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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058061
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】レーザ旋回装置およびレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20240418BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240418BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/064 G
G02B26/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165182
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和仁
(72)【発明者】
【氏名】小林 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】吉井 大智
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
【テーマコード(参考)】
2H045
4E168
【Fターム(参考)】
2H045AF12
2H045BA14
2H045DA41
4E168CB04
4E168DA24
4E168DA27
4E168DA28
4E168DA45
4E168DA46
4E168EA14
4E168EA17
4E168EA25
(57)【要約】
【課題】中空モータでプリズムを保持し、かつ回転させる形態について、プリズムを効率よく冷却できるけるレーザ旋回装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レーザ旋回装置(40)は、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させるプリズム(41)と、プリズム(41)を中空部分に回転可能に保持する回転電機(43)と、を備える。
回転電機(43)は、プリズム(41)を保持するロータ(44)と、ロータ(44)の周囲に設けられ、ロータ(44)に対して磁界を印加する電磁コイル(47)と、ロータ(44)の周囲に設けられ、電磁コイル(47)の収容領域を有するステータ(46)と、電磁コイル(47)とプリズム(41)との間に設けられる、ロータ(44)の軸方向(AD)および周方向(CD)に連なる第1冷却媒体流路(51,54)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射されるレーザ光を光軸に対して屈折させるプリズムと、
前記プリズムを中空部分に回転可能に保持する回転電機と、を備え、
前記回転電機は、
前記プリズムを保持するホルダと、
前記ホルダを保持するロータと、
前記ロータの周囲に設けられ、前記ロータに対して磁界を印加する電磁コイルと、
前記ロータの周囲に設けられ、前記電磁コイルの収容領域を有するステータと、
前記ホルダと前記ロータとの間に設けられる、前記ロータの軸方向および周方向に連なる第1冷却媒体流路と、
を備えるレーザ旋回装置。
【請求項2】
前記プリズムは、前記ホルダを介して前記ロータに保持され、
前記第1冷却媒体流路は、前記ホルダに設けられる、
請求項1に記載のレーザ旋回装置。
【請求項3】
前記プリズムは、前記ホルダを介して前記ロータに保持され、
前記第1冷却媒体流路は、少なくとも一部が前記ホルダと前記プリズムとの間に設けられることで、前記プリズムに直に臨む、
請求項1に記載のレーザ旋回装置。

【請求項4】
前記ステータの前記収容領域において前記電磁コイルを取り囲み、
前記軸方向および前記周方向に連なる第2冷却媒体流路を備える、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のレーザ旋回装置。
【請求項5】
前記ステータは、前記周方向に連なる外周壁を備え、
