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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000581
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ケース及び鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20231226BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
H05K5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099317
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 先勝
(72)【発明者】
【氏名】守屋 隆紘
【テーマコード(参考)】
4E360
5D478
【Fターム(参考)】
4E360AB04
4E360AB06
4E360AB09
4E360EA12
4E360EC16
4E360ED02
4E360ED07
4E360ED23
4E360ED28
4E360EE03
4E360GA08
4E360GA51
4E360GB99
4E360GC08
5D478JJ01
(57)【要約】
【課題】良好に外装部材に貼着したシートを剥がれにくくしたケース及びこのケースを備えた鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】鍵盤楽器10のケース200(右側面ケース240)は、第1シート70の外表面を含む第1外装面110と、第1外装面110と接続した第2外装面120を備える外装部材100と、外装部材100が取り付けられ、第2外装面120と対向して配置される対向面(天板部310の下面313及び底板部324の上面328)を有し、断面視における当該対向面の突端(突端313a,313b,328a,328b等)が第1外装面110よりも突出する被取付部材300と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シートの外表面を含む第1面と、前記第1面と接続した第2面を備える外装部材と、
前記外装部材が取り付けられ、前記第2面と対向して配置される対向面を有し、断面視における前記対向面の突端が前記第1面よりも突出する被取付部材と、
を備えるケース。
【請求項2】
前記被取付部材は、前記外装部材を一方向に付勢する付勢部を備える、請求項1に記載のケース。
【請求項3】
前記付勢部は、前記外装部材を後方に付勢する、請求項2に記載のケース。
【請求項4】
前記外装部材は、前記付勢部が前記外装部材を付勢する方向と直交する方向で前記被取付部材にねじ止めされる、請求項2に記載のケース。
【請求項5】
前記付勢部は、前記被取付部材と一体に設けられる樹脂バネである、請求項2に記載のケース。
【請求項6】
前記第1面は、側面と、前記側面に接続する前面及び後面と、を有し、
前記後面から突出する前記突端の突出量は、前記前面から突出する前記突端の突出量及び前記側面から突出する前記突端の突出量よりも大きい、請求項1に記載のケース。
【請求項7】
前記第1シートは、木目調のシートである、請求項1に記載のケース。
【請求項8】
鍵盤と、
前記鍵盤の腕木として配置される、請求項1乃至請求項7の何れかに記載のケースと、
を備える鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース及び鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材の装飾や保護のためシートを貼着した外装部材を備える鍵盤楽器等のケースが提供されている。例えば、特許文献1には、2枚の板材に夫々、外側面から外縁面まで覆うようにしてシートの端部を各板材の内側面まで折り返し、該内側面同士を貼り合わせた部材を一つの側板体とする脚体を備えた鍵盤楽器が開示されている。これにより、シートの端部が外表面に表れなくなり、シートの端部からのシートの剥がれを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-60983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外装部材が矩形の板材の場合には、比較的容易に外側面から外縁面までを覆うようにシートを貼着することができるが、湾曲部や傾斜部等が設けられるような外装部材の場合には、覆うようにシートを貼着することが難しいことがある。
【0005】
本発明は、良好に外装部材に貼着したシートを剥がれにくくしたケース及びこのケースを備えた鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るケースは、第1シートの外表面を含む第1面と、前記第1面と接続した第2面を備える外装部材と、前記外装部材が取り付けられ、前記第2面と対向して配置される対向面を有し、断面視における前記対向面の突端が前記第1面よりも突出する被取付部材と、を備える。
【0007】
本発明に係る鍵盤楽器は、鍵盤と、前記鍵盤の腕木として配置される、上述のケースと、を備える。
