(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005813
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/906 20190101AFI20240110BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G06F16/906
G05B23/02 302Y
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106200
(22)【出願日】2022-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】竜田 尚登
(72)【発明者】
【氏名】新井 馨
(72)【発明者】
【氏名】山田 越生
【テーマコード(参考)】
3C223
5B175
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB03
3C223FF03
3C223FF13
3C223FF22
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
5B175FA03
5B175FB04
5B175HA01
5B175JC05
(57)【要約】
【課題】異常の要因を分析できる技術を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様による分析装置は、対象から収集された実績データを、前記対象に異常が発生しているときの実績データで構成される異常グループを含む複数のグループに分類するように構成されているグループ化部と、前記実績データに含まれる項目に関して、前記異常グループと他のグループとの間の差異の要因となっている項目を因果推論により計算するように構成されている差異要因計算部と、前記因果推論による分析結果を用いて、前記異常との関連性が高い順に前記項目をランキングするように構成されているランキング計算部と、前記ランキングの上位所定の件数の前記項目に関して、前記異常が発生する条件を計算するように構成されている異常条件計算部と、を有する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から収集された実績データを、前記対象に異常が発生しているときの実績データで構成される異常グループを含む複数のグループに分類するように構成されているグループ化部と、
前記実績データに含まれる項目に関して、前記異常グループと他のグループとの間の差異の要因となっている項目を因果推論により計算するように構成されている差異要因計算部と、
前記因果推論による分析結果を用いて、前記異常との関連性が高い順に前記項目をランキングするように構成されているランキング計算部と、
前記ランキングの上位所定の件数の前記項目に関して、前記異常が発生する条件を計算するように構成されている異常条件計算部と、
を有する分析装置。
【請求項2】
前記ランキングの上位所定の件数の前記項目と、該項目に関して前記異常が発生する条件とを表示部に表示させるように構成されている情報提示部、を更に有する請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記グループ化部は、
前記実績データに含まれる所定の項目の値と、所定の閾値との大小関係により、前記実績データを前記複数のグループに分類するように構成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記グループ化部は、
前記実績データに含まれる所定の2つの項目の値に関する散布図上でユーザによって指定された領域により、前記実績データを前記複数のグループに分類するように構成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記グループ化部は、
前記実績データに含まれる所定の1つ以上の項目の値に関する演算値と、所定の閾値との大小関係により、前記実績データを前記複数のグループに分類するように構成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記差異要因計算部は、
前記因果推論により、前記グループを表すグループラベルを目的変数、前記実績データに含まれる項目を説明変数とする因果モデルを計算するように構成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項7】
前記因果モデルは、LiNGAMである、請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記ランキング計算部は、
前記因果モデル上で、前記グループラベルを目的変数、前記実績データに含まれる項目を説明変数とする回帰分析を行って、前記回帰分析の回帰係数が大きい順に前記項目をランキングするように構成されている、請求項6又は7に記載の分析装置。
【請求項9】
対象から収集された実績データを、前記対象に異常が発生しているときの実績データで構成される異常グループを含む複数のグループに分類するグループ化手順と、
前記実績データに含まれる項目に関して、前記異常グループと他のグループとの間の差異の要因となっている項目を因果推論により計算する差異要因計算手順と、