前記外周壁の肉厚部分に前記軸方向および前記周方向に連なる第3冷却媒体流路を備える、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のレーザ旋回装置。
【請求項6】
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ光を旋回させつつ加工対象物に向けて照射する照射ヘッドと、を備え、
前記照射ヘッドは、
前記レーザ光を前記加工対象物に対して旋回させるレーザ旋回部と、
前記レーザ旋回部で旋回された前記レーザ光を集光させる集光光学系と、を備え、
前記レーザ旋回部は、
入射される前記レーザ光を光軸に対して屈折させるプリズムと、
前記プリズムを中空部分に回転可能に保持する回転電機と、を備え、
前記回転電機は、
前記プリズムを保持するホルダと、
前記ホルダを保持するロータと、
前記ロータの周囲に設けられ、前記ロータに対して磁界を印加する電磁コイルと、
前記ロータの周囲に設けられ、前記電磁コイルの収容領域を有するステータと、
前記ホルダと前記ロータとの間に設けられる、前記ロータの軸方向および周方向に連なる第1冷却媒体流路と、
を備えるレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置は、レーザ光を加工対象物に照射して加工する装置であって、加工対象物に対して、切断加工、穴あけ加工等の各種加工を行うことができる。レーザ加工装置は、加工の最中にレーザ照射ヘッドを構成する光学系、例えばプリズムが発熱する。この発熱によって光学系に熱変形が生ずるとレーザ光の軌跡にずれが生ずる。そこで、一例として特許文献1に記載されるように、レーザ照射ヘッドに冷却機構を設ける。特許文献1は、プリズムの周囲に冷却機構を設けることを開示する。特許文献1は、中空モータで回転されるスピンドルによりプリズムが回転し、レーザ光を旋回させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-161902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機としての中空モータを用いる場合、ロータでプリズムを保持し、かつ回転させる形態もあるが、この形態における冷却機構について特許文献1は開示するところがない。
以上より、本開示は、中空モータでプリズムを保持し、かつ回転させる形態について、プリズムを効率よく冷却できるけるレーザ旋回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のレーザ旋回装置は、入射されるレーザ光を光軸に対して屈折させるプリズムと、プリズムを中空部分に回転可能に保持する回転電機と、を備える。
回転電機は、プリズムを保持するホルダと、ホルダを保持するロータと、ロータの周囲に設けられ、ロータに対して磁界を印加する電磁コイルと、ロータの周囲に設けられ、電磁コイルを収容する収容領域を有するステータと、ホルダとロータとの間に設けられる、ロータの軸方向および周方向に連なる第1冷却媒体流路と、を備える。
【0006】
本開示に係るレーザ加工装置は、レーザ光を出力するレーザ発振器と、レーザ光を旋回させつつ加工対象物に向けて照射する照射ヘッドと、を備える。
照射ヘッドは、レーザ光を加工対象物に対して旋回させるレーザ旋回部と、レーザ旋回部で旋回されたレーザ光を集光させる集光光学系と、を備える。
レーザ旋回部は、入射されるレーザ光を光軸に対して屈折させるプリズムと、プリズムを中空部分に回転可能に保持する回転電機と、を備える。
回転電機は、プリズムを保持するホルダと、ホルダを保持するロータと、ロータの周囲に設けられ、ロータに対して磁界を印加する電磁コイルと、ロータの周囲に設けられ、電磁コイルを収容する収容領域を有するステータと、ホルダとロータとの間に設けられる、ロータの軸方向および周方向に連なる第1冷却媒体流路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電磁コイルとプリズムとの間に第1冷却媒体流路を備える。したがって、本開示によれば、電磁コイルが発熱しても第1冷却媒体流路がプリズム41への遮熱をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係るレーザ旋回部を示す縦断面図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4】第2実施形態に係るレーザ旋回部を示す縦断面図である。
