(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005812
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】医療関連情報検索システム、医療関連情報検索プログラム、及び医療関連情報検索方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240110BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106199
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】520495788
【氏名又は名称】株式会社Yuimedi
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】グライムス 英美里
(72)【発明者】
【氏名】和智 大二郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】専門家であるか専門家以外の者であるかを問わないユーザが簡便に所望の医療関連情報を検索することができ、患者個人を特定可能な情報の掲載が不要な、医療に関連する情報を検索するためのシステム、検索プログラム及び検索方法を提供する。
【解決手段】サーバ装置1と、ユーザ端末2とが、ネットワークNWを介して通信可能な医療関連情報検索システムにおいて、サーバ装置は、臨床データに、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを、提供者から取得する加工済み臨床データ取得手段と、取得した加工済み臨床データと、提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納する格納手段と、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能な検索手段と、を有する。加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な医療関連情報検索システムであって、
前記医療関連情報検索システムは、加工済み臨床データ取得手段と、格納手段と、検索手段と、を備え、
前記加工済み臨床データ取得手段は、臨床データに、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを、提供者から取得する手段であり、
前記格納手段は、取得した前記加工済み臨床データと、前記提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納する手段であり、
前記検索手段は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されており、
前記加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む、医療関連情報検索システム。
【請求項2】
さらに、加工済み臨床データ生成手段を備え、
前記加工済み臨床データ生成手段は、提供者から臨床データを取得し、前記臨床データに統計学的処理を含む加工処理を施すことによって加工済み臨床データを生成する、請求項1に記載の医療関連情報検索システム。
【請求項3】
前記検索手段は、ユーザから前記加工済み臨床データを検索するための検索条件の入力を受け付け、受け付けた前記検索条件に基づいて、前記格納手段に格納された前記加工済み臨床データから、前記ユーザに提示する前記医療関連情報を特定する、請求項1に記載の医療関連情報検索システム。
【請求項4】
前記加工済み臨床データは、男女比、年齢構成、前記臨床データの種類、疾患の好発部位、及び自覚症状から選ばれる情報である、請求項1に記載の医療関連情報検索システム。
【請求項5】
前記医療関連情報は、疾患に関する情報、前記疾患の治療に用いられ得る薬剤に関する情報、前記疾患の治療に用いられ得る手術方法に関する情報、医師に関する情報、組織に関する情報、及び前記疾患の治験に関する情報から選ばれる情報である、請求項1に記載の医療関連情報検索システム。
【請求項6】
前記医師に関する情報は、当該医師の経歴に関する情報を含む、請求項5に記載の医療関連情報検索システム。
【請求項7】
医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な医療関連情報検索プログラムであって、
前記医療関連情報検索プログラムは、加工済み臨床データ取得手段と、格納手段と、検索手段としてコンピュータを機能させ、
前記加工済み臨床データ取得手段は、臨床データを、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを提供者から取得する手段であり、
前記格納手段は、取得した前記加工済み臨床データと、前記提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納する手段であり、
前記検索手段は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されており、