前記因果推論による分析結果を用いて、前記異常との関連性が高い順に前記項目をランキングするランキング計算手順と、
前記ランキングの上位所定の件数の前記項目に関して、前記異常が発生する条件を計算する異常条件計算手順と、
をコンピュータが実行する分析方法。
【請求項10】
対象から収集された実績データを、前記対象に異常が発生しているときの実績データで構成される異常グループを含む複数のグループに分類するグループ化手順と、
前記実績データに含まれる項目に関して、前記異常グループと他のグループとの間の差異の要因となっている項目を因果推論により計算する差異要因計算手順と、
前記因果推論による分析結果を用いて、前記異常との関連性が高い順に前記項目をランキングするランキング計算手順と、
前記ランキングの上位所定の件数の前記項目に関して、前記異常が発生する条件を計算する異常条件計算手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析装置、分析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント、生産設備、産業用機器等といった設備で異常が発生したときに、その異常の要因を分析する技術が従来から知られている。例えば、特許文献1には、設備のエネルギー効率を対象として、その設備のエネルギーに関するデータを正常運転時のグループとそれ以外のグループに分類し、正常運転時のグループと差異が生じた要因を決定木により分析する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、異常の要因となっている因子の推定精度が必ずしも高くなく、例えば、異常から影響を受けて変化した因子までも異常の要因として推定されてしまう場合があった。これは、従来技術では、決定木等といった機械学習手法により因子間の相関のみを考慮しており、異常が発生したときの原因と結果の関係を考慮していないためである。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたもので、異常の要因を分析できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による分析装置は、対象から収集された実績データを、前記対象に異常が発生しているときの実績データで構成される異常グループを含む複数のグループに分類するように構成されているグループ化部と、前記実績データに含まれる項目に関して、前記異常グループと他のグループとの間の差異の要因となっている項目を因果推論により計算するように構成されている差異要因計算部と、前記因果推論による分析結果を用いて、前記異常との関連性が高い順に前記項目をランキングするように構成されているランキング計算部と、前記ランキングの上位所定の件数の前記項目に関して、前記異常が発生する条件を計算するように構成されている異常条件計算部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
異常の要因を分析できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る分析システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】操業実績DBに格納されている操業実績データの一例を示す図である。
【
図3】異常実績DBに格納されている異常実績データの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る分析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る分析装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図6】グループ化実績データ記憶部に記憶されているグループ化実績データの一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る分析装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係るグループ化計算処理の一例(その1)を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係るグループ化計算処理の一例(その2)を示すフローチャートである。
【
図10】散布図上における領域指定の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係るグループ化計算処理の一例(その3)を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態に係る差異要因計算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本実施形態に係るランキング計算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】本実施形態に係る異常条件計算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】異常との関連性でランキングされた項目とその異常条件の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下の実施形態では、異常の要因を分析(特に、異常が発生したときの原因と結果の関係を考慮して異常の要因を分析)することができる分析システム1について説明する。
