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特開2024-58166噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058166
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165342
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】玉田 宏一
(72)【発明者】
【氏名】北村 徳久
(72)【発明者】
【氏名】金原 英司
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA02
2G050CA03
2G050EC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流量センサーが故障し難い噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法を提供する。
【解決手段】試験槽と、噴霧部と、第1空気供給部と、腐食液供給部と、を含む噴霧腐食試験機であって、噴霧部は、腐食液が供給され第1の開口が設けられた第1ノズル33と、第1の開口と近接する第2の開口が設けられた第2ノズル32と、を含み、第1空気供給部は第2ノズル32に噴霧形成用空気を供給し、腐食液供給部は、腐食液を保持する溶液溜め51と、溶液溜め51と第1ノズル33とを接続するパイプ52と、パイプ52に形成され、溶液溜め51から第1ノズルに供給される腐食液の流量を測定する流量センサー55と、を含み、流量センサー55は、試験槽の外側、または、試験槽内に配置され、試験槽内に配置される場合は、流量センサー55が噴霧に晒されることを防止するための遮蔽容器で覆われている噴霧腐食試験機。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽と、噴霧部と、第1空気供給部と、腐食液供給部と、を含む噴霧腐食試験機であって、
噴霧部は、
第1の開口が設けられた第1の先端部を有すると共に腐食液が供給される第1ノズルと、
第1の開口と近接する第2の開口が設けられた第2の先端部を有する第2ノズルと、
第1の先端部および第2の先端部を収容する内部空間を有する噴霧塔と、
を含み、
腐食液を試験槽に噴霧することができ、
第1空気供給部は第2ノズルに噴霧形成用空気を供給し、
腐食液供給部は、
腐食液を保持する溶液溜めと、
溶液溜めと第1ノズルとを接続するパイプと、
パイプに形成され、溶液溜めから第1ノズルに供給される腐食液の流量を測定する流量センサーと、
を含み、
流量センサーは、
試験槽の外側、または、試験槽内に配置され、
試験槽内に配置される場合は、流量センサーが噴霧に晒されることを防止するための遮蔽容器で覆われている
噴霧腐食試験機。
【請求項2】
試験槽の側壁の一部に、試験槽の内部方向に突出する凸部が形成され、
流量センサーが、凸部の試験槽の外側部分に配置されている
請求項1に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項3】
試験槽の底床の一部に、試験槽の内部方向に突出する凸部が形成され、
流量センサーが、凸部の試験槽の外側部分に配置されている
請求項1に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項4】
流量センサーが試験槽内に配置される場合、遮蔽容器内の温度を調整するための温度調整部を含む
請求項1に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項5】
温度調整部が、
遮蔽容器へ冷却用の空気を供給する第2空気供給部、または、
遮蔽容器へ冷却用の水を供給する冷却用水供給部、
を含む
請求項4に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項6】
制御部を更に含み、
制御部は、流量センサーの測定値が予め設定した値から外れた際にアラーム信号を出力する
請求項1~5のいずれか一項に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項7】
制御部を更に含み、
第1空気供給部は、噴霧形成用空気の供給圧を制御する圧力調節器を含み、
制御部は、流量センサーの測定値が予め設定した値から外れた際に、試験槽に供給される噴霧量を所定の値にするため、圧力調節器を制御する
請求項1~5のいずれか一項に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項8】
第1空気供給部が、第2ノズルから供給される空気の温度を調整する空気飽和器を更に含み、
制御部は、流量センサーの測定値が予め設定した値から外れた際に、第2ノズルから供給される空気の温度を所定の温度にするため、空気飽和器を制御する
請求項7に記載の噴霧腐食試験機。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の噴霧腐食試験機を備え、噴霧腐食試験と他の1以上の試験とを順次行うように構成された複合サイクル試験機。
【請求項10】
噴霧腐食試験機の改良方法であって、
噴霧腐食試験機は、試験槽と、噴霧部と、第1空気供給部と、腐食液供給部と、を含み、
噴霧部は、
第1の開口が設けられた第1の先端部を有すると共に腐食液が供給される第1ノズルと、
第1の開口と近接する第2の開口が設けられた第2の先端部を有する第2ノズルと、
第1の先端部および第2の先端部を収容する内部空間を有する噴霧塔と、
を含み、
腐食液を試験槽に噴霧することができ、
第1空気供給部は第2ノズルに噴霧形成用空気を供給し、