図5図4のV-V線矢視断面図である。
図6】第3実施形態に係るレーザ旋回部を示す縦断面図である。
図7図6のVII-VII線矢視断面図である。
図8】第4実施形態に係るレーザ旋回部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係るレーザ加工装置1説明する。
レーザ加工装置1は、レーザ光LBを旋回させるレーザ旋回部40に用いられているプリズム41を冷却するための冷却媒体流路(冷却機構)を備える。本実施形態における冷却媒体流路は複数の形態を含むが、冷却媒体流路を除いたレーザ加工装置1の基本構成は共通している。レーザ加工装置1の基本構成を説明した後に、複数の冷却媒体流路の例を順に説明する。
【0010】
[レーザ加工装置1の基本構成:図1を参照]
レーザ加工装置1は、図1に示すように、レーザ光LBを出力するレーザ発振器10と、レーザ発振器10から出力されるレーザ光LBを旋回させつつ加工対象物に向けて照射する照射ヘッド20と、を備える。レーザ発振器10および照射ヘッド20は図示を省略するコントローラによりその動作が制御される。
レーザ発振器10と照射ヘッド20の間には、レーザ発振器10から出力されたレーザを照射ヘッド20へ案内する案内光学系15としての光ファイバが設けられる。この案内光学系15は、一方の端部がレーザ発振器10のレーザ出射口と接続され、他方の端部が照射ヘッド20のレーザ入射端と接続される。
【0011】
[レーザ発振器10:図1を参照]
レーザ発振器10は、レーザ光LBを出力する装置であり、例えば、光ファイバを媒質としてレーザ光LBを出力するファイバレーザ出力装置、または、短パルスのレーザ光LBを出力する短パルスレーザ出力装置などが用いられる。
ファイバレーザ出力装置としては、例えば、ファブリペロー型ファイバレーザ出力装置やリング型ファイバレーザ出力装置を用いることができ、これらの出力装置が励起されることによりレーザ光LBが発振される。ファイバレーザ出力装置のファイバは、例えば、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属元素が添加されたシリカガラスを用いることができる。
短パルスレーザ出力装置としては、レーザ光LBの発振源として例えば、チタンサファイアレーザを用いることができ、パルス幅が100ピコ秒以下のパルスを発振することができる。また、YAGレーザ(Yttrium Aluminum Garnet)やYVOレーザ等のナノ秒オーダーパルス発振をするレーザ光LBも使用可能である。
【0012】
[照射ヘッド20:図1を参照]
照射ヘッド20は、コリメート光学系30と、レーザ旋回部40と、集光光学系60と、を含む。照射ヘッド20のこれらの要素は、レーザ発信器10の側から、コリメート光学系30、レーザ旋回部40、および集光光学系60の順で配置される。照射ヘッド20は、案内光学系15から出力されたレーザ光LBを図1においては図示が省略される加工対象物に向けて照射する。
【0013】
[コリメート光学系30:図1を参照]
コリメート光学系30は、案内光学系15のレーザ光LBが出射される端面に対向して配置される。つまり、コリメート光学系30は、案内光学系15とレーザ旋回部40との間に配置される。コリメート光学系30は、複数のコリメートレンズを備えており、案内光学系15から出力されたレーザ光LBをコリメート(collimate)光とし、反射ミラー35を介してレーザ旋回部40に向けて出射する。コリメート(collimate)光とは、いずれの光線も他の全ての光線と平行になっている光束をいう。反射ミラー35は、一例として銅(Cu)、アルミニウム(Al)などの熱伝導性に優れた金属製ミラーが適用される。金属製ミラーの反射面には、金(Au)、誘電体多層膜による表面被覆を施すことができる。
【0014】
[レーザ旋回部40:図1図2図3を参照]
