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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058051
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
H02J1/00 306K
H02J1/00 306L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165170
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 量太
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165BB03
5G165CA01
5G165DA02
5G165DA04
5G165EA02
5G165GA01
5G165GA09
5G165HA03
5G165HA07
5G165HA17
5G165JA09
5G165KA05
5G165LA01
5G165LA02
5G165MA10
5G165NA01
5G165NA03
5G165NA05
5G165NA06
5G165NA10
(57)【要約】
【課題】電源の遮断時における制動作用の遅延時間を従来よりも長くすることが可能な制動装置を提供する。
【解決手段】電源から給電される電源電圧に基づいて電磁ブレーキに駆動電流を通電する駆動装置であって、電源電圧よりも高い補助電圧を出力する補助電源と、電源の遮断時に補助電圧を電磁ブレーキに印加させる制御部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の電源電圧に基づいて電磁ブレーキに駆動電流を通電することにより制動力を発生させる制動装置であって、
前記電源電圧よりも高い補助電圧を出力する補助電源と、
前記電源の遮断時に前記補助電圧を前記電磁ブレーキに印加させる制御部と
を備える制動装置。
【請求項2】
前記補助電源は、前記電磁ブレーキの逆起電圧に基づいて前記補助電圧を蓄電素子に蓄電する請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記補助電源は、前記電磁ブレーキを非制動状態に保持する保持電流が通電されているときに前記補助電圧を蓄電する請求項2に記載の制動装置。
【請求項4】
前記補助電源が前記補助電圧を蓄電する期間において前記保持電流を増加補正する請求項3に記載の制動装置。
【請求項5】
前記補助電源は、
アノード端子が前記電磁ブレーキの一端に接続されるダイオードと、
一端が前記ダイオードのカソード端子に接続され、他端がアースに接続され、前記蓄電素子として機能するコンデンサと、
一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記電磁ブレーキの他端に接続されるスイッチとを備える請求項2~4のいずれか一項に記載の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、走行中に給電が断たれた場合に安全確実に機体を停止させる電動車の制動制御装置が開示されている。この制動制御装置は、走行中に走行制御装置への給電が断たれたことを検知する停電検知手段と、電源装置の給電状態を保持する給電保持回路とを備え、該停電検知手段の検知時に給電保持回路を介して走行制御装置に給電し、該走行制御装置は、駆動モータへの制動信号を出力するとともに、一定時間に限り電磁ブレーキへの通電を行うことにより該電磁ブレーキの制動作用を遅延させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-323470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術の給電保持回路は、コンデンサに予め蓄積された電荷を用いて電磁ブレーキの制動作用を遅延させるものであり、制動作用の遅延時間を十分に確保できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電源の遮断時における制動作用の遅延時間を従来よりも長くすることが可能な制動装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の態様1は、電源の電源電圧に基づいて電磁ブレーキに駆動電流を通電することにより制動力を発生させる制動装置であって、前記電源電圧よりも高い補助電圧を出力する補助電源と、前記電源の遮断時に前記補助電圧を前記電磁ブレーキに印加させる制御部とを備える、という手段を採用する。
【0007】
