(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058163
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】印刷方法、エンドエフェクター、及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20240418BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B25J17/00 A
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165337
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友寿
【テーマコード(参考)】
2C056
3C707
【Fターム(参考)】
2C056EC03
2C056EC11
2C056HA37
2C056HA38
2C056KD10
3C707BS12
3C707BT13
3C707CX01
3C707HS01
3C707HS30
3C707LT12
3C707LV04
(57)【要約】
【課題】リニアステージのボールにフレッチングが発生し難い印刷方法、エンドエフェクター、及びロボットシステムを提供する。
【解決手段】印刷方法は、ピエゾ駆動するリニアステージ11を介してインクジェットヘッド15を備えるロボットアーム220を用いて、対象物に印刷を行う方法であって、インクジェットヘッド15からインクが吐出されていないときに、リニアステージ11がロボットアーム220に対して相対的に移動し、インクジェットヘッド15がインクを吐出しながら移動する方向に対して、リニアステージ11の移動する方向が直交している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾ駆動するリニアステージを介してインクジェットヘッドを備えるロボットアームを用いて、対象物に印刷を行う方法であって、
前記インクジェットヘッドからインクが吐出されていないときに、前記リニアステージが前記ロボットアームに対して相対的に移動し、
前記インクジェットヘッドが前記インクを吐出しながら移動する方向に対して、前記リニアステージの前記移動する方向が直交している、
印刷方法。
【請求項2】
前記リニアステージの前記移動する距離は、前記リニアステージのボール外周1周以上、前記リニアステージの可動限界以下、である、
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記リニアステージの前記移動は、前記印刷の改行のときに行う、
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記リニアステージが前記移動して停止する位置は、移動開始時の位置より、ボール外周1周分以上離れている、
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記リニアステージの前記移動は、前記対象物の切り替わり時に行う、
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項6】
ロボットアームに接続し、ピエゾ駆動するリニアステージと、
対象物に印刷を行うインクジェットヘッドと、を備え、
前記リニアステージは、前記インクジェットヘッドからインクが吐出されていないときに、前記ロボットアームに対して相対的に移動し、
前記インクジェットヘッドが前記インクを吐出しながら移動する方向に対して、前記リニアステージの前記移動する方向が直交している、
エンドエフェクター。
【請求項7】
ロボットアームと、
請求項6に記載のエンドエフェクターと、を備える、
ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、エンドエフェクター、及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にロボットのアーム部にインクジェット印刷ヘッドを装着し、対象物に印刷するロボットシステムが記載されている。このロボットシステムは、印刷軌道のずれをピエゾステージによりインクジェット印刷ヘッドを印刷方向と直交する方向に移動させることで補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットシステムは、印刷方向のずれを補正する補正量が小さいため、ピエゾステージの移動量も小さい。そのため、ピエゾステージ内のリニアガイドのボールがフレッチングを起こしてしまい、補正精度が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷方法は、ピエゾ駆動するリニアステージを介してインクジェットヘッドを備えるロボットアームを用いて、対象物に印刷を行う方法であって、前記インクジェットヘッドからインクが吐出されていないときに、前記リニアステージが前記ロボットアームに対して相対的に移動し、前記インクジェットヘッドが前記インクを吐出しながら移動する方向に対して、前記リニアステージの前記移動する方向が直交している。
【0006】
エンドエフェクターは、ロボットアームに接続し、ピエゾ駆動するリニアステージと、対象物に印刷を行うインクジェットヘッドと、を備え、前記リニアステージは、前記インクジェットヘッドからインクが吐出されていないときに、前記ロボットアームに対して相対的に移動し、前記インクジェットヘッドが前記インクを吐出しながら移動する方向に対して、前記リニアステージの前記移動する方向が直交している。
【0007】
ロボットシステムは、ロボットアームと、上記に記載のエンドエフェクターと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係るエンドエフェクターの構成を示す斜視図。
【
図3】リニアガイドのキャリッジの内部構造を説明する斜視図。
【
図4】第1実施形態に係る印刷方法を示すフローチャート図。
【
