(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005814
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】全固体電池用保護フィルム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20240110BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/191 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/195 20210101ALI20240110BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/105
H01M50/186
H01M50/197
H01M50/193
H01M50/191
H01M50/195
H01M50/198
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106201
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC10
5H011FF02
5H011GG01
5H011HH08
5H011HH12
5H011HH13
(57)【要約】
【課題】硫化水素の外部環境への放出を抑制できる全固体電池用保護フィルムを提供すること。
【解決手段】固体電解質を有する電池要素と、前記電池要素を収容する外装材と、前記外装材の周縁部に設けられたヒートシール部とを備える全固体電池の前記ヒートシール部を覆うように配置される保護フィルムであり、硫化水素吸着材を含む、全固体電池用保護フィルム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を有する電池要素と、前記電池要素を収容する外装材と、前記外装材の周縁部に設けられたヒートシール部とを備える全固体電池の前記ヒートシール部を覆うように配置される保護フィルムであり、
硫化水素吸着材を含む、全固体電池用保護フィルム。
【請求項2】
基材フィルムと、接着層とを含む多層構成を有し、
前記基材フィルム及び前記接着層の少なくとも一方に前記硫化水素吸着材が含まれている、請求項1に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの少なくとも一方の面上に設けられたガスバリア層を更に含む、請求項2に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項4】
金属箔と、接着層とを含む多層構成を有し、
前記接着層に前記硫化水素吸着材が含まれている、請求項1に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項5】
前記硫化水素吸着材が、酸化亜鉛を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項6】
前記硫化水素吸着材が、亜鉛イオンを含むゼオライトである、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項7】
前記硫化水素吸着材が、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅とを含む混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項8】
前記硫化水素吸着材が、硫酸銀及び酢酸銀の少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア層がアルミナ及びシリカの少なくとも一方を含む、請求項3に記載の全固体電池用保護フィルム。
【請求項10】
水蒸気透過度が10g/m2・day以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池用保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池用保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、携帯電子機器や、電気を動力源とする電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に広く用いられている。リチウムイオン電池の安全性を高めた電池として、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いた全固体リチウム電池が検討されている。全固体リチウム電池は、短絡等による熱暴走が生じ難いという点でリチウムイオン電池よりも安全性に優れている。
【0003】
無機固体電解質の中でも硫化物系固体電解質は、イオン伝導度が酸化物系固体電解質等と比較して高く、より高性能な全固体電池を得る上で多くの利点を有している。例えば、特許文献1には、イオウ元素、リチウム元素、及びホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、リン及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含み、平均粒径が0.01~10μmである硫化物系電解質粉体を用いた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硫化物系固体電解質を用いた全固体電池では、硫化水素(H2S)が発生する場合がある。そこで、本発明は、硫化水素の外部環境への放出を抑制できる全固体電池用保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固体電解質を有する電池要素と、前記電池要素を収容する外装材と、前記外装材の周縁部に設けられたヒートシール部とを備える全固体電池の前記ヒートシール部を覆うように配置される保護フィルムであり、硫化水素吸着材を含む、全固体電池用保護フィルムに関する。このような全固体電池用保護フィルムによれば、硫化水素の外部環境への放出を抑制できる。
【0007】
上記全固体電池用保護フィルムは、基材フィルムと、接着層とを含む多層構成を有し、前記基材フィルム及び前記接着層の少なくとも一方に前記硫化水素吸着材が含まれていてもよい。上記全固体電池用保護フィルムは、前記基材フィルムの少なくとも一方の面上に設けられたガスバリア層を更に含んでいてもよい。上記ガスバリア層は、アルミナ及びシリカの少なくとも一方を含んでいてもよい。上記全固体電池用保護フィルムは、水蒸気透過度が10g/m2・day以下であることが好ましい。
