(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024058171
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165353
(22)【出願日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】金澤 学郎
【テーマコード(参考)】
2C058
【Fターム(参考)】
2C058AB15
2C058AC07
2C058AE02
2C058AE04
2C058AF20
2C058AF23
2C058GA03
2C058GB14
2C058GB31
2C058GB32
2C058GB53
(57)【要約】
【課題】1のシート状媒体に対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのを抑制し、シート状媒体の上流端が一対の搬送ローラを通過する際に押し出されることによる画像記録精度の低下を抑制する。
【解決手段】プリンタの制御部は、用紙センサが用紙の後端を検出する前から当該後端を検出するまで、距離L2よりも小さい搬送量X2により用紙を複数回に分けて搬送する分割搬送処理と、用紙センサが用紙の後端を検出した後の搬送における搬送量を当該搬送量よりも小さい搬送量X3に補正する補正処理と、搬送量X3による搬送が行われた後に、用紙に画像を記録する画像記録処理と、を実行可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状媒体を挟持しつつ回転する一対の搬送ローラを含み、当該シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記一対の搬送ローラよりも前記搬送方向下流に配置され、シート状媒体に画像を記録する記録部と、
前記一対の搬送ローラよりも前記搬送方向上流に配置され、シート状媒体を検出する第1センサと、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、
前記搬送部により前記第1センサによる検出位置から前記一対の搬送ローラによるシート状媒体の挟持位置までの距離よりも大きい第1搬送量でシート状媒体が搬送される第1搬送処理と、
前記第1搬送処理によって搬送されたシート状媒体に前記記録部により画像を記録する第1画像記録処理と、
前記第1画像記録処理後に実行される分割搬送処理であって、前記第1センサがシート状媒体の前記搬送方向の上流端を検出する前から当該上流端を検出するまで、前記距離よりも小さい第2搬送量によりシート状媒体を複数回に分けて搬送する分割搬送処理と、
前記第1センサが前記上流端を検出した後の搬送における搬送量を当該搬送量よりも小さい第3搬送量に補正する補正処理と、
前記第3搬送量による搬送が行われた後に、前記記録部によりシート状媒体に画像を記録する第2画像記録処理と、を実行可能であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記第2搬送量は、前記第1搬送量を分割搬送回数であるn(2以上の自然数)で除した値である請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記分割搬送処理において、少なくともシート状媒体の前記上流端が前記挟持位置を通過するまで前記複数回の搬送を継続し、
前記補正処理において、前記分割搬送処理における少なくともいずれかの搬送における前記第2搬送量を前記第3搬送量に補正することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記分割搬送処理における合計搬送量は、前記第1搬送量よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記補正処理によって補正される前の前記分割搬送処理における搬送量の合計は、前記第1搬送量に等しいことを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記第1センサよりも前記搬送方向上流に配置され、シート状媒体を検出する第2センサをさらに備えており、
前記第1センサによる前記検出位置と前記第2センサによる検出位置との前記搬送方向に沿った離隔距離が、前記第1搬送量に相当する距離よりも大きく、
前記制御部は、
前記第2センサがシート状媒体の前記上流端を検出した後に、前記分割搬送処理を実行することを特徴する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2センサがシート状媒体の前記上流端を検出した後に、少なくとも1回の前記第1搬送処理を実行してから前記分割搬送処理を実行することを特徴する請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記分割搬送処理による合計搬送量が、シート状媒体の前記上流端が前記挟持位置を通過する際に当該一対の搬送ローラがシート状媒体を押し出す搬送量を前記第1搬送量から差し引いた所定搬送量に達した後に、前記第1搬送処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記分割搬送処理の間、前記第2画像記録処理を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記分割搬送処理において、シート状媒体の前記上流端が前記挟持位置を通過した後の、前記複数回の搬送のうちの残りの搬送による合計搬送量を1回の搬送でシート状媒体を搬送することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記第1センサがシート状媒体の前記上流端を検出してからの累積搬送量が前記距離に相当する搬送量に達したか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状媒体に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙(シート状媒体)を厚み方向から挟持しつつ回転することで用紙を搬送方向へ搬送する一対の搬送ローラと、一対の搬送ローラによって搬送されてきた用紙に画像を記録する記録部とを含むプリンタについて記載されている。このプリンタでは、一対の搬送ローラによって用紙を所定量搬送する搬送処理と、記録部によって用紙に画像を記録する画像記録処理とが交互に実行されることで、用紙に画像が記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の搬送ローラのうち一方のローラは、一対の搬送ローラのうち他方のローラに向かって付勢されている。このため、用紙の搬送方向上流端である後端が一対の搬送ローラ間を通過する際に、一対の搬送ローラが互いに接触するように近づく。一対の搬送ローラによって用紙が所定量搬送され、当該用紙の後端が一対の搬送ローラ間を通過する際に、このような一対の搬送ローラの互いに近づこうとする力によって、用紙が搬送方向に押し出される。この結果、用紙の後端が一対の搬送ローラを通過する際に、用紙の搬送量が所定量に押し出し量を加えた量となる。実際の搬送量が所定量からずれているにもかかわらず、所定量の搬送に応じた画像記録処理が行われると、用紙に対する画像記録精度が低下する問題が生じ得る。
