偏波ポート211H-1、211H-2の間の励振位相差が180°であるため、水平偏波ポート211H-1、211H-2に対する電流方向が逆転しており、放射パッチ21の高次モードの電流分布のうち、放射パッチ21の全ての対角位置の電流分布が、弱め合って除去される。
【0016】
ここで、水平偏波ポート211H-1、211H-2及び垂直偏波ポート211V-1、211V-2は、放射パッチ21の入力インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの間の整合を図る位置(放射パッチ21の右端部、左端部、下端部及び上端部の近傍)に配置される。しかし、水平偏波ポート211H-1、211H-2及び垂直偏波ポート211V-1、211V-2の配置位置は、放射パッチ21の高次モードの電流分布(そもそも存在しない)と重複しない。そして、水平偏波ポート211H-1、211H-2と垂直偏波ポート211V-1、211V-2との間のアイソレーションが向上するとともに、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)が発生しない。
【0017】
ただし、偏波共用パッチアンテナA2は、水平偏波ポート211H-1、211H-2及び垂直偏波ポート211V-1、211V-2のように、4個の給電ポートを必要とし、180°ハイブリッド23H及び180°ハイブリッド23Vのように、2個のハイブリッドを必要とし、構造を複雑にする。或いは、偏波共用パッチアンテナA2は、180°ハイブリッド23H及び180°ハイブリッド23Vのような、2個のハイブリッドに代替して、2セットの分配器及び180°移相線路を必要とし、構造を複雑にする。
【0018】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナにおいて、構造を複雑しないで、両偏波ポートの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波に対する交差偏波を発生させないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、互いに直交する偏波を励振する両偏波ポートが、放射パッチの高次モードの電流分布を回避する位置(放射パッチの中央近傍)に配置される。
【0020】
具体的には、本開示は、互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナであって、放射パッチと、グランド板と、前記放射パッチと前記グランド板との間の誘電体層と、前記放射パッチに配置され、前記互いに直交する偏波のうちの第1偏波を励振し、前記放射パッチの高次モードの電流分布を回避する位置に配置される第1偏波ポートと、前記放射パッチに配置され、前記互いに直交する偏波のうちの第2偏波を励振し、前記放射パッチの高次モードの電流分布を回避する位置に配置される第2偏波ポートと、を備えることを特徴とする偏波共用パッチアンテナである。
【0021】
この構成によれば、アンテナ構造を複雑しないで、両偏波ポートの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波に対する交差偏波を発生させないことができる。
【0022】
また、本開示は、前記第1偏波ポートの配置位置と前記放射パッチの中央位置との間の、前記第1偏波と平行方向における距離は、前記放射パッチの中心波長の1/8倍以下であり、前記第2偏波ポートの配置位置と前記放射パッチの中央位置との間の、前記第2偏波と平行方向における距離は、前記放射パッチの中心波長の1/8倍以下であることを特徴とする偏波共用パッチアンテナである。
【0023】
この構成によれば、互いに直交する偏波を励振する両偏波ポートを、放射パッチの高次モードの電流分布を回避する位置に配置することができる。
【0024】
また、本開示は、前記放射パッチの入力インピーダンスとアンテナ電源の出力インピーダンスとの間の整合を図る、前記放射パッチと前記アンテナ電源との間の外部インピーダンス整合回路、をさらに備えることを特徴とする偏波共用パッチアンテナである。
【0025】
この構成によれば、互いに直交する偏波を励振する両偏波ポートを、放射パッチの中央近傍に配置したとしても、インピーダンス整合を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本開示は、互いに直交する偏波に共用される偏波共用パッチアンテナにおいて、構造を複雑しないで、両偏波ポートの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波に対する交差偏波を発生させないことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1従来技術の偏波共用パッチアンテナの構成を示す図である。
図2】第1従来技術の偏波共用パッチアンテナの解決課題を示す図である。
図3】第2従来技術の偏波共用パッチアンテナの構成を示す図である。
図4】第2従来技術の偏波共用パッチアンテナの解決課題を示す図である。
図5】第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成を示す図である。
図6】第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの解決手段を示す図である。