前記外装部材及び前記被取付部材が鍵盤の側方に配置される上述のケースを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好に外装部材に貼着したシートを剥がれにくくしたケース及びこのケースを備えた鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るケースを備える鍵盤楽器を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケース周辺を示す上方前側斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケース周辺を示す下方後側斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケースの分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケースに係る外装部材本体と、外装部材本体に貼着されるシートを示す、内側面側から見た分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケースに係る外装部材を、内側面側から見た斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケースに係る被取付部材を後方から見た斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の右側面ケースの図7のVIII-VIII断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1に示す電子ピアノとしての鍵盤楽器10は、複数の鍵としての複数の白鍵3と複数の黒鍵4を備えるフルサイズ(88鍵)の鍵盤5と、ケース200とを備える。なお、以下の説明では、電子鍵盤楽器10において、鍵盤5を手前側に配置した状態で、鍵盤5の鍵の前後方向FBにおける前側(手前側)を前側F、鍵の前後方向FBの後側(奥側)を後側Bとし、鍵盤5に向かって左側を左側L、右側を右側Rとし、鍵盤5の鍵の配列方向を、左右方向LRとし、また、鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上側を上側Up、下側を下側Loとする。また、本実施形態においては電子ピアノとしての鍵盤楽器10を示したが、他の鍵盤楽器であってもよく、また、他の電子機器等の装置のケースであってもよい。
【0011】
図1に示すように、ケース200は、上側ケース210と、下側ケース220と、左側面ケース230及び右側面ケース240と、板状の前側ケース250と、上側ケース210と接続する背面パネル260(図3参照)を有する。上側ケース210、下側ケース220及び前側ケース250は、左右方向LRに長尺に設けられている。前側ケース250は、鍵盤5の前側Fにおける左側面ケース230と右側面ケース240との間に設けられている。左側面ケース230及び右側面ケース240(後述する外装部材100及び被取付部材300)は、鍵盤5の側方に設けられている腕木である。
【0012】
上側ケース210の上面側には、板状の上面パネル211が設けられている。前後方向FBに長く、上方から見て略矩形状の左側面ケース230は、上側ケース210の左の端部及び前側ケース250の左の端部にそれぞれ隣接して配置されている。左側面ケース230と同様の略矩形状の右側面ケース240は、上側ケース210の右の端部及び前側ケース250の右の端部にそれぞれ隣接して配置されている。下側ケース220は、上側ケース210及び左側面ケース230、右側面ケース240の下側Loに設けられている。
【0013】
左側面ケース230には、上面にピッチベンダーや押しボタン等を備えた操作部14が設けられている。左側面ケース230の前面には、イヤホンジャック18が設けられている。また、上側ケース210の上面パネル211には、ボリュームを調整する回転式の回転ノブ12が設けられている。
【0014】
次に、側面ケース(左側面ケース230、右側面ケース240)について説明する。ここで、左側面ケース230は、操作部14やイヤホンジャック18の取付構造を除いて、右側面ケース240と略対称形状であり、ケースとしての構成は略同一であるので、右側面ケース240に着目して説明する。
【0015】
図2及び図3に示すように、右側面ケース240は、外装部材100と、外装部材100が取り付けられる被取付部材300とを備える。外装部材100は、詳細は図5を参照して後述するが、外装部材本体100aに1枚の第1シート70と、複数枚の第2シート80が貼着されてなる。本実施形態においては、外装部材本体100aは、中密度繊維板(MDF: Medium Density Fiberboard)からなる。第1シート70及び第2シート80は、それぞれ一方面である外表面(ユーザが視認できる面)に木目調の印刷等が施され、他方面は接着層が設けられたシート材からなる。
【0016】
