(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058169
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】母線保護装置、受電設備及び母線保護方法
(51)【国際特許分類】
H02H 3/32 20060101AFI20240418BHJP
H02H 3/28 20060101ALI20240418BHJP
H02H 7/22 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H02H3/32
H02H3/28 R
H02H7/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165349
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 幸太郎
(57)【要約】
【課題】設置スペースの削減のため、変流器の配置を遮断器の二次側とした場合でも、盲点区間の影響を無くし、事故除去を行う。
【解決手段】実施形態の母線保護装置は、並行複数回線を構成する複数の個別母線と、複数の個別母線に共通接続可能な共通母線と、共通母線と複数の個別母線の接続点に設けられた共通遮断器の共通母線側に設けられた共通変流器と、共通遮断器の個別母線側にそれぞれ設けられた複数の変流器と、共通遮断器の遮断状態において、個別母線のそれぞれに設けられ、対応する個別母線を遮断する複数の個別遮断器と、を有する受電設備で用いられ、母線事故検出部において共通変流器の出力に基づいて共通母線の母線事故が検出された場合に、第1事故対応部は、共通遮断器の遮断を行い、第2事故対応部は、共通遮断器遮断後に複数の変流器の何れかの出力に基づいて対応する個別母線の母線事故が検出された場合に、対応する個別遮断器の遮断を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行複数回線を構成する複数の個別母線と、複数の前記個別母線に共通接続可能な共通母線と、前記共通母線と複数の前記個別母線の接続点に設けられた共通遮断器の前記共通母線側に設けられた共通変流器と、前記共通遮断器の前記個別母線側にそれぞれ設けられた複数の変流器と、前記共通遮断器の遮断状態において、前記個別母線のそれぞれに設けられ、対応する前記個別母線を遮断する複数の個別遮断器と、を有する受電設備の母線保護を行う母線保護装置において、
前記共通変流器及び複数の前記変流器の出力に基づいて、母線事故を検出する母線事故検出部と、
前記母線事故検出部において前記共通変流器の出力に基づいて共通母線の母線事故が検出された場合に、前記共通遮断器の遮断を行う第1事故対応部と、
前記共通遮断器の遮断後に複数の前記変流器の何れかの出力に基づいて対応する前記個別母線の母線事故が検出された場合に、対応する前記個別遮断器の遮断を行う第2事故対応部と、
を備えた母線保護装置。
【請求項2】
前記第2事故対応部により前記個別遮断器の遮断が行われた後に、前記共通遮断器の遮断を解除する復帰部を備えた、
請求項1に記載の母線保護装置。
【請求項3】
並行複数回線を構成する複数の個別母線と、複数の前記個別母線に共通接続可能な共通母線と、を有する受電設備において、
前記共通母線と複数の前記個別母線の接続点に設けられた共通遮断器の前記共通母線側に設けられた共通変流器と、
前記共通遮断器の前記個別母線側にそれぞれ設けられた複数の変流器と、
前記共通遮断器の遮断状態において、前記個別母線のそれぞれに設けられ、対応する前記個別母線を遮断する複数の個別遮断器と、
前記母線保護を行う母線保護装置と、を備え、
前記母線保護装置は、前記共通変流器及び複数の前記変流器の出力に基づいて、母線事故を検出する母線事故検出部と、
前記母線事故検出部において前記共通変流器の出力に基づいて共通母線の母線事故が検出された場合に、前記共通遮断器の遮断を行う第1事故対応部と、
前記共通遮断器の遮断後に複数の前記変流器の何れかの出力に基づいて対応する前記個別母線の母線事故が検出された場合に、対応する前記個別遮断器の遮断を行う第2事故対応部と、を備える、
受電設備。
【請求項4】
前記母線保護装置は、前記第2事故対応部により前記個別遮断器の遮断が行われた後に、前記共通遮断器の遮断を解除する復帰部を備えた、
請求項3に記載の受電設備。
【請求項5】
並行複数回線を構成する複数の個別母線と、複数の前記個別母線に共通接続可能な共通母線と、前記共通母線と複数の前記個別母線の接続点に設けられた共通遮断器の前記共通母線側に設けられた共通変流器と、前記共通遮断器の前記個別母線側にそれぞれ設けられた複数の変流器と、前記共通遮断器の遮断状態において、前記個別母線のそれぞれに設けられ、対応する前記個別母線を遮断する複数の個別遮断器と、を有する受電設備の母線保護を行う母線保護方法において、
