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特開2024-58053振動監視装置、過給機、及び振動監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058053
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】振動監視装置、過給機、及び振動監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G01H17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165172
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 彬史
(72)【発明者】
【氏名】西村 英高
(72)【発明者】
【氏名】小川 真司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 領士
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB11
2G064BA02
2G064CC06
2G064DD08
2G064DD14
(57)【要約】
【課題】回転軸の自励振動、及び回転軸の非線形の強制振動のうちの少なくとも1つを、回転軸の回転信号から評価することができる。
【解決手段】振動監視装置は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、回転軸が有している固有振動数から算出される固有振動数フィルタ指令値を出力する出力装置と、回転信号と固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲に含まれる通過帯域の信号を回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号として回転信号から抽出する自励振動バンドパスフィルタと、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、
前記回転軸が有している固有振動数から算出される固有振動数フィルタ指令値を出力する出力装置と、
前記回転信号と前記固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、前記固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲に含まれる通過帯域の信号を前記回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号として前記回転信号から抽出する自励振動バンドパスフィルタと、を備える、
振動監視装置。
【請求項2】
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値を出力するフィルタ指令値出力装置と、
前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出する非線形強制振動バンドパスフィルタと、をさらに備える、
請求項1に記載の振動監視装置。
【請求項3】
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力するフィルタ指令値出力装置と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される遮断周波数よりも小さい通過帯域の信号を前記回転軸の振動の情報が取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出するローパスフィルタと、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出するバンドパスフィルタと、
前記ローパスフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動の情報、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記強制振動信号から取得された前記回転軸の強制振動の情報、及び前記自励振動バンドパスフィルタによって抽出された前記自励振動信号から前記回転軸の自励振動の情報を同時に表示する表示装置と、をさらに備える、
請求項1に記載の振動監視装置。
【請求項4】
前記フィルタ指令値出力装置は前記フィルタ指令値をさらに出力するように構成され、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される遮断周波数よりも小さい通過帯域の信号を前記回転軸の振動の情報が取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出するローパスフィルタと、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される中心周波数を含む通過帯域の信号を前記強制振動信号として前記回転信号から抽出するバンドパスフィルタと、
前記ローパスフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動の情報、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記強制振動信号から取得された前記回転軸の強制振動の情報、及び前記非線形強制振動バンドパスフィルタによって抽出された前記強制振動信号から前記回転軸の強制振動の情報を同時に表示する表示装置と、をさらに備える、
請求項2に記載の振動監視装置。
【請求項5】
前記通過範囲は、前記固有振動数の0.9倍以上、且つ前記固有振動数の1.1倍以下である、
請求項1から4の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項6】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値を出力するフィルタ指令値出力装置と、
前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出する非線形強制振動バンドパスフィルタと、を備える、
振動監視装置。
【請求項7】
請求項1から4、及び6の何れか一項に記載の振動監視装置と、
前記回転軸の一端部に設けられる圧縮機と、
前記回転軸の他端部に設けられるタービンと、を備える、
過給機。
【請求項8】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、
前記回転軸が有している固有振動数から算出される固有振動数フィルタ指令値を出力するステップと、
前記回転信号と前記固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、前記固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲に含まれる通過帯域の信号を前記回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号として前記回転信号から抽出するステップと、を備える、
振動監視方法。
【請求項9】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値を出力するステップと、
前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出するステップと、を備える、