図4に示すように、外装部材100(外装部材本体100a)は、上面視において略U字状とされ、上下方向の高さが後方から前方に向かって漸次小さくなるよう設けられている。外装部材100は、側面111と、側面111の前端で接続する前面112及び側面111の後端で接続する後面113とを有する。側面111と前面112、後面113との各接続部は、小さいR面取状とされている。側面111、前面112及び後面113は、外装部材100が被取付部材300に取り付けられた状態において視認される外表面である第1外装面110(第1面)とされている。外装部材100における側面111、前面112及び後面113は同一材料によって一体的に形成されていてもよいし、それぞれ分離した状態から接合することによって連結されるものであってもよい。
【0017】
外装部材本体100a(外装部材100)の内側面130は、第1外装面110に対向する内側の面であり、外装部材100を被取付部材300に取り付けられた状態において視認されない面である。
【0018】
第1外装面110と内側面130とを接続する面は、第2外装面120(第2面)とされている。第2外装面120は、外装部材100が被取付部材300に取り付けられた状態において、隙間から若干見える場合があるので、外表面とされている。第2外装面120は、板材における小口に相当する。第2外装面120は、図6に示す下面121と、上面122(図4参照)と、下面121と上面122とを接続するようにそれぞれ設けられる後側の後側面123及び前側面124とを有する。
【0019】
図4図5に示すように、第1シート70は、外装部材100における側面111、前面112及び後面113に対応する外装部材本体100aの面に倣った形状で設けられる1枚のシートからなる。ここで、第1外装面110は、外装部材本体100aに貼着された第1シート70の外表面を含む。
【0020】
また、複数の第2シート80は、夫々、第2外装面120の各面に倣った形状とされる1枚のシートからなる。ここで、第2外装面120は、外装部材本体100aに貼着された第2シート80の外表面を含む。
【0021】
外装部材100の下面121に対応する外装部材本体100aの面には、下面シート81が貼着され、外装部材100の上面122に対応する外装部材本体100aの面には上面シート82が貼着され、外装部材100の後側面123に対応する外装部材本体100aの面には後側面シート83が貼着され、外装部材100の前側面124に対応する外装部材本体100aの面には前側面シート84が貼着されている。なお、後側面シート83及び前側面シート84は、貼着前にあらかじめ第1シート70に一体化されていてもよい。
【0022】
このようにして、外装部材100は、外装部材本体100aにシート(第1シート70、第2シート80)が貼着されてなる。換言すれば、外装部材100は、内側面130以外の面にはシート(第1シート70、第2シート80)が貼着されている。すなわち、第1シート70は、外部から視認できる広い面に貼着されるシートであり、第2シート80は、外部からは視認し難い、板材の小口部分に貼着されるシートである。
【0023】
また、図6に示すように、外装部材100の側面111(図4参照)に対応する内側面130には、内側方向(右側面ケース240では左側L方向、左側面ケース230では右側R方向)に突出する面としての突出平坦部131が設けられている。突出平坦部131の上側Upの縁及び下側Loの縁にはそれぞれ段部131a,131bが設けられている。突出平坦部131には、6個のねじ用下穴135と、前後方向に長い2つの長孔状のガイド孔136が設けられている。
【0024】
図5に示すように、後面113に対応する内側面130には、前方に突出する面としての突出平坦部132が設けられている。突出平坦部132の内側の縁には、段部132aが設けられている。
【0025】
突出平坦部131,132の接続部には、上下に長い略直方体状の突起部133が設けられている。また、図6に示すように、前面112に対応する内側面130には、左右に長い段付きの略直方体状の突起部134が設けられている。突起部134の基部は前側面124側にかけて大きくR面取りされているため、前側面124は、矩形部分に、曲面を有する突起部134の側面部分が連結した形状となっている。したがって前側面シート84は、前側面124と同様の形状に設定されている。
【0026】
被取付部材300は、図4及び図7に示すように、前後方向に長い略直方体状とされ、天板部310と、本体部320とを有する。天板部310は、前後方向に長い略長矩形の略板状とされ、本体部320の上端部に設けられている。天板部310の上面には、上面パネル311が載置され取り付けられている。天板部310と本体部320とはねじ部材(不図示)で互いに固定されている。このねじ部材は、上面パネル311で覆われる天板部310の上面に設けられている。
【0027】
図2のA-A断面に示すように、天板部310の下面には、前後方向に長い板状の縦板312が設けられている。縦板312に設けられるクサビ状の複数の係合部312aと、本体部320の上部に前後方向FBに長く設けられるクサビ状の被係合部320aとが係合して、天板部310が本体部320から離間しないよう補強されている。また、縦板312は、外装部材100の側面111に対応する内側面130と対向して設けられている。
【0028】
図4を参照し、本体部320は、樹脂材料により一体的に成形される部材である。本体部320の内側の側面321は、水平面に対して垂直な略平坦面状に設けられている。右側面ケース240の状態では、側面321は、外装部材100の側面111に対応する内側面130の突出平坦部131と当接している(図2のA-A断面及び図8参照)。
【0029】