レーザ旋回部40は、レーザ光LBの中心である光軸OAの周りにレーザ光LBを回転させて、加工対象物に照射レーザ、つまりレーザ光LBの照射位置を旋回させる。
レーザ旋回部40は、プリズム41と、プリズム41を光軸OAの周りに回転させる回転機構42と、を有する。回転機構42は、後述する冷却機能を備える。
【0015】
[プリズム41]
プリズム41は、ダブプリズム(Dove Prism)が例示されており、ダブプリズムは四角柱の両端を斜めに切断した形状を有し、その縦断面は等脚台形をしており、両端の傾斜面が入射する光の光軸OAに垂直な面に対して対称となっている。このプリズム41を透過するレーザ光LBは反転してから出射されるので、入射する光の光軸OAを中心にある角度だけ回転させると、出射する光はその光軸OAのまわりに回転角度の2倍だけ回転する性質を有している。
プリズム41は、レーザ光LBが入射される入射面41Aと、レーザ光LBが出射される出射面41Bと、を有する。レーザ光LBがプリズム41の入射面41Aに特定の角度で入射したとき、レーザ光LBはプリズム41が1回転する間に同一直径、つまり旋回径Rの2つの同心円を描くことができる。
ダブプリズムは本開示のレーザ旋回部における一例であり、ダブプリズムに代えて他の外形が多角形のプリズムを用いることができる。また、本開示において、プリズムの数は任意であり、同じ種類の複数のプリズムを設けることもできるし、異なる種類のプリズムを設けることもできる。異なる種類のプリズムとしては、例えばウェッジプリズムとダブプリズムの組み合わせがある。
【0016】
[回転機構42:図2および図3参照]
回転機構42は、プリズム41を保持しかつ光軸OAを中心にして回転させる。回転機構42は、中空モータ43が適用され、この中空モータ43を構成する要素に冷却媒体流路が設けられる。
【0017】
中空モータ43は、プリズム41を保持しながら回転させる円筒状のロータ(回転子)44と、ロータ44の周囲に設けられ、ロータ44に対して磁界を印加する電磁コイル47と、ロータ44の周囲に設けられ、電磁コイル47の収容領域を有するステータ(固定子)46と、を備える。
【0018】
ロータ44は、一例として永久磁石を構成要素として備えており、電磁コイル47から発生される磁界を受けることで回転される。
ロータ44の内側にはホルダ45が固定され、ホルダ45の内側にはプリズム41が固定される。したがって、プリズム41はロータ44が回転するのに伴ってホルダ45に保持されながら回転する。ロータ44とホルダ45の間には後述する第1冷却媒体流路51が設けられるために、ロータ44とホルダ45の固定は周方向の複数の箇所に間隔を空けて行われる。この点について、具体的には第1冷却媒体流路51のところで言及する。
【0019】
ステータ46の内側の収容領域には電磁コイル47が設けられる。電磁コイル47は図示が省略される電源に接続されており、この電源から電磁コイル47に電力が供給されると、電磁コイル47から磁界が発生することでロータ44が回転される。電磁コイル47は、円筒状の形態を有しており、ステータ46の内部において、径方向RDの外側および内側に空隙が設けられるとともに、軸方向ADの両側に空隙が設けられる。これらの空隙は、第2実施形態における第2冷却媒体流路52を構成する。
【0020】
ステータ46はロータ44の周囲に配置されるが、ステータ46とロータ44の間には一例として光軸OAの方向に間隔を空けて配置される二つの軸受49が介在している。ステータ46が光軸OAの周りの回転が拘束されているため、ロータ44はステータ46の内側において回転可能とされる。
【0021】
[第1実施形態:第1冷却媒体流路51]
第1冷却媒体流路51は、ロータ44とホルダ45の間に設けられる。ホルダ45の外周側、つまりロータ44と対向する側の面が、図3に示すように、大径部45Aと小径部45Bとを有している。大径部45Aは、周方向CDについては、一例として、4か所に均等な間隔で設けられる。また、大径部45Aは光軸OAの方向について、一例として、両端および中央近傍の3か所に設けられる。
【0022】
大径部45Aはその径がロータ44の内周面44Iにおける径と一致するように構成されており、大径部45Aの先端はロータ44の内周面44Iに接する。ホルダ45とロータ44は、大径部45Aとロータ44が接する部分において適宜の手段により固定される。
