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特開2024-58038インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクセット、インクメディアセット、及び印刷メディア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058038
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクセット、インクメディアセット、及び印刷メディア
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/32 20140101AFI20240418BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20240418BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240418BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240418BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
C09D11/32
C09D11/40
B41J2/01 501
B41J2/18
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165148
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梶 優輝
(72)【発明者】
【氏名】三澤 俊太
(72)【発明者】
【氏名】上木 奈津子
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FA02
2C056FA03
2C056FA07
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB02
2C056FC01
2C056HA41
2C056HA42
2C056KB16
2H186BA08
2H186DA09
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
4J039AD01
4J039AD09
4J039BC09
4J039BC13
4J039BC61
4J039BE01
4J039BE08
4J039BE12
4J039CA06
4J039EA16
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】相溶性、印刷物のぬれ性及び吐出性に優れる、各種の記録用、特にインクジェット用インク、そのインクジェット用インクを用いた印刷物の提供。
【解決手段】顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤、前記着色剤を除く有機化合物、及び水を含有し、前記水の含有率がインクの総質量に対して60~90質量%であり、前記有機化合物が特定の条件を満たす、インクジェット用インクであって、前記インクの25℃、最大泡圧法による表面寿命10msecにおける動的表面張力値Xが32.0mN/m以上であり、かつ前記動的表面張力値Xと、前記インクの25℃における静的表面張力値Yとが、0.05≦(X-Y)/Y≦0.25の関係を満たす、インクジェット用インク
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤、前記着色剤を除く有機化合物、及び水を含有し、
前記水の含有率がインクの総質量に対して60~90質量%であり、前記有機化合物が下記(A)の条件を満たす、インクジェット用インクであって、
前記インクの25℃、最大泡圧法による表面寿命10msecにおける動的表面張力値Xが32.0mN/m以上であり、
かつ前記動的表面張力値Xと、前記インクの25℃における静的表面張力値Yとが、0.05≦(X-Y)/Y≦0.25の関係を満たす、インクジェット用インク。
(A)
化合物a:下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物b:下記式(3)で表される化合物及び下記式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物c:C4-C5のアルカンジオール、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物;
を含む。
【化1】
(式(1)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC5-C10の炭化水素基を示す。)
【化2】
(式(2)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC6-C7の炭化水素基を示し、n1は、1又は2を示す。)
【化3】
(式(3)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC7-C12の炭化水素基を示す。)
【化4】
(式(4)中、Rは、フェニル基又はベンジル基を示し、n2は、1又は2を示す。)
【化5】
(式(5)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。)
【化6】
(式(6)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC1-C4の炭化水素基を示し、n3は、1又は2を示す。)
【請求項2】
前記動的表面張力値Xが、34.0mN/m以上である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記動的表面張力値Xと、前記静的表面張力値Yとが、0.10≦(X-Y)/Y≦0.20の関係を満たす、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
請求項1または2に記載のインクジェット用インクの液滴を、インクジェットヘッドから吐出させて印刷メディアに記録を行う、インクジェット記録方法。
【請求項5】
前記印刷メディアが、インク難吸収性又はインク非吸収性の印刷メディアである、請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドが、循環機構を含むインクジェットヘッドである、請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のインクジェット用インクと、該インクジェット用インクとは異なる他のインクジェット用インクとを備える、インクセット。
【請求項8】
請求項1または2に記載のインクジェット用インク、請求項7に記載のインクセットからなる群から選択されるいずれか少なくとも一つと、印刷メディアとを備える、インクメディアセット。
【請求項9】
請求項1または2に記載のインクジェット用インク、請求項7に記載のインクセットが含むインクジェット用インク、からなる群から選択される少なくともいずれかが付着した印刷メディア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクセット、インクメディアセット、及び印刷メディアに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のカラー記録方法の中でも代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる記録方法(インクジェット記録方法)は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の印刷メディアに付着させ記録を行うものである。近年では商業用途や産業用途での需要が高まり、様々な印刷メディアに対して印刷ができるインクが求められている。