振動監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動監視装置、過給機、及び振動監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フィルタの通過帯域を回転軸の回転数に応じて設定することにより、回転軸の回転に同期した回転信号から回転軸の振動の評価に適した通過帯域の信号を抽出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-135868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、回転軸の強制振動のうち回転軸自身がアンバランスな構成を有していることによって発生する強制振動や回転軸が静止部材と接触することによって発生する強制振動を、回転軸の回転信号から評価可能である。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、回転軸の自励振動(例えば、回転軸と回転軸に塗布されている油とが互いに共振することで発生するオイルホイップ)を、回転軸の回転信号から評価することが困難である。また、回転軸の強制振動のうち非線形の強制振動(例えば、回転軸を軸受けする軸受け部の組立不良によるガタに起因する振動)を、回転軸の回転信号から評価することが困難である。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、回転軸の自励振動、又は回転軸の非線形の強制振動を、回転軸の回転信号から評価することができる振動監視装置、及び振動監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視装置は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、前記回転軸が有している固有振動数から算出される固有振動数フィルタ指令値を出力する出力装置と、前記回転信号と前記固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、前記固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲に含まれる通過帯域の信号を前記回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号として前記回転信号から抽出する自励振動バンドパスフィルタと、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視装置は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値を出力するフィルタ指令値出力装置と、前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出する非線形強制振動バンドパスフィルタと、を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視方法は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、前記回転軸が有している固有振動数から算出される固有振動数フィルタ指令値を出力するステップと、前記回転信号と前記固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、前記固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲に含まれる通過帯域の信号を前記回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号として前記回転信号から抽出するステップと、を備える。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視方法は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値を出力するステップと、前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の振動監視装置、及び振動監視方法によれば、回転軸の自励振動、又は回転軸の非線形の強制振動を、回転軸の回転信号から評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る振動監視装置を適用した過給機の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係るマーカ部の構成を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る回転センサが出力する回転信号の波形図である。
図4】第1実施形態に係る出力装置の概略的な機能ブロック図である。
図5図3の回転信号を分周した回転パルス信号の波形図である。
図6】第1実施形態に係るローパスフィルタの特性表を示す図である。
図7】バンドパスフィルタの振幅-周波数特性を示す図である。
図8】第1実施形態に係る表示装置に表示される表示内容の一例を示す図である。
図9】第1実施形態に係る回転軸のキャンベル線図である。
図10】第2実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図11】第2実施形態に係る出力装置の概略的な機能ブロック図である。
図12】非線形強制振動バンドパスフィルタの振幅-周波数特性を示す図である。
図13】第2実施形態に係る表示装置に表示される表示内容の一例を示す図である。
図14】第3実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図15】一実施形態に係る振動監視方法のフローチャートである。
図16】別の一実施形態に係る振動監視方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態による振動監視装置、過給機、及び振動監視方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0013】
<第1実施形態>
(過給機の構成)
図1は、第1実施形態に係る振動監視装置1を適用した過給機100の構成を概略的に示す図である。過給機100は、特に限定されないが、例えば、船舶に搭載され、エンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機である。本開示では、この排気ターボ過給機を例にして説明する。
【0014】
図1に示すように、過給機100は、回転軸102と、圧縮機104と、タービン106と、第1実施形態に係る振動監視装置1と、を備える。回転軸102の軸線O方向における一端部(図1において左端部)には、圧縮機104が設けられている。回転軸102の軸線O方向における他端部(図1において右端部)には、タービン106が設けられている。回転軸102は、圧縮機104とタービン106とを連結している。
【0015】
圧縮機104は、吸気を圧縮して不図示のエンジンに供給する。タービン106は、エンジンから排出された排ガスがタービン106を通過する際に、排ガスのエネルギをタービン106の回転エネルギに変換する。そして、回転軸102は、タービン106の回転とともに軸線Oを中心として回転する。圧縮機104は、回転軸102が回転することで駆動する。
【0016】
図1に例示する形態では、回転軸102は、後述する回転信号Aがパルス波形を有するように構成されるマーカ部108を含む。マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104とタービン106との間に設けられている。マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104とタービン106との間のうちタービン106側に設けられている。幾つかの実施形態では、マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104より回転軸102の一端側に設けられる。
【0017】