【0005】
上記問題を解決するべく、本発明者は、用紙の後端が一対の搬送ローラを通過する際に、所定量から押し出し量を差し引いた補正搬送量にて用紙を搬送することを考えた。この場合、用紙の後端が一対の搬送ローラを通過するタイミングを精度良く予測する必要があるため、一対の搬送ローラよりも搬送方向上流に用紙の後端を検出するセンサを設けることも考えた。用紙を搬送する際の搬送量が、センサによる検出位置と一対の搬送ローラによる挟持位置との間の距離未満であると、当該搬送量での搬送で検出位置を通過した用紙の後端は一対の搬送ローラの挟持位置よりも搬送方向上流にある。このため、一対の搬送ローラに比較的近い位置で用紙の後端位置を把握でき、搬送をあと何回行えば用紙の後端が一対の搬送ローラを通過するかを精度良く予測可能となる。この結果、適切なタイミングで補正搬送量にて用紙を搬送することができる。
【0006】
しかしながら、上記距離未満の搬送量にて搬送処理を繰り返し行う場合、1回の搬送処理での搬送量が小さくなる。このため、用紙に対する画像記録が終了するまでの時間が長くなる虞がある。一方、上記距離を超える搬送量にて搬送処理を繰り返し行う場合、1回の搬送処理での搬送量が大きくなる。このため、用紙に対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのを抑制することが可能となる。しかしながら、当該搬送量での搬送で検出位置を通過した用紙の後端が一対の搬送ローラも一気に通過してしまうことがある。この場合、補正搬送量にて用紙を搬送する適切なタイミングを取れずに用紙が一対の搬送ローラに押し出されてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、1のシート状媒体に対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのを抑制し、シート状媒体の上流端が一対の搬送ローラを通過する際に押し出されることによる画像記録精度の低下を抑制することが可能な画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像記録装置は、シート状媒体を挟持しつつ回転する一対の搬送ローラを含み、当該シート状媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記一対の搬送ローラよりも前記搬送方向下流に配置され、シート状媒体に画像を記録する記録部と、前記一対の搬送ローラよりも前記搬送方向上流に配置され、シート状媒体を検出する第1センサと、制御部と、を備えている。そして、前記制御部は、前記搬送部により前記第1センサによる検出位置から前記一対の搬送ローラによるシート状媒体の挟持位置までの距離よりも大きい第1搬送量でシート状媒体が搬送される第1搬送処理と、前記第1搬送処理によって搬送されたシート状媒体に前記記録部により画像を記録する第1画像記録処理と、前記第1画像記録処理後に実行される分割搬送処理であって、前記第1センサがシート状媒体の前記搬送方向の上流端を検出する前から当該上流端を検出するまで、前記距離よりも小さい第2搬送量によりシート状媒体を複数回に分けて搬送する分割搬送処理と、前記第1センサが前記上流端を検出した後の搬送における搬送量を当該搬送量よりも小さい第3搬送量に補正する補正処理と、前記第3搬送量による搬送が行われた後に、前記記録部によりシート状媒体に画像を記録する第2画像記録処理と、を実行可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像記録装置によると、第1搬送処理及び第1画像記録処理後に分割搬送処理を実行することが可能となる。このように分割搬送処理を適切なタイミングで実行することで、シート状媒体の搬送に要する時間が長くなるのを抑制することができる。つまり、1のシート状媒体に対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのを抑制することができる。
分割搬送処理におけるいずれかの搬送が終わったとき、シート状媒体の上流端は第1センサによる検出位置と一対の搬送ローラによるシート状媒体の挟持位置との間にある。つまり、検出位置よりも上流にあるシート状媒体の上流端が、1回の搬送で挟持位置を通過しなくなる。このため、シート状媒体の後端が検出位置と挟持位置との間にある状態から第3搬送量による搬送を行うことが可能となる。つまり、検出位置と挟持位置との間の距離よりも大きい搬送量による搬送により、シート状媒体の後端が検出位置及び挟持位置を一気に通過して当該搬送が終了するときの期間に相当する期間中に、搬送量の補正を入れることが可能となる。したがって、分割搬送処理後の第2画像記録処理による画像記録において押し出しが与える影響を抑えることができ、画像記録精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【
図2】
図1に示すインクジェットヘッド、搬送部の一部及び2つの用紙センサを示す概略側面図である。
【
図3】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示すプリンタで印刷を実行する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】搬送処理を実行する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】(a)は用紙の後端が2つの用紙センサ間にある時に分割搬送処理を実行する際の状況を示す図であり、(b)は用紙の後端が搬送ローラ対のニップ位置か通過した後の分割搬送の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態にかかるプリンタ100について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、プリンタ100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向及び前後方向が定義され、プリンタ100を前方から見て左右方向(
図1の紙面に垂直な方向)が定義される。
【0012】
プリンタ100(本発明の「画像記録装置」)は、
図1に示すように、筐体100a、給送カセット1、搬送部3、切断部4、インクジェットヘッド5、移動機構6、制御部8、排出トレイ9、用紙センサ51,52などを有する。
【0013】