前記加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む、医療関連情報検索プログラム。
【請求項8】
医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な医療関連情報検索システムを用いた、コンピュータにより実行される医療関連情報検索方法であって、
前記医療関連情報検索システムは、加工済み臨床データ取得手段と、格納手段と、検索手段と、を備え、
前記加工済み臨床データ取得手段は、臨床データを、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを提供者から取得し、
前記格納手段は、取得した前記加工済み臨床データと、前記提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納し、
前記検索手段は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されており、
前記加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む、医療関連情報検索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療に関連する情報を検索するための検索システム、検索プログラム及び検索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野における情報管理のデジタル化が進んでいる。特に、医療情報の管理については、1の医療機関内での診療科を横断した個人の診察歴の管理に留まらず、医療機関同士又は医療機関と個人との間で、医療情報を共有するシステムが検討されてきている。
例えば特許文献1には、複数の医療機関同士で患者の情報を共有することができるシステムについて記載されている。具体的には特許文献1には、複数の医療機関又はその提携組織が、クラウドサーバを介して患者の個人情報や患者の医用画像を含む患者情報を共有するシステムが記載されている。
また例えば特許文献2には、薬剤の処方履歴や処方箋等の履歴を電子的にまとめることができる情報取得端末装置が記載されている。具体的には特許文献2には、ユーザを識別する個人識別情報に対応付けられた連携IDを用いて他のシステムから取得したユーザの第1の健康に関するデータを受信し、当該第1の健康に関するデータを出力することができる情報取得端末装置が記載されている。
【0003】
また新薬や新規な治療方法の開発に際しては、既に公開されている論文を参照することがよく行われる。このような論文は、公知の論文検索サイトで検索することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-031189号公報
【特許文献2】特開2016-224995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているシステムや特許文献2に記載されている装置は、プライバシーの観点から問題があった。すなわち、個人の診察歴や既往症、医用画像、薬剤の処方履歴は個人情報であるため、その流出には細心の注意を払う必要がある。しかし、ネットワーク上のセキュリティを強固にしたとしても、不正アクセスや情報漏洩のリスクをゼロすることはできず、特許文献1や特許文献2に記載された発明をもってしても、個人情報が流出するおそれは軽減していなかった。
すなわち、個人情報である診療歴などについて、これをそのままウェブ上に掲載することは、患者のプライバシーの観点から忌避されるべきであるにもかかわらず、これを実現する手段は提供されていなかったのである。
【0006】
また、雑誌に掲載され、又は電子的に提供されている論文は多数存在するところ、論文検索サイトで目的の論文を検索する際には、著者やその論文が掲載された雑誌、研究対象の疾患等の種々のデータを入力する必要があり、所望の情報を簡便に探すことができなかった。
また雑誌や論文検索サイトで発見した論文に、ユーザが所望する臨床データ(治験のデータを含む)や実験データが本当に記載されているかは、ある程度読み進めなければ判断することができないばかりか、そもそも学術論文自体、慣れていない者にとっては読みづらいものである。
すなわち、学術論文や治験データは、さらなる医療分野の発展においては簡便に使用することができることが望まれるものであるにも関わらず、医師等の専門家以外の者(例えば、医療系ベンチャーや創薬ベンチャーなど、医療に携わって日が浅い者等)が簡単に利用できるものではなかった。
また医師等の専門家は常に多忙であることから、論文や他の医師が取得した臨床データを簡便に取得することができるシステムがあれば、論文検索やデータ検索に費やす時間を短縮し、診察や研究にかける時間を増大させることができ、医療分野の発展に資することができる。
【0007】