【0008】
上記全固体電池用保護フィルムは、金属箔と、接着層とを含む多層構成を有し、前記接着層に前記硫化水素吸着材が含まれていてもよい。
【0009】
上記硫化水素吸着材は、酸化亜鉛を含んでいてもよく、亜鉛イオンを含むゼオライトであってもよく、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅とを含む混合物であってもよく、硫酸銀及び酢酸銀の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硫化水素の外部環境への放出を抑制できる全固体電池用保護フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る全固体電池用保護フィルムを備える全固体電池の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II線における断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る全固体電池用保護フィルムの概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る全固体電池用保護フィルムの概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る全固体電池用保護フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
本実施形態に係る全固体電池用保護フィルムは、固体電解質を有する電池要素と、電池要素を収容する外装材と、外装材の周縁部に設けられたヒートシール部とを備える全固体電池のヒートシール部を覆うように配置される保護フィルムであり、硫化水素吸着材を含む。このような保護フィルムによれば、硫化水素の外部環境への放出を抑制できる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る全固体電池用保護フィルムを備える全固体電池の一例を示す斜視図である。
図2は
図1に示すII-II線における断面図である。これらの図に示す全固体電池50は、固体電解質を有する電池要素52と、電池要素52を収容する外装材10と、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、保護フィルム(全固体電池用保護フィルム)20とを備えている。外装材10は、例えば、基材層とシーラント層とを備えるラミネートフィルムをヒートシールすることにより得られる。外装材10は、例えば、基材層が全固体電池50の外部側、シーラント層が全固体電池50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は2つのラミネートフィルムを重ねて周縁部を熱融着することにより、周縁部にヒートシール部が設けられ、内部に電池要素52を包含した構成となる。保護フィルム20は、外装材10の周縁部に設けられたヒートシール部を覆うように配置されている。
【0015】
電池要素52は、正極と負極との間に硫化物系固体電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。金属端子53は、容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0016】
保護フィルム20は、硫化水素吸着材を含むものである。硫化水素吸着材は、硫化水素を吸着及び/又は分解することができるものを意味する。硫化水素吸着材としては、酸化亜鉛、非晶質金属ケイ酸塩(主に金属が銅、亜鉛であるもの)、ジルコニウム・タンタノイド元素の水和物、4価金属リン酸塩(特に金属が銅であるもの)、亜鉛イオンを含むゼオライト、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅(例えば、酸化銅(II))とを含む混合物、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、硫酸銀、酢酸銀、酸化アルミニウム、水酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、ゼオライト、ハイドロタルサイト、複合酸化物(主に金属が亜鉛であるもの)活性炭、アミン系化合物、アイオノマー等が挙げられる。硫化水素吸着材は、硫化水素をより無害化しやすく、コストや取り扱い性の観点から、酸化亜鉛(ZnO)及び/又は亜鉛イオンを含むものであってよい。硫化水素吸着材は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
硫化水素吸着材としては、硫化水素について消臭効果がある消臭剤を用いてもよい。具体的には、大日精化工業株式会社製の「ダイムシュー PE-M 3000-Z」(ZnO、CaO及び硫酸アルミニウムカリウムの3成分からなる材料)、東亞合成株式会社製の「ケスモン」シリーズ、ラサ工業株式会社製の「シュークレンズ」(ゼオライトと酸化亜鉛の混合物)、株式会社シナネンゼオミック製の「ダッシュライト ZU」(ゼオライトと亜鉛の混合物)、「ダッシュライト CZU」(ゼオライトと酸化銅と酸化亜鉛の混合物)及び「ダッシュライト ZH」(亜鉛イオンを含むゼオライト)等が挙げられる。
【0018】
硫化水素吸着材は、優れた硫化水素吸収性を得やすい観点から、酸化亜鉛を含むもの;亜鉛イオンを含むゼオライト;ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅とを含む混合物;並びに硫酸銀及び酢酸銀の少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
【0019】
硫化水素吸着材の平均粒径(D50)は、優れた硫化水素吸収性を得やすい観点から、0.01μm以上、0.05μm以上、又は0.1μm以上であってもよい。硫化水素吸着材の平均粒径(D50)は、分散性が向上する観点から、5μm以下であってもよく比表面積が大きくなり、硫化水素吸着性能が向上する観点から、4μm以下、3μm以下又は2μm以下であってもよい。硫化水素吸着材の平均粒径は、動的光散乱法により測定された平均粒径を意味する。
【0020】
保護フィルム20の水蒸気透過度は10g/m2・day以下であることが好ましく、0.1g/m2・day以下であることがより好ましく、0.01g/m2・day以下であることが更に好ましい。保護フィルム20の水蒸気透過度は、例えば、0g/m2・dayであってもよく、0g/m2・day超であってもよい。