本体部320の前部322(図4参照)及び後部323(図7参照)には、適宜凹凸形状が設けられている。前部322の凹部には外装部材100の突起部134が対向するよう配置され、後部323の凹部には外装部材100の突起部133が対向するよう配置される。
【0030】
図4に示すように、本体部320の前部322には、上側及び下側に、左右方向に長い当接リブ356,357がそれぞれ設けられている。上側の当接リブ356及び下側の当接リブ357は、図2のC-C断面及びD-D断面に示すように、外装部材100の前面112に対応する内側面130に当接している。
【0031】
図4及び図7に示すように、本体部320の前部322、側面321及び後部323の下側には、前部322、側面321及び後部323に亘って突出する略U字状の底板部324が設けられている。本体部320の天板部310の下面313と底板部324の上面328(図2の各断面図参照)との間の前部322、側面321及び後部323は、略凹状に設けられており、外装部材100が配置可能とされている。
【0032】
本体部320の側面321には、6個のねじ孔340が設けられている。外装部材100は、木ねじ15がねじ孔340を介して外装部材100のねじ用下穴135にねじ込まれることにより、被取付部材300に取り付けられる。ここで、外装部材100は、後述する付勢部350により後方に付勢される。従って、外装部材100は、外装部材100を付勢する方向(後方)と直交する方向で被取付部材300にねじ止めされる。またねじ止め工程の前に、本体部320の側面321に設けられる2つのピン341は、外装部材100の2つのガイド孔136に夫々挿入され、被取付部材300(本体部320)に対する外装部材100の上下方向の適正な位置決めがなされる。
【0033】
なお、本体部320の側面321と底板部324との接続部には、側面321の前後方向に亘って略薄板状の段部325が設けられている。また、前部322における底板部324と天板部310との間の鍵盤5側(内側)には、略板状の境界板326が設けられている。
【0034】
図3を参照して、被取付部材300は、天板部310と底板部324との間の長さが前方に向けて漸次短くなるよう設けられている。従って、天板部310が水平に配置されると、底板部324は、前方に向かって登るように傾斜して配置される。被取付部材300の底板部324の下面は、下側ケース220の側部から張り出すように設けられる接続板221と固定されている。下側ケース220の接続板221は、前方に向かって登るように傾斜する。よって、鍵盤楽器10を載置した際には、下側ケース220の下面222と天板部310の上面パネル311とは、略平行とされる。
【0035】
また、図7に示すように、被取付部材300の後部323には、上下に2つの付勢部350が被取付部材300と一体に設けられている。付勢部350には、略板状の樹脂バネである板バネ部351が設けられている。板バネ部351は、後部323において側面321と接続するベース部323aに設けられ、板バネ部351の外周には略U字状のスリット部352が設けられている。板バネ部351の突端には、後方に突出する当接突部351aが設けられている。
【0036】
外装部材100を被取付部材300に取り付ける際には、外装部材100を凹状の被取付部材300の天板部310と底板部324との間に、略U字状とされる外装部材100の開口側を合致させるようにして挿入する。このとき、外装部材100の前面112に対応する内側面130は、図2のC-C断面、D-D断面に示すように、当接リブ356,357に当接する。また、側面111に対応する内側面130の突出平坦部131は、図2のA-A断面や図8に示すように、側面321に当接し、後面113に対応する内側面130の突出平坦部132は、図8に示すように、付勢部350の当接突部351aと当接する。そして、付勢部350は、外装部材100を矢印方向である後方に向けた付勢力BFを発生させる。
【0037】
外装部材100は、2つのピン341が2つのガイド孔136に挿入されて上下方向の位置決めがなされると共に付勢力BFにより後方に付勢されて前後方向の位置決めがなされて、木ねじ15により被取付部材300に固定される。なお、ねじ孔340は、木ねじ15の軸径よりも十分に直径が大きいので、付勢部350により外装部材100が後方移動しても、木ねじ15とねじ孔340が干渉することはない。また、ピン341が挿入されるガイド孔136は前後に長い長孔とされているので、付勢部350による外装部材100の後方移動を阻害することはない。
【0038】
このようにして外装部材100が被取付部材300に取り付けられたとき、外装部材100の小口部分である第2外装面120は、被取付部材300の対応箇所によりカバーされることとなる。すなわち、図2のA-A断面に示すように、外装部材100の側面111に接続する上面122と近接して対向する対向面である天板部310の下面313の断面視における突端313a(換言すれば、天板部310の側面と下面313の接続部)は、外装部材100の側面111よりも突出量Taだけ突出している。なお、本開示における突出量とは、近接した外装部材100の側面から外装部材100の外側に向けて突出した最短の長さを意味している。
【0039】
