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特開2024-58079極低温装置の伝熱部材接続構造及び極低温装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058079
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】極低温装置の伝熱部材接続構造及び極低温装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165219
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 航生
(72)【発明者】
【氏名】栗山 透
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政彦
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀和
(57)【要約】
【課題】伝熱部材の接続部の接触熱抵抗を低減できること。
【解決手段】極低温冷凍機12により超電導コイル11を、第2伝熱部材16を介して極低温に伝導冷却する極低温装置の伝熱部材接続構造において、第2伝熱部材16が、極低温冷凍機に接続される低温側伝熱部材17と、超電導コイルに接続される高温側伝熱部材18とを有してなり、高温側伝熱部材と低温側伝熱部材の一方に凸部23が、他方の端部27に、凸部の形状に沿う形状の孔24がそれぞれ形成され、製造時における高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17の同一温度条件下で、孔24の内径が凸部23の外径以下に設定され、凸部を孔に加熱または冷却により嵌合させることで、高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17とを接続させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機により被冷却物を、伝熱部材を介して極低温に伝導冷却する極低温装置の伝熱部材接続構造において、
前記伝熱部材が、前記極低温冷凍機に接続される低温側伝熱部材と、前記被冷却物に接続される高温側伝熱部材とを有してなり、
前記高温側伝熱部材と前記低温側伝熱部材の一方に凸部が、他方の端部に、前記凸部の形状に沿う形状の凹部がそれぞれ形成され、
製造時における前記高温側伝熱部材と前記低温側伝熱部材の同一温度条件下で、前記凹部の内径が前記凸部の外径以下に設定され、
前記凸部を前記凹部に加熱または冷却により嵌合させることで、前記高温側伝熱部材と前記低温側伝熱部材とを接続させるよう構成されたことを特徴とする極低温装置の伝熱部材接続構造。
【請求項2】
前記凸部と、前記凹部が形成された端部との少なくとも一方が、純アルミニウムまたは純銅にて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温装置の伝熱部材接続構造。
【請求項3】
前記凸部の外周面と前記凹部の内周面との少なくとも一部に、モース硬度2.9未満の金属のメッキ層が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の極低温装置の伝熱部材接続構造。
【請求項4】
前記凸部が純銅にて構成され、前記凹部が形成された端部が純アルミニウムにて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温装置の伝熱部材接続構造。
【請求項5】
極低温冷凍機と、
請求項1または4に記載の極低温装置の伝熱部材接続構造が適用されて構成されて、前記極低温冷凍機と被冷却物とを熱的に接続する伝熱部材と、
前記極低温冷凍機、前記被冷却物及び前記伝熱部材を格納する真空容器と、を有して構成されたことを特徴とする極低温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、極低温冷凍機により超電導コイルをはじめとする被冷却物を、伝熱部材を介して極低温に伝導冷却する極低温装置の伝熱部材接続構造、及びその接続構造が適用された伝熱部材を有する極低温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、77K以下の極低温まで冷却可能な極低温冷凍機を利用して、超電導コイルなどの被冷却物を、良熱伝導体からなる伝熱部材の固体熱伝導により伝導冷却する伝導冷却方式の極低温装置が開発されている。
【0003】
この冷却方式では、極低温冷凍機のシリンダと構造材の熱収縮差により生じる熱応力の緩和のために、可撓性を有する伝熱部材を一部に用いており、複数の伝熱部材をボルト締結や溶接等で接続して、被冷却物から極低温冷凍機の冷却ステージまでの熱経路を形成している。
【0004】