上記状況に鑑み、本発明は、ユーザ(専門家であるか専門家以外の者であるかを問わない)が簡便に所望の医療関連情報を検索することができ、患者個人を特定可能な情報の掲載が不要な、医療に関連する情報を検索するためのシステム、検索プログラム及び検索方法を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する発明は、医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な医療関連情報検索システムであって、前記医療関連情報検索システムは、加工済み臨床データ取得手段と、格納手段と、検索手段と、を備え、前記加工済み臨床データ取得手段は、臨床データを、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを提供者から取得する手段であり、前記格納手段は、取得した前記加工済み臨床データと、前記提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納する手段であり、前記検索手段は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されており、前記加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む、医療関連情報検索システムである。
【0009】
このような構成とすることで、ユーザは簡便に所望の医療関連情報を検索することができる。これにより、新規な共同研究や治験の開始のハードルが下がるため、医療分野の発展に資することができる。
また統計学的に処理されたデータを掲載することにより、患者の個人情報が掲載されないため、患者のプライバシーを保護することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、さらに、加工済み臨床データ生成手段を備え、前記加工済み臨床データ生成手段は、提供者から臨床データを取得し、前記臨床データに統計学的処理を含む加工処理を施すことによって加工済み臨床データを生成する。
【0011】
このような構成とすることで、提供者は自身が保有する臨床データを提供するだけでよくなるため、提供者の負担が軽減し、より効率的に医療関連情報を収集することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記検索手段は、ユーザから前記加工済み臨床データを検索するための検索条件の入力を受け付け、受け付けた前記検索条件に基づいて、前記格納手段に格納された前記加工済み臨床データから、前記ユーザに提示する前記医療関連情報を特定する。
このような構成とすることで、ユーザは簡便に、わかりやすい医療関連情報を検索することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記加工済み臨床データは、男女比、年齢構成、臨床データの種類、疾患の好発部位、自覚症状から選ばれる情報である。
このような構成とすることで、患者の個人情報が掲載されないので、患者のプライバシーを保護することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記医療関連情報は、疾患に関する情報、前記疾患の治療に用いられ得る薬剤に関する情報、前記疾患の治療に用いられ得る手術方法に関する情報、医師に関する情報、組織に関する情報、及び前記疾患の治験に関する情報から選ばれる。
本発明のより好ましい形態では、前記医師に関する情報は、当該医師の経歴に関する情報を含む。
上記のような情報は、新薬の研究開発や治験の開始を検討するにあたって、特に重要になる情報である。よってこのような構成とすることで、簡便にわかりやすい医療関連情報を簡便に検索することができる。さらには、新薬の研究開発や治験の開始のハードルを下げることや、先行研究者とのマッチングを容易にすることができ、医療分野の発展に資することができる。
【0015】
上記課題を解決する本発明は、医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な医療関連情報検索プログラムであって、前記医療関連情報検索プログラムは、加工済み臨床データ取得手段と、格納手段と、検索手段としてコンピュータを機能させ、前記加工済み臨床データ取得手段は、臨床データを、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを提供者から取得する手段であり、前記格納手段は、取得した前記加工済み臨床データと、前記提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納する手段であり、前記検索手段は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されており、前記加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む、医療関連情報検索プログラムである。
【0016】
このような構成とすることで、簡便に所望の医療関連情報を検索することができる。これにより、新規な共同研究や治験の開始のハードルが下がるため、医療分野の発展に資することができる。
また患者の個人情報の掲載が不要なので、患者のプライバシーを保護することができる。
【0017】