同様に、断面B-Bにおいては、外装部材100の側面111に接続する下面121と近接して対向する対向面である底板部324の上面328の断面視における突端328aは、側面111よりも突出量Tbだけ突出している。断面C-Cにおいては、外装部材100の前面112に接続する上面122と近接して対向する対向面である天板部310の下面313の断面視における突端313bは、前面112よりも突出量Tcだけ突出している。断面D-Dにおいては、外装部材100の前面112に接続する下面121と近接して対向する対向面である底板部324の上面328の断面視における突端328bは、前面112よりも突出量Tdだけ突出している。
【0040】
更に、図3に示すように、断面E-Eにおいては、外装部材100の後面113に接続する上面122と近接して対向する対向面である天板部310の下面313における突端313cは、後面113よりも突出量Teだけ突出している。断面F-Fにおいては、外装部材100の後面113に接続する下面121と近接して対向する対向面である底板部324の上面328の断面視における突端328cは、後面113よりも突出量Tfだけ突出している。
【0041】
なお、図6に示す外装部材100の後側面123と対向する対向面(図3に示す背面パネル260の右側Rの側面)についても同様に、天板部310及び底板部324における当該対向面の各突端は、それぞれ後面113よりも突出している。また、図6に示す外装部材100の前側面124と対向する対向面である図2及び図4に示す境界板326の右側面についても同様に、天板部310及び底板部324における当該対向面の各突端は、前面112よりも突出している。
【0042】
従って、外装部材100の側面111、前面112、後面113の少なくともいずれかの小口(第2外装面120)付近にユーザの手指等が伸びた場合に、第2外装面120の対向面の突端(突端313a,313b,328a,328b等)が障害物となるため、外装部材100の小口(下面121、上面122、後側面123、前側面124)、すなわち第1シート70の端部或いは第2シート80の端部に直接手指等が触れてしまうことが殆ど無いため、外装部材100の第1外装面110の第1シート70や第2外装面120の第2シート80の捲れが低減される。このため、木目調等のシートを用いた鍵盤楽器10での美観を維持することができる。
【0043】
ここで、側面111側及び前面112側の突端313a,313b,328a,328bの突出量Ta,Tb,Tc,Tdは、後面113側の突端313c,328cの突出量Te,Tfよりも小さく設定される。具体的には、突出量Ta,Tb,Tc,Tdは、約0.5mmであり、突出量Te,Tfは、約1.0mmに設定することができる。従って、ユーザから目につきやすい前側F及び右側R(左側L)は、突出量Ta,Tb,Tc,Tdによる突出具合を小さく目立ち難いものとすることができる。
【0044】
ここで、付勢部350の付勢力BFにより外装部材100を後方に付勢して被取付部材300に取り付けることにより、前後方向FBの寸法誤差が比較的大きいMDFにより外装部材100を形成しても、小さく目立ち難く設定した前面112の突出量Tc,Tdを確実に確保することができる。
【0045】
例えば、前面112及び後面113に対応する内側面130の前後の寸法が、対応する被取付部材300の前後方向FBの寸法よりも大きく(長く)形成されていても、外装部材100が後方に付勢されるため確実に突出量Tc,Tdを確保することができると共に、大きく設定した後面113側の突出量Te,Tfにより、外装部材100が後側Bにズレて配置されても、後面113側も確実に突出量Te,Tfを確保することができる。
【0046】
なお、後面113側は、突出量Te,Tfを大きく設定しても、ユーザから良く見える部位ではないので、目立ち難い。また、MDFからなる外装部材100は、板厚方向には寸法精度よく形成することができるので、側面111側の突出量Ta,Tbは確保し易い。
【0047】
以上、本発明の実施形態によれば、鍵盤楽器10のケース200(右側面ケース240)は、第1シート70の外表面を含む第1外装面110並びに第1外装面110と接続し第2シート80の外表面を含む第2外装面120を備える外装部材100と、外装部材100が取り付けられ、第2外装面120と対向して配置される対向面(天板部310の下面313及び底板部324の上面328)を有し、断面視における当該対向面の突端(突端313a,313b,328a,328b等)が第1外装面110よりもケース200の外側に向けて突出する被取付部材300と、を備える。
【0048】
これにより、外装部材100の第2外装面120が、第2外装面120に対向する対向面を備える部材でカバーされるとともに、第1外装面110における、第2外装面120との境界にあたる端部を保護するよう、当該対向面の突端が第1外装面110よりも突出しているので、第1外装面110の端部や第2外装面120の端部がユーザの手指等に触れ難くすることができ、よってシートの端部からの剥がれも低減することができる。そして、簡単な構造でシートの捲れ防止を構成できるので、形状に工夫をして意匠性の高い外装部材100とすることもでき、良好に外装部材100に貼着したシートを剥がれにくくしたケース及びこのケースを備えた鍵盤楽器を提供することができる。
【0049】