前記共通変流器及び複数の前記変流器の出力に基づいて、母線事故を検出する過程と、
前記母線事故を検出する過程において、共通母線の母線事故が検出された場合に、前記共通遮断器の遮断を行う過程と、
前記共通遮断器の遮断後に複数の前記変流器の何れかの出力に基づいて対応する前記個別母線の母線事故が検出された場合に、対応する前記個別遮断器の遮断を行う過程と、
を備えた母線保護方法。
【請求項6】
前記個別遮断器の遮断が行われた後に、前記共通遮断器の遮断を解除する過程を備えた、
請求項5に記載の母線保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、母線保護装置、受電設備及び母線保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並行2回線(A系及びB系)の受電設備においては、A系母線及びB系母線に共通母線を接続可能とする受電設備の回路を構築する場合がある。
上記構成において、通常時は、A系母線とB系母線を介して各負荷に配電するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、送電線点検時は、並行2回線を維持するため、共通母線を使用し、並行2回線受電を維持したまま運用することとなっていた。
ところで、従来は、共通母線とA系母線の母線事故と、B系母線の母線事故と、を区分検出するために遮断器の一次側と二次側に変流器を配置していた。
【0005】
このため、変流器(CT)を配置するための設置スペースが大きくなる虞があった。
【0006】
変流器(CT)を配置するための設置スペースの削減のため、変流器の配置を遮断器の二次側とすることが考えられるが、遮断器-変流器間において母線事故の盲点区間が発生し、この盲点区間において、地絡等の母線事故が発生した場合には、遮断器の遮断後でも母線事故が継続し、母線保護継電器による事故除去ができなくなってしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設置スペースの削減のため、変流器の配置を遮断器の二次側とした場合であっても、盲点区間の影響を無くし、母線保護継電器による事故除去を行うことが可能な母線保護装置、受電設備及び母線保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の母線保護装置は、並行複数回線を構成する複数の個別母線と、複数の個別母線に共通接続可能な共通母線と、共通母線と複数の個別母線の接続点に設けられた共通遮断器の共通母線側に設けられた共通変流器と、共通遮断器の個別母線側にそれぞれ設けられた複数の変流器と、共通遮断器の遮断状態において、個別母線のそれぞれに設けられ、対応する個別母線を遮断する複数の個別遮断器と、を有する受電設備の母線保護を行う母線保護装置において、共通変流器及び複数の変流器の出力に基づいて、母線事故を検出する母線事故検出部と、母線事故検出部において共通変流器の出力に基づいて共通母線の母線事故が検出された場合に、共通遮断器の遮断を行う第1事故対応部と、共通遮断器遮断後に複数の変流器の何れかの出力に基づいて対応する個別母線の母線事故が検出された場合に、対応する個別遮断器の遮断を行う第2事故対応部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の受電設備の概要説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態の母線保護継電器の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、送電線点検時の処理フローチャートである。
【
図5】
図5は、送電線点検時に共通母線上の事故検出を行う場合の説明図である。
【
図6】
図6は、送電線点検時に盲点区間における事故検出を行う場合の説明図である。
【
図7】
図7は、事故電流検出地点(事故点)は、母線BA上である場合の事故対応の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態の受電設備の概要説明図である。
以下の説明においては、受電設備10は、共通母線BC、個別母線としての母線BA及び母線BBを備えているものとする。
【0011】
受電設備10は、
図1に示すように、配電線LA、LB、LCからの電力を受電する。
配電線LAには、断路器DS、(変流器CTA1-3)、遮断器CBA1-3、二つの断路器DSを介して母線BAが接続されている。さらに母線BAは、断路器DS、(変流器CTC1)、(変流器CTA4)、遮断器CBACを介して共通母線BCに接続されている。
