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特開2024-5811変換システム、変換プログラム、及び変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005811
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】変換システム、変換プログラム、及び変換方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240110BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106198
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】520495788
【氏名又は名称】株式会社Yuimedi
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】グライムス 英美里
(72)【発明者】
【氏名】和智 大二郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換する変換システム及び方法を提供する。
【解決手段】変換システムにおいて、変換装置は、診察記録であるテキストデータの入力を診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段、テキストデータの形態素解析を行い、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルを付する解析手段と、要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する記憶手段、各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付するマッピング手段及び各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する出力手段を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換システムであって、
診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段と、
前記テキストデータの形態素解析により前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルが付されたメディカルラベル付き語句データを取得する、解析結果取得手段と、
前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段と、
前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段と、
前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段を備える、変換システム。
【請求項2】
医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換システムであって、
診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段と、
前記テキストデータの形態素解析を行い、前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルを付する解析処理を行う、解析手段と、
前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段と、
前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段と、
前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段を備える、変換システム。
【請求項3】
前記診察記録の要素は、主観的情報、客観的情報、評価および計画を含む、請求項1又は2に記載の変換システム。
【請求項4】
さらに、前記診察フォーマットにおけるタイトルの下に含まれるべき語句データの不足を判断する、不足判断手段を備え、
前記出力手段は、前記不足判断手段によって情報が不足すると判断された場合には、警告表示を出力処理することを含む、請求項1又は2に記載の変換システム。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記診察フォーマットにおけるタイトルの下に含まれるべき語句グループを、マッピングラベルとメディカルラベルの対応付けにより定義する、グループデータベースを記憶し、
前記不足判断手段は、前記テキストデータに基づいて生成された語句データのマッピングラベル及びメディカルラベルに基づいて前記グループデータベースを参照して、前記語句グループにおいて不足する語句を判定し、
前記出力手段は、前記不足判断手段によって情報が不足すると判断された場合には、不足する語句に対応する警告表示を出力処理することを含む、請求項4に記載の変換システム。
【請求項6】
前記入力受付手段は、さらに、患者情報の入力を受け付け、
前記記憶手段は、前記要素ラベルとメディカルラベルと患者情報の組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶し、
前記マッピング手段は、前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルと、患者情報に基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、請求項1又は2に記載の変換システム。
【請求項7】
医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換プログラムであって、
コンピュータを、診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段と、
前記テキストデータの形態素解析により前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルが付されたメディカルラベル付き語句データを取得する、解析結果取得手段と、
前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段と、
前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段と、