図7】第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの回路特性を示す図である。
図8】第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの放射特性を示す図である。
図9】第2実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成を示す図である。
図10】第3実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0029】
(第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成)
第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成を図5に示す。第1実施形態の偏波共用パッチアンテナA3は、矩形パッチ31、グランド板、矩形パッチ31とグランド板との間の誘電体層、水平偏波電源32H、垂直偏波電源32V、外部インピーダンス整合回路33H及び外部インピーダンス整合回路33Vを備える。矩形パッチ31は、水平偏波ポート311H及び垂直偏波ポート311Vを備える。
【0030】
水平偏波ポート311Hは、矩形パッチ31に配置され、互いに直交する偏波のうちの水平偏波を励振し、矩形パッチ31の高次モードの電流分布を回避する位置(矩形パッチ31の中央近傍)に配置される。具体的には、水平偏波ポート311Hの配置位置と矩形パッチ31の中心位置312との間の、水平偏波と平行方向における距離dは、矩形パッチ31の中心波長λの1/8倍以下であるが、0ではない(ショートを回避するため)。
【0031】
垂直偏波ポート311Vは、矩形パッチ31に配置され、互いに直交する偏波のうちの垂直偏波を励振し、矩形パッチ31の高次モードの電流分布を回避する位置(矩形パッチ31の中央近傍)に配置される。具体的には、垂直偏波ポート311Vの配置位置と矩形パッチ31の中心位置312との間の、垂直偏波と平行方向における距離dは、矩形パッチ31の中心波長λの1/8倍以下であるが、0ではない(ショートを回避するため)。
【0032】
第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの解決手段を図6に示す。偏波共用パッチアンテナA3のリターンロスの広帯域特性を重視して、矩形パッチ31とグランド板との間の誘電体層厚さを増加すると、矩形パッチ31の高次モードが意図せず励振される。
【0033】
図6の上段では、水平偏波ポート311Hが、水平偏波を励振すると、矩形パッチ31の水平偏波の基本モードが、所望通り励振されるとともに、矩形パッチ31の水平偏波の高次モードが、意図せず励振される。図6の下段では、垂直偏波ポート311Vが、垂直偏波を励振すると、矩形パッチ31の垂直偏波の基本モードが、所望通り励振されるとともに、矩形パッチ31の垂直偏波の高次モードが、意図せず励振される。
【0034】
ここで、水平偏波ポート311H及び垂直偏波ポート311Vは、矩形パッチ31の高次モードの電流分布を回避する位置(矩形パッチ31の中央近傍)に配置される。よって、水平偏波ポート311H及び垂直偏波ポート311Vの配置位置は、矩形パッチ31の高次モードの電流分布と重複しない。そして、水平偏波ポート311Hと垂直偏波ポート311Vとの間のアイソレーションが向上するとともに(図7を参照)、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)が発生しない(図8を参照)。
【0035】
よって、偏波共用パッチアンテナA3の構造を複雑しないで、水平偏波ポート311Hと垂直偏波ポート311Vとの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)を発生させないことができる。そして、互いに直交する偏波を励振する水平偏波ポート311Hと垂直偏波ポート311Vを、矩形パッチ31の高次モードの電流分布を回避する位置に配置することができる。
【0036】
外部インピーダンス整合回路33Hは、水平偏波ポート311Hと水平偏波電源32Hとの間に接続され、矩形パッチ31の入力インピーダンスと水平偏波電源32Hの出力インピーダンスとの間の整合を図る。外部インピーダンス整合回路33Vは、垂直偏波ポート311Vと垂直偏波電源32Vとの間に接続され、矩形パッチ31の入力インピーダンスと垂直偏波電源32Vの出力インピーダンスとの間の整合を図る。
【0037】
よって、互いに直交する偏波を励振する水平偏波ポート311Hと垂直偏波ポート311Vを、矩形パッチ31の端部近傍に配置するのではなく、矩形パッチ31の中央近傍に配置したとしても、インピーダンス整合を図ることができる。
【0038】
(第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの特性)
第1実施形態の偏波共用パッチアンテナの回路特性及び放射特性を図7、8に示す。図7、8では、矩形パッチ31の中心周波数は、f[Hz]であり、矩形パッチ31の周波数帯域は、0.93f[Hz]~1.07f[Hz]である。水平偏波ポート311H及び垂直偏波ポート311Vの配置位置は、d=0.075λ[m]である(図5を参照)。矩形パッチ31とグランド板との間の誘電体層厚さは、偏波共用パッチアンテナA3のリターンロスの広帯域特性を重視して、0.035λ[m]である。
【0039】