腐食液供給部は、
腐食液を保持する溶液溜めと、
溶液溜めと第1ノズルとを接続するパイプと、
パイプに形成され、溶液溜めから第1ノズルに供給される腐食液の流量を測定する流量センサーと、
を含み、
改良方法は、
試験槽の側壁の一部または底床の少なくとも一部を取り外す工程と、
取り外した側壁または底床部分に、凸部を含む第2の側壁、または、凸部を有する第2の底床を配置する工程と、
を含み、
配置する工程では、凸部を試験槽の内部方向に突出するように配置することで、流量センサーが試験槽の外側である凸部に配置される、
改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の部品や材料などの試料の噴霧腐食試験を行う噴霧腐食試験機が知られている。また、より自然環境に近似し促進性の高い試験として、噴霧腐食試験と、乾燥試験、湿潤試験、浸漬試験および低温試験といった他の試験とを組み合わせて1サイクルとし、このサイクルを繰り返して試験片を暴露する複合サイクル試験機が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の噴霧腐食試験機は、試験槽内に空気ノズルと液ノズルとを有する噴霧器を備えており、空気ノズルから噴出される圧縮空気のベンチュリー効果により吸い上げられた液ノズル内の腐食液(塩水などの腐食性の溶液)が、微細な粒子として試験槽内に載置された試験片に対して一様に噴霧されるように構成されている。
【0004】
ところで、ベンチュリー効果により腐食液から噴霧を形成する場合、析出物の付着により液ノズルの噴出孔が詰まることがある。そのため、特許文献1には、流量センサーにより腐食液の流量を測定し、液ノズルに供給される腐食液の流量が規定値以下となった際、制御部により腐食液の噴霧を停止し、液ノズルの洗浄を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5810377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1に記載の発明は、流量センサーが試験槽内に配置されているため腐食液の噴霧により流量センサーが故障する恐れがあるという問題を新たに発見した。
【0007】
本出願における開示は、上記問題点を解決するためになされたものである。鋭意研究を行ったところ、流量センサーを試験槽の外側、または、試験槽内に配置し、流量センサーを試験槽内に配置する場合は、噴霧に晒されることを防止するための遮蔽容器で流量センサーを覆うことで、上記問題を解決できることを新たに見出した。
【0008】
すなわち、本出願における開示の目的は、流量センサーが故障し難い噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願における開示は、以下に記載する噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法に関する。
【0010】
(1)試験槽と、噴霧部と、第1空気供給部と、腐食液供給部と、を含む噴霧腐食試験機であって、
噴霧部は、
第1の開口が設けられた第1の先端部を有すると共に腐食液が供給される第1ノズルと、
第1の開口と近接する第2の開口が設けられた第2の先端部を有する第2ノズルと、
第1の先端部および第2の先端部を収容する内部空間を有する噴霧塔と、
を含み、
腐食液を試験槽に噴霧することができ、
第1空気供給部は第2ノズルに噴霧形成用空気を供給し、
腐食液供給部は、
腐食液を保持する溶液溜めと、
溶液溜めと第1ノズルとを接続するパイプと、
パイプに形成され、溶液溜めから第1ノズルに供給される腐食液の流量を測定する流量センサーと、
を含み、
流量センサーは、
試験槽の外側、または、試験槽内に配置され、
試験槽内に配置される場合は、流量センサーが噴霧に晒されることを防止するための遮蔽容器で覆われている
噴霧腐食試験機。
(2)試験槽の側壁の一部に、試験槽の内部方向に突出する凸部が形成され、
流量センサーが、凸部の試験槽の外側部分に配置されている
上記(1)に記載の噴霧腐食試験機。
(3)試験槽の底床の一部に、試験槽の内部方向に突出する凸部が形成され、
流量センサーが、凸部の試験槽の外側部分に配置されている
上記(1)に記載の噴霧腐食試験機。
(4)流量センサーが試験槽内に配置される場合、遮蔽容器内の温度を調整するための温度調整部を含む
上記(1)に記載の噴霧腐食試験機。
(5)温度調整部が、
遮蔽容器へ冷却用の空気を供給する第2空気供給部、または、
遮蔽容器へ冷却用の水を供給する冷却用水供給部、
を含む
上記(4)に記載の噴霧腐食試験機。
(6)制御部を更に含み、
制御部は、流量センサーの測定値が予め設定した値から外れた際にアラーム信号を出力する
上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の噴霧腐食試験機。
(7)制御部を更に含み、
第1空気供給部は、噴霧形成用空気の供給圧を制御する圧力調節器を含み、
制御部は、流量センサーの測定値が予め設定した値から外れた際に、試験槽に供給される噴霧量を所定の値にするため、圧力調節器を制御する
上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の噴霧腐食試験機。
(8)第1空気供給部が、第2ノズルから供給される空気の温度を調整する空気飽和器を更に含み、
制御部は、流量センサーの測定値が予め設定した値から外れた際に、第2ノズルから供給される空気の温度を所定の温度にするため、空気飽和器を制御する
上記(7)に記載の噴霧腐食試験機。
(9)上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の噴霧腐食試験機を備え、噴霧腐食試験と他の1以上の試験とを順次行うように構成された複合サイクル試験機。