【0021】
本明細書において水蒸気透過度は、「JIS Z 0208:1976 カップ法」に準して測定される40℃及び90%RHでの水蒸気透過度を意味する。硫化水素は、全固体電池の内部に侵入した水分が、全固体電池の硫黄成分と反応することにより発生すると考えられる。すなわち、上記の水蒸気透過度を有する保護フィルム20によれば、硫化水素が発生すること自体を抑制し易いと考えられる。
【0022】
保護フィルム20の厚みに特に制限はないが、例えば、3~200μmの範囲であってもよく、5~100μmの範囲であってもよく、20~80μmの範囲であってもよい。
【0023】
以下、保護フィルム20の具体例について更に説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る全固体電池用保護フィルムの概略断面図である。
図3に示す保護フィルム20は、基材フィルム1と、ガスバリア層1aと、接着層3とをこの順に備える。
【0024】
ガスバリア層1aは、水分が全固体電池の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。ガスバリア層1aは、あってもなくてもよいが、基材フィルム1の少なくとも一方の面上にガスバリア層1aを設けることにより、保護フィルムに水分が全固体電池の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を付与することができる。
【0025】
ガスバリア層1aは、例えば、金属蒸着層、無機酸化物蒸着層、炭素含有無機酸化物蒸着層等の蒸着層であってもよい。ガスバリア層1aは、例えば、アルミナ及びシリカの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0026】
基材フィルム1は、絶縁性を有する樹脂により形成されるフィルムであることが好ましい。樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
【0027】
基材フィルム1は、単層でも多層でもよく、多層の場合は異なる樹脂を組み合わせて形成されていてもよい。基材フィルム1が多層フィルムである場合は、共押し出ししたものであってよく、接着剤を介して積層したものであってもよい。
【0028】
これらの樹脂の中でも、基材フィルム1としては、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミドフィルムを構成するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12が挙げられる。
【0029】
基材フィルム1は、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
【0030】
接着層3が後述のシーラント層である場合、シール時の基材フィルム1の変形を抑制する観点から、基材フィルム1の融点ピーク温度は、シーラント層の融点ピーク温度より高いことが好ましく、シーラント層の融点ピーク温度よりも30℃以上高いことがより好ましい。
【0031】
基材フィルム1の厚さは、1~40μmであることが好ましく、2~30μmであることがより好ましく、3~20μmであることが更に好ましい。
【0032】
接着層3は、保護フィルム20を外装材10に接着するための層である。接着層3としては、例えば、接着剤から形成される接着剤層、粘着剤から形成される粘着剤層、及びシーラント材から形成されるシーラント層が挙げられる。
【0033】
接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオール等の主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂、及びエポキシ基を有する主剤にアミン化合物等を作用させたエポキシ樹脂等が挙げられる。耐熱性の観点からは、接着剤は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0034】
接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、接着強度、追随性等の観点から、例えば、1~10μmであってもよく、2~7μmであってもよい。
【0035】
粘着剤は、外装材に接着可能なものを適宜用いることができる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤及びシリコーン系粘着剤が挙げられる。粘着剤は、耐熱性の観点から、シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0036】
粘着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、接着強度、追随性等の観点から、例えば、1~10μmであってもよく、2~7μmであってもよい。
【0037】
シーラント層は、保護フィルム20にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層を構成する材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0038】
シーラント層の主成分(以下、「ベース樹脂」ともいう)は、耐熱性及びシール適正の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる一種であることが好ましい。上記に挙げた各種樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記に挙げた各種樹脂をブレンドし、ポリマーアロイ化することで、シール適正や耐熱性を制御することが出来る。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;プロピレンを共重合成分として含むブロック又はランダム共重合体;及び、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂が共重合体である場合、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0040】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、及び、それらの共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂は、任意の酸とグリコールとを共重合させたものであってもよい。