マーカ部108の構成例について説明する。図2は、第1実施形態に係るマーカ部108の構成を概略的に示す図である。図2に例示する形態では、回転軸102は、内側回転体110と、外側回転体112と、を含む。回転軸102の内側回転体110は、タービン106の回転とともに軸線Oを中心として回転する。外側回転体112は、内側回転体110が嵌め込まれる孔114が形成されている。言い換えると、外側回転体112は、内側回転体110の外周面を覆うように、内側回転体110に取り付けられている。外側回転体112は、孔114に嵌め込まれている内側回転体110が回転するとともに回転する。外側回転体112は、外周面116に形成される溝118を含む。溝118が非形成であるとき、外側回転体112の外周面116は円形状を有している。溝118は、この円形状の外周面116の一部117から軸線Oに向かって切り欠くことで形成される。図2に例示する形態では、外側回転体112は2つの溝118を含んでおり、外周面116は長円形状を有している。一方の溝118は、軸線Oを挟んで他方の溝118とは反対側に位置している。外側回転体112は、軸線Oを中心として左右対称となるように、2つの溝118が形成されている。このような外側回転体112がマーカ部108に相当する。
【0018】
尚、マーカ部108は、回転信号Aがパルス波形を有するように構成されるのであれば、図2に例示する形態に限定されない。例えば、マーカ部108(外側回転体112)は、溝118に代わり、外周面116の一部117より径方向外側に向かって突出する突出部を含んでもよい。
【0019】
(第1実施形態に係る振動監視装置の構成)
図1に示すように、振動監視装置1は、回転センサ2と、出力装置4と、自励振動バンドパスフィルタ6と、を含む。自励振動バンドパスフィルタ6は、回転センサ2と電気的に接続されており、回転センサ2の出力値(回転信号A)を取得できるようになっている。自励振動バンドパスフィルタ6は、出力装置4と電気的に接続されており、出力装置4の出力値(固有振動数フィルタ指令値B1)を取得できるようになっている。
【0020】
回転センサ2は、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。回転センサ2は、回転軸102の外周面116に渦電流を発生させることで回転軸102の外周面116までの距離dを検出する渦電流式変位センサである。より具体的には、この回転センサ2は、高周波磁束を発生するコイルにより構成され、該コイルから発生した高周波磁束によって、ターゲット(測定対象)である回転軸102の外周面116に発生する渦電流の変化をコイルのインピーダンスの変化として検出する。即ち、回転センサ2は、回転軸102の回転に伴う距離dの変化をコイルのインピーダンスの変化として検出するもので、回転軸102の外周面116が最も回転センサ2に接近する際に最大の出力が得られる構成となっている。
【0021】
尚、回転センサ2は、渦電流式変位センサに限定されない。幾つかの実施形態では、回転センサ2は、レーザー光を照射するレーザーヘッドを備え、該レーザーヘッドから回転軸102の外周面116にレーザー光を照射して、このレーザー光の反射光によりレーザーヘッドから回転軸102の外周面116までの距離を検出するレーザー式変位センサである。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る回転センサ2が出力する回転信号Aの波形図である。図3に示すように、回転信号Aは、上述した回転軸102のマーカ部108(外側回転体112)が溝118を含んでいるので、回転軸102の回転に伴って形成されるパルス波形を有する。即ち、回転軸102の回転中において、回転センサ2と溝118とが互いに対向する際に変位が大きく変化する。一方で、回転軸102の回転中において、回転センサ2と溝118とが互いに対向していない際には、変位の変化は小さい。第1実施形態では、マーカ部108は2つの溝118を有しているので、回転軸102の1回転中に2つのパルス(波形の変位が大きく変化する部分120)が出現している。
【0023】
出力装置4は、回転軸102が有している固有振動数Faから算出される固有振動数フィルタ指令値B1を出力する。回転軸102の固有振動数Faの計測方法は、特に限定されないが、例えば、ロータダイナミクス解析(ROT-CAE)で軸系の曲げ振動分析を行うことで回転軸102の危険速度(固有振動数Fa)を評価してもよいし、回転軸102に機械的に強制振動を与えて固有振動数Fa(共振周波数)を計測してもよい。出力装置4は、回転軸102の固有振動数Faを予め設定されている変換方法で変換して、固有振動数フィルタ指令値B1を算出する。この固有振動数フィルタ指令値B1は、電圧値又は電流値である。
【0024】
自励振動バンドパスフィルタ6は、回転信号Aと固有振動数フィルタ指令値B1とが入力されることで、自励振動信号Cを出力(抽出)する。この自励振動信号Cは、回転軸102の自励振動の情報を取得可能な信号である。自励振動の情報は、例えば、自励振動数、自励振動の大きさ、または自励振動の速度などである。自励振動バンドパスフィルタ6は、固有振動数フィルタ指令値B1に応じて第1の通過範囲R1が設定されるように構成されている。第1実施形態では、第1の通過範囲R1は、回転軸102の固有振動数Faの0.9倍以上、且つ固有振動数の1.1倍以下である。例えば、回転軸102の固有振動数Faが25Hzであり、第1の通過範囲R1は22.5Hz以上27.5Hz以下である。
【0025】
自励振動バンドパスフィルタ6は、回転センサ2が出力した回転信号Aのうち、第1の通過範囲R1に含まれる通過帯域の信号を通過させ、第1の通過範囲R1に含まれない非通過帯域の信号を遮断する。そして、自励振動バンドパスフィルタ6は、第1の通過範囲R1に含まれる回転信号Aを自励振動信号Cとして回転信号Aから抽出する。
【0026】
ところで、第1実施形態では、図1に例示するように、振動監視装置1は、フィルタ指令値出力装置8と、ローパスフィルタ10と、バンドパスフィルタ12と、表示装置14と、をさらに含んでいる。フィルタ指令値出力装置8、ローパスフィルタ10及びバンドパスフィルタ12のそれぞれは、回転センサ2と電気的に接続されており、回転センサ2の出力値(回転信号A)を取得できるようになっている。ローパスフィルタ10は、フィルタ指令値出力装置8と電気的に接続されており、フィルタ指令値出力装置8の出力値(フィルタ指令値B2)を取得できるようになっている。バンドパスフィルタ12は、ローパスフィルタ10を介して、フィルタ指令値出力装置8と電気的に接続されており、フィルタ指令値出力装置8の出力値(フィルタ指令値B2)を取得できるようになっている。尚、幾つかの実施形態では、バンドパスフィルタ12は、フィルタ指令値出力装置8からローパスフィルタ10を介さずにフィルタ指令値B2を取得してもよい。
【0027】
フィルタ指令値出力装置8は、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Anに対応するフィルタ指令値B2を出力する。このような、フィルタ指令値出力装置8は、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。フィルタ指令値出力装置8は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、フィルタ指令値出力装置8が備える各機能部を実現する。図4を参照して、第1実施形態に係るフィルタ指令値出力装置8の各機能部について説明する。
【0028】
図4は、第1実施形態に係るフィルタ指令値出力装置8の概略的な機能ブロック図である。図4に示すように、フィルタ指令値出力装置8は、分周部122と、カウンタ部124と、表示部126と、フィルタ指令値出力部128と、を含む。
【0029】
図5は、図3の回転信号Aを分周した回転パルス信号Apの波形図である。図5に示すように、分周部122は、回転センサ2が出力した回転信号Aを分周して、回転軸102の1回転中に1つのパルス(波形の変位が大きく変化する部分130)を含む回転パルス信号Apに変換する。
【0030】