給送カセット1は、筐体100a内においてインクジェットヘッド5の下方に配置されている。また、給送カセット1は、ロール状に巻回されたロール紙Rp及びカット紙Kpのいずれかの用紙Pを選択的に搬送可能なように、ロール体R及びカット紙Kpのいずれかを選択的に収容するものである。給送カセット1は、
図1に示すように、トレイ11と、ロール体Rを収容可能なロール体収容部20と、カット紙Kpを複数積層された状態で収容可能なカット紙収容部13とを有している。
【0014】
ロール体Rは、
図1に示すように、円筒状の芯部材Rcの外周面に長尺のロール紙(本発明の「シート状媒体」)Rpがロール状に巻回されたものである。カット紙(本発明の「シート状媒体」)Kpは、カット紙Kp及びロール紙Rpの搬送方向において、ロール体Rを構成する長尺のロール紙Rpよりも短尺の用紙であり、例えばA4サイズやB5サイズの用紙である。以降の説明において、ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpとカット紙Kpとを区別しない場合には、「用紙P」と称する場合がある。
【0015】
トレイ11は、
図1に示すように、上方に開口した箱形状を有する。トレイ11は、筐体100aに対して前後方向に沿って挿抜可能である。
【0016】
ロール体収容部20は、
図1に示すように、トレイ11の底壁11aの前方側に配置されており、ロール体Rの下側部分の外周面を支持しつつ当該ロール体Rを回転可能に支持する。ロール体Rは、その回転軸(芯部材Rcの中心軸)が左右方向(ロール紙Rpの幅方向)に沿った状態で、ロール体収容部20に収容される。
【0017】
ロール体収容部20は、
図1に示すように、ロール体Rを収容する凹部21を有する。凹部21の底部に、2つのローラ22,23が設けられている。2つのローラ22,23は、それぞれ、左右方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。ロール体Rは、凹部21に収容されたとき、その下側部分の外周面が2つのローラ22,23に支持される。
【0018】
ロール体収容部20は、
図1に示すように、凹部21と連通しかつ上下方向に延びる孔25と、孔25と連通しかつ前後方向に延びる溝26とを有する。これら孔25及び溝26は、共に、ロール体収容部20の底面に開口している。ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpは、孔25及び溝26を通り、インクジェットヘッド5に向けて搬送される。
【0019】
カット紙収容部13は、
図1に示すように、ロール体収容部20よりも後方(すなわち、搬送方向に沿った下流側)部分の底壁11aにより構成されており、カット紙Kpを下方から支持しつつ収容する。カット紙収容部13は、カット紙Kpの長手方向が左右方向に一致し、幅方向が前後方向に一致する姿勢でカット紙Kpを収容する。
【0020】
搬送部3は、給送部41、3つの搬送ローラ対42~44及び搬送モータ45M(
図3参照)を有している。給送部41は、給送カセット1に収容されているロール体R及びカット紙Kpのいずれかの用紙Pを後方に向かって給送カセット1から送り出す。
【0021】
給送部41は、給送カセット1の上方に配置されており、給送ローラ41a、アーム41b及び給送モータ41M(
図3参照)を有する。給送ローラ41aは、アーム41bの先端に軸支されている。アーム41bは、支軸41cに回動自在に支持されている。アーム41bは、バネなどにより給送ローラ41aがトレイ11の底壁11aに接触する方向に付勢されている。また、アーム41bは、給送カセット1を着脱する際に上方へ退避可能に構成されている。給送ローラ41aは、給送モータ41Mからの駆動力が伝達されることで回転する。制御部8の制御により給送モータ41Mが駆動されると給送ローラ41aが回転し、トレイ11内に収容された用紙Pが後方に向かって送り出される。
【0022】
これら3つの搬送ローラ対42~44は、給送部41によって給送された用紙Pを、左右方向と直交する搬送方向に沿って筐体100a内で搬送する。3つの搬送ローラ対42~44は、搬送方向の上流側からこの順で配置されている。搬送ローラ対42は、給送部41によって給送カセット1から送り出された用紙Pを搬送ローラ対43に搬送する。搬送ローラ対43は、搬送ローラ対42によって搬送された用紙Pを受け取ってインクジェットヘッド5側に送る。搬送ローラ対44は、搬送ローラ対43によって搬送された用紙Pを受け取って排出する。
【0023】
搬送ローラ対43は、
図1に示すように、インクジェットヘッド5よりも搬送方向上流に配置されている。搬送ローラ対44は、インクジェットヘッド5よりも搬送方向下流に配置されている。これら2つの搬送ローラ対43,44によって搬送される用紙Pは、後方から前方へと送られる。
【0024】
各搬送ローラ対42~44は、
図1に示すように、駆動ローラ42a~44aと、駆動ローラ42a~44aに連れ回る従動ローラ42b~44bと、で構成されている。各搬送ローラ対42~44の駆動ローラ42a~44aは、図示しない伝達機構を介して搬送モータ45Mから駆動力が伝達される。また、各搬送ローラ対42~44の従動ローラ42b~44bは、バネなどの付勢部材42c~44cによって駆動ローラ42a~44aに向けて付勢されている。これにより、各搬送ローラ対42~44が、駆動ローラ42a~44aと従動ローラ42b~44bとの間のニップ位置(本発明の「挟持位置」)で用紙Pを挟持可能となる。そして、制御部8の制御により搬送モータ45Mが駆動されると、各搬送ローラ対42~44の駆動ローラ42a~44a及び従動ローラ42b~44bが用紙Pをニップした状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0025】
また、搬送モータ45Mには、ロータリーエンコーダ14(
図3参照)が設けられている。ロータリーエンコーダ14は、搬送モータ45Mの軸の回転の移動量や角度を示す信号を制御部8に出力する。
【0026】
切断部4は、
図1に示すように、トレイ11の後方端部と搬送ローラ対42との間に位置している。切断部4は、左右方向に細長い固定刃4aと、固定刃4aと接触しつつ左右方向に移動可能な円板状の回転刃4bとを含んでいる。回転刃4bは、制御部8に制御された切断モータ4M(
図3参照)の駆動により、左右方向に沿って往復移動する。回転刃4bは、左右のどちらか一方向に移動するのに伴って、ロール紙Rp及び固定刃4aから回転モーメントを受けて従動回転する。ロール体Rから巻き解かれて搬送されたロール紙Rpは、切断部4により幅方向(左右方向)に切断される。これにより、排出トレイ9に送られるロール紙Rpに後端が形成される。
【0027】
インクジェットヘッド(本発明の「記録部」)5は、下面に形成された複数のノズルと、ドライバIC5d(