このような態様1の制動装置によれば、電源の遮断時に電源電圧よりも高い補助電圧を電磁ブレーキに印加させるので、電源の遮断時における制動作用の遅延時間を従来よりも長くすることが可能である。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の制動装置において、前記補助電源は、前記電磁ブレーキの逆起電圧に基づいて前記補助電圧を蓄電素子に蓄電する、という手段を採用する。
【0009】
このような態様2の制動装置によれば、電磁ブレーキの逆起電圧に基づいて補助電圧を生成するので、電源電圧よりも高い補助電圧を容易に生成することが可能である。
【0010】
本発明の態様3は、態様2の制動装置において、前記補助電源は、前記電磁ブレーキを非制動状態に保持する保持電流が通電されているときに前記補助電圧を蓄電する、という手段を採用する。
【0011】
このような態様3の制動装置によれば、電磁ブレーキに保持電流が通電されている比較的長い期間を利用して電源電圧よりも高い補助電圧を蓄電することができる。
【0012】
本発明の態様4は、態様3の制動装置において、前記補助電源が前記補助電圧を蓄電する期間において前記保持電流を増加補正する、という手段を採用する。
【0013】
このような態様4の制動装置によれば、電磁ブレーキが非制動状態から制動状態に移行することを回避することができる。
【0014】
本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか1つの制動装置において、前記補助電源は、アノード端子が前記電磁ブレーキの一端に接続されるダイオードと、一端が前記ダイオードのカソード端子に接続され、他端がアースに接続され、前記蓄電素子として機能するコンデンサと、一端が前記コンデンサの一端に接続され、他端が前記電磁ブレーキの他端に接続されるスイッチとを備える、という手段を採用する。
【0015】
このような態様5の制動装置によれば、簡単な回路構成で補助電源を構成することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源の遮断時における制動作用の遅延時間を従来よりも長くすることが可能な制動装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る制動装置Aの構成を示す回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制動装置Aの動作を示す第1のタイミングチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る制動装置Aの要部動作を示す第1の動作説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る制動装置Aの動作を示す第2のタイミングチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る制動装置Aの要部動作を示す第2の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る制動装置Aは、電動搬送台車等の電動車両に備えられ、電磁ブレーキを作動させることによって制動力を発生させる装置である。
【0019】
この制動装置Aは、図1に示すようにバッテリBからの給電に基づいて電磁ブレーキを作動させるものである。制動装置Aは、図示するようにCPU(Central Processing Unit)1、主駆動回路2、主スイッチ3、副駆動回路4、副スイッチ5、ダイオード6、電磁ブレーキ7、補助電源8及び電源回路9を構成要素として備えている。
【0020】
バッテリBは、電動車両に備えられ、当該電動車両の各部(負荷)に直流電力(バッテリ電力)を供給する二次電池である。すなわち、バッテリBは、プラス電極が制動装置Aに接続され、マイナス電極がアースに接続されている。このバッテリBは、例えばリチウムイオン電池であり、出力電圧(バッテリ電圧)は例えば24V(ボルト)である。なお、バッテリBは、本発明の電源に相当する。
【0021】
図1には示していないが、バッテリBと制動装置Aとを電気的に接続する電力線には、途中部位に電源スイッチが設けられている。すなわち、バッテリBから制動装置Aへのバッテリ電力の供給は、電動車両の運転者が電源スイッチを開状態(OFF状態)から閉状態(ON状態)に切替操作することによって行われる。また、バッテリBから制動装置Aへのバッテリ電力の供給は、バッテリBに何らかの異常が発生した場合にも自動的に停止される。
【0022】
本実施形態に係る制動装置Aにおいて、CPU1は、内部メモリに予め記憶する制御プログラムに基づいて制動装置Aを包括的に制御するソフトウエア制御装置である。すなわち、CPU1は、制御プログラムを記憶する内部メモリ、制御プログラムを実行する演算部、バッテリ電圧が入力される入力回路、また主駆動回路2、副駆動回路4及び補助電源8に制御信号を出力する出力回路をハードウエア資源として少なくとも備えている。