上記課題を解決する本発明は、医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な医療関連情報検索システムを用いた、コンピュータにより実行される医療関連情報検索方法であって、前記医療関連情報検索システムは、加工済み臨床データ取得手段と、格納手段と、検索手段と、を備え、前記加工済み臨床データ取得手段は、臨床データを、統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを提供者から取得し、前記格納手段は、取得した前記加工済み臨床データと、前記提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納し、前記検索手段は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されており、前記加工済み臨床データは、これが生成される元となった臨床データを統計学的処理した情報を含む、医療関連情報検索方法である。
【0018】
このような構成とすることで、簡便に所望の医療関連情報を検索することができる。これにより、新規な共同研究や治験の開始のハードルが下がるため、医療分野の発展に資することができる。
また患者の個人情報の掲載が不要なので、患者のプライバシーを保護することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザが簡便に所望の医療関連情報を検索することができ、患者個人を特定可能な情報の掲載が不要な、医療に関連する情報を検索するためのシステム、検索プログラム及び検索方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態の医療関連情報検索システムの機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の医療関連情報検索システムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2の実施形態の医療関連情報検索システムの機能ブロック図である。
【
図4】第2の実施形態の医療関連情報検索システムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、医療に関連する情報である医療関連情報を検索可能な、医療関連情報システムに関する。
本発明において医療関連情報は、医療に関わる情報であって、臨床データを統計学的処理した情報を含んでいれば特に制限はない。例えば医療関連情報は、具体的な疾患名、当該疾患に関わる統計学的情報(例えば男女比、年齢構成、好発部位、自覚症状等)の他、医師に関する情報(医師の氏名、所属、経歴、専門家等)や医療機関に関する情報(病院名又は施設名、設置形態、所属医師の人数、標榜科等)、研究所や医療系サービスを提供する企業に関する情報(組織名、所在地等)を挙げることができるが、これに限定されない。
【0022】
以下、図面を用いて、本発明の医療関連情報検索システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0023】
以下では、具体的な実施形態における医療関連情報検索システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータプログラム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。
【0024】
<第1の実施形態>
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態における医療関連情報検索システムの機能ブロック図である。本実施形態の医療関連情報検索システムは、サーバ装置1と、ユーザ端末2とが、ネットワークNWを介して通信可能に構成される。なおユーザ端末2は複数存在していてよく、例えば各病院の医師等や医療系サービスを提供する会社、研究所等に所属するユーザに使用され得る。またサーバ装置1は、複数のコンピュータを協働させることによって実現されてもよい。
【0025】
サーバ装置1としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、サーバ装置等の一般的なコンピュータ装置を利用することができる。
【0026】
サーバ装置1は、加工済み臨床データ取得手段11と、格納手段12と、検索手段13を備える。本実施形態では、サーバ装置1は、表示処理手段を更に備える(図示しない)。表示処理手段は、ユーザ端末2からの表示要求に呼応して種々の画面を表示処理し、表示処理結果を返送することで、臨床データを間接的に検索する為のプラットフォームを提供する。
【0027】
加工済み臨床データ取得手段11は、臨床データに統計学的処理を含む加工処理を施すことにより生成されるデータである加工済み臨床データを、提供者から取得する手段である。
格納手段12は、取得した上記加工済み臨床データと、その提供者の情報である提供者情報とを紐づけて、医療関連情報として格納する手段である。
検索手段13は、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されている。
【0028】
