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特開2024-58087溶接ロボットの制御方法および溶接システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058087
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】溶接ロボットの制御方法および溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B23K9/12 331K
B23K9/12 C
B23K9/12 350Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165228
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】屋嘉比 圭太
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
(57)【要約】
【課題】複数の溶接線の接続部において溶接欠陥の発生を抑制できる溶接ロボットの制御方法および溶接システムを提供する。
【解決手段】第1溶接ロボット10Aおよび第2溶接ロボット10Bにより被溶接物WMの溶接が行われる。被溶接物WMにおける複数の溶接線GP1、GP2、GP3が互いに接続された接続部CPを第1溶接ロボット10Aおよび第2溶接ロボット10Bが溶接する際に、第1溶接ロボット10Aおよび第2溶接ロボット10Bの各々と被溶接物WMとの間に生じる複数のアークA1、A2により接続部CPにて1つの溶融プールが形成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶接ロボットにより被溶接物の溶接を行う溶接ロボットの制御方法であって、
前記被溶接物における複数の溶接線が互いに接続された接続部を前記複数の溶接ロボットが溶接する際に、前記複数の溶接ロボットの各々と前記被溶接物との間に生じる複数のアークにより前記接続部にて1つの溶融プールを形成する、溶接ロボットの制御方法。
【請求項2】
前記複数の溶接ロボットは、所定のタイミングにおいて互いに異なる前記溶接線を溶接する、請求項1に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項3】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記第2溶接ロボットが前記接続部に待機するステップと、
前記第1溶接ロボットが前記接続部を溶接するときに前記第2溶接ロボットが前記接続部において溶接を開始するステップと、
前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが前記接続部を溶接した後に、前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが互いに異なる前記溶接線に沿って前記被溶接物を溶接するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項4】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが互いに異なる溶接線から溶接を開始するステップと、
前記第1溶接ロボットが前記接続部にて前記被溶接物を溶接する際に、前記第2溶接ロボットによる前記接続部における前記被溶接物の溶接が終了するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項5】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記接続部に至るまで前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが互いに同じ前記溶接線にて溶接を開始するステップと、
前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが前記接続部を溶接した後に、前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが互いに異なる前記溶接線に沿って前記被溶接物を溶接するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項6】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが互いに異なる前記溶接線から溶接を開始するステップと、
前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが前記接続部を溶接した後に、前記第1溶接ロボットと前記第2溶接ロボットとが互いに同じ前記溶接線に沿って前記被溶接物を溶接するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項7】
前記複数の溶接ロボットは2台の前記溶接ロボットのみからなる、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項8】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記第1溶接ロボットの動作開始時に、前記第1溶接ロボットの動作開始を示す信号を前記第2溶接ロボットに通知するステップと、
前記第1溶接ロボットの動作開始を示す前記信号の通知に基づいて、前記第2溶接ロボットが動作を開始するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項9】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記第1溶接ロボットの前記接続部への移動時間を示す信号を前記第2溶接ロボットに通知するステップと、
前記第1溶接ロボットの前記接続部への移動時間を示す前記信号の通知に基づいて、前記第2溶接ロボットが溶接を開始するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項10】
前記複数の溶接ロボットは第1溶接ロボットと第2溶接ロボットとを含み、
前記第1溶接ロボットの前記接続部への移動時間を示す信号を前記第2溶接ロボットに通知するステップと、
前記第1溶接ロボットの前記接続部への移動時間を示す前記信号の通知に基づいて、前記第2溶接ロボットの前記接続部への移動速度を算出するステップと、をさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項11】
前記複数の溶接ロボットの各々と前記被溶接物との間に生じる前記複数のアークにより前記接続部にて1つの溶融プールを形成するように、前記複数のアークを発生させるために供給する電力を制御し、溶接時における前記複数の溶接ロボットの姿勢を制御するステップをさらに備えた、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項12】
前記被溶接物は、6mm以上の厚みを有する、請求項1または請求項2に記載の溶接ロボットの制御方法。
【請求項13】
被溶接物の溶接を行う複数の溶接ロボットと、
前記被溶接物における複数の溶接線が互いに接続された接続部を前記複数の溶接ロボットが溶接する際に、前記複数の溶接ロボットの各々と前記被溶接物との間に生じる複数のアークにより前記接続部にて1つの溶融プールを形成するように前記複数の溶接ロボットを制御するコントローラと、を備えた、溶接システム。
【請求項14】
前記複数の溶接ロボットの各々は、
マニピュレータと、
溶接用ワイヤと前記被溶接物との間に電力を供給してアークを発生させる溶接電源と、をさらに備え、
前記コントローラは、前記複数の溶接ロボットの各々と前記被溶接物との間に生じる前記複数のアークにより前記接続部にて1つの溶融プールを形成するように、前記マニピュレータの動作を制御し、かつ前記溶接用ワイヤと前記被溶接物との間に供給する電力を調整するように前記溶接電源を制御する、請求項13に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接ロボットの制御方法および溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-140070号公報(特許文献1)には、1台の溶接ロボットシステムによる単電極の移動に他の溶接ロボットシステムによる単電極の移動を追従させる技術が開示されている。特許文献1では、1台の溶接ロボットシステムの単電極と他の溶接ロボットシステムによる単電極とが、同一溶接線に対して同一方向に溶接を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-140070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら互いに接続され、かつ分岐した複数の溶接線の溶接においては、当該接続部において溶金の溶け込み不足による欠陥が発生しやすいという問題がある。
【0005】
本開示の目的は、複数の溶接線の接続部において溶接欠陥の発生を抑制できる溶接ロボットの制御方法および溶接システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の溶接ロボットの制御方法は、複数の溶接ロボットにより被溶接物の溶接を行う溶接ロボットの制御方法である。この溶接ロボットの制御方法においては、被溶接物における複数の溶接線が互いに接続された接続部を複数の溶接ロボットが溶接する際に、複数の溶接ロボットの各々と被溶接物との間に生じる複数のアークにより接続部にて1つの溶融プールが形成される。