【0012】
母線BAには、断路器DS及び遮断器CBA1を介して図示しない負荷が接続されており、遮断器CBA1から図示しない負荷に流れる電流を検出して出力信号A1を出力する変流器CTA1が設けられている。
【0013】
同様に、断路器DS及び遮断器CBA2を介して図示しない他の負荷が接続されており、遮断器CBA2から図示しない他の負荷に流れる電流を検出して出力信号A2を出力する変流器CTA2が設けられている。
【0014】
さらに断路器DS及び遮断器CBA3を介して図示しないさらに他の負荷が接続されており、遮断器CBA3から図示しないさらに他の負荷に流れる電流を検出して出力信号A3を出力する変流器CTA3が設けられている。
【0015】
配電線LBには、断路器DS、(変流器CTB1-3)、遮断器CBA1-3、二つの断路器DSを介して母線BBが接続されている。さらに母線BBは、断路器DS、(変流器CTC2)、(変流器CTB4)、遮断器CBBCを介して共通母線BCに接続されている。
母線BBには、断路器DS及び遮断器CBB1を介して図示しない負荷が接続されており、遮断器CBB1から図示しない負荷に流れる電流を検出して出力信号B1を出力する変流器CTB1が設けられている。
【0016】
同様に、断路器DS及び遮断器CBB2を介して図示しない他の負荷が接続されており、遮断器CBB2から図示しない他の負荷に流れる電流を検出して出力信号B2を出力する変流器CTB2が設けられている。
【0017】
さらに断路器DS及び遮断器CBB3を介して図示しないさらに他の負荷が接続されており、遮断器CBB3から図示しないさらに他の負荷に流れる電流を検出して出力信号B3を出力する変流器CTB3が設けられている。
【0018】
また、母線BAと、母線BBとの間は、一対の断路器DSと、遮断器CBABを介して接続可能となされている。この場合において、一対の断路器DSのうち、母線BA側に設けられた一方の断路器DSと遮断器CBABとの間には、母線BAと、母線BBとの間で流れる電流を検出して検出信号を出力する変流器CTA-Bが設けられている。
【0019】
同様に一対の断路器DSのうち、母線BBに設けられた他方の断路器DSと遮断器CBABとの間には、母線BAと、母線BBとの間で流れる電流を検出して検出信号を出力する変流器CTB-Aが設けられている。
【0020】
配電線LCには、断路器DS、(変流器CTCC)、遮断器CBCC、断路器DSを介して共通母線BCが接続されている。
また、共通母線BCと母線BAとの間には、共通母線BCから母線BAに向かって、断路器DS、遮断器CBAC、(変流器CTA4)、(変流器CTC1)及び断路器DSが設けられている。
【0021】
また、共通母線BCと母線BBとの間には、共通母線BCから母線BBに向かって、断路器DS、遮断器CBBC、(変流器CTB4)、(変流器CTC1)及び断路器DSが設けられている。
【0022】
上記構成において、変流器CTA1の出力信号A1、変流器CTA2の出力信号A2、変流器CTA3の出力信号A3、変流器CTA4の出力信号A4、変流器CTA1-3の出力信号及び変流器CTB-Aの出力信号は、母線BA系統における事故を検出して、母線BAを遮断する母線保護継電器RLAに出力され、母線保護継電器RLAは、母線BA系統での事故を検出した場合には、遮断器CBA1-3及び遮断器CBABを遮断状態とする。
【0023】
また、変流器CTB1の出力信号B1、変流器CTB2の出力信号B2、変流器CTB3の出力信号B3、変流器CTB4の出力信号B4、変流器CTB1-3の出力信号及び変流器CTA-Bの出力信号は、母線BB系統における事故を検出して、母線BBを遮断する母線保護継電器RLBに出力され、母線保護継電器RLBは、母線BB系統での事故を検出した場合には、遮断器CBB1-3及び遮断器CBABを遮断状態とする。
【0024】
また、変流器CTC1の出力信号C1、変流器CTC2の出力信号C2及び変流器CTCCの出力信号は、共通母線BCにおける事故を検出して、共通母線BCを遮断する母線保護継電器RLCに出力され、母線保護継電器RLCは、共通母線BC上での事故を検出した場合には、遮断器CBCCを遮断状態とする。
【0025】
さらに母線保護継電器RLCは、遮断器CBCCの遮断状態において、母線BA系統での事故がまだ検出されている場合には、母線BA系統の盲点区間における事故が存在しているとして母線BA系統を遮断状態とすべく制御を行う。
【0026】
さらにまた母線BA系統を遮断状態とした後に、母線BB系統においては事故が検出されていない場合には、母線保護継電器RLCは、共通母線BCから母線BB系統に電力供給を行うべく遮断器CBCCを導通状態とする。
【0027】