【0023】
このようなCPU1は、ハードウエア資源と制御プログラム(ソフトウエア資源)との協働によって所望の制御機能を発揮する。詳細について後述するが、CPU1は、バッテリB(電源)の遮断時に補助電源8が予め生成した補助電圧を電磁ブレーキに印加させる制御部である。すなわち、CPU1は、本発明の制御部に相当する構成要素である。
【0024】
CPU1は、図示するように電源端子VDD、接地端子GND、入力端子IN及び3つの出力端子OUT1~3を少なくとも備えている。電源端子VDDは、電源回路9の出力端に接続されており、電源回路9から動作電源を取り込む。接地端子GNDは、制動装置Aのアース(基準電位)に接続されている。入力端子INは、バッテリBの出力端に接続されており、バッテリ電圧Vbを取り込む。
【0025】
また、3つの出力端子OUT1~3のうち、第1の出力端子OUT1は、主駆動回路2の入力端に接続されており、第1の制御信号を主駆動回路2に出力する。第2の出力端子OUT2は、副駆動回路4の入力端に接続されており、第2の制御信号を副駆動回路4に出力する。第3の出力端子OUT3は、補助電源8の制御端に接続されており、第3の制御信号を補助電源8に出力する。
【0026】
このようなCPU1は、電源回路9から電源端子VDDに給電される動作電源(例えば5V電源)によって作動し、また入力端子INに入力されるバッテリ電圧等を制御プログラムに基づいて情報処理することにより、第1~第3の制御信号を生成する。また、CPU1は、第1の制御信号を用いて主駆動回路2を制御し、第2の制御信号を用いて副駆動回路4を制御し、また第3の制御信号を用いて補助電源8を制御する。
【0027】
主駆動回路2は、入力端がCPU1の第1出力端子OUT1と接続され、出力端が主スイッチ3の制御端に接続されている。主駆動回路2は、CPU1から入力される第1の制御信号に基づいて第1の駆動パルスを生成し、当該第1の駆動パルスを主スイッチ3の制御端に出力する。
【0028】
主スイッチ3は、一方の入出力端が副スイッチ5における一方の入出力端、電磁ブレーキ7の一端及び補助電源8の入力端に接続され、他方の入出力端がアースに接続され、制御端が主駆動回路2の出力端に接続されている。この主スイッチ3は、主駆動回路2の出力端から制御端に入力される第1の駆動パルスによって一方の入出力端と他方の入出力端との導通/非導通(つまりON/OFF)が設定されるスイッチングトランジスタ(例えばMOS型FET)である。
【0029】
副駆動回路4は、入力端がCPU1の第2出力端子OUT2と接続され、出力端が副スイッチ5の制御端に接続されている。副駆動回路4は、CPU1から入力される第2の制御信号に基づいて第2の駆動パルスを生成し、当該第2の駆動パルスを副スイッチ5の制御端に出力する。
【0030】
副スイッチ5は、一方の入出力端が主スイッチ3における一方の入出力端、電磁ブレーキ7の一端及び補助電源8の入力端に接続され、他方の入出力端がダイオード6のアノード端子に接続され、制御端が副駆動回路4の出力端に接続されている。この副スイッチ5は、副駆動回路4の出力端から制御端に入力される第2の駆動パルスによって一方の入出力端と他方の入出力端との導通/非導通(つまりON/OFF)が設定されるスイッチングトランジスタ(例えばMOS型FET)である。
【0031】
ダイオード6は、アノード端子が副スイッチ5における他方の入出力端に接続され、カソード端子がバッテリBのプラス電極、電磁ブレーキ7の他端、補助電源8の出力端及び電源回路9の入力端に接続されている。このダイオード6は、副スイッチ5において、一方の入出力端から他方の入出力端に向かって電流が流れることを許容するものの、他方の入出力端から一方の入出力端に向かって電流が流れることを阻止する。
【0032】
電磁ブレーキ7は、一端が主スイッチ3における一方の入出力端、副スイッチ5における一方の入出力端及び補助電源8の入力端に接続され、他端がバッテリBのプラス電極、ダイオード6のカソード端子、補助電源8の出力端及び電源回路9の入力端に接続されている。
【0033】
電磁ブレーキ7は、図示するように誘導性負荷(コイル)であり、駆動電流が通電されない状態では制動力を発揮し、駆動電流が通電されると制動力を発揮しない。すなわち、電磁ブレーキ7は、制動力によって電動車両を減速又は停止(停車)させる。
【0034】
図示していないが、電動車両には走行動力を発生させる駆動モータが設けられている。この駆動モータは電動車両における走行動力源である。電動車両は、駆動モータが発生させる走行動力によって走行し、また電磁ブレーキ7が発生させる制動力によって減速又は停止する。