【0003】
カタログ、パンフレット等の商業分野では、コート紙やアート紙といった、普通紙に比べてインク吸収性の低い印刷メディア(以下、「インク難吸収性メディア」ともいう。)が用いられることが多い。また、屋外サイネージ、食品軟包装等の産業分野では、塩化ビニルフィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリオレフィンフィルムといった、インク非吸収性の印刷メディア(以下、「インク非吸収性メディア」ともいう。)が用いられることが多い。
【0004】
インク難吸収性メディア及びインク非吸収性メディアに対しては、有機溶剤を主溶媒とした溶剤インクや、重合性モノマーを含有させた硬化性インク等の開発が進められてきた。しかし、これらのインクは、自然環境や人体への安全性の問題が多い。そこで、近年は、水を主溶媒とした水性インクの開発が盛んになってきている。
【0005】
水性インクは、一般的に、インク難吸収性メディア上やインク非吸収性メディア上でぬれ広がりにくい性質がある。これに対し、ぬれ性を向上させるため有機溶剤を多量入れる必要がある。しかし溶剤が多いインクは上記メディアにおける乾燥性が低下してしまう課題があった。
そこで多量の有機溶剤の代わりにシリコーン系界面活性剤等を利用して表面張力を下げる方法が取られてきた。低表面張力インクは上記メディア上へのぬれ性が向上する一方、インクジェットヘッドでの吐出時に液まとまりが悪くなりサテライトが生じるため吐出性が低下する課題がある。
【0006】
特許文献1では、シリコーン系界面活性剤を含むHLB値の異なる界面活性剤を複数用いることで、インク難吸収性メディアに対して良好な画像を形成できるインクが得られることが報告されている。しかし、この特許文献1のインクは、吐出性が不十分であった。また、特許文献2では、インクの動的表面張力と静的表面張力のバランスを制御することで吐出安定性が良好で汎用の紙メディアに対して良好な画像が得られることを報告している。しかし、この特許文献2のインクでは、インク難吸収性メディアやインク非吸収性メディア上でのぬれ性は不十分であった。
【0007】
上記のように、水性インクにおいて、ぬれ性と吐出性の両方の効果を満足するインクは未だ提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-125057号公報
【特許文献2】特開2017-119415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インク非吸収性メディア上においても良好なぬれ性を示し、且つ、吐出性にも優れたインクジェット用インク、該インクジェット用インクを用いたインクジェット記録方法、該インクジェット用インクを備えるインクセット、該インクジェット用インク又は該インクセットと印刷メディアとを備えるインクメディアセット、該インクジェット用インク又は該インクセットの各インクジェット用インクが付着した印刷メディアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤、前記着色剤を除く有機化合物、及び水を含有し、
前記水の含有率がインクの総質量に対して60~90質量%であり、前記有機化合物が下記(A)の条件を満たす、インクジェット用インクであって、
前記インクの25℃、最大泡圧法による表面寿命10msecにおける動的表面張力値Xが32.0mN/m以上であり、
かつ前記動的表面張力値Xと、前記インクの25℃における静的表面張力値Yとが、0.05≦(X-Y)/Y≦0.25の関係を満たす、インクジェット用インク。
(A)
化合物a:下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物b:下記式(3)で表される化合物及び下記式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物c:C4-C5のアルカンジオール、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物;
を含む、インクが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち本発明は、以下の1)~9)に関する。
1)
顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤、前記着色剤を除く有機化合物、及び水を含有し、
前記水の含有率がインクの総質量に対して60~90質量%であり、前記有機化合物が下記(A)の条件を満たす、インクジェット用インクであって、
前記インクの25℃、最大泡圧法による表面寿命10msecにおける動的表面張力値Xが32.0mN/m以上であり、
かつ前記動的表面張力値Xと、前記インクの25℃における静的表面張力値Yとが、0.05≦(X-Y)/Y≦0.25の関係を満たす、インクジェット用インク。
(A)
化合物a:下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物b:下記式(3)で表される化合物及び下記式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物c:C4-C5のアルカンジオール、下記式(5)で表される化合物、及び下記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物;
を含む。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC5-C10の炭化水素基を示す。)
【0014】
【化2】
【0015】
(式(2)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC6-C7の炭化水素基を示し、n1は、1又は2を示す。)
【0016】
【化3】
【0017】
(式(3)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC7-C12の炭化水素基を示す。)
【0018】
【化4】
【0019】
(式(4)中、Rは、フェニル基又はベンジル基を示し、n2は、1又は2を示す。)
【0020】
【化5】
【0021】
(式(5)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。)
【0022】
【化6】
【0023】
(式(6)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC1-C4の炭化水素基を示し、n3は、1又は2を示す。)
2)
前記動的表面張力値Xが、34.0mN/m以上である、1)に記載のインクジェット用インク。
3)
前記動的表面張力値Xと、前記静的表面張力値Yとが、0.10≦(X-Y)/Y≦0.20の関係を満たす、1)又は2)に記載のインクジェット用インク。
4)
1)~3)のいずれか一項に記載のインクジェット用インクの液滴を、インクジェットヘッドから吐出させて印刷メディアに記録を行う、インクジェット記録方法。
5)