前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段として機能させる、変換プログラム。
【請求項8】
医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換プログラムであって、
コンピュータを、診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段と、
前記テキストデータの形態素解析を行い、前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルを付する解析処理を行う、解析手段と、
前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段と、
前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段と、
前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段を備える、変換プログラム。
【請求項9】
医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換方法であって、
診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付ステップと、
前記テキストデータの形態素解析により前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルが付されたメディカルラベル付き語句データを取得する、解析結果取得ステップと、
前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶ステップと、
前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピングステップと、
前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力ステップと、
をコンピュータが実行する変換方法。
【請求項10】
医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換方法であって、
診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付ステップと、
前記テキストデータの形態素解析を行い、前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルを付する解析処理を行う、解析ステップと、
前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶ステップと、
前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピングステップと、
前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力ステップと、
をコンピュータが実行する変換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師等により自由記述される診察記録データを、あらかじめ定義された診察フォーマットデータに変換するための変換システム、変換プログラム、及び変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医師等により自由記述される診察記録は、担当する医師等によって記載方法が異なり、情報が整理されてない場合があるという課題があった。
また、データの分析を行うためには、前提としてデータが統一された形式に整っている必要がある。しかし、医師等により自由記述される診察記録は、データの形式が統一されておらず、データ分析等に用いることが困難であるという課題があった。
【0003】
従来からデータを標準規格形式に変更するための技術が知られている。特許文献1には、所定の形式のデータに含まれる各項目について、ソースデータのどの項目が対応するのかの選択を受け付けて、更に項目ごとの変換処理を指定させることで、変換定義の作成を支援する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-068120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、医師等により自由記述される診察記録は、情報が整理されていない場合があり、また、データの形式が統一されておらず、データ分析等に用いることが困難であるという課題があった。
そこで、本発明は、医師等により自由記述される診察記録データを、あらかじめ定義された診察フォーマットデータに変換する新たな技術を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換システムであって、診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段と、前記テキストデータの形態素解析により前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルが付されたメディカルラベル付き語句データを取得する、解析結果取得手段と、前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段と、前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段と、前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段を備える。
【0007】
このような構成とすることで、医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換することができる。
また、各語句データに付された診察記録の要素を示す要素ラベルと、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルの2つのラベルから、該語句データに対応するタイトルを決定するためのマッピングラベルを付する構成とすることで、適切なマッピングラベルを付することができ、情報が適切に整理される。
【0008】