カウンタ部124は、単位時間当たりにおける回転パルス信号Apに含まれるパルスの回数をカウントし、回転軸102の回転数Anを算出する。表示部126は、カウンタ部124が算出した回転軸102の回転数Anを表示装置14に表示させる。尚、表示部126は、表示装置14以外の装置に回転軸102の回転数Anを表示させてもよい。
【0031】
フィルタ指令値出力部128は、カウンタ部124が算出した回転軸102の回転数Anに対応するフィルタ指令値B2を出力する。第1実施形態では、フィルタ指令値B2は、回転軸102の回転数Anを予め設定されている変換方法で変換した電圧値である。この変換方法は、後述するローパスフィルタ10の特性に基づいて設定される。第1実施形態では、回転軸102の回転数Anが大きくなると、フィルタ指令値B2(電圧値)も大きくなる。幾つかの実施形態では、回転軸102の回転数Anとフィルタ指令値B2とは互いに比例する。幾つかの実施形態では、フィルタ指令値B2は、回転軸102の回転数Anを予め設定されている変換方法で変換した電流値である。
【0032】
図1に示すように、ローパスフィルタ10は、回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、振動信号Eを出力(抽出)する。この振動信号Eは、回転軸102の振動の情報を取得可能な信号である。振動の情報は、例えば、振動数、振動の大きさ、または振動の速度などである。
【0033】
ローパスフィルタ10は、フィルタ指令値B2(電圧値)に応じて遮断周波数Pが設定されるように構成されている。ローパスフィルタ10は、回転センサ2が出力した回転信号Aのうち、遮断周波数Pよりも小さい回転信号Aを通過させ、遮断周波数P以上の回転信号Aを遮断する。ローパスフィルタ10は、この遮断周波数Pよりも小さい回転信号Aを振動信号Eとして回転信号Aから抽出する。
【0034】
ここで、遮断周波数Pの設定について説明する。図6は、第1実施形態に係るローパスフィルタ10の特性表を示す図である。図6において、横軸は対数目盛で示された周波数であり、縦軸はデシベル値を示している。図6において、電圧値(フィルタ指令値B2)が0.01Vである場合のローパスフィルタ10の特性をV1、電圧値が0.1Vである場合のローパスフィルタ10の特性をV2、電圧値が1Vである場合のローパスフィルタ10の特性をV3、電圧値が10Vである場合のローパスフィルタ10の特性をV4で示している。
【0035】
デシベル値は信号強度に相当し、デシベル値が0未満である場合、ローパスフィルタ10が抽出する振動信号Eは減衰している。図6に示すように、各電圧値(V1~V4)において、周波数が大きくなるほどデシベル値が減少しており、振動信号Eの減衰率が大きくなっている。より具体的には、ローパスフィルタ10に入力される電圧値が0.1Vである場合(図6におけるV2)、ローパスフィルタ10に入力される回転信号Aのうち、1kHz以上の回転信号Aを遮断することで振動信号Eを抽出する。第1実施形態では、ローパスフィルタ10は、デシベル値が0となるように遮断周波数Pを設定する。例えば、ローパスフィルタ10は、電圧値が0.1Vである場合、遮断周波数を1kHzに設定する。
【0036】
ローパスフィルタ10によって抽出された振動信号Eは、遮断周波数Pよりも小さい回転軸102の回転信号Aであり、この振動信号Eの波形が回転軸102の振動によって発生する正味の実振動信号と類似している。
【0037】
図1に示すように、バンドパスフィルタ12は、回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、強制振動信号(以下、「第1の強制振動信号D1」とする)を出力(抽出)する。この第1の強制振動信号D1は、回転軸102の強制振動の情報を取得可能な信号である。
【0038】
バンドパスフィルタ12は、フィルタ指令値B2に応じて中心周波数Fbが設定されるように構成されている。バンドパスフィルタ12は、回転センサ2が出力した回転信号Aのうち、中心周波数Fbを含む第2の通過範囲R2に含まれる通過帯域の信号を通過させ、第2の通過範囲R2に含まれない非通過帯域の信号を遮断する。そして、バンドパスフィルタ12は、第2の通過範囲R2に含まれる回転信号Aを第1の強制振動信号D1として回転信号Aから抽出する。
【0039】
図7は、バンドパスフィルタ12の振幅-周波数特性を示す図である。図7において、横軸は対数目盛で示された周波数であり、縦軸はデシベル値を示している。図7において、電圧値(フィルタ指令値B2)が0.1Vである場合のバンドパスフィルタ12の特性をV5、電圧値が1Vである場合のバンドパスフィルタ12の特性をV6、電圧値が10Vである場合のバンドパスフィルタ12の特性をV7で示している。
【0040】
図7において、デシベル値は信号強度に相当し、デシベル値が0未満である場合、バンドパスフィルタ12が抽出する第2の強制振動信号D2は減衰している。図7に示すように、各電圧値(V5~V7)において、バンドパスフィルタ12の通過帯域の中心周波数Fbから周波数が離れるにつれてデシベル値が減少しており、第1の強制振動信号D1の減衰率が大きくなっている。この中心周波数Fbは、フィルタ指令値出力装置8によって出力されたフィルタ指令値B2(回転数Anに対応する値)に応じて設定される。具体的には、この中心周波数Fbは、フィルタ指令値出力装置8のカウンタ部124(図4参照)によってカウントされた回転軸102の回転数Anに一致又はほぼ一致するように設定される。例えばバンドパスフィルタ12は、フィルタ指令値B2に応じて、0.8C≦Fb≦1.2Cを満たすように第1の強制振動信号D1を減衰させてもよい。また、回転軸102の回転数Anとフィルタ指令値B2とが比例する場合には、フィルタ指令値B2と中心周波数Fbとが比例するように中心周波数Fbが設定されてもよい。また、バンドパスフィルタ12の通過帯域の上限及び下限は、フィルタ指令値B2に応じて中心周波数Fbの両側に設定される。
【0041】
バンドパスフィルタ12によって抽出された第1の強制振動信号D1は、バンドパスフィルタ12の中心周波数Fbが回転軸102の回転数Anと同一又は略同一に設定されていることにより、回転軸102の回転に同期した振動(回転数Anの1倍又は略1倍の振動数を有する振動)を評価可能な信号となる。
【0042】
表示装置14は、自励振動信号Cから取得された回転軸102の自励振動の情報と、振動信号Eから取得された回転軸102の全振動(自励振動や強制振動なの全振動が包含されている)の情報と、第1の強制振動信号D1から取得された回転軸102の強制振動の情報と、を同時に表示する。第1実施形態では、表示装置14は、自励振動バンドパスフィルタ6、ローパスフィルタ10、及びバンドパスフィルタ12のそれぞれと電気的に接続されており、自励振動信号C、振動信号E、及び第1の強制振動信号D1のそれぞれを取得できるようになっている。
【0043】
図8は、表示装置14に表示される表示内容の一例を示す図である。図8に示す例では、表示装置14は、自励振動バンドパスフィルタ6によって抽出された自励振動信号Cから取得された回転軸102の自励振動の情報として、自励振動信号Cの振幅Caを表示(実線)している。表示装置14は、ローパスフィルタ10によって抽出された振動信号Eから取得された回転軸102の全振動の情報として、振動信号Eの振幅Ea(オーバオール振幅)を表示(点線)している。表示装置14は、バンドパスフィルタ12によって抽出された第1の強制振動信号D1から取得された回転軸102の強制振動の情報として、第1の強制振動信号D1の振幅D1a(回転1倍振幅:回転数Anの1倍の振動数を有する振動の振幅)を表示(一点鎖線)している。
【0044】
第1実施形態では、図8に例示するように、表示装置14は、回転軸102の回転数Anをさらに表示している。尚、表示装置14の表示内容は、図8に例示する形態に限定されない。不図示であるが、幾つかの実施形態では、振動監視装置1は、過給機100に接続されたエンジンの振動を検出するためのMEMSセンサ(MEMS: Micro Electro Mechanical Systems)を更に含む。そして、表示装置14は、MEMSセンサの出力から取得されたエンジンの振動情報として、エンジンの振動の振幅を表示する。