なお、矩形パッチ31の中央近傍で給電するために、プローブ給電又はエッジ給電等を適用することができる。また、偏波共用パッチアンテナA3のリターンロスの広帯域特性を重視して、矩形パッチ31とグランド板との間の誘電体層厚さを増加するのみならず、矩形パッチ31とペアとなる寄生パッチを追加することもできる。
【0040】
図7の左欄では、第1従来技術(図1において、d~λ/4[m])の水平偏波ポート111Hと垂直偏波ポート111Vとの間のアイソレーションは、放射パッチ11の周波数帯域において、所望特性の-20dBと比べて劣化している。一方で、第1実施形態の水平偏波ポート311Hと垂直偏波ポート311Vとの間のアイソレーションは、矩形パッチ31の周波数帯域において、所望特性の-20dBと比べて向上している。
【0041】
図7の右欄では、第1従来技術(図1において、d~λ/4[m])の偏波共用パッチアンテナA1のリターンロスは、放射パッチ11の周波数帯域において、所望特性の-10dBと比べて向上している。一方で、第1実施形態(図5において、外部インピーダンス整合回路33H、33Vを追加)の偏波共用パッチアンテナA3のリターンロスも、矩形パッチ31の周波数帯域において、所望特性の-10dBと比べて向上している。
【0042】
図8の左欄では、第1従来技術(図1において、d~λ/4[m])の偏波共用パッチアンテナA1の放射特性は、特に正面方向0°において、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)を発生させている。図8の右欄では、第1実施形態の偏波共用パッチアンテナA3の放射特性は、特に正面方向0°において、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)を抑圧させている。
【0043】
(第2、3実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成)
第2実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成を図9に示す。第2実施形態の偏波共用パッチアンテナA4は、円形パッチ41、グランド板、円形パッチ41とグランド板との間の誘電体層、水平偏波電源42H、垂直偏波電源42V、外部インピーダンス整合回路43H及び外部インピーダンス整合回路43Vを備える。円形パッチ41は、水平偏波ポート411H及び垂直偏波ポート411Vを備える。水平偏波ポート411H及び垂直偏波ポート411Vは、円形パッチ41の高次モードの電流分布を回避する位置(円形パッチ41の中央近傍、中央位置412との間の距離d≦λ/8)に配置される。
【0044】
第3実施形態の偏波共用パッチアンテナの構成を図10に示す。第3実施形態の偏波共用パッチアンテナA5は、菱形パッチ51、グランド板、菱形パッチ51とグランド板との間の誘電体層、水平偏波電源52H、垂直偏波電源52V、外部インピーダンス整合回路53H及び外部インピーダンス整合回路53Vを備える。菱形パッチ51は、水平偏波ポート511H及び垂直偏波ポート511Vを備える。水平偏波ポート511H及び垂直偏波ポート511Vは、菱形パッチ51の高次モードの電流分布を回避する位置(菱形パッチ51の中央近傍、中央位置512との間の距離d≦λ/8)に配置される。
【0045】
第1~3実施形態では、水平偏波及び垂直偏波を独立に励振している。そして、両偏波ポートの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波(水平/垂直偏波)に対する交差偏波(垂直/水平偏波)を発生させないことができる。変形例として、水平偏波及び垂直偏波を重ね合わせて円偏波を励振してもよい。すると、両偏波ポートの間のアイソレーションは問題とならないものの、円偏波の軸比を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示の偏波共用パッチアンテナは、MIMOを利用する基地局アンテナ等に適用されるにあたり、構造を複雑しないで、両偏波ポートの間のアイソレーションを向上させるとともに、主偏波に対する交差偏波を発生させないことができる。
【符号の説明】
【0047】
A1:偏波共用パッチアンテナ
11:放射パッチ
12H:水平偏波電源
12V:垂直偏波電源
111H:水平偏波ポート
111V:垂直偏波ポート
112:中央位置
A2:偏波共用パッチアンテナ
21:放射パッチ
22H:水平偏波電源
22V:垂直偏波電源
23H:180°ハイブリッド
23V:180°ハイブリッド
211H-1、211H-2:水平偏波ポート
211V-1、211V-2:垂直偏波ポート
A3:偏波共用パッチアンテナ
31:矩形パッチ
32H:水平偏波電源
32V:垂直偏波電源
33H:外部インピーダンス整合回路
33V:外部インピーダンス整合回路
311H:水平偏波ポート
311V:垂直偏波ポート
312:中央位置
A4:偏波共用パッチアンテナ
41:円形パッチ
42H:水平偏波電源
42V:垂直偏波電源
43H:外部インピーダンス整合回路
43V:外部インピーダンス整合回路
411H:水平偏波ポート
411V:垂直偏波ポート
412:中央位置
A5:偏波共用パッチアンテナ
51:菱形パッチ
52H:水平偏波電源
52V:垂直偏波電源
53H:外部インピーダンス整合回路
53V:外部インピーダンス整合回路
511H:水平偏波ポート
511V:垂直偏波ポート
512:中央位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10