(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058042
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】芳香族ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
G11B 5/73 20060101AFI20240418BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240418BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20240418BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20240418BHJP
B29K 77/00 20060101ALN20240418BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20240418BHJP
【FI】
G11B5/73
C08J5/18 CFG
B29C55/14
G11B5/84 C
B29K77:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165154
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信行
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
5D006
5D112
【Fターム(参考)】
4F071AA56
4F071AB26
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4F210QG01
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4F210QL16
5D006CB03
5D006CB07
5D006EA01
5D112AA02
5D112BA01
5D112BA09
5D112JJ06
(57)【要約】
【課題】テラバイト級の高記録容量が必要とされる磁気記録媒体用途、特に磁気テープ用途に最適な、高温高湿下での寸度安定性に優れ、且つ平面生に優れた芳香族ポリアミドフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】芳香族ポリアミドフィルムを支持体とする磁気テープの長さがカートリッジ1巻あたり1,000m以上になっても高温高湿下で長期保存した際の寸度安定性に優れ、リール芯側でのテープ幅変化を抑制し、且つ磁性層塗布性に優れた磁気テープに最適な芳香族ポリアミドフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミドフィルムの厚みが2μm以上5μm以下で
芳香族ポリアミドフィルムを巻き取ってなる、幅1,000mm以上、長さ5,000m以上、10,000m以下である
磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムにおいて、
吸湿率が2.0%未満であり、
巻き取ったロールの幅方向の厚み推移を周波数解析して得られた振幅上位20の内、周期10mm以上40mm未満の振幅の平均が5μm以下である
磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラバイト級の高記録容量が必要とされる磁気記録媒体用途、特に磁気テープ用途に最適な、高温高湿下での寸度安定性に優れ、且つ平面生に優れた芳香族ポリアミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テラバイト級の情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となる一方、それらを記録、再生および保存するための高度な技術が要求されるようになってきた。記録媒体、再生媒体には、フレキシブルディスク、磁気ドラム、ハードディスクおよび磁気テープ(以下、本発明の磁気記録媒体とも称する)が挙げられるが、特に、磁気テープは1巻あたりの記録容量が大きく、ハードディスク等と比較して管理コストが安価なためデータバックアップ用、アーカイブ用途としてその役割を担うところが大きい。また、ビッグデータの取り扱いにより、磁気テープの使用用途の広がりによる幅広い環境条件下(特に、高温高湿条件下など)でのデータ保存に対する信頼性、更に高速での繰り返し使用による多数回走行におけるデータの安定した記録、読み出し等の性能に対する信頼性、磁気テープカートリッジの1巻あたりの記録容量の増大により長尺及び薄手化なども従来に増して要求される。磁気テープは、一般に各層の塗布液を調製する工程、得られた塗布液を非磁性支持体上に塗布する工程、乾燥工程、カレンダー処理(平滑化処理)工程、所定の寸法に裁断する加工工程、そして得られたテープをカートリッジに巻き込む包装工程を経て製造される。
