(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058047
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】自立ガラス手摺
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165160
(22)【出願日】2022-10-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】北川原 望
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 江美
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301HH18
2E301JJ12
2E301LL22
2E301NN01
2E301NN36
2E301PP01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デザイン性に優れ、後施工による設置が容易な自立ガラス手摺を提供する。
【解決手段】手摺10の延長方向に沿って所定間隔で高さ調整されて床面上に設置されたベース部材30、各ベース部材30上に掛け渡されるように、手摺10の延長方向に沿って敷設されたガラス支持フレーム20、ガラス支持フレーム20内に下端部が固定保持された単位幅からなるガラス板11が、手摺の延長分だけ互いの端部を突き合わせて建て込まれてなるガラス面部、手摺の延長方向に沿って設置され、ガラス支持フレーム20とガラス面部の足元部を覆うカバーパネル40、ガラス面部の上端面に取り付けられた笠木50、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺の延長方向に沿って所定間隔で高さ調整されて床面上に設置されたベース部材と、
前記各ベース部材上に掛け渡されるように、前記手摺の延長方向に沿って敷設されたガラス支持部材と、
前記ガラス支持部材内に下端部が固定保持された単位幅からなるガラス板が、前記手摺の延長分だけ互いの端部を突き合わせて建て込まれてなるガラス面部と、
前記手摺の延長方向に沿って設置され、前記ガラス支持部材と前記ガラス面部の足元部を覆うカバー部材と、
前記ガラス面部の上端面に取り付けられた笠木と、
を備えたことを特徴とする自立ガラス手摺。
【請求項2】
前記ガラス支持部材は、断面が略U字形状の溝部が形成され、前記溝部内に前記ガラス板の下端部を固定保持して前記ガラス板を自立させた請求項1に記載の自立ガラス手摺。
【請求項3】
前記ガラス板は、前記溝部の底面上に敷設された台座ブロック上に載置されるとともに、前記溝部内に位置する下端両側部が樹脂接着剤で固定保持された請求項1または請求項2に記載の自立ガラス手摺。
【請求項4】
前記カバー部材は、正面視して前記ガラス板側から両側の床面に向けて広がるテーパ部を有する請求項1に記載の自立ガラス手摺。
【請求項5】
前記笠木は、前記ガラス板の上端面を覆う幅を有する金属製帯板である請求項1に記載の自立ガラス手摺。
【請求項6】
前記ガラス部材は、強化合わせガラスからなる請求項1に記載の自立ガラス手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自立ガラス手摺に係り、デザイン性に優れ、後施工による設置が容易に行える自立ガラス手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物のバルコニーや、建物内部の吹き抜け空間に面してガラス手摺を設置する場合、所定間隔で床面の縁に立設された支柱に設けられた支持部材にガラス板端を支持させる取付構造が採用されている(特許文献1)。
【0003】
ガラス板が支柱に設けられた支持部材で支持されるガラス手摺は、金属製の支柱や支持部材が所定間隔で配置されるため、視界が遮られたり、ガラス手摺としてのデザイン性が劣る場合がある。そこで、デザイン性を重視し、支柱や支持部材を無くした自立ガラス手摺も提案されている。
【0004】