図3参照)とを含む。制御部8の制御によりドライバIC5dが駆動されると、ノズルからインクが吐出され、搬送ローラ対43によって搬送された用紙Pに対して画像が記録される。
【0028】
移動機構6は、
図1に示すように、キャリッジ6aと、2つのガイドレール6b,6cと、キャリッジモータ6M(
図3参照)とを有している。インクジェットヘッド5は、キャリッジ6aに搭載されている。2つのガイドレール6b,6cは、前後方向に互いに離隔して配置され、各々が左右方向に延設されている。キャリッジ6aは、2つのガイドレール6b,6cを跨ぐように配置されている。キャリッジ6aは、ベルト(不図示)などを介してキャリッジモータ6Mに接続されている。制御部8の制御によりキャリッジモータ6Mが駆動されると、キャリッジ6aがガイドレール6b,6cに沿って走査方向(左右方向であって搬送方向と直交する方向)に移動する。
【0029】
排出トレイ9は、筐体100aの上部の前側の側壁を構成し、筐体100aに対して開閉可能である。インクジェットヘッド5により画像が形成された用紙Pは、搬送部3により前方に搬送されて開状態の排出トレイ9に受容される。これにより、用紙Pがプリンタ100(筐体100aの内部)から排出される。
【0030】
用紙センサ51(本発明の「第2センサ」)は、
図1に示すように、切断部4と搬送ローラ対42との間に配置されている。用紙センサ51は、切断部4と搬送ローラ対42との間に搬送されてきた用紙Pを検出する。より詳細には、用紙センサ51は、用紙Pの前端を示す信号、及び、用紙Pの後端を示す信号を制御部8に出力する。
【0031】
用紙センサ52(本発明の「第1センサ」)は、
図1に示すように、用紙センサ51よりも搬送方向下流であって、搬送ローラ対42と搬送ローラ対43との間に配置されている。用紙センサ52も、搬送ローラ対42と搬送ローラ対43との間に搬送されてきた用紙Pを検出する。より詳細には、用紙センサ52は、用紙Pの前端を示す信号、及び、用紙Pの後端を示す信号を制御部8に出力する。
【0032】
また、2つの用紙センサ51,52は、
図2に示すように、距離L1が距離L2よりも大きくなるように配置されている。距離L1は、用紙センサ51による用紙Pを検出する上流検出位置から搬送方向に沿った用紙センサ52による用紙Pを検出する下流検出位置までの離隔距離である。距離L2は、当該下流検出位置から搬送方向に沿った搬送ローラ対43によって用紙Pを挟持するニップ位置までの離隔距離である。距離L1は、後述の搬送量X1(本発明の「第1搬送量」)に相当する距離よりも大きい。距離L2は、後述の搬送量X2(本発明の「第2搬送量」)に相当する距離よりも大きい。
【0033】
次に、
図3を参照しつつ、プリンタ100全体の制御を司る制御部8について説明する。制御部8は、バスによって互いに接続された、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82及びRAM(Random Access Memory)83、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)84、フラッシュメモリ85などを含む。そして、これらが協働して、ドライバIC5d、給送モータ41M、搬送モータ45M、キャリッジモータ6M、切断モータ4Mなどの動作を制御する。例えば、制御部8は、外部機器(例えばPCやスマートフォン)から送信された記録指令に基づいて、ドライバIC5d、給送モータ41M、搬送モータ45M、キャリッジモータ6M、切断モータ4M等を制御して、搬送処理と画像記録処理とを交互に実行し、用紙Pに画像を記録させる。なお、記録指令は、画像記録に使用する画像のサイズ等を示すヘッダーデータと、記録すべき画像の内容を示す画像データとを含んでいる。
【0034】
搬送処理は、搬送ローラ対42~44に所定搬送量だけ用紙Pを搬送させる処理である。制御部8は、搬送モータ45Mを制御することによって、搬送ローラ対42~44に搬送処理を実行させる。画像記録処理は、キャリッジ6aを左右方向に沿って移動させながら、ドライバIC5dを制御して、ノズルからインク滴を吐出させる処理である。そして、制御部8は、今回の搬送処理と次回の搬送処理との間、用紙Pの搬送を一時的に停止させ、用紙Pの搬送が停止している間に画像記録処理を実行する。つまり、制御部8は、画像記録処理において、キャリッジ6aを右向きまたは左向きに移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。これにより、用紙Pに対して1パス分の画像記録が実行される。制御部8は、搬送処理と画像記録処理とを交互に繰り返し実行することによって、用紙Pの画像記録可能な全領域に、画像記録することが可能である。つまり、制御部8は、複数回のパスで用紙Pに画像記録させる。
【0035】
また、制御部8には、用紙センサ51,52からの信号が入力される。これにより、用紙Pの前端及び後端位置を検出可能となる。また、制御部8には、ロータリーエンコーダ14からの信号が入力される。これにより、各搬送ローラ対42~44によって搬送される用紙Pの搬送量を導出することが可能となる。また、制御部8は、用紙センサ51によって用紙Pの後端を検出してからの累積搬送量Z1をフラッシュメモリ85に記憶する。また、制御部8は、用紙センサ52によって用紙Pの後端を検出してからの累積搬送量Z2をフラッシュメモリ85に記憶する。また、制御部8は、後述の分割搬送処理での累積搬送量Z3をフラッシュメモリ85に記憶する。また、フラッシュメモリ85には、後述の搬送回数M1,M2をそれぞれ記憶している。
【0036】
なお、制御部8は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC84のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC84とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部8は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部8は、1つのASIC84が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC84が処理を分担して行うものであってもよい。
【0037】
<印刷時の制御>
続いて、プリンタ100の印刷時の制御について説明する。プリンタ100では、印刷を実行するための記録指令を受け取ったときに、制御部8が、
図4のフローに沿って処理を行う。
【0038】
図4のフローについてより詳細に説明すると、制御部8は、まず、記録指令を受け取ったか否かを判定する(S1)。記録指令を受け取っていない場合(S1:NO)、S1を繰り返す。記録指令を受け取った場合(S1:YES)、制御部8は記録指令に基づいて今回の印刷がロール紙印刷であるか否かを判定する(S2)。なお、ロール紙印刷又はカット紙印刷であるか否かは、記録指令に含まれるヘッダーデータの画像のサイズに基づいて用紙Pの使用長(搬送方向に沿った用紙Pの長さ)を導出し判定される。なお、ヘッダーデータに用紙Pの使用長のデータが有る場合は当該データに基づいて判定してもよい。また、プリンタ100には、印刷時に使用するロール紙Rp(ロール体R)又はカット紙Kpが予めユーザによって収容されているものとする。