小径部45Bはその径がロータ44の内周面44Iにおける径よりも小さく構成されており、小径部45Bとロータ44の間には空隙が形成され、この空隙により第1冷却媒体流路51が構成される。第1冷却媒体流路51は、周方向CDについては大径部45Aが設けられる部分以外は貫通しており、光軸OAに沿う軸方向ADについてはロータ44とホルダ45を貫通しているが、径方向RDについてはロータ44の内周面44Iと小径部45Bとにより閉じられている。つまり、第1冷却媒体流路51は、軸方向ADおよび周方向CDに連なっている。
【0023】
第1冷却媒体流路51には、冷却媒体CMが供給される第1供給口51Aと冷却媒体CMが排出される第1排出口51Bとが設けられる。図示が省略される供給源からの冷却媒体CMが第1供給口51Aに供給されると、第1冷却媒体流路51を通り、第1排出口51Bから外部に排出される。第1冷却媒体流路51に供給される冷却媒体CMは気体および液体から選択される。
【0024】
[集光光学系60:図1
集光光学系60は、複数のレンズを有しており、この複数のレンズにより、レーザ旋回部40から照射されたレーザ光LBを集光し、所定の焦点距離、焦点深度となるレーザ光LBを形成する。集光光学系60は、加工対象物に所定のスポット径のレーザ光LBを照射する。
【0025】
[第1実施形態が奏する効果]
第1実施形態に係るレーザ旋回部40は、中空モータ43の一要素である電磁コイル47とプリズム41の間に第1冷却媒体流路51が設けられる。プリズム41を回転させるために電磁コイル47に電力を投入してロータ44を回転させると電磁コイル47が発熱するが、第1冷却媒体流路51に冷却媒体CMを流せば、電磁コイル47を冷却することができるのに加えて、電磁コイル47からの熱がプリズム41に伝達されるのを遮る、つまり遮熱することができる。したがって、レーザ旋回部40を備えるレーザ加工装置1は、プリズム41の熱変形によるレーザ光LBの位置ずれを防止または低減できる。
【0026】
しかも、第1冷却媒体流路51は、大径部45Aと内周面44Iとの接合部分を除いて、プリズム41を保持するホルダ45における軸方向ADおよび周方向CDに連なっている。したがって、第1冷却媒体流路51に冷却媒体CMを連続的に供給すれば、第1冷却媒体流路51による冷却性能を維持することができるとともに、軸方向ADおよび周方向CDにおけるプリズム41を取り囲む広い範囲にわたって遮熱することができる。
【0027】
[第2実施形態:図4図5参照]
次に、第2実施形態を説明する。
第2実施形態は、第1実施形態の第1冷却媒体流路51に加えてレーザ旋回部40に第2冷却媒体流路52を備える。以下、図4および図5を参照して第2冷却媒体流路52を説明するが、第1実施形態と同じ構成部分には図2および図3と同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0028】
第2冷却媒体流路52は電磁コイル47を直接的に冷却することを目的としており、ステータ46の内部の空隙が第2冷却媒体流路52を構成する。第2冷却媒体流路52は、外側流路52O、内側流路52Iおよび側方流路52S1,52S2と、三種類の流路を備えている。外側流路52Oは電磁コイル47よりも径方向RDの外側の部分を占める円筒状の空隙からなる。内側流路52Iは、電磁コイル47よりも径方向RDの内側の部分を占める筒状の空隙からなる。側方流路52S1,52S2は、外側流路52Oおよび内側流路52Iを除く電磁コイル47の軸方向ADの両側の空隙からなる。外側流路52O、内側流路52Iおよび側方流路52S1,52S2は軸方向AD、径方向RDおよび周方向CDに連なって、第2冷却媒体流路52を構成する。つまり、第2冷却媒体流路52は、電磁コイル47の周囲を取り囲んでいる。
【0029】