自立ガラス手摺では、たとえばガラス板の下端を挟んで自立保持可能な基部金物が用いられる。この基部金物をコンクリート床面等にあらかじめ設けた凹部や切欠部内にアンカー部材等を用いて固定保持させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した自立ガラス手摺では、基部金物にガラス板が取り付けられた後に、凹部や切欠部内の基部金物の回りの空間をモルタル充填によって塞ぐ等の作業が必要となり、床部分の施工が煩雑になる。また、あらかじめコンクリート床面に凹部や切欠部を形成しておくため、ガラス手摺を設置する位置の自由度が制限されていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、床工事が終わった後、任意の配置による設置が可能で、デザイン性に優れ、また足元の安全性が確保された自立ガラス手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自立ガラス手摺は、手摺の延長方向に沿って所定間隔で高さ調整されて床面上に設置されたベース部材と、前記各ベース部材上に掛け渡されるように、前記手摺の延長方向に沿って敷設されたガラス支持部材と、前記ガラス支持部材内に下端部が固定保持された単位幅からなるガラス板が、前記手摺の延長分だけ互いの端部を突き合わせて建て込まれてなるガラス面部と、前記手摺の延長方向に沿って設置され、前記ガラス支持部材と前記ガラス面部の足元部を覆うカバー部材と、前記ガラス面部の上端面に取り付けられた笠木と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記ガラス支持部材は、断面が略U字形状の溝部が形成され、前記溝部内に前記ガラス板の下端部を固定保持して前記ガラス板を自立させることが好ましい。
【0010】
前記ガラス板は、前記溝部の底面上に敷設された台座ブロック上に載置されるとともに、前記溝部内に位置する下端両側部が樹脂接着剤で固定保持されることが好ましい。
【0011】
前記カバー部材は、正面視して前記ガラス板側から両側の床面に向けて広がるテーパ部を有することが好ましい。
【0012】
前記笠木は、前記ガラス板の上端面を覆う幅を有する金属製帯板であることが好ましい。
【0013】
前記ガラス部材は、強化合わせガラスからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、任意の床面に後施工によってデザイン性の優れた自立ガラス手摺を容易に設置することができ、またガラス板の基部を覆うカバー形状により足元の安全性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の自立ガラス手摺の一実施形態において、正面の構成と手摺の延長方向の構成を部分的に示した部分斜視図。
【
図2】
図1に示した自立ガラス手摺を正面視した正面図。
【
図3】
図1に示した自立ガラス手摺の基部の構成が分かるように示した部分拡大斜視図。
【
図4】自立ガラス手摺を吹き抜け部の階上の手摺部分に採用した例を示した正面図、部分立面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の自立ガラス手摺の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、自立ガラス手摺10のガラス板と、ガラス板11の下端を支持するガラス支持フレーム20と、ガラス板11の幅方向の構成とを示した部分斜視図である。
図2は、
図1に加えて、ベース部材30を介してのガラス支持フレーム20の床面への取付状態を示した正面図である。
図3は、ガラス支持部材20の説明のために、カバーパネル40(後述する。)の一部を取り除いて示した部分斜視図である。
【0018】
図1、
図2に示したように、本発明の自立ガラス手摺10のガラス板11には、中間フィルム(図示せず)を挟んで2枚の厚さ10mmの強化ガラスを貼り合わせた、強化合わせガラスが用いられている。このガラス板11は、1枚の寸法が高さが約1,100mm、幅方向の割り付け幅Wが約1,250mmからなり、建て込み後に、基部カバーパネル40の上面から笠木50の天端までの見付け高さHが約970mmとなるように、下端部分がガラス支持フレーム20に固定支持されている。なお、上記寸法は、設計される手摺寸法に応じて適宜設定できることは言うまでもない。
【0019】
ガラス板11は、
図1、
図2、及び特に詳しく示した
図3にあるように、下端の所定高さ分が、ガラス支持部材のとしてのガラス支持フレーム20内に収容固定されている。本実施形態のガラス支持フレーム20は、
図3に示したように、上方が開放された略角U字状断面の溝部24を有し、手摺の設置延長に合わせて適当な分割数となるように、所定長さの不等辺山形鋼21と帯板22とを組み合わせて製作した加工鋼材からなる。細長部材であるガラス支持フレーム20は、手摺の延長方向に沿って所定間隔で設置されたベース部材30を構成するベースプレート上に、現場溶接によって固定保持されている。現場溶接の簡易化のために、ガラス支持フレーム20の両側面には、略直角三角形形状の補強リブ23が、ベースプレート31の設置間隔に合わせて工場溶接によって取り付けられている。これにより、ガラス支持フレーム20をベースプレート31上に載置した状態で、補強リブ23の下端とベースプレート31の上面とを溶接するだけでガラス支持フレーム20をベースプレート31上に堅固に固定することができる。