【0035】
補助電源8は、入力端が主スイッチ3における一方の入出力端、副スイッチ5における一方の入出力端及び電磁ブレーキ7の一端に接続され、出力端がダイオード6のカソード端子、電磁ブレーキ7の他端、電源回路9の入力端及びバッテリBのプラス電極に接続され、また制御端がCPU1における第3の出力端子OUT3に接続されている。
【0036】
この補助電源8は、図示するように蓄電用ダイオード8a、蓄電用コンデンサ8b及び出力用スイッチ8cを備えている。蓄電用ダイオード8aは、アノード端子が補助電源8の入力端であり、カソード端子が蓄電用コンデンサ8bの一端及び出力用スイッチ8cの一端に接続されている。
【0037】
蓄電用コンデンサ8bは、一端が蓄電用ダイオード8aのカソード端子及び出力用スイッチ8cの一端に接続され、他端がアースに接続されている。この蓄電用コンデンサ8bには、電磁ブレーキ7の一端の電圧が蓄電用ダイオード8aを介して印加される。詳細については後述するが、蓄電用コンデンサ8bには、電磁ブレーキ7の一端の電圧に基づいてバッテリ電圧Vbよりも高い補助電圧Vcが蓄電される。このような蓄電用コンデンサ8bは、本発明の蓄電素子に相当する。
【0038】
出力用スイッチ8cは、一方の入出力端が蓄電用ダイオード8aのカソード端子及び蓄電用コンデンサ8bの一端に接続され、他方の入出力端が補助電源8の出力端であり、また制御端が補助電源8の制御端である。この出力用スイッチ8cは、制御端にCPU1から入力される第3の制御信号に基づいて一方の入出力端と他方の入出力端との導通/非導通(つまりON/OFF)が設定されるスイッチングトランジスタ(例えばMOS型FET)である。
【0039】
このような補助電源8は、入力端に印加される電磁ブレーキ7の一端の電圧に基づいてバッテリ電圧Vbよりも高い補助電圧Vcを生成し、当該補助電圧Vcを第3の制御信号に基づいて出力端から電磁ブレーキ7の他端に出力する。詳細については後述するが、この補助電圧Vcは、バッテリBの遮断時において、バッテリ電圧Vbに代わって電磁ブレーキ7を非制動状態に保持する。
【0040】
ここで、補助電圧Vcの電磁ブレーキ7の他端への供給は、第3の出力端子OUT3から制御端に入力される第3の制御信号によって制御される。すなわち、補助電源8は、CPU1から補助電圧Vcの電磁ブレーキ7の他端への給電を指示する第3の制御信号が入力されると、補助電圧Vcを電磁ブレーキ7の他端に出力する。
【0041】
電源回路9は、入力端がバッテリBのプラス電極、ダイオード6のカソード端子、電磁ブレーキ7の他端及び補助電源8の出力端に接続され、出力端がCPU1の電源端子VDD等に接続されている。この電源回路9は、バッテリBのプラス電極から入力される24Vのバッテリ電圧を降圧することにより上記動作電源を生成し、当該動作電源をCPU1の電源端子VDD等に出力する。この動作電源の電圧(電源電圧)は、例えば5V(ボルト)である。
【0042】
次に、本実施形態に係る制動装置Aの動作について、図2図4を参照して詳しく説明する。
【0043】
この制動装置Aは、図2に示すように時刻t1においてバッテリBからバッテリ電圧Vbの印加が開始されると作動を開始する。すなわち、電源回路9は、バッテリBからバッテリ電圧Vbが印加されると、動作電源のCPU1への出力を開始する。
【0044】
CPU1は、動作電源が電源回路9から給電されることによって作動可能状態となり、制御プログラムに基づく制御動作を開始する。すなわち、CPU1は、作動を開始すると、第1の制御信号を主駆動回路2に出力し、第2の制御信号を副駆動回路4に出力し、また第3の制御信号を補助電源8に出力する。
【0045】
CPU1は、作動開始直後において主スイッチ3及び副スイッチ5におけるON期間とOFF期間と比率つまり動作デューティ比を以下のように制御する。すなわち、CPU1は、主スイッチ3を第1のデューティ比D1でON/OFFさせる第1の制御信号を生成して主駆動回路2に出力するとともに、副スイッチ5を主スイッチ3とは逆位相でON/OFFさせる第2の制御信号を生成して副駆動回路4に出力する。また、CPU1は、作動開始直後において、補助電圧Vcの電磁ブレーキ7の他端への給電を遮断させる第3の制御信号を生成して補助電源8に出力する。
【0046】
主スイッチ3が第1のデューティ比D1でON/OFF動作するとともに副スイッチ5が主スイッチ3とは逆位相かつ第1のデューティ比D1でON/OFFすることによって、電磁ブレーキ7には、駆動電流として比較的大きな初期電流が通電される。
【0047】