【0007】
本開示の溶接システムは、複数の溶接ロボットと、コントローラとを備える。複数の溶接ロボットは、被溶接物の溶接を行う。コントローラは、被溶接物における複数の溶接線が互いに接続された接続部を複数の溶接ロボットが溶接する際に、複数の溶接ロボットの各々と被溶接物との間に生じる複数のアークにより接続部にて1つの溶融プールを形成するように複数の溶接ロボットを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の溶接線の接続部において溶接欠陥の発生を抑制できる溶接ロボットの制御方法および溶接システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1における溶接ロボットの構成を示す図である。
図2】本開示の実施形態1における溶接システムの機能ブロックの一の例を示す図である。
図3】本開示の実施形態1における溶接システムの機能ブロックの他の例を示す図である。
図4】被溶接物の一の例における構成を示す平面図(A)および斜視図(B)である。
図5】被溶接物の他の例における構成を示す平面図(A)および斜視図(B)である。
図6】本開示の実施形態1における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。
図7】本開示の実施形態1における溶接ロボットの動作を説明するための図である。
図8】比較例における溶接ロボットの動作を説明するための図である。
図9図8に示す比較例における溶接ロボットの動作で溶接された被溶接物の図8(C)のIX-IX線に沿う断面図である。
図10図7に示す溶接ロボットの動作で溶接された被溶接物の断面図である。
図11】本開示の実施形態2における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。
図12】本開示の実施形態3における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。
図13】本開示の実施形態3における溶接ロボットの動作を説明するための図である。
図14】本開示の実施形態4における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。
図15】溶接ロボットの動作の他の例1を説明するための図である。
図16】溶接ロボットの動作の他の例2を説明するための図である。
図17】溶接ロボットの動作の他の例3を説明するための図である。
図18】溶接経路の他の例を示す図である。
図19】本開示の溶接ロボットの制御方法により溶接される建設機械用部品の一例として建設機械のメインフレームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0012】
(実施形態1)
<溶接ロボットのシステム>
まず実施形態1に係る溶接ロボットのシステムについて図1図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、本開示の実施形態1における溶接ロボットの構成を示す図である。図2は、本開示の実施形態1における溶接システムの機能ブロックの一の例を示す図である。図3は、本開示の実施形態1における溶接システムの機能ブロックの他の例を示す図である。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態の溶接ロボットのシステムは、複数の溶接ロボットを含む。複数の溶接ロボットは、たとえば第1溶接ロボット10Aと、第2溶接ロボット10Bとを含む。
【0015】
本実施形態においては、説明の便宜上、溶接ロボットのシステムが2台の溶接ロボット10A、10Bを含む例を示している。しかし、溶接ロボットのシステムは3台以上の溶接ロボットを含んでいてもよい。
【0016】
第1溶接ロボット10Aは、第1マニピュレータ1Aと、第1溶接トーチ2Aとを有している。第1マニピュレータ1Aは、互いに回転可能に連結された複数のアーム部材を有しており、台座に固定されている。第1溶接トーチ2Aは、第1マニピュレータ1Aの先端に保持されている。第1溶接トーチ2Aは、たとえば単電極溶接トーチである。
【0017】
第2溶接ロボット10Bは、第2マニピュレータ1Bと、第2溶接トーチ2Bとを有している。第2マニピュレータ1Bは、互いに回転可能に連結された複数のアーム部材を有しており、台座に固定されている。第2溶接トーチ2Bは、第2マニピュレータ1Bの先端に保持されている。第2溶接トーチ2Bは、たとえば単電極溶接トーチである。
【0018】
被溶接物WMは、台Sの上に載置されている。また実用上の溶接システムでは、マニピュレータ1A、1Bの各々を搭載する台座の位置を移動させる移動装置、被溶接物WMを搭載してその姿勢を変えるポジショナ、被溶接物WMを搭載するための冶具などが設けられることがある。
【0019】
図2に示されるように、第1溶接ロボット10Aは、第1ワイヤ送給装置3Aと、第1溶接電源4Aとをさらに有している。第1ワイヤ送給装置3Aは、たとえば第1マニピュレータ1Aに取り付けられている。第1ワイヤ送給装置3Aは、第1溶接トーチ2Aに溶接用ワイヤ11A(図1)を供給する。
【0020】
第1溶接トーチ2Aは、第1ワイヤ送給装置3Aから供給された溶接用ワイヤ11Aを先端部から送出する。第1溶接電源4Aは、溶接用ワイヤ11Aに溶接電流または溶接電圧を供給することによって、第1溶接トーチ2Aの先端部から送出された溶接用ワイヤ11Aと被溶接物WM(図1)との間にアークを発生させる。これにより第1溶接ロボット10Aにより被溶接物WMが溶接される。
【0021】
第2溶接ロボット10Bは、第2ワイヤ送給装置3Bと、第2溶接電源4Bとをさらに有している。第2ワイヤ送給装置3Bは、たとえば第2マニピュレータ1Bに取り付けられている。第2ワイヤ送給装置3Bは、第2溶接トーチ2Bに溶接用ワイヤ11B(図1)を供給する。
【0022】
第2溶接トーチ2Bは、第2ワイヤ送給装置3Bから供給された溶接用ワイヤ11Bを先端部から送出する。第2溶接電源4Bは、溶接用ワイヤ11Bに溶接電流または溶接電圧を供給することによって、第2溶接トーチ2Bの先端部から送出された溶接用ワイヤ11Bと被溶接物WMとの間にアークを発生させる。これにより第2溶接ロボット10Bにより被溶接物WMが溶接される。
【0023】
本実施形態における溶接ロボットのシステムは、第1ロボットコントローラ20Aと、第2ロボットコントローラ20Bとをさらに有している。
【0024】
第1ロボットコントローラ20Aは、演算部21Aと、通信部22Aと、記憶部23Aとを有している。記憶部23Aは、被溶接物WMに応じた溶接経路のデータを入力されており記憶している。記憶部23Aは、溶接経路の始点および終点の各々の座標を記憶している。記憶部23Aは、溶接時の溶接ロボットの姿勢を入力されており、記憶している。溶接ロボットは、あらかじめ定めた姿勢により、溶接経路に沿って溶接を行なってもよい。溶接経路上の各座標ごとに姿勢を定めておき、その姿勢に従って制御が行なわれてもよい。溶接ロボットの姿勢により溶金形状が異なってくるので、溶接条件の一つとして溶接ロボットの姿勢を事前に決めておくことが好ましい。記憶部23Aは、溶接経路に屈曲点などがある場合には、その屈曲点の座標を記憶していてもよい。また記憶部23Aは、溶接経路上のその他の点の座標を記憶していてもよい。記憶部23Aは、第1溶接ロボット10Aにおける第1溶接トーチ2Aの移動速度を入力されており記憶している。
【0025】
通信部22Aは、外部の装置とたとえば無線で通信する。通信部22Aは、無線で信号を送信および受信する。通信部22Aは、外部の装置と有線で通信する装置であってもよい。
【0026】
演算部21Aは、記憶部23Aに記憶されたデータに基づいて第1マニピュレータ1Aおよび第1溶接電源4Aの動作を制御する。演算部21Aは、記憶部23Aに記憶されたデータと通信部22Aにて受信した信号との双方に基づいて第1マニピュレータ1Aおよび第1溶接電源4Aの動作を制御してもよい。また演算部21Aは、記憶部23Aにデータを記憶させるように制御してもよい。また演算部21Aは、外部へ信号を送信するように通信部22Aを制御してもよい。
【0027】
演算部21Aは、記憶部23Aに記憶された溶接経路の始点および終点の座標データから、始点から終点までの軌跡距離を算出する。演算部21Aは、算出された軌跡距離と記憶部23Aに記憶された第1溶接トーチ2Aの移動速度とから第1溶接トーチ2Aの移動時間を算出する。
【0028】
演算部21Aは、第1溶接ロボット10Aにおける進捗率を算出する。第1溶接ロボット10Aにおける進捗率は、第1溶接ロボット10Aにおける動作開始からの経過時間を第1溶接トーチ2Aの移動時間で除することにより算出される。つまり第1溶接ロボット10Aにおける進捗率は、(第1溶接ロボット10Aにおける動作開始からの経過時間)/(第1溶接トーチ2Aの移動時間)で表わされる。
【0029】
演算部21Aは、算出した第1溶接ロボット10Aにおける進捗率から、(その瞬間の)第1溶接ロボット10Aの位置および姿勢を算出する。演算部21Aは、算出した第1溶接ロボット10Aの位置および姿勢に基づいて第1マニピュレータ1Aの動作を制御する。
【0030】
また演算部21Aは、第1溶接ロボット10Aにおける溶接経路の始点または終点に到達した旨の判定結果に基づいて、第1溶接電源4Aを制御する。具体的には演算部21Aは、第1溶接ロボット10Aにおける溶接経路の始点に到達したと判定すると、第1溶接電源4Aが溶接用ワイヤ11Aに溶接電流または溶接電圧を供給するように第1溶接電源4Aを制御する。また演算部21Aは、第1溶接ロボット10Aにおける溶接経路の終点に到達したと判定すると、第1溶接電源4Aによる溶接用ワイヤ11Aへの溶接電流または溶接電圧の供給を停止するように第1溶接電源4Aを制御する。なお演算部21Aは、第1溶接ロボット10Aが溶接経路の始点または終点に到達したタイミング以外のタイミングで第1溶接電源4Aを制御してもよい。