前記印刷メディアが、インク難吸収性又はインク非吸収性の印刷メディアである、4)に記載のインクジェット記録方法。
6)
前記インクジェットヘッドが、循環機構を含むインクジェットヘッドである、4)に記載のインクジェット記録方法。
7)
1)~3)のいずれか一項に記載のインクジェット用インクと、該インクジェット用インクとは異なる他のインクジェット用インクとを備える、インクセット。
8)
1)~3)のいずれか一項に記載のインクジェット用インク、7)に記載のインクセットからなる群から選択されるいずれか少なくとも一つと、印刷メディアとを備える、インクメディアセット。
9)
1)~3)のいずれか一項に記載のインクジェット用インク、7)に記載のインクセットが含むインクジェット用インク、からなる群から選択される少なくともいずれかが付着した印刷メディア。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、相溶性、印刷物のぬれ性及び吐出性に優れたインクジェット用インクを提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、「C.I.」とは、「カラーインデックス」を意味する。また、本明細書において、「アルキレン」、「プロピレン」、「アルキル」の用語は、特に断りのない限り、直鎖状及び分岐鎖状の両方の構造を包含する意味で使用する。
【0026】
<インクジェット用インク>
本実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単に「インク」ともいう。)は、顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤、前記着色剤を除く有機化合物、及び水を含有する。以下、本実施形態に係るインクに含有される成分について詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、そのうちの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
<顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤>
上記顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含む着色剤とは、顔料及び分散染料からなる群から選択される少なくともいずれかを含み、本明細書において、着色剤と略記する場合がある。
【0028】
上記顔料としては、無機顔料、有機顔料、体質顔料、中空粒子等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係るインクが黒インクであり、且つ、着色剤が無機顔料である場合、該黒インクが含有する無機顔料としては、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えば、コロンビア・カーボン社製のRavenシリーズ;キャボット社製のMonarchシリーズ、Regalシリーズ、及びMogulシリーズ;オリオンエンジニアドカーボンズ社製のHiBlackシリーズ、ColorBlackシリーズ、Printexシリーズ、SpecialBlackシリーズ、及びNeroxシリーズ;三菱ケミカル(株)製のMAシリーズ、MCFシリーズ、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、及びNo.2300;等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に係るインクが白インクであり、且つ、着色剤が無機顔料である場合、該白インクが含有する無機顔料としては、亜鉛、シリコン、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、ジルコニウム等の金属の酸化物、窒化物、又は酸化窒化物;ガラス、シリカ等の無機化合物;などが挙げられる。これらの中でも、二酸化チタン及び酸化亜鉛が好ましい。
【0031】
有機顔料としては、例えば、アゾ、ジスアゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ジオキサジン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンソラキノン、キノフタロン等の各種の顔料が挙げられる。
【0032】
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、128、129、138、139、150、151、154、155、180、185、193、199、202、213等のイエロー顔料;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272等のレッド顔料;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー顔料;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット顔料;C.I.Pigment Orange 13、16、43、68、69、71、73等のオレンジ顔料;C.I.Pigment Green 7、36、54等のグリーン顔料;C.I.Pigment Black 1等のブラック顔料;などが挙げられる。これらの中でも、C.I.Pigment Blue 15:4が好ましい。
【0033】
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。体質顔料は、他の着色剤と併用されることが多い。
【0034】
中空粒子としては、例えば、米国特許第4880465号明細書、特許第3562754号公報、特許第6026234号公報、特許第5459460号公報、特開2003-268694号公報、特許第4902216号公報等に記載されている公知の中空粒子を用いることができ、特に、白色顔料として用いることが好ましい。
【0035】
分散染料としては、例えば、C.I.Dispersから選択される染料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.Dispers Yellow 9、23、33、42、49、54、58、60、64、66、71、76、79、83、86、90、93、99、114、116、119、122、126、149、160、163、165、180、183、186、198、200、211、224、226、227、231、237等のイエロー染料;C.I.Dispers Red 60、73、88、91、92,111、127、131、143、145、146、152、153、154、167、179、191、192、206、221、258、283等のレッド染料;C.I.Dispers Orange 9、25、29、30、31、32、37、38、42、44、45、53、54、55、56、61、71、73、76、80、96、97等のオレンジ染料;C.I.Dispers Violet 25、27、28、54、57、60、73、77、79、79:1等のバイオレット染料;C.I.Dispers Blue 27、56、60、79:1、87、143、165、165:1、165:2、181、185、197、202、225、257、266、267、281、341、353、354、358、364、365、368等のブルー染料;などが挙げられる。
【0036】
着色剤の平均粒径は、30~300nmであることが好ましく、50~250nmであることがより好ましい。本明細書において平均粒径とは、レーザ光散乱法を用いて測定した粒子の平均粒径を指す。