【0039】
ロール紙印刷であると判定された場合(S2:YES)、制御部8はロール紙Rpの給送を開始する(S3)。つまり、制御部8は、給送モータ41M及び搬送モータ45Mを駆動させ、ロール体Rから巻き解かれたロール紙Rpをトレイ11からインクジェットヘッド5に向けて搬送する。そして、ロール紙Rpの先端が搬送ローラ対43へ到達したときに、当該ロール紙Rpの頭出しを実行する。頭出しにおいて、制御部8は、ロール紙Rpを画像記録開始位置で停止させる。画像記録開始位置とは、ロール紙Rpにおける画像記録領域の搬送方向の先端(下流端)が、複数のノズルのうち搬送方向の最下流に配置されたノズルと対向する位置である。
【0040】
また、S3において、制御部8は、キャリッジモータ6Mを駆動させて、キャリッジ6a(インクジェットヘッド5)を開始位置へ移動させる。開始位置は、画像記録処理(S4)が実行されるときのキャリッジ6aの移動開始位置であり、記録指令に基づいて決定される。なお、S3において、ロール紙Rpの給送から頭出しまでの動作と、キャリッジ6aの移動動作とは、並行して実行される。
【0041】
次に、制御部8は、S4において、画像記録処理を実行する。つまり、制御部8は、キャリッジ6aを開始位置から移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。本実施形態においては、後述の分割搬送処理前に実行される画像記録処理が本発明の「第1画像記録処理」に該当し、分割搬送処理後に実行される画像記録処理が本発明の「第2画像記録処理」に該当する。
【0042】
次に、制御部8は、S5において、ロール紙Rpが切断されているか否かを判定する。ロール紙Rpの切断の有無の判定は、切断フラグがフラッシュメモリ85に記憶されているか否かで判定される。制御部8は、ロール紙Rpを切断したときに切断フラグをフラッシュメモリ85に記憶させる。なお、切断フラグは今回の印刷が終了すると、フラッシュメモリ85から消去される。ロール紙Rpが切断されている場合(S5:YES)、S8に進む。
【0043】
一方、切断されていない場合(S5:NO)、制御部8は、記録指令に基づいて、ロール紙Rpの後端となる位置が切断部4に到達したか否かを判定する(S6)。ロール紙Rpの後端となる位置が切断部4に到達していない場合(S6:NO)、S8に進む。
【0044】
ロール紙Rpの後端となる位置が切断部4に到達した場合(S6:YES)、制御部8が切断モータ4Mを駆動させ、ロール紙Rpを切断する切断処理を実行する(S7)。このとき、上述したように切断フラグをフラッシュメモリ85に記憶させる。
【0045】
次に、制御部8は、S8において、記録指令に基づいたロール紙Rpへの画像記録が終了したか否かを判定する。ロール紙Rpへの画像記録が終了していない場合(S8:NO)、S9に進み、
図5のフローに沿って搬送処理が実行される。
【0046】
<搬送処理の制御>
図5のフローについてより詳細に説明すると、制御部8は、累積搬送量Z1が閾値以上であるか否かを判定する(S201)。本実施形態における閾値は、搬送量X1の値である。本実施形態における搬送量X1に相当する距離は、距離L2よりも大きく、距離L1よりも小さい。なお、閾値は適宜設定すればよく、特に限定するものではない。搬送処理は、後述のS13においても同様にして行われる。したがって、搬送処理においては、ロール紙Rp及びカット紙Kpを区別せずに用紙Pと称する。
【0047】
用紙センサ51が用紙Pの後端を検出していない場合、及び、用紙センサ51が用紙Pの後端を検出してから搬送量X1以上の搬送を実行していない場合のいずれかであると、累積搬送量Z1が閾値未満となる。この場合(S201:NO)、制御部8は今回の搬送量を搬送量X1に設定する(S202)。なお、搬送量X1は、次回の画像記録処理を実行するための用紙Pの搬送量であり、記録指令に含まれる画像のサイズ及び解像度などの情報に基づいて制御部8が導出する。
【0048】
次に、制御部8は、搬送モータ45Mを制御して設定された搬送量だけ用紙Pを搬送方向に沿って搬送する(S203)。つまり、S201からS202を経由してS203に進んできた場合、用紙Pが搬送量X1分だけ搬送される。S201から後述のS226を経由してS203に進んできた場合も、用紙Pが搬送量X1分だけ搬送される。S201から後述のS210を経由してS203に進んできた場合、用紙Pが搬送量X2分だけ搬送される。S201から後述のS219を経由してS203に進んできた場合、用紙Pが搬送量X3分だけ搬送される。S201から後述のS223を経由してS203に進んできた場合、用紙Pが搬送量X4分だけ搬送される。S201から後述のS229を経由してS203に進んできた場合、用紙Pが搬送量X5分だけ搬送される。このようにS203では、設定された搬送量にて用紙Pが搬送される。
【0049】
次に、制御部8は、S203での搬送量が搬送量X1及び搬送量X5のいずれかであるかを判定する(S204)。S203での搬送量が搬送量X1及び搬送量X5のいずれでもない場合(S204:NO)、制御部8はフラグG,J,Kのいずれかがセットされているか否かを判定する(S205)。
【0050】
フラグG,J,Kのいずれかがセットされている場合(S205:YES)、制御部8はセットされたフラグJをリセットする(S206)。なお、S206においては、フラグG,Kがセットされていてもリセットせずにセットされた状態を維持する。こうして、搬送処理が終了し、S4に戻る。また、S203での搬送量が搬送量X1及び搬送量X5のいずれかである場合(S204:YES)、搬送処理が終了し、S4に戻る。なお、S202又はS226を経由してS203で用紙Pが搬送された場合、本発明の第1搬送処理に該当する。
【0051】
一方、S205において、フラグG,J,Kのいずれもセットされていない場合(S205:NO)、制御部8は後述のS209に戻る。フラグG,J,Kは今回の搬送処理における分割搬送処理が終了することを示すものであるため、これらがセットされていない場合は分割搬送処理が終了しておらず、S209に戻る。
【0052】
本実施形態においては、用紙Pの後端が用紙センサ51で検出されてからS202で設定された搬送量X1での搬送を1回行った後に、後述のS209へと進み、分割搬送処理が開始される。
図6(a)に示すように、距離L1は、搬送量X1に相当する距離よりも大きい。なお、変形例として、用紙Pの後端が用紙センサ51で検出されてから搬送量X1での搬送を2回以上行った後に、後述のS209へと進み、分割搬送処理を実行してもよい。このように用紙Pの後端が用紙センサ51で検出されてから搬送量X1での搬送を何回行うかは、距離L1に応じて上記の閾値を適宜設定すればよい。