【0010】
<分析システム1の全体構成例>
本実施形態に係る分析システム1の全体構成例を
図1に示す。
図1に示すように、本実施形態に係る分析システム1には、分析装置10と、施設20と、入出力装置30と、操業実績DB40と、異常実績管理装置50と、異常実績DB60とが含まれる。
【0011】
分析装置10は、操業実績DB40に格納されている操業実績データと異常実績DB60に格納されている異常実績データとを用いて、施設20内の設備21で発生した異常の要因を分析する汎用サーバやPC(パーソナルコンピュータ)等といった各種情報処理装置である。
【0012】
施設20は、例えば、工場等といった各種施設である。施設20には、設備21と、センサ22と、アクチュエータ23と、計測制御装置24とが含まれる。設備21は、例えば、プラント、生産設備、産業用機器(例えば、ボイラー、熱交換器等)、各種装置等である。ただし、これらは一例であって、設備21はこれらに限定されるものではなく、何等かの設備、機器、装置等といった分析対象であればよい。センサ22は、設備21の各種状態を表す情報(例えば、圧力、温度、流量、電流、電圧等)を計測する計測機器である。アクチュエータ23は、設備21を動作させる駆動装置である。また、アクチュエータ23は、設備21の動作も計測(例えば、攪拌動作等といった何等かの動作の有無、その速度等を計測)する。計測制御装置24は、センサ22やアクチュエータ23を制御すると共に、センサ22やアクチュエータ23で計測された計測値を取得(収集)し、これらの計測値を操業実績DB40に格納する。また、計測制御装置24は、これらの計測値を異常実績管理装置50にも送信する。
【0013】
入出力装置30は、分析装置10の入出力インタフェースとして機能する各種装置である。入出力装置30としては、例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチパネル等が挙げられる。
【0014】
操業実績DB40は、操業実績データが格納される。操業実績データの具体例については後述する。
【0015】
異常実績管理装置50は、計測制御装置24から受信した計測値を用いて、既知の異常検知技術により異常を検知し、その検知結果を異常実績データとして異常実績DB60に格納する。
【0016】
異常実績DB60は、異常実績データが格納される。異常実績データの具体例については後述する。
【0017】
なお、
図1に示す分析システム1の全体構成は一例であって、これに限られるものではない。例えば、分析装置10、入出力装置30、操業実績DB40、異常実績管理装置50及び異常実績DB60のうちの少なくとも1つが一体で構成されていてもよい。
【0018】
<操業実績データ>
操業実績DB40に格納されている操業実績データの一例を
図2に示す。
図2に示すように、操業実績データには、複数の項目と、それら複数の項目の各々の項目番号と、それら複数の項目の各々の計測値と、それらの計測値の受信日時を示すタイムスタンプとが含まれる。
【0019】
例えば、
図2に示す操業実績データには、項目番号「001」の項目「項目1」~項目番号「N」の項目「項目N」までの項目が含まれている。また、
図2に示す操業実績データには、タイムスタンプ毎に、各項目の計測値が含まれている。なお、
図2に示す例ではタイムスタンプは1秒毎であるが、これは一例であって、これに限られるものではない。
【0020】
ここで、項目とは、設備21の状態や動作等を表す情報のことである。項目としては、例えば、圧力、温度、流量、電流、電圧、攪拌動作の有無、攪拌速度が挙げられる。したがって、或る項目の計測値とは、この項目に関する情報をセンサ22やアクチュエータ23等で計測した値のことである。
【0021】
以下、各タイムスタンプとそれに対応付けられている計測値の組を「操業実績レコード」と呼ぶことにする。
図2に示す操業実績データでは、操業実績レコードは、(タイムスタンプ,項目1の計測値,項目2の計測値,・・・,項目Nの計測値)という形式で表すことができる。なお、この表記により、操業実績データは、操業実績レコードの時系列データとみなすこともできる。
【0022】
<異常実績データ>
異常実績DB60に格納されている異常実績データの一例を
図3に示す。
図3に示すように、異常実績データには、異常を識別する異常番号と、その異常番号の異常内容と、その異常内容の発生日時とが含まれる。
【0023】
例えば、
図3に示す異常実績データには、異常番号「0001」の異常内容「電力量異常」~異常番号「L」の異常内容「蒸気流量過大」までの異常内容とその発生日時が含まれている。
【0024】
<分析装置10のハードウェア構成例>
本実施形態に係る分析装置10のハードウェア構成例を
図4に示す。
図4に示すように、本実施形態に係る分析装置10は、外部I/F101と、通信I/F102と、RAM(Random Access Memory)103と、ROM(Read Only Memory)104と、補助記憶装置105と、プロセッサ106とを有する。これら各ハードウェアは、それぞれがバス107を介して通信可能に接続される。
【0025】