同様に、母線保護継電器RLCは、遮断器CBCCの遮断状態において、母線BB系統での事故がまだ検出されている場合には、母線BB系統の盲点区間における事故が存在しているとして母線BB系統を遮断状態とすべく制御を行う。
【0028】
さらにまた母線BB系統を遮断状態とした後に、母線BA系統においては事故が検出されていない場合には、母線保護継電器RLCは、共通母線BCから母線BA系統に電力供給を行うべく遮断器CBCCを導通状態とする。
【0029】
図2は、実施形態の母線保護継電器の機能ブロック図である。
母線保護継電器RLCは、入力変換部F1と、事故検出部F2と、DOユニット部F3と、を備えている。
入力変換部F1は、入力電流信号を変換して変換信号を事故検出部F2に出力する。
【0030】
事故検出部F2は、母線事故検出部として機能し、入力変換部F1の変換信号に基づいて共通母線BC上の電流変化を検出し、共通母線BC上の事故を検出して、DOユニット部F3に通知する。
【0031】
DOユニット部F3は、第1事故対応部として機能し、第1の経路RT1を用いて事故検出部F2により共通母線BC上の事故が検出されて、通知された場合には、共通母線BC上の全ての遮断器を遮断状態(開放状態)とする。
【0032】
共通母線BC上の全ての遮断器が遮断状態において、入力変換部F1は、入力電流信号を変換して変換信号を事故検出部F2に出力する。
事故検出部F2は、母線事故検出部として機能し、入力変換部F1の変換信号に基づいて共通母線BC上の電流変化を検出し、共通母線BC上の事故を検出して、DOユニット部F3に通知する。
【0033】
これにより、DOユニット部F3は、共通母線BC上の全ての遮断器が遮断状態において第2の経路RT2を用いて事故検出部F2により共通母線BC上の事故が検出された場合には、盲点区間における事故が検出されたと判断し、当該事故が母線BA上で検出されたのか、あるいは、当該事故が母線BB上で検出されたのか、を判断する。
【0034】
そしてDOユニット部F3は、第2事故対応部として機能し、当該事故が母線BA上あるいは母線BB上の何れかで検出されたと判断した場合には、事故が検出された側の母線上の全ての遮断器を遮断状態とする。これにより盲点区間も含めて事故電流が完全に遮断された状態となる。
【0035】
そこで、DOユニット部F3は、復帰部として機能し、第3の経路RT3を用いて、第2の経路RT2を用いて事故が検出されなかった側の母線に接続される共通母線BC上の全ての遮断器を再投入して導通状態とし、事故が検出されなかった側の母線の復帰を行わせる。
【0036】
以上の説明のように、本実施形態によれば、設置スペースの削減のため、変流器(
図1の場合、変流器CTC1、変流器CTA3、変流器CTC2及び変流器CTC2)の配置を遮断器の二次側とした場合であっても、盲点区間の影響を無くし、母線保護継電器による事故除去を行うことができる。
【0037】
以下、より詳細に実施形態の動作を説明する。
[1]通常時の動作
まず、通常時(異常非検出時)の動作について説明する。
図3は、通常時の動作説明図である。
図3において、ハッチングが施された遮断器は遮断状態(開放状態)にあり、ハッチングが施された断路器はオフ状態(開状態)にあるものとする(以下の説明においても同様)。
【0038】
この結果、配電線LAからの電力は、断路器DS、遮断器CBA1-3及び複数の断路器DS及び遮断器CBABを介して、母線BA系統の負荷及び母線BB系統の負荷に供給される。
【0039】
配電線LAからの電力の供給と並行して、配電線LBからの電力は、断路器DS、遮断器CBB1-3及び複数の断路器DS及び遮断器CBABを介して、母線BA系統の負荷及び母線BB系統の負荷に供給される。
【0040】
[2]送電線点検時の動作
図4は、送電線点検時の処理フローチャートである。
図5は、送電線点検時に共通母線上の事故検出を行う場合の説明図である。
【0041】
送電線点検時においては、母線保護継電器RLCは、まず送電経路の切り替えを行う(ステップS11)。
【0042】
例えば、
図5の例においては、共通母線BC及びB系統の母線BBを用いて送電線点検を行うため、
図5中、クロスハッチングで示す二つの断路器DS及び遮断器CBA1-3を開放状態として、
図3に示した送電経路の状態から、共通母線BCと母線BBとを接続した状態に送電経路を切り替えて点検を行うようにしている。
【0043】
図5中、太線は、電流流路を示している。
そして、
図5中、黒い星印で示す位置PSにおいて地絡等の事故が発生しているものとする。
【0044】
次に母線保護継電器RLCは、変流器CTCC、変流器CTC1及び変流器CTC2の出力信号に基づいて共通母線BC上で地絡、短絡等の事故を検出したか否かを判断する(ステップS12)。