【0003】
前記磁気テープに至る工程においては、原反ロールから引き出されたフィルムの処理がその処理工程に応じて一定の張力下で実施されるため、フィルムが長手方向に伸ばされ易く、また製造後時間の経過と共に、カートリッジに巻き込まれた磁気テープが徐々に収縮して巻き締まりが生じ、テープが変形し易いとの問題がある。このような問題を解決するために、特許文献1および2では、PET、PENと比較して高強度ゆえに薄手化、長尺化が可能なポリアミドフィルムを非磁性支持体として用いることで、フィルム長手方向、幅方向および厚み方向の熱膨張係数や湿度膨張係数に代表される可逆的な寸法変化を抑制することが提案されている。
【0004】
近年、更なるデータストレージシステムの高容量化及び幅広い環境条件下での保存へのニーズに対して、支持体に芳香族ポリアミドフィルムを使用して磁気テープを薄手化しカートリッジ1巻中のテープ長さを更に長く巻いた場合のテープ幅変化が大きくなる問題がある。このような問題を解決する為に、特許文献3では、所定の条件にて熱処理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-67872号公報(2004年3月4日公開)
【特許文献2】特開平9-71669号公報(1997年3月18日公開)
【特許文献3】特開2020-186318号公報(2020年11月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法では、テープ幅変化が大きくなる問題が解決されても、熱処理による厚みムラが顕在化し、磁性層塗布工程で塗布スジが発生するという問題があった。
本発明は、芳香族ポリアミドフィルムを支持体とする磁気テープの長さがカートリッジ1巻あたり1,000m以上になっても高温高湿下で長期保存した際の寸度安定性に優れ、リール芯側でのテープ幅変化を抑制し、且つ磁性層塗布性に優れた磁気テープに最適な芳香族ポリアミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
掛かる問題を解決するために、本発明は、以下の構成からなる。
(1)芳香族ポリアミドフィルムの厚みが2μm以上5μm以下で芳香族ポリアミドフィルムを巻き取ってなる、幅1,000mm以上、長さ5,000m以上、10,000m以下である磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムにおいて、吸湿率が2.0%未満であり、巻き取ったロールの幅方向の厚み推移を周波数解析して得られた振幅上位20の内、周期10mm以上40mm未満の振幅の平均が5μm以下である磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロール。
【発明の効果】
【0008】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、芳香族ポリアミドフィルムが支持体とする磁気テープの長さがカートリッジ1巻あたり1,000m以上になっても高温高湿下で長期保存した際の寸度安定性に優れ、リール芯側でのテープ幅変化を抑制し、且つ磁性層塗布性に優れた磁気テープに最適な芳香族ポリアミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、例えば、次の化学式(1)及び/又は化学式(2)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0010】
【0011】
【0012】
ここで、Ar1、Ar2、Ar3の基としては、例えば、次の化学式(3)で表されるもの等が挙げられる。
【0013】
【0014】
また、上記X、Yの基は、-O-、-CH2-、-CO-、-CO2-、-S-、-SO2-、-C(CH3)2-等から選ばれるが、これらに限定されるものではない。更に、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ、湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めていることが好ましい。ここでいうパラ配向性とは、芳香環上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸又は平行にある状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、フィルムの剛性及び耐熱性が不十分となる場合がある。更に、芳香族ポリアミドが次の化学式(4)で表される繰り返し単位を60モル%以上含有する場合、延伸性及びフィルム物性が特に優れることから好ましい。
【0015】
【0016】
また、本発明のフィルムは、波長領域400nmから750nmの範囲の光線透過率の平均が70%以上100%以下とすることでフィルムの黄色味が抑えられ、ガラス代替用途として好ましい。
【0017】