ユーザ端末2は、サーバ装置1にネットワークNWを介して接続され、ユーザが使用する端末装置である。ユーザ端末2としては、演算装置、記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、PC(Personal Computer)等の任意のコンピュータ装置を利用することができる。その他、スマートフォンやタブレット型端末をユーザ端末2として利用してもよい。サーバ装置1との間で各種情報の入力及び送受信を行うための専用のアプリケーションや、専用のウェブページにアクセスするためのブラウザアプリケーション等が記憶装置に記憶され、演算装置が各種の処理を実行することで、任意のコンピュータ装置が本発明のユーザ端末2として機能する。
ユーザ端末2は、タッチパネルディスプレイやマイク等の入力手段21と、ディスプレイ装置やスピーカー等の出力手段22と、を備える。
【0029】
図2を参照して、本実施形態に係る医療関連情報の登録方法を説明する。
まず、ステップS1において、加工済み臨床データ取得手段11が、提供者から、加工済み臨床データを取得する。加工済み臨床データの取得は、ユーザ端末2を介して行われる。
【0030】
加工済み臨床データの元となる臨床データ(生データ)は、特に制限されないが、例えば実際の治療を通じて得られるデータセットや、臨床研究(動物試験を含む)、臨床試験(相を問わない)、又は治験を通じて得られるデータセットを挙げることができる。実際の治療を通じて得られるデータセットとしては、カルテに記載の内容、血液検査や尿検査、組織検査等の検査値、電子医療記録(Electric Medical Record;EMR)、電子健康記録(Electric Health Record;EHR)、パーソナルヘルスレコード(Personal Health Record:PHR)等を例示することができる。
【0031】
加工済み臨床データは、臨床データから生成されるデータであり、上記のような臨床データを統計学的処理した情報を含む。
統計学的処理は、カイ2乗検定、分散分析、t検定、多次元分析、主成分分析、因子分析、コレスポンデンス分析、クラスター分析、ABC分析、回帰分析、時系列分析、バランス比較、Zスコア比較など、一般的に用いられている方法を適宜採用することができる。
また、加工処理は、統計学的処理以外の処理を含んでいてもよい。統計学的処理以外の処理は例えば、臨床データの作成者や作成日、対象疾患、情報ソースの種類等の情報を抽出する抽出処理を挙げることができるが、これに限定されない。ただし抽出処理は、患者個人を特定可能な情報は抽出しないことが好ましい。これは、加工処理に含まれるその他の処理も同様である。
臨床データに統計学的処理をすることにより、加工済み臨床データを第三者が取得しても、加工済み臨床データに基づいて個人を特定することはできない。したがって上記構成とすることにより、患者のプライバシーを保護することができる。
また抽出処理のような、統計学的処理以外の処理を含む場合には、後述する本システムを利用した医療関連情報の検索をより容易にすることができる。
【0032】
加工済み臨床データの取得方法は、特に限定されない。本実施形態では、サーバ装置1の表示処理手段が、入力フォームを含む入力画面を表示処理し、表示処理結果をユーザ端末2に送信する。これにより、ユーザ端末2の出力手段22に、入力手段21を介して操作可能な入力フォームが表示される。入力フォームには、提供者情報や加工済み臨床データをユーザに入力させる形態とすることもできるし、提供者情報のみを入力させ、加工済み臨床データを含むデータファイル(形式は特に制限されない)をアップロードする形態とすることができる。
入力フォームには、加工済み臨床データについて必須で入力すべき事項(必須入力項目)が表示されている。必須入力項目としては例えば、提供者情報、加工済み臨床データの作成者(個人であるか組織であるかを問わない)、収集項目、収集件数、加工済み臨床データ自体、関連する疾患、関連する薬剤、関連する術式等を挙げることができるが、これらに限定されず、システムの形態に応じて適宜取捨選択しても構わない。また、上記のうち必須入力項目として採用しなかった項目は、以下に記載する任意入力項目として入力フォームに表示してもよい。
また入力フォームには、任意で入力できる加工済み臨床データの項目(任意入力項目)が表示されていてもよい。任意入力項目としては例えば、ライセンスの可否、商用利用の可否、他のデータベースへの掲載の可否、学術論文への形成や治験への利用の可否等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0033】
提供者の利便性の観点から、提供者情報のみを入力させ、加工済み臨床データを含むデータファイルを提供者にアップロードさせる形態とすることが好ましい。
このとき、提供者にはあらかじめ加工済み臨床データ取得手段11が処理可能な(すなわち、提供者がアップロード可能な)ファイルのフォーマットが知らされており、提供者は、当該フォーマットに適合するような形式で、加工済み臨床データを含むデータファイルをアップロードする形態とすることができる。
【0034】
本発明の好ましい形態では、加工済み臨床データは、男女比、年齢構成、臨床データの種類、疾患の好発部位、及び自覚症状から選ばれる情報である。