第2冷却媒体流路52には、冷却媒体CMが供給される第2供給口52Aと冷却媒体CMが排出される第2排出口52Bとが設けられる。第2供給口52Aはステータ46の一方の側壁46S1を貫通して第2冷却媒体流路52と外部を繋ぐ。第2排出口52Bはステータ46の他方の側壁46S2を貫通して第2冷却媒体流路52と外部を繋ぐ。図示が省略される供給源からの冷却媒体CMが第2供給口52Aに供給されると、外側流路52O、内側流路52Iおよび側方流路52S1,52S2を通り、第2排出口52Bから外部に排出される。第2冷却媒体流路52に供給される冷却媒体CMは、電磁コイル47の周囲であって中空モータ43の内部を通ることから、好ましくは気体が選択される。ただし、電磁コイル47を含めて第2冷却媒体流路52の周りを防水構造とすれば、液状の冷却媒体CMを用いることもできる。
【0030】
[第2実施形態が奏する効果]
第2実施形態に係るレーザ旋回部40は、第1冷却媒体流路51に加えて、発熱源である電磁コイル47を直接的に冷却する第2冷却媒体流路52を備えることにより電磁コイル47の発熱が抑えられる。したがって、第1冷却媒体流路51による遮熱効果と相まって、プリズム41の熱変形によるレーザ光LBの位置ずれをより一層低減できる。
【0031】
また、第2冷却媒体流路52は、ステータ46の内部において電磁コイル47の周囲を取り囲むように構成される。したがって、第2冷却媒体流路52に冷却媒体CMを連続的に供給すれば、第2冷却媒体流路52による冷却性能を維持することができるとともに、周囲を取り囲む広い範囲にわたって電磁コイル47を冷却することができる。
【0032】
[第3実施形態:図6図7参照]
次に、第3実施形態を説明する。
第3実施形態は、第2実施形態の第1冷却媒体流路51および第2冷却媒体流路52に加えて第3冷却媒体流路53を備える。以下、図6および図7を参照して第3冷却媒体流路53を説明するが、第2実施形態と同じ構成部分には図4および図5と同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0033】
第3冷却媒体流路53は電磁コイル47を間接的に冷却することを目的としており、ステータ46の外周壁46Oに形成される空隙が第3冷却媒体流路53を構成する。この空隙は外周壁46Oの周方向CDに連なるように形成されるとともに、外周壁46Oの軸方向ADの両端を除く大部分に亘って形成される。つまり、第3冷却媒体流路53は、電磁コイル47および第2冷却媒体流路52の周囲を取り囲んでいる。
【0034】
第3冷却媒体流路53には、冷却媒体CMが供給される第3供給口53Aと冷却媒体CMが排出される第3排出口53Bとが設けられる。第3供給口53Aはステータ46の一方の側の外周壁46Oを貫通して第3冷却媒体流路53と外部を繋ぐ。第3排出口53Bはステータ46の他方の側の外周壁46Oを貫通して第3冷却媒体流路53と外部を繋ぐ。図示が省略される供給源からの冷却媒体CMが第3供給口53Aに供給されると、第3冷却媒体流路53を周方向CDに沿って通り、第3排出口53Bから外部に排出される。第3冷却媒体流路53に供給される冷却媒体CMは、第1冷却媒体流路51と同様に、気体および液体から選択される。
【0035】
[第3実施形態が奏する効果]
第3実施形態に係るレーザ旋回部40は、第1冷却媒体流路51および第2冷却媒体流路52に加えて、発熱源である電磁コイル47を間接的に冷却する第3冷却媒体流路53を備えることにより電磁コイル47の発熱を抑えることができる。したがって、第1冷却媒体流路51による遮熱効果および第2冷却媒体流路52による直接的な電磁コイル47の冷却と相まって、プリズム41の熱変形によるレーザ光LBの位置ずれをさらに一層低減できる。
【0036】
また、第3冷却媒体流路53は、ステータ46の内部において電磁コイル47および第2冷却媒体流路52の周囲を取り囲むように構成される。したがって、第3冷却媒体流路53に冷却媒体CMを連続的に供給すれば、第3冷却媒体流路53による冷却性能を維持することができるとともに、周囲を取り囲む広い範囲にわたって電磁コイル47を冷却することができる。
【0037】
[第4実施形態:図8参照]
次に、第4実施形態を説明する。
第4実施形態は、一例として二つのプリズム41,41を備え、この二つのプリズム41,41のそれぞれを直に冷却できる第4冷却媒体流路54を備える。以下、図8を参照して第4冷却媒体流路54を説明するが、第1実施形態と同じ構成要素には図2と同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0038】