【0031】
以上のように第1ロボットコントローラ20Aは、第1溶接ロボット10Aの動作(第1マニピュレータ1Aおよび第1溶接電源4Aの動作)を制御する。
【0032】
第2ロボットコントローラ20Bは、演算部21Bと、通信部22Bと、記憶部23Bとを有している。記憶部23Bは、被溶接物WMに応じた溶接経路のデータを入力されており記憶している。記憶部23Bは、溶接経路の始点および終点の各々の座標を記憶している。記憶部23Bは、溶接経路に屈曲点などがある場合には、その屈曲点の座標を記憶していてもよい。また記憶部23Bは、溶接経路上のその他の点の座標を記憶していてもよい。記憶部23Bは、第2溶接ロボット10Bにおける第2溶接トーチ2Bの移動速度を入力されており記憶している。
【0033】
通信部22Bは、外部の装置とたとえば無線で通信する。通信部22Bは、無線で信号を送信および受信する。通信部22Bは、外部の装置と有線で通信する装置であってもよい。
【0034】
演算部21Bは、記憶部23Bに記憶されたデータに基づいて第2マニピュレータ1Bおよび第2溶接電源4Bの動作を制御する。演算部21Bは、記憶部23Bに記憶されたデータと通信部22Bにて受信した信号との双方に基づいて第2マニピュレータ1Bおよび第2溶接電源4Bの動作を制御してもよい。また演算部21Bは、記憶部23Bにデータを記憶させるように制御してもよい。また演算部21Bは、外部へ信号を送信するように通信部22Bを制御してもよい。
【0035】
演算部21Bは、記憶部23Bに記憶された溶接経路の始点および終点の座標データから、始点から終点までの軌跡距離を算出する。演算部21Bは、算出された軌跡距離と記憶部23Bに記憶された第2溶接トーチ2Bの移動速度とから第2溶接トーチ2Bの移動時間を算出する。
【0036】
演算部21Bは、第2溶接ロボット10Bにおける進捗率を算出する。第2溶接ロボット10Bにおける進捗率は、第2溶接ロボット10Bにおける動作開始からの経過時間を第2溶接トーチ2Bの移動時間で除することにより算出される。つまり第2溶接ロボット10Bにおける進捗率は、(第2溶接ロボット10Bにおける動作開始からの経過時間)/(第2溶接トーチ2Bの移動時間)で表わされる。
【0037】
演算部21Bは、算出した第2溶接ロボット10Bにおける進捗率から、(その瞬間の)第2溶接ロボット10Bの位置および姿勢を算出する。演算部21Bは、算出した第2溶接ロボット10Bの位置および姿勢に基づいて第2マニピュレータ1Bの動作を制御する。
【0038】
また演算部21Bは、第2溶接ロボット10Bにおける溶接経路の始点または終点に到達した旨の判定結果に基づいて、第2溶接電源4Bを制御する。具体的には演算部21Bは、第2溶接ロボット10Bにおける溶接経路の始点に到達したと判定すると、第2溶接電源4Bが溶接用ワイヤ11Bに溶接電流または溶接電圧を供給するように第2溶接電源4Bを制御する。また演算部21Bは、第2溶接ロボット10Bにおける溶接経路の終点に到達したと判定すると、第2溶接電源4Bによる溶接用ワイヤ11Bへの溶接電流または溶接電圧の供給を停止するように第2溶接電源4Bを制御する。
【0039】
以上のように第2ロボットコントローラ20Bは、第2溶接ロボット10Bの動作(第2マニピュレータ1Bおよび第2溶接電源4Bの動作)を制御する。
【0040】
第1ロボットコントローラ20Aの通信部22Aと第2ロボットコントローラ20Bの通信部22Bとが互いに通信する。
【0041】
第1ロボットコントローラ20Aおよび第2ロボットコントローラ20Bの各々は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部23A、23Bの各々は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などのメモリであってもよい。
【0042】
なお図2においては、第1溶接ロボット10Aおよび第2溶接ロボット10Bのそれぞれに対応して第1ロボットコントローラ20Aおよび第2ロボットコントローラ20Bが別々に設けられている。
【0043】
なお図3に示されるように、第1溶接ロボット10Aおよび第2溶接ロボット10Bに共通して1つのロボットコントローラ20が設けられてもよい。この場合、1つのロボットコントローラ20は、演算部21A、21Bと、通信部22A、22Bと、記憶部23B、23Bとを有している。この場合、演算部21Aと演算部21Bとは、互いに別々のCPUからなっていてもよく、また同一CPU内の別タスクまたは別スレッドであってもよい。
【0044】
上記以外の図3の構成は図2の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を繰り返さない。
【0045】
<被溶接物の構成>
図4および図5のそれぞれは、被溶接物の一の例および他の例における構成を示す平面図(A)および斜視図(B)である。
【0046】
図4(A)、(B)に示されるように、被溶接物WMは、母材となる底板WM1と、壁板WM2、WM3、WM4とを有している。底板WM1の表面に壁板WM2、WM3、WM4の各々が配置されている。壁板WM2と壁板WM3との間には開先溶接部GP1が設けられている。壁板WM2と壁板WM4との間には開先溶接部GP2が設けられている。壁板WM3と壁板WM4との間には開先溶接部GP3が設けられている。なお開先溶接部GP1、GP2、GP3の各々は図4(A)中において破線で示されている。
【0047】
これらの開先溶接部GP1、GP2、GP3および接続部CPにおいて底板WM1の表面が露出している。接続部CPは、複数の溶接線GP1、GP2、GP3が交差する部分である。開先溶接部GP1、GP2、GP3および接続部CPは、溶接箇所を構成している。この溶接箇所に沿って溶接することにより、底板WM1に対して壁板WM2、WM3、WM4の各々を溶接で接合することができる。
【0048】
開先溶接部GP1、GP2、GP3の各々は、溶接する際の溶接線となる。複数の溶接線GP1、GP2、GP3は、接続部CPにより互いに接続されている。複数の溶接線GP1、GP2、GP3および接続部CPは、平面視において、たとえばT字型の三叉路を構成している。平面視とは、底板WM1の表面に対して直交する方向から見る視点を意味する。
【0049】
底板WM1に対して壁板WM2、WM3、WM4の各々を溶接する場合には、複数の溶接線GP1、GP2、GP3および接続部CPにより構成される三叉路の溶接線に複数の溶接経路が設定される。
【0050】
複数の溶接経路は、第1溶接経路と、第2溶接経路とを含む。第1溶接経路は、第1溶接ロボット10Aにより溶接される経路である。第2溶接経路は、第2溶接ロボット10Bにより溶接される経路である。
【0051】
本実施形態の被溶接物WMにおいては、壁板WM3は、たとえば開先溶接部GP1に面する1面のみが開先となっている。また壁板WM4は、たとえば開先溶接部GP2およびGP3の各々に面する2面が開先となっている。
【0052】
図5(A)、(B)に示されるように、被溶接物WMは、図4(A)、(B)に示された被溶接物WMから壁板WM4が省略された構成を有している。図5(A)、(B)に示される被溶接物WMにおいては、壁板WM2の壁面に沿って底板WM1と壁板WM2とを溶接する箇所は隅肉溶接部FW1となる。また壁板WM3の壁面に沿って底板WM1と壁板WM3とを溶接する箇所は隅肉溶接部FW2となる。壁板WM2と壁板WM3との間には開先溶接部GP1が設けられている。開先溶接部GP1および隅肉溶接部FW1、FW2は、接続部CPにより互いに接続されている。
【0053】
開先溶接部GP1、隅肉溶接部FW1、FW2および接続部CPにおいて底板WM1の表面が露出している。開先溶接部GP1、隅肉溶接部FW1、FW2および接続部CPは、溶接箇所を構成している。この溶接箇所に沿って溶接することにより、底板WM1に対して壁板WM2、WM3の各々を溶接で接合することができる。
【0054】
開先溶接部GP1および隅肉溶接部FW1、FW2の各々は、溶接する際の溶接線となる。複数の溶接線GP1、FW1、FW2は、接続部CPにより互いに接続されている。複数の溶接線GP1、FW1、FW2および接続部CPは、平面視において、たとえばT字型の三叉路を構成している。
【0055】
なお開先の断面形状はI形、V形、レ形、J形、U形、X形、K形、両面J形のいずれであってもよく、開先の断面形状は特に限定されない。
【0056】
<溶接ロボットの制御方法>
次に、溶接ロボットの制御方法について説明する。
【0057】
図6は、本開示の実施形態1における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。図7は、本開示の実施形態1における溶接ロボットの動作を説明するための図である。
【0058】
図7(A)に示されるように、溶接動作が開始されると、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aは、溶接経路の点P1へ移動する(ステップS11:図6)。一方、第2溶接ロボット10Bの第2溶接トーチ2Bは、溶接経路の点P4へ移動し、点P4にて待機する(ステップS21:図6)。点P4は、たとえば接続部CPに位置する点である。
【0059】