【0045】
(作用・効果)
第1実施形態に係る振動監視装置1の作用・効果について説明する。本発明者らによれば、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の固有振動数Faに基づいて設定された第1の通過範囲R1を通過する回転信号Aを抽出すると、この抽出された回転信号Aが回転軸102の自励振動の情報を取得可能な自励振動信号Cに相当することを見出した。
【0046】
図9は、第1実施形態に係る回転軸102のキャンベル線図であって、縦軸を周波数、横軸を回転速度、斜軸を回転次数としている。そして、円の大きさが振動振幅の大きさを表している。図9には、1次の回転次数である第1斜軸200と1次の半分の回転次数である第2斜軸202とが図示されている。第1斜軸200をみると、回転軸102が固有振動数Faに対応する回転数An1(例えば、固有振動数Faが25Hzである場合、回転数An1は1500rpm)付近で回転する際に、回転軸102の強制振動の振幅は大きくなっている(円201が大きくなっている)。そして、回転数Anをさらに上げると、回転軸102の強制振動の振動は小さくなる。しかし、第2斜軸202をみると、回転軸102が回転数An1の2倍程度の大きさで回転する際に、回転軸102の振動の振幅が大きくなっている(円203が大きくなっている)。この振動は、主に回転軸102と回転軸102に塗布されている油とが互いに共振することで発生するオイルホイップ(自励振動)である。
【0047】
第1実施形態によれば、自励振動バンドパスフィルタ6は、回転軸102の固有振動数Faに基づいて設定された第1の通過範囲R1を通過する回転信号Aを自励振動信号Cとして抽出する。このため、回転軸102の自励振動を回転軸102の回転信号Aから評価することができる。
【0048】
第1実施形態によれば、第1の通過範囲R1は、回転軸102の固有振動数Faの0.9倍以上、且つ固有振動数の1.1倍以下であるので、回転軸102の自励振動の情報を含まないノイズの取得を抑制し、回転軸102の自励振動の情報の取得精度を高めることができる。
【0049】
上述したように、振動信号Eは、波形が回転軸102の振動によって発生する正味の実振動信号と類似している。このため、回転軸102の回転数Anに応じて遮断周波数Pを設定することで、回転軸102の全振動を高精度に評価することができる。第1実施形態によれば、ローパスフィルタ10は、回転軸102の回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、振動信号Eを抽出する。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の全振動を評価することができる。
【0050】
上述したように、第1の強制振動信号D1は、バンドパスフィルタ12の通過帯域の中心周波数Fbを回転軸102の回転数Anと同一又は略同一に設定して、回転軸102の回転信号Aから抽出した信号である。そして、この第1の強制振動信号D1は、回転軸102の回転に同期した振動(回転数Anの1倍又は略1倍の振動数を有する振動)を評価可能な信号である。第1実施形態によれば、バンドパスフィルタ12は、回転軸102の回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、第1の強制振動信号D1を抽出する。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の強制振動を評価することができる。特に、過給機100の回転軸102のアンバランス(例えばスケール付着によるアンバランス)、回転軸102の曲がり、又は回転軸102と車室との接触等を評価及び判定することが可能となる。そして、過給機100の最適なメンテナンスの提案や故障を未然に防止すること等が可能となる。
【0051】
第1実施形態によれば、表示装置14は、自励振動信号Cの振幅Ca、振動信号Eの振幅Ea及び第1の強制振動信号D1の振幅D1aを同時に表示している。このため、回転軸102の自励振動と強制振動とを混同せずに評価することができる。また、回転軸102の強制振動のうち回転軸102の回転に同期した強制振動を評価することができる。
【0052】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第2実施形態では、振動監視装置1が非線形強制振動バンドパスフィルタ16をさらに含み、フィルタ指令値出力装置8が除算フィルタ指令値B3を出力するように構成されている。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
(構成)
図10は、第2実施形態に係る振動監視装置1の構成を概略的に示す図である。図10に例示するように、振動監視装置1は、非線形強制振動バンドパスフィルタ16をさらに含む。そして、フィルタ指令値出力装置8は、除算フィルタ指令値B3を出力するように構成されている。非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、回転センサ2及びフィルタ指令値出力装置8のそれぞれと電気的に接続されており、回転センサ2の出力値(回転信号A)及びフィルタ指令値出力装置8の出力値(除算フィルタ指令値B3)を取得できるようになっている。
【0054】
除算フィルタ指令値B3について説明する。図11は、第2実施形態に係るフィルタ指令値出力装置8の概略的な機能ブロック図である。第2実施形態では、図11に例示するように、フィルタ指令値出力装置8は、除算フィルタ指令値出力部129をさらに含む。除算フィルタ指令値出力部129は、フィルタ指令値出力部128から出力されたフィルタ指令値B2をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算し、除算フィルタ指令値B3を出力する。幾つかの実施形態では、nは2又は3である。nを2又は3にすることで、1/2次、1/3次の分周調波振動を評価することが可能となる。具体的には、回転軸102又は軸受を締結しているボルトの緩みや、片当りによる摩耗などに起因する振動を評価することができる。
【0055】
非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、回転信号Aと除算フィルタ指令値B3とが入力されることで、強制振動信号(以下、「第2の強制振動信号D2」とする)を出力(抽出)する。この第2の強制振動信号D2は、第1の強制振動信号D1と同じく、回転軸102の強制振動の情報を取得可能な信号である。
【0056】
非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、除算フィルタ指令値B3に応じて非線形中心周波数Fcが設定されるように構成されている。非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、回転センサ2が出力した回転信号Aのうち、非線形中心周波数Fcを含む第3の通過範囲R3に含まれる通過帯域の信号を通過させ、第3の通過範囲R3に含まれない非通過帯域の信号を遮断する。そして、非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、第3の通過範囲R3に含まれる回転信号Aを第2の強制振動信号D2として回転信号Aから抽出する。
【0057】
図12は、非線形強制振動バンドパスフィルタ16の振幅-周波数特性を示す図である。図12において、横軸は対数目盛で示された周波数であり、縦軸はデシベル値を示している。図12において、電圧値(除算フィルタ指令値B3)が0.1Vである場合の非線形強制振動バンドパスフィルタ16の特性をV8、電圧値が1Vである場合の非線形強制振動バンドパスフィルタ16の特性をV9、電圧値が10Vである場合の非線形強制振動バンドパスフィルタ16の特性をV10で示している。