このようなデータは、統計学的な処理を経ることによって得られるものであるから、加工済み臨床データを第三者が取得しても、これに基づいて個人を特定することができない。したがって、上記構成とすることにより、患者のプライバシーを保護することができる。
【0035】
提供者は、加工済み臨床データを提供する者である。提供者は医師個人であってもよく、医療機関であってもよい。また、医師個人又は医療機関から依頼を受けた第三者が加工済み臨床データを生成し、提供者として生成した加工済み臨床データを提供してもよい。
【0036】
提供者情報は、提供者の氏名又は名称などの固有名詞でもよいが、提供者IDなど、提供者に固有の識別子であることが好ましい。
提供者に固有の識別子を付与する場合、サーバ装置1は、提供者に識別子を付与する手段である識別子付与手段を備えていてもよい(図示しない)。また付与された識別子は、提供者に知らされても知らされなくてもよいが、ステップS1で提供者情報として提供者に固有の識別子を取得する場合には、提供者に識別子が知らされていることが好ましい。
【0037】
次に、ステップS2において、格納手段12が、ステップS1で加工済み臨床データ取得手段11が取得した加工済み臨床データと、提供者情報とを紐づけ、医療関連情報として格納手段に格納する。なお、提供者情報を、プラットフォームに事前登録可能に構成し、ユーザは、ログイン処理を経て加工済み臨床データを登録する構成としてもよい。ステップS2より前において提供者情報を取得していない場合には、ステップS1及びS2の間に、提供者情報を取得してもよい。
【0038】
本発明の好ましい形態では、医療関連情報は、疾患に関する情報、当該疾患の治療に用いられ得る薬剤に関する情報、当該疾患の治療に用いられ得る手術方法に関する情報、当該疾患の治療経験がある医師に関する情報、当該疾患の治療経験がある組織に関する情報、及び当該疾患の治験に関する情報から選ばれる情報である。なおこれらの情報に加工済み臨床データが含まれることは、言うまでもない。
【0039】
疾患に関する情報としては、疾患名、特徴的な症状、患者数、罹患しやすい人の属性(性別、年齢、既往症等)、5年後生存率等を例示することができるが、これらに限定されず、またこれらを組み合わせた情報でもよい。
疾患の治療に用いられ得る薬剤に関する情報としては、現在ある特定の疾患の治療に一般的に用いられている薬剤の一般名、慣用名若しくは有効成分の名称(慣用名称を含む)、又は、症例は少ないが用いてもよい薬剤の一般名、慣用名若しくは有効成分の名称(慣用名称を含む)等を例示することができるが、これらに限定されず、またこれらを組み合わせた情報でもよい。
疾患の治療に用いられ得る手術方法に関する情報としては、現在ある特定の疾患の治療で一般的に採用されている術式の名称(慣用名称を含む)、手術器具、手術時間、成功率等を例示することができるが、これらに限定されず、またこれらを組み合わせた情報でもよい。
【0040】
医師に関する情報としては、医師の名前、専門(科名でもよく、具体的な疾患名まで特定してもよい)、開業医か勤務医か、連絡先、医師登録番号、経歴等を例示することができるが、これらに限定されず、またはこれらを組み合わせた情報でもよい。
医師に関する情報として医師の連絡先を含む形態の場合、ユーザが当該医師の他の情報を踏まえてコンタクトを取りたいと思ったときに、容易に連絡することができるので、本発明に係るシステムは例えば、新規の共同開発や治験の開始前におけるマッチングシステムとしても機能することができる。
【0041】
本発明の好ましい形態では、医師に関する情報は、当該医師の経歴に関する情報を含む。
経歴に関する情報としては、キーオピニオンリーダーの経験の有無、当該医師が筆頭著者となっている論文の有無及び/又は多寡、当該医師が関わった(好ましくは、筆頭著者となっている)論文の被引用数等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0042】
組織に関する情報としては、組織の形態(医療機関か個人経営か)、病床数、所在地、所属する医師の数や名前、診察可能な科(具体的な疾患名まで特定してもよい。)、ある疾患に対する治験の有無及びその内容(治験期間、人数、具体的な治験方法、治験した薬剤等)等を例示することができるが、これらに限定されず、またはこれらを組み合わせた情報でもよい。また、上記した医師に関する情報と重複する情報が含まれていても構わない。
上記情報のうち、診察可能な科並びにある疾患に対する治験の有無及びその内容については、患者個人が特定されない限りにおいて、詳細な内容を医療関連情報として登録してもよく、概要のみを医療関連情報として登録してもよい。
【0043】
なお、医療関連情報には、上記以外の情報を含んでいても構わない。
例えば、ライセンスの可否及び費用、共同研究の可否、医療関連情報の利用用途(治験への利用の可否、臨床研究の可否、基礎研究目的での利用の可否、論文への引用の可否等)及び費用等についての情報を含んでいてもよい。これらの情報は、好ましくは、ステップS1において提供者から加工済み臨床データを取得する際に合わせて取得するが、ステップS2において取得しても構わない。
【0044】
以下、第1の実施形態に係るシステムを利用した、医療関連情報の検索方法を説明する。