外部I/F101は、記録媒体101a等の外部装置とのインタフェースである。記録媒体101aとしては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0026】
通信I/F102は、分析装置10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。RAM103は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM104は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。補助記憶装置105は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータが格納される。プロセッサ106は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算装置である。
【0027】
なお、
図4に示すハードウェア構成は一例であって、分析装置10は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、分析装置10は、複数の補助記憶装置105や複数のプロセッサ106を有していてもよいし、図示したハードウェア以外の種々のハードウェア(例えば、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイや表示パネル等の出力装置等)を有していてもよい。
【0028】
<分析装置10の機能構成例>
本実施形態に係る分析装置10の機能構成例を
図5に示す。
図5に示すように、本実施形態に係る分析装置10は、グループ化部201と、差異要因計算部202と、ランキング計算部203と、異常条件計算部204と、情報提示部205とを有する。これら各部は、例えば、分析装置10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ106に実行させる処理により実現される。また、本実施形態に係る分析装置10は、グループ化実績データ記憶部206と、モデルデータ記憶部207とを有する。これら各部は、例えば、補助記憶装置105等により実現される。
【0029】
グループ化部201は、操業実績DB40に格納されている操業実績データと、異常実績DB60に格納されている異常実績データとを用いて、操業実績データに含まれる操業実績レコードをグループ化する。例えば、グループ化部201は、或る異常に関して、その異常が発生したときの操業実績レコードで構成されるグループとその異常が発生していないときの操業実績レコードで構成されるグループに各操業実績レコードをグループ化する。以下、或る異常が発生したときの操業実績レコードで構成されるグループを「異常グループ」、その異常が発生していないときの操業実績レコードで構成されるグループを「正常グループ」と呼ぶことにする。
【0030】
また、グループ化部201は、グループ化された操業実績レコードをグループ化実績データとしてグループ化実績データ記憶部206に保存する。なお、グループ化実績データの詳細については後述する。
【0031】
差異要因計算部202は、グループ化部201によってグループ化された操業実績レコードを表すグループ化実績データを用いて、因果推論によりグループ間の差異要因となっている項目(これは、因子と呼ばれてもよい。)を分析する。例えば、差異要因計算部202は、異常グループと正常グループの差異要因となっている項目(因子)を因果推論により分析する。ここで、因果推論のアルゴリズムとしては、例えば、参考文献1や参考文献2に記載されているLiNGAM(Linear Non-Gaussian Acyclic Model)を用いることができる。LiNGAMでは、そのアルゴリズムの出力として、項目(因子)を表すノードと、ノード間の因果関係及びその強さを表すエッジとで構成される重み付き有向グラフで表現された因果グラフが得られる。なお、ノード間の因果関係はエッジの向きで表され、因果関係の強さはエッジに付与された重みで表される。
【0032】
また、差異要因計算部202は、因果推論の結果として得られた因果グラフを表すモデルデータをモデルデータ記憶部207に保存する。
【0033】
ランキング計算部203は、グループ化実績データとモデルデータとを用いて、因果関係も考慮して、異常との関連性が高い順に項目(因子)をランキングする。
【0034】
異常条件計算部204は、ランキング上位の項目(因子)に関して、異常が発生する条件(以下、異常条件ともいう。)を計算する。
【0035】
情報提示部205は、ディスプレイ等の入出力装置30に対して様々な情報を提示する。例えば、情報提示部205は、ランキング上位の項目(因子)とその異常条件とをディスプレイ等の入出力装置30上に表示させる。
【0036】
グループ化実績データ記憶部206は、グループ化実績データを記憶する。モデルデータ記憶部207は、モデルデータを記憶する。
【0037】
<グループ化実績データ>
グループ化実績データ記憶部206に記憶されているグループ化実績データの一例を
図6に示す。
図6に示すように、グループ化実績データには、計測値の受信日時を示すタイムスタンプと、複数の項目と、それら複数の項目の各々の計測値と、グループラベルとが含まれる。すなわち、グループ化実績データは、各操業実績レコードのそれぞれに対してグループラベルを付与したものである。