第1溶接トーチ2Aが点P1へ到達すると、第1溶接ロボット10Aによる溶接が開始される(ステップS12:図6)。なお第1溶接ロボット10Aの溶接開始は、第1溶接トーチ2Aが点P1へ到達した直後に限定されない。第1溶接トーチ2Aが点P1へ到達した後の任意のタイミングで、第1溶接ロボット10Aの溶接が開始されてもよい。点P1は、たとえば図4(A)における開先溶接部(溶接線)GP1に位置する点である。なお第1溶接トーチ2Aが点P1へ到達するとは、点P1の真上に第1溶接トーチ2Aまたは溶接用ワイヤ11Aが位置することも含む。
【0060】
第1溶接ロボット10Aによる溶接の開始は、図2に示される演算部21Aが第1溶接電源4Aを制御し、第1溶接電源4Aが溶接用ワイヤ11Aに溶接電流または溶接電圧を供給することにより行なわれる。これにより溶接用ワイヤ11Aと被溶接物WMとの間に電力が供給されてアークA1が発生する。このアークA1により底板WM1に壁板WM2およびWM3が溶接される。
【0061】
図7(B)に示されるように、この後、第1溶接トーチ2Aは、溶接経路の点P2へ移動する(ステップS13:図6)。これにより溶接経路に沿って(たとえば図4(A)の開先溶接部(溶接線)GP1に沿って)点P1から点P2に至るまで溶金MM1が形成され、底板WM1に壁板WM2およびWM3が溶接される。点P2は、たとえば図4(A)における接続部CPに位置する点である。
【0062】
第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達したか否かは、以下により判定される。
【0063】
演算部21Aは、記憶部23Aに記憶された第1溶接ロボット10Aにおける溶接経路の始点(点P1)および終点(点P2)の座標データから、始点から終点までの軌跡距離を算出する。演算部21Aは、算出された軌跡距離と記憶部23Aに記憶された第1溶接トーチ2Aの移動速度とから第1溶接トーチ2Aの移動時間を算出する。
【0064】
演算部21Aは、第1溶接ロボット10Aにおける進捗率を算出する。第1溶接ロボット10Aにおける進捗率は、第1溶接ロボット10Aにおける動作開始からの経過時間を第1溶接トーチ2Aの移動時間で除することにより算出される。つまり進捗率は、(第1溶接ロボット10Aにおける動作開始からの経過時間)/(第1溶接トーチ2Aの移動時間)で表わされる。
【0065】
演算部21Aは、算出した第1溶接ロボット10Aにおける進捗率が1.0(=100%)になったことをもって第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達したと判定する。
【0066】
第1溶接トーチ2Aが点P2に到達すると、第1溶接ロボット10Aから第2溶接ロボット10Bへ通知の信号が発せられる(ステップS14:図6)。この通知の信号は、図2に示される第1ロボットコントローラ20Aの通信部22Aにより発せられる。
【0067】
第2溶接ロボット10Bは、上記通知の信号を受信したか否かを判定する(ステップS22:図6)。この通知の信号は、図2に示される第2ロボットコントローラ20Bの通信部22Bにより受信される。通信部22Bにより受信された通知の信号は、演算部21Bにて受信の確認が行われる。これにより第2溶接ロボット10Bは、上記通知の信号を受信したか否かを判定する。
【0068】
第2溶接ロボット10Bが通知の信号を受信していないと演算部22Bが判定した場合、演算部22Bは、上記通知の信号を受信したか否かの判定(ステップS22:図6)を繰り返す。
【0069】
第2溶接ロボット10Bが通知の信号を受信したと演算部22Bが判定した場合、第2溶接ロボット10Bによる溶接が開始される(ステップS23:図6)。溶接の開始は、図2に示される演算部21Bが第2溶接電源4Bを制御し、第2溶接電源4Bが溶接用ワイヤ11Bに溶接電流または溶接電圧を供給することにより行なわれる。これにより溶接用ワイヤ11Bと被溶接物WMとの間に電力が供給されてアークA2が発生する。
【0070】
この際、第1溶接ロボット10Aと被溶接物WMとの間に生じるアークA1と、第2溶接ロボット10Bと被溶接物WMとの間に生じるアークA2とにより、接続部CPにおいて1つの溶融プールが形成される。つまりアークA1により形成される溶融プールとアークA2により形成される溶融プールとが一体となっている。この一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて、被溶接物WMが溶接される。
【0071】
第2溶接ロボット10Bによる溶接は、通信部22Bが通知の信号を受信してから一定時間の経過後に開始されてもよい。ここで一定時間の経過後とは、あくまでアークA1とアークA2とにより一体化された溶融プールを形成可能な時間の範囲内である。
【0072】
図7(C)に示されるように、第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが接続部CPを溶接した後、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aは、溶接経路の点P3へ移動する(ステップS15:図6)。これにより溶接経路に沿って(たとえば図4(A)の開先溶接部(溶接線)GP2に沿って)点P2から点P3に至るまで溶金MM1が形成され、底板WM1に壁板WM2およびWM4が溶接される。点P3は、たとえば図4(A)における開先溶接部(溶接線)GP2に位置する点である。
【0073】
第1溶接トーチ2Aにより点P3までの溶接が終わると、第1溶接ロボット10Aによる溶接が終了する(ステップS16:図6)。溶接の終了は、図2に示される演算部21Aが第1溶接電源4Aを制御し、溶接用ワイヤ11Aへの溶接電流または溶接電圧の供給を停止することにより行なわれる。これにより溶接用ワイヤ11Aと被溶接物WMとの間のアークA1が消滅し、第1溶接ロボット10Aによる溶接が終了する。
【0074】
また第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが接続部CPを溶接した後、第2溶接ロボット10Bの第2溶接トーチ2Bは、溶接経路の点P5へ移動する(ステップS24:図6)。これにより溶接経路に沿って(たとえば図4(A)の開先溶接部(溶接線)GP3に沿って)点P4から点P5に至るまで溶金MM2が形成され、底板WM1に壁板WM3およびWM4が溶接される。点P5は、たとえば図4(A)における開先溶接部(溶接線)GP3に位置する点である。
【0075】
第2溶接トーチ2Bによる点P5までの溶接が終わると、第2溶接ロボット10Bによる溶接が終了する(ステップS25:図6)。第2溶接ロボット10Bによる溶接の終了は、図2に示される演算部21Bが第2溶接電源4Bを制御し、溶接用ワイヤ11Bへの溶接電流または溶接電圧の供給を停止することにより行なわれる。これにより溶接用ワイヤ11Bと被溶接物WMとの間のアークA2が消滅し、溶接が終了する。
【0076】
上記のように本実施形態においては複数の溶接ロボット10A、10Bが用いられる。複数の溶接ロボット10A、10Bの各々と被溶接物WMとの間に生じる複数のアークA1、A2により接続部CPにて1つの溶融プールが形成される。複数の溶接ロボット10A、10Bは、少なくとも第1溶接ロボット10Aと、第2溶接ロボット10Bとを含む。複数の溶接ロボット10A、10Bは、複数の溶接経路に沿って被溶接物WMの溶接を行う。
【0077】
複数の溶接経路は、少なくとも第1溶接経路と、第2溶接経路とを含む。第1溶接経路は、たとえば図7(C)において第1溶接ロボット10Aが溶接する経路である。第1溶接経路は、たとえば実線矢印で示されるように、点P1から接続部CP(点P2)を経由して点P3に到達する経路である。第2溶接経路は、たとえば図7(C)において第2溶接ロボット10Bが溶接する経路である。第2溶接経路は、たとえば図7(C)において破線矢印で示されるように、点P4から点P5に到達する経路である。
【0078】
第1溶接経路と第2溶接経路とは、接続部CPにおいて交差する。第1溶接経路と第2溶接経路とは、互いに異なる経路に沿って延びる部分を有している。このため第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとを含む複数の溶接ロボットは、所定のタイミングにおいて互いに異なる溶接線を溶接する。
【0079】
本実施形態において第1溶接ロボット10Aは、進捗率が1.0に到達したら第2溶接ロボット10Bに通知を送信するが、常時通知を送信し、進捗率が1.0に到達したかの判定は第2溶接ロボット10Bにより行なわれてもよい(制御1)。
【0080】
また進捗率は1.0に限らず、たとえば第1溶接ロボット10Aは点P1から点P3まで移動する時間を算出し、点P2の位置に到達する特定の進捗率に到達したときに、第2溶接ロボット10Bに通知し、第2溶接ロボット10Bが溶接を開始してもよい(制御2)。
【0081】
また上記の制御1および制御2が組み合わされてもよい。
【0082】
また第1溶接ロボット10Aの第1ロボットコントローラ20Aおよび第2溶接ロボット10Bの第2ロボットコントローラ以外のコントローラーで上記判断が行なわれてもよい。
【0083】
<効果>
次に、本実施形態の効果について図8に示す比較例と対比して説明する。
【0084】
図8は、比較例における溶接ロボットの動作を説明するための図である。図8に示されるように、比較例では1台の第1溶接ロボット10Aにより本実施形態と同一の溶接経路が溶接される。
【0085】
図8(A)に示されるように、第1溶接ロボット10Aは、点P1から溶接を開始する。この後、図8(B)に示されるように、第1溶接ロボット10Aは、点P1から点P2を経由して点P3にて溶接を終了する。これにより点P1から点P3に至るまで溶金MM1が形成され、底板WM1に壁板WM2、MW3およびWM4が溶接される。この後、図8(C)に示されるように、第1溶接ロボット10Aは、点P3から点P4へ移動し、再度溶接を開始して点P4から点P5へ移動して点P5で溶接を終了する。これにより点P4から点P5に至るまで溶金MM2が形成され、底板WM1に壁板WM3およびWM4が溶接される。