(10)噴霧腐食試験機の改良方法であって、
噴霧腐食試験機は、試験槽と、噴霧部と、第1空気供給部と、腐食液供給部と、を含み、
噴霧部は、
第1の開口が設けられた第1の先端部を有すると共に腐食液が供給される第1ノズルと、
第1の開口と近接する第2の開口が設けられた第2の先端部を有する第2ノズルと、
第1の先端部および第2の先端部を収容する内部空間を有する噴霧塔と、
を含み、
腐食液を試験槽に噴霧することができ、
第1空気供給部は第2ノズルに噴霧形成用空気を供給し、
腐食液供給部は、
腐食液を保持する溶液溜めと、
溶液溜めと第1ノズルとを接続するパイプと、
パイプに形成され、溶液溜めから第1ノズルに供給される腐食液の流量を測定する流量センサーと、
を含み、
改良方法は、
試験槽の側壁の一部または底床の少なくとも一部を取り外す工程と、
取り外した側壁または底床部分に、凸部を含む第2の側壁、または、凸部を有する第2の底床を配置する工程と、
を含み、
配置する工程では、凸部を試験槽の内部方向に突出するように配置することで、流量センサーが試験槽の外側である凸部に配置される、
改良方法。
【発明の効果】
【0011】
本出願で開示する噴霧腐食試験機および複合サイクル試験機を用いることで、流量センサーが故障し難くなる。したがって、試験を中断する割合が低くなる。また、本出願で開示する改良方法により、従来の噴霧腐食試験機および複合サイクル試験機の流量センサーを試験槽の外側に配置できることから、流量センサーが故障し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る噴霧腐食試験機1の概略を示す概略図である。
図2図2は、流量センサー55の配置例1について説明するための図である。
図3図3は、流量センサー55の配置例2について説明するための図である。
図4図4は、流量センサー55の配置例3について説明するための図である。
図5図5は、流量センサー55の配置例4について説明するための図である。
図6図6は、流量センサー55の配置例4(温度調整部57を含む例)について説明するための図である。
図7図7は、流量センサー55の配置例4(温度調整部57のその他の例)について説明するための図である。
図8図8は、実施形態に係る複合サイクル試験機11の概略を示す概略図である。
図9図9Aは第1ノズル33と第2ノズル32のその他の配置例を示す概略図で、図9B図9AをZ方向に見た時の第1ノズル33の第1の開口33aと第2ノズル32の第2の開口32aの位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、噴霧腐食試験機、複合サイクル試験機、および、噴霧腐食試験機の改良方法の各実施形態について詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0014】
また、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0015】
(噴霧腐食試験機1の実施形態)
図1乃至図7を参照して、実施形態に係る噴霧腐食試験機1の概略について説明する。図1は、実施形態に係る噴霧腐食試験機1の概略を示す概略図である。図2乃至図7は、流量センサー55の配置等の概略を説明するための図である。なお、図1は噴霧腐食試験1の全体の概略を示すための図であることから、図面の複雑化を避けるため、本出願における開示の特徴である流量センサー55の配置等の詳細は示されていない。流量センサー55の配置等については、図2乃至図7を参照して詳しく説明する。
【0016】
実施形態に係る噴霧腐食試験機1は、試験槽2と、噴霧部3と、第1空気供給部4と、腐食液供給部5と、を含む。
【0017】
噴霧腐食試験機1は、試験槽2の内部に載置した試験片Sに対し腐食液を噴霧し、その耐食性を評価する噴霧腐食試験を行う。腐食液は、当該技術分野で一般的に使用されている腐食液であれば特に制限はない。例えば、塩化ナトリウムを含む中性塩水溶液のほか、塩化ナトリウム溶液に酢酸を加えた酢酸酸性塩水溶液、または、塩化ナトリウム、塩化第二銅および酢酸を含むキャス液などが挙げられる(例えば腐食液として塩水を用いる場合には、JIS Z 2371「塩水噴霧試験方法」を参照)。
【0018】
試験槽2は、その内部に試験片Sおよび噴霧部3を収容する容器であり、噴霧部3によって噴霧される腐食液を試験片Sの上に自由落下させる空間を有する。その天井部分は、噴霧されて天井部分に付着した腐食液が試験片Sに落下しないようにするため、限定されるものではないが、切妻屋根形状としてもよい。
【0019】
噴霧部3は、試験槽2の内部に立設する噴霧塔31と、その噴霧塔31の内部に設けられた噴霧器35とを有する。図1に示す例では、噴霧塔31は、略鉛直方向に延在する筒状部31Aと、その上方に配置された方向体31Bとを有する。筒状部31Aは例えば円筒であり、筒状部31Aの下部には空気流通孔(図示せず)がいくつか設けられていてもよい。筒状部31Aの内部空間には、その側面から噴霧器35が挿入されている。なお、図1に示す例では、筒状部31Aは、試験槽2の側壁付近に配置されているが、筒状部31Aは試験槽2の中央付近に配置されてもよい。
【0020】