伝熱部材間の接続箇所では、図6に示すように、伝熱部材100における低温側伝熱部材101と高温側伝熱部材102の接続部の表面には微細な凹凸が存在するため、低温側伝熱部材101と高温側伝熱部材102の接触面に微細な空隙103が生じ、この空隙103が熱伝導の妨げとなる。このため、伝熱部材100の接続部には、伝熱部材100の熱抵抗よりも大きな接触熱抵抗が生する場合がある。
【0005】
一般的に接触熱抵抗は、実接触面積または押し付け圧力に反比例して小さくなる傾向がある。従って、接触熱抵抗の低減方法としては、空隙103を小さくして実接触面積を増加させることが有効である。このためには、表面の微細な凹凸を塑性変形させるに十分な面圧を加えるか、または、図7に示すように、接触面に熱伝導グリースや伝熱促進用の柔らかい金属シート等の接触伝熱媒体104を配置することで、空隙103を埋めて実接触面積を増加させる手法がとられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-192253号公報
【特許文献2】特許第5520740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
伝熱部材における接続方法としては、ボルト締結が一般的に広く用いられる。そのほか、特許文献1では、熱収縮率の異なる2つの部材を嵌合構造により接続する構造が、特許文献2では、嵌合構造の更に外側に、熱収縮率の大きな熱収縮リングを配置して接続する構造がそれぞれ開示されている。
【0008】
伝熱部材100における低温側伝熱部材101と高温側伝熱部材102の接続部の熱伝導では、上述のように、接触面の微細な凹凸によって生じる空隙103で熱流が制限されることにより接触熱抵抗が生ずる。この接触熱抵抗の低減のために、熱伝導グリースや柔らかい金属シートなどの接触伝熱媒体104を接触面に設置して、空隙103を埋めることで、接触熱抵抗の低減を図ることができる。しかしながら、接触伝熱媒体104は、極低温の温度領域では、その熱伝導率が高純度のアルミニウムや銅からなる伝熱部材100と比較して極端に小さくなるため、接触伝熱媒体104として十分な効果を発揮することができない。
【0009】
接触熱抵抗のもう一つの低減方法としては、接触面の微細な凹凸の変形を促して空隙103を小さくするために、強い面圧を加えることが考えられる。しかしながら、通常行われるボルト締結による加圧では、レッチェルの影響円錐と呼ばれるボルト穴の周辺部にのみに押し付け圧力が加わる。この結果、図8に示すように、アルミニウムや銅を基材とする低温側伝熱部材101、高温側伝熱部材102にうねりが発生し、結果的にボルト105の周辺部のみしか接触面が生まれず、接触熱抵抗が低減されない課題が生じていた。
【0010】
また、特許文献1の嵌合構造では、室温時に接合箇所に面圧が加わっておらず、熱抵抗が高くなることに加え、場合によっては脱落の危険がある。特許文献2の嵌合構造では、熱収縮リングを使用した締結としているが、同様に、室温時にはクリアランスが生じており、接触熱抵抗が大きくなっている。
【0011】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、伝熱部材の接続部の接触熱抵抗を低減できる極低温装置の伝熱部材接続構造及び極低温装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態における極低温装置の伝熱部材接続構造は、極低温冷凍機により被冷却物を、伝熱部材を介して極低温に伝導冷却する極低温装置の伝熱部材接続構造において、前記伝熱部材が、前記極低温冷凍機に接続される低温側伝熱部材と、前記被冷却物に接続される高温側伝熱部材とを有してなり、前記高温側伝熱部材と前記低温側伝熱部材の一方に凸部が、他方の端部に、前記凸部の形状に沿う形状の凹部がそれぞれ形成され、製造時における前記高温側伝熱部材と前記低温側伝熱部材の同一温度条件下で、前記凹部の内径が前記凸部の外径以下に設定され、前記凸部を前記凹部に加熱または冷却により嵌合させることで、前記高温側伝熱部材と前記低温側伝熱部材とを接続させるよう構成されたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の実施形態における極低温装置は、極低温冷凍機と、前記実施形態に記載の極低温装置の伝熱部材接続構造が適用されて構成されて、前記極低温冷凍機と被冷却物とを熱的に接続する伝熱部材と、前記極低温冷凍機、前記被冷却物及び前記伝熱部材を格納する真空容器と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、伝熱部材の接続部の接触熱抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る極低温装置の伝熱材接続構造が適用された伝熱部材を有する極低温装置の全体構成を示す概略断面。