【0037】
着色剤の含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
上記着色剤は、上記顔料及び上記分散染料以外のその他の染料をさらに含んでいても良い。
上記その他の染料としては、例えば、溶剤染料、直接染料、酸性染料、反応染料等が挙げられる。
【0039】
上記インクジェット用インクが、上記着色剤を複数種含む場合、それぞれの着色剤の配合比は、目的に応じ任意に設定可能である。また、上記着色剤に加え、上記その他の染料を含む場合、上記着色剤の総量と、上記その他の染料の総量との配合比も任意の割合で設定可能である。
【0040】
<前記着色剤を除く有機化合物>
上記前記着色剤を除く有機化合物とは、前記着色剤以外の有機化合物であり、かつ、下記(A)の条件を満たす。
(A)
化合物a:上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物b:上記式(3)で表される化合物及び上記式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物;
化合物c:C4-C5のアルカンジオール、上記式(5)で表される化合物、及び上記式(6)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物;
を含む。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
上記式(1)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC5-C10の炭化水素基を示す。C5-C10の炭化水素基としては、例えば、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。Rとしては、直鎖状又は分岐鎖状のC5-C7の炭化水素基であることが好ましい。
【0048】
上記式(2)中、R2は、直鎖状又は分岐鎖状のC6-C7の炭化水素基を示す。C6-C7の炭化水素基としては、例えば、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基等が挙げられる。Rとしては、直鎖状又は分岐鎖状のC6の炭化水素基であることが好ましい。上記式(2)中、n1は、1又は2を示し、2であることが好ましい。
【0049】
上記式(3)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC7-C12の炭化水素基を示す。C7-C12の炭化水素基としては、例えば、n-ヘプチレン基、1-メチルヘキシレン基、2-メチルヘキシレン基、3-メチルヘキシレン基、1,5-ジメチルペンチレン基、2,4-ジメチルペンチレン基、n-オクチレン基、1-メチルヘプチレン基、2-メチルヘプチレン基、3-メチルヘプチレン基、4-メチルヘプチレン基、1,6-ジメチルヘキシレン基、2,5-ジメチルヘキシレン基、2-エチルペンチレン基、2-エチル-1-プロピルプロピレン基、n-ノニレン基、1-メチルオクチレン基、2-メチルオクチレン基、3-メチルオクチレン基、4-メチルオクチレン基、1,7-ジメチルヘプチレン基、2,6-ジメチルヘプチレン基、3,5-ジメチルヘプチレン基、2-ブチル-2-エチルプロピレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基等が挙げられる。Rとしては、直鎖状又は分岐鎖状のC7-C9の炭化水素基であることが好ましい。
【0050】
上記式(4)中、Rは、フェニル基又はベンジル基を示し、フェニル基であることが好ましい。上記式(4)中、n2は、1又は2を示し、2であることが好ましい。
【0051】
上記式(5)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、水素原子であることが好ましい。
【0052】
上記式(6)中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC1-C4の炭化水素基を示す。C1-C4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。Rとしては、直鎖状又は分岐鎖状のC3-C4の炭化水素基であることが好ましい。また、上記式(6)中、n3は、1又は2を示し、2であることが好ましい。
【0053】
上記化合物aとしては、例えば、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル等が挙げられ、1,2-ノナンジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びエチレングリコールモノヘキシルエーテルが好ましい。上記化合物aは、いずれも疎水性の高い化合物であり、インクが印刷メディア上に着弾した後、インク表面に配向しやすい性質を有している。この性質により、インクの表面張力を下げ、印刷メディア上でのインクのぬれ広がりを促進することで、優れたぬれ性が発揮されると考えられる。
【0054】
上記化合物bとしては、例えば、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられ、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルが好ましい。上記化合物bは、インクが印刷メディア上に着弾した後、インクと印刷メディアとの界面に配向しやすい性質を有している。この性質により、インクと印刷メディアとの界面にて生じる界面張力を下げ、印刷メディア上でのインクのぬれ広がりを促進することで、優れたぬれ性が発揮されると考えられる。
【0055】
上記化合物cとしては、例えば、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。上記化合物cは、親水性と疎水性とのバランスが取れた化合物であり、インク中に含まれる水、化合物a、bのいずれにも可溶な性質を有している。この性質により、インクの総質量中のうち大部分を水が占めているインクにおいても、化合物a、bを安定的に溶解させることが可能となり、インクが相分離を起こすのを防ぐことができると考えられる。
【0056】
上記インク100質量部中における化合物aの総含有量を(a)質量部、化合物bの総含有量を(b)質量部、化合物cの総含有量を(c)質量部とした場合、(a)≦(c)、0.1≦(c)/(b)≦50の関係を満たすことが好ましい。上記(c)/(b)の値は、1を超え、且つ、50以下であることが好ましく、1を超え、且つ、50未満であることがより好ましく、5~30であることがさらに好ましく、6~20であることが特に好ましく、7~19であることが極めて好ましい。本実施形態に係るインク100質量部中における上記化合物aの総含有量は、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましく、0.2~1.0質量部であることが特に好ましい。また、本実施形態に係るインク100質量部中における上記化合物bの総含有量は、0.05~10質量部であることが好ましく、0.05~8質量部であることがより好ましく、0.05~6質量部であることがさらに好ましい。また、本実施形態に係るインク100質量部中における上記化合物cの総含有量は、1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。特に、上記(c)/(b)の値を0.1~50とすることで、化合物bがインク中で相分離せずに安定的に溶解し、また、インクが十分なぬれ性を発揮する傾向にある。