噴霧器35は、第1の開口が設けられた第1の先端部を有すると共に腐食液が供給される第1ノズル(液ノズル)33と、第1の開口と近接する第2の開口が設けられた第2の先端部を有する第2ノズル(空気ノズル)32とを有する。図1に示す例では、第2ノズル32は略L字状に形成され、同一平面内で第1ノズル33の先端部および第2ノズル32の先端部が近接するように筒状部31Aに固定されている。第2ノズル32および第1ノズル33は、筒状部31Aの内部で互いに直交する方向に延在し、かつ、各々の先端部の噴出孔(開口)が相互に近接配置された状態となっている。本実施形態では、第1ノズル33は水平方向に延在する先端部分を有し、第2ノズル32は鉛直方向に延在する先端部分を有する。なお、第1ノズル33および第2ノズル32は、一般的にガラス製材料によって形成されている。方向体31Bは、第2ノズル32および第1ノズル33によって噴霧された霧状の腐食液の噴霧方向および噴霧距離を調節するためのものであり、略円錐形状である。
【0021】
第1空気供給部4は、第2ノズル32に噴霧形成用空気を供給し、ベンチュリー効果により第1ノズル33の第1の開口から腐食液を吸い上げることで噴霧を形成できれば特に制限はない。第1空気供給部4は、例えば、コンプレッサー41、圧力調節器42、空気飽和器43、空気供給管46、導管49を含む。
【0022】
第1空気供給部4の動作について説明する。コンプレッサー41は圧縮空気を生成し、導管49を介して圧縮空気を空気飽和器43へ送る。圧力調節器42は、コンプレッサー41で生成された圧縮空気の圧力を制御する。空気飽和器43は、コンプレッサー41で生成され、圧力調節器42により圧力が調節された圧縮空気を飽和空気(飽和状態の圧縮空気)にするためのものであり、その内部に所定量の水(脱イオン水や蒸留水などの、不純物を取り除いたもの)を収容している。発泡管44は、空気飽和器43の内部の水の中に配置され、一端が導管49と接続された金属や樹脂等で形成した管であり、その一部に設けられた複数の細孔から空気飽和器43の内部の水の中に圧縮空気を発泡させ、飽和空気とするものである。ヒーター45は、空気飽和器43の内部の水の中に配置されており、水の加熱を行うものである。空気供給管46は、空気飽和器43において生成された飽和空気を噴霧部3の第2ノズル32に送る配管である。空気供給管46の一端は、第2ノズル32の他端(後方端)と接続されており、空気供給管46の他端は、空気飽和器43の内部に収容された水の液面上の空間に位置している。
【0023】
第1空気供給部4は、さらに、空気飽和器43内に図示しない温度センサーおよび圧力センサーを具備してもよい。温度センサーおよび圧力センサーは、それぞれ、空気飽和器43内の温度および圧力を計測するものである。温度センサーは、例えば熱電対温度計や白金抵抗測温計等が挙げられ、圧力センサーは、例えば歪ゲージ型の圧力計や静電容量型等の圧力計が挙げられる。
【0024】
腐食液供給部5は、第1ノズル33に腐食液を供給し、第2ノズル32から噴出した噴霧形成用空気のベンチュリー効果により、噴霧を形成できれば特に制限はない。実施形態に係る噴霧腐食試験機1の腐食液供給部5は、少なくとも、腐食液を保持する溶液溜め51と、溶液溜め51と第1ノズル33とを接続するパイプ52と、パイプ52に形成され溶液溜め51から第1ノズル33に供給される腐食液の流量を測定する流量センサー55と、を少なくとも含む。
【0025】
流量センサー55は、溶液溜め51から第1ノズル33に向けてパイプ52内を流れる腐食液の流量を測定できれば特に制限はない。流量センサー55としては、超音波方式や電磁方式等の非接触型、パイプ52の腐食液に接触する接触型、の何れの流量センサーを用いてもよい。非接触型および接触型の流量センサー55は、公知の流量センサーを用いればよい。流量センサー55が非接触型の場合は、パイプ52に取り付ければよい。流量センサー55が接触型の場合は、パイプ52を分割し、フランジ等を用いて接触型の流量センサー55を接続すればよい。
【0026】
上記のとおり、噴霧はベンチュリー効果により形成される。第2ノズル32から噴出する噴霧形成用空気の供給量が、第2ノズル32の異常やコンプレッサー41の異常等により変化すれば、第1ノズル33から吸い上げられる腐食液の量は変わる。また、第2ノズル32から噴出した噴霧形成用空気の供給量は一定であっても、析出物等により第1ノズル33が詰まった場合も、第1ノズル33から吸い上げられる腐食液の量は変わる。したがって、パイプ52を流れる腐食液の流量を測定することで、噴霧腐食試験機1を連続運転している際に発生した噴霧部3、第1空気供給部4、腐食液供給部5の何らかの異常を検知できる。そして、異常を検知した後に異常状態を解消することで、それまでの試験時間や試験片を無駄にすることなく試験を継続できる。
【0027】
また、図1に示す例では、任意付加的に、補給用の腐食液を貯蔵する補給タンク53と、導管54とを有する。図1に示す例では、溶液溜め51は噴霧塔31の直下に配置され、パイプ52によって第1ノズル33と接続されている。これにより、溶液溜め51において保持されている腐食液が第1ノズル33を介して噴霧塔31に供給可能となっている。また、溶液溜め51は、導管54を通じて補給タンク53と接続されている。このため、溶液溜め51において腐食液が消失する前に補給タンク53から腐食液を供給すれば、溶液溜め51において常に腐食液を保持する状態を維持できるので、噴霧腐食試験機1の連続稼働が可能となる。さらに、噴霧塔31の筒状部31Aの下部と溶液溜め51の上部とが連通した構造としてもよい。第1ノズル33より噴霧された霧状の腐食液の中で、粒子径が小さい腐食液は筒状部31Aと方向体31Bとの隙間から試験槽2内に噴霧されるが、粒子径が大きい腐食液は噴霧塔31の筒状部31Aの内壁に付着し、液滴となってその内壁を流下する。したがって、筒状部31Aの内壁に付着した粒子径が大きい腐食液のみを溶液溜め51に回収することができる。
【0028】