ここで、第1のデューティ比D1は、例えば100%である。すなわち、CPU1は、時刻t1~t2の期間において主スイッチ3をON状態かつ副スイッチ5をOFF状態に設定することにより、バッテリBから電磁ブレーキ7にバッテリ電圧Vbに基づく駆動電流を連続通電させる。電磁ブレーキ7は、この駆動電流の連続通電によって制動状態から非制動状態に変化する。
【0048】
ここで、初期電流つまり第1のデューティ比D1は、電磁ブレーキ7を制動状態から非制動状態に変化させるために必要な最小の駆動電流に比較してかなり高い電流値である。CPU1は、時刻t2において第1のデューティ比D1を当該第1のデューティ比D1よりも低い第2のデューティ比D2に切り替える。
【0049】
第2のデューティ比D2は、図2に示すように初期電流よりも小さな保持電流を電磁ブレーキ7に給電させるものである。この保持電流は、上記最小の駆動電流よりも若干大きな電流値であり、電磁ブレーキ7を非制動状態に保持し得る電流値である。なお、このような第1のデューティ比D1から第2のデューティ比D2への切替は、電磁ブレーキ7の過度の発熱を防止するための処置である。
【0050】
すなわち、CPU1は、時刻t2~t3の期間において、主スイッチ3を第2のデューティ比D2でON/OFFさせる第1の制御信号を生成して主駆動回路2に出力するとともに、副スイッチ5を主スイッチ3とは逆位相かつ第2のデューティ比D2でON/OFFさせる第2の制御信号を生成して副駆動回路4に出力する。
【0051】
主スイッチ3は、第1の制御信号に基づいて主駆動回路2によって駆動されることにより、第2のデューティ比D2でON状態とOFF状態とを繰り返す。一方、副スイッチ5は、第2の制御信号に基づいて副駆動回路4によって駆動されることにより、主スイッチ3とは逆位相かつ第2のデューティ比D2でON状態とOFF状態とを繰り返す。
【0052】
図3(a)に示すように、主スイッチ3がON状態かつ副スイッチ5がOFF状態の期間では、バッテリBのバッテリ電圧Vbに基づいて駆動電流Idが電磁ブレーキ7に通電される。これに対して、主スイッチ3がOFF状態かつ副スイッチ5がON状態の期間では、図3(b)に示すように、電磁ブレーキ7が副スイッチ5及びダイオード6と閉ループ回路を形成するので、循環電流Ijが通電される。
【0053】
この循環電流Ijは、電磁ブレーキ7に発生する逆起電力に起因するものである。すなわち、この逆起電力は、駆動電流Idが通電遮断されることによって、電磁ブレーキ7の一端が正電位、電磁ブレーキ7の他端が負電位となるものである。また、この逆起電力は、電磁ブレーキ7のインダクタンスにより、補助電源8の蓄電用コンデンサ8bへ流れ、当該蓄電用コンデンサ8bを通したコイル内のエネルギーを循環させる動きになる。主スイッチ3の「OFF」と副スイッチ5の「OFF」との2つのOFF期間では、この現象で充電され、その繰り返し回数分、昇圧されバッテリ電圧より大きくなる。
【0054】
すなわち、時刻t2~t3の期間において、電磁ブレーキ7には、第2のデューティ比D2で駆動電流Idと循環電流Ijとが交互に通電される。電磁ブレーキ7は、これら駆動電流Id及び循環電流Ijの通電によって、バッテリ電圧の供給開始後における非制動状態を連続的に維持する。
【0055】
時刻t3~t4の期間において、時刻t2~t3の期間と同様に主スイッチ3を第2のデューティ比D2でON/OFFさせる第1の制御信号を生成して主駆動回路2に出力する。また、CPU1は、時刻t3~t4の期間において、副スイッチ5を主スイッチ3よりも長い繰返し周期でON/OFFさせる第2の制御信号を生成して副駆動回路4に出力する。
【0056】
図4は、時刻t3~t4の期間における主スイッチ3及び副スイッチ5のON/OFF動作の一例を示している。ここ図4において、主スイッチ3が所定の繰返し周期S1かつ50%の作動デューティ比でON/OFF動作している場合、副スイッチ5は、上記繰返し周期S1よりも長い繰返し周期S2でON/OFF動作する。
【0057】
時刻t2~t3の期間では、主スイッチ3及び副スイッチ5は逆相関係でON/OFF動作するので、時刻t2~t3内のある時刻に着目した場合、いずれか一方がON状態又はOFF状態である。これに対して、時刻t3~t4の期間では、図4に示すように主スイッチ3及び副スイッチ5の両方がOFF状態となる期間Tが定期的に発生する。
【0058】
この主スイッチ3及び副スイッチ5の両方がOFF状態となる期間Tでは、電磁ブレーキ7の逆起電圧が補助電源8の入力端に印加され、補助電源8の昇圧動作が発生する。すなわち、補助電圧Vcは、図2に示すように、時刻t1~t3の期間ではバッテリ電圧Vbに略等しいが、時刻t3~t4の期間においてバッテリ電圧Vbよりも大きいある電圧Vsまで昇圧し、当該電圧Vsに到達したら、主スイッチ3及び副スイッチ5の両方がOFF状態となるのを停止させる。
【0059】