【0053】
用紙センサ51が用紙Pの後端を検出してから搬送量X1の搬送を1回実行した場合、S201において、累積搬送量Z1が閾値以上であると判定される(S201:YES)。この場合、制御部8は、フラッシュメモリ85にフラグGがセットされているか否かを判定する(S207)。フラグGは、下記の分割搬送処理が終了することを示すフラグである。また、フラグGは、用紙Pの後端が搬送ローラ対43によるニップ位置を通過することを示す。フラグGがフラッシュメモリ85に記憶されることで、当該フラグGがセットされ、フラグがフラッシュメモリ85から消去されることで、フラグがリセットされる。
【0054】
フラグGがセットされている場合(S207:YES)、S202へと進む。つまり、下記の分割搬送処理が終了した後の搬送を搬送量X1で実行する。一方、フラグGがセットされていない場合(S207:NO)、制御部8はフラグKがセットされているか否かを判定する(S208)。フラグKは、下記の分割搬送処理が終了することを示すフラグである。また、フラグKは、用紙Pの後端が下流検出位置を通過していることも示す。フラグKがフラッシュメモリ85に記憶されることで、当該フラグKがセットされ、フラグKがフラッシュメモリ85から消去されることで、フラグKがリセットされる。
【0055】
フラグKがセットされていない場合(S208:NO)、分割搬送処理が終了していないもしくは開始されていない。この場合、制御部8は、分割搬送処理を開始又は継続する。なお、分割搬送処理とは、下記の搬送量X2,X3,X4のいずれかの搬送量で搬送される処理である。そして、分割搬送処理において、すべての搬送が搬送量X2で行われた場合、すなわち、下記のS219又はS223において搬送量の補正が行われていない場合、分割搬送処理における合計搬送量は搬送量X1に等しい。一方、分割搬送処理における搬送のうち、搬送量X3,X4のいずれかの搬送を含む場合、分割搬送処理における合計搬送量は搬送量X1よりも小さくなる。
【0056】
次に、制御部8は累積搬送量Z2が距離L2未満であるか否かを判定する(S209)。つまり、累積搬送量Z2に相当する距離が距離L2未満であるか否かを判定する。累積搬送量Z2は、用紙Pの後端が用紙センサ52に検出されてからの搬送量である。
【0057】
累積搬送量Z2が距離L2未満である場合(S209:YES)、制御部8は今回の搬送量を搬送量X2に設定する(S210)。搬送量X2は、搬送量X1を所定の分割搬送回数であるn(2以上の自然数)、除した値である。本実施形態における分割搬送回数は「8」であり、搬送量X2は、搬送量X1/8で導出される。
図6(a)には、分割搬送処理が行われる区間において、X1が8等分された状態を示す。なお、分割搬送回数nは、2以上であれば、適宜設定することが可能である。
【0058】
次に、制御部8は、フラグF2がセットされているか否かを判定する(S211)。フラグF2は、用紙センサ52により用紙Pの後端が検出されると、制御部8によってフラッシュメモリ85に記憶される。フラッシュメモリ85にフラグF2が記憶されることで、当該フラグF2がセットされ、フラグF2がフラッシュメモリ85から消去されることで、フラグF2がリセットされる。
【0059】
フラグF2がセットされていない場合(S211:NO)、制御部8はS211と同様な処理を実行する(S212)。S212において、フラグF2がセットされていない場合(S212:NO)、制御部8はフラッシュメモリ85に記憶された搬送回数M1に1を加えてフラッシュメモリ85に記憶させる(S213)。なお、搬送回数M1は、最初はフラッシュメモリ85に0が記憶されている。本実施形態における搬送回数M1は、分割搬送したときに用紙センサ52により用紙Pの後端が検出されたときの搬送も含む。
【0060】
次に、制御部8は、搬送回数M1が分割搬送回数nに等しいか否かを判定する(S214)。搬送回数M1が分割搬送回数nに等しい場合、つまり、分割搬送が8回行われても用紙Pの後端が下流検出位置を通過していない。この場合(S214:YES)、制御部8は搬送回数M1及び累積搬送量Z3を0リセットする。また、このとき、フラグJをフラッシュメモリ85に記憶させ、セットする(S215)。フラグJは、分割搬送処理が終了することを示すフラグである。また、フラグJは、用紙Pの後端が下流検出位置を通過していないことを示す。フラグJがフラッシュメモリ85に記憶されることで、当該フラグJがセットされ、フラグJがフラッシュメモリ85から消去されることで、フラグJがリセットされる。こうして、S203からS206を経由して今回の搬送処理(本発明の「分割搬送処理」)が終了する。また、搬送回数M1が分割搬送回数nに等しくない場合(S214:NO)、S203からS205を経由してS209へと進み、分割搬送処理が継続される。
【0061】
S201からS205(NO)を経由して搬送量X2での分割搬送を繰り返し、S211において、フラグF2がセットされている場合(S211:YES)、制御部8は搬送回数M2が0に等しいか否かを判定する(S216)。
【0062】
搬送回数M2が0に等しい場合(S216:YES)、制御部8は
図6(a)に示す搬送量Y1及び搬送量Y2を導出する。搬送量Y1は、用紙Pの後端が下流検出位置を通過したときの搬送において、当該用紙Pの後端が下流検出位置を通過してから搬送量である。搬送量Y2は、分割搬送処理が開始されてから用紙Pの後端が下流検出位置を通過したときの搬送までの累積搬送量Z3から搬送量Y1を差し引いた搬送量である。一方、フラグF2がセットされてから分割搬送が1回でも行われ、搬送回数M2が0に等しくない場合(S216:NO)、S218に進む。
【0063】
制御部8は、S218において、搬送量X1-搬送量Y2が距離L2未満であるか否かを判定する。今回の分割搬送処理が終了しても用紙Pの後端が搬送ローラ対43によるニップ位置を通過しない場合、搬送量X1-搬送量Y2が距離L2未満と判定する。この場合(S218:YES)、S212に進む。
【0064】
一方、今回の分割搬送処理が終了したときに用紙Pの後端が搬送ローラ対43によるニップ位置を通過すると予測された場合、搬送量X1-搬送量Y2が距離L2以上と判定する。この場合(S218:NO)、S219に進む。
【0065】
次に、制御部8は、S219において、搬送量X3に設定する(本発明の「補正処理」)。搬送量X3(本発明の「第3搬送量」)は、搬送量X2から所定の補正量α1を差し引いた値である。つまり、搬送量X3は、搬送量X2よりも小さい。ここでいう補正量α1は、{X2/(X1-X2×M1)}×βにより導出される。βは、用紙Pの後端が搬送ローラ対43によるニップ位置を通過する際に搬送方向に沿って押し出される搬送量に該当し、予め実験によって求められた数値である。この後、S212に進む。