図1に示す噴霧腐食試験機1は、任意付加的に、制御部8および湿度発生部9を具備する例を示している。制御部8は中央演算処理装置(CPU)やメモリーを有するコンピューターを利用したものである。制御部8は、メモリーに予め記憶させた所定のプログラムに従い、また、腐食液の噴霧時間、試験槽2内および腐食液の温度などの各種データーに基づき、CPUが動作することによって噴霧腐食試験の実行制御を行う。制御部8は、例えばヒーター45のオン・オフ動作の制御を行う。制御部8は、必要に応じて、コンプレッサー41や圧力調節器42による飽和空気の制御を行ってもよい。また、制御部8には、空気飽和器43の内部に設置した温度センサーおよび圧力センサー(いずれも図示せず)からの信号が入力されるようにしてもよい。その場合、制御部8は、温度センサーおよび圧力センサーからの信号に応じて、飽和空気の温度および圧力の調整を行う制御信号をヒーター45および圧力調節器42に対し送信する。制御部8は、さらに、流量センサー55からの信号が入力されてもよい。制御部8に流量センサー55からの信号が入力される場合の制御については後述する。
【0029】
湿度発生部9は、試験槽2の下方に配置されており、蒸気を生成して試験槽2内に供給する。この湿度発生部9によって試験槽2内の温度を所定の値に制御しつつ、試験槽2内の湿度を高く維持することができる。
【0030】
(実施形態に係る噴霧腐食試験機1において、採用可能な流量センサー55の配置例)
実施形態に係る噴霧腐食試験機1の流量センサー55は、試験槽2の外側、または、試験槽2内に配置される。そして、試験槽2内に配置される場合は、噴霧に晒されることを防止するため流量センサー55は遮蔽容器56で覆われている。以下に、図面を参照しながら、実施形態に係る噴霧腐食試験機1において、採用可能な流量センサー55の配置例を説明する。なお、以下に示す配置例は単なる例示である。流量センサー55が、噴霧に晒されないように配置できれば、以下の例示に限定されないことは言うまでもない。
【0031】
(流量センサー55の配置例1)
図2を参照して、流量センサー55の配置例1について説明する。なお、図2では、流量センサー55の配置を中心に説明するため、噴霧腐食試験機1の一部のみが表示されている。図3乃至図7においても、図2と同様に噴霧腐食試験機1の一部のみが表示されている。
【0032】
先ず、図2を参照し、流量センサー55が試験槽2の外側に配置される例について説明する。図2に示す例では、流量センサー55は、試験槽2の側壁2aの外側に配置されている。試験槽2を上方から鉛直方向(図2のZ方向)に見た場合、試験槽2は略長方形または略正方形状である。つまり、側壁は4カ所ある。図2に示す例では、流量センサー55とパイプ52の一部が、任意の一つの側壁2aから試験槽2の外側に突出するように配置されている。図2に示す例では、側壁2aにパイプ52が通過する貫通孔を形成し、貫通孔とパイプ52の接続部分を、パテや貫通型の継手、ゴム栓等を用いて密封すればよい。
【0033】
なお、図示は省略するが、流量センサー55は、試験槽2の底床2bから試験槽2の外側に配置されてもよい。図2に示す例では、略コ字状のパイプ52の一端が溶液溜め51に略水平方向に接続している。流量センサー55を底床2bから試験槽2の外側に配置する場合は、パイプ52を溶液溜め51から鉛直方向に底床2bから試験槽2の外側まで延伸し、流量センサー55を取り付けた後のパイプ52を試験槽2内に戻し、第1ノズル33に接続すればよい。
【0034】
流量センサー55を配置例1に記載のように配置した噴霧腐食試験機1は、以下の効果を奏する。
(1)噴霧腐食試験機1で用いられる腐食液は塩水等の腐食液であるが、配置例1の流量センサー55は試験槽2の外側に配置されている。したがって、流量センサー55が噴霧に晒されることが無いことから、特許文献1に記載の流量センサー55と比較して、流量センサー55が腐食により故障するリスクが減少する。
(2)仮に、流量センサー55が故障した場合でも、流量センサー55は試験槽2の外側に配置されている。したがって、連続運転中の試験槽2を開けることなく、流量センサー55を交換できる。
(3)試験槽2の下方には、噴霧腐食試験機1の構成部品が配置されている場合がある。したがって、流量センサー55を側壁2aの外側に配置する場合は、底床2bの外側に配置する場合と比較して、流量センサー55の配置や交換作業の利便性が向上する。
(4)流量センサー55には、流量を表示する表示部が一体的に構成されている場合がある。流量センサー55を側壁2aの外側に配置する場合、作業者が流量センサー55の表示部を容易にモニタできる。
(5)流量センサー55の電源線や信号線から制御部8への配線作業の利便性が向上する。
【0035】
(流量センサー55の配置例2)
次に、図3を参照し、流量センサー55が試験槽2の外側に配置されるその他の例について説明する。図3に示す例では、試験槽2の側壁2aの一部に、試験槽2の内部方向に突出する凸部2cが形成され、流量センサー55は凸部2cの試験槽2の外側部分に配置されている。図3に示す例は、側壁2aに形成した凸部2cに流量センサー55が配置される以外は、その他の構成は配置例1と同様である。
【0036】
(流量センサー55の配置例3)
次に、図4を参照し、流量センサー55が試験槽2の外側に配置されるその他の例について説明する。図4に示す例では、試験槽2の底床2bの一部に、試験槽2の内部方向に突出する凸部2dが形成され、流量センサー55は凸部2dの試験槽2の外側部分に配置されている。図4に示す例は、底床2bから凸部2dが形成されている以外は、その他の構成は配置例2と同様である。
【0037】
流量センサー55を配置例2または3に記載のように配置した噴霧腐食試験機1は、配置例1が奏する効果に加え、以下の効果を奏する。