第4冷却媒体流路54は、ホルダ45とプリズム41,41との間の空隙に形成され、上流流路54C、第1連絡流路54D、中流流路54E、第2連絡流路54Fおよび下流流路54Gを備えている。供給される冷却媒体CMは、上流流路54C、第1連絡流路54D、中流流路54E、第2連絡流路54Fおよび下流流路54Gの順に流れる。第4冷却媒体流路54において、冷却媒体CMの流れる向きに基づいて、上流(U)および下流(L)が定義される。上流流路54C~下流流路54Gが形成されている部分以外は、プリズム41,41はホルダ45に保持されている。
【0039】
上流流路54Cは、プリズム41の上流(U)の側の端面41A1に接する概略円柱状の空隙からなり、第4供給口54Aから供給される冷却媒体CMはプリズム41の端面41A1を直に冷却する。端面41A1を冷却した冷却媒体CMは下流(L)に向けて流れ、第1連絡流路54Dに至る。
【0040】
第1連絡流路54Dは、プリズム41の外周面41A2の例えば図中の上半分程度に接する円弧状の空隙からなり、上流流路54Cから流れてくる冷却媒体CMはプリズム41の外周面41A2を直に冷却する。第1連絡流路54Dが形成される部分以外は、プリズム41はホルダ45に保持される。
【0041】
中流流路54Eは、プリズム41の下流(L)の側の端面41A3およびプリズム41の上流(U)の側の端面,411に接する概略円柱状の空隙からなり、第1連絡流路54Dから流れてくる冷却媒体CMはプリズム41の端面41A3およびプリズム41の端面,411を直に冷却する。
【0042】
第2連絡流路54Fは、プリズム41の外周面,412の例えば図中の下半分程度に接する円弧状の空隙からなり、中流流路54Eから流れてくる冷却媒体CMはプリズム41の外周面,412を直に冷却する。第2連絡流路54Fが形成される部分以外は、プリズム41はホルダ45に保持される。
【0043】
下流流路54Gは、プリズム41の下流(L)の側の端面,413およびプリズム41の上流(U)の側の端面,411に接する概略円柱状の空隙からなり、第2連絡流路54Fから流れてくる冷却媒体CMはプリズム41の端面,413を直に冷却する。
【0044】
第4冷却媒体流路54には、冷却媒体CMが供給される第4供給口54Aと冷却媒体CMが排出される第4排出口54Bとが設けられる。第4供給口54Aはロータ44の下流(L)の側の側壁を貫通して第4冷却媒体流路54と外部を繋ぐ。第4排出口54Bはロータ44の上流(U)の側の側壁を貫通して第4冷却媒体流路54と外部を繋ぐ。図示が省略される供給源からの冷却媒体CMが第4供給口54Aに供給されると、第4冷却媒体流路54を径方向RD、周方向CDおよび軸方向ADに沿って流れ、第4排出口54Bから外部に排出される。第4冷却媒体流路54に供給される冷却媒体CMは、第1冷却媒体流路51と同様に、気体および液体から選択される。
【0045】
[第4実施形態が奏する効果]
第4実施形態に係るレーザ旋回部40は、プリズム41,41に臨み、プリズム41,41にを直に冷却することのできる第4冷却媒体流路54を備えることにより、第1実施形態よりも遮熱効果が高く、プリズム41の熱変形によるレーザ光LBの位置ずれをより一層低減できる。
【0046】
第4冷却媒体流路54は、電磁コイル47とプリズム41,41の間に設けられる点で第1冷却媒体流路51と共通する。したがって、第1冷却媒体流路51とともに設けられ得る第2冷却媒体流路52および第3冷却媒体流路53の一方または双方を第4冷却媒体流路54に組み合せることもできる。
【0047】
また、第4冷却媒体流路54は二つのプリズム41,41を冷却する例を示しているが、一つのプリズムを直に冷却できるように流路を形成してもよいし、三つ以上のプリズムを冷却できるように流路を形成してもよい。第1冷却媒体流路51~第3冷却媒体流路53についても、一つのプリズム41を冷却するのに限定されず、複数のプリズム41を冷却できるようにそれぞれの流路を形成してもよい。
【0048】
[付記]
<付記1>
レーザ旋回装置(40)は、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させるプリズム(41)と、プリズム(41)を中空部分に回転可能に保持する回転電機(43)と、を備える。