【0041】
シーラント層は、ポリオレフィン系エラストマーを含んでいてもよい。ポリオレフィン系エラストマーは、上述したベース樹脂に対して相溶性を有するものであってもよく、相溶性を有さないものであってもよく、相溶性を有する相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有さない非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含んでいてもよい。相溶性を有する(相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
【0042】
ベース樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられ、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、シーラント層は、シール性、耐熱性及びその他機能性を付与させるために、例えば、添加剤として酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、脱水剤、粘着付与剤、結晶核剤、可塑剤を含有してもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
【0044】
シーラント層の融解ピーク温度は、用途によって異なるが、耐熱性の観点から、例えば、160~280℃であってもよい。シーラント層の厚さは、特に限定されるものではないが、薄膜化及びヒートシール強度の観点から、例えば、10~200μmであってもよく、20~150μmであってもよい。シーラント層が複数の層である場合、複数のシーラント層の厚さの合計が上記の範囲内であってもよく、複数のシーラント層の各層の厚さが上記の範囲内であってもよい。
【0045】
基材フィルム1及び接着層3の少なくとも一方は硫化水素吸着材を含む。
【0046】
基材フィルム1における硫化水素吸着材の含有量は、優れた硫化水素吸収性を得やすい観点から、基材フィルム1の全質量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよい。硫化水素吸着材の含有量は、基材フィルム1の全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は0質量%であってよい。硫化水素吸着材の含有量は、基材フィルム1の全質量を基準として、0~50質量%、0.5~50質量%、1~40質量%、2~30質量%、3~20質量%、又は4~10質量%であってもよい。
【0047】
接着層3における硫化水素吸着材の含有量は、優れた硫化水素吸収性を得やすい観点から、接着層3の全質量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよい。硫化水素吸着材の含有量は、接着性の観点から、接着層3の全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は0質量%であってよい。硫化水素吸着材の含有量は、接着層3の全質量を基準として、0~50質量%、0.5~50質量%、1~40質量%、2~30質量%、3~20質量%、又は4~10質量%であってもよい。
【0048】
図3に示す保護フィルム20は、基材フィルム1と、接着層3とを含む多層構成を有し、基材フィルム1及び接着層3の少なくとも一方に上記硫化水素吸着材が含まれる。このような保護フィルムは、硫化水素の外部環境への放出を効果的に抑制できると考えられる。
【0049】
図3に示す保護フィルム20は、例えば、基材フィルム1の一方の面上にガスバリア層1aを形成する工程と、ガスバリア層1a上に、接着層3を形成する工程と、を備える方法により製造できる。
【0050】
ガスバリア層1aは、例えば、基材フィルム1の一方の面上に、ガスバリア層1aの構成材料を付着させることにより形成できる。ガスバリア層1aが金属蒸着層である場合、例えば、基材フィルム1の一方の面上に、金属を蒸着させればよい。
【0051】
接着層3は、例えば、接着剤若しくは粘着剤を含む組成物をガスバリア層1a上に塗布すること、又は、シーラント層を構成する成分を含む組成物を、Tダイ等の押出機で製膜した後に、これを接着剤又は熱融着によりガスバリア層1aに貼り合わせることにより形成できる。
【0052】
以上、保護フィルム及びその製造方法の一例を説明したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0053】
例えば、基材フィルム1及びガスバリア層1aの位置関係は逆であってもよい。すなわち、保護フィルムは、
図4に示す保護フィルム30のように、ガスバリア層1aと、基材フィルム1と、接着層3とをこの順に備えていてもよい。ガスバリア層1aは、基材フィルム1の両方の面上に設けることもできる。
【0054】
図4に示す保護フィルム30は、例えば、基材フィルム1の一方の面上にガスバリア層1aを形成する工程と、基材フィルム1のガスバリア層1aとは反対の面上に、接着層3を形成する工程と、を備える方法により製造できる。ガスバリア層1aは、例えば、上記と同様にして形成できる。接着層3は、例えば、接着剤若しくは粘着剤を含む組成物を、基材フィルム1のガスバリア層1aとは反対の面上に塗布すること、又はシーラント層を構成する成分を含む組成物を、Tダイ等の押出機で製膜した後に、これを接着剤又は熱融着により、基材フィルム1のガスバリア層1aとは反対の面に貼り合わせることにより形成できる。
【0055】
保護フィルムは、金属箔と、接着層とを含む多層構成を有し、接着層に硫化水素吸着材が含まれるものであってもよい。このような保護フィルムの一例を
図5に示す。
【0056】
図5に示す保護フィルム40は、金属箔2と接着層3とが積層された構造を有する。
【0057】
金属箔2は、水分が全固体電池の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。金属箔2を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼及び銅が挙げられる。金属箔2は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含んでいてもよい。金属箔2は、防湿性、加工性及びコストの観点から、アルミニウム箔であることが好ましい。