【0086】
図8に示される比較例のように1台の第1溶接ロボット10Aにより接続部CPのある溶接経路を溶接すると、接続部CP付近において欠陥が発生しやすい。以下、そのことを図8および図9を用いて説明する。
【0087】
図9は、図8に示す比較例における溶接ロボットの動作で溶接された被溶接物の図8(C)のXI-XI線に沿う断面図である。図8(B)に示されるように、第1溶接ロボット10Aにより点P1から接続部CPを経由して点P3まで溶接すると、溶金MM1が点P4から点P5までの経路に流れ込む。この場合、図9(A)に示されるように、接続部CP付近では溶金MM1は、底板WM1の表面を覆うだけで底板WM1と溶け合わない状態で冷えて固まる。
【0088】
この状態から、図8(C)に示されるように第1溶接ロボット10Aにより点P4から点P5まで溶接が行われると、図9(B)に示されるように、溶金MM2は、冷え固まった溶金MM1の一部と溶け合うように形成される。しかし接続部CP付近において、溶金MM2と底板WM1との間には、冷え固まった溶金MM1が存在する。このため溶金MM2は、底板WM1の表面を溶かしきれない。これにより接続部CP付近において溶金MM1、MM2のいずれもが底板WM1と溶け合わないという欠陥が発生しやすい。
【0089】
これに対して本実施形態においては図7(B)に示されるように、第1溶接ロボット10Aと被溶接物WMとの間に生じるアークA1と、第2溶接ロボット10Bと被溶接物WMとの間に生じるアークA2とにより、接続部CPにおいて1つの溶融プールが形成される。このため図10(A)に示されるように、接続部CP付近において溶金MM1が底板WM1に覆いかぶさる前に溶金MM2が生成され始める。これにより溶金MM1が底板WM1に覆いかぶさって冷えて固まるという現象が避けられる。これにより溶金MM1、MM2は互いに溶け合うとともに、底板WM1の表面とも溶け合う。このため接続部CP付近において、溶金MM1、MM2と底板WM1とが溶け合わないという欠陥の発生を抑制することができる。
【0090】
また本実施形態においては図7(C)に示されるように、第1溶接経路と第2溶接経路とは、互いに異なる経路に沿って延びる部分を有している。このような溶接経路において上記のように欠陥の発生を抑制することができる。
【0091】
(実施形態2)
本実施形態の溶接ロボットの制御方法においては、図7に示されるように第1溶接トーチ2Aが点P2に到達するまでの残り移動時間に基づいて第2溶接ロボット10Bによる溶接が開始される。以下、本実施形態の溶接ロボット10A、10Bの制御方法を図7および図11を用いて説明する。
【0092】
図11は、本開示の実施形態2における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。図7に示されるように、本実施形態においては、溶接動作が開始されると、実施形態1と同様、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aが点P1(溶接開始点)に移動する(ステップS11:図11)。一方、第2溶接ロボット10Bの第2溶接トーチ2Bは、溶接経路の点P4へ移動し、点P4にて待機する(ステップS21:図11)。この後、第1溶接ロボット10Aによる溶接が開始される(ステップS12:図11)。この溶接が開始された後、第1溶接トーチ2Aは点P1から点P2へ移動を開始する(ステップS13:図11)。第1溶接トーチ2Aの移動が開始された後、第1溶接ロボット10Aは、第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間を第2溶接ロボット10Bへ常時通知する(ステップS14a:図11)。
【0093】
第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間は、図2に示される演算部21Aにより算出される。演算部21Bは、記憶部23Aに記憶された点P1から点P2へ到達するまでの移動時間から、演算部21Aが算出した現時点での移動時間を減ずることにより点P2に到達するまでの残り移動時間を算出する。
【0094】
演算部21Aにより算出された残り移動時間の信号は、通信部22Aにより第2溶接ロボット10Bの通信部22Bへ送信される。残り移動時間の信号の通知は、第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達するまで常時行われる。
【0095】
この後、第1溶接ロボット10Aは、第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達したか否かを判定する(ステップS14b:図11)。第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達したか否かは、図2に示される演算部21Aが上記により算出された残り移動時間が0(ゼロ)か否かにより判定される。
【0096】
第1溶接ロボット10Aの演算部22Aが、残り移動時間が0ではないと判定した場合、第1溶接ロボット10Aは、引き続き、第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間を第2溶接ロボット10Bへ常時通知する(ステップS14a)。
【0097】
第1溶接ロボット10Aの演算部22Aが、残り移動時間が0ではあると判定した場合、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aは、溶接経路の点P3へ移動する(ステップS15:図11)。第1溶接トーチ2Aが点P3に到達し、第1溶接トーチ2Aにより点P3までの溶接が終わると、第1溶接ロボット10Aによる溶接が終了する(ステップS16:図11)。
【0098】
第2溶接ロボット10Bは、上記残り移動時間の信号を受信すると、受信した残り移動時間の信号から残り移動時間が0(ゼロ)か否かを判定する(ステップS22a:図11)。この残り移動時間の信号は、図2に示される第2ロボットコントローラ20Bの通信部22Bにより受信される。通信部22Bにより受信された残り移動時間の信号は、演算部21Bにて0(ゼロ)か否かの確認が行われる。これにより第2溶接ロボット10Bは、上記残り移動時間が0(ゼロ)か否かを判定する。
【0099】
第2溶接ロボット10Bの演算部22Bが、残り移動時間が0ではないと判定した場合、演算部22Bは、常時受信する残り移動時間の信号に基づいて残り移動時間が0か否かの判定(ステップS22a)を繰り返す。
【0100】
第2溶接ロボット10Bの演算部22Bが残り移動時間が0であると判定した場合、第2溶接ロボット10Bによる点P4での溶接が開始される(ステップS23:図11)。なお第2溶接ロボット10Bは、第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとにより同一溶融プールが形成される範囲内で残り移動時間=0の前後で溶接を開始してもよい。この後、図6に示される実施形態1と同様に、第2溶接トーチ2Bが点P4から点P5へ移動し(ステップS24:図11)、第2溶接トーチ2Bが点P5へ到達した時点で第2溶接ロボット10Bによる溶接が終了する(ステップS25:図11)。
【0101】
なお本実施形態における上記以外の制御方法については実施形態1の制御方法と同様であるため、同一のステップについては同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0102】
なお本実施形態において、第1溶接ロボット10Aの演算部22Aが残り移動時間が0である判定をした場合について説明したが、残り移動時間の判定は第2溶接ロボット10Bだけで実施されてもよい。また第2溶接ロボット10Bは第1溶接ロボット10Aからの通知を待つのみで、残り移動時間が0になったら第1溶接ロボット10Aが通知してもよい。また残り移動時間が0になった場合に限らず、たとえば第1溶接ロボット10Aが点P1から点P3までの移動時間を算出し、点P2の位置に到達する特定の時間を通知したときに、第2溶接ロボット10Bが溶接を開始してもよい。また第1溶接ロボット10Aの第1ロボットコントローラ20Aおよび第2溶接ロボット10Bの第2ロボットコントローラ以外のコントローラーで上記判断が行なわれてもよい。
【0103】
本実施形態においては、第1溶接トーチ2Aが点P2に到達するまでの残り移動時間に基づいて第2溶接ロボット10Bによる溶接が開始される。このため第1溶接トーチ2Aが点P2に到達し点P2を溶接する際に、第2溶接ロボット10Bが点P4の溶接を開始する。これにより1溶接ロボット10Aと被溶接物WMとの間に生じるアークA1と、第2溶接ロボット10Bと被溶接物WMとの間に生じるアークA2とにより、接続部CPにおいて1つの溶融プールが形成される。このため本実施形態の制御においても、実施形態1と同様に接続部CP付近での欠陥の発生を抑制することができる。
【0104】
(実施形態3)
本実施形態の溶接ロボットの制御方法においては、第1溶接トーチ2Aが点P2に到達する時間に、第2溶接トーチ2Bが点P2の近傍の点P5へ到達するよう制御される。以下、本実施形態の溶接ロボットの制御方法を図12および図13を用いて説明する。
【0105】
図12は、本開示の実施形態3における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。図13は、本開示の実施形態3における溶接ロボットの動作を説明するための図である。
【0106】