まずユーザ端末2から、検索手段13が検索条件を取得する。
検索手段13は上記の通り、統計情報を用いて医療関連情報を検索可能に構成されていればよく、その具体的構成は特に限定されない。
好ましくは、検索手段13は、ユーザから加工済み臨床データを検索するための検索条件の入力を受け付け、受け付けた当該検索条件に基づいて、格納手段12に格納された加工済み臨床データから、当該ユーザに提示する前記医療関連情報を特定する手段である。
【0045】
検索条件は、格納手段12に格納されている医療関連情報を検索することができれば、特に限定されない。
例えば、医療関連情報を得たい疾患の名称や薬剤の名称などを、ユーザ端末2の入力手段21を介してユーザに入力させる形態や、ラジオボタン、チェックボックス及び/又はプルダウンリストを表示し、これらの中から該当するもの又は近いものを選択させる形態とすることができる。又はこれらの形態を組み合わせてもよい。
【0046】
次に、検索手段13は、ユーザから取得した検索条件に基づいて、格納手段12内に格納された医療関連情報からユーザに提示する情報を特定する。
このとき、ユーザから取得した検索条件に完全に一致する医療関連情報のみをユーザに提示する情報として特定してもよく、検索条件に類似すると判断される医療関連情報もユーザに提示する情報としてあわせて特定してもよい。複数の医療関連情報をユーザに提示する情報として特定する場合、検索条件への類似度や登録年月日、提供者情報等に基づいて、ユーザに提示する優先度を決定してもよい。
検索条件と格納手段12中の医療関連情報の類似度の判断や、複数の医療関連情報を提示する場合の提示の優先度の決定方法は特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。
【0047】
また、ユーザから取得した検索条件に類似する医療関連情報のみが格納手段12に格納されている場合、当該類似する医療関連情報を、検索条件に類似する医療関連情報としてサジェストする形態とすることもできるし、「該当する医療関連情報がない」ことをユーザに提示する形態とすることもできる。
さらにまた、ユーザから取得した検索条件とは一致も類似もしない医療関連情報のみが格納手段12に格納されてる場合には、「該当する医療関連情報がない」ことをユーザに提示する形態とすることができる。
【0048】
最後に、表示手段は、検索手段13により特定されたユーザに提示する情報を表示処理し、表示処理結果をユーザ端末2に送信することで、ユーザ端末2の出力手段22を介してユーザに提示する。ここで、複数の医療関連情報がユーザに提示する情報として特定されている場合において、ユーザに提示する優先度を決定している場合には、当該優先度に応じて医療関連情報の表示形態に差をつけてもよい。例えば優先度が高い医療関連情報を上位に表示し、優先度の低い医療関連情報を下位に表示する形態とすることもできるし、優先度の高い医療関連情報を大きく表示し、優先度の低い医療関連情報を小さく表示することもできる。この場合好ましくは、優先度決定の観点を変更することにより、表示形式を変更することができるように構成されている。
以上のような構成とすることにより、ユーザは提示された情報をもとに、共同研究や治験の開始等について検討することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図3及び
図4を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の形態と重複する部分については、説明を省略する。
【0050】
図3は、第2の実施形態における医療関連情報検索システムの機能ブロック図である。本実施形態においては、サーバ装置1は、上記した加工済み臨床データ取得手段11と、格納手段12と、検索手段13に加えて、加工済み臨床データ生成手段14を備える。また本実施形態においても、サーバ装置1は、表示処理手段を備える(図示しない)。
加工済み臨床データ生成手段14は、提供者から臨床データを取得し、取得した臨床データに統計学的処理を含む加工処理を施すことによって、加工済み臨床データを生成する手段である。
【0051】
図4を参照して、本実施形態に係る医療関連情報の登録方法を説明する。
本実施形態においては、まず、ステップS11において、加工済み臨床データ生成手段14が、臨床データを取得し、加工済み臨床データを生成する。加工処理に含まれる具体的な統計学的処理及びその他含んでいてもよい他の処理は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
加工済み臨床データ生成手段14は、所定のフォーマットに従って生成された定型臨床データを用いて、加工済み臨床データを生成する。なお、定型臨床データは、加工済み臨床データを生成する為の所定の規則に準拠したデータを示し、例えば、特定のデータ列(又は行)に対して、事前定義した特定のカラム名を使用したり、特定の列(又は行)番号に、特定のデータ列(又は行)を配置したデータである。提供者から取得する臨床データそのものが定型臨床データであってもよいし、加工済み臨床データ生成手段14又は図示しない定型臨床データ生成手段が、臨床データを加工して定型臨床データを生成してもよい。