【0045】
ステップS12の判断において、共通母線上の事故を検出した場合には(ステップS12;Yes)、共通母線BC上の全ての遮断器呼び断路器を開放状態とする(ステップS13)。
【0046】
図6は、送電線点検時に盲点区間における事故検出を行う場合の説明図である。
本実施形態では、変流器の設置スペースの削減のため、変流器CTC1及び変流器CTA4を遮断器CBACの母線BA側に配置し、変流器CTC2及び変流器CTB4を遮断器CBBCの母線BB側に配置している。
【0047】
すなわち、従来のように、変流器CTC1及び変流器CTA4のうち、一方を遮断器CBACの上流側である共通母線BC側に配置し、他方を遮断器CBACの下流側である母線BA側に配置する構成を採用していない。同様に、変流器CTC2及び変流器CTB4のうち、一方を遮断器CBBCの上流側である共通母線BC側に配置し、他方を遮断器CBBCの下流側である母線BB側に配置する構成を採用していない。
【0048】
このため、遮断器CBACの母線BA側及び遮断器CBBCの母線BB側は共通母線上の事故検出における盲点区間となっており、例えば、位置PSにおける事故は検出が行えない状態となっている。
【0049】
そこで、母線保護継電器RLCは、第1事故対応部として機能し、
図6において、クロスハッチングで示す遮断器CBCC、遮断器CBAC、遮断器CBBC、遮断器CBAB、遮断器CBA1~CBA3、遮断器CBB1-3及び遮断器CBB1-3を挟む二つの断路器DSを開放状態とする。すなわち、共通母線上の遮断器及び断路器を開放状態とする(ステップS13)。
【0050】
そして、母線保護継電器RLCは、母線BA側のみで未だ事故電流が検出されたか否か、すなわち、盲点区間で事故電流が検出されたか否かを判断する(ステップS14)。
【0051】
ステップS14の判断において、母線BA側のみで未だ事故電流が検出された場合、すなわち、盲点区間で事故電流が検出された場合には(ステップS14;Yes)、母線保護継電器RLCは、事故電流検出地点(事故点)は、母線BA上あるいは母線BB上のいずれであるかを判断する(ステップS15)。
【0052】
図7は、事故電流検出地点(事故点)は、母線BA上である場合の事故対応の説明図である。
【0053】
図7の場合には、事故電流の検出は、変流器CTC1及び変流器CTA4においてなされるため、事故電流検出地点(事故点)は、母線BA上であると判断される(ステップS15;BA)ので、母線保護継電器RLCは、第2事故対応部として機能し、
図7に示した状態から、さらに遮断器CBA1-3を開放状態として、母線BA上の遮断器及び断路器を開放状態とする(ステップS16)。
【0054】
図8は、給電再開時の説明図である。
続いて、母線保護継電器RLCは、事故電流検出地点(事故点)は、母線BA上であり、母線BB側ではないので、母線保護継電器RLCは、復帰部として機能し、共通母線BC及び母線BBを用いて給電を再開し、給電の復帰を行い(ステップS17)、点検を終了する。
【0055】
より詳細には、母線保護継電器RLCは、
図8において、灰色で示す共通母線BC側の遮断器CBCC及び遮断器CBBCを導通状態として、共通母線BCと母線BBとを電気的に接続し、遮断器CBB1~遮断器CBB3を介して、図示しない母線BB側の負荷に対して電力供給を再開して、事故除去を行った状態で点検を終了する。
【0056】
一方、ステップS15の判断の際に、事故電流の検出が、変流器CTC2及び変流器CTB4においてなされた場合には、事故電流検出地点(事故点)は、母線BB上であると判断される(ステップS15;BB)ので、母線保護継電器RLCは、第2事故検出部として機能し、
図6に示した状態から、さらに遮断器CBB1-3を開放状態として、母線BB上の遮断器及び断路器を開放状態とする(ステップS18)。
【0057】
続いて、母線保護継電器RLCは、事故電流検出地点(事故点)は、母線BB上であり、母線BA側ではないので、母線保護継電器RLCは、復帰部として機能し、共通母線BC及び母線BAを用いて給電を再開し、給電の復帰を行い(ステップS19)、点検を終了する。
【0058】
より詳細には、母線保護継電器RLCは、共通母線BC側の遮断器CBCC及び遮断器CBACを導通状態として、共通母線BCと母線BAとを電気的に接続し、遮断器CBA1~遮断器CBA3を介して、図示しない母線BA側の負荷に対して電力供給を再開して、事故除去を行った状態で点検を終了することとなる。
【0059】
また、ステップS14の判断において、事故電流が検出されなかった場合、すなわち、共通母線BC上でのみ事故電流が検出された場合には(ステップS14;No)、共通母線BCを電気的に切り離し、