【0058】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いることもできる。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、優れた耐ピンホール性及び延展性を有する保護フィルム40を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた保護フィルム40を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0059】
金属箔2の厚さは、1~100μmであることが好ましく、5~80μmであることがより好ましく、10~60μmであることが更に好ましい。
【0060】
接着層3は、例えば、上述の接着剤層、粘着剤層又はシーラント層であることができる。シーラント層は、アルミニウム箔との密着性等の観点から、酸変性ポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0061】
保護フィルム40において、接着層3は、硫化水素吸着材を含有する。硫化水素吸着材の含有量は、優れた硫化水素吸収性を得やすい観点から、接着層3の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってよい。硫化水素吸着材の含有量は、接着性の観点から、接着層3の全質量を基準として、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。硫化水素吸着材の含有量は、接着層3の全質量を基準として、0.1~50質量%、0.3~40質量%、0.5~30質量%、1~20質量%、又は2~10質量%であってもよい。
【0062】
図5に示す保護フィルム40は、例えば、金属箔2の一方の面上に接着層3を形成する工程を備える方法により製造できる。接着層3は、例えば、接着剤若しくは粘着剤を含む組成物を金属箔2に塗布すること、又はシーラント層を構成する成分を含む組成物を、Tダイ等の押出機で製膜した後に、これを接着剤又は熱融着により金属箔2に貼り合わせることにより形成できる。
【0063】
本開示は以下の事項に関する。
[1]固体電解質を有する電池要素と、前記電池要素を収容する外装材と、前記外装材の周縁部に設けられたヒートシール部とを備える全固体電池の前記ヒートシール部を覆うように配置される保護フィルムであり、硫化水素吸着材を含む、全固体電池用保護フィルム。
[2]基材フィルムと、接着層とを含む多層構成を有し、前記基材フィルム及び前記接着層の少なくとも一方に前記硫化水素吸着材が含まれている、[1]に記載の全固体電池用保護フィルム。
[3]前記基材フィルムの少なくとも一方の面上に設けられたガスバリア層を更に含む、[2]に記載の全固体電池用保護フィルム。
[4]金属箔と、接着層とを含む多層構成を有し、前記接着層に前記硫化水素吸着材が含まれている、[1]に記載の全固体電池用保護フィルム。
[5]前記硫化水素吸着材が、酸化亜鉛を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の全固体電池用保護フィルム。
[6]前記硫化水素吸着材が、亜鉛イオンを含むゼオライトである、[1]~[4]のいずれかに記載の全固体電池用保護フィルム。
[7]前記硫化水素吸着材が、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅とを含む混合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の全固体電池用保護フィルム。
[8]前記硫化水素吸着材が、硫酸銀及び酢酸銀の少なくとも一方を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の全固体電池用保護フィルム。
[9]前記ガスバリア層がアルミナ及びシリカの少なくとも一方を含む、[3]に記載の全固体電池用保護フィルム。
[10]水蒸気透過度が10g/m2・day以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の全固体電池用保護フィルム。
【実施例0064】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
【0066】
<基材フィルム形成用樹脂>
ポリエチレンテレフタレート(PET)
<金属箔(厚さ50μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0067】
<接着層(接着剤層、粘着剤層又はシーラント層)形成用組成物>
(接着剤)
アラルダイト(登録商標)(ハンツマン アドバンスト マテリアルズ社製、2液性エポキシ系接着剤)を使用した。
(粘着剤)
アクリル系PSAテープを使用した。
(シーラント層形成用組成物)
東レ株式会社製 TSA16を使用した。
【0068】
<硫化水素吸着材>
・材料A:株式会社シナネンゼオミック製、商品名ダッシュライトZH(亜鉛イオンを含むゼオライト)
・材料B:大日精化工業株式会社製、商品名「ダイムシュー PE-M 3000-Z」(ZnO、CaO及び硫酸アルミニウムカリウムの3成分からなる材料)
【0069】
[保護フィルムの作製]
(実施例1)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。
【0070】
(実施例2)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、シーラント層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層とシーラント層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0071】
(実施例3)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、接着剤を塗布することにより接着剤層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層と接着剤層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0072】
(実施例4)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、粘着剤を塗布することにより粘着剤層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層と粘着剤層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0073】