【0038】
例えば、
図6に示すグループ化実績データには、タイムスタンプ毎に、項目「項目1」~項目「項目N」までの項目及びそれらの項目の計測値と、0又は1のいずれかを取るグループラベルとが含まれている。なお、
図6に示す例では、グループラベル「0」が付与された操業実績レコードは正常グループに属し、グループラベル「1」が付与された操業実績レコードは異常グループに属することを表している。ただし、これは一例であって、グループラベルの取り得る値は0又は1に限られるものではない。例えば、操業実績データが3つ以上のグループにグループ化された場合、グループラベルは3値のいずれかの値を取り得る。
【0039】
<分析装置10の動作例>
以下、本実施形態に係る分析装置10の動作例について、
図7を参照しながら説明する。
【0040】
まず、分析装置10は、操業実績DB40に格納されている操業実績データと異常実績DB60に格納されている異常実績データとを用いてグループ化計算処理を実行し、グループ化実績データを作成する(ステップS101)。次に、分析装置10は、グループ化実績データ記憶部206に記憶されているグループ化実績データを用いて差異要因計算処理を実行し、因果グラフを表すモデルデータを作成する(ステップS102)。次に、分析装置10は、モデルデータ記憶部207に記憶されているモデルデータを用いてランキング計算処理を実行し、異常との関連性が高い項目(因子)をランキングする(ステップS103)。そして、分析装置10は、異常条件計算処理を実行し、ランキング上位の項目(因子)の異常条件を計算すると共に、それらの項目と異常条件とをディスプレイ等の入出力装置30上に表示させる(ステップS104)。
【0041】
以下では、上記のステップS101~ステップS104の各処理の詳細について説明する。
【0042】
<グループ化計算処理>
以下では、グループ化計算処理の例として、グループ化計算処理(その1)~グループ化計算処理(その3)について説明する。
【0043】
≪グループ化計算処理(その1)≫
以下、本実施形態に係るグループ化計算処理(その1)について、
図8を参照しながら説明する。
【0044】
グループ化部201は、グループ化の基準とする異常を受け付ける(ステップS201)。グループ化部201は、例えば、異常実績DB60に格納されている異常実績データに含まれる異常番号、異常内容及び発生日時等をディスプレイ等の入出力装置30上に表示させた上で、ユーザによって選択された異常番号の異常を受け付ければよい。ただし、これは一例であって、これ以外にも、グループ化部201は、例えば、予め設定された異常を受け付けてもよいし、発生頻度が高い異常や発生回数が多い異常、直近で発生した異常等を受け付けてもよい。以下では、一例として、「異常A」が受け付けられたものとする。
【0045】
次に、グループ化部201は、グループ化する対象期間を受け付ける(ステップS202)。グループ化部201は、例えば、キーボードやマウス等の入出力装置30でユーザによって入力された期間を対象期間として受け付ければよい。ただし、これは一例であって、これ以外にも、グループ化部201は、例えば、予め設定された期間、異常の発生頻度が高い期間や異常の発生回数が多い期間、直近で異常が発生した期間等を対象期間として受け付けてもよい。
【0046】
次に、グループ化部201は、グループ化の基準とする対象項目とその対象項目に対する閾値とを受け付ける(ステップS203)。グループ化部201は、例えば、キーボードやマウス等の入出力装置30でユーザによって選択又は指定された項目及び閾値を対象項目及び閾値として受け付ければよい。ただし、これは、一例であって、これ以外にも、グループ化部201は、例えば、予め設定された項目及び閾値を対象項目及び閾値として受け付けてもよいし、対象項目又は閾値のいずれか一方のみが設定されており、他方のみをユーザが選択又は指定できてもよい。以下では、一例として、対象項目の値が閾値を超えている場合は異常Aが発生しており、対象項目の値が閾値以下である場合は異常Aが発生していないものとする。
【0047】
次に、グループ化部201は、対象期間内の操業実績レコードに含まれる対象項目値と閾値とを比較し、これらの操業実績レコードをグループ化する(ステップS204)。すなわち、グループ化部201は、例えば、対象期間内の操業実績レコードに関して、対象項目値が閾値以下の操業実績レコードにはグループラベル「0」を付与して正常グループに分類し、対象項目値が閾値を超えている操業実績レコードにはグループラベル「1」を付与して異常グループに分類する。
【0048】
そして、グループ化部201は、上記のステップS204でグループラベルが付与された操業実績レコードをグループ化実績データとしてグループ化実績データ記憶部206に保存する(ステップS205)。
【0049】
なお、上記のグループ化計算処理(その1)では、操業実績レコードを2つのグループにグループ化したが、これに限られるものではなく、3つ以上のグループにグループ化してもよい。このことは、後述するグループ化計算処理(その2)やグループ化計算処理(その3)についても同様である。
【0050】
≪グループ化計算処理(その2)≫
以下、本実施形態に係るグループ化計算処理(その2)について、