図3に示した通常給電状態、すなわち、母線BA及び母線BBによる給電状態として、給電継続を行って、点検を終了する。
【0060】
またステップS12の判断において、共通母線上において事故を検出しなかった場合には(ステップS12;No)、母線BA上あるいは母線BB上のいずれかで事故電流が検出されたということであるので、母線保護継電器RLCは、母線BA及び母線BBのうち、事故(事故電流)が検出された母線上の遮断器及び断路器を開放状態として、事故除去を行う(ステップS21)。
さらに、母線保護継電器RLCは、母線BA及び母線BBのうち、事故(事故電流)が検出されなかった母線及び共通母線BCを用いて、給電を継続して(ステップS22)、点検を終了する。
【0061】
以上の説明のように、実施形態によれば、設置スペースの削減のため、変流器(
図1の場合、変流器CTC1、変流器CTA3、変流器CTC2及び変流器CTC2)の配置を遮断器の二次側とした場合であっても、盲点区間の影響を無くし、母線保護継電器による事故除去を行うことができる。
【0062】
ここで、変流器の設置場所を従来と変更して、共通母線BCと母線BAあるいは母線BBとの接続点に用いられる遮断器(
図1の例の場合、遮断器CBAC又は遮断器CBBC)を母線BA側あるいは母線BB側に設置することにより、設置スペースが削減できる理由について述べる。
【0063】
図1の例の場合、遮断器CBAC及び遮断器CBBCとしては、GCB(ガス遮断器)を用いている。
【0064】
ところで、従来においては、GCB(ガス遮断器)の上流側(一次側)及び下流側(二次側)に変流器(
図1の例の場合、変流器CTC1及び変流器CTA4、あるいは、変流器CTC2及び変流器CTB4、電流検出)を配置するため、変流器設置用に銅管を伸ばす必要がある。このたため、設置スペースが大きく必要であった。
【0065】
これに対し、実施形態のように、GCB(ガス遮断器)の下流側(二次側)にのみ、まとめて変流器を配置する場合には、例えば、GCB(ガス遮断器)の下流側(二次側)に設ける必要がある断路器あるいは接地開閉器の設置部分の上部に配置することが可能となる。このため、設置用の銅管を従来のように短くすることができ、GCB(ガス遮断器)の上流側(一次側)及び下流側(二次側)に変流器を設ける場合よりも、設置スペース削減が可能となるのである。
【0066】
本実施形態の母線保護装置は、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、操作ボタン等の入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0067】
本実施形態の母線保護装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでUSBメモリ、SSD(Solid State Drive)などの半導体メモリ装置、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0068】
また、本実施形態の母線保護装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の母線保護装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0069】
また、本実施形態の母線保護装置のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0070】
本実施形態の母線保護装置で実行されるプログラムは、上述した各部(母線事故検出部、第1事故対応部、第2事故対応部、復帰部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、母線事故検出部、第1事故対応部、第2事故対応部、復帰部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10 受電設備
A1~A3、A4 出力信号
B1~B3、B4 出力信号
BA 母線
BB 母線
BC 共通母線
B3 出力信号
B4 出力信号
C1、C2 出力信号
CBA1~CBA3 遮断器
CBB1~CBB3 遮断器
CBA1-3、CBB1-3 遮断器
CBAB 遮断器
CBAC 遮断器
CBBC 遮断器
CBCC 遮断器
CTA1~CTA3、CTA4 変流器
CTB1~CTB3、CTB4 変流器
CTA-B、CTB-A 変流器
CTA1-3、CTB1-3、 変流器
CTC1、CTC2 変流器
CTA-1~CTA3 変流器
CTB-1~CTB3 変流器
CTCC 変流器
DS 断路器
F1 入力変換部
F2 事故検出部
F3 DOユニット部
LA、LB、LC 配電線
PS 事故位置
RLA、RLB、RLC 母線保護継電器