(実施例5)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するシーラント層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層とシーラント層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0074】
(実施例6)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を2.5質量%含有するシーラント層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層とシーラント層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0075】
(実施例7)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を30.0質量%含有するシーラント層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層とシーラント層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0076】
(実施例8)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Bの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するシーラント層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層とシーラント層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0077】
(実施例9)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する接着剤層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層と接着剤層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0078】
(実施例10)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する粘着剤層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層と粘着剤層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
(実施例11)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するシーラント層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層とシーラント層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0079】
(実施例12)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する接着剤層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層と接着剤層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0080】
(実施例13)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面にアルミナを蒸着させることにより、金属蒸着層と基材フィルムとを備えるガスバリアフィルムを作製した。続いて、ガスバリアフィルムの金属蒸着層側の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する粘着剤層を形成して、基材フィルムと金属蒸着層と粘着剤層とをこの順に備える保護フィルムを作製した。
【0081】
(実施例14)
材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。
【0082】
(実施例15)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、シーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0083】
(実施例16)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、接着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/接着剤層)を作製した。
【0084】
(実施例17)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、粘着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/粘着剤層)を作製した。
【0085】
(実施例18)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するシーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0086】
(実施例19)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する接着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/接着剤層)を作製した。
【0087】
(実施例20)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する粘着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/粘着剤層)を作製した。
【0088】
(実施例21)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を3.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有するシーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0089】