図2図1の伝熱部材を示す断面図。
図3図2の伝熱部材の変形形態を示す断面図。
図4】第2実施形態に係る極低温装置の伝熱部材接続構造が適用された伝熱部材を示す断面図。
図5】第3実施形態に係る極低温装置の伝熱部材接続構造が適用された伝熱部材を構成する基材を含む材料の熱膨張率を示すグラフ。
図6】伝熱部材の接触面における微細な空隙を説明する概念図。
図7】伝熱部材の接触面に接触伝熱媒体を介在させた状態を示す概念図。
図8】伝熱部材をボルト締結により接合したときに生ずるうねりについて説明する概念図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図3
図1は、第1実施形態に係る極低温装置の伝熱材接続構造が適用された伝熱部材を有する極低温装置の全体構成を示す概略断面である。この図1に示す極低温装置10は、被冷却物としての超電導コイル11及び熱シールド14を、極低温冷凍機12により77K以下の極低温に伝導冷却するものであり、真空容器13、上記極低温冷凍機12、上記熱シールド14、第1伝熱部材15及び第2伝熱部材16を有して構成される。
【0017】
真空容器13は、極低温冷凍機12を支持すると共に熱シールド14を格納し、この熱シールド14内に超電導コイル11を格納する。極低温冷凍機12は、ギフォード・マクマフォン(GM)冷凍機またはパルスチューブ冷凍機等が用いられ、20K~50K程度の寒冷を発生する第1冷却ステージ21と、3K~30K程度の寒冷を発生する第2冷却ステージ22とを有する。第1冷却ステージ21が真空容器13内に配置され、第2冷却ステージ22が熱シールド14内に配置される。
【0018】
第1伝熱部材15は、極低温冷凍機12の第1冷却ステージ21と被冷却物としての熱シールド14とを熱的に接続し、この熱シールド14が第1冷却ステージ21により、第1伝熱部材15を介して極低温(20K~50K程度)に伝導冷却される。また、第2伝熱部材16は、極低温冷凍機12の第2冷却ステージ22と被冷却物としての超電導コイル11とを熱的に接続し、この超電導コイル11が第2冷却ステージ22により、第2伝熱部材16を介して極低温(3K~30K程度)に伝導冷却される。
【0019】
以下、第1~第3実施形態では、第2伝熱部材16の構成及び作用効果ついて説明するが、第1伝熱部材15についても第2伝熱部材16と同様な構成であってもよく、その場合、第1伝熱部材15についても第2伝熱部材16と同様な作用効果を奏する。
【0020】
第2伝熱部材16は、極低温冷凍機12の第2冷却ステージ22に熱的に接続される低温側伝熱部材17と、超電導コイル11に熱的に接続される高温側伝熱部材18とを有して構成される。図2に示すように、これらの低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18の一方、例えば高温側伝熱部材18に凸部23が形成され、低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18の他方、例えば低温側伝熱部材17の剛性を有する端部27(後述)に、凹部としての孔24が形成される。凹部は、図2に示すように、端部27を貫通する孔に限らず、図3に示すように、端部27の例えば底部を刳り抜く穴25であってもよい。これらの孔24及び穴25は、高温側伝熱部材18の凸部23の形状に沿う形状、例えば凸部23を嵌合する形状に形成される。
【0021】
高温側伝熱部材18における凸部23は、高温側伝熱部材18の基材の削り出し加工による形成が好適であるが、凸部23を高温側伝熱部材18の本体に対し別部材として製作し、この凸部23を高温側伝熱部材18の本体に溶接により接合、またはボルト等により締結してもよい。凸部23を含む高温側伝熱部材18を構成する基材は、特に極低温で熱伝導率が高い材料が望ましく、例えば高純度アルミニウム(純度99.99%以上)を含む純アルミニウム(純度99.5%以上)、または高純度銅(純度99.96%以上)を含む純銅(純度99.9%以上)が用いられる。
【0022】
低温側伝熱部材17は、可撓性部材26の一端に剛性を有す端部27が、他端に端部28が、それぞれ例えば溶接により接合されて構成される。可撓性部材26は、極低温冷凍機12と被冷却物である超電導コイル11との熱収縮差により生ずる熱応力を緩和させるために設けられたものであり、複数の箔または細線から構成される。また、低温側伝熱部材17の端部28は、極低温冷凍機12の第2冷却ステージ22に取り付けられる。
【0023】
可撓性部材26を構成する基材は、極低温で熱伝導率が高い材料が望ましく、例えば高純度アルミニウム(純度99.99%以上)を含む純アルミニウム(純度99.5%以上)の箔もしくは細線、高純度銅(純度99.96%以上)を含む純銅(純度99.9%以上)の箔もしくは細線、または炭素繊維からなる箔もしくは細線が用いられる。また、可撓性部材26は、上述のアルミニウム、銅、炭素繊維のそれぞれの箔もしくは細線を並列に使用して構成されてもよい。