また、被取付部材300は、外装部材100を一方向である後方に付勢する付勢部350を備える。これにより、外装部材100を、MDF等の寸法誤差が比較的大きい材料を用いても、確実に突出量Tc,Tdを確保することができる。そして、後方に向けて外装部材100を付勢することで、前側Fの突出量Tc,Tdを比較的小さく設定することができる。
【0050】
また、外装部材100は、付勢部350が外装部材100を付勢する方向と直交する方向で被取付部材300にねじ止めされる。これにより、外装部材100を付勢しつつ確実に外装部材100を固定することができる。
【0051】
また、付勢部350の板バネ351部は、被取付部材300と一体に設けられる樹脂バネである。これにより、被取付部材300(本体部320)を樹脂の成形部材として、容易に付勢部350を設けることができる。
【0052】
また、第1外装面110は、側面111と、側面111に接続する前面112及び後面113を有し、第2外装面120と対向して配置される対向面としての天板部310の下面313及び底板部324の上面328の突端313a,328a,313b,328b,313c,328cの各断面視における突出量Ta,Tb,Tc,Td,Te,Tfにおいて、前面112及び側面111からの突出量Ta,Tb,Tc,Tdは、後面113からの突出量Te,Tfより小さい(短い)。これにより、目立ちやすい前側F及び左右方向LRの側面111の突出量Ta,Tb,Tc,Tdを小さく(短く)設定することができる。
【0053】
なお、前面112の突出量Tc,Tdと側面111の突出量Ta,Tbは略同一とした。これにより、前面112から側面111に亘る突端313a,313b,328a,328bを均一にして、見た目の良いケース200とすることができる。
【0054】
また、第1シート70及び第2シート80は、木目調のシートとした。これにより、質感の高いケース200を提供することができる。
【0055】
上記実施形態では、右側面ケース240について詳述したが、右側面ケース240同様に左側面ケース230にも適用できる。この場合、左側面ケース230の外装部材100及び被取付部材300は、右側面ケース240の外装部材100及び被取付部材300と略左右対称の構造として配置される。これにより、良好に側方の外装部材100に貼着したシートを剥がれにくくした鍵盤楽器を提供することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0057】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]第1シートの外表面を含む第1面と、前記第1面と接続した第2面を備える外装部材と、
前記外装部材が取り付けられ、前記第2面と対向して配置される対向面を有し、断面視における前記対向面の突端が前記第1面よりも突出する被取付部材と、
を備えるケース。
[2]前記被取付部材は、前記外装部材を一方向に付勢する付勢部を備える、前記[1]に記載のケース。
[3]前記付勢部は、前記外装部材を後方に付勢する、前記[2]に記載のケース。
[4]前記外装部材は、前記付勢部が前記外装部材を付勢する方向と直交する方向で前記被取付部材にねじ止めされる、前記[2]に記載のケース。
[5]前記付勢部は、前記被取付部材と一体に設けられる樹脂バネである、前記[2]に記載のケース。
[6]前記第1面は、側面と、前記側面に接続する前面及び後面と、を有し、
前記後面から突出する前記突端の突出量は、前記前面から突出する前記突端の突出量及び前記側面から突出する前記突端の突出量よりも大きい、前記[1]に記載のケース。
[7]前記第1シートは、木目調のシートである、前記[1]に記載のケース。
[8]鍵盤と、
前記鍵盤の腕木として配置される、前記[1]乃至前記[7]の何れかに記載のケースと、
を備える鍵盤楽器。
【符号の説明】
【0058】
3 白鍵 4 黒鍵
5 鍵盤 10 鍵盤楽器
12 回転ノブ 14 操作部
15 木ねじ 18 イヤホンジャック
70 第1シート 80 第2シート
81 下面シート 82 上面シート
83 後側面シート 84 前側面シート
100 外装部材 100a 外装部材本体
110 第1外装面 111 側面
112 前面 113 後面
120 第2外装面 121 下面
122 上面 123 後側面
124 前側面 130 内側面
131 突出平坦部 131a 段部
131b 段部 132 突出平坦部
132a 段部 133 突起部
134 突起部 135 ねじ用下穴
136 ガイド孔 200 ケース
210 上側ケース 211 上面パネル
220 下側ケース 221 接続板
222 下面 230 左側面ケース
240 右側面ケース 250 前側ケース
260 背面パネル 300 被取付部材
310 天板部 311 上面パネル
312 縦板 312a 係合部
313 下面 313a 突端
313b 突端 313c 突端
320 本体部 320a 被係合部
321 側面 322 前部
323 後部 323a ベース部
324 底板部 325 段部
326 境界板 328 上面
328a 突端 328b 突端
328c 突端 340 ねじ孔
341 ピン 350 付勢部
351 板バネ部 351a 当接突部
352 スリット部 356 当接リブ
357 当接リブ
図1
図2
図3
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図8