図9を参照しながら説明する。
【0051】
グループ化部201は、
図8のステップS201と同様に、グループ化の基準とする異常を受け付ける(ステップS301)。
【0052】
次に、グループ化部201は、
図8のステップS202と同様に、グループ化する対象期間を受け付ける(ステップS302)。
【0053】
次に、グループ化部201は、2つの対象項目を受け付ける(ステップS303)。グループ化部201は、例えば、対象期間内の操業実績レコードに含まれる項目の一覧をディスプレイ等の入出力装置30上に表示させた上で、ユーザによって選択された2つの項目を対象項目として受け付ければよい。ただし、これは一例であって、これ以外にも、グループ化部201は、例えば、予め設定された2つの項目を対象項目として受け付けてもよいし、1つの対象項目のみをユーザが選択又は指定し、その対象項目に応じて他方の対象項目が決定されてもよい。以下では、一例として、2つの対象項目として「項目1」、「項目2」が受け付けられたものとする。
【0054】
次に、グループ化部201は、対象期間内の操業実績レコードに関して、2つの対象項目をそれぞれ縦軸、横軸とする散布図をディスプレイ等の入出力装置30上に表示させる(ステップS304)。
【0055】
次に、グループ化部201は、散布図上における領域指定操作を受け付ける(ステップS305)。領域指定操作とは、ディスプレイ等の入出力装置30上に表示された散布図上で連結領域を指定するための操作である。典型的には、丸や楕円、四角等により連結領域を指定する操作が挙げられる。このような操作は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等により行うことができる。また、例えば、キーボード等により、連結領域を表す式や数値範囲等が指定されてもよい。なお、領域指定操作では、連結領域の指定と共に、その連結領域内の各操業実績レコードに対して付与するグループラベルの値を指定できてもよい。例えば、
図10に示す散布
図1100では、領域1101を指定する領域指定操作と、領域1102を指定する領域指定操作とが行われた場合を示している。
【0056】
次に、グループ化部201は、領域指定操作によって指定された領域(閉領域)内の点に対応する操業実績レコードを同一グループにグループ化する(ステップS306)。例えば、
図10に示す例において、領域1101を指定する領域指定操作でグループラベル「1」が指定されたと共に、領域1102を指定する領域指定操作でグループラベル「0」が指定されたものとする。この場合、グループ化部201は、領域1102内の点に対応する操業実績レコードに対してグループラベル「0」を付与して正常グループに分類し、領域1101内の点に対応する操業実績レコードに対してグループラベル「1」を付与して異常グループに分類する。
【0057】
そして、グループ化部201は、
図8のステップS205と同様に、上記のステップS306でグループラベルが付与された操業実績レコードをグループ化実績データとしてグループ化実績データ記憶部206に保存する(ステップS307)。
【0058】
≪グループ化計算処理(その3)≫
以下、本実施形態に係るグループ化計算処理(その3)について、
図11を参照しながら説明する。
【0059】
グループ化部201は、
図8のステップS201と同様に、グループ化の基準とする異常を受け付ける(ステップS401)。
【0060】
次に、グループ化部201は、
図8のステップS202と同様に、グループ化する対象期間を受け付ける(ステップS402)。
【0061】
次に、グループ化部201は、対象期間内の操業実績レコードに含まれる1つ以上の項目を含む演算式と、その演算式に対する閾値とを受け付ける(ステップS403)。グループ化部201は、例えば、演算式の一覧と閾値の一覧とをディスプレイ等の入出力装置30上に表示させた上で、ユーザによって選択された演算式と閾値を受け付ければよい。ただし、これは一例であって、これ以外にも、グループ化部201は、例えば、予め設定された演算式と閾値を受け付けてもよいし、ユーザによって入力された任意の演算式と閾値を受け付けてもよい。ここで、演算式とは、操業実績レコードに含まれる1つ以上の項目の値から何等かの値を演算するための式である。例えば、入力エネルギーを利用して何等かの仕事を行って出力エネルギーを排出する設備21が存在し、操業実績レコードには項目「入力エネルギー」と「出力エネルギー」が含まれる場合に、入力エネルギーと出力エネルギーからエネルギー効率を求める演算式等が挙げられる。以下では、一例として、演算式によって計算した値が閾値を超えている場合は異常Aが発生しており、演算式によって計算した値が閾値以下である場合は異常Aが発生していないものとする。
【0062】
次に、グループ化部201は、対象期間内の操業実績レコードに関して、上記のステップS403で受け付けた演算式の値の計算する(ステップS404)。
【0063】
次に、グループ化部201は、対象期間内の操業実績レコードに関して、上記のステップS303で計算された演算式の値と上記のステップS403で受け付けた閾値とを比較し、これらの操業実績レコードをグループ化する(ステップS405)。すなわち、グループ化部201は、例えば、対象期間内の操業実績レコードに関して、演算式の値が閾値以下の操業実績レコードにはグループラベル「0」を付与して正常グループに分類し、演算式の値が閾値を超えている操業実績レコードにはグループラベル「1」を付与して異常グループに分類する。