【0066】
分割搬送処理中にS219に経由することで、搬送量X2から搬送量X3へと補正される。
図6(a)に示すような分割搬送の場合、分割搬送が2回(M1=2)行われると用紙センサ52により用紙Pの後端が検出される。この後、分割搬送が4回(下記のM2=4)行われると、用紙Pの後端が搬送ローラ対43によるニップ位置を通過する。この搬送回数M2が1~4のときの分割搬送時の搬送量が搬送量X2-補正量α1により算出される搬送量X3となる。なお、この搬送量X3での分割搬送は、S209からS210へと進む分割搬送と、下記のS222によりフラグKがセットされる分割搬送とのいずれかまで行われる。
【0067】
S211からS218を経由してS212に進み、フラグF2がセットされている場合(S212:YES)、制御部8はフラッシュメモリ85に記憶された搬送回数M2に1を加えてフラッシュメモリ85に記憶させる(S220)。搬送回数M2は、用紙センサ52により用紙Pの後端が検出されてからの搬送回数を示す。
【0068】
次に、制御部8は、搬送回数M1+搬送回数M2が分割搬送回数nに等しいか否かを判定する(S221)。搬送回数M1+搬送回数M2が分割搬送回数nに等しい場合(S221:YES)、制御部8はフラグKをフラッシュメモリ85に記憶させ、セットする(S222)。こうして、S203からS206を経由して搬送処理(本発明の「分割搬送処理」)が終了する。また、搬送回数M1+搬送回数M2が分割搬送回数nに等しくない場合(S221:NO)、S203からS205を経由してS209へと進み、分割搬送処理が継続される。
【0069】
例えば、S9による搬送処理(分割搬送処理)において、搬送回数M2が4のときの分割搬送が行われると、
図6(b)に示すように累積搬送量Z2が、距離L2以上となる。このように用紙Pの後端が下流検出位置を通過し、S209において、累積搬送量Z2が距離L2以上の場合(S209:NO)、制御部8は今回の搬送量を搬送量X4に設定する(S223:本発明の「補正処理」)。搬送量X4(本発明の「第3搬送量」)はX1-X2×(M1+M2)により算出された搬送量X6から所定の補正量α2を差し引いた値である。ここでいう補正量α2は、{X6/(X1-X2×M1)}×βにより導出される。
【0070】
次に、制御部8は、フラグGをフラッシュメモリ85に記憶させ、セットする(S224)。こうして、S203からS206を経由して搬送処理が終了する。
【0071】
S222においてフラグKがセットされた時点で用紙Pの後端が搬送ローラ対43によるニップ位置を通過していないが、直後のS203による搬送によって当該ニップ位置を通過することもある。したがって、制御部8は、S208において、フラグKがセットされている場合(S208:YES)、S209と同様の処理を行う(S225)。累積搬送量Z2が距離L2以上である場合(S225:NO)、制御部8は今回の搬送量を搬送量X1設定する(S226)。こうして、S203からS204(YES)を経由して搬送処理が終了する。
【0072】
一方、累積搬送量Z2が距離L2未満である場合(S225:YES)、制御部8はフラグQがセットされているか否かを判定する(S227)。フラグQがセットされていない場合(S227:NO)、制御部8は今回の搬送量を搬送量X5に設定する(S228)。搬送量X5は、搬送量X1から押し出される搬送量βを差し引いた値である。
【0073】
次に、制御部8は、フラグQをフラッシュメモリ85に記憶させ、セットする(S229)。こうして、S203からS204(YES)を経由して搬送処理が終了する。
【0074】
S227において、フラグQがセットされている場合(S227:NO)、S226に進む。これにより、搬送量X5による搬送が繰り返し実行されない。そして、S203からS204(YES)を経由して搬送処理が終了する。
【0075】
S9の搬送処理が終了した後、
図4に示すS4に戻り、制御部8は、S4~S8の処理を再び実行する。一方、ロール紙Rpへの画像記録が終了した場合(S8:YES)、画像が記録されたロール紙Rpを排出し、フローを終了する。このとき、フラッシュメモリ85に切断フラグ、フラグG,K,Q、搬送回数M1,M2、累積搬送量Z1~Z3が記憶されている場合、制御部8はこれらをフラッシュメモリ85から消去する。
【0076】
S2に戻って、ロール紙印刷でないと判定された場合(S2:NO)、制御部8はカット紙Kpの給送を開始する(S10)。つまり、制御部8は、給送モータ41M及び搬送モータ45Mを駆動させ、カット紙Kpをトレイ11からインクジェットヘッド5に向けて搬送する。そして、カット紙Kpの先端が搬送ローラ対43へ到達したときに、ロール紙Rpのときと同様にカット紙Kpの頭出しを実行する。このとき、制御部8は、キャリッジ6aをS3のときと同様に開始位置へ移動させる。
【0077】
次に、制御部8は、S11において、画像記録処理を実行する。つまり、制御部8は、キャリッジ6aを開始位置から移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。
【0078】
次に、制御部8は、S12において、記録指令に基づいたカット紙Kpへの画像記録が終了したか否かを判定する。カット紙Kpへの画像記録が終了していない場合(S12:NO)、S13に進み、搬送処理が実行される。
【0079】
次に、制御部8は、S13において、上述のS9の搬送処理と同様の処理を実行する。この後、S11に戻り、制御部8は、S11,S12の処理を再び実行する。一方、カット紙Kpへの画像記録が終了した場合(S12:YES)、画像が記録されたカット紙Kpを排出し、フローを終了する。このときも、フラッシュメモリ85にフラグG,K,Q、搬送回数M1,M2、累積搬送量Z1~Z3が記憶されている場合、制御部8はこれらをフラッシュメモリ85から消去する。
【0080】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ100によると、S9又はS13において搬送量X1による搬送処理(第1搬送処理)が行われ、S4又はS11の画像記録処理後にS9又はS13における搬送処理において分割搬送処理を実行することが可能となる。このように分割搬送処理を適切なタイミングで実行することで、用紙Pの搬送に要する時間が長くなるのを抑制することができる。つまり、搬送量X1よりも小さく距離L2よりも小さい搬送量による搬送処理を最初から実行する必要がなくなり、1の用紙Pに対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのを抑制することができる。
【0081】