波長領域400nmから750nmの範囲の光線透過率の平均が70%以上100%以下とするため、下記化学式(5)~(9)のいずれかで示される構造単位を有することが好ましい。
【0018】
【0019】
R1、R2は、-H、炭素数1~5の脂肪族基、-CF3、-CCl3、-OH、-F、-Cl、-Br、-OCH3、シリル基、または芳香環を含む基である。好ましくは、-CF3、-F、-Cl、または芳香環を含む基である。
【0020】
【0021】
R3は、Siを含む基、Pを含む基、Sを含む基、ハロゲン化炭化水素基、芳香環を含む基、またはエーテル結合を含む基(ただし、分子内において、これらの基を有する構造単位が混在していてもよい)である。好ましくは、Siを含む基、ハロゲン化炭化水素基、芳香環を含む基、またはエーテル結合を含む基である。
【0022】
【0023】
R4は任意の基である。特に限定されないが、好ましくは、-H、-Cl、-Fである。
【0024】
【0025】
R5は任意の芳香族基、任意の脂環族基である。特に限定されないが、より好ましくはフェニル、ビフェニル、シクロヘキサン、デカリンである。
【0026】
また、上記のなかでも、化学式(5)あるいは(6)で示される構造単位を有すると、薄膜でも剛性に優れるフィルムが得られやすく、かつ中間層が形成されやすいため、硬化層を設けた後に優れた表面硬度、耐衝撃性および耐屈曲性を実現しやすい。
上記のなかでも特に好ましくは、下記化学式(9)で示される構造単位を有することである。
【0027】
【0028】
R6は任意の基である。特に限定されないが、好ましくは、-H、-Cl、-Fである。
上記化学式(9)で示される構造単位が、本発明のフィルムを構成する芳香族含窒素ポリマーの20~100モル%であることが好ましい。より好ましくは50~100モル%、さらに好ましくは80~100モル%である。
【0029】
本発明のフィルムの製造方法について、以下に芳香族ポリアミドフィルムを例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
芳香族ポリアミドを得る方法は例えば、酸クロリドとジアミンから得る場合には、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合したり、水系媒体を使用する界面重合などで合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸クロリドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応から芳香族ポリアミドを得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行われる。
【0031】
これらのポリマー溶液はそのまま製膜原液として使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶剤に再溶解して製膜原液を調製してもよい。
【0032】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムを得るためには、ポリマーの固有粘度ηjnh(ポリマー0.5gを98%硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5(dl/g)以上であることが好ましい。
【0033】
粒子の添加方法は、粒子を予め溶媒中に十分スラリー化した後、重合用溶媒または希釈用溶媒として使用する方法や、製膜原液を調製した後に直接添加する方法などがある。
製膜原液には溶解助剤として無機塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを添加する場合もある。また、製膜原液としては、中和後のポリマー溶液をそのまま用いてもよいし、一旦、ポリマーを単離後、溶剤に再溶解したものを用いてもよい。溶剤としては、取り扱いやすいことからN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒が好ましいが、濃硫酸、濃硝酸、ポリリン酸等の強酸性溶媒を用いてもかまわない。製膜原液中のポリマー濃度は2~40質量%程度が好ましい。
【0034】
上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあり、ポリマー溶液中に無機塩が含まれる場合には、これを抽出するために湿式工程が必要であり乾湿式法を用いる。
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金から支持体であるエンドレスベルトの上に押し出してシート状とし、次いでかかるシートから溶媒を飛散させシートが自己支持性をもつポリマー濃度(PC)35~60質量%まで乾燥する。乾式工程を終えたシートは冷却された後、支持体から剥離されて次の湿式工程の湿式浴に導入され、脱塩、脱溶媒が行われる。湿式浴組成は、ポリマーに対する貧溶媒であれば特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いることができる。この際、シート中の不純物を減少させるために有機溶媒/水混合系の組成比(以下の数値は質量基準)は、有機溶媒/水=70/30~0/100であるが、好ましくは60/40~30/70、浴温度40℃以上であることが好ましい。湿式浴中には無機塩が含まれていてもよいが最終的には多量の水でシート中に含まれる溶媒や無機塩を抽出することが好ましい。