【0057】
<水>
水としては、金属イオン等の不純物の含有量が少ない水、すなわち、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。水の含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、60~90質量%であり、70~90質量%であることが好ましい。
【0058】
前記インクの25℃、最大泡圧法による表面寿命10msecにおける動的表面張力値Xは32.0mN/m以上であり、34.0mN/m以上であることが好ましく、35.0mN/m以上45.0mN/m以下であることがより好ましい。
上記最大泡圧法による表面寿命10msecにおける動的表面張力値Xは、例えば、バブルプレッシャー式動的表面張力計BP100(KRUSS社製)により測定し、算出することができる。また、上記インクは、前記動的表面張力値Xと、前記インクの25℃における静的表面張力値Yとが、0.05≦(X-Y)/Y≦0.25の関係を満たし、0.10≦(X-Y)/Y≦0.20の関係を満たすことが好ましい。
上記静的表面張力値Yは、例えば、自動表面張力計DY-300(協和界面科学社製)により測定し、算出することができる。
【0059】
本実施形態に係るインクは、必要に応じて、分散剤、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、消泡剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤、樹脂エマルション等のインク調製剤を含有していてもよい。各インク調製剤の含有量は、インクの用途等に応じて任意に設定することができる。
【0060】
分散剤としては、例えば、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体;等のモノマーから選択される少なくとも2種類のモノマー(好ましくは、このうち少なくとも1種類が親水性のモノマー)から構成される共重合体が挙げられる。親水性のモノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸など、重合後にカルボキシ基が残るモノマーが挙げられる。
【0061】
このような共重合体としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がさらに好ましく、メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体が特に好ましい。共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、塩の形態であってもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」の用語は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を含む意味で用いる。「(メタ)アクリレート」等も同様である。
【0062】
分散剤は、合成することも市販品として入手することもできる。
合成により得られる分散剤としては、例えば、国際公開第2013/115071号に開示されたA-Bブロックポリマーが挙げられる。国際公開第2013/115071号に開示されたA-BブロックポリマーのAブロックを構成するモノマーは、(メタ)アクリル酸、及び直鎖状又は分岐鎖状のC4アルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーであり、メタクリル酸及びn-ブチルメタクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーが好ましく、これら2種類のモノマーを併用するのがより好ましい。また、国際公開第2013/115071号に開示されたA-BブロックポリマーのBブロックを構成するモノマーは、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーであり、ベンジルメタクリレートが好ましい。A-Bブロックポリマーの具体例としては、国際公開第2013/115071号の合成例3~8に開示されたブロック共重合体が挙げられる。
【0063】
市販品として入手可能な分散剤としては、例えば、Joncyrl 62、67、68、678、687(BASF社製のスチレン-アクリル系共重合体);アロンAC-10SL(東亜合成(株)製のポリアクリル酸);BYKJET 9151、9152、9170、9171(ビックケミー・ジャパン株式会社製の湿潤分散剤);等が挙げられる。
【0064】
分散剤の質量平均分子量(MW)は、3000~50000であることが好ましく、7000~25000であることがより好ましい。分散剤の質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ法(GPC法)により測定することができる。具体的には、GPC装置としてHLC-8320GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSK gel Super MultIpore HZ-H(東ソー(株)製、内径4.6mm×15cm)を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、標準試料としてTSK Standard(東ソー(株)製)を用いて測定することができる。
【0065】
分散剤の酸価は、50~300mgKOH/gであることが好ましく、80~275mgKOH/gであることがより好ましく、80~250mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0066】
分散剤は、着色剤と混合した状態で使用することができる。また、着色剤の表面の一部又は全部を分散剤で被覆した状態で使用することもできる。あるいは、これらの両方の状態を併用してもよい。
【0067】
本実施形態に係るインクが分散剤を含有する場合、着色剤の総質量に対する分散剤の総質量の比は、0.01~1.0であることが好ましく、0.05~0.6であることがより好ましく、0.1~0.5であることがさらに好ましい。
【0068】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン又は1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン、ケトアルコール、又はカーボネート;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは、分子量400、800、1540、又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくは、C7-C10のトリエチレングリコールエーテル、又はC4-C13のモノ、ジ、若しくはトリプロピレングリコールエーテル);1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のC6-C9アルカンジオール(但し、上記式(1)、(3)に含まれるものを除く。);γ-ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0069】