図5】第2実施形態に係る印刷方法を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
先ず、第1実施形態に係るロボットシステム100について、
図1~
図3を参照して説明する。
尚、説明の便宜上、以降の
図2及び
図3には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z方向プラス側を「上」、Z方向マイナス側を「下」とも言う。
【0010】
本実施形態のロボットシステム100は、
図1に示すように、対象物に印刷を行うエンドエフェクター10と、エンドエフェクター10を保持し、エンドエフェクター10を印刷方向へ移動させるロボット200と、ロボット200の駆動を制御するロボット制御装置900と、を有する。
【0011】
ロボット200は、6つの駆動軸を有する6軸ロボットである。ロボット200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に接続されたエンドエフェクター10と、を有する。
【0012】
また、ロボットアーム220は、複数のアーム221,222,223,224,225,226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2,J3,J5は、曲げ関節であり、関節J1,J4,J6は、ねじり関節である。また、関節J1,J2,J3,J4,J5,J6には、それぞれ、駆動源であるモーターMと、モーターMの回転量又はアームの回動角を検出するエンコーダーEと、が設置されている。
【0013】
エンドエフェクター10は、ロボットアーム220に接続されており、より具体的には、ロボットアーム220の先端部のアーム226に接続されている。エンドエフェクター10は、
図2に示すように、アーム226に接続し、ピエゾ駆動するリニアステージ11と、リニアステージ11の移動ステージ13に搭載され、対象物に印刷を行うインクジェットヘッド15と、リニアステージ11を制御する制御部17と、を有する。
【0014】
リニアステージ11は、固定ステージ12及び移動ステージ13で構成されている。固定ステージ12は、アーム226にネジ18により固定され、X方向の両端に複数のキャリッジ20が接続されている。内部に配置された超音波モーター19によって移動ステージ13を矢印B方向であるY方向に移動させる。移動ステージ13は、インクジェットヘッド15や制御部17が搭載され、支持部14上面にレール21が固定されている。また、移動ステージ13には、複数の超音波モーター19が配置され、超音波モーター19をピエゾ駆動することにより移動ステージ13を矢印B方向であるY方向に移動させることができる。インクジェットヘッド15は、上面側にインクタンク16を備え、下面側にインクタンク16に対応した数の図示しないノズルを備えており、ノズルからインクを吐出しながらY方向と直交する矢印A方向であるX方向にロボットアーム220により移動し、対象物に印刷を行う。
【0015】
次に、固定ステージ12に固定されたキャリッジ20の内部構造について、
図3を参照して説明する。尚、キャリッジ20は、内部の構成が分り易くするために、ボール22を覆うキャリッジ20の一部を取り除いて図示してある。キャリッジ20には、移動ステージ13に固定されたレール21との間にボール22が配置されている。具体的には、ボール22が固定ステージ12のキャリッジ20と移動ステージ13のレール21との間に、Y方向に並んで複数設けられている。そのため、リニアステージ11において、移動ステージ13に固定された超音波モーター19をピエゾ駆動させ移動ステージ13を矢印B方向であるY方向に移動させる際に、ボール22は、レール21と共に移動ステージ13をY方向に滑らかに移動させることができる。従って、リニアステージ11は、インクジェットヘッド15の印刷方向であるX方向と直交するY方向に移動ステージ13を精度良く移動させることができる。
【0016】
リニアステージ11は、ロボットアーム220によってインクジェットヘッド15を移動し対象物に印刷を行う際に、印刷方向と直交する方向にインクジェットヘッド15がずれるのを補正するために配置されている。具体的には、リニアステージ11は、インクジェットヘッド15が搭載された移動ステージ13を印刷方向と直交する方向に移動させることで、A方向にインクジェットヘッド15が移動するときに生じる、A方向と直交したB方向のずれを補正する。
【0017】
尚、補正するずれ量は、高々数百μmであり、補正動作は微小範囲での動作となる。一方、リニアステージ11内のボール22は、直径0.5mm程度であり、補正動作の範囲は、ボール22の円周長1.57mmよりも非常に小さい。このため、ボール22が一回転以下の移動量の繰り返し動作となるため、フレッチングと言われる接触する2体が微小往復運動を繰り返すことで発生する表面損傷を発生する虞がある。フレッチングが発生した箇所では、引っ掛かり等で滑らかに動作し難くなり、補正精度が低下し印刷品質が悪くなってしまう。
従って、本実施形態のロボットシステム100では、インクジェットヘッド15からインクが吐出されていないときに、リニアステージ11をロボットアーム220に対して相対的に移動することで、補正動作時のボール22同士の接触位置を変えることができ、フレッチングの発生を抑制している。
【0018】
次に、第1実施形態に係る印刷方法について、
図4を参照して説明する。
【0019】
本実施形態のロボットシステム100による印刷方法は、
図4に示すように、先ず、ステップS1において、対象物を所定の位置に配置する等の印刷準備を行う。
【0020】
次に、ステップS2において、インクジェットヘッド15を印刷開始位置へ移動する。
【0021】