(6)噴霧試験は、室温より高温で実施される場合がある。その場合、配置例1に示す例では、流量センサー55およびパイプ52の一部は、噴霧腐食試験機1を設置した外部環境に直接晒される。したがって、配置例1の場合、試験槽2内の温度と外部環境の温度差が激しい場合、試験槽2の外側に配置したパイプ52を流れる腐食液が温度の影響を受ける可能性がある。一方、配置例2および3では、凸部2c、2dの周囲は、一部を除き試験槽2で覆われていることから、凸部2c、2dの内部(試験槽2の外側)は、外部環境よりは試験槽2内の温度に近くなる。つまり、凸部2c、2dの内部(試験槽2の外側)は、試験槽2内の温度よりは低く、外部環境の温度よりは高くなる。したがって、配置例2または3に示す例では、配置例1と比較して、パイプ52を流れる腐食液が外部環境による温度の影響を受ける可能性が低くなる。
(7)噴霧腐食試験機1を複合サイクル試験に用いる場合を想定する。複合サイクル試験では、試験槽2内の温度を例えば70℃程度まで加熱する場合がある。流量センサー55は、高温環境下に晒されると故障するリスクが大きくなる。一方、上記(5)に記載のとおり、凸部2c、2dの内部(試験槽2の外側)は、試験槽2内の温度よりは低く、外部環境の温度よりは高くなる。したがって、試験槽2の内部に流量センサー55を配置する場合と比較して、熱による流量センサー55の故障のリスクが小さくなる。
(8)ベンチュリー効果により所望の量の噴霧を形成するためには、第1ノズル33および第2ノズル32の開口のサイズ、パイプ52の長さや形状、溶液溜め51と第1ノズル33との位置関係、第2ノズル32から噴出する噴霧形成用空気の流量等を考慮しながら、それぞれのパラメーターを精緻に設計する必要がある。勿論、配置例1の場合は、従来の噴霧腐食試験機1の設計と異なる場合も想定されるが、配置例1のパラメーターを精緻に設計すればよい。一方、配置例2または3に示す例では、従来の噴霧部3と、第1空気供給部4と、腐食液供給部5と、パイプ52の設計を変更することなく、流量センサー55を試験槽2の外側に配置できる。したがって、凸部2c、2d以外は従来の噴霧腐食試験機1の構成をそのまま利用することもできる。
【0038】
(流量センサー55の配置例4)
次に、図5乃至図7を参照し、流量センサー55が試験槽2の内部に配置される場合について説明する。図5に示す例では、流量センサー55は噴霧に晒されることを防止するための遮蔽容器56で覆われている。遮蔽容器56は、流量センサー55が噴霧に晒されないように、流量センサー55を覆うことができれば特に制限はない。例えば、樹脂製の箱状の容器の内部に流量センサー55を配置し、遮蔽容器56とパイプ52の接続部分を、パテ等を用いて密封すればよい。また、図示は省略するが、流量センサー55と遮蔽容器56との間に断熱材等を配置してもよい。
【0039】
また、流量センサー55が試験槽2の内部に配置される場合、噴霧腐食試験機1は遮蔽容器56内の温度を調整するための温度調整部57を含んでもよい。図6は、温度調整部57の一例として、遮蔽容器56へ冷却用の空気を供給する第2空気供給部を設けた例を示している。図6に示す例では、第2空気供給部は、空気流入部57aと、空気排出部57bと、コンプレッサー(図示は省略)と、を含み、遮蔽容器56の空間に空気を流入させることで、遮蔽容器56内を冷却する。空気は、図1に示すコンプレッサー41から分岐してもよいし、コンプレッサー41とは別体のコンプレッサーを設けてもよい。遮蔽容器56から排出する空気は、試験槽2の外部に排出すればよい。また、遮蔽容器56には温度計57cを配置してもよい。温度計57cを配置した場合、遮蔽容器56内の温度を下げる必要がある温度になった場合に遮蔽容器56内を冷却すればよい。また、図示は省略するが、空気温度調整装置を設け、遮蔽容器56内に流入する空気の温度を制御してもよい。空気温度調整装置を設けた場合、遮蔽容器56の冷却に加え、遮蔽容器56内の温度を上げる必要がある場合にも迅速に対応できる。
【0040】
図7は温度調整部57のその他の例を示す図で、遮蔽容器56へ冷却用の水を供給する冷却用水供給部を設けた例を示している。図7に示す例では、冷却用水供給部は、遮蔽容器56に挿通された配管57dと、配管57dに形成され配管57dを流れる水を噴出できる噴出孔57eと、を含む。図7に示す例では、遮蔽容器56の内部に噴出孔57eから水を流入させることで、遮蔽容器56内を冷却する。水は、例えば、水道水を流入できるように配管すればよい。なお、試験槽2の内部の温度に影響を与えないようにするため、遮蔽容器56に流入した水は、排出管57fにより試験槽2の外部に排出することが好ましい。また、遮蔽容器56には温度計57cを配置してもよい。温度計57cを配置した場合、遮蔽容器56内の温度を下げる必要がある温度になった場合に遮蔽容器56内を冷却すればよい。また、図示は省略するが、水温調整装置を設け、遮蔽容器56内に流入する水の温度を制御してもよい。水温調整装置を設けた場合、遮蔽容器56の冷却に加え、遮蔽容器56内の温度を上げる必要がある場合にも迅速に対応できる。
【0041】
流量センサー55を配置例4に記載のように配置した噴霧腐食試験機1は、以下の効果を奏する。
(9)噴霧腐食試験機1で用いられる腐食液は塩水等の腐食液であるが、配置例4の流量センサー55は遮蔽容器56で覆われている。したがって、流量センサー55が噴霧に晒されることが無いことから、特許文献1に記載の流量センサー55と比較して、流量センサー55が腐食により故障するリスクが減少する。
(10)噴霧腐食試験は、室温より高温で実施される場合がある。遮蔽容器56に断熱材を配置することで、流量センサー55が高温になることを防止することができ、熱による流量センサー55の故障のリスクが小さくなる。
(11)噴霧腐食試験機1を複合サイクル試験に用いる場合を想定する。複合サイクル試験では、試験槽2の内部の温度を例えば70℃程度まで加熱する場合がある。流量センサー55は、高温環境下に晒されると故障するリスクが大きくなる。一方、噴霧腐食試験機1が遮蔽容器56内の温度を調整するための温度調整部57を含む場合は、断熱材を形成する場合より、熱による流量センサー55の故障のリスクがより小さくなる。