界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、シリコーン系、及びフッ素系の各界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、シリコーン系及びフッ素系から選択される界面活性剤が好ましく、生体や環境への安全性の観点からはシリコーン系界面活性剤がより好ましい。
【0070】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0071】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王(株)製のエマルゲンA-60、A-90、A-500)等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(又はアセチレンアルコール)系(例えば、エボニックジャパン(株)製のサーフィノール104、104PG50、82、420、440、465、485;オルフィンSTG;等);ポリグリコールエーテル系;などが挙げられる。
【0072】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール960、980;日信化学工業(株)製のシルフェイスSAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG009、SAG010;ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-345、347、348、349、3450(別名:BYKLPX 23289)、3451(別名:BYKLPX 23347)、3455、LP-X23288、LP G20726;EvonicTego Chemie社製のTEGO(登録商標) Twin 4000、TEGO(登録商標) Wet KL 245、250、260、265、270、280;等が挙げられる。
【0073】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、Chemours社製のCapstone FS-30、FS-31等が挙げられる。
【0074】
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
【0075】
防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム等が挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例としては、例えば、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製の商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルLV、プロクセルXL-2(S)等が挙げられる。
【0076】
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基;などが挙げられる。
【0077】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0078】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0079】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等の化合物が挙げられる。市販の消泡剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のサーフィノールDF37、DF58、DF110D、DF220、MD-20、オルフィンSK-14等が挙げられる。
【0080】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、スルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
【0082】
本実施形態に係るインクは、印刷メディアに対するインクの定着性向上を目的として、樹脂エマルションを含有していてもよい。本実施形態に係るインクが樹脂エマルションを含有することで、印刷メディアに印刷した画像の耐水性、耐擦過性、耐アルコール性等の画像堅牢度が向上する傾向にある。樹脂エマルションとしては、ポリマーエマルション及びワックスエマルションから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0083】
ポリマーエマルションとしては、例えば、ウレタン系、ポリエステル、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレン-アクリル系、アクリル-シリコーン系、スチレン-ブタジエン系の各ポリマーを含有するエマルションが挙げられる。これらの中でも、ウレタン系、アクリル系、及びスチレン-ブタジエン系から選択されるポリマーのエマルションが好ましい。
【0084】
ポリマーエマルションの市販品としては、例えば、スーパーフレックス420、470、890(以上、第一工業製薬(株)製のウレタン系樹脂エマルション);ハイドランHW-350、HW-178、HW-163、HW-171、AP-20、AP-30、WLS-201、WLS-210(以上、DIC(株)製のウレタン系樹脂エマルション);0569、0850Z、2108(以上、JSR(株)製のスチレン-ブタジエン系樹脂エマルション);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(以上、(株)イーテック製のアクリル系樹脂エマルション);NeoCryl A-1105、A-1125、A-1127(以上、DSMCoating Resin社製のアクリル樹脂エマルション);NeoCryl A-655(DSM Coating Resin社製のスチレン-アクリル樹脂エマルション);等が挙げられる。
【0085】
ワックスエマルションとしては、天然ワックス又は合成ワックスを水性媒体に分散させたエマルションを用いることができる。
【0086】
天然ワックスエマルションとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;モンタンワックス等の褐炭系ワックス;カルナバワックス、キャンデリアワックス等の植物系ワックス;蜜蝋、ラノリン等の動植物系ワックス;などの各ワックスのエマルションが挙げられる。
【0087】
合成ワックスエマルションとしては、例えば、ポリアルキレンワックス(好ましくは、ポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは、酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)、パラフィンワックス等のエマルションが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、及びパラフィンワックスから選択されるワックスのエマルションが好ましい。
【0088】
ワックスの平均粒径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止するため、50nm~5μmであることが好ましく、100nm~1μmであることがより好ましい。
【0089】