【0024】
低温側伝熱部材17の端部27及び28を構成する基材も、極低温で熱伝導率が高い材料が望ましく、例えば高純度アルミニウム(純度99.99%以上)を含む純アルミニウム(純度99.5%以上)、または高純度銅(純度99.96%以上)を含む純銅(純度99.9%以上)が好ましい。
【0025】
ところで、第2伝熱部材16の室温での製造時における高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17の同一温度条件下で、低温側伝熱部材17の孔24または穴25の内径は、高温側伝熱部材18の凸部23の外径以下の寸法に設定される。そして、凸部23を孔24または穴25に加熱または冷却により嵌合させることで、低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18とが接続されて第2伝熱部材16が製造される。つまり、高温側伝熱部材18の凸部23を低温に冷却し、熱収縮により凸部23の外径を小さくした状態で、この凸部23を低温側伝熱部材17の孔24または穴25に嵌合させる。あるいは、低温側伝熱部材17の端部27を加熱し、熱膨張により孔24または穴25の内径を大きくした状態で、この孔24または穴25に高温側伝熱部材18の凸部23を嵌合させる。
【0026】
従って、第2伝熱部材16の接続部としての低温側伝熱部材17の孔24または穴25と高温側伝熱部材18の凸部23は、低温側伝熱部材17の端部27の熱応力によって、凸部23の側面(外周面)に対し均一な圧力を作用した状態となる。これにより、低温側伝熱部材17の端部27と高温側伝熱部材18の凸部23とは、ボルトや溶接、ハンダ付け等を用いることなく接続される。
【0027】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)第2伝熱部材16を構成する高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17は、一方(例えば高温側伝熱部材18)に凸部23が、他方(例えば低温側伝熱部材17)の端部27に、凸部23の形状に沿う形状の孔24または穴25がそれぞれ形成され、第2伝熱部材16の製造時における同一温度条件下で、孔24または穴25の内径が凸部23の外径以下に設定される。そして、凸部23を孔24または穴25に加熱または冷却により嵌合させることで、高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17とが接続されて第2伝熱部材16が製造される。
【0028】
従って、高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17との接続状態では、極低温冷凍機12による冷却前であっても、接続部である凸部23と孔24または穴25との接触面に熱応力による均一な圧力が作用しているので、上記接触面では接触面積を十分に確保でき、接触熱抵抗を低減させることができる。この結果、極低温冷凍機12と超電導コイル11との温度差を低く維持することができる。
【0029】
(2)高温側伝熱部材18の凸部23を低温側伝熱部材17の孔24または穴25に、加熱または冷却により嵌合させて低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18とを接続し、第2伝熱部材16を製造している。従って、第2伝熱部材16は、極低温冷凍機12の運転による全ての温度域において、接続部である凸部23と孔24または穴25との接触面に、熱応力による均一な圧力が作用している。この結果、第2伝熱部材16は、低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18とに脱落等を発生させることなく、極低温冷凍機12の運転による全温度域で、接続部における接触面の接触熱抵抗を低減させることができる。
【0030】
[B]第2実施形態(図4
図4は、第2実施形態に係る極低温装置の伝熱部材接続構造が適用された伝熱部材を示す断面図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0031】
本第2実施形態の極低温装置30(図1)の第2伝熱部材32(図4)が第1実施形態と異なる点は、高温側伝熱部材18の凸部23の外周面と低温側伝熱部材17の孔24または穴25(例えば孔24)の内周面との少なくとも一部に、モース硬度2.9未満の柔軟な金属製のメッキ層(金属メッキ層33)が設けられた点である。
【0032】