【0035】
湿式工程を通ったシートは、続いて、テンター内で水分の乾燥と熱処理が行なわれるが、テンター内で熱処理されるまでにシート中の溶媒含有量が5質量%未満になるまで乾燥させることが好ましい。溶媒含有量が5質量%以上の状態で熱処理工程に入ると、熱処理ムラが生じやすく、フィルム幅方向で物性に斑が生じたり、延伸工程中にシートが破断しやすくなる。この溶媒含有量は少ない方がより好ましく、0質量%付近まで完全に乾燥させることが望ましい。
【0036】
以上のようにして形成されるシートは、湿式工程中、熱処理工程で目的とする機械的性質、寸法安定性向上のため延伸が行なわれる。延伸は、最初にシート長手方向、次いで幅方向に延伸、あるいは最初に幅方向、次いで長手方向に延伸する逐次二軸延伸法や長手方向、幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法などを用いることができる。これらの延伸方法は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルム化で行われている溶融製膜における延伸法としてよく知られているが、本発明のような溶液製膜で得るフィルムの場合には、シート中に溶媒や湿式浴成分が含有されており、またそれらはシート外への移動を含んだプロセスであるため目的とするフィルムを得るためには後述する手法を採ることが好ましい。
【0037】
延伸方法としては、逐次二軸延伸法が装置上および操作性の点から好ましい。延伸条件としては、ポリマー組成等により適正な条件を選択することが必要であるが、シートの長手方向の延伸倍率は1.0~1.5倍、幅方向の延伸倍率は1.2~2.0倍であることが、目的の寸法安定性を得るうえで好ましい。また、延伸温度は270℃以上の温度で3秒以上行われるのが好ましく、270~320℃の温度で3秒以上行われることがより好ましい。延伸温度が270℃未満であると結晶化不足となり、十分な吸湿率及び抗張力性等の寸法特性が得られないことがある。なお、延伸温度が320℃を超えると結晶化度が上がりすぎるためフィルムが脆くなり、フィルム破れが生じ易くなる。また、延伸の際のシート中の溶媒含有量は5質量%未満であることが好ましい。なお、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することが有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが熱収縮率を低減させるのに有効である。
【0038】
なお、本発明における芳香族ポリアミドフィルムはもちろん単層フィルムでもよいが、積層フィルムであってもよい。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後、積層する方法が一つの例として挙げられる。さらに3層以上の場合も同様である。これら積層の方法としては、たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいて、その上に他の層を形成する方法などがある。
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの吸湿率は、2.0%未満であることが重要である。より好ましくは1.7%以下である。吸湿率が2.0%以上だと高温高湿条件下に対する寸法安定性が悪化し易く、磁気テープのカールやしわなどが生じて平面性悪化を招いたりすることがある。
【0039】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの吸湿率を2.0%未満とする方法としては、270℃以上で3秒以上処理することが好ましい。より好ましくは270~320℃の温度で3秒以上である。熱処理温度が270℃未満であると結晶化不足となり、十分な吸湿率及び抗張力性等の寸法特性が得られないことがある。また、この320℃を超えるとフィルムが脆くなり、特に、磁気テープの面圧、走行張力の高いシステム、例えば1巻のテープ長さが1,000mを超えるようなデータストレージシステムの高容量化(数TB級)に対応した磁気テープの支持体として実用的でない場合がある。
【0040】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの巻き取ったロールの幅方向の厚み推移を周波数解析して得られた振幅上位20の内、周期10mm以上40mm未満の振幅の平均が5μm以下であることが重要である。より好ましくは、巻き取ったロールの幅方向の厚み推移を周波数解析して得られた振幅上位20の内、周期10mm以上40mm未満の振幅の平均が4.5μm以下である。