図13に示されるように、本実施形態における第1溶接ロボット10Aの第1溶接経路は、たとえば実線矢印で示されるように、点P1から接続部CP(点P2)を経由して点P3に到達する経路である。また第2溶接ロボット10Bの第2溶接経路は、たとえば破線矢印で示されるように、点P4から点P5に到達する経路である。
【0107】
本実施形態においては、溶接動作が開始されると、実施形態1と同様、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aが点P1(溶接開始点)に移動する(ステップS11:図12)。この後、第1溶接ロボット10Aによる溶接が開始される(ステップS12:図12)。
【0108】
第1溶接ロボット10Aによる溶接が開始されると、第1溶接ロボット10Aは第1溶接トーチ2Aが点P2に到達する移動時間を算出し、算出した移動時間を第2溶接ロボット10Bへ通知する(ステップS12a:図12)。
【0109】
第1溶接トーチ2Aが点P2に到達する移動時間は、図2に示される演算部21Aにより算出される。演算部21Aは、記憶部23Aに記憶された点P1から点P2までの軌跡距離を算出し、記憶部23Aに記憶された第1溶接トーチ2Aの移動速度でその軌跡距離を除することにより、点P2までの移動時間を算出する。演算部21Aにより算出された点P2までの移動時間の信号は、通信部22Aにより第2溶接ロボット10Bの通信部22Bへ送信される。
【0110】
この後、第1溶接トーチ2Aは被溶接物WMを溶接しながら、点P1から点P2へ移動する(ステップS13:図12)。第1溶接トーチ2Aは、算出した移動時間で点P2へ到達する。
【0111】
一方、第2溶接ロボット10Bの第2溶接トーチ2Bは、第1溶接ロボット10Aによる溶接動作が開始されると、点P4(溶接開始点)に移動した後、点P4で待機する(ステップS21:図12)。なお第1溶接ロボット10Aによる溶接動作の開始と、第2溶接ロボット10Bの点P4までの移動とは、いずれが先または後であってもよい。この後、第2溶接ロボット10Bは、上記点P2までの移動時間の信号を第1溶接ロボット10Aから受信したか否かを判定する(ステップS22b:図12)。この点P2までの移動時間の信号は、図2に示される第2ロボットコントローラ20Bの通信部22Bにより受信される。このため通信部22Bにより移動時間の信号が受信された否かが演算部21Bにより判定される。
【0112】
第2溶接ロボット10Bの演算部22Bが、移動時間を未だ受信していないと判定した場合、演算部22Bは、移動時間を受信したか否かの判定(ステップS22b)を繰り返す。
【0113】
第2溶接ロボット10Bの演算部22Bが移動時間を受信したと判定したと判定した場合、演算部22Bは、通知された移動時間で第2溶接トーチ2Bが点P5へ移動するための移動速度を算出する(ステップS22c:図12)。
【0114】
第2溶接トーチ2Bが点P5へ移動する移動速度は、図2に示される演算部21Bにより算出される。演算部21Bは、記憶部23Bに記憶された点P4から点P5までの軌跡距離を算出し、通知された移動時間でその軌跡距離を除することにより、点P4から点P5までの移動速度を算出する。
【0115】
この後、第2溶接ロボット10Bは、溶接を開始する(ステップS23:図12)。第2溶接ロボット10Bによる溶接が開始された後、算出された移動速度で第2溶接トーチ2Bは点P5へ移動する(ステップS24:図12)。
【0116】
上記により第1溶接トーチ2Aが点P2に到達するタイミングと、第2溶接トーチ2Bが点P5に到達するタイミングとが略同一となる。これにより第1溶接ロボット10Aと被溶接物WMとの間に生じるアークA1と、第2溶接ロボット10Bと被溶接物WMとの間に生じるアークA2とにより、接続部CPにおいて1つの溶融プールが形成される。これにより接続部CPにおいて被溶接物WMが溶接される。
【0117】
接続部CPにおいて被溶接物WMを溶接した後、第1溶接ロボット10Aは、点P3へ移動し(ステップS15:図12)、点P3の溶接が完了した時点で第1溶接ロボット10Aによる溶接動作が終了する(ステップS16:図12)。また接続部CPにおいて被溶接物WMを溶接した時点で、第2溶接ロボット10Bによる溶接動作が終了する(ステップS25:図12)。
【0118】
また第2溶接ロボット10Bには、第1溶接ロボット10Aが点P2に到達する一定時間前または一定時間後に、点P5に到達するように移動速度を決定する機能があってもよい。ここで、「一定時間後」とは、あくまで同一(一体)の溶融プールを形成可能な範囲での第2溶接ロボット10Bの溶接合流タイミング調整である。
【0119】
本実施形態においては、第1溶接トーチ2Aが点P2に到達するまでの移動時間に基づいて、第2溶接トーチ2Bが点P5へ移動する際の移動速度が算出される。これにより第1溶接トーチ2Aが点P2に到達し点P2を溶接する際に、第2溶接ロボット10Bは点P5へ到達し点P5を溶接する。これにより1溶接ロボット10Aと被溶接物WMとの間に生じるアークA1と、第2溶接ロボット10Bと被溶接物WMとの間に生じるアークA2とにより、接続部CPにおいて1つの溶融プールが形成される。このため本実施形態の制御においても、実施形態1と同様に接続部CP付近での欠陥の発生を抑制することができる。
【0120】
本実施形態には実施形態1または2に記載の変形例が適用されてもよい。また第2溶接ロボット10Bにおいて算出された移動速度に合わせて、第2ワイヤ送給装置3Bによるワイヤ送給速度が調整されてもよい。ワイヤ送給速度を固定して第2溶接ロボット10Bの移動速度を上げた場合には、必要な溶金量を確保することができなくなる。しかし上記のように第2溶接ロボット10Bの移動速度に合わせて第2ワイヤ送給装置3Bによるワイヤ送給速度が調整されることにより、第2溶接ロボット10Bの移動速度を上げた場合でもワイヤ送給速度も上げることで必要な溶金量を確保することが可能となる。
【0121】
(実施形態4)
本実施形態の溶接ロボットの制御方法においては、図13に示されるように第1溶接トーチ2Aが点P2に到達するまでの残り移動時間に基づいて第2溶接ロボット10Bによる移動速度が変更される。以下、本実施形態の溶接ロボット10A、10Bの制御方法を図13および図14を用いて説明する。
【0122】
図14は、本開示の実施形態4における溶接ロボットの制御方法を示すフロー図である。図13に示されるように、本実施形態における第1溶接ロボット10Aおよび第2溶接ロボット10Bの各々の溶接経路は実施形態3における溶接経路と同じである。
【0123】
本実施形態においては、溶接動作が開始されると、実施形態2と同様、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aが点P1(溶接開始点)に移動する(ステップS11:図14)。この後、第1溶接ロボット10Aによる溶接が開始される(ステップS12:図14)。この溶接が開始された後、第1溶接トーチ2Aは点P1から点P2へ移動を開始する(ステップS13:図13)。第1溶接トーチ2Aの移動が開始された後、第1溶接ロボット10Aは、第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間を第2溶接ロボット10Bへ常時通知する(ステップS14a:図14)。
【0124】
第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間の算出と、第2溶接ロボット10Bへの通知とは実施形態2と同様に行われる。
【0125】
第1溶接ロボット10Aは、第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達したか否かを判定する(ステップS14b:図14)。第1溶接トーチ2Aが点P2へ到達したか否かの判定は、実施形態2と同様に行われる。
【0126】
第1溶接ロボット10Aの演算部22Aが、残り移動時間が0ではないと判定した場合、第1溶接ロボット10Aは、引き続き、第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間を第2溶接ロボット10Bへ常時通知する(ステップS14a)。
【0127】
第1溶接ロボット10Aの演算部22Aが、残り移動時間が0であると判定した場合、第1溶接ロボット10Aの第1溶接トーチ2Aは、溶接経路の点P3へ移動する(ステップS15:図14)。第1溶接トーチ2Aが点P3に到達し、第1溶接トーチ2Aにより点P3までの溶接が終わると、第1溶接ロボット10Aによる溶接動作が終了する(ステップS16:図14)。
【0128】
一方、第2溶接ロボット10Bの第2溶接トーチ2Bは、溶接動作が開始されると、点P4(溶接開始点)に移動する(ステップS21a:図14)。第2溶接トーチ2Bが点P4に到達すると、第2溶接ロボット10Bは溶接を開始する(ステップS23:図14)。この後、第2溶接ロボット10Bは、溶接しながら点P4から点P5への移動を開始する(ステップS24a:図14)。
【0129】
この後、第2溶接ロボット10Bは、上記点P2までの残り移動時間の信号を第1溶接ロボット10Aから受信したか否かを判定する(ステップS24b:図14)。この点P2までの残り移動時間の信号は、図2に示される第2ロボットコントローラ20Bの通信部22Bにより受信される。このため通信部22Bにより残り移動時間の信号が受信されたか否かが演算部21Bにより判定される。この点P2までの残り移動時間の信号は、図2に示される第2ロボットコントローラ20Bの通信部22Bにより受信される。このため通信部22Bにより残り移動時間の信号が受信された否かが演算部21Bにより判定される。
【0130】