【0058】
図12において、デシベル値は信号強度に相当し、デシベル値が0未満である場合、非線形強制振動バンドパスフィルタ16が抽出する第2の強制振動信号D2は減衰している。図12に示すように、各電圧値(V8~V10)において、非線形強制振動バンドパスフィルタ16の通過帯域の非線形中心周波数Fcから周波数が離れるにつれてデシベル値が減少しており、第2の強制振動信号D2の減衰率が大きくなっている。この非線形中心周波数Fcは、フィルタ指令値出力装置8によって出力された除算フィルタ指令値B3(回転数Anに対応する値)に応じて設定される。具体的には、この非線形中心周波数Fcは、フィルタ指令値出力装置8のカウンタ部124(図11参照)によってカウントされた回転軸102の回転数Anに一致又はほぼ一致するように設定される。例えば非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、除算フィルタ指令値B3に応じて、0.8C/n≦Fc≦1.2C/nを満たすように第2の強制振動信号D2を減衰させてもよい。また、回転軸102の回転数Anと除算フィルタ指令値B3とが比例する場合には、除算フィルタ指令値B3と非線形中心周波数Fcとが比例するように非線形中心周波数Fcが設定されてもよい。また、非線形強制振動バンドパスフィルタ16の通過帯域の上限及び下限は、除算フィルタ指令値B3に応じて非線形中心周波数Fcの両側に設定される。
【0059】
図13は、表示装置14に表示される表示内容の一例を示す図である。図13に示す例では、表示装置14は、図8に例示した表示内容に加え、非線形強制振動バンドパスフィルタ16によって抽出された第2の強制振動信号D2から取得された回転軸102の強制振動の情報として、第2の強制振動信号D2の振幅D2aを表示(実線)している。
【0060】
(作用・効果)
第2実施形態に係る振動監視装置1の作用・効果について説明する。本発明者らによれば、除算フィルタ指令値B3に応じて非線形中心周波数Fcを設定し、回転軸102の回転信号Aから非線形中心周波数Fcを含む第3の通過範囲R3を通過する回転信号Aを抽出すると、この抽出された回転信号Aから回転軸102の非線形の強制振動の情報を取得可能であることを見出した。具体的には、回転軸102を軸受けする軸受け部の組立不良によるガタや、回転軸102のカップリング部の緩み等に起因する分数調波共振の情報を取得可能である。
【0061】
第2実施形態によれば、非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、除算フィルタ指令値B3に応じて設定された非線形中心周波数Fcを含む第3の通過範囲R3を通過する回転信号Aを第2の強制振動信号D2として抽出する。このため、回転軸102の非線形の強制振動も回転軸102の回転信号Aから評価することができる。
【0062】
第2実施形態によれば、表示装置14は、自励振動信号Cの振幅Ca、振動信号Eの振幅Ea、第1の強制振動信号D1の振幅D1a及び第2の強制振動信号D2の振幅D2aを同時に表示している。このため、回転軸102の強制振動の全体(オーバーオール振幅)、回転軸102の回転に同期した強制振動、及び回転軸102の非線形の強制振動を互いに混同せずに評価することができる。
【0063】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第3実施形態では、第2実施形態から出力装置4と自励振動バンドパスフィルタ6とを取り除いた構成となっている。つまり、回転軸102の自励振動を評価することができないが、回転軸102の非線形の強制振動を評価することができる構成となっている。
【0064】
(構成)
図14は、第3実施形態に係る振動監視装置1の構成を概略的に示す図である。図14に例示するように、振動監視装置1は、回転センサ2と、フィルタ指令値出力装置8と、非線形強制振動バンドパスフィルタ16と、を含む。そして、第3実施形態では、この振動監視装置1は、ローパスフィルタ10と、バンドパスフィルタ12と、表示装置14と、をさらに含んでいる。第3実施形態に係る回転センサ2、フィルタ指令値出力装置8、非線形強制振動バンドパスフィルタ16、ローパスフィルタ10、バンドパスフィルタ12、表示装置14のそれぞれは、第2実施形態で説明した構成と同様であり、第2実施形態と同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
(作用・効果)
第3実施形態によれば、非線形強制振動バンドパスフィルタ16は、除算フィルタ指令値B3に応じて設定された非線形中心周波数Fcを含む第3の通過範囲R3を通過する回転信号Aを第2の強制振動信号D2として抽出する。このため、回転軸102の非線形の強制振動を回転軸102の回転信号Aから評価することができる。また、第3実施形態によれば、振動監視装置1がローパスフィルタ10、バンドパスフィルタ12、及び表示装置14をさらに含むことで、回転軸102の強制振動の全体(オーバーオール振幅)、回転軸102の回転に同期した強制振動、及び回転軸102の非線形の強制振動を互いに混同せずに評価することができる。
【0066】
<振動監視方法>
図15は、一実施形態に係る振動監視方法のフローチャートである。図15に例示するように、振動監視方法は、回転信号出力ステップS1と、固有振動数フィルタ指令値出力ステップS2と、自励振動信号抽出ステップS3と、を含む。
【0067】
回転信号出力ステップS1では、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。固有振動数フィルタ指令値出力ステップS2では、回転軸102が有している固有振動数Faから算出される固有振動数フィルタ指令値B1を出力する。自励振動信号抽出ステップS3では、回転信号Aと固有振動数フィルタ指令値B1とが入力されることで、固有振動数フィルタ指令値B1に応じて設定される第1の通過範囲R1に含まれる通過帯域の信号を回転軸102の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号Cとして回転信号Aから抽出する。このような方法によれば、回転軸102の自励振動を回転軸102の回転信号Aから評価することができる。
【0068】
図15に例示する形態では、振動監視方法は、フィルタ指令値出力ステップS4と、振動信号抽出ステップS5と、第1の強制振動信号抽出ステップS6と、表示ステップS7と、をさらに含んでいる。
【0069】
フィルタ指令値出力ステップS4では、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Anに対応するフィルタ指令値B2を出力する。振動信号抽出ステップS5では、回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、フィルタ指令値B2に応じて設定される遮断周波数Pよりも小さい通過帯域の信号を振動信号Eとして回転信号Aから抽出する。第1の強制振動信号抽出ステップS6では、回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、フィルタ指令値B2に応じて設定される中心周波数Fbを含む通過帯域の信号を第1の強制振動信号D1として回転信号Aから抽出する。表示ステップS7では、振動信号Eから取得された回転軸102の全振動の情報、第1の強制振動信号D1から取得された回転軸102の強制振動の情報、自励振動信号Cから取得された回転軸102の自励振動の情報を同時に表示する。このような方法によれば、回転軸102の自励振動と強制振動とを混同せずに評価することができる。また、回転軸102の強制振動のうち回転軸102の回転に同期した強制振動を評価することができる。
【0070】