本発明の好ましい形態では、医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換システムであって、診察記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段と、前記テキストデータの形態素解析を行い、前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルを付する、解析手段と、前記要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段と、前記各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段と、前記各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段を備える。
【0009】
このような構成とすることで、医師等により自由記述される診察記録データを、あらかじめ定義された診察フォーマットデータに変換することができる。
また、各語句データに付された診察記録の要素を示す要素ラベルと、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルの2つのラベルから、該語句データに対応するタイトルを決定するためのマッピングラベルを付する構成とすることで、適切なマッピングラベルを付することができ、情報が適切に整理される。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記診察記録の要素は、主観的情報、客観的情報、評価および計画を含む。
【0011】
上記要素を含むことにより、診察記録であるテキストデータの入力を、適切に整理された状態で受け付けることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、さらに、前記診察フォーマットにおけるタイトルの下に含まれるべき語句データの不足を判断する、不足判断手段を備え、前記出力手段は、前記不足判断手段によって情報が不足すると判断された場合には、警告表示を出力処理することを含む。
【0013】
上記の不足判断手段を備えることにより、診察記録における情報の不足が可視化される。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記記憶手段は、前記診察フォーマットにおけるタイトルの下に含まれるべき語句グループを、マッピングラベルとメディカルラベルの対応付けにより定義する、グループデータベースを記憶し、前記不足判断手段は、前記テキストデータに基づいて生成された語句データのマッピングラベル及びメディカルラベルに基づいて前記データベースを参照して、前記語句グループにおいて不足する語句を判定し、前記出力手段は、前記不足判断手段によって情報が不足すると判断された場合には、不足する語句に対応する警告表示を出力処理することを含む。
【0015】
このような形態とすることにより、診察記録における情報の不足が可視化される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、医師等により自由記述される診察記録データを、あらかじめ定義された診察フォーマットデータに変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の変換システムの診察記録データとフォーマットデータの表示例である。
図2】本実施形態の変換システムを構成する変換装置1の機能ブロック図である。
図3】本実施形態のマッピングデータベースの一例である。
図4】本実施形態のグループデータベースの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の変換システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0019】
例えば、本実施形態では変換システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータプログラム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記憶媒体を用いれば、例えばコンピュータプログラムにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。
【0020】
図1は、本実施形態の変換システムの診察記録データと診察フォーマットデータの表示例である。
【0021】
本発明は、医師等により自由記述される診察記録データを、予め定義された診察フォーマットデータに変換するための変換システムである。
診察記録データは、医師等に自由記述される診察記録のデータである。例えば、図1の診察記録データの表示例W1のようにテキストデータとして記録することができる。診察記録データは、担当する医師等によって記載方法が異なり、情報が整理されていない場合がある。
一方、診察フォーマットデータは、後述する各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理されている。例えば、図2の診察フォーマットデータの表示例W2のように、語句データW21を、タイトルW22下に出力することができる。診察フォーマットデータは、変換前の診察記録データよりも情報が整理されている。
【0022】
なお、本明細書中において、医師等とは、医師に限定されず、歯科医師、看護師などの医療従事者等を含む。
また、本明細書において、診察とは、医療行為としての診察に限定されず、対象者の病状を判断するために質問をしたり体を調べたりすること全般を指す。
【0023】
図2は、本実施形態の変換システムを構成する変換装置1の機能ブロック図である。本実施形態では、単一のコンピュータが後述の各手段を備え、変換装置1として機能する構成を示すが、複数のコンピュータが相互の通信することによって本実施形態の変換装置1を実現してもよい。また、変換装置1と1又は複数のクライアントとがネットワークを介して通信し、変換装置1がサーバとして機能して、クライアントからの入力に基づいて処理を行い、処理結果をクライアントに送信する、クライアントサーバシステムの形態を採用してもよい。
【0024】
変換装置1としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、ネットワークへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた一般的なコンピュータ装置を利用することができる。記憶装置に専用のプログラム(変換プログラム)を記憶し、当該プログラムによって演算装置を後述の各手段として機能させることにより、任意のコンピュータを本実施形態の変換装置1として利用できる。
【0025】