【0064】
そして、
図8のステップS205と同様に、上記のステップS405でグループラベルが付与された操業実績レコードをグループ化実績データとしてグループ化実績データ記憶部206に保存する(ステップS406)。
【0065】
<差異要因計算処理>
以下、本実施形態に係る差異要因計算処理について、
図12を参照しながら説明する。
【0066】
差異要因計算部202は、グループ化実績データ記憶部206からグループ化実績データを取得する(ステップS501)。なお、例えば、対象期間が異なる複数のグループ化実績データがグループ化実績データ記憶部206に記憶されている場合、差異要因計算部202は、目的とする対象期間のグループ化実績データを取得する。
【0067】
次に、差異要因計算部202は、グループ化実績データのグループラベルを目的変数、他の項目を説明変数として、因果推論により因果モデルを作成する(ステップS502)。なお、差異要因計算部202は、因果推論のアルゴリズムとして、例えば、参考文献1や参考文献2に記載されているLiNGAMを用いればよい。これにより、グループラベルを目的変数、グループラベル以外の項目を説明変数とする因果モデルが得られる。なお、この因果モデルは、目的変数又は説明変数を表すノードと、ノード間の因果関係及びその強さを表すエッジとで構成された重み付き有向グラフで表現され、目的変数に対する説明変数の因果的順番とその強さを表している。
【0068】
例えば、目的変数を「異常A」に関するグループラベル、説明変数を項目「流量」及び「蒸気差圧」としたときの因果モデルの一例を
図13に示す。
図13に示す例では、w
1は項目「流量」から「蒸気差圧」への因果関係の強さを表しており、w
2は項目「蒸気差圧」から「異常A」に関するグループラベルへの因果関係の強さを表している。これにより、因果関係だけでなく、その強さや因果的順番も考慮することが可能となる。
【0069】
次に、差異要因計算部202は、上記のステップS502で作成された因果モデルを表すモデルデータをモデルデータ記憶部207に保存する(ステップS503)。
【0070】
そして、情報提示部205は、上記のステップS502で作成された因果モデルをディスプレイ等の入出力装置30上に表示させる(ステップS504)。これにより、ユーザは、因果モデルを確認することができる。ただし、本ステップは必ずしも実行されなくてもよい。
【0071】
<ランキング計算処理>
以下、本実施形態に係るランキング計算処理について、
図14を参照しながら説明する。
【0072】
ランキング計算部203は、グループ化実績データ記憶部206からグループ化実績データを取得する(ステップS601)。なお、例えば、対象期間が異なる複数のグループ化実績データがグループ化実績データ記憶部206に記憶されている場合、ランキング計算部203は、目的とする対象期間のグループ化実績データを取得する。
【0073】
次に、ランキング計算部203は、モデルデータ記憶部207に記憶されているモデルデータを取得する(ステップS602)。なお、例えば、複数のモデルデータがモデルデータ記憶部207に記憶されている場合、ランキング計算部203は、上記のステップS601で取得されたグループ化実績データに対応する因果モデルのモデルデータを取得する。
【0074】
次に、ランキング計算部203は、グループ化実績データのグループラベルを目的変数、他の項目を説明変数として、因果モデル上で回帰分析を実行する(ステップS603)。このような回帰分析としては、例えば、参考文献3に記載されている手法を用いることができる。参考文献3に記載されている手法を用いることで、因果モデルによって表される因果関係(因果的順番とその強さ)を考慮した回帰分析を行うことができる。
【0075】
次に、ランキング計算部203は、上記のステップS603で実行された回帰分析結果における各説明変数の係数(回帰係数)をその説明変数の重要度として、それらの説明変数に対応する項目をソートする(ステップS604)。すなわち、例えば、項目nに対応する説明変数の回帰係数をan(n=1,・・・,N)とした場合、ランキング計算部203は、anの降順(anが大きい順)に項目nをソートする。これにより、回帰係数anを説明変数の重要度として、重要度が高い順に(つまり、異常Aとの関連性が高い順に)各説明変数にそれぞれ対応する項目nがランキングされる。なお、上記のステップS603における回帰分析は因果モデル上で行われているため、ここでの異常との関連性は、異常(つまり、目的変数であるグループラベル)との因果関係(因果的順番とその強さ)を考慮した関連性であることに留意されたい。
【0076】
そして、情報提示部205は、上記のステップS604で得られた各項目のランキングをディスプレイ等の入出力装置30上に表示させる(ステップS605)。これにより、ユーザは、異常との因果関係も考慮してその異常との関連性が高い項目(因子)をランキング形式で確認することができる。ただし、本ステップは必ずしも実行されなくてもよい。
【0077】
<異常条件計算処理>
以下、本実施形態に係る異常条件計算処理について、
図15を参照しながら説明する。
【0078】