【0041】
巻き取ったロールの幅方向の厚み推移を周波数解析して得られた振幅上位20の内、周期10mm以上40mm未満の振幅の平均が5μmを超えると、磁性層塗布工程で塗布スジが発生する場合があるため好ましくない。
【0042】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの巻き取ったロールの幅方向の厚み推移を周波数解析して得られた振幅上位20の内、周期10mm以上40mm未満の振幅の平均が5μm以下とする方法としては、磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロールの巻径分布(TD、VAL)とターゲットの巻径分布曲線ft(TD)の幅方向各位の磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロール1枚当たりの偏差目標値(TD、ΔV)を求め、口金の間隙を制御するパラメータの目標値として設定する口金の厚み制御方法において、磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロール巻径分布(TD、VAL)を、隣接平均法により幅方向±10mm以上、±80mm以下の周囲のVAL平均値MaVALとし、得られた磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロールの巻径分布(TD、MaVAL)とターゲットの巻径分布曲線ft(TD)の幅方向各位の磁気記録媒体用芳香族ポリアミドフィルムロール1枚当たりの偏差目標値(TD、VALft)を隣接平均法により幅方向±10mm以上、±80mm以下の周囲のVALft平均値MaVALftを枚数で割りかえして求めた値を、口金の間隙を制御するパラメータの目標値とすることが好ましい。更に好ましくは、幅方向±20mm以上、±60mm以下の周囲を隣接平均法により求めることである。
【実施例0043】
以下、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものでは無い。
【0044】
(吸湿度)
フィルムを約0.5g採取し、脱湿のため120℃で3時間の加熱を行った後、窒素気流下で25℃まで降温し、その降温後の質量を0.1mg単位まで秤量する。この時の質量をW0とする。
次いで、25℃で75RH%の雰囲気下に48時間静置し、その後の質量を測定し、これをW1として、次の式を用いて吸湿率を求めた。
吸湿率[%]={(W1-W0)/W0}×100。
【0045】
(ロール厚み推移の平均振幅)
芳香族ポリアミドフィルムロールを、ハマノ精機株式会社製原反形状測定器(バルク形状測定器)を用いて、フィルムロール端部から反対方向のフィルムロール端部まで測定する。
同様にして、フィルムロール円周方向に60度間隔でフィルム巻き出し位置を除く5箇所を、幅方向に巻径分布を測定し、これらの平均値より、幅方向巻径分布(TD、VAL)を求める。具体的には、該測定装置の検出器であるリニアゲージをロール表面に接触させて専用のレール上を速度12.5mm/秒で走行させて測定を行う。リニアゲージからのデータを0.01秒間隔でデジタルレコーダーを用いて、VALの初期値をゼロとし、幅位置毎の巻径の変位をVALとして、次の式にてTD位置を定め、幅方向巻径分布(TD、VAL)を得る。
TD[mm]=測定時間[秒]×速度12.5[mm/秒]
得られた幅方向巻径分布(TD、VAL)を、フーリエ変換にて変動幅上位20個の(VAL変動周期、VAL変動幅)を求めた。
【0046】
(塗布スジ発生有無)
芳香族ポリアミドフィルム上に下記組成の非磁性塗料を芳香族ポリアミドフィルム上に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布し、100℃で乾燥させた。更にその直後に下記組成の磁性塗料を乾燥後の厚さが0.08μmになるように塗布し、100℃で乾燥した。この時、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに交流磁場発生装置の中を通過させ配向処理を行った。また、この支持体の非磁性下層及び磁性層の形成面とは反対面側に、上記バックコート塗料を乾燥後の厚さが0.5μmとなるように塗布・乾燥し、磁気記録積層原反ロールを得た。得られた磁気記録積層原反ロールを温度130℃の熱処理ゾーンにて張力3.0kg/mで走行させた(熱処理ゾーンの滞在時間は15秒である)。次いで、金属ロールのみから構成される7段のカレンダー処理機で温度90℃、線圧300kg/cm、巻取り張力4.0kg/mで表面平滑化処理を行った後、60℃で36時間加熱処理を行い、磁気テープを作成した。磁気テープの塗布スジ発生有無を以下の基準で評価した。
×:長手方向の塗布スジが視認できる
○:長手方向の塗布スジが視認できる。
【0047】
(上層磁性塗料液の調製)