図15に例示する形態では、振動監視方法は、判定ステップS8をさらに含んでいる。判定ステップS8では、表示ステップS7が実行された後に、「第1の強制振動信号D1の振幅D1a」を「振動信号Eの振幅Ea」で除算する第1除算値、「自励振動信号Cの振幅Ca」を「振動信号Eの振幅Ea」で除算する第2除算値を算出する。そして、第1除算値が所定値(例えば、0.8)よりも大きい、又は、第2除算値が所定値(例えば、0.5)以下である場合には、回転軸102の振動は強制振動が支配的であると判定する。幾つかの実施形態では、第1除算値が所定値(例えば、0.8)よりも大きい、且つ第2除算値が所定値(例えば、0.5)より大きい場合には、回転軸102の振動は強制振動が支配的であると判定する。幾つかの実施形態では、第1除算値が所定値(例えば、0.8)以下、且つ第2除算値が所定値(例えば、0.5)より大きい場合には、回転軸102の振動は自励振動が支配的であると判定する。
【0071】
図16は、別の一実施形態に係る振動監視方法のフローチャートである。図16に例示するように、振動監視方法は、回転信号出力ステップS11と、除算フィルタ指令値出力ステップS12と、第2の強制振動信号抽出ステップS13と、を含む。
【0072】
回転信号出力ステップS11では、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。除算フィルタ指令値出力ステップS12では、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Anに対応するフィルタ指令値B2をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値B3を出力する。第2の強制振動信号抽出ステップS13では、回転信号Aと除算フィルタ指令値B3とが入力されることで、除算フィルタ指令値B3に応じて設定される非線形中心周波数Fcを含む通過帯域の信号を第2の強制振動信号D2として回転信号Aから抽出する。このような方法によれば、回転軸102の非線形の強制振動を回転軸102の回転信号Aから評価することができる。
【0073】
図16に例示する形態では、振動監視方法は、フィルタ指令値出力ステップS14と、振動信号抽出ステップS15、第1の強制振動信号抽出ステップS16と、表示ステップS17と、をさらに含んでいる。
【0074】
フィルタ指令値出力ステップS14では、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Anに対応するフィルタ指令値B2を出力する。振動信号抽出ステップS15では、回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、フィルタ指令値B2に応じて設定される遮断周波数Pよりも小さい通過帯域の信号を振動信号Eとして回転信号Aから抽出する。第1の強制振動信号抽出ステップS16では、回転信号Aとフィルタ指令値B2とが入力されることで、フィルタ指令値B2に応じて設定される中心周波数Fbを含む通過帯域の信号を第1の強制振動信号D1として回転信号Aから抽出する。表示ステップS17では、振動信号Eから取得された回転軸102の全振動の情報、第1の強制振動信号D1から取得された回転軸102の強制振動の情報、第2の強制振動信号D2から取得された回転軸102の強制振動の情報を同時に表示する。このような方法によれば、回転軸102の振動の全体(オーバーオール振幅)、回転軸102の回転に同期した強制振動、及び回転軸102の非線形の強制振動を互いに混同せずに評価することができる。
【0075】
図16に例示する形態では、振動監視方法は、判定ステップS18をさらに含んでいる。判定ステップS18では、表示ステップS17が実行された後に、「第1の強制振動信号D1の振幅D1a」を「振動信号Eの振幅Ea」で除算する第3除算値、「第2の強制振動信号D2の振幅D2a」を「振動信号Eの振幅Ea」で除算する第4除算値を算出する。そして、第3除算値が所定値(例えば、0.8)以下であり、且つ第4除算値が所定値(例えば、0.4)よりも大きい場合には、回転軸102の振動は非線形の強制振動が支配的であると判定する。幾つかの実施形態では、第3除算値が所定値(例えば、0.8)より大きい、又は第4除算値が所定値(例えば、0.4)以下である場合には、回転軸102の振動は非線形の強制振動以外が支配的であると判定する。
【0076】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0077】
[1]本開示に係る振動監視装置(1)は、
回転軸(102)の回転に同期した回転信号(A)を出力する回転センサ(2)と、
前記回転軸が有している固有振動数(Fa)から算出される固有振動数フィルタ指令値(B1)を出力する出力装置(4)と、
前記回転信号と前記固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、前記固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲(R1)に含まれる通過帯域の信号を前記回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号(C)として前記回転信号から抽出する自励振動バンドパスフィルタ(6)と、を備える。
【0078】
本発明者らによれば、回転軸の回転信号から回転軸の固有振動数に基づいて設定された通過帯域を通過する回転信号を抽出すると、この抽出された回転信号が回転軸の自励振動の情報を取得可能な自励振動信号に相当することを見出した。上記[1]に記載の構成によれば、自励振動バンドパスフィルタは、回転軸の固有振動数に基づいて設定された通過帯域を通過する回転信号を自励振動信号として抽出する。このため、回転軸の自励振動を回転軸の回転信号から評価することができる。
【0079】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数(An)に対応するフィルタ指令値(B2)をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値(B3)を出力するフィルタ指令値出力装置(8)と、
前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数(Fc)を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号(D3)として前記回転信号から抽出する非線形強制振動バンドパスフィルタ(16)と、をさらに備える。
【0080】
本発明者らによれば、回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をnで除算した除算フィルタ指令値に応じて非線形中心周波数を設定し、回転軸の回転信号から非線形中心周波数を含む通過帯域を通過する回転信号を抽出すると、この抽出された回転信号が回転軸の非線形の強制振動の情報を取得可能な強制振動信号に相当することを見出した。上記[2]に記載の構成によれば、非線形強制振動バンドパスフィルタは、除算フィルタ指令値に応じて設定された非線形中心周波数を含む通過帯域を通過する回転信号を強制振動信号として抽出する。このため、非線形の強制振動も回転軸の回転信号から評価することができる。
【0081】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数(An)に対応するフィルタ指令値(B2)を出力するフィルタ指令値出力装置(8)と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される遮断周波数(P)よりも小さい通過帯域の信号を前記回転軸の振動の情報が取得可能な振動信号(E)として前記回転信号から抽出するローパスフィルタ(10)と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される中心周波数(Fb)を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号(D2)として前記回転信号から抽出するバンドパスフィルタ(12)と、