異常条件計算部204は、ランキング計算処理でランキングされた項目の中から上記M件の項目を取得する(ステップS701)。すなわち、異常条件計算部204は、ランキングの上位M件の項目を取得する。M(ただし、M≦N)は予め設定された値であってもよいし、ユーザによって選択又は指定された値であってもよい。
【0079】
次に、異常条件計算部204は、グループ化実績データ記憶部206からグループ化実績データを取得する(ステップS702)。なお、例えば、対象期間が異なる複数のグループ化実績データがグループ化実績データ記憶部206に記憶されている場合、異常条件計算部204は、目的とする対象期間のグループ化実績データを取得する。
【0080】
次に、異常条件計算部204は、グループ化実績データのグループラベルを目的変数、上記のステップS701で取得した項目(つまり、ランキングの上位M件の項目)を説明変数として、決定木分析を実行する(ステップS703)。この決定木分析では、葉ノードに対して目的変数が取り得る値(グループラベルが取り得る値)、葉ノード以外のノードに対して説明変数に関する分岐条件がそれぞれ設定された決定木が作成される。
【0081】
次に、異常条件計算部204は、根ノードから、異常であることを示すグループラベル値が設定された葉ノード(以下、異常ノードともいう。)までのルートに含まれるノードに設定された分岐条件とその分岐条件に含まれる項目とを取得する(ステップS704)。以下では、簡単のため、根ノードから異常ノードまでのルートでは、そのルートに含まれるノードに設定された分岐条件が満たされるものとする。なお、根ノードから異常ノードまでのルートが複数存在する場合、異常条件計算部204は、これら複数のルートの各々に関して、そのルートに含まれるノードに設定された分岐条件とその分岐条件に含まれる項目とを取得すればよい。本ステップで取得された分岐条件は、その分岐条件に含まれる項目(因子)に関して異常が発生する条件を表している。このため、本ステップで取得された分岐条件が異常条件である。
【0082】
そして、情報提示部205は、上記のステップS705で取得された項目と異常条件(つまり、ランキングの上位M件の項目とその異常条件)をディスプレイ等の入出力装置30上に表示させる(ステップS705)。一例として、M=3でランキングの上位3件の項目が「流量」、「蒸気差圧」、「外気温度」であり、これらの項目の各々の異常条件が「x>35.5」、「x>0.1」、「x<25.5」である場合の表示例を
図16に示す。
図16に示すように、ディスプレイ等の入出力装置30には、ランキングの上位3件の項目とその異常条件とが表示される。これにより、ユーザは、異常との因果関係も考慮してその異常との関連性が高い項目(因子)と、その項目によって異常となる条件とを知ることができる。
【0083】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る分析装置10は、異常との因果関係(因果的順番とその強さ)を考慮してその異常の要因を分析することができる。また、本実施形態に係る分析装置10は、その分析結果をランキング形式でユーザに提示することができる。このため、ユーザは、異常との因果関係も考慮してその異常との関連性が高い要因をランキング形式で知ることができる。このため、ユーザは、例えば、その異常が発生したときに、どの因子(項目)を優先的に対応すればよいかがわかり、適切かつ迅速な異常対応をすることが可能となる。
【0084】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【0085】
[参考文献]
参考文献1:Shohei Shimizu et al., A Linear Non-Gaussian Acyclic Model for Causal Discovery, Journal of Machine Learning Research 7 (2006) 2003-2030.
参考文献2:Shohei Shimizu et al., DirectLiNGAM: A Direct Method for Learning a Linear Non-Gaussian Structural Equation Model, Journal of Machine Learning Research 12 (2011) 1225-1248.
参考文献3:Patrick Blobaum et al., ESTIMATION OF INTERVENTIONAL EFFECTS OF FEATURES ON PREDICTION, 2017 IEEE INTERNATIONAL WORKSHOP ON MACHINE LEARNING FOR SIGNAL PROCESSING.
【符号の説明】
【0086】
1 分析システム
10 分析装置
20 施設
21 設備
22 センサ
23 アクチュエータ
24 計測制御装置
30 入出力装置
40 操業実績DB
50 異常実績管理装置
60 異常実績DB
101 外部I/F
101a 記録媒体
102 通信I/F
103 RAM
104 ROM
105 補助記憶装置
106 プロセッサ
107 バス
201 グループ化部
202 差異要因計算部
203 ランキング計算部
204 異常条件計算部
205 情報提示部
206 グループ化実績データ記憶部
207 モデルデータ記憶部