強磁性板状六方晶フェライト粉末 100質量部
ポリウレタン樹脂 15質量部
フェニルホスホン酸 3質量部
α-Al2O3(粒子サイズ0.15μm) 5質量部
板状アルミナ粉末(平均粒径:50nm) 1質量部
カーボンブラック(粒子サイズ 20nm) 2質量部
シクロヘキサノン 110質量部
メチルエチルケトン 100質量部
トルエン 100質量部
ブチルステアレート 2質量部
ステアリン酸 1質量部
(下層用非磁性塗料液の調製)
非磁性無機質粉体 85質量部
α-酸化鉄、表面処理剤:Al2O3、SiO2
カーボンブラック 20質量部
ポリウレタン樹脂 15質量部
フェニルホスホン酸 3質量部
α-Al2O3(平均粒径0.2μm) 5質量部
シクロヘキサノン 140質量部
メチルエチルケトン 170質量部
ブチルステアレート 2質量部
ステアリン酸 1質量部
<バックコート用塗料液の調整>
カーボンブラック(平均粒径:25nm) 40.5質量部
カーボンブラック(平均粒径:370nm) 0.5質量部
硫酸バリウム 4.05質量部
ニトロセルロース 28質量部
ポリウレタン樹脂(SO3Na基含有) 20質量部
シクロヘキサノン 100質量部
トルエン 100質量部
メチルエチルケトン 100質量部。
(芳香族ポリアミド溶液A)
N-メチル-2-ピロリドン(以下NMP)に、85モル%に相当する2-クロロパラフェニレンジアミン(以下CPA)と15モル%に相当するジフェニルエーテル(以下DPE)を溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するクロロテレフタル酸クロライド(以下CTPC)を添加して、重合前に平均粒径80nmのシリカ粒子を芳香族ジアミン成分に対して0.02質量%、平均粒径100nmの有機粒子を芳香族ジアミン成分に対して6.0質量%になるように添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い、重合ポリマーを得た。
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8質量%の芳香族ポリアミド溶液Aを得た。
【0048】
(芳香族ポリアミド溶液B)
NMPに、85モル%に相当するCPAと15モル%に相当するDPEを溶解させ、この溶液を濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通して濾過した後、重合槽へ移送し、これに濾過精度1.0μmのポリプロピレンからなるフィルターに通した98.5モル%に相当するCTPCを添加して、30℃以下で2時間の撹拌を行い、重合ポリマーを得た。
【0049】
次に、重合ポリマー中の塩化水素に対して98.5モル%の炭酸リチウムを添加して4時間の中和を行い、平均1次粒径が16nmのシリカ(日本アエロジル株式会社製“AEROSIL”R972タイプ)をポリマーに対して1.6質量%添加して1時間の攪拌を行った後、重合ポリマー中の塩化水素に対して10モル%のトリエタノールアミンを添加して1時間の撹拌を行い、ポリマー濃度10.8質量%の芳香族ポリアミド溶液Bを得た。
【0050】
(実施例1)
芳香族ポリアミド溶液Aを濾過精度1.2μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通し、また、芳香族ポリアミド溶液Bを濾過精度5.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通した後に口金内部で積層した。この時の芳香族ポリアミド溶液AとBの積層比率(厚み比)は、50%ずつになるようにした。次に、積層したポリマー溶液を表面が鏡面状のステンレス製ベルト上にキャストし、口金より走行方向下流側のベルト上において180℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得た膜体をベルトから連続的に剥離した。この時ステンレス製ベルトに接する層として芳香族ポリアミド溶液Bとなるように積層した。
【0051】
次に、溶媒抽出処理装置の槽内へ膜体を導入して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行いながらMD方向に1.15倍延伸した。
その後、得られた膜体を横延伸機のクリップに把持させて、1.70倍横延伸を行ないながら延伸温度が280℃になるように熱風にて3秒間延伸処理を行なった後、更に熱処理温度が200℃になるように熱風にて3秒間、弛緩率3%で熱処理を行った。
【0052】
20℃/秒の速度で徐冷し、フィルムエッジを除去し、オシレーション60mmでコア上に巻き取って平均厚みが3.0μmの芳香族ポリアミドフィルムのジャンボロールを得た。
【0053】