その後、ステップS3において、インクジェットヘッド15が印刷開始位置へ移動している間に、リニアステージ11をロボットアーム220に対して相対的に移動する。具体的には、リニアステージ11の移動ステージ13を印刷方向に直交する方向に移動させる。尚、リニアステージ11の移動する距離は、リニアステージ11のボール22外周1周以上、リニアステージ11の可動限界以下、である。インクジェットヘッド15からインクが吐出されていないときに、リニアステージ11をロボットアーム220に対して相対的に移動することで、補正動作時のボール22同士の接触位置を変えることができ、フレッチングの発生を抑制することができる。
【0022】
次に、ステップS4において、インクジェットヘッド15が印刷開始位置に到達していない場合は、「NO」として、ステップS3に戻り、リニアステージ11を移動するこの動作をインクジェットヘッド15が印刷開始位置に到達するまで繰り返す。また、インクジェットヘッド15が印刷開始位置に到達している場合は、「YES」として、ステップS5に進み、リニアステージ11の動作を停止する。
【0023】
その後、ステップS6において、インクジェットヘッド15からインクを吐出しながら印刷方向に移動し、対象物に印刷を行う。尚、印刷方向に直交する方向のずれが生じた場合には、リニアステージ11を補正量移動し、印刷方向に直交する方向のずれを補正する。
【0024】
次に、ステップS7において、次の行を印刷する場合、つまり、先に印刷した行から次の行に改行して印刷する場合は、「YES」として、ステップS2に戻り、次の行の印刷開始位置へインクジェットヘッド15を移動し、ステップS3でリニアステージ11を移動する。従って、リニアステージ11の移動は、印刷の改行のときに行う。また、次の行を印刷しない場合は、「NO」として、対象物への印刷を終了する。
【0025】
尚、本実施形態の印刷方法では、インクジェットヘッド15が印刷開始位置に到達する前や印刷の改行ごとに、リニアステージ11を移動することで、隣り合うボール22が略同じ位置で接触し微小往復運動を繰り返すことがなくなるので、フレッチングの発生を抑制することができる。
【0026】
また、フレッチングの発生を抑制するためのリニアステージ11の移動は、対象物の切り替わり時に行っても良い。尚、対象物の切り替わり時とは、対象物が例えば印刷用紙の場合、1枚目の印刷用紙に印刷が終了し、2枚目に印刷するように、印刷用紙が1枚目から2枚目に切り替わることを言う。
【0027】
また、フレッチングの発生を抑制するためのリニアステージ11の移動は、1つの対象物の印刷が終了し、次の対象物を準備するまでの待機期間でも良く、また、所定時間経過毎に行っても良い。
【0028】
以上述べたように本実施形態のロボットシステム100による印刷方法は、インクジェットヘッド15からインクが吐出されていないときに、リニアステージ11がロボットアーム220に対して相対的に移動し、インクジェットヘッド15がインクを吐出しながら移動する方向に対して、リニアステージ11の移動する方向が直交している。そのため、リニアステージ11内のボール22のフレッチングの発生を抑制することができ、且つ、印刷方向に直交する方向のずれを高精度に補正することができる。
【0029】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る印刷方法について、
図5を参照して説明する。
【0030】
本実施形態のロボットシステム100による印刷方法は、印刷の改行毎に、リニアステージ11の初期位置を変更すること以外は、第1実施形態の印刷方法と同様である。
【0031】
本実施形態のロボットシステム100による印刷方法は、
図5に示すように、先ず、ステップS11において、対象物を所定の位置に配置する等の印刷準備を行う。
【0032】
次に、ステップS12において、リニアステージ11の初期位置を設定する。尚、初期位置とは、リニアステージ11の移動開始時の位置である。
【0033】
その後、ステップS3において、リニアステージ11をステップS12で設定した初期位置に移動する。インクジェットヘッド15が印刷開始位置へ移動している間に、リニアステージ11をロボットアーム220に対して相対的に移動する。具体的には、リニアステージ11の移動ステージ13を印刷方向に直交する方向に移動させる。尚、リニアステージ11の移動する距離は、リニアステージ11のボール22外周1周分以上離れた位置である。
【0034】
次に、ステップS14において、ロボットアーム220でインクジェットヘッド15を印刷開始位置に移動する。
【0035】
その後、ステップS15において、インクジェットヘッド15からインクを吐出しながら印刷方向に移動し、対象物に印刷を行う。尚、印刷方向に直交する方向のずれが生じた場合には、リニアステージ11を補正量移動し、印刷方向に直交する方向のずれを補正する。
【0036】
次に、ステップS16において、次の行を印刷する場合、つまり、先に印刷した行から次の行に改行して印刷する場合は、「YES」として、ステップS12に戻り、移動開始時の位置より、ボール22外周1周分以上離れた位置を初期位置として設定する。改行毎にリニアステージ11の初期位置を変更することで、補正動作時のボール22同士の接触位置を変えることができ、フレッチングの発生を抑制することができる。また、次の行を印刷しない場合は、「NO」として、対象物への印刷を終了する。
【0037】
このような印刷方法とすることで、改行毎にリニアステージ11の初期位置を移動開始時の位置より、ボール22外周1周分以上離れた位置とすることで、補正動作時のボール22同士の接触位置を変えることができ、フレッチングの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…エンドエフェクター、11…リニアステージ、12…固定ステージ、13…移動ステージ、14…支持部、15…インクジェットヘッド、16…インクタンク、17…制御部、18…ネジ、19…超音波モーター、20…キャリッジ、21…レール、22…ボール、100…ロボットシステム、200…ロボット、210…基台、220…ロボットアーム、221,222,223,224,225,226…アーム、900…ロボット制御装置、A…矢印、B…矢印、E…エンコーダー、J1,J2,J3,J4,J5,J6…関節、M…モーター。