【0042】
次に、実施形態に係る噴霧腐食試験機1が任意付加的に制御部を含む場合、流量センサー55の測定値を制御部にフィードバックすることで、例えば、以下に示す制御をしてもよい。なお、以下の制御例において、制御部には符号8を付与するが、制御部は図1に示す制御部8と同じでもよいし、異なる制御部を新たに設けてもよい。
【0043】
<制御例1>
流量センサー55の測定値が予め設定した値から外れた際に、制御部8はアラーム信号を出力してもよい。上記のとおり、パイプ52を流れる腐食液の流量を測定することで、噴霧腐食試験機1を連続運転している際に発生した噴霧部3、第1空気供給部4、腐食液供給部5の何らかの異常を検知できる。流量センサー55の測定値が予め設定した値から外れた場合は、噴霧腐食試験機1に何らかの異常を発生したことを意味する。出力したアラーム信号に基づき、噴霧腐食試験機1は警告音を発生してもよいし、警告灯を回転させてもよい。勿論、警告音と警告灯の回転を組み合わせてもよい。制御部8が異常発生を使用者に知らせることで、使用者は迅速に異常状態を解消することができる。迅速に異常状態を解消した場合は、継続中の試験をそのまま実施することが可能であることから、異常が発生するまでの試験時間や試験片を無駄にすることなく試験を継続できるという効果を奏する。
【0044】
<制御例2>
流量センサー55の測定値が予め設定した値から外れた際に、噴霧量を所定の値にするため、制御部8は噴霧形成用空気の供給圧を制御する圧力調節器42を制御してもよい。例えば、析出物等により、第1ノズル33の機能は喪失しないが、析出物の影響により第1ノズル33の開口が狭くなる場合を想定する。噴霧形成用空気の供給量が一定の状態で第1ノズル33の開口が狭くなると、第1ノズル33から吸い上げられる腐食液の量が少なくなる。一方、ベンチュリー効果により第1ノズル33から吸い上げられる腐食液の量は、第2ノズルから噴出する噴霧形成用空気の量に比例する。したがって、例えば、流量センサー55の測定値が予め設定した値から小さくなった場合は、圧力調整器42を制御し、噴霧形成用空気の量を多くすることで、試験槽2の内部に噴霧する腐食液の量を設定した量となるように調整できる。勿論、噴霧形成用空気の圧力増加や第1ノズル33と第2ノズル32の位置がずれた場合等の要因により、流量センサー55の測定値が予め設定した値から大きくなった場合は、圧力調整器42を制御し、噴霧形成用空気の量を少なくすることで、試験槽2の内部に噴霧する腐食液の量を設定した量となるように調整してもよい。
【0045】
<制御例3>
制御部8が圧力調整器42を調整する場合、制御部8は空気飽和器43を更に制御することで、第2ノズル32から噴出する噴霧形成用空気の温度を所定の温度となるように制御してもよい。第2ノズル32から噴出する噴霧形成用空気の温度は予め設定した温度となるように調整をされているが、圧力調整器42を調整すると第2ノズル32から噴出する噴霧形成用空気の温度が変わる。塩水噴霧試験時の空気飽和器43内の圧力は、一般的に、98kPaで運転されている。JIS Z 2371:2015では、塩水噴霧試験時の空気飽和器43内における圧縮空気の圧力と水の温度の組み合わせは以下のとおり例示されている。以下の例示を参考に、制御部8が空気飽和器43を制御すればよい。
【表1】
【0046】
(複合サイクル試験機11の実施形態)
次に、図8を参照して、複合サイクル試験機11の実施形態について説明する。図8は、実施形態に係る複合サイクル試験機11の概略を示す概略図である。なお、図8は複合サイクル試験機11の全体の概略を示すための図であることから、複雑化を避けるため、本出願における開示の特徴である流量センサー55の配置等の詳細は示されていない。
【0047】
実施形態に係る複合サイクル試験機11は、上記(噴霧腐食試験機1の実施形態)で説明した何れかの噴霧腐食試験機1を備え、噴霧腐食試験と他の1以上の試験とを順次行うように構成されている。図8に示す例では、複合サイクル試験機11は、噴霧腐食試験機1に加え調温室12が付加されており、噴霧腐食試験と乾燥試験と湿潤試験とを順次繰り返し行うことができる。
【0048】
調温室12は、試験槽2の側面に設けられた開口2Kによって試験槽2の内部と連通しており、その内部にファン13と調温室ヒーター14とを有する。ファン13は回転によって循環流を発生させ、試験槽2と調温室12の間で空気を循環させる。試験槽2から開口2Kを通って調温室12内に導入された空気は、調温室ヒーター14によって所定の温度に加熱され、ファン13が生成する循環流により試験槽2内に供給される。この調温室12と湿度発生部9を同時に制御することで、複合サイクル試験の各試験工程において、試験槽2内の雰囲気を所定の温湿度に調節することができる。
【0049】
また、複合サイクル試験機11は、試験槽2外の下方に低温空気を発生させる冷凍機(図示せず)を備えてもよい。この冷凍機は、試験槽2と開口(図示せず)を介して連通しており、試験槽2内の空気の一部を導入して、氷点下の低温空気を発生させるものである。この低温空気を試験槽2内に送ることで、試験槽2内の雰囲気を低温環境下に制御し、低温試験を実施することができる。なお、複合サイクル試験機11の詳細な動作は特許文献1に記載されていることから省略する。特許文献1に記載された事項は、参照により本明細書に含まれる。
【0050】
実施形態に係る複合サイクル試験機11は、噴霧腐食試験機1の実施形態で説明した何れかの噴霧腐食試験機1を含む。したがって、複合サイクル試験機11は噴霧腐食試験機1と同様の効果を奏する。
【0051】