変換装置1は、入力受付手段11と、解析手段12と、記憶手段13と、マッピング手段14と、出力手段15と、不足判断手段16とを備え、データベースDBは有線又は無線で相互に通信可能に構成される。データベースDBは、マッピングDBとグループDBを備える。なお、データベースDBは変換装置1の内部に備えられていてもよい。
以下、各手段の詳細について説明する。
【0026】
本実施形態に係るシステムは、診療記録であるテキストデータの入力を、診察記録の要素を示す要素ラベルを付して受け付ける入力受付手段を備える。
【0027】
診察記録の要素は、主観的情報、客観的情報、評価および計画を含むことが好ましい。これらの要素は、カルテなどの記入方法のひとつであるSOAPに基づく要素である。
【0028】
SOAPとは、診察記録をS(subjective、主観的情報)、O(objective、客観的情報)、A(assessment、評価)、P(plan、計画)の4つの項目に分けて記録する方法である。
S(subjective、主観的情報)は、対象者や対象者の家族が話した内容などから得られた情報を含む。O(objective、客観的情報)は、診察や検査などから得られた客観的な情報を含む。A(assessment、評価)は、医師等の診断や、SとOの内容を元に分析や解釈を行った総合的な評価を含む。P(plan、計画)は、Aに基づいて決定した治療の方針・内容、生活指導などを含む。Pは、さらに、その治療方針・内容、生活指導の選択にあたって考慮した事項を含んでもよい。
【0029】
診察記録であるテキストデータは、例えば、図1の診察記録データの表示例W1のように、各要素に対応する入力ボックス(W11~W14)にテキストデータを入力させる形態で入力を受け付ける。このような形態とすることで、Sに対応する入力ボックスW11に入力されたテキストデータに、Sを示す要素ラベルを付して入力を受け付けることができる。Oに対応する入力ボックスW12、Aに対応する入力ボックスW13、Pに対応する入力ボックスW14についても同様に、各入力ボックスに入力されたテキストデータに、それぞれの要素(O、A、P)を示す要素ラベルを付して入力を受け付けることができる。
【0030】
入力受付手段は、さらに、患者情報の入力を受け付けてもよい。
患者情報とは、患者の属性等に関する情報で、例えば、性別、生年月日、年齢、喫煙の有無、飲酒の有無などである。
例えば、図1の患者情報に対応する入力ボックスW15に患者情報を入力させる形態で、患者情報の入力を受け付けることができる。
患者情報は、S、O、A、Pの何れかに対応する入力ボックスから入力を受け付けてもよい。
【0031】
なお、診察記録であるテキストデータの入力は、医師等が直接入力しなくてもよい。例えば、医師等が紙などに記載した診察記録を、第三者が診察記録であるテキストデータとして入力してもよい。
【0032】
本実施形態に係る変換システムは、テキストデータの形態素解析により前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルを付する、解析手段を備える。
【0033】
メディカルラベルは、各語句データについて、語句の医療的な意味を示すラベルである。例えば、体の部位、病状、医薬品の名称、医薬品の用量、患者の個人情報、年齢、日付、等を示すラベルを付すことができる。なお、メディカルラベルは、医療的な専門用語のみに付されるものではなく、診察において有意な情報全般に付される。
例えば、語句データ「エナラプリル」には、それが医薬品の名称であることを示すメディカルラベルが付される。
【0034】
上記の解析手段は、市場で提供されている外部サービスを利用して、各語句データについてメディカルラベルを付することができる。
この場合には、解析手段(解析結果取得手段)は、解析処理として、外部サービスを提供するコンピュータに、入力受付手段で入力を受け付けたテキストデータを送信する処理と、テキストデータの形態素解析により前記テキストデータを構成する各語句データについて、語句の医療的な意味を示すメディカルラベルが付されたメディカルラベル付き語句データを取得する処理と、を行う。
【0035】
本実施形態に係る変換システムは、要素ラベルとメディカルラベルの組み合わせと、予め定義された診察フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶する、記憶手段を備える。
図3に本実施形態におけるマッピングデータベースの一例を示す。
【0036】
また、本実施形態に係る変換システムは、各語句データについて、付された要素ラベルとメディカルラベルに基づいて、マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する、マッピング手段を備える。
【0037】
例えば、Sに対応する入力ボックスW11に入力されたテキストデータを構成する語句データのひとつである「エナラプリル」には、Sを示す要素ラベルと、医薬品の名称であることを示すメディカルラベルが付される。図3のマッピングデータベースの一例を参照すると、Sを示す要素ラベルと、医薬品の名称であることを示すメディカルラベルの組み合わせには、タイトルを「併用薬」に決定するマッピングラベルが対応することが記憶されている。このマッピングデータベースに基づき、マッピング手段では、「エナラプリル」の語句データに、タイトルを「併用薬」に決定するマッピングラベルを付する。
【0038】
ここで、同じメディカルラベルが付されていても、異なるマッピングラベルが付される場合がある。
例えば、上述の通り、「エナラプリル」の語句データには、Sを示す要素ラベルと、医薬品の名称であることを示すメディカルラベルが付され、タイトルを「併用薬」に決定するマッピングラベルを付する。
一方、Pに対応する入力ボックスW14に入力されたテキストデータを構成する語句データのひとつである「ジュニナック錠」には、Pを示す要素ラベルと、医薬品の名称であることを示すメディカルラベルが付される。図3のマッピングデータベースの一例を参照すると、Pを示す要素ラベルと、医薬品の名称であることを示すメディカルラベルの組み合わせには、タイトルを「処方」に決定するマッピングラベルが対応することが記憶されている。このマッピングデータベースに基づき、マッピング手段では「ジュニナック錠」の語句データに、タイトルを「処方」に決定するマッピングラベルを付する。
このように、「エナラプリル」と「ジュニナック錠」は、どちらも医薬品の名称であることを示すメディカルラベルが付されるが、要素ラベルが異なるため、異なるマッピングラベルが付される。同じメディカルラベルが付される語句データであっても、いずれの要素に対応する情報であるかによって、診察フォーマットにおける位置づけが異なり、別のタイトルをつける必要があるためである。