接触熱抵抗は、基材となる材料が柔らかいほど、ミクロな接触面積が増加して低減される。第2伝熱部材32における高温側伝熱部材18と低温側伝熱部材17がそれぞれ例えばアルミニウムからなる場合のビッカーズ硬度は200~300MPa程度であり、表面の硬さの目安となるモース硬度は2.9とされる。金属メッキ層33は、少なくともアルミニウムよりも柔らかい材料が好ましく、このような材料としては、金、銀、すず、インジウムなどが挙げられる。第2実施形態では、金属メッキ層33は、ビッカーズ硬度が約9MPaであり、モース硬度1.2と最も柔らかいインジウムによって形成されるが、インジウムの他に金、銀、すずなどであってもよい。また、金属メッキ層33の形成方法としては電解メッキが好ましいが、超音波はんだやコールドスプレーなどによる溶着であってもよい。
【0033】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
【0034】
(3)第2伝熱部材32においても、製造時の室温での同一温度条件下で、低温側伝熱部材17の孔24または穴25の内径が高温側伝熱部材18の凸部23の外径以下に設定され、凸部23を孔24または穴25に加熱または冷却により嵌合させることで、低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18とが接続されて第2伝熱部材32が製造される。このため、互いに接触する低温側伝熱材17の孔24または穴25の内周面と高温側伝熱部材18の凸部23の外周面とに熱応力による圧力が生じる。
【0035】
従って、これらの接触面に設けられた金属メッキ層33は、極低温冷凍機12による冷却開始前の上記熱応力による圧力によって低温側伝熱部材17及び高温側伝熱部材18よりも大きく変形し、上記接触面の微細な空隙を埋めることができる。この結果、第2伝熱部材32における低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18との接触面(孔24または穴25と凸部23)の接触面の接触熱抵抗をより一層低減することができる。
【0036】
[C]第3実施形態(図5
図5は、第3実施形態に係る極低温装置の伝熱部材接続構造が適用された伝熱部材を構成する基材を含む材料の熱膨張率を示すグラフである。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0037】
本第3実施形態の極低温装置40(図1)の第2伝熱部材42(図2図3)が第1実施形態と異なる点は、高温側伝熱部材18における凸部43が純銅(純度99.9%以上)にて構成され、低温側伝熱部材17における孔24または穴25が形成される剛性を有する端部47が、純アルミニウム(純度99.5%以上)にて構成された点である。
【0038】
図5に示すように、アルミニウムの熱膨張率(熱収縮率)は銅よりも大きいことが知られている。熱膨張率の大きなアルミニウムで低温側伝熱部材17の剛性を有する端部47を構成することにより、この端部47は、第2伝熱部材42が極低温冷凍機12の運転により冷却されると、高温側伝熱部材18の凸部43に比べて0.1%(1‰)ほど大きく熱収縮しようとする。このため、極低温冷凍機12の運転による第2伝熱部材42の冷却時に、低温側伝熱部材17の端部47の孔24または穴25と高温側伝熱部材18の凸部43の各接触面に、室温時以上の熱応力が発生する。
【0039】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0040】
(4)第2伝熱部材42における高温側伝熱部材18の凸部43が純銅にて構成され、低温側伝熱部材17の端部47が純銅よりも熱膨張率(熱収縮率)の大きな純アルミニウムにて構成されている。このため、端部47の孔24または穴25に凸部43を嵌合させたときの孔24または穴25と凸部43との接触面における熱応力による圧力は、低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18とを接続して第2伝熱部材42を製造する室温の製造時によりも、極低温冷凍機12の運転による第2伝熱部材42の冷却時の方が、純アルミニウム製の端部47の熱収縮により大きくなる。この結果、極低温冷凍機12の運転時において、第2伝熱部材42における低温側伝熱部材17と高温側伝熱部材18との接続部(端部47の孔24または穴25と凸部43)の接触面の接触熱抵抗をより一層低減することができる。
【0041】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10…極低温装置、11…超電導コイル(被冷却物)、12…極低温冷凍機、13…真空容器、14…熱シールド(被冷却物)、15…第1伝熱部材、16…第2伝熱部材、17…低温側伝熱部材、18…高温側伝熱部材、23…凸部、24…孔(凹部)、25…穴(凹部)、27…端部、30…極低温装置、32…第2伝熱部材、33…金属メッキ層、40…極低温装置、42…第2伝熱部材、43…凸部、47…端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8