例えば、表示処理手段によりユーザ端末2の出力手段22に、入力手段21を介して操作可能な表形式の入力フォームであって、表の各列(又は行)に対して入力すべきデータ列が提示された入力フォームを表示させ、提供者は、この入力フォームに従って臨床データを入力することで、定型臨床データを生成することができる。
また、任意の形式の臨床データを含むファイルをアップロードした後、表示処理手段がアップロードした臨床データを表示処理し、加工処理に必要なデータが入力されているカラムを指定することで、定型臨床データを生成可能に構成してもよい。このときカラム名の指定は、カラム名の変更を含んでいてもよい。
さらにまた、あらかじめ提供者に上記フォーマットの形式を知らせておき、提供者が当該フォーマットに沿って作成した定型臨床データとしての臨床データを含むファイルをアップロードさせる形態とすることもできる。この場合、本発明に係るシステムは、当該フォーマットに適合する形式の臨床データを含むファイルを作成可能なテンプレートを提供してもよい。この場合、本発明に係るシステムは、ユーザが当該テンプレートをダウンロードすることが可能なように構成されていてもよく、本発明に係るシステム上でテンプレートに沿ったファイルを作成可能に構成されていてもよい。後者の場合、作成したファイルは、提供者によりダウンロード可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、提供者は臨床データを提供すればよく、提供者自らが加工済み臨床データの生成を行う必要がない。したがって提供者からのデータ提供がしやすくなり、本発明に係るシステムが医療関連情報を収集することが容易になる。
【0053】
次に、ステップS1において、ステップS11で加工済み臨床データ生成手段14が生成した加工済み臨床データを、加工済み臨床データ取得手段11が取得する。
最後にステップS2において、第1の実施形態と同様にして医療関連情報を格納手段に格納する。
第2の実施形態に係るシステムを用いた検索方法は、第1の実施形態と同様である。また各ステップにおける処理やデータの好ましい形態は、第1の実施形態と同様である。
【0054】
また本実施形態においても、提供者情報の取得はステップS11~S2の何れのステップで行われてもよいが、通常は、ステップS11で臨床データとともに提供者データを取得することが好ましい。
取得する提供者データの具体例は、第1の実施形態と同様である。
【0055】
本発明の医療関連情報検索システムは、上記した手段以外の手段を備えていても構わない。
例えばユーザに提示する医療関連情報に、医師又は医療機関の連絡先が含まれる場合、本発明に係るシステムは医師同士や医療機関同士、医師と医療機関、若しくは医師又は医療機関と、医療サービスを提供する企業や研究所とのマッチングシステムとして機能するための手段を備えることができる。
本発明の医療関連情報検索システムが、マッチングシステムとしても機能する場合、連絡先の提示のみを本発明に係るシステムが行ってもよく、契約締結までを本発明に係るシステム上で完結できる機能を備えていてもよい。
【0056】
また、ユーザに提示する医療関連情報に、ライセンス費用等の金銭に関する情報が含まれる場合、ライセンス契約の締結や金銭の授受等を本発明に係るシステム上で完結できる手段を備えることができる。
すなわち、金額の提示のみを本発明に係るシステムが行ってもよく、ライセンス等に係る契約の締結ができる手段や、既存のネットバンキングシステム等を利用した金銭の授受までを本発明に係るシステム上で完結できる手段を備えていてもよい。
またこの場合、医療関連情報を検索により取得したユーザが、当該医療関連情報の提供者に対してライセンスの付与や、学術論文や治験への利用を申請するための手段である申請手段を備えていてもよい。申請手段は、ユーザからの申請を受け付け、提供者に当該申請を通知し、提供者からの当該申請への回答を受け付け、当該回答を申請したユーザに通知することができる手段であれば、その具体的構成は特に限定されない。
【0057】
また本発明のシステムは、ディスカッションサービスを提供してもよい。
この場合、サーバ装置1は、少なくとも医療関連情報の提供者と当該医療関連情報を取得したユーザが、本発明のシステム上で、当該医療関連情報に関する質疑応答をすることができるように、これらの者からの文字情報の入力を受け付け、ユーザ端末2の出力手段22に表示する手段を備える(図示しない)。また、医療関連情報の提供者及び当該医療関連情報を取得したユーザ以外の第三者が、これらの者によるディスカッションを閲覧することができるように構成されていてもよく、第三者による当該ディスカッションへの参加ができるように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、臨床データに統計学的処理を施した情報を含む、医療に関連する情報を検索するためのシステム、検索プログラム及び検索方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 サーバ装置
11 加工済み臨床データ取得手段
12 格納手段
13 検索手段
14 加工済み臨床データ生成手段
2 ユーザ端末
21 入力手段
22 出力手段
NW ネットワーク