【0039】
本実施形態に係る変換システムは、各語句データに付された要素ラベルとメディカルラベル組み合わせによってその語句データに対応するタイトルを決定することによって、より適切なタイトルをつけることができる。
【0040】
また、記憶手段は、要素ラベルと、メディカルラベルと、入力受付手段で入力を受け付けた患者情報の組み合わせと、予め定義された診療フォーマットにおけるタイトルを決定するためのマッピングラベルとの関係を定義するマッピングデータベースを記憶してもよい。この場合、前記マッピング手段は、各語句データについて付された要素ラベルとメディカルラベルと、患者情報に基づいて、前記マッピングデータベースを参照しマッピングラベルを付する。
各語句データについて付された要素ラベル、メディカルラベルに加えて、患者情報に応じて、タイトルを決定するマッピングラベルを付することによって、患者情報も考慮に入れたタイトルを決定することができる。
【0041】
本実施形態に係る変換システムは、各語句データについて、付されたマッピングラベルに基づいて、対応するタイトル下に出力処理する、出力手段を備える。
例えば、図1の診察フォーマットデータの表示例W2のように、語句データW21を、対応するタイトルW22下に出力処理をすることができる。
表示方法は図1のW2の表示例に限定されず、語句データと、該語句データに対応するタイトルの結びつきが理解できる形で出力することができればよい。
また、出力手段は、出力処理として、診察フォーマットデータの表示出力を行うことに加えて、又は代えて、csv(comma-separated values)形式等の所定のファイル形式にて診察フォーマットデータを出力することができる。
【0042】
本実施形態に係るシステムは、さらに、診察フォーマットにおけるタイトルの下に含まれるべき語句データの不足を判断する、不足判断手段を備え、前記出力手段は、前記不足判断手段によって情報が不足すると判断された場合には、警告表示を出力処理することを含む形態としてもよい。
【0043】
例えば、「鑑別診断」のタイトルの下に含まれるべき語句データが不足すると判断された場合、診察フォーマットデータの表示例のW23のように、「鑑別診断」のタイトルの下に「ERROR:入力してください!」という警告表示が出力される。
この場合の語句データの不足は、例えば、「鑑別診断」のマッピングラベルが付された語句データが存在しないことによって、判断することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るシステムにおいて、記憶手段は、診察フォーマットにおけるタイトルの下に含まれるべき語句グループを、マッピングラベルとメディカルラベルの対応付けにより定義する、グループデータべースを記憶していてもよい。
図4に本実施形態におけるグループデータベースの一例を示す。
また、不足判断手段は、テキストデータに基づいて生成された語句データのマッピングラベル及びメディカルラベルに基づいてデータベースを参照して、語句グループにおいて不足する語句を判定し、前記出力手段は、前記不足判断手段によって情報が不足すると判断された場合には、不足する語句に対応する警告表示を出力処理することを含む形態としてもよい。
【0045】
例えば、図4のデータベースの一例を参照すると、タイトルを「併用薬」に決定するマッピングラベルには、医薬品の名称であることを示すメディカルラベル、頻度を示すメディカルラベル、量を示すメディカルラベル、時期を示すメディカルラベルが対応付けられている。つまり、「併用薬」のタイトルの下には、これら4つのメディカルラベルが付された語句データからなる語句グループが含まれるべきであることが記憶されている。
【0046】
不足判断手段では、グループデータベースを参照して、語句グループにおいて不足する語句を判定することができる。
例えば、タイトルを「併用薬」に決定するマッピングラベルが付された語句データがあるときには、図4に記載の組み合わせのマッピングラベルとメディカルラベルが付された語句データが含まれるべきである。タイトルを「併用薬」に決定するマッピングラベルと、時期を表すメディカルラベルが付された語句データが存在しない場合には、情報が不足すると判断され、「(いつから)」という、不足する語句に対応する警告表示を出力処理する。
【0047】
なお、グループデータベースには、複数のマッピングラベルの対応付けによって、1単位のグループが定義されていてもよい。この際、複数のマッピングラベルの並び順も併せて定義されてよい。また、変換後のメディカルラベルに対して図示しないカラム名が対応付けられていてもよい。例えば、図1のタイトルW22及び語句データW21に対しては、「併用薬」というタイトルを示すカラム名の配下に、図示しない「薬剤名」、「成分量」、「服用方法」、「服用開始」というカラム名が登録されている。これらカラム名は、出力手段が、所定のファイル形式にて診察フォーマットデータを出力する際に利用される。なお、診察フォーマットデータの表示出力を行う際に利用してもよい。
【0048】
また、本実施形態に係るシステムは、修正受付手段を備えてもよい。
修正受付手段を備えることによって、診察記録であるテキストデータの入力の際に入力漏れや入力ミスがあった場合に、変換後の診察フォーマットデータを修正することで、情報を補完することができる。
特に、上述の不足判断手段によって情報が不足すると判断され、不足する語句に対応する警告表示が出力された場合に、診察フォーマットデータを修正することで、予め定義された診察フォーマットデータに沿った必要な情報を不足なく記録することができる。
また、意図しない形で診察フォーマットデータが出力された場合にも、変換後の診察フォーマットデータを修正することで、適切な診察フォーマットデータにすることができる。
【符号の説明】
【0049】
W1:診察記録データの表示例
W11:S(subjective、主観的情報)に対応する入力ボックス
W12:O(objective、客観的情報)に対応する入力ボックス
W13:A(assessment、評価)に対応する入力ボックス
W14:P(plan、計画)に対応する入力ボックス
W15:患者情報に対応する入力ボックス
W2:診察フォーマットデータの表示例
W21:語句データ
W22:タイトル
W23:警告表示
1:変換装置
11:入力受付手段
12:解析手段
13:記憶手段
14:マッピング手段
15:出力手段
16:不足判断手段
17:修正受付手段
DB:データベース

図1
図2
図3
図4