第2溶接ロボット10Bの演算部22Bが、残り移動時間を未だ受信していないと判定した場合、演算部22Bは、残り移動時間を受信したか否かの判定(ステップS24b)を繰り返す。
【0131】
第2溶接ロボット10Bの演算部22Bが残り移動時間を受信したと判定した場合、第2溶接ロボット10Bは、通知された残り移動時間で点P5へ残り移動距離を移動するための移動速度を算出する(ステップS24c:図14)。この移動速度の算出は、図2に示される演算部21Bにより行われる。演算部21Bは、記憶部23Bに記憶された情報と経過時間とから残り移動距離を算出し、通知された残り移動時間でその残り移動距離を除することによって移動速度を算出する。
【0132】
演算部21Bは、算出した移動速度となるように第2溶接トーチ2Bの移動速度を変更処理する(ステップs24d:図14)。これにより第2溶接トーチ2Bは、点P5への残り移動距離を、算出された移動速度で移動する。
【0133】
この後、第2溶接トーチ2Bが点P5に到達したか否かが判定される(ステップS24e:図14)。第2溶接トーチ2Bが未だ点P5に到達していないと演算部22Bが判定した場合、演算部22Bは、残り移動時間を受信したか否かの判定(ステップS24b)を繰り返す。第2溶接トーチ2Bが点P5に到達したと演算部22Bが判定した場合、演算部22Bは、第2溶接ロボット10Bによる溶接動作が終了する(ステップS25)。
【0134】
本実施形態においては、第1溶接トーチ2Aが点P2に到達するまでの残り移動時間に基づいて、第2溶接ロボット10Bによる点P5への残り移動距離を移動するための移動速度が算出される。これにより第1溶接トーチ2Aが点P2に到達し点P2を溶接する際に、第2溶接ロボット10Bは点P5へ到達し点P5を溶接する。これにより1溶接ロボット10Aと被溶接物WMとの間に生じるアークA1と、第2溶接ロボット10Bと被溶接物WMとの間に生じるアークA2とにより、接続部CPにおいて1つの溶融プールが形成される。このため本実施形態の制御においても、実施形態1と同様に接続部CP付近での欠陥の発生を抑制することができる。
【0135】
なお第2溶接ロボット10Bにおいて算出された移動速度に合わせて、第2ワイヤ送給装置3Bによるワイヤ送給速度が調整されてもよい。ワイヤ送給速度を固定して第2溶接ロボット10Bの移動速度を上げた場合には、必要な溶金量を確保することができなくなる。しかし上記のように第2溶接ロボット10Bの移動速度に合わせて第2ワイヤ送給装置3Bによるワイヤ送給速度が調整されることにより、第2溶接ロボット10Bの移動速度を上げた場合でもワイヤ送給速度も上げることで必要な溶金量を確保することが可能となる。
【0136】
また他の制御方法として、第2溶接ロボット10Bの移動速度が所定の値に決められており、その移動速度における点P4から点P5までの移動時間Aが算出されており、第1溶接ロボット10Aが点P2まで移動する残り移動時間が移動時間Aと一致したときに、第2溶接ロボット10Bが移動を開始されてもよい。
【0137】
また第1溶接ロボット10Aの動作開始時に、第1溶接ロボット10Aの動作開始を示す信号が第2溶接ロボット10Bに通知され、第1溶接ロボット10Aの動作開始を示す信号の通知に基づいて、第2溶接ロボット10Bが動作を開始してもよい。
【0138】
また第1溶接ロボット10Aの接続部CPへの移動時間を示す信号が第2溶接ロボット10Bに通知され、第1溶接ロボット10Aの接続部CPへの移動時間を示す信号の通知に基づいて、第2溶接ロボット10Bが溶接を開始してもよい。この例における移動時間を示す信号は、図6における進捗率=1.0を示す信号であってもよく、また図11における第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間を示す信号であってもよい。
【0139】
また第1溶接ロボット10Aの接続部CPへの移動時間を示す信号が第2溶接ロボット10Bに通知され、第1溶接ロボット10Aの接続部CPへの移動時間を示す信号の通知に基づいて、第2溶接ロボット10Bの接続部CPへの移動速度が算出されてもよい。この例における移動時間を示す信号は、図12における第1溶接トーチ2Aが点P2に到達する移動時間であってもよく、また図14における第1溶接トーチ2Aが点P2に達するまでの残り移動時間であってもよい。
【0140】
(溶接ロボットの動作の他の例と溶接経路の他の例)
次に、溶接ロボットの動作の他の例について図15図17を用いて説明し、溶接経路の他の例を図18を用いて説明する。
【0141】
図15図16図17は、溶接ロボットの動作の他の例1、2、3を説明するための図である。図18は、溶接経路の他の例を示す図である。
【0142】
図15に示されるように、他の例1における第1溶接ロボット10Aの第1溶接経路は、たとえば実線矢印で示されるように、点P1から接続部CP(点P2)を経由して点P3に到達する直線の経路である。また第2溶接ロボット10Bの第2溶接経路は、たとえば破線矢印で示されるように、点P4から接続部CP(点P6)を経由して点P5に到達する経路である。第2溶接経路は、点P6で屈曲する経路である。
【0143】
他の例1における溶接ロボット10A、10Bの動作においては、接続部CPに至るまで第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが互いに同じ経路に沿ってたとえば並走しながら被溶接物WMを溶接する。具体的には第1溶接ロボット10Aは点P1から点P2まで溶接し、第2溶接ロボット10Bは点P4から点P6まで溶接する。なお第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとは、互いに並走しなくてもよく、接続部CPにて同一タイミングで溶融プールを形成できる範囲内で前後に並んで移動してもよい。点P1から点P2までの溶接経路と点P4から点P6までの溶接経路とは同じ溶接経路に沿っている。点P2および点P6の各々は接続部CP内に位置している。
【0144】
第1溶接ロボット10Aが点P1において溶接を開始するタイミングと第2溶接ロボット10Bが点P4において溶接を開始するタイミングとはほぼ同じである。また第1溶接ロボット10Aが点P2において溶接するタイミングと第2溶接ロボット10Bが点P6において溶接するタイミングとはほぼ同じである。このため第1溶接ロボット10Aが点P1から点P2に到達するまで、かつ第2溶接ロボット10Bが点P4から点P6に到達するまで、第1溶接ロボット10AのアークA1により形成される溶融プールと第2溶接ロボット10BのアークA2により形成される溶融プールとが一体となっている。この一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて、被溶接物WMが溶接される。
【0145】
第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが接続部CPを溶接した後に、第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが互いに異なる経路に沿って被溶接物WMを溶接する。具体的には第1溶接ロボット10Aは点P2から点P3に沿って被溶接物WMを溶接し、第2溶接ロボット10Bは点P6から点P5に沿って被溶接物WMを溶接する。点P2から点P3までの溶接経路と点P6から点P5までの溶接経路とは、互いに異なる溶接経路である。このため点P2から点P3までの溶接経路において第1溶接ロボット10AのアークA1により形成される溶融プールと、点P6から点P5までの溶接経路において第2溶接ロボット10BのアークA2により形成される溶融プールとは接続部CPから互いに分離している。
【0146】
上記他の例1においても、一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて被溶接物WMが溶接されるため、実施形態1と同様、接続部CPにおいて溶接欠陥の発生を抑制することができる。
【0147】
図16に示されるように、他の例2における第1溶接ロボット10Aの第1溶接経路は、たとえば実線矢印で示されるように、点P1から接続部CP(点P2)を経由して点P3に到達する直線の経路である。また第2溶接ロボット10Bの第2溶接経路は、たとえば破線矢印で示されるように、点P4から接続部CP(点P6)を経由して点P5に到達する経路である。第2溶接経路は、点P6で屈曲する経路である。
【0148】
他の例2における溶接ロボット10A、10Bの動作においては、接続部CPに至るまで第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが互いに異なる経路に沿って被溶接物WMを溶接する。具体的には第1溶接ロボット10Aは点P1から点P2まで溶接し、第2溶接ロボット10Bは点P4から点P6まで溶接する。点P1から点P2までの溶接経路と点P4から点P6までの溶接経路とは異なる溶接経路に沿っている。点P2および点P6の各々は接続部CP内に位置している。
【0149】
第1溶接ロボット10Aが点P2において溶接するタイミングと第2溶接ロボット10Bが点P6において溶接するタイミングとはほぼ同じである。このため第1溶接ロボット10AのアークA1により形成される溶融プールと第2溶接ロボット10BのアークA2により形成される溶融プールとが接続部CPにおいて一体となっている。この一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて被溶接物WMが溶接される。
【0150】