ここで、時刻t3~t4の期間では電磁ブレーキ7の駆動電流が若干減少する。この減少分を補償するために、時刻t3~t4の期間では主スイッチ3の動作デューティ比を第2のデューティ比D2から第3のデューティ比D3まで直線的に順次増加させる。このような第2のデューティ比D2の増加に伴って駆動電流が増加補正されるので、電磁ブレーキ7を非制動状態を維持させることができる。
【0060】
例えば、補助電源8が逆起電圧Vsまで昇圧された時刻t6において、バッテリBが遮断されて制動装置Aにバッテリ電圧Vbが印加されなくなる。CPU1は、入力端子INに印加されるバッテリ電圧Vbに基づいてバッテリBの遮断を検知すると、補助電圧Vcの電磁ブレーキ7の他端への給電を開始させる第3の制御信号を生成して補助電源8に出力する。
【0061】
この結果、電磁ブレーキ7の他端には、図2に示すようにバッテリ電圧Vbに代わって補助電圧Vcが印加される。そして、補助電圧Vcの印加によって電磁ブレーキ7に駆動電流Idが通電され、電磁ブレーキ7は非制動状態を維持する。
【0062】
すなわち、図5(a)に示すように、主スイッチ3がON状態かつ副スイッチ5がOFF状態の期間では、補助電源8の補助電圧Vcに基づいて駆動電流Idが電磁ブレーキ7に通電される。これに対して、主スイッチ3がOFF状態かつ副スイッチ5がON状態の期間では、図5(b)に示すように、電磁ブレーキ7が副スイッチ5及びダイオード6と閉ループ回路を形成するので、循環電流Ijが通電される。
【0063】
しかしながら、補助電源8は蓄電用コンデンサ8cに予め蓄えられた電荷に基づいて補助電圧Vcを出力するので、補助電圧Vcは時間的に徐々に減少する。そして、補助電圧Vcは、図2に示すように、時刻t6において電磁ブレーキ7を非制動状態を維持させるために必要な最小電圧まで減少する。
【0064】
補助電圧Vcの減少に伴って駆動電流Idが減少するので、電磁ブレーキ7は、図2に示すように時刻t6において非制動状態から制動状態に移行する。すなわち、電磁ブレーキ7が非制動状態から制動状態に移行する時刻t6は、バッテリBからの給電が遮断された時刻t5から期間Thだけ遅延したタイミングである。
【0065】
このような駆動装置Aによれば、時刻t5においてバッテリBが遮断した場合にバッテリ電圧Vbよりも高い電圧である補助電圧Vcが電磁ブレーキ7に印加されるので、電磁ブレーキ7が非制動状態から制動状態に移行するタイミングを時刻t5から時刻t6まで遅延させることが可能である。したがって、本実施形態によれば、バッテリB(電源)の遮断時における制動作用の遅延時間をバッテリ電圧を用いて遅延させる従来よりも長くすることが可能である。
【0066】
また、本実施形態によれば、制動装置や当該制動装置を搭載した電動車両の技術分野において、カーボンフリー化の推進に寄与することが可能であり、以って国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することが可能となる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、主に主スイッチ3をON/OFF動作させることによって電磁ブレーキ7の駆動電流を制御したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、電磁ブレーキ7の駆動方式は、上記実施形態に限定されない。
【0068】
(2)上記実施形態では、電磁ブレーキ7の逆起電圧に基づいて蓄電用コンデンサ8b(蓄電素子)を蓄電することにより補助電圧Vcを予め生成する補助電源8を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バッテリ電圧Vbを入力とする昇圧回路を用いて補助電圧Vcを予め生成・保持する補助電源を採用してもよい。
【0069】
(3)上記実施形態では、蓄電用ダイオード8a、蓄電用コンデンサ8b(蓄電素子)及び出力用スイッチ8cからなる補助電源8を採用したが、本発明はこれに限定されない。他の回路構成の補助電源を採用してもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、補助電源8の蓄電素子として蓄電用コンデンサ8bを採用したが、本発明はこれに限定されない。コンデンサ以外の電子素子を補助電源8の蓄電素子として採用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
A…制動装置、B…バッテリ、1…CPU、2…主駆動回路、3…主スイッチ、4…副駆動回路、5…副スイッチ、6…ダイオード、7…電磁ブレーキ、8…補助電源、8a…蓄電用ダイオード、8b…蓄電用コンデンサ(蓄電素子)、8c…出力用スイッチ、9…電源回路
図1
図2
図3
図4
図5