(実施例22)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を3.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する接着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/接着剤層)を作製した。
【0090】
(実施例23)
基材フィルムとして、材料Aの硫化水素吸着材を3.0質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を5.0質量%含有する粘着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/粘着剤層)を作製した。
【0091】
(比較例1)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、シーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0092】
(比較例2)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ4.5μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、シーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0093】
(比較例3)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、シーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0094】
(比較例4)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ100μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、シーラント層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/シーラント層)を作製した。
【0095】
(比較例5)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、接着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/接着剤層)を作製した。
【0096】
(比較例6)
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)を作製した。得られたフィルムの一方の面上に、粘着剤層を形成して、保護フィルム(基材フィルム/粘着剤層)を作製した。
【0097】
(実施例24)
アルミニウム箔(AL箔)の一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を3.0質量%含有するシーラント層を形成して、保護フィルム(AL層/シーラント層)を作製した。
【0098】
(実施例25)
アルミニウム箔(AL箔)の一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を3.0質量%含有する接着剤層を形成して、保護フィルム(AL層/接着剤層)を作製した。
【0099】
(実施例26)
アルミニウム箔(AL箔)の一方の面上に、材料Aの硫化水素吸着材を3.0質量%含有する粘着剤層を形成して、保護フィルム(AL層/粘着剤層)を作製した。
【0100】
(比較例7)
アルミニウム箔(AL箔)の一方の面上に、粘着剤層を形成して、保護フィルム(AL層/粘着剤層)を作製した。
【0101】
(比較例8)
アルミニウム箔(AL箔)の一方の面上に、接着剤層を形成して、保護フィルム(AL層/接着剤層)を作製した。
【0102】
(比較例9)
アルミニウム箔(AL箔)の一方の面上に、粘着剤層を形成して、保護フィルム(AL層/粘着剤層)を作製した。
【0103】
[水蒸気透過度の測定]
実施例1~17のガスバリアフィルム、実施例14~23及び比較例1~6の基材フィルム、並びに実施例24~26及び比較例7~9のアルミニウム箔について、40℃及び90%RHでの水蒸気透過度を「JIS Z 0208:1976 カップ法」に準じて測定した。
【0104】
[保護フィルムの評価]
(硫化水素(H2S)吸収性の評価)
保護フィルムを50mm×50mmのサイズに切り出し、硫化水素吸収性評価用サンプルとした。このサンプルを2Lのテドラーバック内に入れ、テドラーバックを封止した。このテドラーバック内に濃度20質量ppmの硫化水素ガスを2L流し込み、室温(25℃)にて144時間放置し、144時間放置した後のテドラーバック内の硫化水素濃度を測定した。得られた結果から、下記評価基準に基づいて硫化水素吸収性を評価した。
A:硫化水素濃度が5質量ppm以下
B:硫化水素濃度が5質量ppm超
【0105】
(剥離強度(N/5mm))
保護フィルムを5mm幅にカットして測定サンプルとした。他方、支持体としてPETフィルムが積層された全固体電池用外装材を準備した。得られた測定サンプルの接着層が支持体に接触する向きで、支持体上に配置した後、測定サンプルと支持体とを接着した。続いて、ガスバリアフィルム又は基材フィルムと接着層との剥離強度(180°剥離、剥離速度は300mm/分)を測定した。なお、接着層が粘着剤層である場合、支持体上に測定サンプルを配置した後、2kgのローラーを5往復させて、測定サンプルと支持体とを接着した。接着層が接着剤層である場合、支持体上に測定サンプルを配置し、2kgのローラーを5往復させた後、接着剤層を硬化させた。接着層がシーラント層である場合、支持体上に測定サンプルを配置した状態で、温度:150℃、圧力:0.98MPa及び時間:150秒の条件でヒートシールをした。
【0106】
実施例及び比較例の構成及び評価結果のまとめを表1~3に示す。
【0107】
【0108】
実施例の保護フィルムは、比較例の保護フィルムと比較して硫化水素吸収性に優れることがわかる。すなわち、実施例の保護フィルムによれば、比較例の保護フィルムと比較して、硫化水素の外部環境への放出を抑制できることがわかる。
10…外装材、20,30,40…全固体電池用保護フィルム、1…基材フィルム、1a…ガスバリア層、2…金属箔、3…接着層、50…全固体電池、52…電池要素、53…金属端子。