前記ローパスフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動の情報、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記強制振動信号から取得された前記回転軸の強制振動の情報、及び前記自励振動バンドパスフィルタによって抽出された前記自励振動信号から前記回転軸の自励振動の情報を同時に表示する表示装置(14)と、をさらに備える。
【0082】
上記[3]に記載の構成によれば、回転軸の自励振動と強制振動とを混同せずに評価することができる。また、回転軸の強制振動のうちバンドパスフィルタによって抽出された回転軸の強制振動(つまりは、回転軸の回転に同期した強制振動)を評価することができる。
【0083】
[4]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記フィルタ指令値出力装置は前記フィルタ指令値をさらに出力するように構成され、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される遮断周波数(P)よりも小さい通過帯域の信号を前記回転軸の振動の情報が取得可能な振動信号(E)として前記回転信号から抽出するローパスフィルタ(10)と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される中心周波数(Fb)を含む通過帯域の信号を前記強制振動信号(D2)として前記回転信号から抽出するバンドパスフィルタ(12)と、
前記ローパスフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動の情報、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記強制振動信号から取得された前記回転軸の強制振動の情報、及び前記非線形強制振動バンドパスフィルタによって抽出された前記強制振動信号から前記回転軸の強制振動の情報を同時に表示する表示装置(14)と、をさらに備える。
【0084】
上記[4]に記載の構成によれば、ローパスフィルタによって抽出された回転軸の強制振動、バンドパスフィルタによって抽出された回転軸の強制振動、及び非線形強制振動バンドパスフィルタによって抽出された回転軸の強制振動を互いに混同せずに評価することができる。
【0085】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記通過範囲は、前記固有振動数の0.9倍以上、且つ前記固有振動数の1.1倍以下である。
【0086】
上記[5]に記載の構成によれば、回転軸の自励振動の情報を含まないノイズの取得を抑制し、回転軸の自励振動の情報の取得精度を高めることができる。
【0087】
[6]本開示に係る振動監視装置(1)は、
回転軸(102)の回転に同期した回転信号(A)を出力する回転センサ(2)と、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数(An)に対応するフィルタ指令値(B2)をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値(B3)を出力するフィルタ指令値出力装置(8)と、
前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数(Fc)を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号(D3)として前記回転信号から抽出する非線形強制振動バンドパスフィルタ(16)と、を備える。
【0088】
本発明者らによれば、回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をnで除算した除算フィルタ指令値に応じて非線形中心周波数を設定し、回転軸の回転信号から非線形中心周波数を含む通過帯域を通過する回転信号を抽出すると、この抽出された回転信号が回転軸の非線形の強制振動の情報を取得可能な強制振動信号に相当することを見出した。上記[6]に記載の構成によれば、非線形強制振動バンドパスフィルタは、除算フィルタ指令値に応じて設定された非線形中心周波数を含む通過帯域を通過する回転信号を強制振動信号として抽出する。このため、非線形の強制振動を回転軸の回転信号から評価することができる。
【0089】
[7]本開示に係る過給機(100)は、
上記[1]から[6]の何れか1つに記載の振動監視装置(1)と、
前記回転軸の一端部に設けられる圧縮機(104)と、
前記回転軸の他端部に設けられるタービン(106)と、を備える。
【0090】
上記[7]に記載の構成によれば、過給機の回転軸の回転信号から過給機の回転軸の自励振動又は非線形の強制振動を評価可能な過給機を提供することができる。
【0091】
[8]本開示に係る振動監視方法は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップ(S1)と、
前記回転軸が有している固有振動数から算出される固有振動数フィルタ指令値を出力するステップ(S2)と、
前記回転信号と前記固有振動数フィルタ指令値とが入力されることで、前記固有振動数フィルタ指令値に応じて設定される通過範囲に含まれる通過帯域の信号を前記回転軸の自励振動の情報が取得可能な自励振動信号として前記回転信号から抽出するステップ(S3)と、を備える。
【0092】
上記[8]に記載の方法によれば、回転軸の固有振動数に基づいて設定された通過帯域を通過する回転軸の回転信号を自励振動信号として抽出するので、回転軸の自励振動を回転軸の回転信号から評価することができる。
【0093】
[9]本開示に係る振動監視方法は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップ(S11)と、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値をn(但し、n=1、2、・・・は自然数)で除算する除算フィルタ指令値を出力するステップ(S12)と、
前記回転信号と前記除算フィルタ指令値とが入力されることで、前記除算フィルタ指令値に応じて設定される非線形中心周波数を含む通過帯域の信号を前記回転軸の強制振動の情報が取得可能な強制振動信号として前記回転信号から抽出するステップ(S13)と、を備える。
【0094】
上記[9]に記載の方法によれば、除算フィルタ指令値に応じて設定された非線形中心周波数を含む通過帯域を通過する回転軸の回転信号を強制振動信号として抽出するので、非線形の強制振動を回転軸の回転信号から評価することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 振動監視装置
2 回転センサ
4 出力装置
6 自励振動バンドパスフィルタ
8 フィルタ指令値出力装置
10 ローパスフィルタ
12 バンドパスフィルタ
14 表示装置
16 非線形強制振動バンドパスフィルタ
100 過給機
102 回転軸
104 圧縮機
106 タービン
122 分周部
124 カウンタ部
126 表示部
128 フィルタ指令値出力部
129 除算フィルタ指令値出力部
200 第1斜軸
202 第2斜軸

A 回転信号
An 回転数
Ap 回転パルス信号
B1 固有振動数フィルタ指令値
B2 フィルタ指令値
B3 除算フィルタ指令値
C 自励振動信号
D1 第1の強制振動信号
D2 第2の強制振動信号
E 振動信号
Fa 固有振動数
Fb 中心周波数
Fc 非線形中心周波数
P 遮断周波数
R1 第1の通過範囲
R2 第2の通過範囲
R3 第3の通過範囲
S1 回転信号出力ステップ
S2 固有振動数フィルタ指令値出力ステップ
S3 自励振動信号抽出ステップ
S11 回転信号出力ステップ
S12 除算フィルタ指令値出力ステップ
S13 第2の強制振動信号抽出ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16