(噴霧腐食試験機1の改良方法の実施形態)
次に、図1乃至図8を参照し、噴霧腐食試験機1の改良方法の実施形態について説明する。噴霧腐食試験機1の改良方法に用いる噴霧腐食試験機1は、上記噴霧腐食試験機1の実施形態において説明した何れかの噴霧腐食試験機1であってもよいし、その他の噴霧腐食試験機1であってもよい。噴霧腐食試験機1の詳細については、重複記載となることから説明は省略する。
【0052】
改良方法は、試験槽2の側壁2aの一部または底床2bの少なくとも一部を取り外す工程と、取り外した側壁2aまたは底床2b部分に、凸部2cを含む第2の側壁、または、凸部2dを有する第2の底床を配置する工程と、を含む。配置する工程では、凸部2c、2dを試験槽2の内部方向に突出するように配置することで、流量センサー55が試験槽2の外側である凸部2c、2dに配置される。
【0053】
取り外す工程において、試験槽2の側壁2aの一部を取り外すとは、例えば、試験槽2の4つの側壁の内の1つの側壁2a全部が取り外されてもよいし、1つの側壁2aの一部が取り外され(切り出され)てもよい。また、取り外す工程において、底床2bの少なくとも一部を取り外すとは、底床2bの全部が取り外されてもよいし、底床2bの一部が取り外され(切り出され)てもよい。側壁2aまたは底床2bの取り外した部分から、後述する配置する工程により流量センサー55を試験槽2の外側に配置できれば、取り外す側壁2aまたは底床2bサイズ、形状等に特に制限はない。
【0054】
配置する工程において、流量センサー55が試験槽2の外側である凸部2c、2dに配置されれば、第2の側壁、または、第2の底床の配置の方法に特に制限はない。例えば、試験槽2から取り外した部分を塞ぐことができ、且つ、凸部2c、2dを形成できる形状の第2の側壁、または、第2の底床を準備する。なお、第2の側壁、または、第2の底床は、作業の関係上、パーツに分割されていてもよいし、屈曲した形状であってもよい。流量センサー55が試験槽2の外側になるように第2の側壁、または、第2の底床を配置した後、試験槽2との接続部分(第2の側壁、または、第2の底床がパーツで構成されている場合はパーツの接続部分)を、パテ等を用いて接着すればよい。
【0055】
改良方法により、従来の噴霧腐食試験機1が備える流量センサー55を試験槽2の外側に配置できる。したがって、改良方法は、上記流量センサー55の配置例1~3の(1)~(7)に記載の効果と同様の効果を奏する。
【0056】
なお、上記(複合サイクル試験機11の実施形態)に記載のとおり、噴霧腐食試験機1は、複合サイクル試験機11の一部として構成される場合がある。その場合、複合サイクル試験機11の一部である噴霧腐食試験機1に対して改良方法を実施することは、実質的に複合サイクル試験機11に対して改良方法を実施することを意味する。
【0057】
(その他の変形例)
以上、具体的な実施形態をいくつか挙げて本出願で開示する噴霧腐食試験機1、複合サイクル試験機11、および、噴霧腐食試験機1の改良方法について説明したが、これらの実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、噴霧腐食試験機1では、腐食液の流量を測定するようにしたが、噴霧形成用空気の流量センサーを用い、噴霧形成用空気の流量を測定するようにしてもよい。このようにした場合、噴霧形成用空気の流量が規定値から外れたことによる空気ノズルの異常を検知することができる。また、図1乃至図図5および図8に示す例では、第1ノズル33および第2ノズル32は略直交する方向に配置されているが、第2ノズル32に噴霧形成用空気を供給しベンチュリー効果により第1ノズル33の第1の開口から腐食液を吸い上げることができれば、第1ノズル33および第2ノズル32はその他の配置であってもよい。図9Aは第1ノズル33と第2ノズル32のその他の配置例を示す概略図で、図9B図9AをZ方向に見た時の第1ノズル33の第1の開口33aと第2ノズル32の第2の開口32aの位置関係を示す概略図である。図9Aおよび図9Bに示す例では、略筒状の第1ノズル33を略筒状の第2ノズル32が覆うように形成されている。図9Aおよび図9Bに示す例においても、第2ノズル32に噴霧形成用空気を供給しベンチュリー効果により第1ノズル33の第1の開口33aから腐食液を吸い上げることができる。なお、図9Aおよび図9Bに示す例では、ノズルへ壁34を介して第1の開口33aと第2の開口32aが近接するように配置されている。ノズル壁34の厚さを調整することで、ベンチュリー効果による腐食液の吸い上げを調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本出願で開示する噴霧腐食試験機1は、流量センサー55が故障するリスクが軽減する。したがって、試験機産業にとって有用である。
【符号の説明】
【0059】
1…噴霧腐食試験機、2…試験槽、2a…側壁、2b…底床、2c、2d…凸部、3…噴霧部、31…噴霧塔、31A…筒状部、31B…方向体、32…第2ノズル、32a…第2の開口、33…第1ノズル、33a…第1の開口、34…ノズル壁、35…噴霧器、4…第1空気供給部、41…コンプレッサー、42…圧力調節器、43…空気飽和器、44…発泡管、45…ヒーター、46…空気供給管、49…導管、5…腐食液供給部、51…溶液溜め、52…パイプ、53…補給タンク、54…導管、55…流量センサー、56…遮蔽容器、57…温度調整部、57a…空気流入部、57b…空気排出部、57c…温度計、57d…配管、57e…噴出孔、57f…排出管、8…制御部、9…湿度発生部、11…複合サイクル試験機、12…調温室、13…ファン、14…調温室ヒーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9