次いで、スリッターにて、巻き取り速度30m/min、巻き取り面圧200N/m、巻き取り張力100N/mで小幅(1,014mm)にスリットし、円筒度が0.05mm幅方向弾性率が14.5GPa、曲げ強度が210MPa、表面硬度が85、外径167mm、内径152.5mmの繊維強化プラスチック(FWP)コアA(天龍工業株式会社製)FWP10)の円筒コア上にロール状に、芳香族ポリアミド溶液Aが巻き内面になるように8,530m巻き取り、円筒状コア上にフィルムが巻かれた芳香族ポリアミドフィルムロールAを採取した。
【0054】
幅方向巻径分布(TD、VAL)を、隣接平均法により幅方向±30mmの範囲のVALを平均して(TD、MaVAL)を求めた。
次に、(TD、MaVAL)からターゲットの巻径分布曲線ft(TD)差を幅方向巻径分布偏差(TD、VALft)として求めた。
次に、隣接平均法により幅方向±30mmの範囲の幅方向巻径分布偏差(TD、VALft)を平均して、(TD、MaVALft)とし、測定したプラスチックフィルムロールの巻き長さから枚数を算出し、(TD、MaVALft)を枚数で割り返して、プラスチックフィルム1枚当たりの幅方向各位偏差目標値を求めた。
求められた幅方向各位偏差目標値を口金の幅方向該当位置毎に間隙制御パラメータとして入力した。
【0055】
入力した間隙制御パラメータがフィルム厚みとして反映された後に、前述と同様に、
芳香族ポリアミド溶液Aを濾過精度1.2μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通し、また、芳香族ポリアミド溶液Bを濾過精度5.0μmのステンレスからなる金属繊維フィルターに通した後に口金内部で積層した。この時の芳香族ポリアミド溶液AとBの積層比率(厚み比)は、50%ずつになるようにした。次に、積層したポリマー溶液を表面が鏡面状のステンレス製ベルト上にキャストし、口金より走行方向下流側のベルト上において180℃の熱風で2分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得た膜体をベルトから連続的に剥離した。この時ステンレス製ベルトに接する層として芳香族ポリアミド溶液Bとなるように積層した。
【0056】
次に、溶媒抽出処理装置の槽内へ膜体を導入して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行いながらMD方向に1.15倍延伸した。
その後、得られた膜体を横延伸機のクリップに把持させて、1.70倍横延伸を行ないながら延伸温度が280℃になるように熱風にて3秒間延伸処理を行なった後、更に熱処理温度が200℃になるように熱風にて3秒間、弛緩率3%で熱処理を行った。水分の乾燥と熱処理を行なって、280℃で1.5分間乾燥と熱処理とTD方向に1.22倍の延伸を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷し、フィルムエッジを除去し、オシレーション60mmでコア上に巻き取って平均厚みが3.0μmの芳香族ポリアミドフィルムのジャンボロールを得た。
【0057】
次いで、スリッターにて、巻き取り速度30m/min、巻き取り面圧200N/m、巻き取り張力100N/mで小幅(1,014mm)にスリットし、円筒度が0.05mm幅方向弾性率が14.5GPa、曲げ強度が210MPa、表面硬度が85、外径167mm、内径152.5mmの繊維強化プラスチック(FWP)コアA(天龍工業株式会社製)FWP10)の円筒コア上にロール状に、芳香族ポリアミド溶液Aが巻き内面になるように8,530m巻き取り、円筒状コア上にフィルムが巻かれた芳香族ポリアミドフィルムロールBを採取した。
芳香族ポリアミドフィルムロールBの結果を実施例1に示す。
【0058】
(実施例2)
芳香族ポリアミドフィルムの平均厚みを3.6μmとした以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0059】
(実施例3)
芳香族ポリアミドフィルムの平均厚みを4.4μmとした以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
隣接平均法による幅方向±30mmの範囲の幅方向巻径分布偏差(TD、VALft)を平均せず、測定した芳香族ポリアミドフィルムロールの巻き長さから枚数を算出し、(TD、VALft)を枚数で割り返して、芳香族ポリアミドフィルム1枚当たりの幅方向各位偏差目標値を求めた以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0061】
(比較例2)
横延伸機のクリップに把持させて、1.40倍横延伸を行ないながら延伸温度が250℃になるように熱風にて3秒間延伸処理を行なった後、更に熱処理温度が200℃になるように熱風にて3秒間、弛緩率3%で熱処理を行い、かつ、隣接平均法による幅方向±30mmの範囲の幅方向巻径分布偏差(TD、VALft)を平均せず、測定した芳香族ポリアミドフィルムロールの巻き長さから枚数を算出し、(TD、VALft)を枚数で割り返して、芳香族ポリアミドフィルム1枚当たりの幅方向各位偏差目標値を求めた以外は実施例1と同様に行った。
結果を表1に示す。
【0062】