また、分割搬送処理におけるいずれかの搬送が終わったとき、用紙Pの後端(搬送方向の上流端)は用紙センサ52による下流検出位置と搬送ローラ対43によるニップ位置との間にある。つまり、下流検出位置よりも上流にある用紙Pの後端が、1回の搬送でニップ位置を通過しなくなる。このため、用紙Pの後端が下流検出位置とニップ位置との間にある状態から搬送量X3又はX5(第3搬送量)による搬送を行うことが可能となる。つまり、下流検出位置とニップ位置との間の距離L2よりも大きい搬送量X1による搬送により、用紙Pの後端が下流検出位置及びニップ位置を一気に通過して当該搬送が終了するときの期間に相当する期間中に、搬送量の補正を入れることが可能となる。したがって、分割搬送処理後の画像記録に押し出しが与える影響を抑えることができ、画像記録精度の低下を抑制することができる。
【0082】
搬送量X2が搬送量X1を分割搬送回数nで除した値である。これにより、1回の分割搬送における搬送量X2を導出しやすくなって、制御が簡単になる。
【0083】
S218からS219へと進む場合、分割搬送処理による用紙Pの後端が搬送ローラ対43のニップ位置を通過する。この場合、S219にて搬送量X3に補正されるため、分割搬送処理後の画像記録に押し出しが与える影響を効果的に抑制することができる。
【0084】
分割搬送処理における合計搬送量(フラグK又はGがセットされた搬送が行われたときまでの合計搬送量)は、搬送量が補正された分割搬送を含むため、搬送量X1よりも小さい。これにより、搬送ローラ対43による用紙Pの押し出しによる搬送量の増加が生じても、分割搬送処理での実際の合計搬送量が、搬送量X1を大幅に超えず搬送量X1により一層近くなる。
【0085】
S219及びS223による搬送量の補正が、搬送量X1を分割搬送回数nで除した搬送量X2に基づいて補正されている。つまり、補正前の分割搬送処理における搬送量X2の合計は、搬送量X1に等しい。これにより、押し出しによる搬送量の増加が生じても、分割搬送処理での実際の合計搬送量が、搬送量X1を大幅に超えず搬送量X1により一層近くなる。
【0086】
S201において、累積搬送量Z1が閾値以上の場合、すなわち、用紙センサ51が用紙Pの後端を検出した後に分割搬送処理が実行可能となる。これにより、搬送量X1の搬送処理から分割搬送処理に切り替えるまでの間に、用紙Pの後端の位置を把握することができる。このように用紙センサ51が用紙センサ52よりも搬送方向上流に配置されていることで、用紙Pが正常に搬送されているか否かも判定することが可能となる。また、本実施形態においては、用紙Pの後端が上流検出位置を通過してから搬送量X1の搬送処理を1回実行してから分割搬送処理が実行可能となる。これにより、用紙Pの後端が用紙センサ52により一層近づいてから分割搬送を開始することが可能となる。ひいては、分割搬送の回数を多くし過ぎないことで、1の用紙Pに対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのを抑制することが可能となる。
【0087】
制御部8は、S219を経由してフラグKがセットされ、S225でNOと判定すると、S226で搬送量X1に設定する。また、制御部8は、S223を経由してフラグGがセットされ、S202で搬送量X1に設定する。つまり、分割搬送処理による合計搬送量が、搬送量X1から押し出される搬送量βを差し引いた所定量に達した後に、搬送量X1での搬送を実行する。これにより、用紙Pの後端がニップ位置を通過してから比較的早い段階で、搬送量を搬送量X1に戻すことが可能となる。このため、1の用紙Pに対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのをより一層抑制することが可能となる。
【0088】
制御部8は、S9又はS13での搬送処理が終了してからS4又はS11の画像記録処理を実行する。つまり、制御部8は、分割搬送処理の間、S4又はS11の画像記録処理を実行しない。これにより、画像記録精度の低下を抑制することができる。
【0089】
制御部8は、S209からS223へと進むことで、分割搬送処理の残りの搬送による合計搬送量を補正しつつも1回の搬送で搬送する。これにより、1の用紙Pに対する画像記録が終了するまでの時間が長くなるのをより一層抑制することが可能となる。
【0090】
制御部8は、S209において、累積搬送量Z2が距離L2に達したか否かを判定する。これにより、用紙Pの後端が搬送ローラ対43を通過したか否かを精度良く判定することが可能となる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上記の実施形態における搬送ローラ対43は、付勢部材43cによって従動ローラ43bが駆動ローラ43aに付勢されて構成されているが、駆動ローラ43a及び従動ローラ43bの少なくともいずれかの表面が弾性を有し、用紙Pを挟持することが可能であれば、付勢部材43cが設けられていなくてもよい。
【0092】
図6(a)に示す上記の実施形態においては、搬送回数M2が1~4のときの分割搬送時の搬送量がX3となり、その後、搬送量X4で一括搬送される。搬送量X3に補正したときの各分割搬送時の補正量と、搬送量X4に補正したときの補正量との合計は、押し出される搬送量βに等しい。このように分割搬送時における合計補正量が押し出される搬送量βに等しい場合、搬送回数M1が1~4のときの分割搬送時における補正量が互いに異なっていてもよい。また、用紙Pの後端が下流検出位置を通過してからの分割搬送時の1の分割搬送における搬送量から搬送量βを差し引いた搬送量で分割搬送を行ってもよい。また、S223では、搬送量の補正を実行せずに、S219のときにだけ搬送量X2を補正してもよい。
【0093】
上記の実施形態においては、分割搬送処理が終了してからS4又はS11の画像記録処理を実行しているが、1回の分割搬送を行う度に、画像記録処理を実行してもよい。
【0094】
上記の実施形態におけるプリンタ100では、ロール紙Rp及びカット紙Kpを選択的に搬送することが可能であるが、いずれか一方のみを搬送可能なプリンタであってもよい。また、プリンタ100がカット紙Kpのみを搬送可能である場合、ロール体収容部20及び切断部4を設けなくてもよい。
【0095】
また、用紙センサ51が設けられていなくてもよい。また、用紙センサ51は、上流検出位置と下流検出位置との間の距離が搬送量X1に相当する距離よりも大きくなるように配置されていれば、どこに配置されていてもよい。
【0096】
また、本発明は、インクジェットプリンタだけでなく、レーザで感光体を露光することにより静電潜像が形成されるレーザ式の画像形成部や、LEDで感光体を露光することにより静電潜像が形成されるLED式の画像形成部を備える電子写真プリンタに適用することもできる。また、シート状媒体は用紙に限定されず、シート状であれば布やプラスチックフィルムなどであってもよい。
【符号の説明】
【0097】
3 搬送部
5 インクジェットヘッド(記録部)
8 制御部
43 搬送ローラ対(一対の搬送ローラ)
51 用紙センサ(第2センサ)
52 用紙センサ(第1センサ)
100 プリンタ(画像記録装置)