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▶ 松谷化学工業株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058170
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】肉類のカード抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20240418BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20240418BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165352
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】行光 由莉
(72)【発明者】
【氏名】内山 朋子
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD39
4B042AH01
4B042AK09
4B042AP19
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、肉類を加熱調理する際に生じるカードを抑制する新規な方法を提供することにある。
【解決手段】 肉類を加熱する前に、加工澱粉を含む糊液で被覆することにより、上記課題は解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉類を加熱する前に、加工澱粉を含む糊液で被覆する、肉類のカード抑制方法。
【請求項2】
加工澱粉が、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン及び酸化澱粉から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉類のカード抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肉類を加熱調理する際に、肉類より流出した肉汁が加熱されることによって、「カード」と呼ばれる白色の凝固物を生じる場合がある。カードは見た目が悪く、肉類本来の色調を変化させるため、肉類の商品価値を低下させる一因となり得ることから、カードの生成を抑制する方法が検討されている。
【0003】
例えば、カードの生成を抑制する方法として、肉類の表面を天然高分子で被膜する方法(特許文献1)、特定のカード抑制剤を肉類に含有させる方法(特許文献2~4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-290026
【特許文献2】特開2007-061059
【特許文献3】特開2012-019706
【特許文献4】特開2018-038321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、肉類を加熱調理する際に生じるカードを抑制する新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく種々検討したところ、肉類を加熱する前に、加工澱粉を含む糊液で被覆することによりカードの生成を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、以下の[1]~[2]から構成されるものである。
[1]肉類を加熱する前に、加工澱粉を含む糊液で被覆する、肉類のカード抑制方法。
[2]加工澱粉が、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン 及び酸化澱粉から選ばれる1種以上である、前記[1]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肉類を加熱調理したときに生じるカードを抑制することができ、見た目が改善された肉類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の肉類のカード抑制方法は、肉類を加熱する前に加工澱粉を含む糊液で被覆することを特徴とする。
【0010】
本発明にいう「肉類」は、ヒトが食品として摂取できる肉であれば特に制限されず、例えば、豚肉、牛肉、鶏肉などの畜肉類、サバ、カツオ、サケ、タラ、カレイなどの魚肉類である。この肉類は、常温の肉類でも冷凍の肉類でもよく、また、嚥下困難者が喫食しやすいよう予め軟化処理(例えば、凍結含浸処理)が施された肉類でもよい。
【0011】
本発明にいう「カード」は、肉類より溶出した水溶性の蛋白質が熱により変性したもので、アミノ酸や脂質を含む凝固物である。「カード抑制方法」とは、肉類を加熱調理したときに生成するカードを、加工澱粉を含む糊液で被覆しない場合より低減させる方法を指す。カード生成量が加工澱粉を含む糊液で被覆しない場合の95%以下となったときにより効果があるといえ、90%以下、又は85%以下であればさらに効果があるといえる。
【0012】
「加工澱粉」とは、澱粉を何らかの処理で加工したものであり、例えば、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、架橋澱粉、エーテル化架橋澱粉、エステル化架橋澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉及びそれらの加工澱粉をα化したものを指す。本発明ではいずれの加工澱粉も使用できるが、好ましくは、エーテル化澱粉(特に、ヒドロキシプロピルデンプン)、エーテル化架橋澱粉(特に、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン)又は酸化澱粉、並びにそれらのα化澱粉である。
【0013】
「加工澱粉を含む糊液」は、加工澱粉と水とを含む液を加工澱粉の糊化温度以上の温度で混合加熱することにより得られるが、予めα化された加工澱粉を使用する場合、加熱工程は不要となる。
【0014】
加工澱粉を含む糊液は、加工澱粉と水以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、キサンタンガム、グァガム、タマリンドシードなどの増粘多糖類を含むことができる。
【0015】
本発明の方法は、肉類を、加熱する前に上記加工澱粉を含む糊液で被覆する工程を必須とする。この糊液に含まれる加工澱粉の配合量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、その配合量の上限は、加工澱粉としてヒドロキシプロピルデンプン又はヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを使用する場合、10質量%以下にするのが好ましく、酸化澱粉など低粘度化した澱粉を使用する場合、20質量%以下にするのが好ましい。
【0016】
上記の加工澱粉を含む糊液の使用量は、肉類を被覆できる量であればよく、例えば、肉類100質量部に対して10質量部以上、好ましくは20質量部以上であり、その上限量は肉類100質量部に対して100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0017】
加工澱粉を含む糊液で肉類を被覆する方法は、糊液が肉類を均一に被覆できれば特に限定されない。例えば、肉類の表面に当該糊液を塗布する方法でもよいし、肉類を当該糊液に漬けこむ方法でもよいし、肉類と加工澱粉を含む糊液とを袋に入れて真空パックする方法でもよい。
【0018】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。
【実施例0019】
(澱粉糊液又はデキストリン溶液で被覆した肉類のカード生成量の測定)
表1に示す試料(すべて松谷化学工業(株)の加工澱粉又はデキストリン)を表2に示す配合で水と混合し、90℃で加熱して試験区1~15の液を準備した。スライスされた冷凍の豚肉(50g程度)と各液(豚肉の50質量%)とを耐熱袋に入れて、真空パックし、スチームコンベクションで加熱(100℃、5分)した。次に、耐熱袋の中身を、ろ紙を載せた漏斗上に取出し、豚肉と袋を水で洗い流し、生成したカードをろ紙上に集めた。このろ紙を乾燥(55℃、12時間)し、ろ紙上の残存物の質量をカード生成量とした。液として水のみを使用した試験区(1)のカード生成量(A)に対する各試験区のカード生成量(B)の割合をカード生成率(%)とした。
【0020】
(結果)
カード生成率を表1に示す。加工澱粉を含む糊液で肉類を被覆した場合、カード生成率は79.4~90.7%であり、カードの生成が抑制された(試験区2~13)。一方、デキストリンを含む溶液で肉類を被覆した場合、カード生成率は96.4~98.5%であり、カードの生成は抑制されなかった(試験区14、15)。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】