ワックスエマルジョンの市販品としては、例えば、CERAFLOUR925、929、950、991、AQUACER 498、515、526、531、537、539、552、1547、AQUAMAT 208、263、272;MINERPOL 221(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製);三井ハイワックスNL100、NL200、NL500、4202E、1105A、2203A、NP550、NP055、NP505(以上、三井化学(株)製);KUE-100、11(以上、三洋化学工業(株)製);HYTEC P-5300、E-6500、9015、6400(以上、東邦化学工業(株)製);等が挙げられる。
【0090】
本実施形態に係るインクが樹脂エマルションを含有する場合、その固形分としての含有率は、1~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。樹脂エマルションの固形分としての含有率を1質量%以上とすることで、印刷メディアに対する良好な定着性を示す傾向にある。また、樹脂エマルションの固形分としての含有率を20質量%以下とすることで、インクの吐出性及び保存安定性が良好となる傾向にある。
【0091】
本実施形態に係るインクの調製方法としては、特に制限されず、公知の調製方法を採用することができる。その一例としては、例えば、着色剤及び分散剤を含有する分散液を調製し、この分散液に、水、上記化合物a~c等の有機化合物、及び必要に応じてインク調製剤を加えて混合する方法が挙げられる。
【0092】
分散液の調製方法としては、例えば、転相乳化法、酸析法、界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等が挙げられる。これらの中でも、転相乳化法、酸析法、及び界面重合法が好ましく、転相乳化法がより好ましい。
【0093】
転相乳化法により分散液を調製する場合、例えば、2-ブタノン等の有機溶剤に分散剤を溶解し、中和剤の水溶液を加えて乳化液を調製する。得られた乳化液に着色剤を加えて分散処理を行う。このようにして得られた液から有機溶剤と一部の水とを減圧留去することにより、目的とする分散液を得ることができる。
【0094】
分散処理は、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて行うことができる。例えば、サンドミルを用いるときは、粒子径0.01~1mm程度のビーズを使用し、ビーズの充填率を適宜設定して分散処理を行うことができる。上記のようにして得られた分散液に対して、濾過、遠心分離等の操作をすることにより、分散液に含有される粒子の粒子径を揃えることができる。分散液の調製中に泡立ちが生じるときは、公知のシリコーン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量加えることができる。
【0095】
本実施形態に係るインクは、金属陽イオンの塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、金属硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有率が少ないことが好ましい。このような無機不純物は、市販品の着色剤に含まれることが多い。無機不純物の含有率の目安は、おおよそ着色剤の総質量に対して1質量%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0質量%が理想である。無機不純物の少ない着色剤を得る方法としては、例えば、逆浸透膜を用いる方法;着色剤の固体をメタノール等のC1-C4アルコール及び水の混合溶媒中で懸濁撹拌し、着色体を濾過分離して、乾燥する方法;イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法;等が挙げられる。
【0096】
本実施形態に係るインクは、精密濾過しておくことが好ましい。精密濾過には、メンブランフィルター、ガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は、通常0.5~20μm、好ましくは0.5~10μmである。
【0097】
本実施形態に係るインクは、保存安定性、再分散性、発色性、及び彩度にも優れる。また、本実施形態に係るインクを用いて記録された印刷画像は、耐光性、耐熱性、耐酸化ガス性(例えば、耐オゾンガス性)等の各種堅牢性にも優れる。また、本実施形態に係るインクは、画像形成の際の塗工ムラが少なく、画像形成性にも優れる。
【0098】
本実施形態に係るインクセットとしては、上述した本実施形態に係るインク同士のセット、あるいは、上述した本実施形態に係るインクと該インクとは異なる他のインクとを備えたセット等、が挙げられる。他のインクとしては、本実施形態に係るインクと構成が異なるものであれば特に限定されないが、本実施形態に係るインクと色相が異なるものが好ましい。
【0099】
また、本実施形態に係る印刷メディアは、上述した本実施形態に係るインク又はインクセットが含むインクジェット用インク、からなる群から選択される少なくともいずれかが付着したものである。
【0100】
また、本実施形態に係るインクメディアセットは、上述した本実施形態に係るインク又はインクセットと、印刷メディアとを備えるものである。
【0101】
印刷メディアとしては、特に制限されないが、インク難吸収性又はインク非吸収性の印刷メディアが好ましく、インク非吸収性の印刷メディアがより好ましい。インク難吸収性の印刷メディアとしては、例えば、インク受容層を有しない普通紙、グラビア印刷やオフセット印刷等に用いられるメディア、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等が挙げられる。また、インク非吸収性の印刷メディアとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、塩化ビニルシート、ガラス、ゴム等が挙げられる。
【0102】
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述した本実施形態に係るインクの液滴をインクジェットヘッドから吐出させて印刷メディアに記録を行うものである。インクの吐出を行うインクジェットプリンタのインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0103】
本実施形態に係るインクジェット記録方法には、インク中の着色剤の含有率の低いインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方法;実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の含有率が異なる複数のインクを用いて画質を改良する方法;無色透明のインクと、着色剤を含有するインクとを併用することにより、印刷メディアに対する着色剤の定着性を向上させる方法;等も含まれる。
【0104】
インクジェット記録方式としては、公知の方式を採用することができる。その一例としては、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式ともいう。)、音響インクジェット方式、サーマルインクジェット方式等が挙げられる。また、インクジェット記録方式は、マルチパス方式及びシングルパス方式(1パス印刷方式)のいずれであってもよい。産業用インクジェットプリンタにおいては、印刷速度を高速にする目的で、ラインヘッド型のインクジェットプリンタを用いたシングルパスでの印刷も好ましく行われる。また、近年、ノズル付近までインクを循環させることによりノズル近傍でのインクの乾燥を防ぐ機構(すなわち循環機構)をもつ循環ヘッドが盛んに開発されている。本実施形態に係るインクは、このような循環ヘッドにも好適に使用される。