回転電機(43)は、プリズム(41)を保持するホルダ(45)と、ホルダ(45)を保持するロータ(44)と、ロータ(44)の周囲に設けられ、ロータ(44)に対して磁界を印加する電磁コイル(47)と、ロータ(44)の周囲に設けられ、電磁コイル(47)の収容領域を有するステータ(46)と、ホルダ(45)とロータ(44)との間に設けられる、ロータ(44)の軸方向(AD)および周方向(CD)に連なる第1冷却媒体流路(51,54)と、を備える。
【0049】
<付記2>
付記1において、好ましくは、プリズム(41)は、ホルダ(45)を介してロータ(44)に保持され、第1冷却媒体流路(51)は、ホルダ(45)に設けられる。
【0050】
<付記3>
付記1において、好ましくは、プリズム(41)は、ホルダ(45)を介してロータ(44)に保持され、第1冷却媒体流路(54)は、少なくとも一部がホルダ(45)とプリズム(41)との間に設けられることで、プリズム(41)に直に臨む。
【0051】
<付記4>
付記1~付記3において、好ましくは、ステータ(46)の収容領域において電磁コイル(47)を取り囲み、軸方向(AD)および周方向(CD)に連なる第2冷却媒体流路(52)を備える。
【0052】
<付記5>
付記1において、好ましくは、ステータ(46)は、周方向(CD)に連なる外周壁(46O)を備え、外周壁(46O)の肉厚部分に軸方向(AD)および周方向(CD)に連なる第3冷却媒体流路(53)を備える。
【0053】
<付記6>
レーザ加工装置(1)は、レーザ光(LB)を出力するレーザ発振器(10)と、レーザ光(LB)を旋回させつつ加工対象物に向けて照射する照射ヘッド(20)と、を備える。
照射ヘッド(20)は、レーザ光(LB)を加工対象物に対して旋回させるレーザ旋回部(40)と、レーザ旋回部(40)で旋回されたレーザ光(LB)を集光させる集光光学系(60)と、を備える。
レーザ旋回部(40)は、入射されるレーザ光(LB)を光軸(OA)に対して屈折させるプリズム(41)と、プリズム(41)を中空部分に回転可能に保持する回転電機(43)と、を備える。回転電機(43)は、プリズム(41)を保持するホルダ(45)と、ホルダ(45)を保持するロータ(44)と、ロータ(44)の周囲に設けられ、ロータ(44)に対して磁界を印加する電磁コイル(47)と、ロータ(44)の周囲に設けられ、電磁コイル(47)の収容領域を有するステータ(46)と、ホルタ(45)とロータ(44)との間に設けられる、ロータ(44)の軸方向(AD)および周方向(CD)に連なる第1冷却媒体流路(51,54)と、を備える。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザ加工装置
10 レーザ発振器
15 案内光学系
20 照射ヘッド
30 コリメート光学系
35 反射ミラー
40 レーザ旋回部
40 レーザ旋回装置
41 プリズム
41A 入射面
41A1 端面
41A2 外周面
41A3 端面
41B 出射面
41B プリズム
41B1 端面
41B2 外周面
41B3 端面
42 回転機構
43 回転電機
43 中空モータ
44 ロータ
44I 内周面
45 ホルダ
45A 大径部
45B 小径部
46 ステータ
46O 外周壁
46S1 側壁
46S2 側壁
47 電磁コイル
49 軸受
51 第1冷却媒体流路
51A 第1供給口
51B 第1排出口
52 第2冷却媒体流路
52A 第2供給口
52B 第2排出口
52I 内側流路
52O 外側流路
52S1 側方流路
52S2 側方流路
53 第3冷却媒体流路
53A 第3供給口
53B 第3排出口
54 第4冷却媒体流路
54 第1冷却媒体流路
54A 第4供給口
54B 第4排出口
54C 上流流路
54D 第1連絡流路
54E 中流流路
54F 第2連絡流路
54G 下流流路
60 集光光学系
CM 冷却媒体
AD 軸方向
CD 周方向
RD 径方向
L 下流
U 上流
LB レーザ光
OA 光軸
R 旋回径
W 加工対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8