【0020】
略角U字状断面の溝部24は、本実施形態では幅40mm、深さ110mmに設定され、その底部にクロロプレンゴム製の台座ブロック25が溝部24の全長にわたって取り付けられている。この台座ブロック25上に建て込まれたガラス板11の底面が載置される。ガラス板11は、底面が保護されるとともに、各ガラス板11の設置高さが保持されるように調整されている。
【0021】
ベース部材30のうち、ベースプレート31は、
図2,
図3に示されたように、上面に載置されるガラス支持フレーム20の水平度を保持するするように、床面から所定の高さに調整されて据え付けられている。ベースプレート31の高さ調整と固定は、床面に穿設されたあと施工アンカーボルト32に取り付けられたダブルナット33による位置調整と締め付けによって行われている。なお、ベースプレート31と床面との間には無収縮モルタル34がブロック状に充填され、ベースプレート31は確実に位置保持される。
【0022】
台座ブロック25上に載置されるガラス板11は、建て込み時に鉛直度が調整され、その鉛直状態が保持された状態でガラス支持フレーム20内のガラス板11の両側面に樹脂接着剤26が充填され、樹脂接着剤26が硬化して支持フレームに保持される。なお、樹脂接着剤26が充填され硬化する前に、ガラス支持フレーム20内のガラス板11の両側面との間の隙間を図示しないクサビ部材等で鉛直状体を保持させておくことが好ましい。
【0023】
本発明では、自立ガラス手摺10としての意匠の効果を高めるために、ガラス板11の足元にカバーパネル40が取り付けられている。カバーパネル40は、
図1に示したように、正面視してガラス支持フレーム20に支持されたガラス板11に関して対称なテーパ面を有する略台形形状をなし、床面からガラス支持フレーム20に支持されたガラス板11の足元部までの範囲を覆っている。カバーパネル40の固定のために、床面とガラス支持フレーム20の上端部分にL字形ブラケット41が手摺の延長方向に沿って取り付けられている。このL字形ブラケット41にカバーパネル40の下端部、上端部をビス止めすることで、カバーパネル40は所定位置に固定保持される。カバーパネル40をテーパ形状とすることにより、手摺足元がすっきりした意匠となり、また足がかりとなる段部もないため、安全面での効果も得られる。
【0024】
ガラス板11の上端面には、手摺の延長方向に沿ってステンレス製の板状の笠木50がシーリング材51を介して取り付けられている。この笠木50は、合わせガラスの厚さよりわずかに幅の広い薄い帯板材で、ガラス板11の上端面を保護するエッジカバーとしての役割を果たす。本実施形態では、幅25mm、厚さ5mmのステンレス製帯板が用いられている。この笠木50を採用したことにより、
図4(b)に示したように、ガラス板11の上端面において笠木が目立たない納まりとなり、ガラス面の軽やかさが際立つデザインとなっている。
【0025】
図4各図は、本発明の自立ガラス手摺10を、吹き上げ部の階上側(2階)の手摺として採用した例を示した正面図、部分立面図である。
図4(a)に示したように、本発明の自立ガラス手摺10を吹き上げ部の階上側(2階)の手摺とすると、自立ガラス手摺10のカバーパネル40はテーパ形状であるため、吹き抜け部の下側(1階)からの見えがかりで手摺足元部分がほとんど隠れ、ガラス面の存在が際立つデザインとなっている。
【0026】
図4(b)は、自立ガラス手摺10の延長方向のガラス板11の割り付け例を示している。所定単位幅のガラス板11は、手摺の延長方向に沿って突き合わせて、現場にあった延長の手摺のガラス面部を構成するようになっている。
図4(b)では3枚のガラス板11が突き合わされて設置された状態が示されている。なお、ガラス板11同士の突き合わせ部分の縦目地には全高にわたって幅10mmのシリコーン系のシーリング材52が充填され、ガラス板11の側端面の保護が図られている。延長方向に並べて建て込まれた各ガラス板11の上端面をつないで薄いステンレス帯板からなる笠木50が取り付けられている。笠木50は、図示したように、連なるガラス面の上端面において目立たない構成であるため、ガラス面の軽やかさが際立つデザインとなっている。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
10 自立ガラス手摺
11 ガラス板
20 ガラス支持フレーム
24 溝部
25 台座ブロック
26 樹脂接着剤
30 ベース部材
31 ベースプレート
40 カバーパネル
50 笠木