【0105】
印刷メディアに記録するときは、例えば、インクを含有する容器(インクタンク)をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の印刷方法で印刷メディアに記録する。なお、各色のインクを含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の印刷方法で印刷メディアに記録することにより、フルカラーの印刷を実現することもできる。
【0106】
なお、インク受容層を有しない印刷メディアを用いるときは、表面改質処理を施すことも好ましく行われる。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等が挙げられる。表面改質処理の効果は、経時的に減少していくことが一般的に知られている。このため、表面改質処理工程とインクジェット記録工程とを連続して行うことが好ましく、表面改質処理工程をインクジェット記録工程の直前に行うことがより好ましい。
【0107】
上述した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【実施例0108】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。実施例において、分散液中の顔料固形分の定量が必要なときは、株式会社エイ・アンド・デイ社製のMS-70を用い、乾燥重量法により求めた。顔料固形分は、固形分の全量から、顔料固形分のみを算出した換算値である。なお、実施例中に記載の各インクは、上記インクジェット用インクに含まれる。
【0109】
[調製例1]シアン分散液1の調製
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られた高分子分散剤 6部を、2-ブタノン 30部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、0.68部の28%アンモニア水溶液を53部のイオン交換水に溶解させた液を加え、1時間攪拌することで高分子分散剤が溶解した乳化溶液を調製した。これにC.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業(株)製、CHROMOFINE BLUE 4851)20部を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行った。得られた液にイオン交換水 100部を滴下し、ろ過して分散用ビーズを取り除いた後、エバポレータで、2-ブタノン及び水の一部を、顔料固形分12%となるように、減圧留去し、シアン分散液1を得た。
[調製例2]シアン分散液2の調製
BYKJET 9151(ビックケミー・ジャパン株式会社製)(8部)をイオン交換水(72部)に溶解し、1時間撹拌した。得られた溶液にC.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業(株)製、CHROMOFINE BLUE 4851)(20部)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行った。得られた液にイオン交換水(70部)を滴下し、濾過して分散用ビーズを取り除くことにより、顔料固形分11.6%のシアン分散液2を得た。
[調製例3]シアン分散液3の調製
Joncyrl 68(BASF製、質量平均分子量:13000)(9部)及びトリエタノールアミン(6部)をイオン交換水(75部)に溶解し、1時間撹拌した。得られた溶液にC.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業(株)製、CHROMOFINE BLUE 4851)(30部)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行った。得られた液にイオン交換水(40部)を滴下し、濾過して分散用ビーズを取り除くことにより、顔料固形分18.7%のシアン分散液3を得た。
【0110】
[実施例1]
上記で得たシアン分散液1を、下記表1に記載の各成分と混合した後、3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、評価試験用の実施例1のインクを得た。インクの総質量中における着色剤の含有量は、4.5%になるように調整した。
[実施例2~21、比較例1~7]
添加するシアン分散液の種類、樹脂エマルションの種類、化合物a、b、及びcを下記表1~2に記載の組成とすること以外は実施例1と同様にして、実施例2~21及び比較例1~7の各インクを得た。
表1及び表2中の略号はそれぞれ以下を表す。
A-1127:NeoCryl A-1127(アクリル樹脂エマルション、DSMCoating Resin Ltd.製、固形分44.0%)
AQ-515:AQUACER 515(ポリエチレンワックスエマルション、ビックケミー・ジャパン株式会社製、固形分34.6%)
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
[相溶性評価]
実施例1~21及び比較例1~7の各組成において、着色剤(シアン分散液1~3)以外の材料のみを含む混合液を調製し、該混合液の相溶性を評価した。結果を下記表3~4に示す。相溶性が不足しているとインクの均一性が低下し、ぬれ性の効果を十分に発揮できなくなるため、下記評価基準がAであることが実用上好ましい。下記表3、及び表4中、ハイフン「-」は、インク材料が混合しないため、インク組成物としての評価が不可であったことを示す。
(相溶性評価基準)
A:均一であり完全に混合している状態
B:液面に油滴はないが、懸濁しており、完全には溶解していない状態
C:混合液の液面に油滴が浮いていて完全には溶解していない状態
D:混合液中の成分が分離して全く溶解していない状態
[接触角評価]
PETフィルム(東洋紡社製、E5102)を基材として使用して、上記で得た各インクとPETフィルムとの接触角を測定した。接触角計はDM-501Hi(協和界面科学株式会社製)を用いて、液滴量は2μLで測定時間はインク着弾10秒後の接触角を25℃で測定した。接触角については下記評価基準A~Dの4段階で評価した。接触角は数値が低い程フィルムに対しインクがよくぬれ広がっているという指標であり、下記評価基準がB以上であることが実使用上好ましい。
(接触角評価基準)
A:接触角≦15°
B:15°<接触角≦20°
C:20°<接触角≦30°
D:30°<接触角
[インクジェット印刷評価試験]
上記実施例の1~21のインクをそれぞれ、インクジェットヘッドKJ4B-1200(京セラ社製)を用いて、紙、PETフィルムそれぞれへの画像形成を行ったところ、いずれも良好なインク吐出性を示し、良好な画像形成が行われた。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
上記表3,4の結果から、実施例のインクは、比較例のインクに比べ、少なくともぬれ性に優れ、また、相溶性についても同等以上である。すなわち、実施例のインクは相溶性、ぬれ性、及び吐出性を兼ね備えた優れたインクであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のインクは、相溶性、印刷物のぬれ性及び吐出性に優れるため、各種の記録用、特にインクジェット記録用インクとして極めて有用である。