第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが接続部CPを溶接した後に、第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが互いに同じ経路に沿って被溶接物WMを溶接する。具体的には第1溶接ロボット10Aは点P2から点P3まで溶接し、第2溶接ロボット10Bは点P6から点P5まで溶接する。点P2から点P3までの溶接経路と点P6から点P5までの溶接経路とは同じ溶接経路に沿っている。このため第1溶接ロボット10Aが点P2から点P3に到達するまで、かつ第2溶接ロボット10Bが点P6から点P5に到達するまで、第1溶接ロボット10AのアークA1により形成される溶融プールと第2溶接ロボット10BのアークA2により形成される溶融プールとが一体となっている。
【0151】
上記他の例2においても、一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて被溶接物WMが溶接されるため、実施形態1と同様、接続部CPにおいて溶接欠陥の発生を抑制することができる。
【0152】
図17に示されるように、他の例3における第1溶接ロボット10Aの第1溶接経路は、たとえば実線矢印で示されるように、点P1から接続部CP(点P2)を経由して点P3に到達する経路である。第1溶接経路は、点P2で屈曲する経路である。また第2溶接ロボット10Bの第2溶接経路は、たとえば破線矢印で示されるように、点P4から点P5に到達する直線の経路である。
【0153】
他の例3における溶接ロボット10A、10Bの動作においては、第2溶接ロボット10Bが接続部CP内に位置する点P4で待機する。この状態で、第1溶接ロボット10Aが点P1から接続部CP内の点P2に至るまで溶接経路に沿って被溶接物WMを溶接する。第1溶接ロボット10Aが接続部CP内の点P2を溶接するときに第2溶接ロボット10Bが接続部CP内の点P4において溶接を開始する。
【0154】
第1溶接ロボット10Aが点P2において溶接するタイミングと第2溶接ロボット10Bが点P4において溶接するタイミングとはほぼ同じである。このため第1溶接ロボット10AのアークA1により形成される溶融プールと第2溶接ロボット10BのアークA2により形成される溶融プールとが接続部CPにおいて一体となっている。この一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて被溶接物WMが溶接される。
【0155】
第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが接続部CPを溶接した後に、第1溶接ロボット10Aと第2溶接ロボット10Bとが互いに異なる経路に沿って被溶接物WMを溶接する。具体的には第1溶接ロボット10Aは点P2から点P3に沿って被溶接物WMを溶接し、第2溶接ロボット10Bは点P4から点P5に沿って被溶接物WMを溶接する。点P2から点P3までの溶接経路と点P4から点P5までの溶接経路とは、互いに異なる溶接経路である。このため点P2から点P3までの溶接経路において第1溶接ロボット10AのアークA1により形成される溶融プールと、点P4から点P5までの溶接経路において第2溶接ロボット10BのアークA2により形成される溶融プールとは接続部CPから互いに分離している。
【0156】
上記他の例3においても、一体化された溶融プールにより接続部CPにおいて被溶接物WMが溶接されるため、実施形態1と同様、接続部CPにおいて溶接欠陥の発生を抑制することができる。
【0157】
なお複数の溶接線GP1、GP2(FW1)、GP3(FW2)および接続部CPは、図18(A)に示されるように平面視においてY字型の三叉路を構成していてもよく、図18(B)に示されるように矢印型の三叉路を構成していてもよい。
【0158】
T字型の三叉路とは、互いに交わる3つの溶接線のうち2つの溶接線が直線状に接続され、残り1つの溶接線がその直線状の経路に対して平面視において垂直に接続される三叉路を意味する。またY字型の三叉路とは、互いに接続される3つの溶接線が平面視において互いに鈍角の角度をなす三叉路を意味する。また矢印型の三叉路とは、互いに接続される3つの溶接線のうち2つの溶接線の双方が残りの1つの溶接線に対して平面視において鋭角をなして接続される三叉路を意味する。
【0159】
また三叉路は、直線状の溶接線により構成されてもよく、曲線状の溶接線により構成されてもよく、直線状の溶接線と曲線状の溶接線との組合わせにより構成されてもよい。具体的には、三叉路を構成する3つの溶接線の各々が直線状の溶接線であってもよい。また三叉路を構成する3つの溶接線の各々が曲線状の溶接線であってもよい。また三叉路を構成する3つの溶接線のうち1つまたは2つの溶接線が直線状の溶接線であり、残りの溶接線が曲線状の溶接線であってもよい。曲線状の溶接線はたとえば円弧状の溶接線を含む。たとえば三叉路を構成する3つの溶接線の少なくとも1つの溶接線が直線部分と曲線部分とを有していてもよい。
【0160】
また複数の溶接線と接続部とが構成する平面形状は三叉路に限定されず、4つ以上の溶接線が1つの接続部において接続される平面形状(四叉路、五叉路、六叉路・・・)であってもよい。たとえば三叉路を溶接する際に用いられる溶接ロボットの数は2台に限られない。第1溶接ロボットが接続部に到達した際に、接続部にて待機していた第2溶接ロボットと第3溶接ロボットとが溶接を開始し、第1溶接ロボットは接続部で溶接を終了し、第2溶接ロボットと第3溶接ロボットとは接続部から互いに異なる溶接線に沿って溶接をするなど、3台の溶接ロボットが用いられてもよい。
【0161】
たとえば四叉路において、2台の溶接ロボットが異なる溶接線から溶接を開始し、接続部にて合流した後、その接続部から互いに異なる溶接線に向かって溶接をしてもよい。また四叉路を溶接する際に3台の溶接ロボットが用いられてもよい。たとえば第1溶接ロボットが接続部に到達した際に、接続部にて待機していた第2溶接ロボットと第3溶接ロボットとが溶接を開始し、第1溶接ロボット、第2溶接ロボットおよび第3溶接ロボットの各々が接続部から互いに異なる溶接線に沿って溶接をしてもよい。
【0162】
また四叉路を溶接する際に用いられる溶接ロボットの数は4台であってもよい。第1溶接ロボットが接続部に到達した際に、接続部にて待機していた第2溶接ロボットと第3溶接ロボットと第4溶接ロボットとが溶接を開始し、第1溶接ロボットは接続部で溶接を終了し、第2溶接ロボットと第3溶接ロボットと第4溶接ロボットとが接続部から互いに異なる溶接線に沿って溶接をしてもよい。
【0163】
上記のように、今回開示の実施形態を組み合わせることで、本開示は3台以上の溶接ロボットにも適用できる。また3台以上の溶接ロボットを用いることは、4つ以上の溶接線が1つの接続部において接続される平面形状にも適用できる。
【0164】
なお4つ以上の溶接線が1つの接続部において接続される場合にも、三叉路と同様、直線状の溶接線により構成されてもよく、曲線状の溶接線により構成されてもよく、直線状の溶接線と曲線状の溶接線との組合わせにより構成されてもよい。
【0165】
上記の実施形態1~4、その他の例1~3に係る溶接ロボットの制御方法により溶接される建設機械用部品は、たとえば図19に示されるような建設機械のメインフレームである。図19に示されるように、たとえば被溶接物WMであるメインフレームのボス部BPには、領域RE1、RE2、RE3に示されるように曲線状の溶接線がある。この曲線状の溶接線はたとえば円弧状の溶接線である。領域RE1における溶接線はボス部BPの貫通孔の外周に沿う円弧形状を有している。領域RE2、RE3における溶接線はボス部BPの付け根に配置された円弧形状の溶接線である。また上記溶接ロボットの制御方法により溶接される建設機械用部品は、メインフレームに限定されるものではなく、それ以外の部品であってもよい。
【0166】
なお被溶接物が自動車業界で用いられるような薄板の場合には、溶金の溶け込み不足が生じ難いため、本開示は溶け込み不足が生じやすい厚板への適用が好適である。本開示は、溶け込み不足が生じやすい、6mm以上の厚みを有する部材に適用されることが好ましい。また本開示は、溶け込み不足がより生じやすい、25mm以上の厚みを有する部材に適用されることがより好ましい。造船業界では厚板も用いられるが、一品物が多く、自動化するメリットが大きくない。そのため本開示は、厚板を溶接する現場であって、かつ自動化するメリットのある現場にて特に好適である。たとえば建設機械用部品は、その部品として厚板が取り扱われることが多く、かつ自動化のメリットが充分に得られるほどの生産量もあるため、本開示の適用先として特に好ましい。
【0167】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0168】
1A 第1マニピュレータ、1B 第2マニピュレータ、2A 第1溶接トーチ、2B 第2溶接トーチ、3A 第1ワイヤ送給装置、3B 第2ワイヤ送給装置、4A 第1溶接電源、4B 第2溶接電源、10A 第1溶接ロボット、10B 第2溶接ロボット、11A,11B 溶接用ワイヤ、20 ロボットコントローラ、20A 第1ロボットコントローラ、20B 第2ロボットコントローラ、21A,21B 演算部、22A,22B 通信部、23A,23B 記憶部、A1,A2 アーク、BP ボス部、CP 接続部、FW1,FW2 隅肉溶接部、GP1,GP2,GP3 開先溶接部(溶接線)、MM1,MM2 溶金、S 台、WM 被溶接物、WM1 底板、WM2,WM3,WM4 壁板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12
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図15
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